説明

ガラス基材用被覆組成物

本発明は、1)固体ポリマーを基準に1〜99重量%の、a)水に可溶性または分散性であり、および50〜100重量%の脂肪族ジイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分、1以上のポリエーテルポリオールを含有し、25〜350mgKOH/g固体のOH価を有するポリオール成分および塩形成性の少なくとも1つの基を含有するイソシアネート反応性成分の反応生成物であるポリオール成分、およびb)水に可溶性または分散性であり、ブロックトイソシアネート基を有し、および0〜30重量%のイソシアヌレート基含有量を有する1以上のポリイソシアネート、イソシアネート基について可逆性ブロック剤、非イオン親水性成分および1〜2個のヒドラジド基および74〜300の分子量を有する安定剤成分の反応生成物であるポリイソシアネート成分の反応生成物、および2)固体ポリマーを基準に1〜99重量%の、少なくとも1つのポリカーボネートポリオールから製造されたポリウレタン水性分散体を含み、成分1)および2)の全重量%は合計100%となる、ポリウレタン水性被覆組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン水性被覆組成物、特にガラス基材を被覆するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス表面は、装飾または安全性(耐衝撃性)のために被覆物が付与され得る。しかしながら、耐衝撃性効果に加え、他の重要な要件、例えば耐摩耗性、弾性、耐水性および耐アルカリ性等を満たす必要がある。
【0003】
ガラス瓶の場合には、透明被覆物は、詰め替え可能なガラス瓶のために、頻繁な洗浄操作により不透明となるべきではなく、その機械特性もまた、熱、アルカリ性洗浄液により低下すべきではない。被覆物は、充填操作および輸送の間に瓶への機械的損傷、例えばけば立ち等を最小化するのに役立つ強靱性を示す場合に有利である。
【0004】
単一成分として塗布され得る溶媒不含系は有利である。EP−A25992およびEP−A25994は、純粋メラミンにより溶媒を用いずに架橋されるポリエステル系NCOプレポリマーを含有する被覆組成物を記載する。しかしながら、180℃を越える焼付温度およびアルカリ性洗浄剤への低い耐性は不利である。
【0005】
EP−A519074は、トップコートが3つのメイン成分:ポリウレタン分散体、エポキシ水性樹脂およびメラミン/ホルムアルデヒド水性樹脂を実質的に含有する2つのコートに適用されるガラス水性被覆組成物を記載する。用いるポリウレタン分散体は、要求される最終特性が、他の2つの樹脂の実質的量の添加後にのみ達成される未開示組成の市販生成物である。これに対し、本願発明によるガラス被覆組成物は、ポリウレタン構造単位のみを必要とし、単一成分として塗布し得る。
【0006】
米国特許第4280944号は、ポリエーテル系ポリウレタン水性分散体を記載するが、該ポリエーテル系ポリウレタン水性分散体は、その中に含まれる遊離ヒドロキシル基およびブロックトイソシアネート基により、熱的に後硬化させることができる単一成分系を構成する。しかしながら、ガラスへの優れた接着性および向上したアルカリへの耐性もまた向上した架橋密度を要求するが、これらは、そこに記載の組成物を用いて困難を伴ってのみ達成することができる。
【0007】
比較的高い架橋密度は、OH官能性ポリウレタン分散体を水性ブロックトポリイソシアネート架橋性成分と組み合わせた場合に達成可能である。これらの系は、2つの成分を含むが、単一成分として塗布され得、および熱の作用下で架橋し得る。しかしながら、EP−A566953およびEP−A576952の実施例は、アルカリへの低い耐性を有するポリエステル系組成物のみを記載する。
【0008】
米国特許第5852106号は、ガラス瓶用の水性被覆組成物を記載する。このような系は、良好なアルカリ耐性を示す一方、従来、メラミンを上記組成物へ添加して幾つかの用途について強靱性および硬度を向上させる。しかしながら、メラミンの使用は、幾つかの望ましくない特性、例えば増大したヘイズおよび黄変性、低下したポットライフおよび貯蔵安定性および増加した脆弱性等をもたらし得る。さらに、メラミンは、上記系においてポリオールと反応し、処方剤は、メラミンを用いる場合、初期NCO:OH比について制限される(すなわち、過剰のOH基が存在するはずである)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第25992号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第25994号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第519074号明細書
【特許文献4】米国特許第4280944号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第566953号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第576952号明細書
【特許文献7】米国特許第5852106号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ガラス表面について適当であり、顕著な光学特性に加えて、良好な接着性、向上した耐摩耗性、弾性、強靱性、耐水性および耐アルカリ性、特に熱アルカリ性洗浄媒体への耐性を有する被覆組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、以下に、より詳細に記載される本発明による被覆組成物により達成される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、
1)固体ポリマーを基準に1〜99重量%の、
a)水に可溶性または分散性であり、および50〜100重量%の脂肪族ジイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分、1以上のポリエーテルポリオールを含有しおよび25〜350mgKOH/g固体のOH価を有するポリオール成分および塩形成の可能な少なくとも1つの基を含有するイソシアネート反応性成分の反応生成物であるポリオール成分、および
b)水に可溶性または分散性であり、ブロックトイソシアネート基を有し、および0〜30重量%のイソシアヌレート基含有量を有する1以上のポリイソシアネート、イソシアネート基について単官能性可逆性ブロック剤、非イオン親水性成分および1〜2個のヒドラジド基および74〜300の分子量を有する安定剤成分の反応生成物であるポリイソシアネート成分
の成分の反応生成物、および
2)固体ポリマーを基準に1〜99重量%の、少なくとも1つのポリカーボネートポリオールから製造されたポリウレタン水性分散体
を含み、成分1)および2)の全重量%は合計100%となる、ポリウレタン水性被覆組成物に関する。
【0013】
さらに、特に、本発明は、
1)a)水に可溶性または分散性であり、
A1)20〜60重量%の、100重量%までの脂肪族ジイソシアネート、好ましくは50〜100%の4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンおよび0〜50重量%の140〜1500g/モルの分子量を有する他の有機ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分、
B1)20〜60重量%の、1以上のポリエーテルポリオールを含有し、および25〜350mgKOH/g固体のOH価を有するポリオール成分、
C1)2〜12重量%の、必要に応じて少なくとも部分的に中和形態で存在し得る、少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有する1以上の化合物および塩形成可能な少なくとも1つの基を含有するアニオン性または潜在性アニオン性成分、
D1)0〜12重量%の、イソシアネート付加反応のために単官能性または二官能性であり、および少なくとも1つの側部または末端親水性ポリエーテル鎖を有する1以上の化合物を含有する非イオン性親水性成分、
E1)0〜15重量%の、2〜4個のヒドロキシル基および62〜250g/モルの分子量を有する1以上の多価アルコール、
F1)0〜15重量%の、2〜4個のアミノ基および60〜300g/モルの分子量を有する1以上の(環式)脂肪族ポリアミン、
G1)0〜30重量%の、合計2〜4個のヒドロキシル基およびアミノ基および61〜300g/モルの分子量を有する1以上の(環式)脂肪族ポリアミノ/ヒドロキシル化合物、および
H1)0〜15重量%の、イソシアネート付加反応のために単官能性または二官能性であり、1〜2個のヒドラジド基を有し、および74〜300g/モルの分子量を有する1以上の安定性成分
の反応生成物であるポリオール成分、ここで、A1)〜H1)の百分率は、合計100となり、および
b)水に可溶性または分散性であり、ブロックトイソシアネート基を有し、
A2)40〜80重量%の、0〜30重量%のイソシアヌレート基含有量(C3N3O3として計算、分子量=126)を有し、および140〜350g/モルの分子量を有する1以上のジイソシアネートから製造されるポリイソシアネートと、
B2)5〜30重量%の、イソシアネート付加反応のために単官能性であるイソシアネート基のための1以上の可逆性ブロック剤、
C2)0〜15重量%の、必要に応じて少なくとも部分的に中和形態で存在し得る、少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つの塩形成可能な基を有する1以上の化合物を含有するアニオン性または潜在的アニオン性成分、
D2)5〜30重量%の、イソシアネート付加反応のために単官能性または二官能性であり、少なくとも側部および末端親水性ポリエーテル鎖を有する1以上の化合物を含有する非イオン性親水性成分、
E2)0〜15重量%の、2〜4個のヒドロキシル基および62〜250g/モルの分子量を有する1以上の多価アルコール、
F2)0〜15重量%の、2〜4個のアミノ基を有し、および60〜300g/モルの分子量を有する1以上の(環式)脂肪族ポリアミン、および
G2)0.5〜15重量%の、イソシアネート付加反応のために単官能性または二官能性であり、および1〜2個のヒドラジド基および74〜300g/モルの分子量を有する1以上の安定性成分との
応生成物であるポリイソシアネート成分、ここで、A2)〜G2)の百分率は、合計100となり、但し、成分b)のブロックトイソシアネート基と成分a)のヒドロキシル基当量比は、少なくとも0.05:1となる、
の反応生成物、および
2)少なくとも1つのポリカーボネートポリオールから製造されるポリウレタン水性分散体
を含む、ポリウレタン水性被覆組成物に関する。
【0014】
好ましくは、上記水性被覆組成物は、成分a)およびb)の全重量を基準に成分a)5〜95重量%、好ましくは10〜90重量、より好ましくは15〜85重量%、成分b)5〜95重量%、好ましくは10〜90重量、より好ましくは15〜85重量%を含み、成分a)およびb)の合計は、100重量%となる。
【0015】
好ましくは、上記水性被覆組成物は、成分1)1〜99重量%、好ましくは10〜90重量、より好ましくは15〜85重量%、および成分2)1〜99重量%、好ましくは10〜90重量、より好ましくは15〜85重量%、さらに好ましくは20〜50重量%を含み、1)および2)の合計は、100重量%となる(成分1および2の固体ポリマーを基準)。
【0016】
好ましい実施態様では、上記水性被覆組成物は、成分a)およびb)の全重量を基準に、成分a)10〜90重量%および成分b)10〜90重量を含み、成分a)およびb)の合計は100重量%となり、成分1)および2)の固体ポリマーを基準に成分1)15〜85重量%および成分2)15〜85重量%を含み、1)および2)の合計は、100重量%となる。
【0017】
好ましい実施態様では、上記水性被覆組成物は、成分a)およびb)の全重量を基準に、成分1)成分a)15〜85重量%および成分b)15〜85重量を含み、成分a)およびb)の合計は100重量%となり、成分1)および2)の固体ポリマーを基準に成分1)50〜80重量%および成分2)20〜50重量%を含み、1)および2)の合計は、100重量%となる。
【0018】
バインダー成分a)は、成分A1)〜H1)の反応生成物であるポリヒドロキシル化合物を含む。このようなポリヒドロキシル成分は、ウレタンおよびエーテル基を含有し、水に可溶性または分散性であり、および、500〜100000、好ましくは1000〜10000g/モルの数平均分子量(ヒドロキシル基含有量およびヒドロキシル官能価から計算し得る)を有する。適当なポリヒドロキシ化合物としては、ポリウレタン被覆化学から既知で知られているポリヒドロキシ化合物が挙げられるが、このポリヒドロキシル化合物は、水中における溶解性または分散性を確保するために、十分な親水性基、特にエチレンオキシド単位を含有するポリエーテル鎖、および/またはカルボキシレート基を含有する。この目的のために十分に親水性ではないポリヒドロキシル化合物のブレンドを、外部乳化剤との混合物中で用いることも可能である。
【0019】
当業者に既知の他の水性ポリヒドロキシル分散体を、成分A1)〜H1)の反応生成物である分散体との混合物中で用い得る。
【0020】
出発成分A1)は、140〜1500g/モル、好ましくは168〜318g/モルの分子量を有する有機ポリイソシアネートから選択されるが、成分A1)の50〜100重量%、好ましくは75〜100重量%、より好ましくは100重量%(成分A1)を基準)は、脂肪族または脂環式ジイソシアネート、例えば4,4’−ジイソシアナトシクロヘキシルメタン(HMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1−メチル−2,4(2,6)−ジイソシアナトシクロヘキシルメタンまたは1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチル−シクロヘキサン(IPDI)およびこれらの混合物等であり、好ましくは4,4’−ジイソシアナトシクロヘキシルメタン(HMDI)である。脂肪族または脂環式ジイソシアネートの他に、成分A1)は、他のポリイソシアネート、例えば2,4−および/または2,6−ジイソシアナトトルエン(TDI)、1−メチル−2,4−および/または2,6−ジイソシアナトシクロヘキサンおよび4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−m−またはp−キシリレンジイソシアネート、およびトリフェニルメタン4,4’,4’’−トリイソシアネートならびにこれらの混合物を含み得る。また、好適であるのは、モノマートリイソシアネート、例えば4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネートである。
【0021】
また、ポリイソシアネート成分A1)は、HDI、IPDIおよび/またはHMDIに基づく既知のラッカーポリイソシアネートを含有し得るが、これは好ましくない。
【0022】
本発明によれば、ポリイソシアネート成分は、ポリイソシアネート付加物の形態であり得る。適当なポリイソシアネート付加物は、イソシアヌレート基、ウレットジオン基、ビウレット基、イミノオキサジアジンジオン基、カルボジイミド基および/またはオキサジアジントリオン基を含有するポリイソシアネート付加物である。ポリイソシアネート付加物は、2〜6、好ましくは2〜4の平均官能価、および5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%、より好ましくは15〜25重量%のNCO含有量を有し、次のものが挙げられる:
【0023】
1)DE−PS2616416、EP−OS3765、EP−OS10589、EP−OS47452、US−PS4288586およびUS−PS4324879に記載の通り製造し得るイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート。
【0024】
2)ジイソシアネートのイソシアネート基の一部を、適当な触媒、例えばトリアルキルホスフィン触媒の存在下でオリゴマー化することにより製造し得、および他の脂肪族および/または脂環式ポリイソシアネート、特に上記(1)に記載のイソシアヌレート基含有ポリイソシアネートとの混合物中で用い得るウレットジオンジイソシアネート。
【0025】
3)共反応体、例えば水、第三級アルコール、第一級および第二級モノアミン、および第一級および/または第二級ジアミン等を使用して、米国特許第3124605号、第3358010号、第3644490号、第3862973号、第3906126号、第3903127号、第4051165号、第4147714号または第4220749号に開示の方法により製造し得るビウレット基含有ポリイソシアネート。
【0026】
4)DE−A19611849に記載の特別なフッ素含有触媒の存在下で製造し得るイミノオキサジアジンジオン基および任意にイソシアヌレート基を含有するポリイソシアネート。
【0027】
5)ジ−またはポリイソシアネートを、DE−PS1092007、US−PS3152162およびDE−OS2504400、同2537685および同2552350に記載の既知のカルボジイミド化触媒の存在下でオリゴマー化することによって製造し得るカルボジイミド基含有ポリイソシアネート。
【0028】
6)オキサジアジントリオン基を含有するポリイソシアネート、例えば2モルのジイソシアネートおよび1モルの二酸化炭素の反応生成物。
【0029】
好ましいポリイソシアネート付加物は、イソシアヌレート基、ウレットジオン基、ビウレット基および/またはイミノオキサジアジンジオン基を含有するポリイソシアネート付加物、特にイソシアヌレート基および任意にウレットジオン基またはイミノオキサジアジンジオン基を含有するポリイソシアネートである。
【0030】
成分B1)は、300〜5000g/モル、好ましくは500〜3000g/モルの比較的高い分子量(ヒドロキシル基含有量およびヒドロキシル官能価から計算され得る)を有するポリヒドロキシルポリエーテルから選択され、これらは、ポリウレタン化学から既知である。その例としては、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシドまたはエピクロロヒドリンのポリマーまたはコポリマー、特にプロピレンオキシドおよび任意にエチレンオキシドのポリマーまたはコポリマーが挙げられ、これらは、二官能性スターター分子、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ビス−ヒドロキシメチルシクロヘキサン異性体、2,2−ビス−(4−ヒドロキシルフェニル)プロパンおよび2個のNH結合を含有するアミン等から製造される。エチレンオキシドを、必要に応じて用い得るが、得られるポリエーテルジオールは、多くとも10重量%のエチレンオキシド単位を含有する。用いるポリエーテルジオールは、好ましくはエチレンオキシドを用いずに得られるポリエーテルジオール、より好ましくはプロピレンオキシドおよび/またはテトラヒドロフランから得られるポリエーテルジオールである。
【0031】
また、これらの比較的高い高分子量二官能性化合物の他に、成分B1)は、より高官能性出発物質、例えばトリメチロールプロパン、グリセロールまたはエチレンジアミン等から得られる三官能性またはより高官能性ポリヒドロキシル化合物、好ましくはポリエーテルポリオールを含有し得る。
【0032】
好ましくはないが、上記ポリエーテルポリオールのヒドロキシル基を第一級アミノ基へ変換することにより得られるポリエーテルポリアミンを用いることも可能である。
【0033】
成分C1)は、アニオン性または潜在的アニオン性基を含有し、少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有する化合物から選択される。これらの化合物は、少なくとも1個の、好ましくは1個または2個のヒドロキシル基またはアミノ基、より好ましくは2個のヒドロキシル基を含有するカルボン酸である。適当な酸としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン−カルボン酸(例えばジメチロール酢酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸または2,2−ジメチロールペンタン酸等)、ジヒドロキシコハク酸、ヒドロキシピバリン酸およびこれらの酸の混合物が挙げられる。ジメチロールプロピオン酸および/またはヒドロキシピバリン酸は、成分C1)として好ましく用いる。好ましくはないが、US−P4108814(参照により本明細書に組み込む)に記載のエーテル基を必要に応じて含有し得るスルホネートジオールを、アニオン性構造成分C1)として用いることも可能である。
【0034】
遊離酸基、特にカルボキシル基は、潜在的アニオン性基であると見なされ、酸と塩基の中和により得られる塩の基(salt group)、特にカルボキシレート基は、アニオン性基であると見なされる。
【0035】
任意の化合物D1)は、1個または2個のイソシアネート反応性基、特にヒドロキシル基またはアミノ基を含有する非イオン性親水性化合物から選択される。これらの化合物中に存在するポリエーテル鎖の少なくとも80重量%は、エチレンオキシド単位である。プロピレンオキシド単位も存在し得る。適当な非イオン性親水性化合物として、350〜5000g/モルの数平均分子量(ヒドロキシル基含有量およびヒドロキシル官能価から計算され得る)を有する単官能性ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、例えばBP ChemicalsからのBreox 350、550および750等が挙げられる。また、好適であるのは、例えばDE−A2651506に記載の1個のイソシアネート反応性基およびエチレンオキシド単位を含有する親水性鎖を有する単官能性化合物である。
【0036】
また、側部エチレンオキシド単位を含有する親水性鎖も含有するジイソシアネートおよび/または2個のイソシアネート反応性基を含有する化合物、例えばDE−A2551094に記載の化合物は、成分D1)として用いるのに適している。
【0037】
任意の化合物E1)は、2〜4個のヒドロキシル基および62〜250g/モルの分子量を有する化合物から選択される。その例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール異性体およびペンタエリトリトールが挙げられる。
【0038】
任意の成分F1)は、2〜4個のアミノ基および60〜300の分子量を有する化合物から選択される。その例として、エチレンジアミン、1,2−および1,3−ジアミノプロパン、1,6−ジアミノヘキサン、1,3−ジアミノ−2,2−ジメチル−プロパン、イソホロンジアミン、1,3−および1,4−ジアミノ−ヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4−および/または2,6−ジアミノ−1−メチルシクロヘキサン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、1,4−ビス−(2−アミノプロパン−2−イル)シクロヘキサン、ヒドラジン、ヒドラジドならびにジアミンおよび/またはヒドラジンの混合物;より高官能性のポリアミン、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレン−テトラミン、ならびに脂肪族または脂環式ジアミンへのアクリロニトリルの水素化付加生成物等、好ましくはジアミンへのアクリロニトリル基への対応する付加化合物、例えばヘキサメチレンプロピレントリアミン、テトラメチレンプロピレントリアミン、イソホロンプロピレントリアミン、1,4−または1,3−シクロヘキサンプロピレントリアミン、およびこれらポリアミンの混合物等が挙げられる。
【0039】
任意の成分G1)は、61〜300g/モルの分子量を有し、および2〜4個のアミノ基およびヒドロキシル基を含む化合物、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびヒドロキシエチル−エチレンジアミンから選択される。
【0040】
任意の成分H1)は、74〜300の分子量を有する単官能性および/または二官能性カルボン酸ヒドラジド、例えばアジピン酸ヒドラジド、安息香酸ヒドラジド、p−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、異性体テレフタル酸ヒドラジド、N−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−N−アミノオキサミド(Luchem HA−R 100、Elf Atochem)、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t.−ブチルフェニル)プロピオン酸ヒドラジド、2−ヒドロキシ−3−t.−ブチル−5−メチルフェニル酢酸ヒドラジドまたはこれらの化合物の混合物から選択される。他の有効なヒドラジドは、EP−A654490およびEP−A682051に記載の環式カーボネートおよびヒドラジンから調製される付加生成物である。その例として、ヒドラジンの1モルおよびプロピレンカーボネートの1モルの付加生成物、およびヒドラジンの1モルおよびプロピレンカーボネートの2モルの付加生成物が挙げられる。好ましい安定剤は、アジピン酸ジヒドラジドおよびN−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−N−アミノオキサミドである。
【0041】
OH官能性ポリエーテルポリウレタンa)は、出発成分A1)〜H1)から1以上の段階において既知の方法により製造される。反応体の量は、成分B1)、C1)、D1)、E1)、F1)、G1)およびH1)のイソシアネート−反応性基と成分A1)のイソシアネート基の当量比が、0.8:1〜2:1、ある場合には0.95:1〜1.5:1、より好ましくは0.95:1〜1.2:1となるように選択する。
【0042】
成分C1)のカルボキシル基も、ポリウレタンの溶液または分散体を調製するために用いる水も、カルボキシル基を中和するために用いる中和剤も、当量比の計算に含まれない。
【0043】
成分E1)は、成分B1)の重量を基準に0〜75重量%、より好ましくは0〜70重量%の量で用いる。
【0044】
好ましくは、成分D1は、0〜30、好ましくは0〜20重量%のエチレンオキサイド単位が本発明により最終的に得られるポリウレタン中に存在する末端および/または側部に配置されたポリエーテル鎖内に組み込まれるような量で用いる。
【0045】
成分C1)の量および成分C1)に組み込まれるカルボキシル基の中和度は、最終的に得られるポリウレタン中に固体100gにつき0.1〜120、好ましくは1〜80ミリグラム当量のカルボキシル基が存在するように計算するが、エチレンオキシド単位およびカルボキシレート基の合計量は、水中でのポリウレタンの溶解性または分散性を確保するのに十分である。
【0046】
また、出発成分A1)〜H1)の種類および量比は、得られるポリウレタンが、樹脂固体を基準に最大15、好ましくは最大10重量%の未反応ヒドロキシル基を含むように計算する。
【0047】
出発成分A1)〜H1)は、1以上の段階において反応させ得る。また、イソシアネート基に対して不活性である溶媒は、反応生成物が該溶媒中での溶液の形態で得られるように用い得る。ここで、「溶液」とは、真溶液および油中水乳化剤をいずれも意味し、これは、例えば、いくらかの構造成分を水溶液の形態で用いる場合に起こり得る。適当な溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドンおよびこれらおよび/または他の溶媒の混合物が挙げられる。好ましくは、これらの溶媒は、出発成分A1)〜H1)から調製された反応生成物の少なくとも10重量%溶液を供給するのに十分な量で存在する。これらの溶媒は留去して溶媒を含まない分散体を形成し得る。
【0048】
OH官能性ポリエーテルポリウレタンa)は、触媒の不存在下または存在下で製造し得る。適当な触媒は既知であり、ポリウレタン化学において従来使用される触媒が挙げられる。その例としては、第三級アミン、例えばトリエチルアミン等、錫化合物、例えばオクタン酸スズ(II)、ジブチルスズ酸化物およびジブチルスズジラウレート等が挙げられる。
【0049】
本発明によるポリウレタンポリウレア分散液または溶液の適切な製造方法は既知であり、Houben−WeylにおけるD.Dieterich、Methoden der organischen Chemie、第4版、第E20巻、第1659頁、1987年に記載の方法、例えばプレポリマー法またはアセトン法が挙げられる。
【0050】
ヒドロキシル基は、NCOプレポリマーと過剰のE1)またはG1)とを反応させることにより導入し得る。該方法を溶媒中で行う場合には、これらの成分をプレポリマーへ添加し得る。溶媒不含溶融法では、多くとも少量の共溶媒を用い、該成分を、OH−官能性構造単位を用いる場合のみプレポリマーへ添加し得る。アミノ基を含有する成分を用いる場合、該成分は、発熱反応を制御するために、必要に応じて共溶媒の存在下、分散水または一部の分散水へ徐々に添加すべきである。
【0051】
カルボキシル基を少なくとも部分的に中和するために必要な塩基は、水の添加前、添加中または添加後に添加し得る。
【0052】
適当な塩基としては、アンモニア、N−メチルモルホリン、ジメチルイソプロパノールアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノールおよびこれらの混合物および/または他の中和剤が挙げられる。水酸化ナトリウム、水酸化リチウムおよび水酸化カリウムもまた、好ましくはないが中和剤として適当である。アンモニアおよびジメチルエタノールアミンは、好ましい中和剤である。
【0053】
用いる水の量は、得られる溶液または分散体が5〜90重量%、好ましくは10〜60重量%、好ましくは20〜45重量%の固形分を有するように選択する。いったん水を添加すると、いずれの共存溶媒も蒸留により任意に除去し得る。本発明によるポリウレタンは、水溶液または水性分散体の形態で最終的に得られる。水溶液または水性分散体のいずれを得るかは、親水性セグメントの濃度により主に決定される。
【0054】
本発明による方法では、多量のトリ−および多官能性構造成分、特に架橋性成分E1)、F1)および/またはG1)を、得られるポリウレタンは実質的に直鎖構造を有する代わりに高度に分枝するように用いることが可能である。水溶液および分散体a)は、耐凍結性、貯蔵安定性であり、および水で無限に希釈し得る。
【0055】
架橋性成分b)は、水に可溶性または分散性であるブロックトポリイソシアネートから選択され、5〜11重量%のブロックトイソシアネート基含有量(NCOとして計算、分子量=42)を有する。成分b)は、1つの出発ポリイソシアネートA2)から調製されたブロックトポリイソシアネートを含み得る。あるいは、成分b)は、成分A2)として適用であると記載したポリイソシアネートから調製されたポリイソシアネートの混合物を含み得る。
【0056】
出発成分A2)は、0〜30重量%、好ましくは2〜30重量%、より好ましくは少なくとも5重量%のイソシアネート基含有量を有する有機ポリイソシアネートから選択され、140〜350の分子量を有するジイソシアネートから調製される。用い得るジイソシアネートとしては、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(Desmodur W、Bayer AG)、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチル−シクロヘキサン(IPDI)、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)およびこれらのポリイソシアネートの混合物が挙げられる。ポリイソシアネート成分A2)は、ジイソシアネートから既知の方法、例えばLaas,H.J.等、J.prakt.Chem.第336巻、1994年およびEP−A649866に記載される方法を用いて製造される。
【0057】
脂肪族または脂環式ジイソシアネートの他に、成分A2)は、他のポリイソシアネート、例えば2,4−および/または2,6−ジイソシアナトトルエン(TDI)、1−メチル−2,4−および/または2,6−ジイソシアナトシクロヘキサンおよび4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトブタン、1,12−ジイソシアナトドデカン、2,3,3−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1、4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−m−またはp−キシリレンジイソシアネート、およびトリフェニルメタン4,4’,4’’−トリイソシアネートならびにこれらの混合物を含み得る。また、適当なのは、モノマートリイソシアネート、例えば4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネートである。また、ポリイソシアネート成分A2)は、HDI、IPDIおよび/またはHMDIに基づく既知のラッカーポリイソシアネートを含有し得るが、これはあまり好ましくない。
【0058】
オキシム、ラクタム、トリアゾール、ジエチルマロネートおよび/またはピラゾールおよびこれらの混合物は、単官能性ブロック剤B2)として好ましく用いる。当業者は、所望の特性を得るために、適切なブロック剤を選択して低温または高温および硬化サイクルにおいて硬化させることができる。適当なブロック剤は、Organic Coatings、第36巻、1999年、第148〜172頁、「Blocked isocyanates III Part A: Mechanism and Chemistry」、Douglas A.WicksおよびZeno W.Wicks Jr.,ProgressおよびOrganic Coatings、第41巻、2001年、第1〜83頁、「Blocked isocyanates III Part B: Uses and applications of blocked isocyanates」、Douglas A.WicksおよびZeno W.Wicks Jr.,Progressに開示される。
【0059】
成分C2)は、少なくとも1個のイソシアネート反応性基を有するアニオン性基または潜在的アニオン性基を含む化合物から選択される。これらの化合物は、少なくとも1個、好ましくは1個または2個のヒドロキシル基を含有するカルボン酸またはこれらのヒドロキシカルボン酸の塩である。適当な酸としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−アルカンカルボン酸(例えばジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール−プロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸または2,2−ジメチロールペンタン酸等)、ジヒドロキシコハク酸、ヒドロキシピバリン酸およびこれらの酸の混合物が挙げられる。ジメチロールプロピオン酸および/またはヒドロキシピバリン酸を成分C2)として好ましく用いる。
【0060】
遊離酸基、特にカルボキシル基を潜在的アニオン性基と見なし、一方で、酸と塩基との中和により得られる塩の基、特にカルボキシレート基をアニオン性基と見なす。
【0061】
任意成分D2)は、1個または2個のイソシアネート反応性基、特にヒドロキシル基またはアミノ基を含む、非イオン性親水性化合物から選択される。これらの化合物中に含まれるポリエーテル鎖の少なくとも80重量%、ある場合には100重量%がエチレンオキサイドユニットである。プロピレンオキサイドユニットも存在し得る。適当な非イオン性親水性化合物としては、350〜5000g/モル、好ましくは600〜900g/モルの数平均分子量を有する単官能性ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、例えばBP ChemicalsからのBreox 350、550および750等が挙げられる。
【0062】
任意成分E2)を、2〜4個のヒドロキシル基および62〜250の分子量を有する化合物から選択される。その例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール異性体、ペンタエリトリトールおよびこれらの化合物の混合物が挙げられる。
【0063】
任意成分F2)は、2〜4個のアミノ基および60〜300g/モルの分子量を有する化合物から選択される。その例としては、エチレンジアミン、1,2−および1,3−ジアミノプロパン、1,6−ジアミノヘキサン、1,3−ジアミノ−2,2−ジメチルプロパン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノ−メチルシクロヘキサン(IPDA)、1,3−および1,4−ジアミノヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4−および2,6−ジアミノ−1−メチルシクロヘキサン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、1,4−ビス−(2−アミノプロパン−2−イル)シクロヘキサンおよびこれらの化合物の混合物が挙げられる。
【0064】
成分G2)は、74〜300g/モルの分子量を有する、単官能性および/または2官能性カルボン酸ヒドラジドから選択される。その例としては、アジピン酸ジヒドラジド、安息香酸ヒドラジド、p−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、異性体テレフタル酸ヒドラジド、N−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−N−アミノオキサミド(Luchem HA−R 100、Elf Atochem)、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ヒドラジド、2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル酢酸ヒドラジドおよびこれらの化合物の混合物が挙げられる。他の有効なヒドラジドは、EP−A654490およびEP A682051に記載の環式カーボネートおよびヒドラジン、例えば、1モルのヒドラジンおよび1または2モルのプロピレンカーボネートから調製された付加生成物である。好ましい安定剤は、アジピン酸ヒドラジドおよびN−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−N−アミノオキサミドである。
【0065】
ブロックトポリイソシアネート成分b)は、出発成分A2)〜G2)から多段階で製造する。反応体の量は、成分A2)のイソシアネート基と成分B2)、C2)、D2)、E2)、F2)およびG2)のイソシアネート反応性基の当量比が、1:0.8〜1:1.2、好ましくは1:0.9〜1:1であるように選択する。成分C2)のカルボキシル基も、ポリウレタンの溶液または分散耐を調製するために用いる水も、カルボキシル基を中和するために用いる中和剤も、当量比の計算に含まれない。
【0066】
成分D2)は、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.5〜3重量%のエチレンオキシド単位(COとして計算、分子量=44)が、本発明のブロックトポリイソシアネートb)における末端および/または側部ポリエーテル鎖内に組み込まれるような量で用いる。
【0067】
成分C2)の量は、好ましくは0.1〜1.5、より好ましくは0.5〜0.7重量%の化学的に組み込まれたカルボキシル基(COOHとして計算、分子量=45)がブロックトポリイソシアネートb)中に存在するように計算するが、エチレンオキシド単位およびカルボキシレート基の合計量は、ブロックトポリイソシアネートの水中での溶解性または分散性を確保するのに十分である。
【0068】
成分G2)は、好ましくは0.1〜3.0、より好ましくは0.1〜1.0重量%の化学的に組み込まれたヒドラジド基(HN−NHとして計算、分子量=30)がブロックトポリイソシアネートb)中に存在するような量で存在する。
【0069】
製造工程の第一段階において、親水性成分C2)およびD2)を容器に導入し、80℃〜100℃、好ましくは90℃において、親水性成分がポリイソシアネート中へ組み込まれるまでポリイソシアネート成分A2)と反応させる。次いで、該反応混合物を70℃にまで冷却し、ブロック剤B2)を徐々に添加し、理論上計算されたNCO値が得られるまで反応させる。温度は、反応の間、80℃を超えるべきではない。
【0070】
鎖延長剤E2)およびF2)および安定化成分G2)を、分散操作の前または分散操作中に組み込み得る。好ましくは、成分E2)、F2)およびG2)を水に溶解し、該反応混合物を完全に撹拌しながらこの溶液に分散させる。用いる水の量は、得られる溶液または分散体が5〜90重量%、20〜50重量%、好ましくは30〜40重量%の固形分を有するように選択される。
【0071】
カルボキシル基を少なくとも部分的に中和するのに必要な塩基を、分散段階前、分散段階中または分散段階後に添加し得る。適当な塩基としては、アンモニア、N−メチルモルホリン、ジメチルイソプロパノールアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリプロピルアミン、トリイソプロパノールアミン、2−ジエチルアミノ−2−メチル−1−プロパノールおよびこれらおよび/または他の中和剤の混合物が挙げられる。水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、NaCO、NaHCOおよび水酸化カリウムも、好ましくはないが、中和剤として適当である。ジメチルエタノールアミンは、好ましい中和剤である。
【0072】
成分a)およびb)は、成分b)のブロックトイソシアネート基と成分a)のヒドロキシル基の当量比が0.05:1、好ましくは0.5:1〜20:1、より好ましくは1.1および10:1であるような量で用いる。
【0073】
被覆組成物の成分2)は、アルコール成分として少なくとも1つのポリカーボネートポリオールから製造されたポリウレタン水性分散体である。好ましくは、ポリウレタン分散体は、非官能性である。「非官能性」とは、ポリウレタン分散体が、未反応イソシアネートまたはイソシアネート反応性基を実質的に含有しないことを意味する。すなわち、ポリウレタンが非官能性である場合には、ポリウレタンは、被覆組成物の成分a)および/またはb)と化学的に反応しない。
【0074】
ポリウレタン水性分散体は、ポリカーボネートポリオールおよび(環式)脂肪族ジ−および/またはポリイソシアネートから製造し得る。他の物質は、この製造に用い得るが、このような成分は、当業者に既知であり、例えば脂肪族(ジ)アルコール、(ジ)アミン、ポリエーテル、ポリエーテルアミン等である。
【0075】
適当なポリカーボネートとしては、500〜6000g/モルの数平均分子量を有し、以下の式(1):
−O−R−O−C(=O)− (1)
〔式中、Rは、2〜30個の炭素原子を有する置換または非置換の直鎖または分枝状アルキレンまたは6〜30個の炭素原子を有する非置換アルキレンまたは6〜30個の炭素原子を有する置換または非置換ヘテロアリールアルキレンまたは6〜30個の炭素原子を有する非置換シクリルアルキレンまたは6〜30個の炭素原子を有する非置換ヘテロシクリルアルキレンおよび末端ヒドロキシル基を表す〕
で示される繰り返し単位をそれぞれ独立して含むポリカーボネートが挙げられる。
【0076】
適当なアルキレン基、好ましくはC3−16−アルキレン基としては、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH11−、−(CH12−、−(CH13、−(CH14、−(CH15、−(CH16 が挙げられる。
【0077】
式(1)におけるアルキレン基Rは、3〜16個の炭素原子を有する好ましくは線状または分枝状アルキレンを表す。より好ましくは、Rは、4〜12個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキレンを表す。特に好ましいのは、−(CH−、−(CH−、−(CH−(CHCH)−(CH−および/または−(CH−である。
【0078】
適当なアリールアルキレン基、ヘテロアリールアルキレン基、シクリル(cyclyl)アルキレン基およびヘテロシクリルアルキレン基としては、以下に示される式(2):
【化1】

で示される異性体が挙げられる。
【0079】
「シクリル」とは、約3〜約12個、好ましくは約5〜約10個の炭素原子を含む非芳香族単環式または多環式環系を意味する。好ましいシクロアルキル環は、約5〜約7個の環原子を含有する。シクロアルキルは、同一または異なっていてよい、およびここに定義される1以上の「環系置換基」により、必要に応じて置換されてよい。適当な単環式シクロアルキルの非限定例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等が挙げられる。適当な多環式シクロアルキルの非限定例としては、1−デカリニル、ノルボルニル、アダマンチル等、並びに部分飽和種、例えばインダニル、テトラヒドロナフチル等が挙げられる。
【0080】
「アリール」とは、約6〜約14個の炭素原子、好ましくは約6個〜約10個の炭素原子を含む芳香族単環式または多環式環系を意味する。アリール基は、同一または異なっていてよい、およびここで定義される1以上の「環系置換基」で、必要に応じて置換されてよい。適当なアリール基の非限定例としては、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0081】
「アリールアルキル」とは、アルキル基が結合している先に定義のアリール基を意味する。
【0082】
「ヘテロアリール」とは、環原子の1以上が、単独でまたは組み合わさって炭素以外の元素、例えば酸素または硫黄である、約5〜約14個、好ましくは約5〜約10個の炭素原子を含む芳香族単環式または多環式環系を意味する。好ましいヘテロアリールは、約5〜約6個の環原子を含有する。「ヘテロアリール」は、同一または異なっていてよい、およびここに定義される1以上の「環系置換基」により、必要に応じて置換されてよい。ヘテロアリールの基礎となる名称の前の接頭語オキサ(oxa)またはチア(thia)は、少なくとも酸素または硫黄原子がそれぞれ環原子として存在することを意味する。また、「ヘテロアリール」としては、先に定義のアリールへ結合した先に定義のヘテロアリールが挙げられる。適当なヘテロアリールの非限定例としては、フラニル、チエニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニルが挙げられる。
【0083】
「ヘテロシクリル」とは、環系における原子の1以上が、単独でまたは組み合わさって炭素以外の元素、例えば酸素または硫黄である、約3〜約10個の環原子、好ましくは約5〜約10個の環原子を含む非芳香族飽和単環式または多環式環系を意味する。環系に存在する隣接した酸素原子および/または硫黄原子は存在しない。好ましいヘテロシクリルは、約5〜約6個の環原子を含有する。ヘテロシクリルの基礎となる名称の前の接頭語オキサ(oxa)またはチア(thia)は、少なくとも窒素、酸素または硫黄原子がそれぞれ環原子として存在することを意味する。ヘテロシクリルは、同一または異なっていてよい、およびここに定義される1以上の「環系置換基」により、必要に応じて置換されてよい。ヘテロシクリルの硫黄原子は、対応するS−オキシドまたはS,S−ジオキシドへ必要に応じて酸化されてよい。適当な単環式ヘテロシクリル環の非限定例としては、1,4−ジオキサニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ラクトン等が挙げられる。
【0084】
「ヘテロアリールアルキレン」とは、先に定義のアルキレン基へ結合しているかまたはアルキレン基の一部である先に定義のヘテロアリール基を意味する。ここで、前記アルキレン基は、分子の残部へ結合する。
【0085】
「シクリルアルキレン」とは、先に定義のアルキレン基へ結合しているかまたはアルキレン基の一部である先に定義のシクリル基を意味する。ここで、前記アルキレン基は、分子の残部へ結合する。
【0086】
「アリールアルキレン」とは、先に定義のアルキレン基へ結合しているかまたはアルキレン基の一部である先に定義のアリール基を意味する。ここで、前記アルキレン基は、分子の残部へ結合する。
【0087】
「ヘテロシクリルアルキレン」とは、先に定義のアルキレン基へ結合しているかまたはアルキレン基の一部である先に定義のヘテロシクリル基を意味する。ここで、前記アルキレン基は、分子の残部へ結合する。
【0088】
「環系置換基」とは、例えば環系上で利用可能な水素を置換する芳香族または非芳香族環系へ結合した置換基を意味する。環系置換基は、同一または異なってよく、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルキルアリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロアリール、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アシル、アロイル、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオ、ヘテロアラルキルチオ、シクロアルキル、ヘテロシクリルおよびSO〔式中、YおよびYは、同一または異なってよく、水素、アルキル、アリール、シクロアルキルおよびアラルキルからなる群から独立して選択される〕からなる群からそれぞれ独立して選択される。「環系置換基」は、環系上に、2つの隣接炭素原子上に2つの利用可能な水素(各炭素上に1つの水素)を同時に置き換える単一部分を意味する。このような部分の例は、メチレンジオキシ、エチレンジオキシおよび−C(CH−である。
【0089】
また、「環系置換基」としては、隣接炭素原子、炭素原子および隣接ヘテロ原子または単一炭素原子上の前記置換基が、炭素原子および/または炭素原子の組み合わせおよび前記置換基へ結合する隣接ヘテロ原子と共に、4〜7員環のシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリール環を形成する、ヘテロシクリル環からの置換基が挙げられる。
【0090】
以下の化合物は、好ましいポリオールとして適当である:エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびこれらの混合物である。1,4−ブタンジオールを好ましく用いる。
【0091】
ポリカーボネートポリオールは、トリ−および多官能性ヒドロキシル化合物、例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール異性体、ペンタエリトリトールおよびこれらの化合物の混合物等の使用により分枝状構造を伴って作られる。分枝状構造が望ましい場合には、トリメチロールプロパンを好ましく用いる。
【0092】
成分2の製造の用いるアルコールの量に基づくポリカーボネートジオールの量は、10重量%〜100重量、好ましくは50重量%〜100重量%、より好ましくは70重量%〜100重量%である。適用な(環式)脂肪族イソシアネートは、例えば、イソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1−メチル−2,4(2,6)−ジイソシアナトシクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンおよびこれらの混合物である。また、適当なのは、モノマートリイソシアネート、例えば4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネートである。
【0093】
好ましくは、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンおよび/またはイソホロンジイソシアネートおよび/またはヘキサメチレンジイソシアネートおよび/または1−メチル−2,4(2,6)−ジイソシアナトシクロヘキサンを用いる。
【0094】
本発明によれば、ポリイソシアネート付加物は、ポリウレタン水性分散体の製造に用い得る。適当なポリイソシアネート付加物は、イソシアヌレート基、ウレットジオン基、ビウレット基、イミノオキサジアジンジオン基、カルボジイミド基および/またはオキサジアジントリオン基を含有するポリイソシアネート付加物である。ポリイソシアネート付加物は、2〜6、好ましくは2〜4の平均官能価、および5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%、より好ましくは15〜25重量%のNCO含有量を有し、次のものが挙げられる:
【0095】
1)DE−PS2616416、EP−OS3765、EP−OS10589、EP−OS47452、US−PS4288586およびUS−PS4324879に記載の通り製造し得るイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート。
【0096】
2)ジイソシアネートのイソシアネート基の一部を、適当な触媒、例えばトリアルキルホスフィン触媒の存在下でオリゴマー化することにより製造し得、および他の脂肪族および/または脂環式ポリイソシアネート、特に上記(1)に記載のイソシアヌレート基含有ポリイソシアネートとの混合物に用い得るウレットジオンジイソシアネート。
【0097】
3)共反応体、例えば水、第三級アルコール、第一級および第二級モノアミン、および第一級および/または第二級ジアミン等を使用して、米国特許第3124605号、第3358010号、第3644490号、第3862973号、第3906126号、第3903127号、第4051165号、第4147714号または第4220749号に開示の方法により製造し得るビウレット基含有ポリイソシアネート。
【0098】
4)DE−A19611849に記載の特別なフッ素含有触媒の存在下で製造し得るイミノオキサジアジンジオン基および任意にイソシアヌレート基を含有するポリイソシアネート。
【0099】
5)ジ−またはポリイソシアネートを、DE−PS1092007、US−PS3152162およびDE−OS2504400、同2537685および同2552350に記載の既知のカルボジイミド化触媒の存在下でオリゴマー化することによって製造し得るカルボジイミド基含有ポリイソシアネート。
【0100】
6)オキサジアジントリオン基を含有するポリイソシアネート、例えば2モルのジイソシアネートおよび1モルの二酸化炭素の反応生成物。
【0101】
好ましいポリイソシアネート付加物は、イソシアヌレート基、ウレットジオン基、ビウレット基および/またはイミノオキサジアジンジオン基を含有するポリイソシアネート付加物、特にイソシアヌレート基および任意にウレットジオン基またはイミノオキサジアジンジオン基を含有するポリイソシアネートである。
【0102】
脂肪族または脂環式ジイソシアネートに加えて、これらはまた、他のポリイソシアネート、例えば2,4−および/または2,6−ジイソシアナトトルエン(TDI)、1−メチル−2,4−および/または2,6−ジイソシアナトシクロヘキサンおよび4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソアナトブタン、1,12−ジイソシアナトドデカン、2,3,3−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−m−またはp−キシリレンジイソシアネート、およびトリフェニルメタン4,4’,4’’−トリイソシアネートならびにこれらの混合物を含み得る。また、適当なのは、モノマートリイソシアネートである。ポリイソシアネート成分は、好ましくないが、HDI、IPDIおよび/またはHMDIに基づく既知のラッカーポリイソシアネートを含有し得る。
【0103】
他の成分、例えば鎖延長剤、連鎖停止剤または親水性化剤等を、非官能性ポリウレタン水性分散体の製造に用い得るが、このような成分は、当業者に既知である。
【0104】
非官能性ポリウレタン水性分散体は、先行技術アセトン法またはその変法を用いて製造することができる。これらの方法の概要は、Methoden der organischen Chemie(Houben−Weyl、Additional and Supplementary Volumes〜第4版第E20巻、H.BartlおよびJ.Falbe、シュトゥットガルト、ニューヨーク、Thieme、1987年、第1671〜1682頁)に与えられる。その内容全体を参照によりここに組み込む。アセトン法が好ましい。
【0105】
第一段階において、イソシアネート基を含有するプレポリマーを、ポリカーボネートポリオール、ジイソシアネートおよび潜在的に他のジオールから合成する。1以上のジイソシアネートを用いることができるが、他のポリオール、例えばポリエステル、ポリエーテル、ポリカプロラクトンまたはこれらの混合物等を用いてもよい。また、当業者に既知のヒドロキシル官能性可溶化剤を、この段階の間に用いることができる。
【0106】
第2段階では、プレポリマーは、イソシアネート反応性基を含有しない、少なくとも部分的に水混和性の有機溶媒中に溶解させる。好ましい溶媒はアセトンである。しかしながら、他の溶媒、例えば2−ブタノン、テトラヒドロフランまたはジオキサンまたはこれらの溶媒の混合物等を用いることもできる。
【0107】
第三段階では、イソシアネート含有プレポリマー溶液は、アミノ官能性鎖延長剤、および任意に連鎖停止剤の混合物と反応させてポリウレタンを形成する。好ましくは、アミノ官能性鎖延長剤の1つは、スルホン化またはカルボキシル化基を含有する可溶化剤であるべきである。これらの基は、予め中和するか、または第三級アミンで中和して塩を形成することができる。
【0108】
第四段階では、高分子量ポリウレタンは、溶液への水の添加または水への溶液の添加により微細粒子分散体の形態で分散させる。
【0109】
第五段階では、有機溶媒は、部分的にまたは完全に蒸留により、必要に応じて減圧下で除去する。溶媒の残存量は、<5重量%、好ましくは<2重量%、より好ましくは<1重量%である。
【0110】
非官能性水性ポリウレタン分散体は、ASTM E2602−09により1分につき20℃の加熱速度にて計測された−70℃および0℃、好ましくは−40℃および−20℃の間の少なくとも1つのガラス転移温度Tgを特徴とする。また、2〜70重量%、好ましくは30〜55重量、より好ましくは35〜50重量%の固形分を特徴とする。分散体は、ASTM D2196−05により測定された40重量%の濃度において50および1000mPa・sの間の25℃における粘度を有する。非官能性ポリウレタン水性分散体から単独で形成された皮膜は、1〜100Mpa、好ましくは20および60MPaの間の引張強度、50〜1000%、好ましくは200〜600%の伸び、および3〜10MPa、好ましくは5〜8MPaの100%弾性率を特徴とする。
【0111】
本発明による被覆組成物は、水に可溶性または分散性であるポリオール成分a)と水に可溶性または分散性であるブロックトポリイソシアネート成分b)とを、非官能性ポリウレタン水性分散体と共に既知の方法によりブレンドすることにより製造する。成分a)およびb)の水性分散体を混合するか、または成分a)およびb)を無水形態で混合して、次いで非官能性ポリウレタン水性分散体と混合する前にこれらを一緒に分散させることが可能である。当然、被覆組成物は、共溶媒の使用に拘わらず製造し得る。
【0112】
被覆処方物は、接着促進剤、例えば米国特許第6403175(その内容全体を参照によりここに組み込む)、特に第3欄第60行〜第6欄第8行目に開示の接着促進剤を必要に応じて含有し得る。好ましい接着促進剤としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルシラン加水分解物、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0113】
本発明の被覆組成物の被覆すべき物質への塗布は、被覆技術において従来既知の手段、例えば噴霧、ナイフ塗布、カーテン被覆、真空被覆、回転、注入、浸漬、スピン被覆、スキージ、刷毛またはスパッタ等により、または印刷技術、例えばスクリーン、グラビア、フレキソ印刷またはオフセット印刷等により、および転写法により行う。
【0114】
ガラスと共に適当な基材は、例えば木材、金属(特にワイヤーエナメル加工、コイル被覆、缶被覆または容器被覆の用途に使用される金属を含む)、およびプラスチック(フィルムの形態でのプラスチックを含む)、特に、ABS、AMMA、ASA、CA、CAB、EP、UF、CF、MF、MPF、PF、PAN、PA、PE、HDPE、LDPE、LLDPE、UHMWPE、PET、PMMA、PP、PS、SB、PUR、PVC、RF、SAN、PBT、PPE、POM、PUR−RIM、SMC、BMC、PP−EPDM、およびUP(DIN 7728T1に従った略語)、紙、皮革、繊維製品、フェルト、ガラス、木材、木質材料、コルク、無機結合基材、例えば木質ボードおよび繊維セメントスラブ、電子組立部品または無機基材である。また、種々の上記物質からなる基材を被覆することも、既に被覆された基材、例えば車両、航空機またはボートおよびそれらの部品、特に車体または外装部材を被覆することもできる。また、例えばフィルムを製造するために、被覆組成物を基材へ一時的に塗布し、次いで、それらを部分的または完全に硬化させて、場合によりそれらを再び引き離すこともできる。
【0115】
被覆組成物は、ガラス基材、特に平坦ガラス、ガラスパネルおよびガラス容器、例えばジャーまたは瓶等に特に適している。被覆組成物は、詰め替え可能なガラス瓶上での使用に必要な苛性耐性を付与する。さらに、被覆物は、特に瓶充填作業の間に必要な耐傷性および耐久性を付与する。また、これらは、ガラス瓶に必要な潤滑性制御およびUV安定性を付与する。被覆瓶はまた、良好な手触りを有する。被覆物は、ホットエンド被覆であるかどうかに拘わらず、コールドエンド被覆またはその両方であるかどうかに拘わらず、およびガラスのシラン予備処理を伴うかどうかに拘わらず塗布することができる。
【0116】
本発明の被覆組成物は、ガラス瓶上に透明、着色および高光沢、艶消しおよびすりガラスの外見の加工をするために自由な設計を提供する。適当な代表的顔料として、ルチルおよびアナターゼ、二酸化チタン、黄色および赤色酸化鉄、緑色および青色銅フタロシアニン、カーボンブラック、箔および非箔アルミニウム、バリウムスルフェート、カルシウムカーボネート、ナトリウムシリケート、マグネシウムシリケート、酸化亜鉛、酸化アンチモン、ジ−およびモノアリーリドイエロー、ニッケルアリーリドイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ナフトールおよびキナクリドンレッド、真珠光沢顔料(マイカプレートレット)、銅、ニッケルおよびステンレス鋼プレートレット、微粉化艶消剤、例えばメチレンジアミノメチルエーテル重縮合物およびその顔料ペースト等が挙げられる。
【0117】
被覆組成物は、ガラス瓶に予め適用されたラベル(例えば感圧ラベル、UV活性化ラベル、熱伝導ラベル等)または装飾用無機もしくは有機被覆物またはその混合物上に塗布することができる。適当な装飾有機被覆物としては、EcoBrite Organic Ink(PPG Industries,Inc.、ピッツバーグ、ペンシルベニア州)およびSpecTruLite(Ferro Corporation、クリーブランド、オハイオ州)が挙げられる。
【0118】
本発明のある実施態様では、プライマー処理を、被覆組成物の塗布前にガラス瓶に適用し得る。
【0119】
プライマー処理は、潤滑を付与して保護有機被覆物の製造時および塗布時の間でガラス容器を保護し、保護被覆物のガラス容器への接着性を向上させる任意の被覆であり得る。特定の実施態様では、プライマー処理は、ホットエンド被覆物およびコールドエンド被覆物をいずれも含む。他の特定の実施態様では、ガラス容器は、ホットエンド被覆物を有さず、プライマー処理を、容器をガラス焼きなまし炉において実質的に冷却した後にのみ適用するコールドエンド被覆物を含む。
【0120】
特定の実施態様では、プライマー処理は、コールドエンド被覆物を含むが、コールドエンド被覆物は、希釈シラン組成物、またはシラン組成物および表面処理組成物の混合物を含む。プライマーとしてガラス容器上に用いるのに適した任意のシラン組成物を、本発明のプライマー被覆物中に用い得る。その非限定例としては、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシランおよびテトラアルコキシシランが挙げられる。表面処理組成物は、更なる被覆物のガラス容器への塗布前に除去する必要がないポリエチレンまたはステアレート組成物またはその混合物を含む。ここで用いるステアレートは、ステアリン酸(オクタデカン酸)の塩およびエステルを含む。特定の実施態様では、ステアレートは、T5ステアレート被覆物(Tegoglas、フィラデルフィア、ペンシルベニア州)を含む。当業者は、プライマー被覆物が水溶液(均質またはコロイド状)またはエマルションの形態であり得ることを理解する。表面処理組成物は、ポリエチレンエマルション(Sun ChemicalからのDuracote)を含み得る。プライマー処理は、被覆物を向上させるために更なる組成物を含み得る。その非限定例としては、界面活性剤および潤滑剤が挙げられる。
【0121】
他の特定の実施態様では、プライマー処理は、ホットエンド被覆物およびコールドエンド被覆物をいずれも含み得るが、ホットエンド被覆物は、ガラス容器への接着に適した組成物(例えば酸化錫)を含み、コールドエンド被覆物は、ポリエチレンまたは上記のステアレート組成物を含む。しかしながら、当業者は、このようなホットエンド被覆物が、ここで提供される実施態様に必要ではない場合があることを理解する。
【0122】
本発明の他の実施態様では、本発明の被覆組成物は、プライマー処理の使用を伴わずにガラス瓶へ塗布し得る。
【0123】
被覆組成物は、当業者に既知の任意の適当な方法、例えば空気乾燥、熱硬化および放射線への暴露、例えば電磁気放射線等、例えば電波(RF)、マイクロ波および赤外(IR)放射線および/またはその組み合わせによる促進乾燥により乾燥および/または硬化し得る。
【0124】
本発明の他の実施態様では、本発明の被覆組成物は、プライマー並びにトップコートとして働き、瓶ライン処理に要求される欠かせない潤滑性を提供することができる。
【0125】
以下の実施例では、全ての部およびパーセンテージは、特記のない限り、重量パーセンテージである。
【実施例】
【0126】
実施例に用いた物質:
Impranil(登録商標)DLC−F(水中での脂肪族ポリカーボネートウレタン樹脂アニオン性分散体、Bayer MaterialScience LLC、ピッツバーグ、ペンシルベニア州)
【0127】
Bayhydrol(登録商標)XP 2637(水中での脂肪族ポリカーボネートウレタン樹脂の溶媒不含アニオン性分散体、Bayer MaterialScience LLC、ピッツバーグ、ペンシルベニア州)
【0128】
Bayhydrol(登録商標)A XP 2695(ヒドロキシ官能性ポリアクリル酸分散体、供給形態での当量〜829g/モル、Bayer MaterialScience LLC、ピッツバーグ、ペンシルベニア州)
【0129】
Cymel(登録商標)327(メチル化高NHメラミン樹脂、M/F/Me〜1/4.1/3.1、Cytec Surface Specialties Inc、スミルナ、ジョージア州)
【0130】
Bayhydur(登録商標)BL XP 2669(IPDIに基づく親水性化ブロックト脂肪族ポリイソシアネート、ブロックトNCO含有量〜3.3%、Bayer MaterialScience LLC、ピッツバーグ、ペンシルベニア州)
【0131】
Bayhydur(登録商標)TP LS 2310(HDIに基づく親水性化ブロックト脂肪族ポリイソシアネート、ブロックトNCO含有量〜3.7%、Bayer MaterialScience LLC、ピッツバーグ、ペンシルベニア州)
【0132】
Silquest(登録商標)A−189(γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、Momentive Performance Materials、アルバニー、ニューヨーク州)
【0133】
Dynasylan(登録商標)AMEO(3−アミノプロピルトリエトキシシラン、Evonik Corporation、パーシッパニー、ニュージャージー州)
【0134】
Colormatch(登録商標)50−94199(Plasticolors, Inc.、アシュタビューラ、オハイオ州、米国からの赤色顔料ペースト)
【0135】
Colormatch(登録商標)50−9410(Plasticolors, Inc.、アシュタビューラ、オハイオ州、米国からの黒色顔料ペースト)
【0136】
Colormatch(登録商標)EXP−94200(Plasticolors, Inc.、アシュタビューラ、オハイオ州、米国からのメタリック顔料ペースト)
【0137】
実施例1
ヒドロキシ官能性ポリウレタン分散体を、米国特許第5852106号の実施例1に従って製造した。
【0138】
実施例2
ブロックトポリイソシアネートを、米国特許第5852106号の実施例2に従って製造した。
【0139】
処方物詳細:
実施例A〜Jの処方物を、ポリイソシアネート、ポリオール、ポリウレタン分散体を混合することにより製造し、次いでシランおよびジプロピレングリコールを添加した。次いで、混合物を、機械ミキサーを用いて撹拌し、脱気し、使用前に終夜貯蔵した。
【0140】
本発明では、部は、重量部を意味する。NCO/OH比は、ブロックトポリイソシアネート成分およびポリオール成分に基づいて計算した。全ての処方物のための添加剤パッケージを一定にした。
【0141】
実施例A(比較):処方物は以下の通り製造した。
37.0部の実施例1の分散体および61.0部の実施例2のブロックトポリイソシアネートを一緒に混合し、次いで1.6部のジプロピレングリコール、0.2部のSilquest A−189 Silaneおよび0.2部のDynaslan AMEOを、撹拌を継続しながら添加した。処方物を、機械ミキサーを用いて撹拌下で、均質混合物が得られるまで混合した。製造したこの水系処方物を、終夜、脱気し続けた。
【0142】
実施例B〜Jを、以下の表に記載の物質および量を用いて、比較例Aについて記載した手順を用いて製造した。
【0143】
塗布詳細:
直接および逆衝撃試験のための被覆物を、処方物をBonderite B1000冷延鋼板パネル上へ、Number 50ワイヤーを巻いた棒を用いて塗布することにより製造した。
【0144】
テーバー試験のための被覆物を、4’’×4’’ガラステーバーパネルのエアサイド上へNumber 50ワイヤーを巻いた棒を用いて処方物を塗布することにより製造した。
【0145】
フィッシャーマイクロ圧子評価のための被覆物を、80μLの処方物を、ガラスディスク上へ、Eppendorf分注器を用いて塗布し、使い捨てチップのチップを用いてディスク上に広げることにより製造した。この特定の試験のために、処方物を、オーブン硬化前に2時間空気乾燥した。
【0146】
硬化詳細:
被覆物を、170℃において30分間オーブン中で硬化させた。実施例の幾つかを、別の硬化条件、例えば150℃30分間、150℃45分間、160℃30分間、160℃45分間、170℃30分間等を用いて繰り返した。全ての場合において、硬化条件は、硬化被覆物の特性に影響を与えなかった。当業者は、異なった脱ブロック剤を用いて、および適切な触媒選択によって、より低い硬化温度にすることができ、およびより短い硬化時間でより高い硬化温度にすることができる。
【0147】
試験詳細
全ての試験は、被覆物を硬化した後、24時間行った。
【0148】
苛性試験を、80℃において3時間、2.5%水酸化ナトリウム中で行った。
【0149】
マイクロ圧子測定値(Martenの硬度)を、Fischerscope H100C機器を用いてガラスディスク上で行った。
【0150】
被覆物の皮膜厚みを、ASTM D 1186−93に従うFischerscope MMS機器を用いて行った。これらは、0.5〜0.75ミルの範囲であった。
【0151】
被覆物の直接および反対衝撃試験は、ASTM D 2794に従って行った。
【0152】
被覆物の皮膜損失は、ASTM 4060−95によるTaber摩耗を用いることにより行った。パネルは、500gの重さを用いてホルダーの各側上で20周期の摩耗前および摩耗後に計量した。摩耗前後の重さの差異を、皮膜損失として記録した。
【0153】
スクライブ接着は、皮膜を硬化した後にガラスターバーパネル上で行った。互いに斜めになった2つの1インチ長スクライブを、ユーティリティナイフを用いてカットし、皮膜のガラスへの接着を視覚的に検査した。皮膜が基材から剥離しなかった場合、被覆物は、「合格」として記録した。
【0154】
被覆特性
比較例Aは、1.04:1のNCO:OH比を有するガラス被覆処方物を示す。非官能性ポリカーボネート系PUD(実施例BにおけるImpranil(登録商標)DLC−Fおよび実施例CにおけるBayhydrol(登録商標)XP 2637)の添加により、接着性または強靱性の損失を伴わずに軟質性において著しい向上(微小硬度における低下により示される)をもたらした。これらの特性は、ガラス瓶加工操作において、瓶がラインにおいて移動する際およびライン圧を経験する際に顕著なすり減りに曝される場合に極めて重要である。被覆物は、極めて小さい表面損失を伴って、これらの衝撃圧に耐えおよび吸収し、顕著な光学的透明性を保ち、次いで苛性暴露後に急速に回復することが必要である。
【0155】
実施例D、EおよびFは、Bayhydrol(登録商標)XP 2637の量が、処方物中で増加すると、皮膜が、良好な接着性、強靱性および苛性耐性をなお維持しながら向上した軟質性(微小硬度における減少により示される)を有したことを示す。
【0156】
また、Bayhydrol(登録商標)XP 2637の使用は、処方物ラチチュードを、低いNCO:OH比から高いNCO:OH比へ被覆物性能特性における損失を伴わずに広げた。実施例G、HおよびIは、広い範囲で、すなわち、0.2:1および20:1のNCO:OH比での処方物の使用を示す。実施例Lは、混合ポリオールおよび混合ブロックトポリイソシアネートでの処方物を示す。この処方物は、Fischer微小圧子測定値により示される通り、高い硬度を有する被覆物をもたらした。Bayhydrol(登録商標)XP 2637のこの処方物(実施例M)への添加は、他の特性において損失を伴わずに軟質性を向上させる役割をした。2次架橋を提供するNCOおよびOH反応を伴うメラミンのような更なる架橋剤の使用は、工業上、既知である。硬度および苛性耐性を向上させる二次架橋剤としてメラミンを用いるこの従来法は、Bayhydrol(登録商標)XP 2637と同じ被覆物性能を生じさせなかった。全て0.2:1のNCO:OH比を同様に有する実施例J、IおよびKを比較すれば、メラミン(Cymel 327)の添加は、より低い衝撃強度へ導く更なる脆弱性をもたらす。同様の種類の結果は、全て1.04:1のNCO:OH比を有する実施例L、MおよびOの他のセットにより見られ、より低いメラミン含有量を有する処方物でさえ低い衝撃強度をもたらす。Bayhydrol(登録商標) XP 2637を有する対照処方物は、実施例Pに参照用として示す。
【0157】
【表1】

【0158】
【表2】

【0159】
着色処方物は、以下の通り製造する。実施例Cに示される87.33部の処方物を、12.67部の赤色顔料ペーストと混合して赤色被覆処方物を製造した。同様に、実施例Dに示される93.72部の処方物を、6.28部の黒色顔料ペーストと混合して黒色被覆処方物を製造した。また、実施例Eに示される処方物の76.78部を、23.22部のアルミニウム顔料ペーストと混合してメタリック被覆処方物を製造した。処方物を、瓶上に塗布して、170℃にて30分間硬化させた。得られる被覆物は、優れた接着性および苛性耐性を有した。
【0160】
本発明を、例示の目的で上に詳しく説明したが、そのような詳細は、単なる例示目的にすぎず、請求の範囲によって限定され得ることを除き、本発明の精神および範囲から逸脱せずに当業者によって変更され得ると理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)固体ポリマーを基準に1〜99重量%の、
a)水に可溶性または分散性であり、および50〜100重量%の脂肪族ジイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分、1以上のポリエーテルポリオールを含有し、および25〜350mgKOH/g固体のOH価を有するポリオール成分および塩形成の可能な少なくとも1つの基を含有するイソシアネート反応性成分の反応生成物であるポリオール成分、および
b)水に可溶性または分散性であり、ブロックトイソシアネート基を有し、および0〜30重量%のイソシアヌレート基含有量を有する1以上のポリイソシアネート、イソシアネート基のための単官能性可逆性ブロック剤、非イオン親水性成分および1〜2個のヒドラジド基および74〜300g/モルの分子量を有する安定剤成分の反応生成物であるポリイソシアネート成分
の反応生成物、および
2)固体ポリマーを基準に1〜99重量%の、少なくとも1つのポリカーボネートポリオールから製造されたポリウレタン水性分散体
を含み、成分1)および2)の全重量%は合計100%となる、ポリウレタン水性被覆組成物。
【請求項2】
成分a)は、
A1)20〜60重量%の、50〜100重量%までの脂肪族ジイソシアネートおよび0〜50重量%の140〜1500g/モルの分子量を有する他の有機ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分、
B1)20〜60重量%の、1以上のポリエーテルポリオールを含有し、25〜350mgKOH/g固体のOH価を有するポリオール成分、
C1)2〜12重量%の、必要に応じて少なくとも部分的に中和形態で存在し得る、少なくとも1つのイソシアネート反応性基および塩形成の可能な少なくとも1つの基を含有するアニオン性または潜在的アニオン性成分、
D1)0〜12重量%の、イソシアネート付加反応のために単官能性または二官能性であり、および少なくとも1つの側部または末端親水性ポリエーテル鎖を有する1以上の化合物を含有する非イオン性親水性成分、
E1)0〜15重量%の、2〜4個のヒドロキシル基および62〜250g/モルの分子量を有する1以上の多価アルコール、
F1)0〜15重量%の、2〜4個のアミノ基および60〜300g/モルの分子量を有する1以上の(環式)脂肪族ポリアミン、
G1)0〜30重量%の、合計2〜4個のヒドロキシル基およびアミノ基および61〜300g/モルの分子量を有する1以上の(環式)脂肪族ポリアミノ/ヒドロキシル化合物、および
H1)0〜15重量%の、イソシアネート付加反応のために単官能性または二官能性であり、1〜2個のヒドラジド基を有し、および74〜300g/モルの分子量を有する1以上の安定性成分
の反応生成物を含み、ここで、A1)〜H1)の百分率は合計100%となり、および
成分b)は、
A2)40〜80重量%の、0〜30重量%のイソシアヌレート基含有量(Cとして計算、分子量=126g/モル)を有し、および140〜350g/モルの分子量を有する1以上のジイソシアネートから製造されるポリイソシアネートと、
B2)5〜30重量%の、イソシアネート付加反応のために単官能性であるイソシアネート基のための1以上の可逆性ブロック剤、
C2)0〜15重量%の、必要に応じて少なくとも部分的に中和形態で存在し得る、少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つの塩形成可能な基を有する1以上の化合物を含有するアニオン性または潜在的アニオン性成分、
D2)5〜30重量%の、イソシアネート付加反応のために単官能性または二官能性であり、少なくとも側部および末端親水性ポリエーテル鎖を有する1以上の化合物を含有する非イオン性親水性成分、
E2)0〜15重量%の、2〜4個のヒドロキシル基および62〜250g/モルの分子量を有する1以上の多価アルコール、
F2)0〜15重量%の、2〜4個のアミノ基を有し、および60〜300g/モルの分子量を有する1以上の(環式)脂肪族ポリアミン、および
G2)0.5〜15重量%の、イソシアネート付加反応のために単官能性または二官能性であり、および1〜2個のヒドラジド基および74〜300g/モルの分子量を有する1以上の安定性成分との
反応生成物を含み、ここで、A2)〜G2)の百分率は合計100%となり、但し、成分b)のブロックトイソシアネート基と成分a)のヒドロキシル基の当量比は少なくとも0.05:1となる、請求項1に記載のポリウレタン水性被覆組成物。
【請求項3】
接着促進剤を更に含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
接着促進剤は、少なくとも1つのシラン官能性化合物を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
接着促進剤は、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルシラン加水分解物、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
成分a)は、ヒドロキシ官能性ポリアクリル酸分散体を更に含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
成分b)は、ブロックトポリイソシアネートの混合物から製造され、該ブロックトポリイソシアネートは、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン、1,6−ジイソシアナトヘキサンおよびこれらのジイソシアネートの混合物からなる群から選択されるジイソシアネートから製造される、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
a)およびb)を基準に5〜95重量%成分a)、5〜95重量%成分b)、および成分1)および2)の固体ポリマーを基準に1〜99重量%成分1)および1〜99重量%成分2)を含み、独立して、成分a)およびb)の合計は100重量%であり、および1)および2)の合計は100重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
成分b)のブロックトイソシアネート基と成分a)のヒドロキシル基の当量比は、1:1および10:1の間である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
ポリウレタン水性分散体は、ASTM E2602−09により1分当たり20℃の加熱速度にて計測された−60℃および0℃の間のガラス転移温度Tgを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
ポリウレタン水性分散体は、ASTM D2196−5により計測された40重量%の濃度において50および1000mPa・sの間の25℃における粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
ポリウレタン水性分散体は、少なくとも1つのポリカーボネートポリオール、および4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートおよび1−メチル−2,4(2,6)−ジイソシアナトシクロヘキサンおよびこれらの混合物からなる群から選択されるイソシアネートから製造される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
ポリカーボネートポリオールは、数平均分子量範囲500〜6000g/モルを有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の被覆組成物で少なくとも部分的に被覆された基材。
【請求項15】
基材はガラスである、請求項14に記載の基材。
【請求項16】
請求項1に記載の被覆組成物で少なくとも部分的に被覆されたガラス瓶。
【請求項17】
ガラス瓶は、詰め替え可能なガラス瓶である、請求項16に記載のガラス瓶。
【請求項18】
ガラス瓶は、詰め替え可能ではないガラス瓶である、請求項16に記載のガラス瓶。
【請求項19】
被覆組成物は、ガラス瓶上で装飾用有機または無機被覆物上にわたり少なくとも部分的に塗布される、請求項16に記載のガラス瓶。
【請求項20】
ガラス瓶は、被覆組成物の塗布前にプライマー被覆物で処理される、請求項16に記載のガラス瓶。
【請求項21】
顔料および着色剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
a)およびb)を基準に10〜90重量%成分a)、10〜90重量%成分b)、および成分1)および2)の固体ポリマーを基準に15〜85重量%成分1)および15〜85重量%成分2)を含み、独立して、成分a)およびb)の合計は100重量%であり、および1)および2)の合計は100重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
a)およびb)を基準に15〜85重量%成分a)、15〜85重量%成分b)、および成分1)および2)の固体ポリマーを基準に50〜80重量%成分1)および20〜50重量%成分2)を含み、独立して、成分a)およびb)の合計は100重量%であり、および1)および2)の合計は100重量%である、請求項1に記載の組成物。

【公表番号】特表2013−502483(P2013−502483A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525526(P2012−525526)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/002267
【国際公開番号】WO2011/022055
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(503349707)バイエル・マテリアルサイエンス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (178)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience LLC
【Fターム(参考)】