説明

キナーゼ阻害剤としてのピリミジン置換プリン化合物

本発明はキナーゼ阻害剤として有用なプリン化合物に関する。前記化合物は構造(I)を有するか、又はその薬学的に許容しうる塩である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−(9−イソプロピル−8−メチル−2−モルホリン−4−イル−9H−プリン−6−イル)−ピリミジン−2−イルアミン、その調製方法、この化合物を含有する医薬組成物、及び特定のキナーゼ関連障害/状態の治療におけるこの化合物の使用に関する。
【0002】
背景技術
キナーゼ阻害剤の探索は、有用な薬学的活性物質の開発に有益な分野であることが証明されている。キナーゼは、或いは、リン酸転移酵素としても知られており、リン酸化と呼ばれる工程において高エネルギードナー分子(例えばATP)から特定の標的分子(典型的に、基質と呼ばれる)にリン酸基を転移させる酵素である。キナーゼの最大の群のうちの1つは、特定のタンパク質に作用して、活性を変化させるプロテインキナーゼである。
【0003】
キナーゼ阻害剤が薬学的活性化合物として作用するという可能性を受けて、これら標的に対して適切な活性を示す化合物を発見するためにかなりの量の研究が行われている。癌の分野では、治療用化合物の潜在的な標的として注目を集めている2つのキナーゼとして、mTOR及びPI3が挙げられる。この分野における研究の一例は、国際出願PCT/SG2008/000379号明細書に開示されており、これは、mTOR及びPI3の両方に対してキナーゼ阻害活性を有する多くの化合物を開示している。
【0004】
mTORキナーゼ及びPI3キナーゼの両方を同時に阻害する化合物は、PI3K/Akt/mTOR経路における複数の点で作用するので、これら化合物は、強力な抗増殖活性、抗血管新生活性及び抗腫瘍活性を提供すると予測することができる。この種の多くの阻害剤が、現在、初めて臨床設定において研究されている(例えば、BEZ235、XL765、GDC0941、PX866、SF1126)。
【0005】
適切な医薬候補の探索では、化合物が適切な医薬候補であるかどうかの最終決定において多くの要因が考慮される。したがって、更なる開発のための潜在的な化合物の評価を行う際には、化合物自体の主要な阻害活性に加えて多くの要因が考慮される。この評価を行う際には、熟練した医薬品化学者が、分子の「薬らしい特性(drug like properties)」について調べて、対象となる標的に対する活性、対象となる化合物の溶解度(可溶性ではない場合、その化合物は、典型的に、医薬候補として質が悪い)、インビトロ及びインビボにおける化合物の代謝的安定性、そして、特に、化合物が身体に対して引き起す可能性のある潜在的な副作用等の要因を評価することを含む。本発明者らは、その分野の他の化合物と比較して薬らしい特性が著しく改善されている化合物を同定した。
【0006】
発明の概要
本発明は、式(I)で表される化合物:
【化1】


又はその薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0007】
式Iで表される化合物に加えて、開示される態様は、薬学的に許容しうる塩、薬学的に許容しうるN−オキシド、薬学的に許容しうるプロドラッグ、並びに前記化合物の薬学的活性代謝物、及び前記代謝物の薬学的に許容しうる塩も対象とする。
【0008】
また、本発明は、薬学的に許容しうる担体、希釈剤又は賦形剤と共に本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。
【0009】
更なる局面では、本発明は、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物、及びPI3キナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物からなる群より選択されるプロテインキナーゼを阻害する方法であって、前記プロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物及び/又はその補助因子を、有効量の本発明の化合物に曝露することを含む方法を提供する。
【0010】
本明細書に開示される化合物は、キナーゼ分子又はその複合体若しくは断片に対して直接且つ単独で作用して生物活性を抑制することができる。しかし、前記化合物は、リン酸化工程に関与する補助因子に対しても少なくとも部分的に作用する可能性があることを理解されたい。公知のキナーゼ補助因子は、イオン種(亜鉛及びカルシウム等)、脂質(ホスファチジルセリン等)及びジアシルグリセロールを含む。
【0011】
いくつかの態様では、プロテインキナーゼは、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。いくつかの態様では、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体は、mTORプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。いくつかの態様では、セリン/トレオニンプロテインキナーゼは、mTORC1又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。いくつかの態様では、セリン/トレオニンプロテインキナーゼは、mTORC2又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。
【0012】
いくつかの態様では、プロテインキナーゼは、PI3キナーゼ又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。いくつかの態様では、PI3キナーゼ又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物は、クラスIのPI3K又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。
【0013】
前記方法の1つの態様では、1つ以上のタンパク質キナーゼを前記化合物に曝露することは、前記1つ以上のプロテインキナーゼを含む哺乳類に前記化合物を投与することを含む。
【0014】
更なる局面では、本発明は、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物、及びPI3キナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物からなる群より選択される1つ以上のプロテインキナーゼを阻害するための本発明の化合物の使用を提供する。
【0015】
いくつかの態様では、プロテインキナーゼは、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。いくつかの態様では、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体は、mTORプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。いくつかの態様では、セリン/トレオニンプロテインキナーゼは、mTORC1又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。いくつかの態様では、セリン/トレオニンプロテインキナーゼは、mTORC2又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。
【0016】
いくつかの態様では、プロテインキナーゼは、PI3キナーゼ又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。いくつかの態様では、PI3キナーゼ又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物は、クラスIのPI3K又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。
【0017】
更なる局面では、本発明は、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物、及びPI3キナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物からなる群より選択される1つ以上のプロテインキナーゼの阻害が、状態の病状又は症候を予防、阻害、又は寛解する、哺乳類における前記状態を治療又は予防する方法であって、治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0018】
いくつかの態様では、プロテインキナーゼは、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。いくつかの態様では、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体は、mTORプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。いくつかの態様では、セリン/トレオニンプロテインキナーゼは、mTORC1又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。いくつかの態様では、セリン/トレオニンプロテインキナーゼは、mTORC2又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。
【0019】
いくつかの態様では、プロテインキナーゼは、PI3キナーゼ又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。いくつかの態様では、PI3キナーゼ又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物は、クラスIのPI3K又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。
【0020】
いくつかの態様では、前記状態は癌である。いくつかの態様では、前記癌は、以下からなる群より選択される:骨髄増殖性障害(特発性骨髄線維症、真性赤血球増加、本態性血小板血、慢性骨髄白血病)、骨髄様化生、慢性骨髄単球性白血病、急性リンパ性白血病、急性赤芽球性白血病、ホジキン及び非ホジキン病、B細胞リンパ腫、急性T細胞白血病、骨髄異形成症候群、形質細胞障害、ヘアリーセル白血病、カポジ肉腫、リンパ腫等の血液癌、並びに乾癬及び再狭窄等の過増殖状態;乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、膣及び外陰癌、子宮内膜増殖症等の婦人科系癌;結腸直腸癌、ポリープ、肝臓癌、胃癌、膵臓癌、胆嚢癌等の胃腸管癌;前立腺癌、腎癌及び腎臓癌等の尿路癌;膀胱癌、尿道癌、陰茎癌;黒色腫等の皮膚癌;膠芽腫、神経芽細胞腫、星状細胞腫、上衣腫、脳幹部グリオーマ、髄芽細胞腫、髄膜腫、星状細胞腫、乏突起膠腫等の脳腫瘍;上咽頭癌、喉頭癌等の頭頸部癌;肺癌(NSCLC及びSCLC)、中皮腫等の呼吸器官癌;網膜芽細胞腫等の眼疾患;骨肉腫、筋骨格新生物等の筋骨格疾患;扁平上皮癌及び類線維腫。他の態様では、本発明の化合物を使用して、家族性大腸腺腫症、結腸腺腫性ポリープ、骨髄性異形成、子宮内膜異形成、異型子宮内膜増殖症、子宮頚部異形成、膣上皮内新生腫瘍、良性前立腺肥大症、喉頭の乳頭腫、化学線及び日光性角化症、脂漏性角化症及び角化棘細胞腫を含む前癌状態又は過形成を治療することができる。
【0021】
いくつかの態様では、前記状態は、自己免疫性若しくは炎症性の疾患、又は過度の血管新生によって支持される疾患である。ある程度の自己免疫性病因に起因すると考えられるか、又は病理学的炎症及び血管新生応答を含む疾患は、以下を含む:急性散在性脳脊髄膜炎、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、顆粒球減少症、アレルギー喘息、アレルギー性脳脊髄炎、アレルギー性鼻炎、円形脱毛症、老人性脱毛症、赤血球形成不全、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、大動脈炎症候群、再生不良性貧血、アトピー性皮膚炎、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎、バロー病、バセドー病、ベーチェット病、気管支喘息、キャッスルマン症候群、セリアック病、シャガス病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、チャーグ−ストラウス症候群、コーガン症候群、円錐角膜、角膜白斑、コクサッキー心筋炎、CREST疾患、クローン病、皮膚好酸球増加症、皮膚T細胞リンパ腫、皮膚炎多形性紅斑、皮膚筋炎、糖尿病性網膜症、ドレスラー症候群、角膜上皮性異栄養症、湿疹性皮膚炎、子宮内膜症、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、表皮水泡症、エバンス症候群、線維化性肺胞炎、妊娠性疱疹、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病、グレーブス病、ギランバレー症候群、橋本病、溶血性尿毒症症候群、ヘルペス性角膜炎、尋常性魚鱗癬、特発性間質性肺炎、特発性血小板減少性紫斑病、炎症性腸疾患、川崎病、角膜炎、角結膜炎、ランバート−イートン症候群、尋常性白斑、扁平苔癬、硬化性苔癬、ライム病、線状IgA病、黄斑変性、巨赤芽球性貧血、メニエール病、モーレン潰瘍、ムッハ−ハーベルマン病、多発性筋炎、多発性硬化症、重症筋無力症、壊死性小腸大腸炎、視神経脊髄炎、眼天疱瘡、眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群、オード甲状腺炎、発作性夜間色素尿症、パーソニッジ−ターナー症候群、天疱瘡、歯根膜炎、悪性貧血、花粉アレルギー、多腺性自己免疫症候群、後部ブドウ膜炎、原発性胆汁性肝硬変、直腸炎、偽膜性大腸炎、乾癬、肺気腫、膿皮症、ライター症候群、可逆的閉塞性気道疾患、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強膜炎、セザリー症候群、シェーグレン症候群、亜急性細菌性心内膜炎、全身性エリテマトーデス、高安病、側頭動脈炎、トローザ−ハント症候群、I型糖尿病、潰瘍性大腸炎、蕁麻疹、春季結膜炎、白斑、フォークト−小柳−原田症候群及びヴェーゲナー肉芽腫症。いくつかの態様では、前記状態は子宮内膜症である。
【0022】
更なる局面において、本発明は、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物、及びPI3キナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物からなる群より選択される1つ以上のプロテインキナーゼの阻害が、状態の病状又は症候を予防、阻害、又は寛解する、動物における前記状態を治療するための医薬の調製における本発明の化合物の使用を提供する。
【0023】
別の局面において、本発明は、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物、及びPI3キナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物からなる群より選択される1つ以上のプロテインキナーゼの阻害が、状態の病状又は症候を予防、阻害、又は寛解する、前記状態の治療における本発明の化合物、又はその薬学的に許容しうる塩、N−オキシド、若しくはプロドラッグの使用を提供する。
【0024】
いくつかの態様では、プロテインキナーゼは、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。いくつかの態様では、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体は、mTORプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。いくつかの態様では、セリン/トレオニンプロテインキナーゼは、mTORC1又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。いくつかの態様では、セリン/トレオニンプロテインキナーゼは、mTORC2又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。
【0025】
いくつかの態様では、プロテインキナーゼは、PI3キナーゼ又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。いくつかの態様では、PI3キナーゼ又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物は、クラスIのPI3K又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物である。
【0026】
別の局面では、本発明は、被験体における増殖状態を予防又は治療する方法であって、治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0027】
別の局面では、本発明は、被験体における増殖状態を治療するための医薬の調製における本発明の化合物の使用を提供する。
【0028】
いくつかの態様では、前記状態は癌である。いくつかの態様では、前記癌は、以下からなる群より選択される:骨髄増殖性障害(特発性骨髄線維症、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、慢性骨髄白血病)、骨髄様化生、慢性骨髄単球性白血病、急性リンパ性白血病、急性赤芽球性白血病、ホジキン及び非ホジキン病、B細胞リンパ腫、急性T細胞白血病、骨髄異形成症候群、形質細胞障害、ヘアリーセル白血病、カポジ肉腫、リンパ腫等の血液癌;乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、膣及び外陰癌、子宮内膜増殖症等の婦人科系癌;結腸直腸癌、ポリープ、肝臓癌、胃癌、膵臓癌、胆嚢癌等の胃腸管癌;前立腺癌、腎癌及び腎臓癌等の尿路癌;膀胱癌、尿道癌、陰茎癌;黒色腫等の皮膚癌;膠芽腫、神経芽細胞腫、星状細胞腫、上衣腫、脳幹部グリオーマ、髄芽細胞腫、髄膜腫、星状細胞腫、乏突起膠腫等の脳腫瘍;上咽頭癌、喉頭癌等の頭頸部癌;肺癌(NSCLC及びSCLC)、中皮腫等の呼吸器官癌;網膜芽細胞腫等の眼疾患;骨肉腫、筋骨格新生物等の筋骨格疾患;扁平上皮癌及び類線維腫。いくつかの態様では、前記状態は子宮内膜症である。
【0029】
更に、式(I)は、適用可能な場合には、化合物の溶媒和形態及び非溶媒和形態を包含することを意図する。したがって、各式は、水和形態及び非水和形態を含む、指定の構造を有する化合物を含む。
【0030】
本教示のこれら及び他の特徴を本明細書に記載する。
【0031】
発明の詳細な説明
この明細書では、当業者に周知である多数の用語を使用する。しかしながら、明瞭にするために、多数の用語を定義する。
【0032】
用語「薬学的に許容しうる塩」は、上記同定された化合物の望ましい生物活性を保持している塩を指し、薬学的に許容しうる酸付加塩及び塩基付加塩を含む。式(I)で表される化合物の適切な薬学的に許容しうる酸付加塩は、無機酸又は有機酸から調製することができる。このような無機酸の例は、塩酸、硫酸、及びリン酸である。脂肪族、脂環式、芳香族、複素環式のカルボン酸及びスルホン酸の分類の有機酸から適切な有機酸を選択することができ、その例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸である。薬学的に許容しうる塩に関する更なる情報は、 Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th Edition, Mack Publishing Co., Easton, PA 1995に見出すことができる。固体である剤の場合には、当業者は、本発明の化合物、剤、及び塩が、様々な結晶形又は多形で存在する場合があることを理解し、これらは全て、本発明及び特定の式の範囲内であることを意図する。
【0033】
用語「治療有効量」又は「有効量」は、有益であるか又は望ましい臨床結果を得るのに十分な量である。有効量は、1回以上の投与で投与してもよい。有効量は、典型的に、疾患状態を軽減するか、寛解させるか、安定化させるか、逆行させるか、進行を減速又は遅延させるのに十分である。
【0034】
用語「機能的な等価物」は、本明細書に記載される特定のプロテインキナーゼ種の変異体を含むことを意図する。キナーゼは、アイソフォームを有する可能性があり、その結果、所与のキナーゼアイソフォームの1次、2次、3次、又は4次構造は、原型の(protoypical)キナーゼとは異なるが、分子は、プロテインキナーゼとしての生物活性を維持することが理解される。アイソフォームは、集団内の正常な対立遺伝子変異から生じる場合があり、アミノ酸の置換、欠失、付加、切断、又は重複等の突然変異を含む。また、転写のレベルで生じる変異体も用語「機能的な等価物」内に含まれる。他の機能的な等価物は、グリコシル化等の翻訳後修飾が変化したキナーゼを含む。
【0035】
本発明の化合物は、その分野における構造上類似している化合物と比べて、以下により詳細に記載される優れた薬らしい特性を示す。これらの優れた特性は、本発明の化合物が、恐らくその分野における医薬開発候補として最適な化合物であろうということを示唆する。最初の所見として、本発明の化合物は、対象となる2つのキナーゼ、すなわちmTOR及びPI3の阻害において、優れてはいないまでも同等の活性を示す。PI3に対する本発明の化合物の活性は、試験した比較対照化合物の全てよりも強く、そして、mTORに対しては、比較対照化合物と同等であり、且つ治療用途に許容しうるレベルである活性を示す。
【0036】
酵素活性試験は、殆ど全ての比較対照化合物が許容しうる活性レベルを有することを示したにもかかわらず、化合物の更なる試験では、他の根拠に基づいて医薬開発候補として多数が除外される可能性があることが示された。したがって、例えば、本発明の化合物は、合理的な水溶解度レベル(178μM)を有しており、これは、前記化合物を経口的に吸収可能な医薬製剤に製剤化することができることを示すが、一方、多くの比較対照化合物は、許容しうる溶解度を示さなかった。このように、本発明の化合物は、優れた活性と許容しうる溶解度特性との組合せを示した。
【0037】
活性と溶解度との組合せを示した化合物のうち、本発明の化合物は、代謝的安定特性においてはるかに優れていた。本発明の化合物は、ヒト肝ミクロソーム研究において優れた安定性を有しており、これは、本発明の化合物が、頑健(ロバスト)であり且つ生理学的環境における分解に対して比較的耐性であることを示す。対照的に、活性と溶解度との組合せを示した他の化合物は、これらの研究において安定とは程遠かった。このように、本発明の化合物は、この分野の関連化合物のうちのいくつかと明らかに構造上非常に類似しているにもかかわらず、前記関連化合物と比較して、活性、溶解度及び安定性の唯一の組合せを示し、これが、本発明の化合物を医薬候補として優れたものにしている。
【0038】
本発明の化合物は、特定のプロテインキナーゼの活性を抑制する能力を有する。キナーゼ活性を阻害する能力は、本発明の化合物がキナーゼ分子に対して直接且つ単独で作用して生物活性を阻害する結果である可能性がある。しかし、前記化合物が、リン酸化工程に関与する問題のキナーゼの補助因子に対して少なくとも部分的に作用する可能性もあることを理解されたい。前記化合物は、PI3プロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物に対する活性を有する場合もある。前記化合物は、mTOR等の特定のセリン/トレオニンキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物に対する活性を有する場合もある。
【0039】
当技術分野において周知である多くの方法のいずれかでプロテインキナーゼの阻害を行うことができる。例えば、インビトロにおいてプロテインキナーゼを阻害することが望ましい場合、精製されたキナーゼ酵素を含有している溶液に適切な量の本発明の化合物を添加してもよい。哺乳類におけるキナーゼの活性を阻害することが望ましい状況では、キナーゼの阻害は、典型的に、キナーゼを含む哺乳類に前記化合物を投与することを含む。
【0040】
したがって、本発明の化合物は、上述の種類のプロテインキナーゼを阻害する能力を利用することができる多くの用途を見出すことができる。例えば、前記化合物を用いて、セリン/トレオニンプロテインキナーゼを阻害することができる。また、プロテインキナーゼ及び/又はその補助因子の阻害が、状態の病状又は症候を予防、阻害、又は寛解する、哺乳類における前記状態の治療又は予防において前記化合物を使用してもよい。
【0041】
開示される化合物は、増殖性障害の治療において使用することができる。このような障害の一例は、癌である。前記化合物は、固形腫瘍及び液体腫瘍の両方を治療する能力を有すると予測される。いくつかの態様では、本発明の化合物によって治療することができる癌は、固形腫瘍及び血液癌を含む。
【0042】
本明細書で使用するとき、用語「癌」は、細胞の制御されない異常な増殖を特徴とする莫大な数の状態を包含することを意図する一般的な用語である。本発明の化合物は、骨癌、脳及びCNSの腫瘍、乳癌、結腸直腸癌、副腎皮質癌を含む内分泌癌、膵臓癌、脳下垂体癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、胸腺癌、胃腸癌、肝臓癌、肝外胆管癌、胃腸カルチノイド腫瘍、胆嚢癌、泌尿生殖器癌、婦人科系癌、頭頸部癌、白血病、骨髄腫、血液障害、肺癌、リンパ腫、眼癌、皮膚癌、軟部組織肉腫、成人軟部組織肉腫、カポジ肉腫、泌尿系癌を含むが、これらに限定されない様々な癌の治療において有用であると予測される。
【0043】
本発明の化合物によって治療することができる例示的な癌は、以下を含む:骨髄増殖性障害(特発性骨髄線維症、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、慢性骨髄白血病)、骨髄様化生、慢性骨髄単球性白血病、急性リンパ性白血病、急性赤芽球性白血病、ホジキン及び非ホジキン病、B細胞リンパ腫、急性T細胞白血病、骨髄異形成症候群、形質細胞障害、ヘアリーセル白血病、カポジ肉腫、リンパ腫等の血液癌、並びに乾癬及び再狭窄等の過増殖状態;乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、膣及び外陰癌、子宮内膜増殖症等の婦人科系癌;結腸直腸癌、ポリープ、肝臓癌、胃癌、膵臓癌、胆嚢癌等の胃腸管癌;前立腺癌、腎癌及び腎臓癌等の尿路癌;膀胱癌、尿道癌、陰茎癌;黒色腫等の皮膚癌;膠芽腫、神経芽細胞腫、星状細胞腫、上衣腫、脳幹部グリオーマ、髄芽細胞腫、髄膜腫、星状細胞腫、乏突起膠腫等の脳腫瘍;上咽頭癌、喉頭癌等の頭頸部癌;肺癌(NSCLC及びSCLC)、中皮腫等の呼吸器官癌;網膜芽細胞腫等の眼疾患;骨肉腫、筋骨格新生物等の筋骨格疾患;扁平上皮癌及び類線維腫。また、本発明の化合物を使用して、家族性大腸腺腫症、結腸腺腫性ポリープ、骨髄性異形成、子宮内膜異形成、異型子宮内膜増殖症、子宮頚部異形成、膣上皮内新生腫瘍、良性前立腺肥大症、喉頭の乳頭腫、化学線及び日光性角化症、脂漏性角化症及び角化棘細胞腫を含む前癌状態又は過形成を治療することができる。
【0044】
また、本発明の化合物は、自己免疫性若しくは炎症性の疾患、又は過度の血管新生によって支持される疾患の治療において有用であると予測される。ある程度の自己免疫性病因に起因すると考えられるか、又は病理学的炎症及び血管新生応答を含む疾患は、以下を含むが、これらに限定されない:急性散在性脳脊髄膜炎、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、顆粒球減少症、アレルギー喘息、アレルギー性脳脊髄炎、アレルギー性鼻炎、円形脱毛症、老人性脱毛症、赤血球形成不全、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、大動脈炎症候群、再生不良性貧血、アトピー性皮膚炎、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎、バロー病、バセドー病、ベーチェット病、気管支喘息、キャッスルマン症候群、セリアック病、シャガス病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、チャーグ−ストラウス症候群、コーガン症候群、円錐角膜、角膜白斑、コクサッキー心筋炎、CREST疾患、クローン病、皮膚好酸球増加症、皮膚T細胞リンパ腫、皮膚炎多形性紅斑、皮膚筋炎、糖尿病性網膜症、ドレスラー症候群、角膜上皮性異栄養症、湿疹性皮膚炎、子宮内膜症、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、表皮水泡症、エバンス症候群、線維化性肺胞炎、妊娠性疱疹、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病、グレーブス病、ギランバレー症候群、橋本病、溶血性尿毒症症候群、ヘルペス性角膜炎、尋常性魚鱗癬、特発性間質性肺炎、特発性血小板減少性紫斑病、炎症性腸疾患、川崎病、角膜炎、角結膜炎、ランバート−イートン症候群、尋常性白斑、扁平苔癬、硬化性苔癬、ライム病、線状IgA病、黄斑変性、巨赤芽球性貧血、メニエール病、モーレン潰瘍、ムッハ−ハーベルマン病、多発性筋炎、多発性硬化症、重症筋無力症、壊死性小腸大腸炎、視神経脊髄炎、眼天疱瘡、眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群、オード甲状腺炎、発作性夜間色素尿症、パーソニッジ−ターナー症候群、天疱瘡、歯根膜炎、悪性貧血、花粉アレルギー、多腺性自己免疫症候群、後部ブドウ膜炎、原発性胆汁性肝硬変、直腸炎、偽膜性大腸炎、乾癬、肺気腫、膿皮症、ライター症候群、可逆的閉塞性気道疾患、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強膜炎、セザリー症候群、シェーグレン症候群、亜急性細菌性心内膜炎、全身性エリテマトーデス、高安病、側頭動脈炎、トローザ−ハント症候群、I型糖尿病、潰瘍性大腸炎、蕁麻疹、春季結膜炎、白斑、フォークト−小柳−原田症候群及びヴェーゲナー肉芽腫症。いくつかの態様では、前記状態は子宮内膜症である。
【0045】
また、本発明の化合物は、プロテインキナーゼの阻害が状態の病状又は症候を予防、阻害、又は寛解することができる、動物における前記状態を治療するための医薬の調製において使用することができる。また、本発明の化合物は、キナーゼ関連障害を治療又は予防するための医薬の調製において使用してもよい。
【0046】
式(I)で表される化合物は、経口又は直腸内等の腸内投与用に許容されている方法のいずれかによって、或いは皮下、筋肉内、静脈内、及び皮内の経路等の非経口投与によってヒトに投与することができる。注入はボーラス(急速投与)であってもよく、又は持続注入若しくは間欠的注入を介してもよい。活性化合物は、典型的に、薬学的に許容しうる担体又は希釈剤中に、患者に治療有効量を送達するのに十分な量含まれている。様々な態様では、阻害剤化合物は、正常細胞よりも、急速に増殖する細胞、例えば、癌性腫瘍に対して選択的に毒性であってもよく、又は毒性が強くてもよい。
【0047】
本発明の化合物の使用において、前記化合物を生物が利用できるようにする任意の形態又は方法でそれを投与することができる。製剤を調製する分野の当業者は、選択される化合物の具体的な特性、治療される状態、治療される状態の段階、及び他の関連する状況に依存して、投与の適切な形態及びモードを容易に選択することができる。更なる情報については、Remingtons Pharmaceutical Sciences, 19th edition, Mack Publishing Co. (1995)を参照されたい。
【0048】
本発明の化合物は、単独で投与してもよく、又は薬学的に許容しうる担体、希釈剤若しくは賦形剤と組み合わせて医薬組成物の形態で投与してもよい。本発明の化合物は、それ自体でも有効であるが、典型的には製剤化されて薬学的に許容しうる塩の形態で投与される。その理由は、これらの形態が、典型的に、より安定であり、より容易に結晶化し、そして溶解度が高いためである。
【0049】
しかし、前記化合物は、典型的に、望ましい投与方法に依存して、製剤化された医薬組成物の形態で使用される。このように、いくつかの態様では、本発明は、本発明の化合物と、薬学的に許容しうる担体、希釈剤又は賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。前記組成物は、当技術分野において周知の方法で調製される。
【0050】
本発明は、他の態様において、本発明の医薬組成物の成分のうちの1つ以上が充填された1つ以上の容器を含む医薬パック又はキットを提供する。このようなパック又はキットには、単位投薬量の剤を有する容器を見出すことができる。前記キットは、使用前に更に希釈することができる濃縮物(凍結乾燥組成物を含む)として有効な剤を含む組成物を含んでもよく、又はバイアルが1回以上の投薬量を含むことができる場合には、使用濃度で提供してもよい。都合のよいことに、前記キットでは、バイアルが望ましい量及び濃度の剤を含むことができる場合、医師がバイアルを直接使用することができるように、単回投薬量を無菌バイアルで提供することができる。このような容器には、使用説明書、或いは医薬品又は生物製剤の製造、使用、又は販売を規制している政府機関によって規定された形態の表示であって、ヒト投与の場合は製造、使用、又は販売に関する政府機関による承認を反映している表示等の様々な資料が付随してもよい。
【0051】
本発明の化合物は、上記障害/疾患を治療するための1つ以上の更なる医薬と組み合わせて使用又は投与してもよい。成分は、同じ製剤で投与しても別々の製剤で投与してもよい。別々の製剤で投与する場合、本発明の化合物は、順次投与しても、他の医薬と同時に投与してもよい。
【0052】
1つ以上の更なる医薬と組み合わせて投与できることに加えて、本発明の化合物は、併用療法において使用してもよい。併用療法が行われる場合、前記化合物は、典型的に、互いに組み合わせて投与される。したがって、望ましい効果を得るために、本発明の化合物を同時に(複合調製物として)投与しても、順次投与してもよい。2つの医薬の併用効果によって改善された治療結果が得られるように、各化合物の治療プロファイルが異なる場合が特に望ましい。
【0053】
非経口注入用の本発明の医薬組成物は、薬学的に許容しうる無菌の水溶液又は非水溶液、分散液、懸濁液又はエマルションに加えて、使用直前に無菌の注入溶液又は分散液に再構成するための無菌粉末を含む。適切な水性及び非水性の担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例は、水、エタノール、多価アルコール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)及びこれらの適切な混合物、植物油(オリーブ油等)、並びにオレイン酸エチル等の注入可能な有機エステルを含む。例えば、レシチン等のコーティング材の使用によって、分散液の場合は必要な粒径を維持することによって、及び界面活性剤の使用によって、適切な流動性を維持することができる。
【0054】
また、これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤等の佐剤を含有してもよい。様々抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等を含むことにより、確実に微生物の作用の予防することができる。また、糖、塩化ナトリウム等の等張剤を含むことが望ましい場合もある。モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン等の吸収遅延剤を含むことにより、注入可能な剤形を持続的に吸収させることができる。
【0055】
必要に応じて、そしてより有効に分布させるために、ポリマーマトリクス、リポソーム及びミクロスフェア等の徐放又は標的指向化送達系に前記化合物を組み込んでもよい。
【0056】
例えば、細菌保持フィルタを通して濾過することによって、或いは使用直前に滅菌水又は他の無菌注入可能媒体に溶解又は分散させることができる無菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、注入可能製剤を滅菌することができる。
【0057】
経口投与用の固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤及び果粒剤を含む。このような固体剤形では、活性化合物は、クエン酸ナトリウム若しくはリン酸二カルシウム等の少なくとも1つの不活性な薬学的に許容しうる賦形剤若しくは担体、並びに/又はa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸等の賦形剤若しくは増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及びアラビアゴム等の結合剤、c)グリセロール等の湿潤剤、d)寒天、炭酸カルシウム、バレイショデンプン若しくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム等の崩壊剤、e)パラフィン等の溶液緩染剤、f)第四アンモニウム化合物等の吸収促進物質、g)例えば、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロール等の湿潤剤、h)カオリン及びベントナイト粘土等の吸収性物質、及びi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑沢剤、及びこれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合、前記剤形は、緩衝剤を含んでもよい。
【0058】
高分子量ポリエチレングリコール等に加えてラクトース又は乳糖等の賦形剤を使用する軟質及び硬質の充填ゼラチンカプセル剤における充填剤として、類似の種類の固形組成物を使用してもよい。
【0059】
腸溶コーティング及び医薬品製剤分野で周知である他のコーティング等の、コーティング及びシェルを備える錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤及び果粒剤の固体剤形を調製することができる。それらは、任意で乳白剤を含有してもよく、そして、活性成分のみを放出するか、又は優先的に、腸管の特定の部分で、場合により、遅延方式で活性成分を放出する組成物であってもよい。使用することができる埋め込み組成物の例は、ポリマー物質及びろうを含む。
【0060】
また、適切な場合、活性化合物は、前述の賦形剤のうちの1つ以上と共にマイクロカプセル化された形態であってもよい。
【0061】
経口投与用の液体剤形は、薬学的に許容しうる乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤及びエリキシル剤を含む。活性化合物に加えて、前記液体剤形は、例えば、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにこれらの混合物等の当技術分野において一般的に使用されている不活性希釈剤を含有してもよい。
【0062】
不活性希釈剤に加えて、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤、及び懸濁化剤、甘味剤、着香剤、及び香料等の佐剤を含んでもよい。
【0063】
懸濁剤は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天及びトラガント、並びにこれらの混合物等の特定の懸濁化剤を含有してもよい。
【0064】
直腸内又は膣内投与用の組成物は、室温では固体であるが体温では液体であるので、直腸又は膣腔で溶けて、活性化合物を放出するカカオバター、ポリエチレングリコール又は坐剤用ろう等の適切な非刺激性の賦形剤又は担体と、本発明の化合物とを混合することにより調製できる坐剤であることが好ましい。
【0065】
本発明の化合物の局所投与用の剤形は、散剤、貼付剤、スプレー、軟膏剤及び吸入剤を含む。活性化合物は、無菌条件下で、薬学的に許容しうる担体及び任意の必要な保存剤、バッファ又は必要な場合のある噴射剤と混合される。
【0066】
投与される化合物の量は、好ましくは、状態を治療及び軽減するか、又は緩和する。従来の技術を使用することにより、及び類似の状況下で得られる結果を観察することにより、担当の診断医が治療有効量を容易に決定することができる。治療有効量の決定において、動物の種、その大きさ、年齢及び全体的な健康、関与する具体的な状態、状態の重篤度、治療に対する患者の応答、投与される具体的な化合物、投与方法、投与される調製物の生物学的利用能、選択される用法、他の医薬の使用、及び他の関連する状況を含むが、これらに限定されない多くの要因を考慮すべきである。
【0067】
好ましい投薬量は、1日当たり、体重1キログラム当たり約0.01〜300mgの範囲である。より好ましい投薬量は、1日当たり、体重1キログラム当たり0.1〜100mg、より好ましくは、1日当たり、体重1キログラム当たり0.2〜80mg、更により好ましくは、1日当たり、体重1キログラム当たり0.2〜50mgである。1日当たり複数の副用量(sub-doses)で適切な用量を投与してもよい。
【0068】
本発明の化合物の合成
スキーム1に記載される5段階の手順を使用して、ジクロロプリンから5−(9−イソプロピル−8−メチル−2−モルホリン−4−イル−9H−プリン−6−イル)−ピリミジン−2−イルアミンを調製した。
【化2】

【0069】
実施例
下記実施例において、特に指示しない限り、以下に記載される全ての温度は摂氏温度であり、特に指示しない限り、全ての部及び百分率は重量による。
【0070】
様々な出発物質及び他の試薬は、特に指示しない限り、Aldrich Chemical Company又はLancaster Synthesis Ltd.等の商業供給元から購入し、更に精製することなく使用した。テトラヒドロフラン(THF)及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)は、SureSealボトルでAldrichから購入し、受け取ったままの状態で使用した。特に指示しない限り、全ての溶媒は、当技術分野における標準的な方法を使用して精製した。
【0071】
以下に記載する反応は、陽圧の窒素、アルゴン下で、又は乾燥管を用いて、(特に断らない限り)周囲温度で、無水溶媒中にて実施し、反応フラスコには、シリンジを介して基質及び試薬を導入するためにゴム隔膜を取付ける。ガラス器は、オーブン乾燥及び/又は加熱乾燥した。分析薄層クロマトグラフィーは、背面がガラスであるシリカゲル60F 254プレート(E Merck(0.25mm))上で行い、適切な溶媒比(v/v)で溶出した。反応は、TLCによってアッセイし、出発物質の消費によって判断して終了した。
【0072】
TLCプレートは、UV吸収によるか、又は熱で活性化されたp−アニスアルデヒドスプレー試薬若しくはリンモリブデン酸試薬(Aldrich Chemical、エタノール中20重量%)を用いるか、又はヨウ素チャンバ内で染色することによって視覚化した。
【0073】
後処理は、典型的に、反応溶媒又は抽出溶媒で反応体積を2倍にし、次いで、25体積%の抽出体積(特に指示しない限り)を用いて指定の水溶液で洗浄することにより行った。生成物溶液は、濾過前に無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして、溶媒の蒸発はロータリーエバポレータ上にて減圧下で行い、真空内で除去された溶媒として記録した。
【0074】
特に断らない限り、フラッシュカラムクロマトグラフィー[Still et al, J. Org. Chem., 43, 2923 (1978)]は、E Merckグレードのフラッシュシリカゲル(47〜61mm)及び約20:1〜50:1のシリカゲル:粗製物比を用いて実施した。水素化分解は、指示された圧力、又は周囲圧力で行った。
【0075】
1H NMRスペクトルは、400MHzで作動するBruker機器で記録し、そして、13C-NMRスペクトルは、100MHzで作動するBruker機器で記録した。NMRスペクトルは、参照標準としてのクロロホルム(7.27ppm及び77.00ppm)若しくはCDOD(3.4及び4.8ppm及び49.3ppm)を用いて、又は適切な場合、内部テトラメチルシラン基準(0.00ppm)を使用して、CDCl溶液(ppmで報告した)として得た。他のNMR溶媒を必要に応じて使用した。ピーク多重度を報告する場合、以下の略語を使用する:s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、m=多重線、br=幅広、dd=二重線がさらに二重線に分裂、dt=三重線がさらに二重線に分裂。所定の場合、カップリング定数はヘルツで報告する。質量スペクトルは、ESI又はAPCIのいずれかでLC/MSを使用して得た。融点は全て補正していない。最終生成物は全て、純度が90%を上回っていた(220nm及び254nmの波長のHPLCによる)。
【0076】
以下の合成例は、本発明の化合物を合成する1つの方法を例示することを意図し、それに限定するものとして解釈すべきではない。
【0077】
実施例1 本発明の化合物の合成
2,6−ジクロロ−9−イソプロピル−9H−プリンの合成
【化3】


2,6−ジクロロプリン(2mmol)、イソプロパノール(8mmol)及びトリフェニルホスフィン(4mmol)を40mLの無水テトラヒドロフラン中に取り、そして、ジイソプロピルアジドジカルボキシレート(4mmol)を30分間にわたって室温で滴下した。次いで、反応混合物を更に24時間室温で撹拌した。TLC又はLC−MSによって定期的に反応をモニタした。氷冷水を収容しているビーカーに反応混合物を注いだ。100mLずつの酢酸エチルを用いて3回水層を抽出し、粗生成物を得た。シリカゲルカラム上のクロマトグラフィー(石油エーテル中10〜80%の酢酸エチル、勾配溶出)によってこれを精製して、収率77%で2,6−ジクロロ−9−イソプロピル−9H−プリンを得た。
【0078】
5−(2−クロロ−9−イソプロピル−9H−プリン−6−イル)−ピリミジン−2−イルアミンの合成
【化4】


2,6−ジクロロ−9−イソプロピル−9H−プリン(5.21mmol)、5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イルアミン(5.21mmol)、及びジクロロメタン(0.26mmol)で錯体化された1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)クロリドの過酸化物不含ジオキサン(40mL)溶液に、炭酸ナトリウムの2M水溶液(15.6mmol)を添加した。得られた混合物を脱気し、窒素でパージした。次いで、3時間80℃で維持された油浴で加熱しながら、この反応混合物を撹拌した。出発プリンの消失について、LC−MSで反応をモニタした。
【0079】
反応混合物を室温に冷却し、そして、減圧下で溶媒を除去した。残渣を酢酸エチル及び水の混合物に取った。有機相を分離し、そして、100mLずつの酢酸エチルで3回水層を更に抽出した。有機物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして、真空下で溶媒を除去して、収率55%で5−(2−クロロ−9−イソプロピル−9H−プリン−6−イル)−ピリミジン−2−イルアミンを得た。
【0080】
5−(9−イソプロピル−2−モルホリン−4−イル−9H−プリン−6−イル)−ピリミジン−2−イルアミンの合成
【化5】


5−(2−クロロ−9−イソプロピル−9H−プリン−6−イル)−ピリミジン−2−イルアミン(2.84mmol)のジメチルアセトアミド(18mL)溶液に、モルホリン(2.84mmol)を添加した。12時間94℃で維持された油浴で加熱しながら、反応混合物を撹拌した。LC−MSによって出発物質の欠如について反応をモニタした。粗精物を分取HPLCカラムに直接ロードし、クロマトグラフィーによって精製して、収率58%で5−(9−イソプロピル−2−モルホリン−4−イル−9H−プリン−6−イル)−ピリミジン−2−イルアミンを得た。1H NMR, DMSO-d6: 9.53 (s, 2H), 8.32 (s, 1H), 7.30 (bs, 2H), 4.72 (m, 1H), 3.78 (m, 4H), 3.73 (m, 4H), 1.55 (d, 6H). m/z: 341.17 [MH]+
【0081】
5−(8−ブロモ−9−イソプロピル−2−モルホリン−4−イル−9H−プリン−6−イル)−ピリミジン−2−イルアミンの合成
【化6】


5−(9−イソプロピル−2−モルホリン−4−イル−9H−プリン−6−イル)−ピリミジン−2−イルアミン(1.03g、3.03mmol)のクロロホルム(15mL)溶液に、5℃の温度のNBS(594mg、3.34mmol)をゆっくり添加した。この温度で2時間反応を継続した。簡単な後処理後、生成物5−(8−ブロモ−9−イソプロピル−2−モルホリン−4−イル−9H−プリン−6−イル)−ピリミジン−2−イルアミン)をフラッシュカラム(溶媒系:ヘキサン中50%の酢酸エチル)によって精製して、収率52%(660mg)の5−(8−ブロモ−9−イソプロピル−2−モルホリン−4−イル−9H−プリン−6−イル)−ピリミジン−2−イルアミンを得た。1H NMR, MeOD: 9.67 (s, 2H), 4.90 (m, 1H), 3.89 (m, 4H), 3.82 (s, 4H), 1.72 (d, 6H). m/z: 419.31, 421.07 [MH]+
【0082】
5−(9−イソプロピル−8−メチル−2−モルホリン−4−イル−9H−プリン−6−イル)−ピリミジン−2−イルアミンの合成
【化7】


5−(8−ブロモ−9−イソプロピル−2−モルホリン−4−イル−9H−プリン−6−イル)−ピリミジン−2−イルアミン(30mg、0.072mmol)及びPd(dppf)Cl(3mg、5% mmol)の無水ジオキサン(3mL)溶液に、封管内にてジメチル亜鉛(210μL、ヘプタン溶液中1.0M)をゆっくり添加した。混合物を約65℃に加熱した。MeOHを滴下し、そして、溶媒を真空内で除去した。EtOAcを残渣に添加し、得られた溶液を1MのHCl、水、ブラインで洗浄し、次いで、NaSOで乾燥させた。溶媒を除去し、粗混合物をシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーに供して、収率47%で8mgの5−(9−イソプロピル−8−メチル−2−モルホリン−4−イル−9H−プリン−6−イル)−ピリミジン−2−イルアミンを得た。1H NMR, MeOD: 9.40 (s, 2H), 4.81 (m, 1H), 3.89 (m, 4H), 3.82 (s, 4H), 3.71 (s, 3H), 1.73 (d, 6H). m/z: 355.16 [MH]+
【0083】
実施例2 比較生物学的試験
本発明の化合物を、多くの生物学的パラメータについて、国際出願PCT/SG2008/000379号明細書において合成し、開示されている多くの化合物と比較した。
【0084】
試験したパラメータは以下の通りであった:
・mTORアッセイにおける活性;
・PI3Kアッセイにおける活性;
・溶解度アッセイ
・ヒトミクロソーム安定性アッセイ
【0085】
これらの試験の各々の方法論の詳細を以下に詳述する:
【0086】
mTORアッセイ
切断されたmTORキナーゼ及びHisタグ付4eBP1は、社内で生成した。[γ33P]-ATPは、Amersham (GE Healthcare)から購入した。全ての化学製品は、特に記載しない限り、Sigma-Aldrich製であった。
【0087】
384ウェルポリプロピレンプレート(Greiner)において最終体積20μLで最初にリン酸化アッセイを行った。典型的に、デュープリケートで、8段階希釈した100μM〜0.006μMの範囲にわたって化合物を試験した。先ず、10μL/ウェルの2×酵素−基質溶液(1.5μg/mL mTOR、1×アッセイバッファ中の40μg/mL 4eBP1:10mM Hepes(pH7.5)、50mM NaCl及び10mM MnCl)を、1μL/ウェルの未希釈DMSO中の試験化合物を含むサンプルプレートに添加した。10μL/ウェルの20μM ATP溶液(最終アッセイ濃度10μM ATP及び0.4μCi/ウェルの[γ33P]ATP)を添加することによって反応を開始させた。室温で1時間インキュベートした後、40μL/ウェルの20mM EDTA/1mM ATP溶液で反応を終了させた。
【0088】
次いで、50μL/ウェルの反応が停止した混合物を、50μL/ウェルの1% リン酸を予め添加した384ウェルMultiScreen HTS-PHフィルタプレート(Millipore)に移した。吸引濾過を介して120μL/ウェルの0.5% リン酸でプレートを4回洗浄した。最後に、10μL/ウェルのOptiphase(商標)SuperMix液体シンチレーションカクテル(Perkin Elmer)を添加した。最低1時間インキュベートした後、クロストーク補正を行う同時計数モードを使用して、Wallac MicroBeta TriLuxシンチレーションカウンターにおいて計数を行った。IC50は、最大の可能なキナーゼ酵素活性の50%を阻害するのに必要な化合物の濃度と定義される。
【0089】
PI3Kアッセイ
組換え型PI3K p110α/p85は、社内で調製した。ホスファチジルイノシトール(PtdIns)、ホスファチジルセリン(PtdSer)及び他の全ての明記されない化学製品は、Sigma-Aldrichから購入した。[γ33P]ATP及びOptiphaseシンチラントは、Perkin Elmerから入手した。
【0090】
384ウェルMaxisorpプレート(Nunc)において25μLの最終アッセイ体積でアッセイを行った。一般的に10μMから開始して、3倍で段階希釈した8つの濃度で化合物を試験した。20μL/ウェルのPtdInsとPtdSerとの1:1混合物[0.1mg/mL、各々クロロホルム:エタノール(3:7)に溶解]でMaxisorpプレートをコーティングし、そして、室温(RT)にてドラフト内で一晩放置して乾燥させた。
【0091】
5μL/ウェルの化合物(2.5%DMSO中)、10μL/ウェルの酵素(0.5μg/mL p110α+1μg/mL p85)、及び10μL/ウェルの5μM ATP(最終濃度:0.2μg/mL p110α、2μM ATP、1×アッセイバッファ中0.05μCi/ウェルの[γ33P]:100mM トリス−HCl(pH7.0)、200mM NaCl、8mM MgCl)とアッセイバッファ中5μCi/mLの[γ33P]とをピペッティングすることにより酵素反応を生じさせた。RTで1時間反応物をインキュベートし、30μL/ウェルの50mM EDTA溶液で終了させた。次いで、TBSで2回プレートを洗浄し、乾燥させ、30μL/ウェルのシンチラントを添加した後、MicroBeta Triluxでそれを計数した。IC50は、最大の可能なキナーゼ酵素活性の50%を阻害するのに必要な化合物の濃度と定義される。
【0092】
ミクロソーム安定性アッセイ
化合物の安定性は、ヒト肝ミクロソーム(HLM)と共にインキュベートすることを含む、96ウェルプレート(Whatman)におけるハイスループットフォーマットを使用して、最初にインビトロで評価する。Sigma-Aldrichから購入したベラパミルをアッセイにおける参照標準として使用する。HLMは、Xeno Techから購入する(250mM スクロース溶液中20mg/mL)。900mLの水(希HClを用いてpHを7.4に調整した)中で80mLの1M KHPOと20mLの1M KHPOとを合わせ、室温で保存することによってリン酸カリウムバッファの100mM原液を予め調製する。KHPO・3H0及びKHPOは、Sigma Aldrichから入手し、NADPH再生系溶液A及びBはGentestから入手する。反応をクエンチするために使用される停止溶液は、アセトニトリル及びDMSO(80:20)の予め調製された混合物であり、4℃で保存される。使用される溶媒は全てHPLCグレードであり、原液調製中及びLC−MS分析中に使用される水は、Milli-Qシステムを使用して脱イオン化する。
【0093】
DMSO中の試験化合物の10mM原液2.5μLを、50mMリン酸カリウムバッファ(pH7.4、100mMのストック緩衝液を水で希釈することによって調製された)500μLと混合することにより200倍希釈して、50μM溶液500μLを得る。次いで、水(2250μL)、100mM リン酸カリウムバッファ(2900μL)、NADPH再生系溶液B(58μL)、NADPH再生系溶液A(290μL)及びHLM(250μL)で作製された予め調製されたインキュベーション混合物72μLに化合物混合物8μLを添加する。次いで、得られた反応混合物(最終化合物濃度5μM)を37℃でB. Braun Certomat Hインキュベータ内でインキュベートし、その後、50μLのアリコートを、個々のウェルが100μLの停止溶液を含有するようにウェルに分配する。2000rpmで15分間4℃にて遠心分離した後、100μLのサンプルの得られた上清を分析用LC−MSプレートに移す。各試験化合物を複数回サンプリングし、一連の時間(5、15、30、45及び60分間)インキュベートする。残りの化合物濃度をLC-MS(ABI Qtrap 3200)によって測定し、既知濃度の対照溶液と比較する。次いで、安定性を半減期(分、t1/2)として表す。
【0094】
ハイスループット溶解度アッセイ
96ウェルフォーマットを使用して、ハイスループット動力学的溶解度プロファイリング方法において化合物の溶解度を測定する。UV/Visible Microplate Spectrophotometer(Molecular Devices SpectraMax Plus384)を使用して、化合物の溶解度を評価する。参照標準として、Sigmaから購入したVorinostat(SAHA)及びNicardipineを使用する。
【0095】
DMSO中の化合物を250μMの最終濃度となるようにリン酸バッファ(Sigma)(195μLのリン酸バッファ(pH7)中5μLの10mM原液)で希釈し、十分混合する。次いで、1.5時間600rpmで混合物を振盪し、2時間室温で静置させる。次いで、15分間1500gでプレートを遠心分離する。得られた上清(80μL)をUV分析プレートに移し、DMSO(20μL)で希釈した。リン酸バッファ/DMSO(80:20)中で作製されたそれぞれの化合物のキャリブレーションストックを使用して、サンプルを定量する。
【0096】
試験した化合物は以下の通りであった:
【化8】

【0097】
表1に生物学的試験の結果を要約する。
【表1】

【0098】
表から分かるように、全ての化合物がある程度の活性を有していたが、本発明の化合物は、mTORに対する活性が著しく低かった化合物Eを除いて、全ての比較対照化合物の活性と同等の、両対象酵素に対する活性を有していた。このように、化合物Eは、mTORに対する活性が若干低かったが、前記化合物は全て潜在的な医薬候補であった。
【0099】
しかし、試験された全ての化合物が、許容しうる溶解度特性を示した訳ではなかった。例えば、化合物A、B及びEの溶解度が低いという結果は、これらの化合物が優れた医薬候補とならないことを意味していた。これらの溶解度が低いことにより、生理学的に許容しうる担体中で効率的に製剤化することが困難になるので、ヒトにおいて優れた経口薬物動態を有する可能性が減少する。対照的に、化合物C、D及び本発明の化合物の溶解度は、医薬候補化合物として許容可能であった。
【0100】
しかし、インビトロにおける代謝的安定性に関しては、結果が著しく異なっていた。これらの試験では、化合物A、B、E及び本発明の化合物は、ヒト肝ミクロソーム研究において許容しうる安定性を有していた。これは、これらの化合物を成功裡に投与することができた場合、前記化合物は、患者において望ましい生理的効果を得るのに十分な程度安定しているということを示唆する。更に、優れたmTOR/PI3K阻害活性及び優れた溶解度の両方を示す化合物(C、D及び本発明の化合物)のうち、許容しうる代謝的安定性を備えていたのは本発明の化合物だけである。
【0101】
化合物A〜E及び本発明の化合物は全て、これらのアッセイにおいて優れた活性を示すが、本発明の化合物は、強力な標的阻害活性、優れた水溶解度及び優れた代謝的安定性の組合せによって、最も強力な候補のうちの1つである。
【0102】
要約すると、上記生物学的研究で試験された化合物について得られた生物学的結果は、多くの比較対照化合物と本発明の化合物とが明らかに構造上非常に類似しているにもかかわらず、本発明の化合物が、化合物が医薬部分としての適応を有することを示唆する活性、優れた水溶解度及び代謝的安定性の必要な組合せを示す唯一の化合物であることを示唆する。したがって、これらの研究は、医薬候補としてのこの化合物の優位性を実証する。
【0103】
実施例3 細胞に基づく有効性バイオマーカーアッセイ(pp70-S6KT389, pAktS473)
本発明の化合物の有効性を更に実証するために、本発明の化合物に対して2つの細胞に基づくバイオマーカーアッセイを実施した。方法は以下の通りであった:
【0104】
AlphaScreen(登録商標) SureFire p-Akt(Ser473)384キット(TGR、カタログ番号:TGRAS500)
AlphaScreen(登録商標) SureFire phospho-p70 S6キナーゼ(Thr389)384キット(TGR、カタログ番号:TGR70S500)及びProxiplate-384 Plus(Perkin Elmer、カタログ番号:6008280)は、Perkin Elmerから購入した。ヒト前立腺癌細胞株(PC-3)は、ATCCから購入した。全ての化学製品は、特に明記しない限り、Sigma-Aldrich製であった。
【0105】
1日目に、PC3細胞の2×10細胞/mL細胞溶液200μLを96ウェルプレートの各ウェルに播種した。播種の24時間後に化合物を添加し、典型的には、トリプリケートで、8段階希釈された10μM〜4.6nMの範囲にわたって試験した。37℃における4時間のインキュベーション工程中、DMSOの最終濃度は0.1%であった。インキュベーション工程後、上清を除去し、1×溶解バッファ(AlphaScreenキットによって提供された)で細胞を溶解し、10分間穏やかに振盪した。4μLの溶解産物及びAlphaScreen Acceptorビーズを含む反応バッファと活性化バッファとの混合物5μLを各384ウェルに添加し(反応バッファ:活性化バッファ:アクセプタビーズの比は、40:10:1である)、そして、2時間(室温、暗条件)穏やかに振盪した。AlphaScreen(登録商標)ドナービーズを含む希釈バッファ2μL(希釈バッファ:ドナービーズの比は20:1である)を384プレートの各ウェルに添加し、1〜2分間プレート振盪機上に置き、室温で一晩インキュベートした。
【0106】
BMG Pherostarプレートリーダを用いて、標準的なAlphaScreen設定(測定モード:Alphascreen;読み取りモード:エンドポイント;光学モード:AlphaScreen 680 570;位置遅延:0.10秒;励起時間:0.30秒;積分開始:0.34秒;積分時間:0.30秒;ゲイン:3000)を使用して384ウェルプレートを読み取った。
【0107】
IC50は、この化合物によって最大の可能なキナーゼ酵素活性の50%を阻害する化合物のモル濃度と定義される。p70-S6KT389及びpAktS473のリン酸化を阻害するための5−(9−イソプロピル−8−メチル−2−モルホリン−4−イル−9H−プリン−6−イル)−ピリミジン−2−イルアミンのIC50は、それぞれ24nM及び9nMであることが分かった。
【0108】
バイオマーカーの結果は、キナーゼ酵素活性の阻害における本発明の化合物の有効性を実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物:
【化9】


又は、その薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物と、薬学的に許容しうる希釈剤、賦形剤又は担体とを含む医薬組成物。
【請求項3】
セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物、及びPI3キナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物からなる群より選択されるプロテインキナーゼを阻害する方法であって、前記プロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物及び/又はその補助因子を、有効量の請求項1に記載の化合物に曝露することを含む方法。
【請求項4】
プロテインキナーゼが、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体が、mTORプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
セリン/トレオニンプロテインキナーゼが、mTORC1又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物、及びmTORC2又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物からなる群より選択される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
プロテインキナーゼが、PI3Kキナーゼ又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
PI3キナーゼ又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物が、クラスIのPI3K又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物、及びPI3キナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物からなる群より選択される1つ以上のプロテインキナーゼを阻害するための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項10】
プロテインキナーゼが、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体が、mTORプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
セリン/トレオニンプロテインキナーゼが、mTORC1又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物、及びmTORC2又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物からなる群より選択される、請求項10又は11に記載の使用。
【請求項13】
プロテインキナーゼが、PI3キナーゼ又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物である、請求項9に記載の使用。
【請求項14】
PI3キナーゼ又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物が、クラスIのPI3K又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物、及びPI3キナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物からなる群より選択される1つ以上のプロテインキナーゼの阻害が、状態の病状又は症候を予防、阻害、又は寛解する、哺乳類における前記状態を治療又は予防する方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項16】
プロテインキナーゼが、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体が、mTORプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
セリン/トレオニンプロテインキナーゼが、mTORC1又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物、及びmTORC2又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物からなる群より選択される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
プロテインキナーゼが、PI3キナーゼ又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
PI3キナーゼ又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物が、クラスIのPI3K又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
状態が癌である請求項15〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
癌が、以下からなる群より選択される請求項21に記載の方法:骨髄増殖性障害(特発性骨髄線維症、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、慢性骨髄白血病)、骨髄様化生、慢性骨髄単球性白血病、急性リンパ性白血病、急性赤芽球性白血病、ホジキン及び非ホジキン病、B細胞リンパ腫、急性T細胞白血病、骨髄異形成症候群、形質細胞障害、ヘアリーセル白血病、カポジ肉腫、リンパ腫等の血液癌;乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、膣及び外陰癌、子宮内膜増殖症等の婦人科系癌;結腸直腸癌、ポリープ、肝臓癌、胃癌、膵臓癌、胆嚢癌等の胃腸管癌;前立腺癌、腎癌及び腎臓癌等の尿路癌;膀胱癌、尿道癌、陰茎癌;黒色腫等の皮膚癌;膠芽腫、神経芽細胞腫、星状細胞腫、上衣腫、脳幹部グリオーマ、髄芽細胞腫、髄膜腫、星状細胞腫、乏突起膠腫等の脳腫瘍;上咽頭癌、喉頭癌等の頭頸部癌;肺癌(NSCLC及びSCLC)、中皮腫等の呼吸器官癌;網膜芽細胞腫等の眼疾患;骨肉腫、筋骨格新生物等の筋骨格疾患;扁平上皮癌及び類線維腫。
【請求項23】
状態が前癌状態又は過形成である請求項15〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
状態が、家族性大腸腺腫症、結腸腺腫性ポリープ、骨髄性異形成、子宮内膜異形成、異型子宮内膜増殖症、子宮頚部異形成、膣上皮内新生腫瘍、良性前立腺肥大症、喉頭の乳頭腫、化学線及び日光性角化症、脂漏性角化症及び角化棘細胞腫からなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
状態が、自己免疫性若しくは炎症性の疾患、又は過度の血管新生によって支持される疾患である、請求項15〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
状態が、以下からなる群より選択される請求項25に記載の方法:急性散在性脳脊髄膜炎、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、顆粒球減少症、アレルギー喘息、アレルギー性脳脊髄炎、アレルギー性鼻炎、円形脱毛症、老人性脱毛症、赤血球形成不全、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、大動脈炎症候群、再生不良性貧血、アトピー性皮膚炎、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎、バロー病、バセドー病、ベーチェット病、気管支喘息、キャッスルマン症候群、セリアック病、シャガス病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、チャーグ−ストラウス症候群、コーガン症候群、円錐角膜、角膜白斑、コクサッキー心筋炎、CREST疾患、クローン病、皮膚好酸球増加症、皮膚T細胞リンパ腫、皮膚炎多形性紅斑、皮膚筋炎、糖尿病性網膜症、ドレスラー症候群、角膜上皮性異栄養症、湿疹性皮膚炎、子宮内膜症、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、表皮水泡症、エバンス症候群、線維化性肺胞炎、妊娠性疱疹、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病、グレーブス病、ギランバレー症候群、橋本病、溶血性尿毒症症候群、ヘルペス性角膜炎、尋常性魚鱗癬、特発性間質性肺炎、特発性血小板減少性紫斑病、炎症性腸疾患、川崎病、角膜炎、角結膜炎、ランバート−イートン症候群、尋常性白斑、扁平苔癬、硬化性苔癬、ライム病、線状IgA病、黄斑変性、巨赤芽球性貧血、メニエール病、モーレン潰瘍、ムッハ−ハーベルマン病、多発性筋炎、多発性硬化症、重症筋無力症、壊死性小腸大腸炎、視神経脊髄炎、眼天疱瘡、眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群、オード甲状腺炎、発作性夜間色素尿症、パーソニッジ−ターナー症候群、天疱瘡、歯根膜炎、悪性貧血、花粉アレルギー、多腺性自己免疫症候群、後部ブドウ膜炎、原発性胆汁性肝硬変、直腸炎、偽膜性大腸炎、乾癬、肺気腫、膿皮症、ライター症候群、可逆的閉塞性気道疾患、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強膜炎、セザリー症候群、シェーグレン症候群、亜急性細菌性心内膜炎、全身性エリテマトーデス、高安病、側頭動脈炎、トローザ−ハント症候群、I型糖尿病、潰瘍性大腸炎、蕁麻疹、春季結膜炎、白斑、フォークト−小柳−原田症候群及びヴェーゲナー肉芽腫症。
【請求項27】
セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物、及びPI3キナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物からなる群より選択される1つ以上のプロテインキナーゼの阻害が、状態の病状又は症候を予防、阻害、又は寛解する、動物における前記状態を治療するための医薬の調製における請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項28】
プロテインキナーゼが、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体が、mTORプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物である、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
セリン/トレオニンプロテインキナーゼが、mTORC1又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物、及びmTORC2又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物からなる群より選択される、請求項28又は29に記載の使用。
【請求項31】
プロテインキナーゼが、PI3キナーゼ又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物である、請求項28に記載の使用。
【請求項32】
PI3キナーゼ又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物が、クラスIのPI3K又はその断片若しくはその複合体、或いはこれらの機能的な等価物である、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
状態が癌である請求項28〜32のいずれかに記載の使用。
【請求項34】
前記癌が、以下からなる群より選択される請求項33に記載の使用:骨髄増殖性障害(特発性骨髄線維症、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、慢性骨髄白血病)、骨髄様化生、慢性骨髄単球性白血病、急性リンパ性白血病、急性赤芽球性白血病、ホジキン及び非ホジキン病、B細胞リンパ腫、急性T細胞白血病、骨髄異形成症候群、形質細胞障害、ヘアリーセル白血病、カポジ肉腫、リンパ腫、並びに乾癬及び再狭窄等の過増殖状態等の血液癌;乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、膣及び外陰癌、子宮内膜増殖症等の婦人科系癌;結腸直腸癌、ポリープ、肝臓癌、胃癌、膵臓癌、胆嚢癌等の胃腸管癌;前立腺癌、腎癌及び腎臓癌等の尿路癌;膀胱癌、尿道癌、陰茎癌;黒色腫等の皮膚癌;膠芽腫、神経芽細胞腫、星状細胞腫、上衣腫、脳幹部グリオーマ、髄芽細胞腫、髄膜腫、星状細胞腫、乏突起膠腫等の脳腫瘍;上咽頭癌、喉頭癌等の頭頸部癌;肺癌(NSCLC及びSCLC)、中皮腫等の呼吸器官癌;網膜芽細胞腫等の眼疾患;骨肉腫、筋骨格新生物等の筋骨格疾患;扁平上皮癌及び類線維腫。
【請求項35】
状態が前癌状態又は過形成である請求項27〜32のいずれかに記載の使用。
【請求項36】
状態が、家族性大腸腺腫症、結腸腺腫性ポリープ、骨髄性異形成、子宮内膜異形成、異型子宮内膜増殖症、子宮頚部異形成、膣上皮内新生腫瘍、良性前立腺肥大症、喉頭の乳頭腫、化学線及び日光性角化症、脂漏性角化症及び角化棘細胞腫からなる群より選択される、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
状態が、自己免疫性若しくは炎症性の疾患、又は過度の血管新生によって支持される疾患である、請求項27〜32のいずれかに記載の使用。
【請求項38】
状態が、以下からなる群より選択される請求項37に記載の使用:急性散在性脳脊髄膜炎、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、顆粒球減少症、アレルギー喘息、アレルギー性脳脊髄炎、アレルギー性鼻炎、円形脱毛症、老人性脱毛症、赤血球形成不全、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、大動脈炎症候群、再生不良性貧血、アトピー性皮膚炎、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎、バロー病、バセドー病、ベーチェット病、気管支喘息、キャッスルマン症候群、セリアック病、シャガス病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、チャーグ−ストラウス症候群、コーガン症候群、円錐角膜、角膜白斑、コクサッキー心筋炎、CREST疾患、クローン病、皮膚好酸球増加症、皮膚T細胞リンパ腫、皮膚炎多形性紅斑、皮膚筋炎、糖尿病性網膜症、ドレスラー症候群、角膜上皮性異栄養症、湿疹性皮膚炎、子宮内膜症、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、表皮水泡症、エバンス症候群、線維化性肺胞炎、妊娠性疱疹、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病、グレーブス病、ギランバレー症候群、橋本病、溶血性尿毒症症候群、ヘルペス性角膜炎、尋常性魚鱗癬、特発性間質性肺炎、特発性血小板減少性紫斑病、炎症性腸疾患、川崎病、角膜炎、角結膜炎、ランバート−イートン症候群、尋常性白斑、扁平苔癬、硬化性苔癬、ライム病、線状IgA病、黄斑変性、巨赤芽球性貧血、メニエール病、モーレン潰瘍、ムッハ−ハーベルマン病、多発性筋炎、多発性硬化症、重症筋無力症、壊死性小腸大腸炎、視神経脊髄炎、眼天疱瘡、眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群、オード甲状腺炎、発作性夜間色素尿症、パーソニッジ−ターナー症候群、天疱瘡、歯根膜炎、悪性貧血、花粉アレルギー、多腺性自己免疫症候群、後部ブドウ膜炎、原発性胆汁性肝硬変、直腸炎、偽膜性大腸炎、乾癬、肺気腫、膿皮症、ライター症候群、可逆的閉塞性気道疾患、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強膜炎、セザリー症候群、シェーグレン症候群、亜急性細菌性心内膜炎、全身性エリテマトーデス、高安病、側頭動脈炎、トローザ−ハント症候群、I型糖尿病、潰瘍性大腸炎、蕁麻疹、春季結膜炎、白斑、フォークト−小柳−原田症候群及びヴェーゲナー肉芽腫症。
【請求項39】
セリン/トレオニンプロテインキナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物、及びPI3キナーゼ又はその断片若しくは複合体、或いはこれらの機能的な等価物からなる群より選択される1つ以上のプロテインキナーゼの阻害が、状態の病状又は症候を予防、阻害、又は寛解する、前記状態の治療における請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容しうる塩、N−オキシド、若しくはプロドラッグの使用。
【請求項40】
被験体における増殖状態を予防又は治療する方法であって、被験体に治療有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項41】
状態が癌である請求項40に記載の方法。
【請求項42】
癌が、以下からなる群より選択される請求項41に記載の方法:骨髄増殖性障害(特発性骨髄線維症、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、慢性骨髄白血病)、骨髄様化生、慢性骨髄単球性白血病、急性リンパ性白血病、急性赤芽球性白血病、ホジキン及び非ホジキン病、B細胞リンパ腫、急性T細胞白血病、骨髄異形成症候群、形質細胞障害、ヘアリーセル白血病、カポジ肉腫、リンパ腫等の血液癌;乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、膣及び外陰癌、子宮内膜増殖症等の婦人科系癌;結腸直腸癌、ポリープ、肝臓癌、胃癌、膵臓癌、胆嚢癌等の胃腸管癌;前立腺癌、腎癌及び腎臓癌等の尿路癌;膀胱癌、尿道癌、陰茎癌;黒色腫等の皮膚癌;膠芽腫、神経芽細胞腫、星状細胞腫、上衣腫、脳幹部グリオーマ、髄芽細胞腫、髄膜腫、星状細胞腫、乏突起膠腫等の脳腫瘍;上咽頭癌、喉頭癌等の頭頸部癌;肺癌(NSCLC及びSCLC)、中皮腫等の呼吸器官癌;網膜芽細胞腫等の眼疾患;骨肉腫、筋骨格新生物等の筋骨格疾患;扁平上皮癌及び類線維腫。
【請求項43】
被験体における増殖状態を治療するための医薬の調製における請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項44】
状態が癌である請求項43に記載の使用。
【請求項45】
癌が、以下からなる群より選択される請求項44に記載の使用:骨髄増殖性障害(特発性骨髄線維症、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、慢性骨髄白血病)、骨髄様化生、慢性骨髄単球性白血病、急性リンパ性白血病、急性赤芽球性白血病、ホジキン及び非ホジキン病、B細胞リンパ腫、急性T細胞白血病、骨髄異形成症候群、形質細胞障害、ヘアリーセル白血病、カポジ肉腫、リンパ腫等の血液癌;乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、膣及び外陰癌、子宮内膜増殖症等の婦人科系癌;結腸直腸癌、ポリープ、肝臓癌、胃癌、膵臓癌、胆嚢癌等の胃腸管癌;前立腺癌、腎癌及び腎臓癌等の尿路癌;膀胱癌、尿道癌、陰茎癌;黒色腫等の皮膚癌;膠芽腫、神経芽細胞腫、星状細胞腫、上衣腫、脳幹部グリオーマ、髄芽細胞腫、髄膜腫、星状細胞腫、乏突起膠腫等の脳腫瘍;上咽頭癌、喉頭癌等の頭頸部癌;肺癌(NSCLC及びSCLC)、中皮腫等の呼吸器官癌;網膜芽細胞腫等の眼疾患;骨肉腫、筋骨格新生物等の筋骨格疾患;扁平上皮癌及び類線維腫。
【請求項46】
増殖状態の治療における請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容しうる塩、N−オキシド、若しくはプロドラッグの使用。

【公表番号】特表2012−522769(P2012−522769A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503377(P2012−503377)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/SG2009/000124
【国際公開番号】WO2010/114484
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(506096349)エス*バイオ プライベート リミティッド (10)
【Fターム(参考)】