説明

ガランタミンの製造方法

(−)−ガランタミンの合成における中間体として有用なN−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル]−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンゼンカルボキサミドの新規な製造方法は、5−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸誘導体とN−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)アミンとの反応を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(−)−ガランタミンおよびN−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンゼンカルボキサミドの新規な合成法に関するものであり、この化合物はアルツハイマー病の治療薬として承認された(−)−ガランタミンの合成のための重要な中間体である。
【背景技術】
【0002】
N−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)−2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンゼンカルボキサミド(C2)は(−)−ガランタミンの合成のための重要な中間体である。
【0003】
例えば、以下の参考文献を参照。
(1)Kametani, T.; Yamaki, K.; Yagi, H.; Fukumoto, K. J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1969, 425.
(2)Kametani, T.; Yamaki, K.; Yagi, H.; Fukumoto, K. J. Chem. Soc. (C) 1969, 2602.
(3)Kametani, T.; Shishido, K.; Hayashi, E.; Seino, C.; Kohno, T.; Shibuya, S.; Fukumoto, K. J. Org. Chem. 1971, 36, 1295.
(4)Kametani, T.; Yamaki, K.; Terui, T. J. Heterocycl. Chem. 1973, 10, 35.
(5)Kametani, T.; Premila, M. S.; Fukumoto, K. Heterocycles 1976, 4, 111.
(6)Jose´ Marco-Contelles, Maria do Carmo Carreiras, Carolina Rodri´guez, Mercedes Villarroya, and Antonio G. Garci´a; Chem. Rev. 2006, 106, 116-133.
上記の各参考文献の全体の内容は、参照としてここに組み込まれる。
【0004】
N−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)−2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンゼンカルボキサミド(C2)を製造するための当該分野で知られている一般的な方法は、2−ブロモ−5−ベンジルオキシ−4−メトキシ安息香酸(B4)およびN−メチル−N−2−(4−ベンジルオキシフェニル)エチルアミン(A3)をカップリングさせ、次いで臭化水素酸を用いるベンジルエーテルの脱保護に基づいている(Kametaniら、J. Chem. Soc. (C) 1969, 2602を参照)。
【0005】
スキームIで示されるように、表題化合物の合成には9工程がある。
スキームI
【化1】

【0006】
具体的には、スキームIで示される9工程は以下の通りである:
1)チラミンを、THF中、ギ酸エチルおよびギ酸の混合物と混合して、アミドA1を得る。
2)アミドA1を、DMF中、臭化ベンジルおよび炭酸カリウムでベンジル化して、化合物A2を得る。
3)化合物A2を、THF中、水素化アルミニウムリチウムにより還元して、アミンA3を得る。
【0007】
4)メタノール中、臭素を用いて3,4−ジメトキシベンズアルデヒドを臭素化して、2−ブロモ−4,5−ジメトキシベンズアルデヒド(B1)を得る。
5)化合物B1を、濃硫酸中、脱メチル化して、2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド(B2)を得る。
6)B2をDMF中、臭化ベンジルおよび炭酸カリウムでベンジル化して、5−ベンジルオキシ−2−ブロモ−4−メトキシベンズアルデヒド(B3)を得る。
【0008】
7)化合物B3を、イソプロパノール中、亜塩素酸ナトリウムおよびスルファミン酸で酸化して、酸B4を得る。
8)化合物B4を、ジクロロメタン中、塩化チオニルと反応させて対応する酸クロライドを得、これをジクロロメタン中、3N NaOHの存在下にA3とカップリングさせてアミドC1を形成する。
9)化合物C1を、エタノール性臭化水素酸で脱ベンジル化して、目的とする物質C2を得る。
【0009】
スキームIで示されるC2の合成は、多くの工程を必要とし、結果的に目的とする生成物の収率は比較的低く、安定していない。臭化水素酸による両方のベンジルエーテル保護基の脱離は、フェノール環へのベンジル基の移動に起因する主な不純物C3(以下に示される化学式)を生じる。この不純物は、当該生成物から除去することがきわめて困難であることが分かっている。
【0010】
【化2】

【0011】
したがって、簡単に、短工程で、比較的安価に、かつ効率良く、N−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)−2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンゼンカルボキサミド(C2)を合成できる製造方法の開発が望まれている。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、式IのN−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンゼンカルボキサミド誘導体の実用的および経済的な製造方法を提供する。
【0013】
【化3】

(ここで、Zはハロゲンまたはt−ブチルのような保護基である)
好ましくは、Zは臭素または塩素である。式Iの化合物は、(−)−ガランタミンを製造するための中間体として用いられ得る。
【0014】
Zが臭素であるとき、式Iの化合物は、N−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)−2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンゼンカルボキサミド(C2)である。
【0015】
本発明によれば、式Iの化合物は、式III:
【化4】

(ここで、Xは脱離基である)
の化合物を、N−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)アミンまたはその酸塩と、直接カップリングさせることにより製造される。
【0016】
式IIIの化合物は、式II:
【化5】

(ここで、Zは上記のとおりである)
の化合物を、カップリング剤で活性化させて、式III:
【化6】

(ここで、Xは用いられるカップリング剤からの脱離基である)
の活性化された化合物を得ることにより、製造され得る。
【0017】
この方法は、スケールアップが容易であり、費用効果的で、かつ容易に入手できる試剤を用い、それゆえに大規模生産に実用的に応用できる。
本発明によれば、式Iの化合物を比較的高い収率および純度で製造できる。
【0018】
式Iの化合物は、当該分野で知られている方法(上記の参考文献または米国特許第6,271,371号を参照。この特許の内容全体が、ここに参照として組み込まれる)を含む適当な方法により(−)−ガランタミンを製造するための中間体として用いられ得る。
【0019】
本発明を特徴づける新規な種々の特性は、明細書に付加されてその一部を形成する特許請求の範囲における特性で指摘されている。本発明、それを実施する利点、およびその実施によって実現される特定の目的をより良く理解するために、本発明の好ましい実施形態が示され、記載されている図面および詳細な説明が参照されるべきである。
【0020】
好ましい実施形態の詳細な説明
実施形態の一つとして、式:
【化7】

のN−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)−2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンゼンカルボキサミド(C2)を製造する方法が以下に記載されている。
【0021】
上記の式C2におけるBrは、塩素およびt−ブチルのようなその他の適切な保護基によって置き換えられ得ることに留意すべきである。
【0022】
N−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)−2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンゼンカルボキサミド(C2)の一般的な製造方法の実施形態は、
(1)式:
【化8】

の化合物、2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸(B13)をカップリング剤で活性化させて、式:
【化9】

(ここで、式B13X 中のXは脱離基を表す)
の化合物を得、そして
【0023】
(2)このように活性化された化合物を、式:
【化10】

の化合物、N−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)アミン(A12)またはその酸塩と、塩基の存在下にカップリングさせて、式:
【化11】

の化合物を得ることを含む。
化合物A12の酸塩は、好ましくはHClまたはHBr塩である。
【0024】
好ましくは、B13の化合物のカルボキシ基は、ハロゲン化剤との反応で活性化されて、F、Cl、BrもしくはIで置換された誘導体を与えるか、あるいはトリクロロアセトニトリルとの反応で対応するトリクロロイミデート(=C(NH)CCl3)を与えるか、あるいは任意に置換されていてもよいアルキルもしくはアリール酸ハライドまたは酸無水物との反応で、−O−CO−Rまたは−O−COCF3または−O−COCCl3(ここで、Rは置換もしくは非置換のC1〜C6のアルキル、置換もしくは非置換のフェニルである)のような対応する任意に置換されていてもよい無水物を与えるか、あるいは任意に置換されていてもよいアルキルもしくはアリールアルコキサイドとの反応で任意に置換されていてもよいエステル−O−R(ここで、RはC1〜C6のアルキル、置換されたC1〜C16のアルキル、置換もしくは非置換のフェニル基である)を与えるか、あるいはN−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)のようなN−ヒドロキシアミド、または一般にペプチド合成で用いられるN−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール(HOBt)および1−ヒドロキシ−7−アバベンゾトリアゾール(HOAt)のようなヒドロキシルベンゾトリアゾールとの反応で対応するN−ヒドロキシアミドエステルを与える。
【0025】
同様に、脱離基Xは、好ましくはハロゲン、トリクロロイミデート(=C(NH)CCl3)、−O−CO−R、−O−COCF3、−O−COCCl3、−O−R、−OSu、−OBtまたは−OAt(ここで、Rは置換または非置換のC1〜C6のアルキル基、置換または非置換のフェニル基である)である。
【0026】
さらに好ましくは、工程(1)におけるカップリング剤は、B13の化合物に対応する酸クロライドを与える塩化チオニルである。
【0027】
好ましくは、工程(1)は有機溶媒中で行われる。当該有機溶媒は、好ましくは酢酸エチル(EtOAc)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジグライム、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)、塩化メチレン(CH2Cl2)またはこれらの混合物である。さらに好ましくは、工程(1)で用いられる有機溶媒は酢酸エチル(EtOAc)である。
【0028】
好ましくは、工程(1)の活性化は、約45〜50℃で行われ、次いで真空下に蒸留して、塩化チオニルのような過剰の未反応のカップリング剤を除去する。
【0029】
工程(2)では、活性化されたB13Xを溶媒中、塩基の存在下にA12とカップリングさせるのが好ましい。式Iの化合物における保護基が臭素のようなハロゲンでないときには、上記の塩基を用いる必要がないことに留意すべきである。
【0030】
上記の溶媒は、好ましくは塩化メチレン(CH2Cl2)、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、イソプロパノール(IPA)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン、テトラヒドロフラン (THF)、ジエチルエーテル、ジグライムおよびメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)ならびにそれらの混合物から選択される典型的な有機溶媒である。塩化メチレン(CH2Cl2)とメタノール(MeOH)の混合溶媒が好ましい溶媒系である。
典型的な塩基は水酸化アルカリである。あるいは、該塩基は第三級アミン塩基でもあり得る。
【0031】
上記のカップリングは、有機溶媒と水酸化アルカリまたは炭酸アルカリの水溶液との2相系で行うこともできる。この反応は、塩化メチレン(CH2Cl2)とメタノール(MeOH)の混液中、水酸化ナトリウムを塩基として用いて行うのがより好ましい。この反応は、典型的には約0〜50℃の温度で行われる。塩化メチレンとメタノールの混液を溶媒として用い、水酸化ナトリウムを塩基として用いるときには、好ましい反応温度は約0〜5℃である。
【0032】
工程(1)で用いられる2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸(B13)は、当該分野で知られている方法を含む適切な方法によって製造することができる。一例として、上記の化合物は、次の合成スキームIIに従って得られる。
【0033】
スキームII
【化12】

【0034】
文献に記載されている方法で得られる2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド(B2)を、スルファミン酸の存在下に亜塩素酸ナトリウムにより酸化して、対応するカルボン酸を高収率で得ることができる。
【0035】
同様にして、工程(2)で用いられるN−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)アミン(A12)は、当該分野で知られている方法のような適切な方法によって製造することができる。
【0036】
一例として、化合物A12は、合成スキームIIIに従って製造することができる。
スキームIII
【化13】

【0037】
2−(4−ヒドロキシフェニル)エタノールは、濃塩酸液または濃臭化水素酸液と反応させて、対応する2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルクロライドまたはブロマイドにそれぞれ変換される。
【0038】
2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルクロライドまたはブロマイドのアミノ化は、大過剰のメチルアミン水溶液またはメチルアミンの有機溶媒溶液を用いて効率よく行われる。アミノ化に対して不活性である有機溶媒は、この反応で用いることができる。好ましい有機溶媒は、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、イソプロパノール(IPA)、n−ブタノールおよびsec−ブタノールのような低沸点のアルコール溶媒である。
【0039】
本発明の方法における出発物質および反応試剤は、市販されているか、文献で知られているか、あるいは類似化合物について記載された文献の方法に従って製造することができる。
【0040】
本発明の方法に関与している中間体または最終生成物は、結晶化、蒸留、順相または逆相クロマトグラフィー、あるいはこれらの技術の組合せによって精製することができる。
以下の実施例は、さらに説明することだけを目的としており、開示された本発明を限定することは意図していない。
【実施例】
【0041】
実施例1
2−([4−ヒドロキシフェニル]エチル)ブロマイド(A11)
【化14】

【0042】
2−(4−ヒドロキシフェニル)エタノール(500g)を、5Lの丸底フラスコ内に入れ、これに48%HBr水溶液(2960g)を撹拌下に加えた。反応混合物を75℃の浴中に入れた。2.5時間撹拌後、A11(5g)の種晶を加えた。この反応混合物をこの温度さらに24時間撹拌した。この反応混合物をゆっくりと20℃に冷やした。沈殿物を濾過によって分離し、10%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄して、表題の物質(700g、収率96%)を得た。
1H NMR (CDCl3); δ3.10 (2H, t, J=7.8 Hz), 3.53 (2H, t, J=7.5 Hz), 6.80 (2H, d, J=8.4 Hz), 7.09 (2H, d, J=8.4 Hz).
【0043】
2−([4−ヒドロキシフェニル]エチル)クロライド
【化15】

【0044】
12N HClを用いる同様の方法により、2−(4−ヒドロキシフェニル)エタノールから、2−([4−ヒドロキシフェニル]エチル)クロライドを単離後の収率70%で得た。
1H NMR (CDCl3) δ2.96 (2H, t, J=7.8 Hz), 3.67 (2H, t, J=7.2 Hz), 6.79 (2H, d, J=8.4 Hz), 6.94 (2H, d, J=8.1 Hz)
【0045】
実施例2
N−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)アミンHBr(A12 HBr)
【化16】

【0046】
IPA(1000mL)をフラスコ(3L)内に入れ、0℃に冷却した。シリンダーからの一定の流れのメチルアミンガスを、全体積が1750mlに達するまでIPAにゆっくりと通した。2−([4−ヒドロキシフェニル]エチル)ブロマイド(A11)(100g)を、冷却されたメチルアミンIPA溶液に少しずつ加えた。A11をすべて加えた後、冷却浴を外した。反応混合物を室温まで加温し、10〜12時間撹拌し続けた。反応混合物を50℃に加熱して、過剰のメチルアミンを予め0℃に冷却したIPA(1000mL)中に留去した。ほとんどのメチルアミンを留去したとき、浴の温度は100℃に上昇し、IPAは留去された。ほとんどのIPAを留去した後、IPA(約300mL)を反応混合物に加え、蒸留を続けてメチルアミンの除去を助けた。体積が250mLに減った後、反応混合物を放置して室温に冷却した。沈殿物を濾過によって集め、トルエンで洗浄して、N−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)アミンをHBr塩(A12 HBr)(104g、収率90%)として得た。
1H NMR (CDCl3) δ 2.69 (3H, s, CH3), 2.90 (2H, t, J=7.2 Hz), 3.18 (2H, t, J=6.3 Hz), 6.76 (2H, d, J=8.7 Hz), 7.11 (2H, d, J=8.7 Hz)
【0047】
実施例3
2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸(B13)
【化17】

【0048】
2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド(B2)(1Kg)およびスルファミン酸(1.255Kg)を、EtOAc(4.473Kg)および水(8L)の混液に撹拌下に加えた。全ての固形物が溶解するまで反応混合物を撹拌した。反応混合物を−10〜0℃の間に冷却した。亜塩素酸ナトリウム(505g)を水(3L)に溶解して、亜塩素酸ナトリウムの水溶液を調製した。この亜塩素酸ナトリウム溶液を、反応温度を5℃以下に保つ速さで、予め冷却されたB2溶液に加えた。亜塩素酸ナトリウム溶液を加え終わった後、反応混合物を0℃でさらに1時間撹拌し、次いで室温まで温めた。反応はTLCによりモニターした。TLC分析が反応の終了を示した後、水層を分離した。この水層をEtOAc(1.789 Kg)で抽出し、有機層を合わせて別のフラスコに入れ、40℃で真空蒸留することによってEtOAcを除去した。トルエン(6.92Kg)を30〜40℃で加え、スラリーを−10〜0℃に冷却し、沈殿物を濾過により集めて、2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸(B13)(約950g、収率89%)を得た。
1H NMR (CDCl3) δ 3.95 (3H, s, CH3), 7.22 (1H, s, CH), 7.46 (1H, s, CH).
【0049】
実施例4
N−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)−2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンゼンカルボキサミド(C2)
【化18】

【0050】
方法1
2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸(B13) (精製により1.49 kg)、DMF (0.071 kg)およびEtOAc(6.712 kg)の混合物を撹拌し、窒素雰囲気下に約45〜50℃に加熱した。これに塩化チオニル(1.29 Kg)をゆっくりと加え、その間、温度を45〜50℃に保った。次いで、これを約1時間撹拌した。このようにして形成された2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾイルクロライドの溶液を真空下に濃縮し、約30℃に冷却し、次いで窒素雰囲気下にジクロロメタン(9.95 kg)で希釈した。
【0051】
別の反応器中で、水酸化ナトリウム(0.603 kg)およびメタノール(3.18 Kg)の混合物を水酸化ナトリウムが完全に溶解するまで撹拌し、次いでメタノール(1.58kg)中のN−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)アミンHBr塩(A12 HBr) (分析により1 kg)を窒素雰囲気下に加えた。撹拌した後、上記の混合物を濃縮して、N−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)アミンをスラリーとして得た。この溶液を窒素雰囲気下に約5℃に冷却し、その後約0.5時間撹拌した。
【0052】
ジクロロメタン溶液中の予め調製された2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾイルクロライド(B13−Cl)を、上記のN−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)アミンのスラリーに約5℃で移し、次いで窒素雰囲気下に約0.5時間撹拌した。この溶液を真空下に濃縮し、次いで25〜35℃に冷却した。次いで、これにメタノール中の15% w/v NaOH溶液(0.910Kgのメタノール中に0.173Kgの水酸化ナトリウム)を加え、次いで25〜35℃に加熱した。
【0053】
この溶液を約8時間撹拌し、次いで32%塩酸(〜0.6 kg)でpHを2〜5に調整した。この溶液を濃縮し、残留物を約30℃に冷却した。ジクロロメタン(6.628 Kg)および水(15 Kg)を上記の混合物に加え、次いで約5℃に冷却し、次いで約2時間撹拌した。固化物を濾過し、ジクロロメタンで2回(各0.663 Kg)洗浄し、粗N−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)−2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンゼンカルボキサミド(C2)を得た。
【0054】
上記の粗生成物(1kg)を、メタノール(3.164 Kg)中、活性炭(0.05 kg)とともに約1時間加熱還流した。混合物をセライトで濾過し、次いでメタノールで洗浄した。この溶液を真空下に濃縮し、約25℃に冷却した。これにジクロロメタン(6.628 Kg)を加え、次いで約15分間撹拌した。水(15 Kg)を加え、混合物を0.5時間撹拌し、次いで0〜10℃に冷却し、約2時間撹拌した。
【0055】
スラリーを濾過し、ジクロロメタン(1.326 Kg)で洗浄し、真空下に80℃で12時間乾燥して、(−)−ガランタミンに変換するのに有用な、精製されたN−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)−2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンゼンカルボキサミド(C2)を得た。
1H NMR (d6-DMSO) δ 2.56 (2H, t, J=7.5 Hz), 2.75 (1.5H, NCH3, s), 2.99 (1H, NCH2, t, J=6.0 Hz), 3.13 (1.5H, NCH3, s), 3.36 (1H, NCH2, t, J=6.9 Hz), 3.60 (1.5H, s), 3.61 (1.5H, s), 6.32 (0.5H, s), 6.39 (0.5H, s), 6.42 (1H, d, J=8.7 Hz), 6.50 (1H, d, J=8.7 Hz), 6.58 (1H, d, J=8.1 Hz), 6.87 (1H, d, J=8.4 Hz), 6.91 (0.5H, s), 6.92 (0.5H, s), 9.00 (1H, s), 9.31 (0.5H, s), 9.37 (0.5H, s).
【0056】
方法2
MIBK(690 mL)中の2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸(B13)(138g)の溶液に、塩化チオニル(106 g)およびDMF(13 mL)を加え、この反応混合物を80℃に加熱し、TLC分析がB13の完全な消失を示すまで、この温度で撹拌した。得られた混合物を蒸留して、過剰の塩化チオニルを除去した。塩化チオニルを留去した後、得られた酸クロライドの溶液を室温に冷却し、予め0℃に冷却されたMIBK(1000mL)およびH2O(600mL)中のN−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)アミンHBr(A12 HBr) (100g)およびNa2CO3(94g)の溶液に加えた。
【0057】
2O(165mL)中のNaOH(82.5 g)溶液を、5℃以下の温度を保つためにゆっくり加えた。TLC分析がB13の酸クロライドの完全な消失を示すまで、反応混合物をこの温度で撹拌した。反応混合物にNaOHをさらに加えてそのpHを10〜11にし、得られた混合物を50℃に加熱し、この温度でさらに1時間撹拌した。反応混合物を室温に冷やし、水層を分離した。有機層をその体積の1/5まで濃縮した。ヘプタン(500mL)を加えた。沈殿物を濾過により集めて、N−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)−2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンゼンカルボキサミド(C2)(163g、収率65%)を得た。
【0058】
方法3
EA(690 mL)中の2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸(B13)(138g)の溶液に、DMF(6.9 mL)を加え、反応混合物を45〜50℃に加熱した。この溶液に塩化チオニル(120g)を加え、TLC分析がB13の完全な消失を示すまで、この温度で撹拌した。過剰の塩化チオニルおよびEAを大気圧下で留去し、液状の残留物を得た。この残留物を30℃に冷却し、塩化メチレン(690mL)で希釈して、B13-Clの溶液を得た。
【0059】
塩化メチレン(1000mL)中でA12−HBr(100g)およびトリエチルアミン(360mL)を混合して、N−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)アミン(A12)の別の溶液を調製した。このA12の溶液に、上記のB13−Clの溶液を室温で撹拌しながら徐々に加えた。加え終わった後、反応混合物を室温でさらに1時間撹拌した。固体の沈殿物を濾去し、濾過ケーキを塩化メチレンで洗浄した。塩化メチレン溶液を合わせ、容器の温度が55℃になるまで蒸留した。この残留物にメタノール(198g)を加えた。
【0060】
得られた溶液を容器の温度が70℃になるまで蒸留して、メタノールを除去した。残留物を室温まで冷却し、15%NaOH/MeOH溶液(460mL)を加えた。得られた溶液を室温で12時間撹拌した。反応混合物を36%塩酸でpH3〜5になるまで酸性にした。この溶液を、容器の温度が75℃になるまで蒸留した。残留物に塩化メチレン(200mL)および1N HCl(1500mL)を加え、0℃で4時間撹拌した。沈殿物を濾取し、N−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)−2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンゼンカルボキサミド(C2)(100g、収率56%)を得た。
【0061】
本発明は、いくつかの具体的な実施態様に関連して記載され、示されてきたが、当該分野の当業者は、本発明の意図および範囲から逸脱しないかぎり、方法およびプロトコールの様々な適用、変更、修正、置換、削除または付加をすることができる。
【0062】
例えば、上記の特定の条件以外の反応条件を適用し、試剤または方法を変更して、上記の本発明の化合物を製造することもできる。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲により定義され、かかる特許請求の範囲は正当に広く解釈されるべきである。
【0063】
なお、この出願は2007年4月12日に出願された米国仮特許出願第60/923,191号の優先権を主張するものである。米国仮特許出願第60/923,192号の全開示内容が、参照としてここに明確に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)式II:
【化1】

(式中、Zは保護基である)
の化合物を、カップリング剤で活性化して、式III:
【化2】

(式中、Zは上記のとおりであり、Xは用いられたカップリング剤からの脱離基である)
の活性化された化合物を得、そして
(2)式IIIの活性化された化合物を、式:
【化3】

の化合物、N−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)アミン(A12)、または化合物A12の酸塩とカップリングさせて、式I:
【化4】

の化合物を得ることを含む、式I:
【化5】

(式中、Zは保護基である)
の化合物の製造方法。
【請求項2】
保護基Zがハロゲンであり、工程(2)が塩基の存在下に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化合物A12の酸塩が、HCl塩またはHBr塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
カップリング剤が、ハロゲン化剤、トリクロロアセトニトリル、任意に置換されていてもよいアルキルもしくはアリール酸ハライド、任意に置換されていてもよいアルキルもしくはアリール酸ハライド酸無水物、任意に置換されていてもよいアルキルもしくはアリールアルコキサイド、N−ヒドロキシアミド、ヒドロキシベンゾトリアゾールまたはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ヒドロキシアミドがN−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)であり、ヒドロキシベンゾトリアゾールがN−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール(HOBt)または1−ヒドロキシ−7−アバベンゾトリアゾール(HOAt)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
脱離基が、−F、−Cl、−Br、−I、−C(NH)CCl3、−O−COCF3、−O−COCCl3、-O−CO−R、−OR、−OSu、−OBtおよび−OAt(ここで、Rは置換もしくは非置換のC1〜C6のアルキル基または置換もしくは非置換のフェニル基である)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程(1)が、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジグライム、メチル−t−ブチルエーテル、塩化メチレン、酢酸エチルおよびそれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(1)がEtOAc中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(1)が約45〜50℃で行われ、次いで真空下に蒸留することにより過剰の未反応のカップリング剤が除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
カップリング剤が塩化チオニルであり、化合物IIIにおける脱離基Xがクロロであり、工程(2)が塩基の存在下に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
カップリング反応が、水酸化アルカリ、第三級アミン塩基、炭酸アルカリおよびこれらの混合物からなる群から選択される塩基中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
塩基が水酸化ナトリウムである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
塩基がNa2CO3およびNaOHの混合物である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
塩基がトリエチルアミンである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
工程(2)が、塩化メチレン(CH2Cl2)、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、イソプロパノール(IPA)、MIBK、トルエン、THF、ジエチルエーテル、ジグライム、メチル−t−ブチルエーテルおよびこれらの混合物からなる群から選択される溶媒中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
工程(2)が、塩化メチレン(CH2Cl2)、メタノール(MeOH)および水酸化ナトリウムの混合物中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
工程(2)が、MIBK、ならびに炭酸水素ナトリウムおよび水酸化ナトリウムの少なくとも一つの水溶液を含む2相系で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
工程(2)が塩化メチレン(CH2Cl2)およびトリエチルアミン中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
工程(2)が約0〜50℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
式Iの化合物を(−)−ガランタミンに変換することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
(1)式II:
【化6】

(式中、Zは保護基である)
の化合物を、カップリング剤で活性化して、式III:
【化7】

(式中、Xは用いられたカップリング剤からの脱離基である)
の活性化された化合物を得、そして
(2)式IIIの活性化された化合物を、式:
【化8】

の化合物、N−メチル−N−(2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル)アミン(A12)、またはその酸塩とカップリングさせて、式I:
【化9】

の化合物を得、そして
(3)式Iの化合物を(−)−ガランタミンに変換することを含む、(−)−ガランタミンの製造方法。
【請求項22】
カップリング剤が、トリクロロアセトニトリル、ハロゲン化剤、任意に置換されていてもよいアルキルもしくはアリール酸ハライド、任意に置換されていてもよいアルキルもしくはアリール酸ハライド酸無水物、任意に置換されていてもよいアルキルもしくはアリールアルコキサイド、N−ヒドロキシルアミド、ヒドロキシルベンゾトリアゾールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
式IIIの脱離基Xが、−F、−Cl、−Br、−I、−C(NH)CCl3、−O−COCF3、−O−COCCl3、−O−CO−R、−OR、−OSu、−OBtおよび−OAt(ここで、Rは置換もしくは非置換のC1〜C6のアルキル基または置換もしくは非置換のフェニル基である)からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
工程(1)が、MIBK、トルエン、THF、ジエチルエーテル、ジグライム、メチル−t−ブチルエーテル、塩化メチレン、酢酸エチルおよびそれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒中で行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
工程(2)が、水酸化アルカリ、第三級アミン塩基、炭酸アルカリ、およびこれらの混合物からなる群から選択される塩基中で行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
工程(2)が、塩化メチレン(CH2Cl2)、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、イソプロパノール(IPA)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジグライム、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)およびそれらの混合物からなる群から選択される溶媒中で行われる、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2010−523658(P2010−523658A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503016(P2010−503016)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/004303
【国際公開番号】WO2008/127560
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(507397364)シノファーム タイワン,リミテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】SCINOPHARM TAIWAN,LTD.
【住所又は居所原語表記】1,NAN−KE 8TH ROAD,Tainan Science−based Industrial Park,Tainan County,741,TAIWAN
【Fターム(参考)】