説明

ガラス容器を洗浄するための方法

本発明は、キレート剤を含有する液体でガラス容器を洗浄するステップ、および比色検出によって液体中の遊離キレート剤の濃度を制御するステップを含む、ガラス容器を洗浄するための方法に関する。本発明はさらに、そのような方法を実施するための装置、およびそのような装置の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス容器を洗浄するための方法、前記方法を実施するために用いることができる装置、および液体中の遊離キレート剤の濃度を制御するための前記装置の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス容器またはガラス製品、例えば食品および飲料業界で使用される瓶は、これらに個々の食品または飲料を充填することができる前に、完全に清浄しなければならない。これは、前記ガラス容器を製造した後の最初の充填、または使用済みガラス容器への再充填(再生利用)であり得る。どちらの場合も、ガラス容器に充填しまたは再充填することができる前に、それぞれ満たさなければならない純度に関する厳しい規制がある。ガラス容器は、商業的に無菌状態になるまで必ず洗浄しなければならない。
【0003】
最初のケースでは、ガラス容器の製造から生じた不純物または残渣を除去しなければならない。後者のケースでは、商業的無菌状態の瓶は、例えば、しばしばほこり、カビ、砂糖、またはその他の残渣、製品ラベル、および接着剤などで汚染されている既に使用された瓶から得なければならない。そのような汚染物質を、被清浄容器から除去するには、比較的長い接触時間、高温、および苛性アルカリ(例えば、NaOH)を用いるような過酷な環境が、通常は使用される。そのような環境は、典型的には使用済みガラス製品の清浄で好結果をもたらし、したがって汚染物質を実質的に含まずかつ商業的無菌状態である。最後に、清浄溶液は、通常、清浄な水で容器から濯ぎ落とされる。
【0004】
しかし、そのような過酷な洗浄条件の使用は、それ自体が、異なるタイプの汚染問題を引き起こす可能性がある。特に苛性洗浄ステップ中、特に高温では、とりわけ金属イオンを含有する可能性のある化合物が、洗浄されるガラス容器の表面から露出して、微量の金属などの望ましくない残渣を生じる可能性がある。前記望ましくない残渣は、ガラス容器の内側から除去しなければならない。最終洗浄ステップとして通常実施される、清浄な水によるガラス容器の洗浄または濯ぎは、通常は前記望ましくない残渣を除去するのに十分ではない。
【0005】
したがって、ガラス容器(初めて充填する場合および再充填する場合の両方)の洗浄は通常、後続の洗浄ステップにより容易に除去することができるキレート錯体によって、露出した金属イオンを結合させるために、キレート剤を含有する液体でそれぞれのガラス容器を洗浄するステップを含む。
【0006】
米国特許出願第11/265,315号には、再生利用されたガラス容器を清浄化する方法が開示されている。前記方法は、ガラス容器を苛性溶液に曝し、キレート剤および酸を含む濯ぎ溶液でガラス容器を濯ぐことを含む。前記(水性)濯ぎ溶液の使用により、先の洗浄ステップによって露出した望ましくない金属イオンからの、それぞれのガラス容器の清浄化が行われる。
【0007】
さらに、種々の洗浄ステップで用いられた水の硬度の影響を、考慮しなければならない。キレート剤は、水の硬度の原因である金属イオン(カルシウムおよびマグネシウム)と錯体も形成するので、水が硬質になるほど、それぞれの濯ぎステップで添加されるキレート剤の量は多くなる。例えばガラス製品の苛性洗浄によって生じた望ましくない残渣が効果的に除去されることを確実にするには、前記洗浄ステップで用いられる遊離キレート剤の量を、制御しなければならない。前記洗浄ステップは、遊離キレート剤の量が常に、ある最小レベルにある場合のみ、有効である。そうでない場合には、ガラス製品の表面から露出した望ましくない化合物を、効果的に除去することができない。これは特に、それぞれの洗浄ステップで硬水を用いる場合に言えることである。
【0008】
現在のところ、洗浄液に含有されるEDTAなどの遊離キレート剤の量は、一般に、EDTAを含有する洗浄液のサンプルに関してCa選択的電極で電位差滴定を実施する、自動滴定分析器を用いることによって制御される。そのような電位差滴定は、キレート剤の濃度の正確な決定を含むために、遅くかつ費用がかかるので、不利である。
【0009】
さらに、そのようなガラス容器の充填または再充填ステップ中の水の硬度のモニタは、一般に、比色または電位差滴定を用いることによって実施される。例えば、洗浄溶液液中に存在する炭酸カルシウムの量は、例えばEDTAによるそれぞれのサンプルの比色滴定を実施することによって決定される。水の硬度のモニタ、および洗浄溶液中の遊離キレート剤の量の決定は、別々に取り扱わなければならない2つの異なる作業であることを示さなければならない。
【特許文献1】米国特許出願第11/265,315号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、洗浄溶液から、金属イオンを含有する可能性のある望ましくない化合物を除去することに関し、より効率的にかつ経済的にガラス容器を洗浄するための、新しい方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、
(A)キレート剤を含有する液体でガラス容器を洗浄するステップと、
(B)比色検出によって、液体中の遊離キレート剤の濃度を制御するステップと
を含む、ガラス容器を洗浄するための方法によって達成される。
【0012】
本発明による方法の利点は、遊離キレート剤の濃度の非常に有効な制御によって、コストを節約することができることである。キレート剤の濃度の完全な決定を実施することは、もはや必要とされない。濃度の制御は、非常に速く実施することができ、例えば2分未満で実施することもでき、前記ステップを頻繁に繰り返すことが可能になる。したがってコストは、非常に高い濃度の遊離キレート剤の添加を回避することによって節約することもでき、それによって用いられる化学物質が減少するので、環境にも良い影響をもたらす。その一方で、遊離キレート剤の量が少な過ぎるために、それぞれのガラス容器の表面から露出した望ましくない化合物の効率的な除去が保証されない場合には、情報が即座に得られる。したがって、好ましくは所定の窓内にある、洗浄液中に用いられるキレート剤の濃度の素早い制御が、本発明によるプロセスの主な利点であることが明らかである。
【0013】
さらに、プロセス自体または該プロセスを実施するための装置を、別の適用例で用いることができる。そのような別の適用例は、液体中の遊離キレート剤の濃度を制御しなければならない各プロセスを含む。可能な適用例は、例えば、PETボトルなどの容器を洗浄するためのプロセス、洗濯プロセス、または供給および搬送設備の潤滑化および清浄化のためのプロセスでの使用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
引き続き、本発明によるガラス容器を洗浄するための方法について、詳細に説明する。
【0015】
ステップ(A)
ステップ(A)は、キレート剤を含有する液体を用いた、ガラス容器の洗浄を含む。洗浄されるガラス容器は、例えば食品および/または飲料業界の分野で一般に用いられる、任意の形状およびサイズのものにすることができる。好ましくは、ガラス容器は瓶であり、好ましくは、ビールおよび/または飲料あるいは任意のその他のアルコールまたは非アルコール飲料用の瓶である。
【0016】
ステップ(A)で用いられる液体は、キレート剤を含有する。液体は、水溶液であることが好ましい。液体は、好ましくはハロゲン含有化合物を1重量%未満(液体1リットル当たり)含有し、および/または、好ましくは、遊離塩素を6ppm未満含有する。
【0017】
キレート剤は、特に金属錯体を形成することにより、2、3、4、5、または6座配位子として、金属、好ましくは金属イオンを結合することができる、当業者に知られている任意のキレート剤でよい。好ましいキレート剤は、少なくともアミンまたはカルボン酸官能基を含む。本発明に用いられる、好ましいキレート剤の例は、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EGTA(エチレングリコール−ビス−(b−アミノエチルエーテル)−N,N−四酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、HEIDA(N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸二ナトリウム塩)、IDS(イミノ二コハク酸ナトリウム塩);GLDA(グルタミン酸−N,N−二酢酸四ナトリウム塩)、MGDA(二酢酸メチルグリシン)、グルコン酸、2,2’−ビピリジル、およびこれらの混合物からなる群から選択される。IDSは、Baypure CX100(Lanxess、ドイツ)として市販されており、MGDAは、Trilon M(BASF AG、Ludwigshafen、ドイツ)として市販されており、HEIDA(エタノールジグリシン酸二ナトリウム塩またはEDG−Naとしても知られる)は、Dissolvine(登録商標)EDG(Akzo Nobel、オランダ)として市販されており、GLDAは、Dissolvine(登録商標)GL−38(Akzo Nobel、オランダ)として市販されている。前述のキレート剤の、対応する遊離酸の塩も、ガラス容器の表面から除去される金属に比べて、このキレート剤が使用される塩に対してより小さな親和性を持つ限り、使用してもよい。キレート剤は、EDTAであることが最も好ましい。
【0018】
本明細書で用いられるように、キレート剤の有効量は、一実施形態において、清浄化されるガラス容器の表面から滲出する金属の濃度を低下させる量であり、液体中のキレート剤の有効量は、0.01重量%から1重量%に及ぶ。その他の実施形態では、液体中のキレート剤の有効量は、0.02、0.05、または0.1重量%から0.4、0.5、0.6、0.7重量%に及ぶ。
【0019】
キレート剤を含有する液体は、ガラス表面からの金属除去の際にキレート剤と相乗的に作用することができる酸をさらに含有してよい。酸は、pHを制御するのに用いてもよく、それ自体が金属のキレート剤であってもよい。したがって酸は、モノ、ジ、またはポリカルボン酸であることができる。例示的なカルボン酸には、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、またはグルタミン酸、これらの任意の2種以上の混合物、またはこれらの塩が含まれる。いくつかの実施形態では、液体中に使用される酸の量が、0.01から0.5または1重量%、あるいは0.1から0.5または1重量%に及ぶ。酸の量は、典型的には金属キレート剤の量に等しいかまたはそれ未満である。
【0020】
液体は、洗浄ステップのpHの改善された制御を目的とした緩衝剤を、さらに含んでよい。通常の使用では、ステップ(A)による洗浄は、数多くのガラス容器で繰り返し使用されることを目的とする。使用するたびに、ステップ(A)で用いられる液体は少量の苛性アルカリ水溶液で希釈され、液体のpHを上昇させ、かつ金属除去の効率が低下する可能性がある。例えば0.01重量%から1重量%での緩衝剤の添加は、このpHの上昇を遅くし、ステップ(A)で用いられる液体の寿命を延ばす。いくつかの実施形態では、緩衝剤の量は、0.01重量%から0.1、0.2、または0.5重量%;0.05重量%から0.2、0.5、または1重量%;あるいは0.1から0.2、0.5、または1重量%に及ぶ。ステップ(A)で用いられる液体の配合中、少量の金属水酸化物および/または鉱酸を使用して、液体のpHを所望の値に調節することができる。本発明での使用に適した緩衝剤は、少なくとも4から9未満のpHを実現するために、当技術分野で典型的に使用されるあらゆるものを含む。例示的な薬剤には、KHPO、NaPO、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、およびこれらの混合物などが含まれる。
【0021】
ステップ(A)によりガラス容器を洗浄するための液体は、濃縮物の形でまたは希釈使用溶液として、好ましくは水性使用溶液として、市販されている。Divo LE(JohnsonDiversey、Racine、Wisconsin、米国)は、キレート剤としてEDTAを含有する市販の液体の一例である。Divo AI(JohnsonDiversey、Racine、Wisconsin、米国)は、pH調節用の酸を含有している市販の液体の一例である。
【0022】
本発明では、他に特に指示しない限り、化合物について、そのそれぞれの純粋な形での化学構造/化学名によって記載される。特に、混合物中に用いられる場合には、その化学構造は、例えばそれぞれの混合物のpH値の影響によって変化する可能性がある。例えば遊離酸は、対応する塩に部分的または完全に変換される可能性があり、または化学反応が生じる可能性がある。
【0023】
ステップ(B)
ステップ(B)は、液体(ステップ(A)で用いられる)中の遊離キレート剤の濃度を、比色検出によって制御することを含む。好ましい実施形態では、比色検出は、ステップ(A)で用いられた液体からサンプルを採取し、該サンプルを比色検出ユニットに移し、ステップ(B)を実施する。
【0024】
上述のように、洗浄されるガラス容器の表面から露出した化合物によって生ずる、望ましくない残渣の効果的な除去を行うことは不可欠であり、したがって、ステップ(A)で用いられる液体は、十分な量の遊離キレート剤を含有する。遊離キレート剤の濃度が、カルシウム選択性電極による時間のかかる電位差滴定を用いることによって正確に決定される現況技術による方法とは対照的に、本発明のステップ(B)は、比色検出によって実施され、それによって濃度が制御される。「比色検出」という用語は、当業者に知られている各比色検出を含む。比色検出は、必ずしも比色滴定でなければならないわけではない。好ましくは比色検出は、遊離キレート剤と、錯体を形成するのに正確な量の化合物とを反応させることによって実施される。
【0025】
これは、本発明による方法において、ステップ(A)で用いられた液体中に存在する遊離キレート剤の正確な量を決定するのに、比色滴定全体を実施する必要はないことを意味する。比色検出は、(ステップ(A)で用いられた液体からの)遊離キレート剤を含有するサンプルと、この遊離キレート剤と反応して錯体を形成する正確な量の化合物とを混合することによって実施される。反応は、指示薬の色が変化する可能性があるので、別の指標を存在させることによってモニタする。遊離キレート剤の濃度が、この遊離キレート剤と反応する化合物の濃度よりも低い場合、指示薬の色の変化は観察されない。これは、ステップ(A)の液体中の遊離キレート剤の濃度が、臨界レベルよりも低いことを意味する。その一方で、指示薬の色の変化が検出された場合、ステップ(A)の液体中の遊離キレート剤の濃度は、臨界レベルよりも高い。
【0026】
前記化合物の正確な量の調節または検出は、制御されると見なされる(臨界レベル)、ステップ(A)の液体中の遊離キレート剤の濃度に依存する。したがって、前記化合物の正確な量は、遊離キレート剤の臨界レベルの場合と等モルである濃度に等しい。言い換えれば、対応する比色滴定で用いられた指示薬の色の変化を観察するのに必要とされる濃度である。
【0027】
好ましくは、遊離キレート剤の濃度窓が検出される。この窓は、通常、最低で2.5ppm(低臨界レベル)から最高で25ppm(上臨界レベル)に及ぶ。この窓は、好ましくは4から15ppmに及び、より好ましくは5から10ppm、特に5から7ppmに及ぶ。
【0028】
錯体を形成するために、比色検出中に遊離キレート剤と反応する化合物は、EDTAなどのキレート剤の通常の比色滴定のために当業者が使用することのできる任意の化合物でよい。好ましい化合物は、マグネシウム、カルシウム、または亜鉛の水溶性塩である。最も好ましくは、MgSO、Mg(NO、MgCl、CaSO、Ca(NO、CaCl、ZnSO、Zn(NO、およびZnClからなる群から選択された化合物である。
【0029】
比色検出に用いられる指示薬は、EDTAなどのキレート剤の通常の比色滴定に用いられる、当業者に知られている指示薬でよい。好ましい指示薬は、3−ヒドロキシ−4−[(1−ヒドロキシ−2−ナフタレニル)アゾ]−7−ニトロ−1−ナフタレンスルホン酸一ナトリウム塩、2−ヒドロキシ−1−(2−ヒドロキシ−4−スルホナフタレニル−1−アゾ)−ナフタレン−3−カルボン酸、2,7−ビス[ビス(カルボキシメチル)−アミノメチル]−フルオレシン、6−(5−クロロ−2−ヒドロキシ−4−スルホフェニルアゾ)−5−ヒドロキシ−1−ナフタレンスルホン酸二ナトリウム塩、プルプル酸アンモニウム水和物、または3−ヒドロキシ−4−(6−ヒドロキシ−m−トリルアゾ)ナフタレン−1−スルホン酸である。適切な指示薬に何を選択するかは、錯体を形成するために遊離キレート剤と反応するのに用いられた化合物に何を選択したかにも依存する。化合物がマグネシウムを含有する場合、指示薬は、好ましくは3−ヒドロキシ−4−[(1−ヒドロキシ−2−ナフタレニル)アゾ]−7−ニトロ−1−ナフタレンスルホン酸一ナトリウム塩(エリオクロームブラックTとしても知られている)、6−(5−クロロ−2−ヒドロキシ−4−スルホフェニルアゾ)−5−ヒドロキシ−1−ナフタレンスルホン酸二ナトリウム塩(モルダントブルー9としても知られている)、または3−ヒドロキシ−4−(6−ヒドロキシ−m−トリルアゾ)ナフタレン−1−スルホン酸(カルマガイトとしても知られている)である。化合物がカルシウムを含有する場合、指標は、好ましくは2−ヒドロキシ−1−(2−ヒドロキシ−4−スルホナフタレニル−1−アゾ)−ナフタレン−3−カルボン酸(カルコンカルボン酸としても知られている)、2,7−ビス[ビス(カルボキシメチル)−アミノメチル]−フルオレシン(カルシンとしても知られている)、またはプルプル酸アンモニウム水和物(ムレキシドとしても知られている)である。化合物が亜鉛を含有する場合、指標は、好ましくはエリクロームブラックTである。
【0030】
さらに、緩衝剤をステップ(B)で用いてもよい。この緩衝剤は、ステップ(B)に用いられる前に、遊離キレート剤と反応する化合物および/または指示薬と混合してもよく、または緩衝剤は、比色検出ステップ(B)中に前記成分および遊離キレート剤と混合してもよい。好ましくは、ステップ(B)に用いられる緩衝剤は、好ましくはpH値10のNHClおよびNHOHの混合物から選択される。
【0031】
比色検出の色の変化は、525から880nmの間であることが好ましい。
【0032】
本発明の別の好ましい実施形態では、ステップ(A)の液体中の遊離キレート剤の濃度は、少なくとも2つの独立した比色検出によって制御される。好ましくは、少なくとも2つの独立した比色検出は、並行に実施される。これは、好ましくは、各比色検出ステップ毎に、別々の比色検出ユニットを用いることによって得られる。比色検出ユニットそのものについて、以下により詳細に説明する。3、4、5、またはそれ以上の独立した比色検出を並行して行うことが可能であり、最も好ましくは、2つの独立した比色検出によってステップ(B)を実施することであり、特に、これら2つの独立した比色検出は並行して実行される。
【0033】
少なくとも2つの独立した比色検出は、好ましくは、遊離キレート剤と、比色分析によって検出される錯体を形成する2つの異なる正確な量の化合物とを反応させることによって実施される。比色検出に用いられる正確な量の化合物は、ステップ(B)内で制御される遊離キレート剤の濃度窓によって決定される。好ましくは、独立した比色検出の1つは、好ましくは2.5ppm、より好ましくは4ppm、最も好ましくは5ppmである下限の窓(臨界窓)を制御するやり方で調節される。第2の独立した比色検出は、好ましくは25ppm、より好ましくは15ppm、さらにより好ましくは10ppm、最も好ましくは7ppmである、濃度窓の上限(臨界レベル)を制御することを目的とする。
【0034】
本発明の別の好ましい実施形態では、ステップ(A)での液体中の遊離キレート剤の濃度が2.5ppmよりも低くまたは25ppmよりも高い場合、音響および/または視覚信号が比色検出によって生成される。さらに、前記音響および/または視覚信号は、濃度窓の上述の上限または下限の任意のその他のものによって生成することができる。
【0035】
本発明による方法は、好ましくは自動および/または連続方法である。さらにステップ(A)は、いわゆる「最終前濯ぎステップ」として実施することができ、ステップ(A)は、ガラス容器を洗浄するために実施される全ての洗浄ステップの、最後から2番目のステップとして実施されることを意味する。好ましくは、液体(ステップ(A)で用いられた)pH値は、6.5から8.5の間、より好ましくは7から8の間である。
【0036】
本発明の一実施形態では、本発明による方法は、
(C)予備洗浄ステップによってガラス容器を任意的に洗浄するステップ、
(D)苛性アルカリ液体でガラス容器を洗浄するステップ、
(E)加熱した水でガラス容器を洗浄するステップ、および/または
(F)最終濯ぎステップによりガラス容器を洗浄するステップ
をさらに含む。
【0037】
好ましくは、洗浄ステップの順序が(D)、(E)、(A)、および(F)であり、ステップ(C)は任意的に、ステップ(D)の前に実施される。
【0038】
本発明の別の実施形態では、この方法が下記の通り実施される。
【0039】
連続方法および2.5ppm(臨界レベル=2.5ppm)よりも低い遊離キレート剤の濃度の検出の場合、ステップ(A)に追加のキレート剤を添加することによって遊離キレート剤の濃度が2.5ppm(臨界レベル)よりも高くなるまで、ガラス容器の洗浄ステップは停止される。好ましくは臨界レベルが4ppmであり、より好ましくは5ppmである。
【0040】
あるいは、連続方法および25ppm(臨界レベル=25ppm)よりも高い遊離キレート剤の濃度の検出の場合、前記濃度が25ppm(臨界レベル)よりも低くなるまで、ステップ(A)への追加のキレート剤の添加は停止される。好ましくは臨界レベルは15ppmであり、より好ましくは10ppm、最も好ましくは7ppmである。
【0041】
2つの上述の制御ステップ(B)は、2つの独立した比色検出により、並行して実行することが好ましい。
【0042】
本発明の別の対象は、ガラス容器を洗浄するための少なくとも1つのセクション(I)を含む装置であり、該セクション(I)は、少なくとも2つの独立した比色検出ユニットに接続されている。そのような現行の装置は、本発明によりガラス容器を洗浄するための方法、特に、ステップ(B)による遊離キレート剤の濃度が少なくとも2つの独立した比色検出によって制御される種類の方法を、実施するために使用することができる。
【0043】
比色検出ユニットそのものは、様々な会社から提供される。原則として、比色滴定に使用することもできる任意の装置を、比色検出ユニットとして用いることができる。市販の比色検出ユニットの例は、Hach Company(Loveland、Colorado、米国)の「SP 510 Hardness Monitor」、Gebruder Heyl Analysentechnik GmbH & Co.KG(Hildesheim、ドイツ)の「Testomat ECO」、Deutsche Metrohm GmbH & Co.KG(Filderstadt、ドイツ)の「Process Colorimeter」、またはEndress und Hauser Messtechnik GmbH & Co.KG(Stuttgart、ドイツ)の「Stamolys CA71HA」である。
【0044】
別の好ましい実施形態では、比色検出ユニットは、
i)線形蠕動ポンプまたは膜ポンプ;
ii)電子制御パネル;
iii)固相混合システムを任意的に有する比色計;
iv)比色検出中に用いられる化学物質の供給器;および/または
v)耐腐食性ケース
を含む。
【0045】
そのような比色検出ユニットが動作する方法は、Hach CompanyのSP 510 Hardness Monitorを用いる下記の実施例に示されている。しかし、他のあらゆる市販の比色検出ユニットが同様に動作する。
1.線形蠕動ポンプ/弁モジュールは、比色検出ユニットの心臓部である。このモジュールは、流入サンプルの流れを精密に制御し(好ましくは10から75psi(<0.34バール)の線圧で)、試薬およびサンプルを計量し、これらをサンプル・セルに注入する。
2.注入後、磁気撹拌子がセル内でサンプルおよび試薬を混合し、色の発現を生じさせる。
3.次いでサンプルの光透過率を、測光的に測定する。
4.新しいサンプルを導入し、分析を2分ごとに行う。
【0046】
ガラス容器を洗浄するための少なくとも1つのセクション(I)を含む装置そのものは当業者に知られている。しかし今日まで、少なくとも2個の独立した比色検出ユニットに接続された装置そのものは知られていない。そのような装置は、ガラス容器の洗浄ステップ中に、遊離キレート剤の下限および上限許容濃度レベル(臨界レベル)を並行して制御する可能性をもたらすので、非常に有利である。さらに、本発明による装置によれば、非常に速い速度で反復することが可能になる。
【0047】
本発明の好ましい実施形態では、セクション(I)は、装置内で用いられる全ての洗浄セクションの最後から2番目のセクションである。
【0048】
さらに、本発明による装置はさらに、
任意的に、予備洗浄ステップを実施するためのセクション(II);
苛性アルカリ洗浄を実施するためのセクション(III);
加熱した水による熱処理を実施するためのセクション(IV);
最終濯ぎステップを実施するためのセクション(V);および/または
任意的なフィルタ
を含む。
【0049】
1個または複数の洗浄セクションを含有するが比色検出ユニットを持たないような装置は当業者に周知であり、ガラス容器の充填、特に瓶の充填、特に再充填の分野で一般に利用されている。
【0050】
前述のセクションのそれぞれは、個別のタンクの形をとることが好ましい。
【0051】
本発明の他の対象は、液体中の遊離キレート剤の濃度を制御するための上述の装置(その好ましい実施形態を含む)の使用である。
【0052】
好ましくは、遊離キレート剤の濃度は、容器を洗浄するためのプロセスで、好ましくはPET(ポリエチレン−テレフタレート)ボトルまたはガラス瓶におけるプロセスで、洗濯プロセスで、好ましくは繊維を洗浄するプロセスで、食品および飲料産業における所定の適用例で清浄化するためのプロセスで、クレート(crate)洗浄のためのプロセスで、機械的な製品洗浄プロセスで、水処理のためのプロセスで、供給および搬送設備の潤滑化および清浄化のためのプロセスで、病院用設備を清浄化するためのプロセスで、制御される。
【実施例】
【0053】
決定の原理
実験は、ガラス容器用の通常の洗浄装置の最終前濯ぎセクションに接続された、Hach Companyの「SP 510 Hardness Monitor」比色検出ユニットを用いることによって行う。洗浄液(Divo LE)を、所定の濃度のキレート剤(EDTA)を有する最終前濯ぎセクションに添加する。サンプルを、最終前濯ぎセクションから比色検出ユニットに移す。pH値10で、例えば、Mg(NOと反応して赤紫色の錯体が得られるMordant Blue 9を指示薬として用いる。
【0054】
システムは、可視的アラーム信号によって制御される。EDTAの濃度が臨界レベル(実施例1から4では、臨界レベルが5ppmである)よりも低い場合、アラームが得られる。EDTA濃度を制御するための方法の不正確さは10から15%と決定された。それぞれ個別の実験を1回繰り返した。遊離EDTAのppm値は、最終前濯ぎステップで用いられる洗浄液1リットル当たりの遊離EDTAのそれぞれの量(単位:mg)に関する。
【0055】
1.新しい指示薬溶液サンプルの調製による、硝酸マグネシウムの必要とされる量の検証。0.1226gのMg(NOx6HO/50mlの、指示薬への添加であり、5ppmの遊離EDTAの臨界レベルに等しい。
【0056】
【表1】

【0057】
結果:指示薬溶液(Hachカタログ番号27692−49)の修正を、0.1226gのMg(NOx6HO/50ml、2.452gのMg(NOx6HO/1リットルの指示薬溶液の添加によって行わなければならない。次いで5ppmよりも低い遊離EDTAの濃度はアラーム信号をもたらす。
【0058】
2.水の硬度の存在下での感度
水道水(Mannheim、CaCO約356ppm)と共にDivo LEを使用することによるアラーム信号の検証。遊離EDTAを含有するDivo LE溶液の調製であり、1.36gのDivo LE(EDTA 1414ppmに等しい)を200mlの水道水で希釈した(遊離EDTA 35.4ppmが得られた)。遊離EDTA濃度を、Kittiwake Development Limited(West Sussex、英国)試験キットにより決定した。
【0059】
【表2】

【0060】
3.塩素の存在下での感度
有効塩素の存在下での、アラーム信号の検証。有効塩素12%を含有する次亜塩素酸ナトリウム溶液40ppmの、軟水サンプルおよび遊離EDTAを含有するDivo LE溶液サンプルへの添加。
【0061】
【表3】

【0062】
結果:システムは、4.8ppmまでの有効塩素の存在下で悪影響を示さなかった。しかし、有効塩素がさらに増加すると、呈色反応に乱れが生じ、アラーム信号が引き起こされた。
【0063】
4.最終前濯ぎでの低pH範囲の存在下での感度
流入する水のサンプルからの、低pHの存在下でのアラーム信号の検証。1モル/HClでpH2.3に調節されたDivo LE溶液(遊離EDTAを含有する)の調製。
【0064】
【表4】

【0065】
結果:システムは、低pH値(約2まで低い)の水サンプルを取り扱うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)キレート剤を含有する液体でガラス容器を洗浄するステップ、および
(B)比色検出によって液体中の遊離キレート剤の濃度を制御するステップ
を含む、ガラス容器を洗浄するための方法。
【請求項2】
i)自動および/または連続的方法であり、
ii)ガラス容器を再充填するために実施され、
iii)ガラス容器が瓶であり、好ましくはビールまたは飲料用の瓶であり、
iv)ステップ(A)が、最終前濯ぎステップとして実施され、および/または
v)ステップ(B)が少なくとも2つの独立した比色検出によって制御される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
キレート剤が、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EGTA(エチレングリコール−ビス−(b−アミノエチルエーテル)−N,N−四酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、HEIDA(N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸二ナトリウム塩)、IDS(イミノ二コハク酸ナトリウム塩)、MGDA(二酢酸メチルグリシン)、グルコン酸、2,2’−ビピリジル、およびこれらの混合物からなる群から選択され、特にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)であり、および/または液体が水溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(A)における液体中の遊離キレート剤の濃度が2.5から25ppmの間であり、および/または液体のpH値が6.5から8.5の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
比色検出が、ステップ(A)で用いられる液体からサンプルを採取することを含み、該サンプルが、ステップ(B)を実施するために比色検出ユニットに移される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
比色検出の色の変化が525から880nmの間であり、および/または比色検出が、遊離キレート剤と、錯体が形成される正確な量の化合物とを反応させることによって実施される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
錯体が形成されるよう比色検出中に遊離キレート剤と反応する化合物が、MgSO、Mg(NO、MgCl、CaSO、Ca(NO、CaCl、ZnSO、Zn(NO、およびZnClからなる群から選択され、および/または比色検出で用いられる指示薬が、3−ヒドロキシ−4−[(1−ヒドロキシ−2−ナフタレニル)アゾ]−7−ニトロ−1−ナフタレンスルホン酸一ナトリウム塩、2−ヒドロキシ−1−(2−ヒドロキシ−4−スルホナフチル−1−アゾ)−ナフタレン−3−カルボン酸、2,7−ビス[ビス(カルボキシメチル)−アミノメチル]−フルオレシン、6−(5−クロロ−2−ヒドロキシ−4−スルホフェニルアゾ)−5−ヒドロキシ−1−ナフタレンスルホン酸二ナトリウム塩、プルプル酸アンモニウム水和物、または3−ヒドロキシ−4−(6−ヒドロキシ−m−トリルアゾ)ナフタレン−1−スルホン酸である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(A)における液体中の遊離キレート剤の濃度が、2.5ppmよりも低くまたは25ppmよりも高い場合、音響および/または可視信号が比色検出によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
連続的方法および2.5ppmよりも低い遊離キレート剤の濃度の検出の場合、追加のキレート剤をステップ(A)に添加することによって遊離キレート剤の濃度が2.5ppmよりも高く上昇するまで、ガラス容器の洗浄が停止される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
連続方法および25ppmよりも高い遊離キレート剤の濃度の検出の場合、前記濃度が25ppmよりも低くなるまで、ステップ(A)への追加のキレート剤の添加が停止される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
(C)任意的に、予備洗浄ステップによりガラス容器を洗浄するステップ;
(D)苛性アルカリ液体でガラス容器を洗浄するステップ;
(E)加熱された水でガラス容器を洗浄するステップ;および/または
(F)最終濯ぎステップによってガラス容器を洗浄するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
洗浄ステップの順序が、(D)、(E)、(A)、および(F)であり、ステップ(C)がステップ(D)の前に任意的に実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ガラス容器を洗浄するための少なくとも1つのセクション(I)を含み、前記セクション(I)が、少なくとも2つの独立した比色検出ユニットに接続されている装置。
【請求項14】
セクション(I)が、装置内で用いられる全ての洗浄セクションの最後から2番目のセクションである、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
比色検出ユニットが、
i)線形蠕動ポンプまたは膜ポンプ;
ii)電子制御パネル;
iii)固相混合システムを任意的に有する比色計;
iv)比色検出中に用いられる化学物質の供給器;および
v)耐腐食性ケース
を含む、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
任意的に、予備洗浄ステップを実施するためのセクション(II);
苛性アルカリ洗浄を実施するためのセクション(III);
加熱された水で熱処理を実施するためのセクション(IV);
最終濯ぎステップを実施するためのセクション(V);および/または
任意的なフィルタ
をさらに含む、請求項13に記載の装置。
【請求項17】
各セクションが個別のタンクである、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
液体中の遊離キレート剤の濃度を制御するための、請求項13に記載の装置の使用。
【請求項19】
濃度が、容器、好ましくはPETボトルまたはガラス瓶を洗浄するためのプロセスで、洗濯プロセスで、好ましくは繊維を洗浄するプロセスで、食品および飲料産業での所定の適用例で清浄化するためのプロセスで、クレート洗浄のためのプロセスで、水処理のためのプロセスで、機械的な製品洗浄プロセスで、供給および搬送設備の潤滑化および清浄化のためのプロセスで、および病院用設備を清浄化するためのプロセスで制御される、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
濃度が、苛性アルカリ洗浄ステップの後のプロセスで制御される、請求項18に記載の使用。

【公表番号】特表2010−501448(P2010−501448A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512257(P2009−512257)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/069438
【国際公開番号】WO2007/137250
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(398061050)ジョンソンディバーシー・インコーポレーテッド (101)
【住所又は居所原語表記】8310 16th Street,Sturtevant,Wisconsin 53177−0902,United States of America
【Fターム(参考)】