説明

ガードケーブル

【課題】一定の間隔で立設した支柱と、同支柱のスリットに沿い上下方向に間隔をあけて貫通させ支柱間に架設した複数本のケーブルと、支柱のスリット内にケーブルを保持し定着させるケーブル定着部材とで構成されるガードケーブルを提供する。
【解決手段】鋼管支柱が側面を道路の延長方向に相対峙する配置で一定間隔をあけて立設されるとともに、複数本のケーブルを上下に間隔を開けて支柱間に架設するガードケーブルは、支柱には、その中空部又は外周面に嵌められて取り付けられるガードケーブル定着部材が設けられ、前記ガードケーブル定着部材はケーブルを掴み持つケーブル掴み部を備えており、ケーブル掴み部は、前記ケーブルに近接する前記ガードケーブル定着部材の上部または下部に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路の延長方向へ一定の間隔をあけて立設した支柱と、同支柱のスリットに沿って上下方向に間隔をあけて貫通させ支柱間に架設した複数本のケーブルと、同支柱のスリット内にケーブルを一定の間隔で保持し定着させるケーブル定着部材とで構成されるガードケーブルの技術分野に属し、更に云うと、ガードケーブルに車両が衝突した際に前記ケーブル定着部材が飛散することを防止したガードケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の延長方向へ一定の間隔をあけて立設した支柱間に、同支柱の上下方向に間隔をあけて複数本にケーブルを架設して成るガードケーブルが、主に中央分離帯や路肩に設置されている。その目的は、進行方向を誤った車両が道路外の歩道などに、又は対向車線へ突出するのを防ぐと共に、車両乗員へのダメージ及び車両の損傷を最小限にとどめて、車両の進行方向を正常な方向に復元させることである。
こうしたガードケーブルとして、本出願人は、先の出願で地中と抜き挿し可能に立設した支柱が車両衝突時に進行方向へ積極的に倒れると共に、同支柱のスリット内に収められたケーブルが容易に支柱から外れることで、倒れる支柱と共にケーブルの高さが低下することを防いで車両がケーブルを乗り越えることを防止し、衝突時の運動エネルギーが支柱とケーブルとで効果的に吸収でき、支柱が折れ曲がって反対車線側へ飛び出し二次的被害が生じることを防止できる構成のガードケーブルを発明した。しかし、前記支柱を積極的に倒す構造のガードケーブルにおいて、複数本配置される各ケーブルの上下の間隔を保持し定着させる良好なケーブル定着部材を用いたガードケーブル、及びケーブル定着部材の飛散を防止する構成のガードケーブルは見聞きしないし、開示もない。
【0003】
ところで、現在一般的に実用に供されているガードケーブルに使用されるケーブル定着部材としては、例えば下記の特許文献1には図12A、図12Bに示すように、筒型の略四角柱で、地面に深く植設された支柱11と支柱11とに密接に固定されたケーブル14の略中央部に一定間隔で設置され、その一方の外周面に反射板12を貼付し、他方の外周面にケーブルを定着させるための定着用溝13がケーブル14の本数に応じて設けられており、差込棒15を用いて前記ケーブル14へ固定するケーブル定着部材10が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−270467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した特許文献1の間隔保持材10は、支柱11を地中深く植設して、同支柱が衝突エネルギーにしっかり耐える構造のガードケーブルに使用されるものであり、支柱を積極的に道路の延長方向へ倒す構造のガードケーブルに効果的に適応できる良好なケーブル定着部材ではない。
【0006】
即ち、上記した特許文献1に開示されたケーブル定着部材(間隔保持材10)は、支柱11間に架設された各ケーブル14に、その対応する固定用溝13を合わせ差込棒15により押し込んでケーブルに定着する構成である。つまり、間隔保持材10は、ケーブルと着脱可能に片側が開口している固定用溝13に嵌め入れられて支持されているに過ぎない。したがって、車両がガードケーブルへ衝突すると、その衝突エネルギーにより前記間隔保持材10はケーブル14から外れることがある。
【0007】
本発明の目的は、上記問題点を解決することであり、ケーブル定着部材にケーブルを掴み持つケーブル掴み部を具備させ、車両の衝突に遭ってもケーブル定着部材がケーブルから外れて飛ぶことを確実に防止できるガードケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るガードケーブルは、
鋼管支柱が側面を道路の延長方向に相対峙する配置で一定間隔をあけて立設されるとともに、複数本のケーブルを上下に間隔を開けて支柱間に架設するガードケーブルであって、
前記支柱には、その中空部又は外周面に嵌められて取り付けられるガードケーブル定着部材が設けられ、前記ガードケーブル定着部材はケーブルを掴み持つケーブル掴み部を備えており、
前記ケーブル掴み部は、前記ケーブルに近接する前記ガードケーブル定着部材の上部または下部に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載したガードケーブルにおいて、
ケーブル定着部材は、ケーブルの上下の間隔を保持する間隔保持材と、支柱の上端部を塞ぐ蓋材のいずれかもしくは両方から成ることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載したガードケーブルにおいて、
ケーブル掴み部は、ケーブル定着部材の下端部を平面的に見てその外形部から中心方向に向かって伸びる二本の腕部から成り、前記二本の腕部の先端はケーブルの直径よりも小径で開口可能な開き部を有する構成とされている。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載したガードケーブルにおいて、
ケーブル掴み部を構成する二本の腕部は、ケーブル定着部材を平面的に見て略対角線上となる配置に設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一に記載したガードケーブルにおいて、
支柱は、道路の延長方向に相対峙する側面に、上縁から下方へ切り欠いたスリットが設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一に記載したガードケーブルにおいて、
支柱は、平面視が長方形であり、その長辺側が道路の延長方向に相対峙する配置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜6に記載した本発明のガードケーブルは、ケーブル定着部材にケーブルを掴み持つケーブル掴み部を設けた構成としたので、車両がカードケーブルへ衝突して支柱が道路の延長方向へ倒れ、ケーブルと前記ケーブル定着部材とが同支柱のスリットから抜け出ることがあっても、ケーブル定着部材はケーブル掴み部が掴み持つ各ケーブルに繋がったまま抜けて、各ケーブルへの掴み状態を保持する。したがって、ケーブル定着部材がケーブルから外れて飛散することによる二次的被害を確実に防止できる。
【0015】
一方、ケーブル定着部材の掴み部は二本の腕部から成り、二本の腕部の先端はケーブルの直径よりも小径で開口可能な開き部を有している。したがって、前記開き部を開口させてケーブルを嵌め入れ易く、嵌め入れられたケーブルは、同ケーブルより小径な開き部から抜け出てケーブル定着部材から外れることが難しいので、施工性と安全性の両方を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が実施される道路の中央分離帯に設けられたガードケーブルを示した全体斜視図である。
【図2】上記ガードケーブルの平面図である。
【図3】支柱の拡大側面図である。
【図4】支柱のスリット内へケーブルとケーブル定着部材を設置する手順の概要を示した分解斜視図である。
【図5】支柱の中空部内のケーブル定着部材及びケーブルの状態を示す一部拡大斜視図である。
【図6】A、Bは、間隔保持材とリング部材の連結構造を示す拡大斜視図である。
【図7】間隔保持材の下端部に設けたケーブル掴み部を示す底面図である。
【図8】A、Bはケーブル掴み部の腕部へケーブルが嵌め入れられる様子を示す拡大斜視図である。
【図9】蓋部の下端部に設けたケーブル掴み部を示す底面図である。
【図10】Aは、間隔保持材の異なる実施例を示す参考図である。Bは間隔保持材の異なる実施例を示す参考図である。
【図11】Aは実施例3の間隔保持材の一例を示す側面図である。Bは、Aの間隔保持材を支柱の中空部内へ挿入した状態を示す側面図である。
【図12】A、Bは従来のガードケーブルに使用されるケーブル定着部材を示した参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、鋼管支柱3が側面を道路の延長方向に相対峙する配置で一定間隔をあけて立設されるとともに、複数本のケーブル2を上下に間隔を開けて支柱間に架設するガードケーブル1である。
前記支柱3には、その中空部又は外周面に嵌められて取り付けられるガードケーブル定着部材が設けられ、前記ガードケーブル定着部材はケーブルを掴み持つケーブル掴み部74を備えており、
前記ケーブル掴み部74は、前記ケーブル2に近接する前記ガードケーブル定着部材の下部に設けられている
前記ケーブル定着部材は、支柱3のスリット6内を貫通するケーブルの上下の間隔を保持する間隔保持材7と支柱の上端部を塞いで各ケーブルをスリット6内に定着させる蓋材9であり、それぞれ下側に位置するケーブル2を掴み持つケーブル掴み部74、91が設けられている。
【実施例1】
【0018】
以下に、本発明を図示した実施例に基づいて説明する。
本発明のガードケーブル1の概要を、図1〜図3に示した。即ち、道路の中央分離帯の箇所に約2mの間隔を置いて支柱3を立設し、上下方向に間隔をあけて3本のケーブル2を同ケーブル2の両端に設置した端部支柱4により20kNで引張して準備し、同支柱3、3間に架設して構築したガードケーブル1の概要を示した。
【0019】
前記支柱3は、縦横比が異なる平面視が長方形の角形鋼管支柱である。したがって、同支柱3は、平面視の長辺側が短辺側に対して弱軸側31となり、前記短辺側が長辺側に対して強軸側32を有する構成となる。前記弱軸側31と強軸側32の寸法は、例えば100×50mmであり、前記弱軸側31は衝突荷重に対して積極的に変形する性質を発揮する。
【0020】
上記構成の角管支柱3を、前記弱軸側31が車両の進行方向R、Lに相対峙する配置で、地中へ予め埋設された鞘管5の中空部内へ抜き挿し可能に差し込んで立設されている。
一般的に走行中の車両は大型車では15°以内、小型車では20°以内の角度でガードケーブル1へ衝突することが多く確認されており、上記のように支柱3の弱軸側31を道路の横断方向へ向けていれば、車両は必然的に支柱3の弱軸側31へ衝突する。すると、支柱3は確実に道路の延長方向R(対向車が衝突した場合はL)へ倒れて、車線上に飛び出る虞を緩和できる。
【0021】
前記鞘管5は、特に図3に示すように、支柱3の下端部をその中空部内へ挿入可能な縦横比を有し、高さは例えば約500mmであり、地中レベルと鞘管5の上面とが略一致するように埋設されている。
【0022】
前記鞘管5の埋設方法としては、先ず鞘管5に収まる略同形の棒状部材(図示省略)を同鞘管5内に収めた状態で地中へ400mm圧入する。そして、鞘管5を地中へ残したまま棒状部材を抜き取り、同鞘管5のみを地中へ更に100mm打設すると、鞘管5は地中へ500mm埋設され、且つその内部には高さ方向に100mmの土が入った状態となる。そのため、鞘管5内へ支柱3が挿入されると、前記鞘管5内の高さ100mmの土が支柱3の下端部を支持して、同支柱3の位置決めが行える。因みに、鞘管5へ支柱3を挿入する深さ位置は約400mmとなる。
上記のように支柱3は、鞘管5とボルトやフックその他の機械的取付具を使用せずに容易に抜き挿し可能に位置決めされている。
勿論、鞘管5の埋設方法は、上記の限りではなく、事前に地上から400mm掘削して設けた坑内に、同鞘管5を地上から500mmの位置まで打設することで、その内部に高さ方向100mmの土が入った状態として実施しても良い。
【0023】
更に、前記支柱3の上端部の弱軸側31、31の上端部には、前記3本のケーブル2…を抜き挿し可能に上縁を開口して下方へ切り欠いたスリット6が形成され、同スリット6、6内に上下方向に間隔をあけたケーブル2を道路の延長方向へ貫通する様態で、前後に位置する支柱間に架設される。
スリット6の形状は、図示のように上下方向に二つの屈曲点を有する形状に形成されるが、この限りではなく図示することは省略したが、二つの変曲点を有する湾曲形状、一つの屈曲点を有する屈曲形状、一つの変曲点を有する湾曲形状、並びに上部を屈曲点、下部を湾曲点を有する形状としても同様に実施できる。
【0024】
上記スリット6は、一方の弱軸側31方向から見ると左右対称になる形状(両弱軸側31、31に正対する方向に見ると同一形状)として、両スリット6、6内の貫通する上下の空き幅に変化を持たせている。したがって、車両が支柱3の弱軸側31へ衝突して同支柱3が倒れることに伴い、各ケーブル2…は、スリット6、6の側面形状と上下方向の幅の変化とにより、水平方向の摩擦抵抗を受けながら、確実に一本ずつ順に抜け、ケーブル2と支柱3とで衝突荷重を効果的に吸収することができる。
【0025】
上記のような構成のガードケーブル1において、同支柱3のスリット6内にケーブル2を、その上下の間隔を保持し定着させる抜き挿し可能なケーブル定着部材が、同スリット6内に設置される。本発明のケーブル定着部材は、スリット6の上下方向に複数貫通させるケーブル2…の上下の間隔を保持する間隔保持材7と支柱3の上端部に被せて各ケーブルをスリット6内に定着させる蓋材9とから構成される。勿論、いずれか一方をケーブル定着部材として実施しても良い。
【0026】
以下、間隔保持材7と蓋材9とで成るスリーブ定着部材の具体的構成を図3〜図7に基づいて、順に説明する。
先ず、間隔保持材7の構成について説明する本実施例ではケーブル2を上下方向に3本使用するため、使用する間隔保持材7は上下のケーブルの間となるため2個である。勿論、ケーブルの数に応じて個数は変化する。図示した前記間隔保持材7は、軽量な樹脂製の略四角柱とされ、角形鋼管支柱3の中空部内へ抜き挿し可能に挿入可能な大きさとされている。
この間隔保持材7は、その上端部と下端部の短辺側の側面の略中央位置に、上下の間隔保持材7、7同士を積み重ね状態で連接する雄部70と雌部71とが相対峙する配置にそれぞれ2個ずつ設けられている(図3参照)。前記雄部70と雌部71は、図示の通り軸心が一致する位置に配置されているので所謂ロケット鉛筆の如くに上下の間隔保持材7、7同士を積み重ね状態に容易に連接できる。勿論この限りではなく、例えば最上段に配置される間隔保持材においては、上端部に雌部を設ける必要が無く、下端部に雄部70を設けるのみの構成で実施することができる。
また、間隔保持材7の下方にはケーブル2を貫通させる凹部73が設けられており、上下の間隔保持材7、7を連接した際に、ケーブル2が貫通できる隙間を有する形状に開口している。凹部73はこの限りではなく、間隔保持材7の上方に同様に設けることも好適に実施される。
【0027】
上記支柱3の中空部内へ抜き挿し可能な間隔保持材7には、支柱3の外周面を囲んでスリット6の左右方向への開きを防止する目的のリング部材8がスリット6へ挿入する繋ぎ部分を介して連結されている。
具体的には、図6A、Bに示すように、間隔保持材7の長辺側の上端縁でスリット6へ挿入する繋ぎ部分に設けたフック受け部72と、リング部材8の長辺側の上端縁でスリット6へ挿入する繋ぎ部分に設けたフック部80とを互いに掛け合わせることで一体的に組み合わされる。これらの連結手段が上記のようにスリットへ挿入する繋ぎ部分に設けられるので、支柱3の中空部内へ挿入する際に、前記連結箇所がスリット6内を移動してスムーズな挿入作業が行える。このリング部材8を組み合わせた間隔保持材7は、図示例では第二ケーブル2bの上部へ位置する第二の間隔保持材7bとし、リング部材8を組み合わせないものを第一の間隔保持材7aとして、2種類の間隔保持材7を使用しているが、この限りではなく、リング部材8を組み合わせた間隔保持材7bを全てに使用して実施することもできる。
【0028】
上記構成の間隔保持材7の下端部には、飛散を防止する構造として下側に位置するケーブル2を掴み持つケーブル掴み部74が設けられている。具体的には、図5、図7に示すように、ケーブル掴み部74は間隔保持材7の下端部を平面的に見てその外形部から中心方向に向かって伸びる、L字形状の二本の腕部74a、74aから成る。前記外形部とは、図示例では短辺側の内側両側面である。この腕部74aと74aの先端は中央位置に開口可能な開き部Wを有する。この開き部Wからケーブル2を嵌め入れることが可能となるが、その開き部Wはケーブル2の直径よりかなり小径にしている。
【0029】
また、腕部74a、74aの両先端部は、対峙させたとき逆V字形状となるように片側に傾斜した形状に形成(図3参照)されて下方の開き幅W1を広くしてケーブル2を押し込んで嵌め入れやすくしている。しかし、一度腕部74a間を貫通して挿入されたケーブル2は、腕部74aの上方の空き幅はケーブル2の直径よりかなり小径な上記開き部Wであり、抜け出ることが難しい構成である(図8B参照)。したがって、支柱3の転倒に伴い間隔保持材7が支柱3から抜け出る際に、同間隔保持材7はケーブル2に繋がったまま抜けて掴み状態が保持されるので、どこかに飛散することがないのである。
【0030】
上記腕部74a、74aの配置としては、図7に示すように、間隔保持材7を平面的に見て略対角線上となる配置にすることが好適に実施される。腕部74aを対角に設けることで、ケーブル2を掴み部74を押し込む際に、腕部74とケーブル2とに角度が生じ、図8A、Bに示したように、腕部74a、74aの先端の逆V字形状により前記開き部W(W1)が開きやすくなり、容易にケーブル2の嵌め入れが行え、ケーブル2を挿入する凹部73内へ収まると、図8Bに示すように、前記小径の開き部Wによってケーブル2をしっかり掴むことができる。
因みに、上記した腕部74aは、L字形状である必要はない。複数本のケーブル2はこの間隔保持材7によりスリット6内において鉛直方向の同軸上で且つ支柱の鉛直方向の中心軸に交わるように架設されるので(図5参照)、下側に位置するケーブル2を掴み持つ腕部74aは間隔保持材7の下端部を平面的に見てその外形部から中心方向に向かって伸びておれば、湾曲形状でも実施可能である。
【0031】
次に、ケーブル定着部材を構成する雨水の進入を防止する上記蓋部9について説明する。蓋部9は樹脂製で支柱3の外形より大きく抜き挿し可能な形状とされており、図4、図5、図9に示すように、下方に第三ケーブル2cを貫通させる凹部90が設けられている。また、その下端部にケーブル掴み部91が、上述した腕部74aを有するケーブル掴み部74と同様の構成と形状で設けられており、腕部91a、91aの先端にケーブル2cを嵌め入れ可能な開き部Wが設けられている。勿論、腕部91aの先端の形状も腕部74aと同様で奏する効果も同じである(図9参照)。したがって、車両の衝突により支柱3が転倒することに伴って蓋部9が飛散することなく、前記第三ケーブル2cから抜けることなく繋がったままで掴み状態を保持して二次的被害が生じることを可及的に防止できる。
【0032】
ここで、図4〜図6、図8から支柱3の前記スリット6、6内にケーブル2a〜cを定着させる手順を説明する。
先ず、スリット6、6内へ第一ケーブル2aが上方から挿入される。そのあと、支柱3の中空部内へリング部材8を組み合わせていない間隔保持材7aが挿入され、その下端部に設けたケーブル掴み部74の開き部Wからケーブル2aを嵌め入れて同ケーブル2aの上面に載置する。複数本のケーブル2はこの間隔保持材7によりスリット6内において鉛直方向の同軸上で且つ支柱の鉛直方向の中心軸に交わるように架設される。
【0033】
次に、第二のケーブル2bをスリット6、6内へ挿入し、第二の間隔保持材7bを支柱3の中空部内へ挿入する。この際、用意する第二の間隔保持材7bとは、上述したリング部材8を組み合わせたものであることが好ましい(図6B参照)。挿入方法としては、間隔保持材7bは支柱3の中空部内へ、前記リング部材8は、支柱3の外周位置にくるように配置すると、両者を連結する係止め手段(フック受け部72、フック部80)が、支柱3のスリット6内に収まる位置となるのでスムーズに挿入することができる。
上記のように挿入した第二の間隔保持材7bは、その下端部の短辺側の二側面に設けた上記雄部70の軸芯を、第一の間隔保持材7のやはり上端部の短辺側の二側面に設けた上記雌部71へ合わせて挿入すると、上下の間隔保持材7a、7bを連接できると共に、間隔保持材7bのケーブル掴み部74の開き部W(W1)からケーブル2bを嵌め入れて同ケーブル2bの上面に載置させることができる。
続いて、第三のケーブル2cを挿入して、スリット6、6内へ3本のケーブル2を貫通させ、雨水の進入防止及びケーブルとの定着部として、支柱3の上端部に樹脂製の蓋材9が被せられる。この際にもやはり、蓋材9の下端部に設けたケーブル掴み部91の上記開き部W(W1)からケーブル2cを嵌め入れる。
【0034】
したがって、支柱3の弱軸側31へ車両が衝突して、支柱3が車両の進行方向へ倒れるに伴い、ケーブル2cがその衝突荷重により先ず蓋材9を外し、その後、各ケーブル2c〜2aが間隔保持材7a、7bと共にスリット6から抜け出る。その際には、間隔保持材7と蓋材9の各掴み部74、91によって各ケーブル2a〜2cにそれぞれぶら下がり飛散することを確実に防止することができる。
【実施例2】
【0035】
本発明のガードケーブル1を構成するケーブル定着部材は図10A、図10Bに示す間隔保持材7’においても実施可能である。
図10Aに示した間隔保持材7’は、本体形状が略四角柱とする点は実施例1と同様であるが、ケーブル掴み部74を構成する腕部74a’、74a’が対角線上に配置されるのではなく、四角柱の下端部で長辺側側面に平行する直線上に設けて実施することができる。この場合、ケーブルを嵌め入れる際、前記腕部74a’は上方へは折れ上がることを許容し、下方へ折れ下がること抑制する構成として、ケーブルを嵌め入れやすく抜け難くする。
図10Bに示した間隔保持材7’’は、図10Aに示したような、直線上となるケーブル掴み部74’’を有し、本体形状が楕円形状の筒型に成形している。この形状は支柱3の中空部内への挿入をよりスムーズに行える利点を有する。
【実施例3】
【0036】
本発明のガードケーブル1を構成するケーブル定着部材は図11A、図11Bに示す予めリング部材8を一体形成した間隔保持材7Tにおいても実施できる。即ち、その下端部のケーブル掴み部74Tの腕部74aT、74aTをL字形状ではなく半円弧形状として形成して実施することも好適に実施される。
【0037】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、本発明は、上記実施例の構成に限定されない。その目的と要旨を逸脱しない範囲において、当業者が必要に応じて行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のため言及する。例えば、本実施形態に示したガードケーブルのケーブルの本数は3本であるが、この限りではなく、また、間隔保持材の個数もケーブルの本数に合わせて適宜変更して実施される。
【符号の説明】
【0038】
1 ガードケーブル
2 ケーブル(2a〜2c)
3 支柱
31 弱軸側
32 強軸側
4 端部支柱
5 鞘管
6 スリット
7 間隔保持材(7’、7’’、7T)(第一の間隔保持材7a、第二の間隔保持材7b)
70 雄部
71 雌部
72 フック受け部
73 凹部
74 掴み部 (74’、74’’74T)
74a 腕部 (74a’、74a’’ 、74aT)
8 リング部材
80 フック部
9 蓋材
90 凹部
91 掴み部
91a 腕部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管支柱が側面を道路の延長方向に相対峙する配置で一定間隔をあけて立設されるとともに、複数本のケーブルを上下に間隔を開けて支柱間に架設するガードケーブルであって、
前記支柱には、その中空部又は外周面に嵌められて取り付けられるガードケーブル定着部材が設けられ、前記ガードケーブル定着部材はケーブルを掴み持つケーブル掴み部を備えており、
前記ケーブル掴み部は、前記ケーブルに近接する前記ガードケーブル定着部材の上部または下部に設けられていることを特徴とする、ガードケーブル。
【請求項2】
ケーブル定着部材は、ケーブルの上下の間隔を保持する間隔保持材と、支柱の上端部を塞ぐ蓋材のいずれかもしくは両方から成ることを特徴とする、請求項1に記載したガードケーブル。
【請求項3】
ケーブル掴み部は、ケーブル定着部材の下端部を平面的に見てその外形部から中心方向に向かって伸びる二本の腕部から成り、前記二本の腕部の先端はケーブルの直径よりも小径で開口可能な開き部を有する構成とされている、請求項1又は2に記載したガードケーブル。
【請求項4】
ケーブル掴み部を構成する二本の腕部は、ケーブル定着部材を平面的に見て略対角線上となる配置に設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載したガードケーブル。
【請求項5】
支柱は、道路の延長方向に相対峙する側面に、上縁から下方へ切り欠いたスリットが設けられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載したガードケーブル。
【請求項6】
支柱は、平面視が長方形であり、その長辺側が道路の延長方向に相対峙する配置であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載したガードケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−12809(P2012−12809A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149180(P2010−149180)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000231110)JFE建材株式会社 (150)
【出願人】(000192615)神鋼建材工業株式会社 (61)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】