説明

ガラスロール及びその製造方法

【課題】
厚み0.5〜300μmの長尺なガラスフィルムを巻き取ってガラスロールを作製した際に、ガラスロールの内層部に位置するガラスフィルムの破損を抑制すること。
【解決手段】
厚みが0.5〜300μmであり、密度が2.45g/cm未満のガラスフィルム10をロール状に巻き取ることによって、ガラスロール15を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイや、太陽電池、リチウムイオン電池、デジタルサイネージ、タッチパネル、電子ペーパー等のデバイスのガラス基板、及び有機EL照明等のデバイスのカバーガラスや医薬品パッケージ、ガラス−樹脂積層体等に使用されるガラスフィルムを、巻き取ったガラスロールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省スペース化の観点から、CRT型ディスプレイに替わり、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等のフラットパネルディスプレイが普及してきている。これらのフラットパネルディスプレイにおいては、更なる薄型化が要請されている。特に有機ELディスプレイには、折りたたみや巻き取ることによって持ち運びを容易にすると共に、平面だけではなく曲面にも使用可能とすることが求められている。また平面だけではなく、曲面にも使用可能とすることが求められているのはディスプレイに限られるものではなく、例えば自動車の車体表面や建築物の屋根、柱や外壁など、曲面を有する物体の表面に太陽電池を形成したり、有機EL照明を形成することが望まれている。従ってフラットパネルディスプレイを始めとする各種ガラス板には、曲面にも対応可能な高い可撓性を満足する更なる薄肉化が要求されており、例えば特許文献1、2に開示されているように厚み0.4mm未満の薄板ガラスが開発されるに至っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−335928号公報
【特許文献2】特表2002−544104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでフラットパネルディスプレイの可撓性を確保するという観点からは、樹脂フィルムをガラス板の代替品として使用することも考えられる。しかしながら、樹脂フィルムは、ガラス板に比べて気体のバリア性(ガスバリア性)に劣るという問題がある。例えば有機ELディスプレイの場合は、使用される発光体が酸素や水蒸気等の気体との接触により劣化を来すため、ガスバリア性の低い樹脂フィルムをガラス板の代替品として使用することはできない。従ってガスバリア性確保の観点からも、ガラス板の薄肉化がより一層重要性を増しているのが実情である。
【0005】
またガラス板の薄肉化を図ると、これをロール状に巻き取ることが可能となり、省スペース化、梱包時の取り扱い性等の観点から好ましい梱包形態であると考えられる。
【0006】
しかしながら、例えば図2に示すように、ガラス板の厚みを200μm以下のフィルム状になるまで薄肉化し、所謂ガラスフィルム10の状態とし、それを、支持棒11を設けた巻芯12に巻き取ることによりガラスロール15を製作すると共に、床面等の載置面上に置かれた台座14の軸保持部材13に、支持棒11を保持させることにより、ガラスロール15を載置面から離反させた状態に維持すると、ガラスロール15の内層部のガラスフィルムが破損することがあった。
【0007】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、厚み0.5〜300μmのガラスフィルムを巻き取ったガラスロールの内層部に位置するガラスフィルムの破損を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記目的を達成すべき鋭意検討を行った結果、図2の梱包形態において、ガラスフィルム10の一部が破損する原因は、巻芯12に巻き取られるガラスフィルム10が長尺になると、ガラスロール15の重量が大きくなり、その内側上方(巻芯12の上部付近)に位置するガラスフィルム10に大きな荷重がかかることによって破損することを見いだし、本発明を提案するに至った。

【0009】
本発明の請求項1に係るガラスロールは、厚みが0.5〜300μmであり、密度が2.45g/cm未満のガラスフィルムをロール状に巻き取ることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項2に係るガラスロールは、請求項1に記載のガラスロールにおいて、ガラスフィルムの巻き取り長さが、50m以上であることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項3に係るガラスロールは、請求項1又は2に記載のガラスロールにおいて、ガラスフィルムの両表面が、未研磨面であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項4に係るガラスロールは、請求項1〜3のいずれかに記載のガラスロールにおいて、ガラスフィルムが、質量%で、SiO 58〜70%、Al 12〜22%、B 3〜17%、MgO+CaO+SrO+BaO 5〜12%の組成を含有するガラスから作製されてなることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項5に係るガラスロールは、請求項1〜4のいずれかに記載のガラスロールにおいて、ガラスフィルムが巻芯に巻き取られてなることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項6に係るガラスロール梱包体は、請求項1〜5のいずれかに記載のガラスロールが、その下方の載置面と接触しないように保持されてなることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の請求項7に係るガラスロール梱包体は、請求項6に記載のガラスロール梱包体において、ガラスロールの中心軸に支持棒を設け、載置面上に置かれた台座の軸保持部材に、支持棒を保持させたことを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項8に係るガラスロール梱包体は、請求項6に記載のガラスロール梱包体において、ガラスロールの中心軸に支持棒を設け、この支持棒を吊り下げ支持して前記載置面の上方に保持したことを特徴とするものである。
【0017】
本発明の請求項9に係るガラスロール梱包体は、請求項6に記載のガラスロール梱包体において、ガラスフィルムが巻芯に巻き取られ、巻芯の両端部にフランジが設けられ、
フランジの外周面が載置面に当接していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1に係るガラスロールによれば、ガラスフィルムの厚みが0.5〜300μmであるため、容易にロール状に巻き取ることができる。またガラスフィルムの密度が2.45g/cm未満であり、非常に軽量であるため、例えば図2に示すような梱包形態で、長尺のガラスフィルム10を巻芯12に巻き取り、支持棒11を介して軸受13を有する台座14にガラスロール15を配置した場合でも、ガラスロール15の内側上方(巻芯の上部付近)に位置するガラスフィルム10にかかる荷重が軽減される。そのためガラスロール15の内層部のガラスフィルム10の破損を効果的に抑制することが可能となる。
【0019】
本発明の請求項2に係るガラスロールによれば、ガラスフィルムの巻き取り長さが、50m以上であるため、より長尺なガラスフィルムをロール状に何重にも巻き取ったとしても、ガラスフィルムの密度が2.45g/cm未満であるため、ガラスロールの重量を軽量にすることができ、ガラスロールの内層部のガラスフィルムの破損を効果的に抑制することが可能となる。また、50m以上の長尺なガラスフィルムをロール状に巻き取っていることから、ロールツーロールの方式で表面加工することが可能となり、フラットパネルディスプレイ、太陽電池、有機EL照明などの基板を効率良く製造することができる。ガラスフィルムの巻き取り長さが長くなるほど、ロールツーロール方式に適するため、ガラスロール内層部のガラスフィルムの破損が起こらないように配慮しながら、100m以上、200m以上、500m以上、さらには1000m以上とすることが好ましい。
【0020】
本発明の請求項3に係るガラスロールによれば、ガラスフィルムの両表面が、未研磨面であるため、表面平滑性に優れたガラスフィルムが得られる。尚、ガラスフィルムの表面をAFM(原子間力顕微鏡)で観察した場合に、研磨面については無数の微細な傷状の研磨スジを確認することができる。一方、未研磨面については、研磨面に形成されているような無数の微細な傷状の研磨スジを確認することができない。
【0021】
本発明の請求項4に係るガラスロールによれば、ガラスフィルムが、質量%で、SiO 58〜70%、Al 12〜22%、B 3〜17%、MgO+CaO+SrO+BaO 5〜12%の組成を含有するガラスから作製されてなるため、2.45g/cm未満の密度を達成しやすい。
【0022】
本発明の請求項5に係るガラスロールによれば、ガラスフィルムが巻芯に巻き取られてなるため、ガラスフィルムを巻き取る際に、巻芯にガラスフィルムを固定することができ、ガラスフィルムを強固に巻き取ることができる。
【0023】
本発明の請求項6に係るガラスロール梱包体によれば、請求項1〜6のいずれかに記載のガラスロールが、その下方の載置面と接触しないように保持されてなるため、ガラスロールが載置面と接触することによる破損を防止することができる。尚、ここで載置面とは、ガラスロールの下方の床面や梱包箱の底面等を意味する。
【0024】
本発明の請求項7に係るガラスロール梱包体によれば、ガラスロールの中心軸に支持棒を設けると共に、この支持棒を、載置面上に置かれた台座の軸保持部材に保持させてなるため、ガラスロールが載置面と接触することによる破損を確実に防止することができる。また、ガラスフィルムの密度が2.45g/cm未満であるため、ガラスロールの総重量を軽減することができ、軸保持部材にかかる荷重を低減させることができる。
【0025】
本発明の請求項8に係るガラスロール梱包体によれば、ガラスロールの中心軸に支持棒を設けると共に、この支持棒を、吊り下げ支持して載置面の上方に保持してなるため、ガラスロールが載置面と接触することによる破損を確実に防止することができる。また、ガラスフィルムの密度が2.45g/cm未満であるため、ガラスロールの総重量を軽減することができ、容易に吊り下げを行うことができる。
【0026】
本発明の請求項9に係るガラスロール梱包体によれば、ガラスフィルムが巻芯に巻き取られ、巻芯の両端部にフランジを設け、フランジの外周面が載置面に当接しているため、ガラスロールが載置面と接触することによる破損を確実に防止することができる。また、ガラスフィルムの密度が2.45g/cm未満であるため、ロール体の総重量を軽減することができ、ガラスロールを載置面に載置したときにフランジにかかる荷重を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るガラスロールの製造方法を示す説明図である。
【図2】ガラスロールの中心軸に支持棒を取り付け、台座の軸保持部材に支持棒を保持させた状態を示す斜視図である。
【図3】ガラスロールの巻芯にフランジを設けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るガラスロールの好適な実施形態について説明する。
【0029】
本発明で使用するガラスフィルムの厚みは0.5〜300μmである。このような厚みのガラスフィルムは、ダウンドロー法によりガラスを下方に引き出してフィルム状に連続的に成形することによって得ることができる。ガラスフィルムの厚みが0.5μmより小さくなると、破損しやすくなり、300μmより大きくなると、可撓性が不十分となり、ロール状に巻き取るのが困難となる。ガラスフィルムの厚みは、5〜200μm、5〜100μm、さらには5〜50μmが好ましい。
【0030】
ガラスフィルムの密度は、2.45g/cm未満である。そのため、軽量化を図ることができ、例えば長さ50m以上のガラスフィルムを巻き取り、ガラスロールの中心軸に支持棒を取り付け、ガラスロールの外表面が載置面と接触しない状態となるように保持した場合でも、ガラスロールの内側上方に位置するガラスフィルムにかかる荷重が軽減される。そのためガラスフィルムの破損を抑制することが可能となる。ガラスフィルムの密度は、その長さが長くなるほど、低くすることが望ましい。例えばガラスフィルムの巻き取り長さが100m以上の場合は、2.42g/cm未満、巻き取り長さが200m以上の場合は、2.40g/cm未満にすることが望ましい。
【0031】
ガラスフィルムの板幅は、50mm以上であることが好ましい。これにより幅広なガラスフィルムをロール状に巻き取ったとしても、ガラスフィルムの密度が2.45g/cm未満であるため、ガラスロールの総重量を軽減することができる。有機ELディスプレイでは、1枚のガラス基板の表面に複数のTFTを形成した後、各パネル毎に切り出す、所謂多面取りが行われるため、ガラスフィルムの板幅が大きいほど、パネル1枚当たりのコストを低減することが可能となる。よってガラスフィルムの板幅は、100mm以上、200mm以上、300mm以上、500mm以上、600mm以上、800mm以上、さらには1000mm以上が好ましい。尚、ガラスフィルムの板幅は、例えばオーバーフローダウンドロー法の場合、ガラスを板状に成形するための成形体の大きさ、形状、エッジローラの位置等によって調整することができる。尚、エッジローラとは、成形体の最も近くに設置されるローラのことであり、成形体から流下したガラスリボンの両端部を把持し、ガラスリボンを冷却しながら幅方向(横方向)に張力を付与する機能を有している。
【0032】
ガラスフィルムの成形方法としては、ガラスの薄肉化が容易なダウンドロー法が好適である。ダウンドロー法としては、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法、リドロー法のいずれかが採用できる。特にオーバーフローダウンドロー法またはリドロー法を採用すると、未研磨で表面品位に優れたガラスフィルムが得られるため好ましい。オーバーフローダウンドロー法またはリドロー法によって、表面品位に優れたガラスフィルムを製造できる理由は、ガラスフィルムの表面となるべき面(両表面)が空気以外と接触せず、自由表面の状態で成形されるからである。ここでオーバーフローダウンドロー法とは、上部に樋部を形成した耐火物製の成形体に、溶融ガラスを供給し、溶融ガラスを成形体の樋部の両側から溢れさせ、成形体の下端部で合流させた後、下方に延伸成形することによって板状に成形する方法である。またリドロー法とは、板状のガラス母材を加熱し、下方に延伸成形することによって、ガラス母材より薄い板ガラスを成形(再成形)する方法である。
【0033】
ガラスフィルムをオーバーフローダウンドロー法で成形する場合には、成形時にガラス中に失透が発生しないように、ガラスの液相温度が1200℃以下、1150℃以下、1130℃以下であることが好ましい。また液相温度における粘度が、105.0dPa・s以上、105.2dPa・s以上であることが好ましい。
【0034】
またガラスフィルムの表面には、種々の機能膜が形成されるため、表面が平滑であることに加えて、機能膜の熱膨張係数と整合するような熱膨張係数を有することが好ましい。具体的には、30〜380℃の温度範囲において、25〜40×10−7/℃、特に30〜35×10−7/℃の熱膨張係数を有することが好ましい。
【0035】
またガラスフィルムは、フラットパネルディスプレイ等のデバイス作製時に高温に曝されるため、耐熱性が要求される。そのためガラスの耐熱性の指標である歪点が600℃以上、630℃以上、特に650℃以上であることが好ましい。
【0036】
またガラスフィルムは、質量%で、SiO 58〜70%、Al 12〜22%、B 3〜17%、MgO+CaO+SrO+BaO 5〜12%の組成を含有するガラスから作製すると、ガラスの溶融性、成形性、耐熱性等を向上すると共に、低密度化を図りやすいため好ましい。
【0037】
上記のとおりガラス成分の含有量を限定した理由は、次のとおりである。
【0038】
SiOの含有量が多くなるほど、ガラスの低密度化を図りやすくなるが、多すぎるとガラスの溶融性が低下するため好ましくない。よってSiOの含有量は、58〜70%、好ましくは60〜68%、より好ましくは60〜65%である。
【0039】
Alを所定量含有させると、ガラス組成のバランスを調整し、ガラスの失透を抑えやすくなる。よってAlの含有量は、12〜22%、好ましくは13〜20、より好ましくは15〜18である。
【0040】
は、融剤として働き、高温粘性を下げ、溶融性を向上する成分であるが、多すぎると耐熱性が低下しやすくなる。Bの含有量は、3〜17%、好ましくは3〜15%、より好ましくは5〜14%、さらに好ましくは7〜12%である。
【0041】
MgO、CaO、SrO及びBaOのアルカリ土類金属酸化物(RO)は、高温粘性を下げ、溶融性を向上する成分であるが、これらの含有量が多くなると密度が高くなる。よってMgO+CaO+SrO+BaO(MgO、CaO、SrO、BaOの合量)で5〜12%、好ましくは5〜11%に規制すべきである。
【0042】
尚、MgO、CaO、SrO及びBaOの各々の含有量が多すぎると、成形時にガラスが失透しやすくなる。よってMgOは、0〜8%、好ましくは0〜6%、より好ましくは0〜3%に規制すべきである。またCaOは、0〜10%、好ましくは1〜9%、より好ましくは3〜8%に規制すべきである。さらにSrOは、0〜10%、好ましくは0〜6%、より好ましくは0〜3%、さらに好ましくは0.5〜3%に規制すべきである。またBaOは、0〜10%、好ましくは0〜6%、より好ましくは0〜3%、さらに好ましくは0〜1%に規制すべきである。また特にBaOは、ガラスの密度を上昇させやすい成分であるため、実質的に含有しないことが好ましい。
【0043】
本発明においては、上記成分以外にも、ガラスの溶融性、成形性、密度等を考慮して、TiO、Nb、La、ZnO、ZrO、Gd、Yの1種または2種以上を10%まで含有させることができる。
【0044】
また清澄剤として、As、Sb、CeO、SnO、F、Cl、SOの1種または2種以上を0〜3%含有させることができる。但し、As、Sb、F、特にAsとSbは、環境的観点から、その使用をできるだけ控えるべきであり、それぞれ0.1%未満に規制することが望ましい。一方、SnO、Cl、SOを合量で0.001〜1%、好ましくは0.01〜0.5%含有させることが望ましい。SnOは、0〜1%、好ましくは0.01〜0.5%、特に0.05〜0.4%含有させることが望ましい。
【0045】
LiO、NaO、KOは、ガラスの粘性を低下したり、熱膨張係数を調整する成分であるが、多量に添加すると、液相粘度が低下して成形時に失透しやすくなる。よってLiO+NaO+KO(LiO、NaO、KOの合量)の含有量は、3%以下、1%以下、さらには実質的に含有しないことが望ましい。
【0046】
本発明においては、ガラスフィルムをロール状に巻き取る際、保護シートに重ねて巻き取っても良い。これによってガラスフィルムの両表面が保護シートによって保護されることになる。またガラスロールからガラスフィルムを引き出す際、容易に保護シートと分離することができるため、開梱時のガラスフィルムの破損も可及的に低減することができる。
【0047】
保護シートとしては、アイオノマーフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、エチレン−メタクリル酸共重合体フィルム、ポリアミド樹脂フィルム(ナイロンフィルム)、ポリイミド樹脂フィルム、セロファン等の樹脂製緩衝材、合紙、不織布等を使用することができるが、特にポリエチレン発泡樹脂製シートが、衝撃吸収性に優れ、引っ張り応力に対しても強いため最適である。
【0048】
本発明に係るガラスロールは、巻芯によって巻き取られることが好ましい。これによって、ガラスフィルムを巻き取る際に、巻芯にガラスフィルムを固定することができるため、ガラスフィルムを強固に巻き取ることができる。また、ガラスフィルムを巻き取ったガラスロールに外側から圧力が加わったとしても、巻芯の存在によってガラスフィルムが内側に曲がることがないため、ガラスフィルムに不当な引っ張り応力がかかるのを防止することができ、ガラスフィルムの破損をより確実に防止することができる。
【0049】
巻芯の長さは、ガラスフィルムの幅よりも長いことが好ましい。これによって、ガラスロールの側縁部よりも巻芯の両端を突出させることができ、打突等によるガラスフィルムの側縁部の微細な傷や欠けを防止しやすくなる。
【0050】
巻芯の材質としては、アルミニウム合金、ステンレス鋼、マンガン鋼、炭素鋼等の金属、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルテレフタレート樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、もしくはこれらの熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂に、ガラス繊維や炭素繊維等の強化繊維を混合した強化プラスチック、紙管等を使用することができる。特にアルミニウム合金や強化プラスチックは強度の面において優れているため、また紙は軽量化を図ることができるため好ましい。
【0051】
ガラスロールの中心軸に支持棒を設ける場合、巻芯と支持棒を一体物としても良いし、両者を別々に作製し、一体化させても良い。例えば巻芯の中心部に孔を設け、その孔に支持棒を挿入して一体化することが可能である。支持棒の材質としては、巻芯の材質と同様のものが使用可能である。
【0052】
本発明に係るガラスロールを横方向又は縦方向に載置すると、その自重により載置面側から破損しやすいため、載置面(床面や梱包箱の底面)と接触しない状態で保持されてなるガラスロール梱包体とすることが望ましい。例えば図2のように長尺のガラスフィルム10を巻き取り、その中心軸に支持棒11を取り付け、この支持棒11を、載置面上に置かれた台座14の軸保持部材13に保持させることが望ましい。図2の梱包形態以外にも、ガラスロールの中心軸に取り付けた支持棒を、梱包箱内で吊り下げ支持することによって、ガラスロールの外表面が載置面(梱包箱の底面)と接触しないようにしても良い。さらに図3に示すように、ガラスフィルム10を巻芯に巻き取り、巻芯の両端部にフランジ16を設け、このフランジ16の外周面を載置面(梱包箱の底面)と接触させることによって、ガラスロール15が載置面と接触しないようにしても良い。尚、図3のフランジ16の形状は、円形であるが、多角形状とすると載置面に載置した時に、ガラスロール15が転がるのを防止することができる。またフランジ16は、巻芯に着脱可能としても良い。また上記したようなガラスロール梱包体は、図示しない気密性を有する梱包箱に収納するようにすると、清浄な状態を維持できるため好ましい。
【実施例】
【0053】
図1は、本発明に係るガラスロールの製造方法を示す説明図である。図中、10はガラスフィルム、12は巻芯、15はガラスロール、18はエッジローラ、19は引っ張りローラ、20は支持ローラ、21は両端部分離装置、23は保護シートを示している。
【0054】
オーバーフローダウンドロー法に使用する成形体17の下端で溶融ガラスを合流させて板状に成形されたガラスフィルム10は、エッジローラ18によって幅方向に張力を付与されながら、複数の引っ張りローラ19により下方に延伸され、厳密に温度管理された成形ゾーンA、徐冷ゾーン(アニーラ)B、冷却ゾーンCを通過する。冷却ゾーンCを通過したガラスフィルム10は、下方から支持ローラ20によって支持されながら水平方向に湾曲された後、幅方向両端部(耳部)が、両端部分離装置21によって除去される。両端部分離装置21としては、板引き方向と平行にレーザーを照射し、ガラスフィルム10の両端部(耳部)を切り離すためのレーザー切断装置が適している。レーザー切断装置を使用することにより、ガラスフィルム10の切断面が滑らかになるため、ガラスフィルム10が割れ難くなる。
【0055】
幅方向両端部が分離されたガラスフィルム10の外周面には、保護シートロール22から引き出された保護シート23が重ねられ、巻芯12の表面に沿わせるようにしてガラスフィルム10と保護シート23をロール状に巻き取る。ガラスフィルム10が所定の長さに巻き取られると、幅方向切断機(図示省略)にて幅方向に切断され、ガラスロール15が作製される。また合わせて、保護シート23も、ガラスロール15の外表面を覆うような長さに切断される。
【0056】
表1は、ガラスフィルムの組成と特性を示すものであり、No.1〜7は、実施例、No.8は比較例である。
【0057】
【表1】

【0058】
表1の試料No.1〜8の各ガラスフィルムは、以下のようにして作製した。まず表中の組成となるようにガラス原料を調合し、ガラス溶融炉に供給して1500〜1600℃で溶融した。次いでオーバーフローダウンドロー法により板状に成形した後、下方に延伸してガラスフィルム10を作製した。成形に当たっては、最終的なフィルム幅が1500mm、フィルム厚が50μmとなるようにガラス供給量や板引き速度を調節した。
【0059】
次いで両端部分離装置21によりガラスフィルム10の両端部を切り離した後、巻芯12に巻き取り、50mの長さで巻き取った後で幅方向に切断した。
【0060】
こうして得られたガラスロール15を使用して、図2に示すようなガラスロール梱包体を作製し、数日間保管した後、ガラスフィルム10を引き出して破損の有無を調べたところ、密度が2.45g/cm未満のガラスフィルム10(試料No.1〜7)は、破損箇所が無かったが、密度が2.50g/cmのガラスフィルム10(試料No.8)は、ガラスロール15の内側上部(巻芯の上部付近)に位置する箇所が破損していた。
【0061】
尚、表中の密度は、周知のアルキメデス法により測定した。
【0062】
熱膨張係数は、ディラトメーターを用いて、30〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数を測定したものである。熱膨張係数の測定試料として、ガラス板を白金ボートに入れ、1400〜1450℃で30分間リメルトし、端面にR加工を施したφ5mm×20mmの円柱状のガラス試料を使用した。
【0063】
歪点は、ASTM C336−71の方法に基づいて測定した。この値が高いほど、ガラスの耐熱性が高いことを意味する。
【0064】
粘度104.0、103.0、102.5dPa・sにおける温度は、白金球引き上げ法により測定した。この温度が低いほど、ガラスの溶融性に優れていることになる。
【0065】
液相温度は、ガラスを粉砕し、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶の析出する温度を測定したものである。液相粘度は、液相温度におけるガラスの粘度を示す。液相温度が低く、液相粘度が高いほど、耐失透性に優れ、成形性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のガラスロールは、フラットパネルディスプレイ、太陽電池、有機EL照明などに使用されるガラスフィルムを巻き取るガラスロールとして好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0067】
10 ガラスフィルム
11 支持棒
12 巻芯
13 軸保持部材
14 台座
15 ガラスロール
16 フランジ
17 成形体
18 エッジローラ
19 引っ張りローラ
20 支持ローラ
21 両端部分離装置
22 保護シートロール
23 保護シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが0.5〜300μmであり、密度が2.45g/cm未満のガラスフィルムをロール状に巻き取ってなることを特徴とするガラスロール。
【請求項2】
ガラスフィルムの巻き取り長さが、50m以上であることを特徴とする請求項1に記載のガラスロール。
【請求項3】
ガラスフィルムの両表面が、未研磨面であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスロール。
【請求項4】
ガラスフィルムが、質量%で、SiO 58〜70%、Al 12〜22%、B 3〜17%、MgO+CaO+SrO+BaO 5〜12%の組成を含有するガラスから作製されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラスロール。
【請求項5】
ガラスフィルムが巻芯に巻き取られてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガラスロール。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のガラスロールが、その下方の載置面と接触しないように保持されてなることを特徴とするガラスロール梱包体。
【請求項7】
ガラスロールの中心軸に支持棒を設け、前記載置面上に置かれた台座の軸保持部材に、前記支持棒を保持させたことを特徴とする請求項6に記載のガラスロール梱包体。
【請求項8】
ガラスロールの中心軸に支持棒を設け、該支持棒を吊り下げ支持して前記載置面の上方に保持したことを特徴とする請求項6に記載のガラスロール梱包体。
【請求項9】
ガラスフィルムが巻芯に巻き取られ、巻芯の両端部にフランジが設けられ、フランジの外周面が前記載置面に当接していることを特徴とする請求項6に記載のガラスロール梱包体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−225429(P2011−225429A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63643(P2011−63643)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】