説明

ガラス用両面粘着シートもしくはテープ

【課題】少なくとも一方の粘着面をガラス板に粘着させて使用する両面粘着シートもしくはテープであって、比較的大きな荷重をかけても固着力を維持し、被着体同士がずれることの少ない、両面粘着テープの提供。
【解決手段】シート状もしくはテープ状フォームからなる支持体またはシート状もしくはテープ状フォームの少なくとも片面に硬質樹脂フィルムを積層してなる支持体と、この支持体の両面に形成された粘着剤層と、この粘着剤層の前記支持体とは反対の面の少なくとも一方に貼付された剥離層とを備えた、少なくとも一方の粘着面をガラス板に粘着させて使用する両面粘着シートもしくはテープであって、ガラス板を被着材とする、JIS K 6850に準じた剥離層を除去した該両面粘着シートもしくはテープの引張り剪断接着強さ試験において、室温における引張り剪断接着強度のピーク値における引張り剪断変位量が2.5mm以下である、ガラス用両面粘着シートもしくはテープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス製部材に種々の部材を固定するための両面粘着シートもしくはテープに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の開口部にウインドガラスを取り付ける際の取り付け構造として、ガラスに塗布された接着剤が硬化するまでの間、留め具によってガラスを開口部に対して仮保持する仮止め部材が知られている(特許文献1参照。)。この仮止め部材は、爪部を有する脚体を備えた留め具をウインドガラスに対して予め取り付けておき、爪部を車体の開口部に形成される取付孔に対して係止させるものである。この仮止め部材は、通常、両面粘着テープによってウインドガラスに取り付けられる。該両面粘着テープとしては、アクリルフォームからなる基材にアクリル樹脂系の粘着剤層が形成された両面粘着テープが広く用いられている。
【特許文献1】特開平8−310233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、デザイン上の要求から、車両のウインドガラスは大型化する傾向にある。このような大型のガラスを車両の開口部に取り付ける際、接着剤が硬化する間に、ウインドガラスがその自重によりガラス面に平行な方向に仮保持した位置からずれる問題があった。また、車両としての一体感を醸し出すというデザイン上の要求(フラッシュサーフェイスと称される)から、ウインドガラス端部とボディーとの間隔が狭い構成が好まれるようになってきているが、この構成の場合、ウインドガラスとボディーとの間に配設されるモールリップと呼ばれる部品にかかる反力が増大するのため、ウインドガラスが仮保持した位置からずれる問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は前記課題を解決した発明であり、以下の発明を提供する。
【0005】
[1]シート状もしくはテープ状フォームからなる支持体またはシート状もしくはテープ状フォームの少なくとも片面に硬質樹脂フィルムを積層してなる支持体と、この支持体の両面に形成された粘着剤層と、この粘着剤層の前記支持体とは反対の面の少なくとも一方に貼付された剥離層とを備えた、少なくとも一方の粘着面をガラス板に粘着させて使用する両面粘着シートもしくはテープであって、ガラス板を被着材とする、JIS K 6850に準じた剥離層を除去した該両面粘着シートもしくはテープの引張り剪断接着強さ試験において、室温における引張り剪断接着強度のピーク値における引張り剪断変位量が2.5mm以下である、ガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【0006】
[2]プライマー処理が施されていない前記ガラス板を被着材とする前記試験において、室温における引張り剪断接着強度のピーク値における引張り剪断変位量が2.0mm以下である[1]に記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【0007】
[3]シート状もしくはテープ状フォームからなる支持体またはシート状もしくはテープ状フォームの少なくとも片面に硬質樹脂フィルムを積層してなる支持体と、この支持体の両面に形成された粘着剤層と、この粘着剤層の前記支持体とは反対の面の少なくとも一方に貼付された剥離層とを備えた少なくとも一方の粘着面をガラス板に粘着させて使用する両面粘着シートもしくはテープにおいて、前記粘着剤層が、ポリオールとポリイソシアネート化合物とをイソシアネート基過剰の割合で反応させて得られたイソシアネート基末端プレポリマーに、鎖延長剤を反応させて得られたウレタン樹脂または当該ウレタン樹脂にさらに末端停止剤を反応させて得られたウレタン樹脂で形成されることを特徴とするガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【0008】
[4]前記粘着剤層は、前記ウレタン樹脂に、さらに架橋剤として第2のポリイソシアネート化合物を反応させて得られる架橋ポリウレタン樹脂で形成される、[3]に記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【0009】
[5]前記鎖延長剤の少なくとも一部が、下記(a)および(b)から選ばれる化合物である[3]又は[4]に記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
(a)イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有し、これら官能基のうちの2つが、1級アミノ基、2級アミノ基および1級水酸基から選ばれた1種または2種の官能基であり、残りの官能基が、2級水酸基、3級水酸基およびカルボキシル基から選ばれた1種以上の官能基である化合物。
(b)イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有し、それら官能基のうちの2つが、1級アミノ基および2級アミノ基から選ばれた1種または2種の官能基であり、残りの官能基が1級水酸基である化合物。
【0010】
[6]前記鎖延長剤の少なくとも一部が、(1)1つの1級アミノ基と1つの1級水酸基と少なくとも1つの2級水酸基を有する化合物、(2)1つの2級アミノ基と1つの1級水酸基と少なくとも1つの2級水酸基とを有する化合物、または、(3)2つの1級水酸基と少なくとも1つの2級水酸基または3級水酸基とを有する化合物、である[5]に記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【0011】
[7]前記ポリオールが、平均水酸基価が2以上で、水酸基価が5.6〜600mgKOH/mのポリオキシアルキレンポリオールである[3]〜[6]のいずれか1つに記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【0012】
[8]前記シート状もしくはテープ状フォームが、ポリウレタンフォームからなる[3]〜[7]のいずれか1つに記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【0013】
[9]前記シート状もしくはテープ状フォームが、厚さが0.05〜3.0mmであり、密度が100〜800kg/mである、[3]〜[8]のいずれか1つに記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【0014】
[10]前記硬質樹脂フィルムが、厚さ10〜50μmであり、ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレートからなる、[3]〜[9]のいずれか1つに記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【0015】
[11]前記支持体が、厚さ0.05〜3.0mmであり、密度100〜800kg/mのポリウレタンフォームからなる[3]〜[9]のいずれか1つに記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【0016】
[12]前記支持体が、厚さ0.05〜3.0mmであり、密度100〜800kg/mのポリウレタンフォームと硬質樹脂フィルムとを積層させてなる、[3]〜[10]のいずれか1つに記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【0017】
[13]車両窓用ガラス板の車内側面に両面粘着シートもしくはテープを介して固定される底面と、車両のボディフランジに設けられた係合孔に挿入される仮止め本体部と、前記底面に貼付された[1]〜[12]のいずれかに記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープとを有する車両窓用ガラス板仮止め用の粘着剤層付き仮止め部材。
【0018】
[14]車両窓用ガラス板と、該ガラス板の車内側面に両面粘着シートもしくはテープを介して固定される底面と車両のボディフランジに設けられた係合孔に挿入される仮止め本体部とを有する仮止め部材と、前記ガラス板と前記仮止め部材との間に介在する剥離層の除去された[1]〜[12]のいずれかに記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープとを有する仮止め部材付き自動車窓用ガラス板。
【発明の効果】
【0019】
本発明のガラス用両面粘着シートもしくはテープによれば、ガラス板と、それに固定される部材との粘着力が強固であって、かつ粘着剤層の面に平行な方向の荷重がかかる状況において使用される場合であっても固定位置を保持できる。よって、車両の開口部にウインドガラスを取り付ける際、接着剤が硬化するまでの間、仮保持した位置からのウインドガラスのずれを小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のガラス用両面粘着シートもしくはテープは、シート状もしくはテープ状フォームからなる支持体またはシート状もしくはテープ状フォームの少なくとも片面に硬質樹脂フィルムを積層してなる支持体と、この支持体の両面に形成された粘着剤層と、この粘着剤層の前記支持体とは反対の面の少なくとも一方に貼付された剥離層とを備えた、少なくとも一方の粘着面をガラス板に粘着させて使用する両面粘着シートもしくはテープである。以下「両面粘着シートもしくはテープ」を特に言及しない限り「両面粘着テープ」という。この両面粘着テープは両面に剥離層を有しているが、当然のことながら被着面に粘着させる場合は剥離層を除去して使用される。被着面に粘着させるために片面または両面の剥離層を除去したものや、片面または両面の剥離層を除去した後その片面または両面を被着面に粘着させた状態のもの、などの剥離層がないことを当然の前提としているものも以下両面粘着テープということがある。
【0021】
本発明の両面粘着テープは、ガラス板を被着材とする、JIS K 6850に準じた引張り剪断接着強さ試験において、室温における引張り剪断接着強度のピーク値における引張り剪断変位量が2.5mm以下の、両面粘着テープである。JIS K 6850に準じた引張り剪断接着強さ試験における他方の被着材はガラス板に両面粘着テープを介して固定される部材の粘着層に接する面と同じ材質の被着材であることが好ましい。同じ材質でない場合は固定される部材の粘着層に接する面とほぼ同等の被着力を有する材質の被着材で試験が行われることが好ましい。固定される部材の粘着層に接する面の材質は、ガラス板と他方の被着材とを用いたJIS K 6850による引張り剪断接着強さ試験における引張り剪断接着強度が0.1MPa以上となるような、他方の被着材の材質であることが好ましい。さらに好ましいその材質は、引張り剪断接着強度が0.4MPa以上となるような表面を有する材質である。
【0022】
固定される部材の粘着層に接する面の材質は部材そのものの材料に限られず、表面処理等により改質した表面の材質であってもよい。その場合、上記試験の被着材の表面は同様に改質されたものであることが好ましい。表面の改質はガラス板と他の被着材の一方の表面に行われていてもよく、他方のみの表面に行われていてもよい。代表的な表面改質はプライマー処理であるが、これに限られるものではない。
【0023】
本発明の両面粘着テープの特徴は、粘着剤層の面に平行な方向の荷重に対して変位が少ない点にある。すなわち、JIS K 6850に準じた引張り剪断接着強さ試験において、室温における引張り剪断接着強度のピーク値における引張り剪断変位量が2.5mm以下である点に特徴を有する。プライマー処理された表面を有する被着材の引張り剪断変位量はプライマー処理されていない被着材の引張り剪断変位量と比較すると通常大きくなる。これは、プライマー処理により引張り剪断接着強度のピーク値が高くなることにより見かけ上は上記引張り剪断変位量が大きくなるが、同一荷重で比較した場合の剪断変位量はプライマー処理により通常小さくなる。同時に、プライマー処理により通常引張り剪断接着強度は高くなることより、ガラス板や固定される部材の粘着層に接する面はプライマー処理のような引張り剪断接着強度のピーク値を高める処理がなされていることが好ましい。
【0024】
プライマー処理が施されていない前記ガラス板を被着材とする前記試験において、室温における引張り剪断接着強度のピーク値における引張り剪断変位量は2.0mm以下であることが好ましい。この試験では、他方の被着材もまたプライマー処理がなされていない被着材を使用する。両面粘着テープでは両被着材ともプライマー処理を行わずにこの試験を行うと引張り剪断接着強度のピーク値が下がり(すなわち、粘着剤層と被着材が剥離しやすくなり)、それによって上記引張り剪断変位量も低下する(すなわち、少ない剪断変位量で剥離が起こる)。この現象は本発明の両面粘着テープでも従来の両面粘着テープでも同様に起こる。したがって、プライマー処理された被着材を使用した本発明の両面粘着テープの試験における上記剪断変位量と、プライマー処理されていない被着材を使用した従来の両面粘着テープの試験における上記剪断変位量とは近い値となる。これら2つの両面粘着テープを比較するためには同じ試験条件で測定する必要がある。プライマー処理されていない被着材を使用した従来の両面粘着テープの上記剪断変位量は2.5mmに近い値となる場合があるが、それと同じ条件で測定した本発明の両面粘着テープの上記剪断変位量は2.0mm以下となることが好ましい。
【0025】
本発明の両面粘着テープは、ガラス板と上記のような各種材質からなる部材とを固定するために使用される。ガラス板の材質としては、種々のガラスが使用でき、ソーダライムシリカガラス、ソーダライムシリカガラスに鉄イオン等の着色成分を含有させたガラス(熱線吸収能を有するガラス)等が挙げられる。ガラス板の形状は、平板であってもよく、曲率を有していてもよい。さらに、ガラス板は、単板ガラス板、複数の単板ガラスが中間膜を介して積層された合わせガラスのいずれであってもよい。また、これらのガラス板は強化処理が施されていてもよい。
【0026】
本発明の両面粘着テープにより固定された部材を有するガラス板の用途は特に限定されず、自動車窓用板ガラス、建築用板ガラス等が挙げられ、自動車窓用板ガラスに用いられるものが好ましい。
【0027】
ガラス板に種々の部材を固定する箇所は、ガラスの表面でもよく、周縁部でもよく、端部でもよい。また、ガラス板において種々の部材が固定される面は、ガラス板そのものの表面であってもよく、暗色セラミックペースト焼成体が形成されている表面であってもよい。暗色セラミックペース焼成体は、通常ガラスフリットおよび暗色顔料を含む組成物をガラス表面に塗布し、焼成することによって形成されるので、本発明においては、粘着に関する性質については、ガラス表面と同様の性質を有すると考えられる。また、熱線遮蔽性コーティング(たとえば金属酸化物からなる膜等)の等の表面処理が施されていてもよい。
【0028】
ガラス板に固定する種々の部材としては、樹脂製部材が好ましい。樹脂製部材としては、車両の開口部にウインドガラスを仮保持するための仮止め部材;モールディングやモールド等と呼ばれる、車両の開口部とウインドガラスとの隙間を閉塞するための部材;等が挙げられる。仮止め部材の材質としては、応力に対する変形が少なく機械的強度の高いポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)等の高強度樹脂が挙げられる。モールディングの材質としては、軟質塩化ビニル樹脂系の熱可塑性エラストマ、オレフィン系熱可塑性エラストマ、オレフィン系熱可塑性ゴム等が挙げられる。
【0029】
ガラス板に固定する部材としては、樹脂製部材に限られず、アルミダイキャスト製の部材や、各種表面処理が施された鋼板等からなる部材などの金属製部材であってもよい。このような部材としては、レインセンサー等のセンサー類をウインドガラスの表面に固定するためのブラケット等が挙げられる。さらに、ガラス板同士やカラス板とガラス製の他の部材との固定に本発明の両面粘着テープを用いることも好ましい。
【0030】
ガラス板と種々の部材とを接着する用途としては、具体的には、ウインドガラスにおいて暗色セラミックペースト焼成体が形成された箇所に仮止め部材を固定する用途、ウインドガラスの周縁部にモールディングを固定する用途、ブラケットをウインドガラスの表面に固定する用途等が挙げられる。ここで、仮止め部材、モールディング、ブラケット等の部材の形状や大きさは特に限定されず、種々の形状や大きさのものを使用できる。
【0031】
前記のガラス板と、樹脂製部材、金属製部材等の部材の接着面は、研磨剤による研磨処理や溶剤による洗浄処理を行うことが好ましい。それぞれの部材は研磨処理や洗浄処理を行うのみでもよいが、必要に応じてプライマー処理してもよい。プライマーは、ウレタン系プライマー、アクリル系プライマー、シランカップリング剤等、種々のものが使用でき、粘着剤層を形成する粘着剤との相性が良好なものから適宜選択できる。本発明においては、後述するように粘着剤としてウレタン系粘着剤が好ましいことから、プライマーとしてはウレタン系プライマーが好ましい。ウレタン系プライマーとしては、住友スリーエム社製の「N−200;商品名」等が好ましく使用できる。プライマーによる処理は、一方の被着体の接着面のみについて行ってもよく、両方の被着体の接着面について行ってもよい。
【0032】
本発明の両面粘着テープは、ガラス板を被着材とする、JIS K 6850に準じた剥離層を除去した該両面粘着シートもしくはテープの引張り剪断接着強さ試験において、室温における引張り剪断接着強度のピーク値における引張り剪断変位量が2.5mm以下である、両面粘着テープである。本発明において、引張り剪断接着強さ試験を行う際の「室温」とは20〜25℃の温度範囲を指す。
【0033】
本発明において、「引張り剪断接着強度のピーク値」とは、JIS K 6850(引張り剪断接着強さ試験方法)に準じ、室温においてクロスヘッドの移動速度10mm/分として試験を行ったとき、試験片が破壊する時の引張り剪断接着強度の値である。なお、試験体の接着条件および試験条件は実施例中に詳述する。
【0034】
すなわち、本発明における引張り剪断接着強度とは、両面粘着テープ自身の剪断引張り剪断接着強度ではなく、被着材同士を接合させたものの引張り剪断接着強度である。
【0035】
この剪断引張り剪断接着強度のピーク値は、固定位置の保持に有効である点から0.4MPa以上が好ましく、0.6MPa以上がより好ましく、1.0MPa以上が特に好ましい。引張り剪断接着強度のピーク値の上限値は特に限定されないが、一般的には、おおよそ1.5〜1.7MPa程度である。
【0036】
本発明において引張り剪断変位量とは、JIS K 6850(引張り剪断接着強さ試験方法)に準じ、室温においてクロスヘッドの移動速度10mm/分として試験を行ったとき、試験片が破壊する引張り剪断接着強度が得られたとき(引張り剪断接着強度のピーク値が得られたとき)のクロスヘッドの移動量を示す。
【0037】
本発明においては、この引張り剪断変位量が2.5mm以下であり、プライマー処理されていない被着材を使用した場合は2.0mm以下であることが好ましい。引張り剪断変位量が2.5mm以下であると、接着位置の保持に有効である。引張り剪断変位量の下限値は特に限定されないが、被着体の熱膨張係数の差が大きい場合は、被着体と両面粘着テープとの界面で剥離が起こったり、ガラス板が割れたりするおそれがある。また、ガラス板が自動車窓用板ガラス等の輸送機器に使用される部材である場合、引張り剪断変位量が極めて小さいと使用時の振動によってガラス板が割れるおそれがある。よって、このような場合は、多少の引張り剪断変位量を持つほうが好ましい。この場合、引張り剪断変位量の下限値は0.5mmであることが好ましい。よって、引張り剪断変位量は2.5mm以下であり、0.5〜2.5mmが好ましい。
【0038】
本発明の両面粘着テープとしては、前記の引張り剪断変位量および引張り剪断接着強度の値を有している限りにおいて種々の両面粘着テープが使用できる。このうち、本発明においては、シート状もしくはテープ状フォームからなる支持体またはシート状もしくはテープ状フォームの少なくとも片面に硬質樹脂フィルムを積層してなる支持体と、この支持体の両面に形成された粘着剤層と、この粘着剤層の前記支持体とは反対の面の少なくとも一方に貼付された剥離層とを備えた両面粘着テープにおいて、前記粘着剤層が、ポリオールとポリイソシアネート化合物とをイソシアネート基過剰の割合で反応させて得られたイソシアネート基末端プレポリマーに、鎖延長剤を反応させて得られたウレタン樹脂または当該ウレタン樹脂にさらに末端停止剤を反応させて得られたウレタン樹脂で形成される両面粘着テープが好ましい。
【0039】
上記両面粘着テープは、シート状もしくはテープ状フォームからなる支持体またはシート状もしくはテープ状フォームの少なくとも片面に硬質樹脂フィルムを積層してなる支持体と、この支持体の両面に形成された粘着剤層と、この粘着剤層の前記支持体とは反対の面の少なくとも一方に貼付された剥離層とで構成される。
【0040】
[支持体]
本発明において、フォームとしては、ポリアクリルフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリウレタンフォームからなることが好ましい。ポリウレタンフォームが特に好ましい。
【0041】
また、上記ポリウレタンフォームの密度は、100〜800kg/mであることが好ましく、200〜600kg/mがより好ましい。密度が100kg/m未満であると支持体としての強度が不足となる傾向にある。また、800kg/mを超えると引張り剪断接着強度が不充分となる傾向にある。
【0042】
また、上記ポリウレタンフォームの厚みは、0.05〜3.0mmであることが好ましく、0.1〜2.0mmがより好ましい。ポリウレタンフォームの厚みが0.05mm未満であると引張り剪断接着強度が不充分となる傾向にある。また、3.0mmを超えると引張り剪断変位量が大きくなる傾向にある。
【0043】
本発明の両面粘着テープにおいて、支持体は、上記シート状もしくはテープ状フォームのみからなっていてもよく、硬質樹脂フィルムが貼り付けられていてもよい。なかでも、柔軟性を有しつつ、接合力の高い両面粘着テープを得ることができるという理由から、シート状もしくはテープ状フォームの少なくとも一方の面には、硬質樹脂フィルムが貼り付けられていることが好ましい。そして、フォームと硬質樹脂フィルムは反応接着によって貼り付けられていることが好ましい。
【0044】
上記硬質樹脂フィルムは、厚さが10〜50μmであり、ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレートからなることが好ましい。
【0045】
上記シート状もしくはテープ状フォームと硬質樹脂フィルムとの反応接着方法としては、たとえば、硬質樹脂フィルムの表面に、フォーム原料をナイフコーター(knife coater)等の周知のスプレーコーター、ロールコーターを用いて所定の厚さに塗布し、塗工後、室温ないし90℃で発泡を完了し、室温ないし高温のオーブンにて120℃以下でキュアーを行う方法等が挙げられる。
【0046】
シート状もしくはテープ状フォームの表面に硬質樹脂フィルムが反応接着により一体となっている素材(以下、「フォーム基材」と記載する)としては、市販されているものを使用してもよく、たとえば、日本発条株式会社から市販されている「ニッパレイMCS;商品名」等が挙げられる。
【0047】
[粘着剤層]
本発明の両面粘着テープにおいて、粘着剤層は、ポリオールとポリイソシアネート化合物とをイソシアネート基過剰の割合で反応させて得られたイソシアネート基末端プレポリマーに、鎖延長剤を反応させて得られたもの、またはさらに末端停止剤を反応させて得られたものを主体とするウレタン樹脂からなる粘着剤で形成されており、該ウレタン樹脂に、さらにポリイソシアネート化合物を反応させて得られる架橋ポリウレタン樹脂を主体とする粘着剤で形成されることが好ましい。
【0048】
以下粘着剤層について更に詳しく説明する。
【0049】
(ポリオール)
上記イソシアネート基末端プレポリマーの原料となるポリオールとしては、たとえば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオールが好ましく、ポリオキシアルキレンポリオールが特に好ましい。
【0050】
上記ポリオキシアルキレンポリオールは、開環重合触媒および多価開始剤の存在下、アルキレンオキシドを開環付加させて製造できる。
【0051】
アルキレンオキシドとしては、炭素数2〜6のアルキレンオキシドが好ましく、具体例としてエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびそれらの組み合わせが特に好ましい。
【0052】
開環重合触媒としては、たとえば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム等の汎用アルカリ金属化合物触媒;水酸化セシウム等のセシウム金属化合物触媒;亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体等の複合金属シアン化物錯体触媒;フォスファゼン触媒等が挙げられる。
【0053】
多価開始剤としては、アルキレンオキシドが反応しうる活性水素原子を2個以上有する化合物であり、たとえば、多価アルコール、多価フェノール、ポリアミン、アルカノールアミン等が挙げられる。その価数としては2〜6価が好ましく、2〜3価がより好ましく、2価が最も好ましい。具体的には、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールプロパンまたはこれらに少量のアルキレンオキシドが付加された比較的低分子量のポリオキシアルキレンポリオール等が挙げられる。複合金属シアン化物錯体触媒を用いる場合には、多価開始剤として水酸基当たりの分子量が200〜500のポリオキシアルキレンポリオールを用いることが好ましい。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0054】
ポリオキシアルキレンポリオールは、平均水酸基数が2以上であることが好ましく、2〜6がより好ましく、2〜3が特に好ましく、2が最も好ましい。なお、ポリオキシアルキレンポリオールの1分子あたりの水酸基数は、製造するのに用いた多価開始剤の活性水素原子数と一致する。
【0055】
また、ポリオキシアルキレンポリオールは、水酸基価が5.6〜600mgKOH/gであることが好ましい。水酸基価が5.6mgKOH/g未満では、分子量が大きいためポリイソシアネート化合物と反応しにくくなり、また得られたプレポリマーが鎖延長剤と反応しにくくなる傾向にある。一方、600mgKOH/gを超えると、得られるプレポリマー中のイソシアネート化合物の比率が相対的に高くなり、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖延長剤と反応させる際にゲル化しやすくなる。
【0056】
また、ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価は、5.6〜280mgKOH/gが好ましく、11〜112mgKOH/gがより好ましく、18〜75mgKOH/gが最も好ましい。
【0057】
ポリオキシアルキレンポリオールは2種以上の混合物であってもよく、その場合においても平均の不飽和度、水酸基価は上記の範囲内にあることが好ましい。
【0058】
上記ポリエステルポリオールとしては、公知のポリエステルポリオールを用いることができる。たとえば、低分子量ジオール成分と二塩基酸成分とが縮合反応したポリエステルポリオールが挙げられる。低分子量ジオールとして、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAが挙げられる。また、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を低分子量ジオールと併用してもよい。また、二塩基酸成分としては、たとえば、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の脂肪族二塩基酸または芳香族二塩基酸が挙げられる。また、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類等の環状エステル化合物を開環重合したポリエステルポリオール等も使用できる。
【0059】
ポリエステルポリオールは、水酸基価が20〜600mgKOH/gであることが好ましく、30〜300mgKOH/gであることがより好ましい。
【0060】
ポリエステルポリオールは2種以上の混合物であってもよく、その場合においては平均の水酸基価が上記の範囲内にあることが好ましい。
【0061】
ポリオールとして、ポリオキシアルキレンポリオールとポリエステルポリオールとを併用してもよいが、それらは反応性が異なり、ゲル化や反応溶液の濁りが生じやすいため、一方を両者の合計100質量%に対して10質量%以下にすることが好ましく、5質量%以下にすることがより好ましい。なお、ポリオキシアルキレンルポリオールとポリエステルポリオールとは併用しないことがより好ましい。なお、反応溶液に濁りが生ずると無色透明なウレタン樹脂が得られなくなる。
【0062】
(ポリイソシアネート化合物)
上記イソシアネート基末端プレポリマーの原料となるポリイソシアネート化合物としては、公知の芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等を用いることができる。
【0063】
上記芳香族ポリイソシアネートとしては、芳香環を有し、該芳香環に直接結合するイソシアネート基を有するポリイソシアネート、および、芳香環を有し、該芳香環に直接結合しないイソシアネート基を有するポリイソシアネートが挙げられる。具体的には、芳香環を有し、該芳香環に直接結合するイソシアネート基を有するポリイソシアネートとしては、たとえば、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と記載する)、2,4−トリレンジイソシアネート(以下、「2,4−TDI」と記載する)、2,6−トリレンジイソシアネート(以下、「2,6−TDI」と記載する)、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネートなどが挙げられる。また、芳香環を有し、該芳香環に直接結合しないイソシアネート基を有するポリイソシアネートとしては、たとえば、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0064】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、たとえば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と記載する)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0065】
上記脂環族ポリイソシアネートとしては、たとえば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(以下、「IPDI」と記載する)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0066】
また、上述したポリイソシアネート化合物のトリメチロールプロパンアダクト型変性体、水と反応させたビュウレット型変性体、イソシアヌレート環を含有させたイソシアヌレート型変性体であってもよい。
【0067】
上述したポリイソシアネート化合物の中でも、HDI、IPDI、MDI、2,4−TDI、2,6−TDIおよびそれらの変性体から選ばれる1種以上が好ましい。耐候性を重視する場合はHDI、IPDIおよびそれらの変性体から選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0068】
(イソシアネート基末端プレポリマー)
上記ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得る。このイソシアネート基末端プレポリマーの生成反応は、特に制限されず、たとえば、ポリオールとポリイソシアネート化合物と必要に応じてウレタン化触媒と溶剤とを反応器に仕込んで行う方法等が挙げられる。
【0069】
ポリオールとポリイソシアネート化合物の配合比は、末端にイソシアネート基が残るようにするために、インデックス[(NCOのモル数/OHのモル数)×100]が110〜300となるように反応させることが好ましく、130〜250となるように反応させることがより好ましい。インデックスが110未満ではゲル化して増粘しやすくなる傾向にあり、300を超えるとプレポリマー中の未反応イソシアネート化合物濃度が高くなり過ぎて次工程の鎖延長反応が困難になる傾向にある。
【0070】
また、使用するポリオールおよびポリイソシアネート化合物の反応性や、鎖延長剤の配合量によって異なるが、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基含有量(以下、「NCO%」と記載する)は0.5〜12質量%が好ましく、1〜4質量%がより好ましい。NCO%が0.5質量%未満では充分な量の鎖延長剤を反応させることができず、12質量%を超えると鎖延長反応の制御が難しくなる傾向にある。
【0071】
プレポリマー生成反応において使用されるウレタン化触媒としては、たとえば、3級アミン系化合物、有機金属系化合物等の公知のものが挙げられる。
【0072】
3級アミン系化合物としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)等が挙げられる。
【0073】
有機金属系化合物としては、錫系化合物、非錫系化合物が挙げられる。錫系化合物としては、たとえば、ジブチル錫ジクロリド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロミド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(以下、「DBTDL」と記載する)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルフィド、トリブチル錫スルフィド、トリブチル錫オキシド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキシド、トリブチル錫エトキシド、ジオクチル錫オキシド、トリブチル錫クロリド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2−エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。非錫系化合物としては、たとえば、ジブチルチタニウムジクロリド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロリド等のチタン系化合物、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛等の鉛系化合物、2−エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネート等の鉄系化合物、安息香酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルト等のコバルト系化合物、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛系化合物、ナフテン酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0074】
上述したウレタン化触媒の中でも、DBTDL、2−エチルヘキサン酸錫等が好ましい。また、上述したウレタン化触媒は単独で用いてもよいし併用してもよい。
【0075】
また、溶剤としては、たとえば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、メチルエチルケトン(以下、「MEK」と記載する)等のケトン類、ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
反応温度は120℃以下が好ましく、70〜100℃がより好ましい。反応温度が120℃を超えると、アロハネート反応が進行して所定の分子量と構造を有するイソシアネート基末端プレポリマーを合成することが困難になる上に、反応速度の制御が困難になる。反応温度が70〜100℃の場合には、反応時間は2〜20時間であることが好ましい。
【0077】
(鎖延長剤)
上記鎖延長剤の少なくとも一部は、下記(a)および(b)から選ばれる化合物であることが好ましい。
【0078】
(a)イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有し、これら官能基のうちの2つが、1級アミノ基、2級アミノ基および1級水酸基から選ばれた1種または2種の官能基であり、残りの官能基が、2級水酸基、3級水酸基およびカルボキシル基から選ばれた1種以上の官能基である化合物。
(b)イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有し、それら官能基のうちの2つが、1級アミノ基および2級アミノ基から選ばれた1種または2種の官能基であり、残りの官能基が1級水酸基である化合物。
【0079】
このような鎖延長剤としては、分子量は500以下が好ましい。
【0080】
上記鎖延長剤としては、たとえば、下記(1)〜(6)の化合物等が挙げられる。
【0081】
(1)1つの1級アミノ基と1つの1級水酸基と少なくとも1つの2級水酸基を有する化合物。
(2)1つの2級アミノ基と1つの1級水酸基と少なくとも1つの2級水酸基とを有する化合物。
(3)2つの1級水酸基と少なくとも1つの2級水酸基または3級水酸基とを有する化合物。
(4)2つのアミノ基と少なくとも1つの水酸基とを有する化合物。
(5)2つの1級水酸基と少なくとも1つのカルボキシル基とを有する化合物。
(6)2つのアミノ基と少なくとも1つのカルボキシル基とを有する化合物。
【0082】
上記(1)の化合物は、具体例として、たとえば、1−アミノ−2,3−プロパンジオール(以下、「APD」と記載する)等が挙げられる。
【0083】
上記(2)の化合物は、具体例として、たとえば、1−メチルアミノ−2,3−プロパンジオール(以下、「MAPD」と記載する)、N−(2−ヒドロキシプロピル)エタノールアミン等が挙げられる。
【0084】
上記(3)の化合物は、具体例として、たとえば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールからなる群より選ばれる1種の化合物に、炭素数3〜4のアルキレンオキシドを付加することにより得られる化合物(炭素数3〜4のアルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、3,4−ブチレンオキシドが挙げられる)や、グリセリン、ジグリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール等のグリセリン系化合物、マンニトール、マルトース、ソルビトール等が挙げられる。
【0085】
上記(4)の化合物の該アミノ基は1級アミノ基または2級アミノ基のいずれであってもよい。また、水酸基は1級、2級または3級水酸基のいずれであってもよい。そして、(4)の化合物は、具体例として、例えば、メタキシリレンジアミンのプロピレンオキシド1モル付加物(青木油脂社製、「MXDA−PO1;商品名」)、メタキシリレンジアミンのプロピレンオキシド2モル付加物(青木油脂社製、「MXDA−PO2;商品名」)、メタキシリレンジアミンのエチレンオキシド1モル付加物(青木油脂社製、「MXDA−EO1;商品名」)、メタキシリレンジアミンのエチレンオキシド2モル付加物(青木油脂社製、「MXDA−EO2;商品名」)、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン(広栄化学工業株式会社製)、アミノエチルエタノールアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)キシリレンジアミン等が挙げられる。
【0086】
上記(5)の化合物としては、ジメチロールカルボン酸類が挙げられ、具体例として、たとえば、ジメチロールプロピオン酸(以下、「DMPA」と記載する)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸)、ジメチロールブタン酸(以下、「DMBA」と記載する)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸)、ジメチロールペンタン酸(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ペンタン酸)、ジメチロールへプタン酸(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)へプタン酸)、ジメチロールオクタン酸(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)オクタン酸)、ジメチロールノナン酸(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ノナン酸)等が挙げられる。
【0087】
上記(6)の化合物は、具体例として、たとえば、リジン、アルギニン等が挙げられる。
【0088】
また、本発明においては、鎖延長剤として、上記(1)〜(6)の化合物以外に、1つの2級アミノ基および1つの1級水酸基を有し、1つの3級水酸基を有する化合物等も使用できる。
【0089】
そして、本発明において鎖延長剤としては、上記(1)〜(3)の化合物が好ましく、更に好ましくは、上記(1)、(2)の化合物である。
【0090】
上記化合物は、官能基を3つ以上有するが、相対的に反応性の高い2つの官能基が、主にイソシアネート基末端プレポリマーと反応し、相対的に反応性の低い残りの官能基は反応せずに樹脂中に残存すると考えられる。この残存する官能基は、後に架橋剤による架橋反応に使用できる。また、この鎖延長反応は反応を制御しやすいため、生成物のゲル化を抑制してウレタン樹脂の高粘度化を防止できる。
上記化合物は、いずれも入手容易なものであり、低コストである。
【0091】
(その他の鎖延長剤)
本発明では、上記化合物以外の他の鎖延長剤を併用することができる。他の鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応可能な官能基を2つ有する分子量500以下の化合物が好ましい。他の鎖延長剤としては、たとえば、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、トリレンジアミン等のジアミン化合物、1,4−ブタンジール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール等のジオール化合物、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン類が挙げられる。また、少量の前記した化合物以外のトリオール化合物を併用してもよい。他の鎖延長剤を使用する場合は、鎖延長剤の全使用量の50モル%以下が好ましい。
【0092】
また、上記イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有する鎖延長剤とその他の鎖延長剤とを組み合わせる場合において、これらの鎖延長剤の残基が、分子内に均一に配置されたウレタン樹脂を得るためには、上記イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有する鎖延長剤とその他の鎖延長剤と、イソシアネート基に対する反応性が近いもの同士で組み合わせることが好ましい。たとえば、上記イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有する鎖延長剤がアミノ基を2つ有する場合には、その他の鎖延長剤がエチレンジアミンやトリレンジアミンなどのジアミン化合物であることが好ましい。上記イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有する鎖延長剤が1級水酸基を2つ有する場合には、その他の鎖延長剤として1,4−ブタンジオールなどのジオール化合物を組み合わせることが好ましい。
【0093】
(ウレタン樹脂)
上記イソシアネート基末端プレポリマーと鎖延長剤とを鎖延長反応させて、ウレタン樹脂を得る。この鎖延長反応としては、特に制限されず、たとえば、以下の(A)〜(C)の方法が挙げられ、イソシアネート基が徐々に減少するため均一な樹脂を得やすいことから、(A)または(C)の方法が好ましい。
【0094】
(A)イソシアネート基末端プレポリマー溶液をフラスコに仕込み、そのフラスコに鎖延長剤を滴下して反応させる方法。
(B)鎖延長剤をフラスコに仕込み、イソシアネート基末端プレポリマー溶液を滴下して反応させる方法。
(C)イソシアネート基末端プレポリマー溶液を溶剤で希釈した後、そのフラスコに鎖延長剤を所定量一括投入して反応させる方法。
【0095】
鎖延長剤の添加量は、イソシアネート基末端プレポリマーのNCO%により異なるが、鎖延長後のイソシアネート基末端プレポリマーのNCO%が0.01〜1.0質量%となる量であることが好ましく、0.05〜0.2質量%となる量であることがより好ましい。鎖延長剤の添加量が、イソシアネート基末端プレポリマーのNCO%が0.01質量%未満になる量では、鎖延長反応時に急激に増粘してゲル化しやすくなる。イソシアネート基末端プレポリマーのNCO%が0.4質量%になる量を超えると鎖延長が不充分になり所望の分子量にしにくくなる。
【0096】
鎖延長反応における反応温度は80℃以下が好ましい。反応温度が80℃を超えると反応速度が速くなりすぎて反応の制御が困難になるため、所望の分子量と構造を有するウレタン樹脂を得るのが困難になる傾向にある。溶剤存在下で鎖延長反応を行う場合には、溶媒の沸点以下が好ましく、特にMEK、酢酸エチルの存在下では40〜60℃が好ましい。
【0097】
また、本発明においては、上記鎖延長反応により得られたウレタン樹脂を、さらに末端停止剤と反応させてもよい。末端停止剤と反応させることで、安定性の高いウレタン樹脂とすることができる。
【0098】
上記末端停止剤としては、イソシアネート基と反応可能な官能基を有する化合物であって当該官能基を1つのみ有する化合物、または、イソシアネート基と反応可能な官能基を有する化合物であって、1つの反応性の高い官能基と、当該官能基よりも反応性の低い官能基を1〜2つ有する化合物が使用できる。
【0099】
官能基を1つのみ有する化合物としては、すなわち、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、1級水酸基または2級水酸基を1つのみ有する化合物が使用できる。たとえば、ジエチルアミン、モルホリン等のモノアミン化合物およびメタノール等のモノオール化合物が挙げられる。
【0100】
イソシアネート基と反応可能な官能基を有する化合物であって、1つの反応性の高い官能基と、当該官能基よりも反応性の低い官能基を1〜2つ有する化合物としては、例えば1つの1級アミノ基または2級アミノ基とともに、1〜2つの水酸基を有する化合物が挙げられる。このような化合物は、官能基を2つ以上有しているが、当該官能基の反応性が異なるので、反応性の高い1つの官能基が反応した後は、残りの官能基は反応せず、実質的に1官能と同等となる。水酸基としては、2級水酸基であることがより好ましい。具体的には、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(以下、「AMP」と記載する)、モノイソプロパノールアミン、アミノプロパノール等の水酸基を有するモノアミン化合物等が使用できる。
【0101】
末端停止剤の添加量は、鎖延長反応後に残存する末端イソシアネート基の1モルに対して、末端停止剤が1モル以上2モル以下となる割合であることが好ましい。1モル未満では、停止反応後にイソシアネート基が残るので、得られるウレタン樹脂が不安定になる。2モルを超えると低分子量化合物が増加するため好ましくない。
【0102】
また、必要に応じて添加剤を添加してもよい。添加剤としては、たとえば、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン等の充填剤、粘着付与剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、光安定剤等が挙げられる。
【0103】
そして、上記ウレタン樹脂は、GPCによる標準ポリスチレン換算分子量で、数平均分子量が10,000以上であることが好ましく、数平均分子量が30,000以上であることがより好ましい。数平均分子量が10,000未満であると、粘着特性、特に保持力の低下が著しく、好ましくない。上限は特に制限されないが、数平均分子量が300,000超になるとゲル化の可能性があるので好ましくないので、数平均分子量は300,000以下が好ましい。
【0104】
(架橋ポリウレタン樹脂)
上記ウレタン樹脂は、それ自体で粘着性能を有しているので、そのまま粘着剤層として使用できる。しかしながら、該ウレタン樹脂中に残存する官能基を、さらに架橋剤としての第2のポリイソシアネート化合物と反応させることにより、ウレタン樹脂中に残存する官能基を介して架橋し、粘着性能と強度のバランスが良好となる。また、上述したウレタン樹脂を用いたものであるため、低コストである。しかも、このウレタン樹脂および上記架橋ポリウレタン樹脂は、アクリル系化合物を含まないので、被着体への移行性、皮膚刺激性が低いと考えられる。さらには、この架橋ポリウレタン樹脂は分子量が大きく、低温時に固くなりにくいため、粘着力の温度依存性が低いと考えられる。そして、ゴム系粘着剤のように低分子量化合物が表面に移行することもないと思われる。
【0105】
架橋剤として使用しうるポリイソシアネート化合物としては、前述したポリイソシアネート化合物およびそれらのトリメチロールプロパンアダクト型変性体、ビュウレット型変性体、またはイソシアヌレート型変性体等の多官能ポリイソシアネートが用いられる。なかでも、平均官能基数2超の変性体が好ましい。たとえば「デュラネートP301−75E;商品名」(旭化成社製、トリメチロールプロパンアダクト型HDI、イソシアネート基含有量:12.9質量%、固形分:75質量%)、「コロネートL;商品名」(日本ポリウレタン社製、トリメチロールプロパンアダクト型TDI、イソシアネート基含有量:13.5質量%、固形分:75質量%)等が使用できる。
【0106】
架橋剤の使用量としては、イソシアネート基含有量(溶液の場合には溶剤を除く)10〜30質量%のポリイソシアネート化合物を、上記ウレタン樹脂100質量部に対して20質量部以下の範囲で反応させることが好ましい。より良好な再剥離性が発揮することから、0.01〜10質量部であることがより好ましい。これに対し、架橋剤としてのポリイソシアネート化合物を使用しない場合には、凝集力が低下して凝集破壊しやすくなる。また、20質量部を超えると凝集が強すぎて粘着力が低下する傾向にある。この架橋剤の使用量の調整により、粘着剤の強度を調整することが可能であるので、粘着性と強度のバランスが取れた粘着剤を容易に得ることができる。
【0107】
架橋剤としてのポリイソシアネート化合物は、支持体に粘着剤層を形成させる直前に、上記ウレタン樹脂に添加して、架橋反応させることが好ましい。
【0108】
架橋剤とウレタン樹脂に残存する官能基とを反応させる際には、ウレタン化触媒を用いることができる。ウレタン化触媒としては、イソシアネート基末端プレポリマー生成反応の際に用いるウレタン化触媒を用いることができる。
【0109】
また、必要に応じて添加剤を添加してもよい。添加剤としては、たとえば、イソシアネート基含有シラン化合物等が挙げられる。
【0110】
本発明における粘着剤層は、以下の方法で測定した粘着力が10N/25mm以上であることが好ましい。すなわち、25μmのPETフィルム上に25μmの厚さで粘着剤層を設けて、粘着シートを得る。この粘着シートを幅25mmのテープ状に切断したものを、23℃相対湿度65%雰囲気にて、厚さ1.5mmのステンレス鋼板(SUS304(JIS))に貼着する。ついで、JIS Z 0237(1991年)に準じて2kgのゴムロールを用い、圧着を行う。30分間後にJIS B 7721に規定する引張り試験機にて粘着力(180度ピール、引張速度300mm/分)を測定する方法である。
【0111】
[剥離層]
本発明の両面粘着テープにおいては、使用時まで、粘着剤層の粘着面を保護するための剥離層を粘着剤層の少なくとも一方の面に有している。たとえば、両面粘着テープがシート状である場合は、粘着剤層の前記支持体とは反対の面の両方の面に有していることが好ましい。また、両面粘着テープがロール状である場合は、粘着剤層の前記支持体とは反対の面の片方の面に有していることが好ましい。
【0112】
剥離層としては、特に規定されず、公知の剥離用ライナーフィルムから適宜選択して用いることができる。たとえば、紙、不織布、もしくは、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム等を基材とし、その基材の少なくとも片面に、シリコーン系離型処理剤、フッ素系離型処理剤、長鎖アルキル系離型処理剤等の処理剤を施し、離型処理層を設けたもの等が挙げられる。
【0113】
[粘着シートもしくはテープの製造方法]
本発明の両面粘着テープは、たとえば、以下のようにして製造することができる。
すなわち、剥離用ライナーフィルムの離型処理層を設けた面に、ウレタン樹脂溶液、またはウレタン樹脂溶液と架橋剤の混合物を供給するとともに薄く延ばし、乾燥させることによって粘着剤層を形成する。次いで、この粘着剤層の上に、支持体を積層し、粘着剤層を支持体に形成させる。また、他方の面についても同様の操作を行い支持体の両面に粘着剤層を形成させる。
そして、この剥離用ライナーフィルムと支持体とが粘着剤層を介して一体となったものを、室温で、約1週間養生する。この時、ウレタン樹脂溶液と架橋剤の混合物を供給した場合には、剥離用ライナーフィルム上で、ウレタン樹脂の架橋反応が進行し、架橋ウレタン樹脂が形成される。こうすることで、剥離用ライナーフィルム(剥離層)で保護された両面粘着テープを製造することができる。なお、剥離層は、両面粘着テープの粘着剤層の両面に設けてもよく、片面のみに設けてもよい。また、粘着剤層の片面のみに剥離層を設ける場合においては、両面粘着テープは両面とも剥離性の剥離用ライナーフィルムを用いてロール状に巻き取られたものであることが好ましい。
このようにして得られる両面粘着テープは、使用される用途に応じて、シート状でもしくはテープ状に切断して使用できる。
【0114】
そして、本発明の両面粘着テープは、ガラス板を被着材とする、JIS K 6850に準じた剥離層を除去した該両面粘着シートもしくはテープの引張り剪断接着強さ試験において、室温における引張り剪断接着強度のピーク値における引張り剪断変位量が2.5mm以下であることにより、ガラス板に樹脂製部材や金属製部材とを固定や、またはガラス板同士やカラス板とガラス製の他の部材との固定に好適である。特に、ガラス板と樹脂製部材とを接着する用途に有効であり、荷重がかかる状況においても被着体をしっかり固定でき、位置ずれを抑制できる。
【0115】
また、本発明両面粘着テープは、粘着剤層がポリウレタン樹脂からなるものであって、アクリル系樹脂を含んでいないため、皮膚刺激性が低い。また、リワーク性に優れており、貼り直しが可能である。そして、引張り剪断接着強度が高く、かつ、引張り接着剪断変位量を小さくできるため、荷重をかけても、被着体をしっかりと固定することができる。
【0116】
具体的には、自動車窓用板ガラスに、仮止め部材、モールディング等の樹脂製部材、ブラケット等の金属製部材を接着する用途に特に好適である。
【0117】
図6は、自動車窓用ガラス板仮止め用の粘着剤層付き仮止め部材、および、仮止め部材付き自動車窓用ガラス板の一例を示す図である。仮止め部材17の底面(ガラス板に固定される箇所)の形状に合わせて両面粘着テープ18を切断し、一方の剥離層を剥離し、底面に貼り付け、圧着することによって、本発明の粘着剤層付き仮止め部材15が得られる。粘着剤層付き仮止め用部材から剥離層を剥離して、自動車窓用ガラスの所定の位置に貼り付け、圧着し、必要に応じて養生することにより、仮止め部材付き自動車窓用板ガラス40が得られる。
【実施例】
【0118】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。
【0119】
[1]粘着剤の製造例
以下の製造例(1)によって、粘着剤を製造した。なお、各製造例で使用したポリオールは、以下に示すポリオール(P1)を使用した。また、鎖延長剤は、以下に示す化合物(C1)を使用した。
【0120】
[ポリオール]
ポリオール(P1):プロピレングリコールを開始剤とし、KOH触媒を用いてプロピレンオキシドを反応させて製造した、水酸基価56.1mgKOH/gのポリオキシプロピレンジオール。
[鎖延長剤]
化合物(C1):N−(2−ヒドロキシプロピル)エタノールアミン
[末端停止剤]
MIPA:モノイソプロパノールアミン
【0121】
(製造例1)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコに215.3gのポリオール(P1)、28.1gの2,4−TDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートT−100)、ウレタン化触媒としてDBTDLをポリオール(P1)、およびTDIの合計量に対して25ppmに相当する量を仕込み、80℃まで徐々に昇温し、反応を2時間行ってイソシアネート基末端プレポリマーを得た(得られたプレポリマーのNCO%を表に示す)。その後、60℃まで冷却し、125gの酢酸エチル、125gのMEKを添加した後、鎖延長剤として5.92gの化合物(C1)を添加して反応させた。60℃で反応を続け、NCO%が0.1質量%以下になった時点で末端停止剤であるMIPA0.7gを添加して反応を終了し、ポリウレタン溶液(ウレタン樹脂A)を得た。
得られたポリウレタン溶液は、無色透明で固形分が50質量%であった。またこのポリウレタン溶液の粘度を測定したところ、4,300mPa・s/25℃であった。また、このポリウレタン溶液中の樹脂の数平均分子量は56,000であった。
なお、ポリウレタン溶液の25℃における粘度は、B型粘度計で測定した。ポリウレタン溶液中の樹脂分の数平均分子量はゲルパーミエーショングラフィー法によりポリスチレン換算で測定した。
次いで、得られたポリウレタン溶液100質量部に対し、架橋剤として、コロネートL(日本ポリウレタン社製、トリメチロールプロパンアダクト型TDI、イソシアネート基含有量;13.5質量%、固形分;75質量%)を2.0質量部添加し、毎分40回転で1分間、撹拌混合して、粘着剤A(架橋ポリウレタン樹脂)を得た。粘着剤Aの上記の測定方法で粘着力を測定した結果を表1に示す。
【0122】
【表1】

【0123】
[2]粘着テープの製造例
(実施例1)
図1(a)に示すように、片面にシリコーン系離型剤の塗布されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなる厚さ100μmの離型用ライナーフィルム1(本発明の剥離層に相当)の離型剤が塗布された面に、製造例1で得た粘着剤Aを、乾燥後の厚みが35μmとなるように塗工して粘着剤層2を形成した。次いで、粘着剤層2を形成した剥離用ライナーフィルム1を100℃で1分間乾燥し、溶剤を除去した。そして、厚さ0.41mm、密度350kg/mのウレタンフォーム3の片面に、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(本発明の硬質樹脂フィルムに相当)4が貼り付けられたフォーム基材5(日本発条社製 商品名「ニッパレイMCS」厚さ0.45mm、密度580kg/m)の一方の面に、粘着剤層2を介して上記粘着剤層2を形成した剥離用ライナーフィルム1を貼り合せた。同様にフォーム基材5の他方の面にも粘着剤層2を介して上記粘着剤層2を形成した上記剥離用ライナーフィルム1を貼り合せた。こうして、図1(b)に示すように、フォーム基材5の両面に粘着剤層2を形成した。その後、室温条件で、1週間養生し、粘着剤を硬化させて、実施例1の粘着シートを得た。得られた粘着シートを幅20mmのテープ状に切断して粘着テープを得た。
【0124】
(実施例2)
支持体として、厚さ0.41mm、密度350kg/mのウレタンフォーム3の片面に、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム4が貼り付けられたフォーム基材5(日本発条社製 商品名「ニッパレイMCS」厚さ0.45mm、密度580kg/m)の代わりに、厚さ0.40mm、密度350kg/mのウレタンフォームを使用した以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを得た。得られた粘着シートを幅20mmのテープ状に切断して粘着テープを得た
実施例1の粘着テープの代わりにアクリルフォームからなる支持体の両面に、アクリル樹脂系の粘着剤層の形成された市販品A(「#4215;商品名 住友スリーエム社製」厚さ0.40mm)を20mm幅に切断したものを用いた。
【0125】
[3]粘着テープの粘着性評価例
[3−1]引張り剪断接着強度と引張り剪断変位量(その1)
図3に示すように、150mm×25mm、厚さ5mmのガラス平板aの一端に暗色セラミックペースト焼成体層bを形成した。つぎに、ポリブチレンテレフタレート製の平板c(40mm×20mm、厚さ3mm)および前記暗色セラミックペースト焼成体層の接着面をイソプロピルアルコールで脱脂し、風乾した。これらの基材に市販のプライマー(住友スリーエム社製、商品番号;N−200)を塗布し、乾燥した。
20mm×10mmに切り出した実施例1、実施例2、比較例1の両面粘着テープをポリブチレンテレフタレート製基材に貼り付けた。つぎに、これを暗色セラミックペースト焼成体層の端部に貼り付け、100Nで10秒間圧着させ、24時間養生し、試験片を得た。接着面積は20mm×10mであった。得られた試験片を、JIS K 6850に規定された引っ張り剪断接着強さ試験に準じ、クロスヘッドの移動速度を10mm/分として引張り剪断変位量及び引張り剪断接着強度を測定した。この結果を表2および図3に示す。
【0126】
【表2】

【0127】
表2及び図3に示すように、実施例1、実施例2の両面粘着テープは、引張り剪断接着強度が高く、引張り接着剪断変位量の小さいものであった。
【0128】
[3−2]引張り剪断接着強度と引張り剪断変位量(その2)
実施例1および比較例1の両面粘着テープを用い、それぞれ(a)ガラス板の暗色セラミックペースト焼成体層およびポリブチレンテレフタレート製基材の両方についてプライマー処理を行わないで得た試験片、(b)暗色セラミックペースト焼成体層はプライマー処理せず、ポリブチレンテレフタレート製基材のみをプライマー処理して得た試験片、(c)暗色セラミックペースト焼成体層およびポリブチレンテレフタレート製基材の両方についてプライマー処理を行って得た試験片、について[3−1]と同様にして引っ張り剪断接着強さ試験を行った。結果を表3及び図4、5に示す。
【0129】
【表3】

【0130】
表3および図4、5に示すように、実施例1の粘着テープを用いた場合、ガラス板の暗色セラミックスペースト焼成体層をプライマー処理した試験片については、室温における引張り剪断接着強度のピーク値における引張り剪断変位量が2.5mm以下であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の両面粘着テープは、ガラス板に樹脂製部材等の種々の部材を固定する用途に有用である。よって、ガラス板が使用される分野における両面粘着テープ等に適用でき、特に自動車産業分野における両面粘着テープとして有効に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の両面粘着テープの製造方法の一例を示す説明図である。
【図2】両面粘着テープの粘着性評価方法を示す説明図である。
【図3】実施例及び比較例の両面粘着テープの引張り接着剪断強度と引張り剪断変位量との関係を示す図表である。
【図4】実施例の粘着テープの引張り接着剪断強度と引張り剪断変位量との関係を示す別の図表である。
【図5】比較例の粘着テープの引張り接着剪断強度と引張り剪断変位量との関係を示す別の図表である。
【図6】本発明の車両窓用ガラス板仮止め用クリップおよび仮止め部材付きガラス板の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0133】
1:剥離用ライナーフィルム(剥離層)
2:粘着剤層
3:ウレタンフォーム(フォーム)
4:ポリエチレンテレフタレートフィルム(硬質樹脂フィルム)
5:フォーム基材(支持体)
a:ガラス平板
b:暗色セラミックペースト焼成体層
c:ポリブチレンテレフタレート製平板
d:両面粘着テープ
17:仮止め部材
18:両面
15:粘着層付き仮止め部材
W:自動車窓用板ガラス
40:仮止め部材付き自動車窓用ガラス板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状もしくはテープ状フォームからなる支持体またはシート状もしくはテープ状フォームの少なくとも片面に硬質樹脂フィルムを積層してなる支持体と、この支持体の両面に形成された粘着剤層と、この粘着剤層の前記支持体とは反対の面の少なくとも一方に貼付された剥離層とを備えた、少なくとも一方の粘着面をガラス板に粘着させて使用する両面粘着シートもしくはテープであって、
ガラス板を被着材とする、JIS K 6850に準じた剥離層を除去した該両面粘着シートもしくはテープの引張り剪断接着強さ試験において、室温における引張り剪断接着強度のピーク値における引張り剪断変位量が2.5mm以下である、ガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【請求項2】
プライマー処理が施されていない前記ガラス板を被着材とする前記試験において、室温における引張り剪断接着強度のピーク値における引張り剪断変位量が2.0mm以下である請求項1に記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【請求項3】
シート状もしくはテープ状フォームからなる支持体またはシート状もしくはテープ状フォームの少なくとも片面に硬質樹脂フィルムを積層してなる支持体と、この支持体の両面に形成された粘着剤層と、この粘着剤層の前記支持体とは反対の面の少なくとも一方に貼付された剥離層とを備えた少なくとも一方の粘着面をガラス板に粘着させて使用する両面粘着シートもしくはテープにおいて、
前記粘着剤層が、ポリオールとポリイソシアネート化合物とをイソシアネート基過剰の割合で反応させて得られたイソシアネート基末端プレポリマーに、鎖延長剤を反応させて得られたウレタン樹脂または当該ウレタン樹脂にさらに末端停止剤を反応させて得られたウレタン樹脂で形成されることを特徴とするガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【請求項4】
前記粘着剤層は、前記ウレタン樹脂に、さらに架橋剤として第2のポリイソシアネート化合物を反応させて得られる架橋ポリウレタン樹脂で形成される、請求項3に記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【請求項5】
前記鎖延長剤の少なくとも一部が、下記(a)および(b)から選ばれる化合物である請求項3又は4に記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
(a)イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有し、これら官能基のうちの2つが、1級アミノ基、2級アミノ基および1級水酸基から選ばれた1種または2種の官能基であり、残りの官能基が、2級水酸基、3級水酸基およびカルボキシル基から選ばれた1種以上の官能基である化合物。
(b)イソシアネート基と反応可能な官能基を3つ以上有し、それら官能基のうちの2つが、1級アミノ基および2級アミノ基から選ばれた1種または2種の官能基であり、残りの官能基が1級水酸基である化合物。
【請求項6】
前記鎖延長剤の少なくとも一部が、(1)1つの1級アミノ基と1つの1級水酸基と少なくとも1つの2級水酸基を有する化合物、(2)1つの2級アミノ基と1つの1級水酸基と少なくとも1つの2級水酸基とを有する化合物、または、(3)2つの1級水酸基と少なくとも1つの2級水酸基または3級水酸基とを有する化合物、である請求項5に記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【請求項7】
前記ポリオールが、平均水酸基価が2以上で、水酸基価が5.6〜600mgKOH/mのポリオキシアルキレンポリオールである請求項3〜6のいずれか1つに記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【請求項8】
前記シート状もしくはテープ状フォームが、ポリウレタンフォームからなる請求項3〜7のいずれか1つに記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【請求項9】
前記シート状もしくはテープ状フォームが、厚さが0.05〜3.0mmであり、密度が100〜800kg/mである、請求項3〜8のいずれか1つに記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【請求項10】
前記硬質樹脂フィルムが、厚さ10〜50μmであり、ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレートからなる、請求項3〜9のいずれか1つに記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【請求項11】
前記支持体が、厚さ0.05〜3.0mmであり、密度100〜800kg/mのポリウレタンフォームからなる請求項3〜9のいずれか1つに記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【請求項12】
前記支持体が、厚さ0.05〜3.0mmであり、密度100〜800kg/mのポリウレタンフォームと硬質樹脂フィルムとを積層させてなる、請求項3〜10のいずれか1つに記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープ。
【請求項13】
車両窓用ガラス板の車内側面に両面粘着シートもしくはテープを介して固定される底面と、車両のボディフランジに設けられた係合孔に挿入される仮止め本体部と、前記底面に貼付された請求項1〜12のいずれかに記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープとを有する車両窓用ガラス板仮止め用の粘着剤層付き仮止め部材。
【請求項14】
車両窓用ガラス板と、該ガラス板の車内側面に両面粘着シートもしくはテープを介して固定される底面と車両のボディフランジに設けられた係合孔に挿入される仮止め本体部とを有する仮止め部材と、前記ガラス板と前記仮止め部材との間に介在する剥離層の除去された請求項1〜12のいずれかに記載のガラス用両面粘着シートもしくはテープとを有する仮止め部材付き自動車窓用ガラス板。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−262320(P2007−262320A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92110(P2006−92110)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】