説明

ガラスロール及びその製造方法

【課題】輸送時における破損を防止することができるガラスフィルムのガラスロール、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】オーバフローダウンドロー法により成形された厚み1μm〜500μmのガラスフィルム2が梱包緩衝シート3に重ねて巻き取られていることを特徴とする液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイに用いられるガラス基板や太陽電池のガラス基板等のデバイスのガラス基板、及び有機EL照明の基板やそのカバーガラス等に使用されるガラスフィルムのガラスロール1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイに用いられるガラス基板や太陽電池のガラス基板等のデバイスのガラス基板、及び有機EL照明の基板やそのカバーガラス等に使用されるガラスフィルムのガラスロール、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
省スペース化の観点から、従来普及していたCRT型ディスプレイに替わり、近年は液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等のフラットパネルディスプレイが普及している。これらのフラットパネルディスプレイにおいては、さらなる薄型化が要請される。特に有機ELディスプレイには、折りたたみや巻き取ることによって持ち運びを容易にすると共に、平面だけでなく曲面にも使用可能とすることが求められている。また、平面だけでなく曲面にも使用可能とすることが求められているのはディスプレイには限られず、例えば、自動車の車体表面や建築物の屋根、柱や外壁等、曲面を有する物体の表面に太陽電池を形成したり、有機EL照明を形成したりすることができれば、その用途が広がることとなる。従って、これらデバイスに使用される基板やカバーガラスには、更なる薄板化と高い可撓性が要求される。
【0003】
有機ELディスプレイに使用される発光体は、酸素や水蒸気等の気体が接触することにより劣化する。従って有機ELディスプレイに使用される基板には高いガスバリア性が求められるため、ガラス基板を使用することが期待されている。しかしながら、基板に使用されるガラスは、樹脂フィルムと異なり引っ張り応力に弱いため可撓性が低く、ガラス基板を曲げることによりガラス基板表面に引っ張り応力がかけられると破損に至る。ガラス基板に可撓性を付与するためには超薄板化を行う必要があり、下記特許文献1に記載されているような厚み200μm以下のフィルム状の薄板ガラスシートが提案されている。
【0004】
ガラスメーカーで製造されたガラス基板は、ディスプレイパネルメーカーへと輸送され、ディスプレイパネルとして組み立てられる。従って、上述した薄板ガラスシートは、ディスプレイパネルメーカーへ輸送される際に破損しないようにする必要がある。
【0005】
ガラス基板を梱包する方法として、下記特許文献2や下記特許文献3が提案されている。下記特許文献2には、背面部を有するパレット上に所定の角度を設けてガラス基板と梱包緩衝材とを交互に立てかけ、所定の枚数積層した後固定する梱包方法が記載されている。また、下記特許文献3には、パレット上に水平にガラス基板と梱包緩衝材とを交互に積み重ね、クッション材で固定する梱包方法が記載されている。
【0006】
しかしながら、フィルム状にまで薄肉化された薄板ガラスシート(以下、ガラスフィルムという)にはある程度の可撓性が存在するため、下記特許文献2に記載されているように立てかけることが容易ではなく、当該ガラスフィルムの梱包に下記特許文献2に記載されている梱包方法を使用することは困難である。さらに、ガラスフィルムは僅かな風圧でばたつく可能性があり、ガラスシートを立てかける際に風圧等により折れ曲がりが発生すると、容易に破損してしまうという問題を有する。
【0007】
さらに、ガラスフィルムはその薄さから非常に脆く、ガラスフィルムを下記特許文献3に記載されているように水平に積み重ねると、下方に存在するガラスフィルムに荷重がかかり、容易に破損するという問題が生じる。
【0008】
ガラス基板を水平方向に梱包する際に、下方に荷重がかかるのを防止する梱包方法として、下記特許文献4に記載されている方法が提案されている。下記特許文献4は、複数枚の板ガラスを1枚ずつ支持部材で支持して水平方向に並列配置して収納している。よって、板ガラスの荷重支持は、支持部材で行っているため、下方に配置されているガラス基板には荷重がかかることはない。
【0009】
しかしながら、ガラスフィルムは可撓性を有するため、下記特許文献4に記載されているように支持部材間を掛け渡すように収納することはできない。
【0010】
従って、ガラスフィルムを搬送するためには、従来使用されていたガラス基板の梱包方法とは根本的に異なる方法によって梱包されたガラスシートが提案されることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−133174号公報
【特許文献2】特開2005−231657号公報
【特許文献3】特開2006−264786号公報
【特許文献4】特開2005−75433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、輸送時における破損を防止することができるガラスフィルムのガラスロール、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は、ガラスフィルムが梱包緩衝シートに重ねて巻き取られていることを特徴とするガラスロールに関する。
【0014】
請求項2に係る発明は、前記ガラスフィルムの厚みは、1μm〜500μmであることを特徴とする請求項1に記載のガラスロールに関する。
【0015】
請求項3に係る発明は、前記ガラスフィルムがオーバーフローダウンドロー法によって成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスロールに関する。
【0016】
請求項4に係る発明は、巻芯によって巻き取られていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラスロールに関する。
【0017】
請求項5に係る発明は、前記巻芯が取り除かれていることを特徴とする請求項4に記載のガラスロールに関する。
【0018】
請求項6に係る発明は、成形されたガラスフィルムを搬送しつつ、梱包緩衝シートのロールから前記梱包緩衝シートを引き出し、前記ガラスフィルムに梱包緩衝シートを重ねて巻き取ることを特徴とするガラスロールの製造方法に関する。
【0019】
請求項7に係る発明は、前記ガラスフィルムがオーバーフローダウンドロー法によって成形されていることを特徴とする請求項6に記載のガラスロールの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明によれば、ガラスフィルムが梱包緩衝シートに重ねて巻き取られていることから、梱包緩衝シートがクッション性を有するので、多少の衝撃が加わったとしても衝撃を吸収することができ、ガラスフィルムが破損することを防止することができる。さらにガラスロールは梱包緩衝シートと共に巻き取られているため、ガラスフィルムに傷が発生するのを防止することができる。また、ガラスフィルムは、長時間巻き取った状態が保持されたとしても、反りが発生することはなく容易に次工程へと送り込むことができる。さらに、巻き取ることによって長尺物のガラスフィルムとすることができることから、その後自由な長さで切断することができ、様々な大きさの基板に対応することが可能となり、ガラスフィルムの無駄を防止することができる。
【0021】
請求項2に係る発明によれば、ガラスフィルムの厚みは、1μm〜500μmであることから、ガラスフィルムに適切に可撓性を付与することができ、ガラスフィルムを巻き取った際にガラスフィルムにかかる不当な応力を軽減することができ、ガラスフィルムが破損することを防止することができる。
【0022】
請求項3に係る発明によれば、ガラスフィルムがオーバーフローダウンドロー法によって成形されていることから、表面が火造り面となることにより表面に傷の発生がなく、高い表面品位を有するガラスフィルムを得ることができる。これにより、ガラスフィルムのロール巻き取り時に、傷をオリジンとしてガラスフィルムが破損することをより確実に防止することができる。尚、ガラスフィルムをリドロー法によって成形しても、同様の効果を得ることができる。
【0023】
請求項4に係る発明によれば、巻芯によって巻き取られていることから、ガラスフィルムを巻き取る際に巻芯に固定することができるため、より強固に巻き取られたガラスロールとすることができる。また、巻き取られたガラスフィルムのガラスロールに外側から圧力が加わったとしても、巻芯の存在によってガラスフィルムは内側に曲がることは無いため、ガラスフィルムに不当な引っ張り応力がかかるのを防止することができ、ガラスフィルムが破損するのをより確実に防止することができる。
【0024】
請求項5に係る発明によれば、巻芯が取り除かれていることから、巻芯を使用してより強固に巻き取られたガラスロールとした後、巻芯を取り除くことによりガラスロールの軽量化を図ることができ、より輸送に適したガラスロールとすることができる。
【0025】
請求項6に係る発明によれば、成形されたガラスフィルムを搬送しつつ、梱包緩衝シートのロールから前記梱包緩衝シートを引き出し、ガラスフィルムに梱包緩衝シートを重ねて巻き取ることから、ガラスフィルムの破損を防止しつつ、効率よくガラスロールを製造することができる。
【0026】
請求項7に係る発明によれば、前記ガラスフィルムがオーバーフローダウンドロー法によって成形されていることから、表面が火造り面となることにより成形されたガラスフィルムは高い表面品位を有し、より容易に巻き取ることができる。尚、ガラスフィルムをリドロー法によって成形しても、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るガラスロールの斜視図である。
【図2】ガラスフィルムの製造装置の説明図である。
【図3】巻芯に保持部を設けた形態の図であって、(a)はガラスフィルムと梱包緩衝シートとを保持する形態の図、(b)はガラスフィルムのみを保持する図である。
【図4】巻芯の外円筒が伸縮する形態の図である。
【図5】本発明に係るガラスロールの製造装置の説明図である。
【図6】本発明に係るガラスフィルムの好ましい切断方法を示した図であって、(a)はスクライブラインが切断前ローラを通過した状態の図、(b)は折り割りを行っている図、(c)は切断後端部が切断後ローラを通過した状態の図である。
【図7】本発明に係るガラスロールに外装体を設けた斜視図である。
【図8】本発明に係るガラスロールの巻芯に支持棒を設けた斜視図である。
【図9】本発明に係るガラスロールの巻芯にフランジを設けた斜視図である
【図10】本発明に係るガラスロールを縦方向に載置する方法を示す説明図である。
【図11】本発明に係るガラスロールの処理方法を示した図である。
【図12】本発明に係るガラスロールの他の処理方法について示した図である。
【図13】表面にエンボス加工を施した梱包緩衝シートの図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るガラスロール、及びその製造方法の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1は、本発明に係るガラスロールの斜視図である。図2は、ガラスフィルムの製造装置の説明図である。図3は、巻芯に保持部を設けた形態の図であって、(a)はガラスフィルムと梱包緩衝シートとを保持する形態の図、(b)はガラスフィルムのみを保持する図である。図4は、巻芯の外円筒が伸縮する形態の図である。図5は、本発明に係るガラスロールの製造装置の説明図である。図6は、本発明に係るガラスフィルムの好ましい切断方法を示した図であって、(a)はスクライブラインが切断前ローラを通過した状態の図、(b)は折り割りを行っている図、(c)は切断後端部が切断後ローラを通過した状態の図である。
【0030】
本発明に係るガラスロール(1)は、図1に示す通り、ガラスフィルム(2)と梱包緩衝シート(3)とからなっている。
【0031】
ガラスフィルム(2)は、ケイ酸塩ガラスが用いられ、好ましくはシリカガラス、ホウ珪酸ガラスが用いられ、最も好ましくは無アルカリガラスが用いられる。ガラスフィルム(2)にアルカリ成分が含有されていると、表面において陽イオンの置換が発生し、いわゆるソーダ吹きの現象が生じ、構造的に粗となる。この場合、ガラスフィルム(2)を湾曲させて使用していると、経年劣化により粗となった部分から破損し易くなる可能性がある。尚、ここで無アルカリガラスとは、アルカリ成分が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ金属酸化物が1000ppm以下のガラスのことである。本発明でのアルカリ金属酸化物の含有量は、好ましくはアルカリ金属酸化物が500ppm以下であり、より好ましくはアルカリ金属酸化物が300ppm以下である。
【0032】
ガラスフィルム(2)は巻き取ることが可能であるため、特に長尺物に適している。すなわちガラスフィルム(2)の幅(短辺)に対する長さ(長辺)が好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上、さらには10倍以上の長さを有することがより好ましい。このように長尺物であったとしても、コンパクトに梱包することが可能となり、輸送に適している。ガラスフィルム(2)の幅は、携帯電話用小型ディスプレイから大画面ディスプレイ等、使用されるデバイスの基板の大きさによって適宜選択される。
【0033】
ガラスフィルム(2)の厚みは、1μm〜500μmであることが好ましく、10μm〜200μmであることがより好ましく、10μm〜100μmであることが最も好ましい。ガラスフィルム(2)に適切に可撓性を付与することができ、ガラスフィルム(2)を巻き取った際にガラスフィルム(2)にかかる不当な応力を軽減することができ、ガラスフィルム(2)が破損することを防止することができるからである。1μm未満であると、ガラスフィルム(2)の強度が足りず、500μmを超えると、ガラスフィルム(2)を巻き取ると引っ張り応力により破損する可能性が高くなるため、いずれの場合も好ましくない。
【0034】
ダイヤモンドカッター等を使用してガラスフィルム(2)の表面にスクライブラインを形成し、折り割りを行った場合は、ガラスフィルム(2)は、スクライブライン形成面が内側となるように巻き取られていることが好ましい。形成されたスクライブラインの溝には微細な傷が生じているため、スクライブ形成面が外側となるようにガラスフィルム(2)を巻き取ると、その引っ張り応力によってスクライブラインの溝に生じている微細な傷をオリジンとしてガラスフィルム(2)が破損する可能性があるからである。尤も、レーザーカッター等を使用することによりスクライブラインや切断面に微細な傷が生じない方法によってガラスフィルム(2)の切断を行う場合は、ガラスフィルム(2)の巻き取り方向は、制限されない。また、スクライブラインの形成後に折り割りを行った後、ファイアポリッシュ、ケミカルポリッシュを行うことによってガラスフィルム(2)の端面を処理することもできる。
【0035】
ガラスフィルム(2)を巻き取る際に、ガラスフィルム(2)の端面に応力が集中し、破損する可能性がある。従って、ガラスフィルム(2)の端面部分を樹脂製フィルム等によって保護することが好ましい。この場合、ガラスフィルム(2)の両端面から1〜2cmの領域に樹脂製フィルムを重ねて巻き取ることによってガラスロール(1)を作成する。さらに、粘着性の樹脂製フィルムを使用すると、ガラスフィルム(2)端面にクラックが発生したとしても、クラックが進展するのを防止することができる。また、ガラスフィルム(2)の端面を樹脂製フィルムで保護するのに換えて、両端面から1〜2cmの領域に保護膜をコーティングしてもよい。保護膜としては例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニル、ポリエチレンポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、セルロース基材重合体、エポキシ樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂などを利用することができる。これらの保護膜は噴霧塗布やローラなどによる塗布または前述の樹脂フィルムの貼着などで付与することができる。
【0036】
ガラスロール(1)からガラスフィルム(2)を引き出し、工程に組み込む際に、ガラスフィルム(2)を直接把持して組み込むとガラスフィルム(2)の始端部が破損する可能性があり、工程へ組み込み難くなる場合がある。従って、ガラスフィルム(2)の巻き取り開始時(始端)と巻き取り終了時(終端)に、樹脂製のフィルムを取着するのが好ましい。樹脂製のフィルムは、ガラスフィルム(2)と比較して破損し難いため、工程に組み込む際に樹脂製のフィルムを把持して行うことができ、工程への組み込みを容易にすることが可能となる。樹脂製のフィルムは、ガラスフィルム(2)の始端部と終端部にそれぞれ1〜2cm程度重ねて取着した後巻きつけを行い、ガラスロール(1)とする。樹脂製のフィルムの長さは、特に限定されず、例えば、ガラスロール(1)外周1周分の長さに設定することが挙げられる。また、樹脂製のフィルムは、粘着性を持つことが好ましく、弾性率がガラスフィルム(2)よりも小さいことが好ましい。
【0037】
ガラスフィルム(2)は図2に示す製造装置を使用して製造される。断面が楔型の成形体(4)の下端部(41)から流下した直後のガラスリボン(G)は、冷却ローラ(5)によって幅方向の収縮が規制されながら下方へ引き伸ばされて所定の厚みまで薄くなる。次に、前記所定厚みに達したガラスリボン(G)を徐冷炉(アニーラ)で徐々に冷却し、ガラスリボン(G)の熱歪を除いて、ガラスフィルム(2)が成形される。
【0038】
本発明において、ガラスフィルム(2)は、図2、図5に示す通り、オーバーフローダウンドロー法によって成形されていることが好ましい。オーバーフローダウンドロー法は、成形時にガラス板の両面が成形部材と接触しない成形法であり、得られたガラス基板の両面(透光面)は火造り面となり傷が生じ難く、研磨しなくても高い表面品位を得ることができるからである。尚、ガラスフィルムをリドロー法によって成形しても、同様の効果を得ることができる。
【0039】
梱包緩衝シート(3)は、ガラスフィルム(2)を巻き取る際に、ガラスフィルム(2)同士が接触することによる傷の発生を防止すると共に、ガラスロール(1)に外圧が加わった際、それを吸収するために使用される。従って、梱包緩衝シート(3)の厚みは、10μm〜2000μmであることが好ましい。10μm未満であると、梱包緩衝シートとして十分ではなく、2000μmを超えると、ガラスフィルム(2)を巻き取った後に形成されたガラスロールの厚みが不当に厚くなるため、いずれの場合も好ましくない。本発明に係るガラスロール(1)を作成する際に、ガラスフィルム(2)は、50℃を超えている可能性があるため、梱包緩衝シート(3)は、100℃前後で軟化等変質しないことを要する。梱包緩衝シート(3)は、幅方向においてガラスフィルム(2)よりも一回り大きいことが好ましい。ガラスフィルム(2)の側縁部に打突等による欠けが生じるのを防止するためである。梱包緩衝シート(3)としては、アイオノマーフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、エチレン−メタクリル酸共重合体フィルム、ナイロンフィルム(ポリアミドフィルム)、ポリイミドフィルム、セロファン等の樹脂製緩衝材、合紙、不織布等を使用することができる。梱包緩衝シート(3)としてポリエチレン発泡樹脂製シートなどの発泡樹脂シートを使用することが、衝撃吸収が可能であり且つ引っ張り応力に対しても強度が高いため、途中で破断し難く好ましい。一方ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルムは、ガラスに対する滑りが良いために、ガラスフィルム(2)と梱包緩衝シート(3)を重ねて巻き取ることにより生じる僅かな径の差に起因する巻き取り長さのズレをその滑りにより吸収できるため好ましい。また、これら樹脂シートにシリカなどを分散させて、ガラスフィルム(2)に対する滑り性を向上させてもよい。梱包緩衝シート(3)が外側となるようにガラスフィルム(2)を巻き取っても、梱包緩衝シート(3)が内側となるようにガラスフィルム(2)を巻き取ってガラスロール(1)を形成してもよい。梱包緩衝シート(3)が内側となるようにガラスフィルム(2)を巻き取る場合は、ガラスフィルム(2)を梱包緩衝シート(3)にテープ等で固着させた後か、図3のように巻芯(6)に設けた保持溝(68)にガラスフィルム(2)と梱包緩衝シート(3)を重ねて保持、もしくはガラスフィルム(2)のみを保持した後に巻き取りを開始する。
【0040】
梱包緩衝シート(3)には、導電性が付与されていることが好ましい。このようにするとガラスロール(1)からガラスフィルム(2)を取り出す際に、ガラスフィルム(2)と梱包緩衝シート(3)との間に剥離帯電が生じ難くなるため、ガラスフィルム(2)と梱包緩衝シート(3)とを剥離させやすくすることができるからである。梱包緩衝シート(3)が樹脂製の場合は梱包緩衝シート(3)中にポリエチレングリコール等の導電性を付与する成分を添加することで、合紙の場合は導電性繊維を抄き込むことで、梱包緩衝シート(3)に導電性を付与することができる。また、導電性を付与するために、梱包緩衝シート(3)の表面にITO等の導電膜を成膜することもできる。
【0041】
本発明に係るガラスロール(1)は、巻芯(6)によって巻き取られることが好ましい。このようにするとガラスフィルム(2)を巻き取る際に巻芯(6)に固定することができるため、より強固に巻き取られたガラスロール(1)とすることができるからである。巻き取られたガラスフィルム(2)のガラスロール(1)に外側から圧力が加わったとしても、巻芯(6)の存在によってガラスフィルム(2)は内側に曲がることは無いため、ガラスフィルム(2)に不当な引っ張り応力がかかるのを防止することができ、ガラスフィルム(2)が破損するのをより確実に防止することができる。巻芯(6)は、幅方向においてガラスフィルム(2)よりも大きいことが好ましい。このようにすると、ガラスロール(1)の側縁部よりも巻芯(6)を突出させることができ、打突等によるガラスフィルム(2)の側縁部の欠けを防止することができるからである。巻芯(6)の材質としては、アルミニウム合金、ステンレス鋼、マンガン鋼、炭素鋼等の金属、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ジリアルテレフタレート樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、もしくはこれらの熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂にガラス繊維や炭素繊維などの強化繊維を混合した強化プラスチック、紙管等を使用することができる。中でも、アルミニウム合金や強化プラスチックは強度の面において優れているため、また、紙は軽量化を図ることができるため、好ましく使用することができる。ガラスフィルム(2)の表面に傷が生じるのを防止するために、巻芯(6)には予め1周以上梱包緩衝シート(3)を巻きつけておくことが好ましい。
【0042】
ガラスフィルム(2)を巻芯(6)に巻き始める際、巻き始めのガラスフィルム(2)端部を巻芯(6)に沿わせにくく、無理に沿わせるとガラスフィルム(2)端部の巻き始め部分に不当な応力がかかり、破損する場合がある。従って、巻芯(6)には、図3に示す通り、ガラスフィルム(2)の端部を保持する保持溝(68)が設けられていることが好ましい。この場合、図3(a)に示す通り、保持溝(68)にガラスフィルム(2)の端部を、梱包緩衝シート(3)を折り返して覆った状態で同時に差し込んだ後、ガラスフィルム(2)の巻き取りを開始する以外に、図3(b)に示す通り、保持溝(68)が緩衝材(69)で形成されている場合は、ガラスフィルム(2)のみを差し込んで巻き取りを開始してもよい。
【0043】
本発明に係るガラスロール(1)は、巻芯(6)によって巻き取られた後に、巻芯(6)が取り除かれていることがより好ましい。すなわち、ガラスフィルム(2)を巻き取る際に一旦巻芯(6)に固定してより強固に巻き取られたガラスロール(1)とした後、巻芯(6)を取り除くことによりガラスロール(1)の軽量化を図ることができ、より輸送に適したガラスロール(1)とすることができるからである。
【0044】
巻芯(6)を取り除く場合、図4に示す通り、巻芯(6)が内円筒(65)と外円筒(66)の同心二重円状のスリーブからなり、内円筒(65)と外円筒(66)の間に弾性部材(67)が介在しているものを使用することが好ましい。外円筒(66)を中心方向へと押圧することで弾性部材(67)が収縮することにより、外円筒(66)が縮径するため、ガラスロール(1)から巻芯(6)を容易に取り外すことが可能となるからである。図4では、外円筒(66)を伸縮させる部材として弾性部材(67)を使用しているが、内円筒(65)と外円筒(66)との間の空間を密閉し、内部空間の流体圧力を変化させることによって、外円筒(66)を伸縮させる構成を採用することも可能である。
【0045】
ガラスフィルム(2)を巻き取り、ガラスロール(1)とした時のガラスフィルム(2)の表面に生じる引っ張り応力は、下記数1で示される式で決定される。
【0046】
【数1】

【0047】
尚、数1中、σはガラスフィルム外表面の引っ張り応力値を示し、Rはガラスロール内径の半径(巻芯の外径の半径)を示し、Tはガラスフィルムの厚みを示し、Eはガラスフィルムのヤング率を示す。
【0048】
従って、ガラスロール(1)内径の半径R(巻芯6の半径)は、下記数2で示される式で決定される。
【0049】
【数2】

【0050】
尚、数2中、σはガラスフィルム外表面の引っ張り応力値を示し、Rはガラスロール内径の半径(巻芯の外径の半径)を示し、Tはガラスフィルムの厚みを示し、Eはガラスフィルムのヤング率を示す。
【0051】
上述した数2で決定される半径の値以上にガラスロール(1)内径の半径Rを設定することによって、ガラスフィルム(2)を巻き取る際の巻き取り半径をより適切に選択することができ、巻き取り半径が小さすぎることによってガラスフィルム(2)に不当な引っ張り応力がかかるのを防止することができるため、ガラスフィルム(2)が破損するのをより確実に防止することができる。なお、巻芯(6)を使用する場合は、巻芯(6)の外径の半径を上述した数2で求められた値以上に設定すればよい。例えば、厚み300μmのガラスフィルムを巻き取った際、ガラス基板表面に生じる引っ張り応力を約27MPaとすると、直径1mの巻芯に巻き取ることができる。
【0052】
本発明に係るガラスロール(1)は、図5に示す製造装置を使用して製造される。図2に示す装置を使用し、〔0035〕に記載されている方法で成形されたガラスフィルム(2)(例えば日本電気硝子株式会社製OA−10G:厚み50μm)は、冷却ローラ(5)に接触したローラ接触部を除去するために、ガラスリボン(G)の板幅方向両端部から所定の幅でローラ接触部切断カッター(7)にて連続してスクライブが入れられ、ローラ接触部が除去される。その後、上方に存在する梱包緩衝シートのロール(31)から梱包緩衝シート(3)を引き出し、巻芯(6)に1周以上巻きつけた後、ガラスフィルム(2)の上に梱包緩衝シート(3)を重ね、巻芯(6)の表面に沿わせるように、ガラスフィルム(2)と梱包緩衝シート(3)をロール状に巻き取る。このようにして、所定のロール外径までガラスフィルム(2)を巻き取った後、幅方向切断カッター(図示省略)を使用することによってガラスフィルム(2)の幅方向にスクライブを入れた後ガラスフィルム(2)のみを切断し、最後まで巻き取った後、そのまま梱包緩衝シート(3)をさらに1周以上巻き取り、梱包緩衝シート(3)を切断することによって、本発明に係るガラスロール(1)の製造が完了する。
【0053】
尚、ガラスフィルム(2)は、その薄さから可撓性に富むため、通常の方法では幅方向に折り割りをすることが難しく、図6に示す方法にて、幅方向の折り割りを行うことが好ましい。ガラスフィルム(2)は、幅方向切断カッター(74)により幅方向へスクライブライン(75)が形成された後、そのまま搬送され、図6(a)に示す通り、切断前ローラ(71)をスクライブライン(75)が通過する。その後、図6(b)の通り、切断後ローラ(73)の回転速度とガラスロール(1)の巻取り速度を切断前ローラ(71)の回転速度よりも落とし、且つ、切断ローラ(72)を搬送ラインから図示しない駆動手段によって上昇させることによって、ガラスフィルム(2)をへの字状に撓ませ、スクライブライン(75)が切断ローラ(72)真上のへの字上の頂点に来たときに、その応力集中によって折り割りを行う。その後、切断ローラ(72)を下降させ、図6(c)に示す通り、切断後端部が切断後ローラ(73)を通過した後に、ガラスロール(1)の巻き取り速度を上げ、巻き取りを完了させると同時にガラスロール(1)と巻芯(6)の交換を行い、その後連続して処理を行う。
【0054】
上記の説明は、ローラ接触部切断カッター(7)として、ダイヤモンドカッターを使用した実施形態について説明したが、レーザーカッターを使用すると、スクライブ形成時においてガラス粉が発生するのを低減させることができる。さらに、切断端面に微小傷が生じるのを防止することができるため、引っ張り応力による耐性を上昇させることができる。例えば、ダイヤモンドカッターを使用した場合、上述した数2におけるσの値が30〜60MPaを基準としてガラスロール(1)の内径(S)(巻芯の直径)の値を求めるが、レーザースクライブ等を使用した場合、もしくはスクライブラインの形成後に折り割りを行ったとしても、ファイアポリッシュ、ケミカルポリッシュを行うなどにより特に際立った傷等がガラスフィルム(2)の端面に存在しない場合は、σを220MPaとしてガラスロール(1)の内径(S)(巻芯の直径)の値を設定しても、問題なくガラスロール(1)を作製することができる。ただし、溶融ガラスからガラスフィルム(2)に成形される際には、その端面には形状による引っ張り応力に冷却時の歪みによる引っ張り応力が加算されていることを考慮すると、上述したσの値は、30MPaまでとすることが安全である。
【0055】
このときガラスフィルム(2)の比ヤング率は29以上、40以下であることが好ましく、さらには29以上、35以下であるとより好ましい。比ヤング率とは、ヤング率を比重で除したものであり、自重での撓み量の尺度となる。ガラスフィルム(2)はロール・ツー・ロール方式の連続処理を施されて、最終段階で所定の寸法に切断され使用される。このとき切断された板ガラスは薄いために可撓性が高いので、比ヤング率が29未満であると切断後の工程において必要以上に撓んでしまい、工程でのトラブルを誘引する可能性があり、所定の比ヤング率を有することが求められる。一方、ガラスフィルムの比ヤング率が40を超えると、ガラスフィルム(2)が撓み難くなるためにガラスロール(1)の形成が困難となる。
【0056】
また、上述では梱包緩衝シート(3)のロール(31)をガラスフィルム(2)の上方に配置し、下方へと梱包緩衝シート(3)を引っ張り出す形態について説明を行っているが、ロール(31)をガラスフィルム(2)の下方に配置し、上方へと梱包緩衝シート(3)を引っ張り出す形態でもよい。この形態の場合、梱包緩衝シート(3)の上面にガラスフィルム(2)を載置して、ガラスフィルム(2)が内側となるようにガラスロール(1)が作成される。また、図5では、水平方向に搬送されているガラスフィルム(2)の巻き取りを行っている形態について説明しているが、鉛直方向に搬送されているガラスフィルム(2)を巻き取る形態でもよい。
【0057】
尚、図5では、成形から巻き取りまで連続して行う長尺物の巻き取りの形態について説明を行ったが、短尺物の巻き取りを行う場合は、先に所定長毎にガラスフィルム(2)の幅方向にスクライブを形成した後切断を行うことにより、バッチ処理での巻き取り形態としてもよい。また、複数の短尺物をひとつのガラスロールに巻き取る形態としてもよい。
【0058】
図7は、本発明に係るガラスロールに外装体を設けた斜視図である。図8は、本発明に係るガラスロールの巻芯に支持棒を設けた斜視図である。図9は、本発明に係るガラスロールの巻芯にフランジを設けた斜視図である。図10は、本発明に係るガラスロールを縦方向に載置する方法を示す説明図である。
【0059】
液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ等のディスプレイ用ガラス基板は、その用途から塵や埃等の付着のない清浄なガラスが求められる。従って、図7に示す通り、円筒型の外装体(8)を設け、内部のガスを清浄なものと置換することによって、清浄な状態を維持することができる。また、クリーンルーム内にて筒体に平板上の蓋体をかしめ締結し、缶詰状に封止することもできる。さらには、ガラスロール(1)をクリーンルーム内にてシュリンクフィルムで包装することで、清浄な状態を維持することもできる。
【0060】
本発明に係るガラスロール(1)を横方向に載置すると、特に長尺物の場合は重量が大きいため、その自重で載置面側から破損する。従って、ガラスロール(1)に巻き取られたガラスフィルム(2)が直接載置面と接触しないようにするため、図8のように巻芯(6)に軸(61)を設け、軸受(62)を有する台座(63)に配置することが好ましい。さらにガラスロール(1)を台座(63)に配置した後、全体を図示しない梱包箱で覆うことが好ましい。梱包箱内部をクリーンエアで置換することによって、清浄な状態を維持することができるからである。ガラスロール(1)単体毎に梱包箱を有する形態でも良いし、複数のガラスロール(1)を1つの梱包箱に同時に梱包する形態でもよい。加えて、梱包箱内に台座(63)を固定し、ガラスロール(1)の軸(61)をクレーン等で吊り下げることによって、梱包箱から出し入れを行う形態にすることにより、輸送の際に台座(63)が梱包箱内に強固に固定されることから、安全性に優れる。
【0061】
図9のように巻芯(6)の両端部にフランジ(64)を設け、ガラスフィルム(2)が直接載置面と接触しないようにすることが好ましい。ガラスロール(1)に巻き取られたガラスフィルム(2)が直接載置面と接触しないようにするためである。図9のフランジの形状は円形であるが、多角形状とすると床面に載置した場合に、ガラスロール(1)が転がるのを防止することができる。フランジ(64)は巻芯(6)に着脱可能としてもよい。この場合、巻き取り、巻き戻しの際には巻芯(6)のみとし、輸送や保管の際にはガラスフィルム(2)を保護するためフランジ(64)を取り付ける。
【0062】
輸送等の際にガラスフィルム(3)が巻芯(6)上をずれた場合に、ガラスフィルム(2)の端面とフランジが接触して割れる可能性がある。従って、このフランジ(64)を有する形態の場合、梱包緩衝シート(3)の幅がガラスフィルム(2)の幅よりも広いことが好ましい。梱包緩衝シート(3)の幅が広いと、ガラスフィルム(2)が巻芯(6)上をずれたとしても、端面がフランジ(64)に直接接触することがなく、ガラスフィルム(2)が破損するのを防止することが可能となるからである。尚、フランジ(64)内面についても、緩衝作用のある部材で保護されていることが好ましい。
【0063】
上述の通り、本発明に係るガラスロール(1)を横方向に載置すると、その自重で破損する。従って、ガラスロール(1)に巻き取られたガラスフィルム(2)が直接載置面と接触しないようにするため、図10に示す梱包装置(9)を利用して、ガラスロール(1)を縦方向に載置するのが好ましい。梱包装置(9)は土台部(91)と土台部(91)に立設する柱状部(92)とからなっている。図10に示す通り、柱状部(92)がガラスロール(1)の巻芯(6)内へ挿入するように、ガラスロール(1)を土台部(91)上に縦方向に載置する。これにより、輸送の際にガラスロール(1)が揺れたとしても、ガラスロール(1)は柱状部(92)によって固定されるため、ガラスロール同士が衝突することに起因するガラスフィルム(2)の破損を防止することができる。柱状部(92)は土台部(91)から着脱可能であることが好ましい。着脱可能とすることにより、ガラスロール(1)の積み込みや積み下ろしを容易にすることが可能となる。柱状部(92)は、ガラスロール(1)を載置した場合に、ガラスロール(1)同士が衝突しない程度の間隔で立設される。輸送中に振動するのを防止するために、ガラスロール(1)間に緩衝材を充填してもよい。土台部(92)には、フォークリフト用の孔が設けられることが好ましい。また、図示しない箱体を設けることにより、より厳重に梱包することが可能となる。
【0064】
図11は、本発明に係るガラスロールの処理方法を示した図である。図12は、本発明に係るガラスロールの他の処理方法について示した図である。図13は、表面にエンボス加工を施した梱包緩衝シートの図である。
【0065】
ガラス基板の洗浄や乾燥等の処理を行う場合に、従来の矩形状のガラス基板では、1枚1枚個別に搬送することしかできなかったが、本発明に係るガラスロール(1)は、ロール・ツー・ロール方式での連続処理を行うことができる。例えば、図11に示す方法により洗浄工程(110)、乾燥工程(111)、除電工程(112)をロール・ツー・ロール方式により連続して処理を行うことができる。ガラスフィルム(2)は可撓性を有するため、洗浄工程(110)において、洗浄槽に浸漬させることも可能である。本発明に係るガラスロール(1)をロール・ツー・ロール方式の連続処理を行う場合、図12に示す通り、ガラスロール(1)を立てた状態で行うことが好ましい。ガラスフィルム(2)は合成樹脂フィルムと比較して、剛性が高いため、シートを立てた状態でロール・ツー・ロール方式を行うことができる。立てた状態で行うと、洗浄工程終了後に水切れがよく、また、搬送ローラ(113)とガラスフィルム(2)の表面とが接触しないため、傷の発生をより確実に防止することができる。尚、図12の処理方法において、ガラスフィルム(2)がばたつく場合は、ガラスフィルム(2)の上方を適宜図示しない搬送ローラを設けて支持するようにしてもよい。
【0066】
このとき洗浄後の乾燥が不十分なガラスロール(1)を、水分を極端に嫌う工程で使用する場合、ガラス表面に吸着した水分を使用前に除去する必要があるため、当該工程にガラスロール(1)を投入する前にロール状態で十分に乾燥する必要がある。この場合、図13に示す通り、エンボス加工を施す等により表面に凹凸が形成された梱包緩衝シート(3)を使用することが好ましい。梱包緩衝シート(3)の全面がガラスフィルム(2)と接触しないため通気性に優れ、より乾燥させ易くすることができるからである。また、巻芯(6)についても、孔やスリット、メッシュを設けることによって、通気性に優れる構造とすることが好ましい。加えて、巻芯(6)の中空部にヒータを配置し、巻芯(6)内部から加熱することによって乾燥させることが好ましい。乾燥後は、ガラスロール1を例えば図7に示す外装体内に密閉し、内部に乾燥剤等を投入することにより、乾燥状態を維持することができる。また、ガラスロール(1)の端面に、シート状乾燥剤(例えばシリカゲル含有シート等)を設け、防湿性フィルム(金属膜蒸着フィルム等)で覆うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイや太陽電池等のデバイスに使用されるガラス基板、及び有機EL照明のカバーガラスに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ガラスロール
2 ガラスフィルム
3 梱包緩衝シート
4 成形体
6 巻芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスフィルムが梱包緩衝シートに重ねて巻き取られていることを特徴とするガラスロール。
【請求項2】
前記ガラスフィルムの厚みは、1μm〜500μmであることを特徴とする請求項1に記載のガラスロール。
【請求項3】
前記ガラスフィルムがオーバーフローダウンドロー法によって成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスロール。
【請求項4】
巻芯によって巻き取られていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラスロール。
【請求項5】
前記巻芯が取り除かれていることを特徴とする請求項4に記載のガラスロール。
【請求項6】
成形されたガラスフィルムを搬送しつつ、梱包緩衝シートのロールから前記梱包緩衝シートを引き出し、前記ガラスフィルムに梱包緩衝シートを重ねて巻き取ることを特徴とするガラスロールの製造方法。
【請求項7】
前記ガラスフィルムがオーバーフローダウンドロー法によって成形されていることを特徴とする請求項6に記載のガラスロールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−132532(P2010−132532A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217132(P2009−217132)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】