キャリアテープの製造方法および製造装置
【課題】 収納ポケットの大きさにかかわらず、収納ポケットとスプロケットホールとの位置関係が厳密に制御され、しかも自動実装工程などでの安定搬送が可能なキャリアテープを製造する。
【解決手段】 帯状の基材に、物品収納用ポケットと位置決め用ポケット14とを形成する成形工程と、ピアスピン26によりスプロケットホール13を形成する加工工程とを有し、加工工程では、特にピアスピン26としてその先端に位置決め用ポケット14に嵌合する位置決めピン26bが形成されたものを使用し、位置決めピン26bを位置決め用ポケット14に嵌合させつつスプロケットホール13を穿孔するなどして形成することにより、キャリアテープ10Aを製造する。
【解決手段】 帯状の基材に、物品収納用ポケットと位置決め用ポケット14とを形成する成形工程と、ピアスピン26によりスプロケットホール13を形成する加工工程とを有し、加工工程では、特にピアスピン26としてその先端に位置決め用ポケット14に嵌合する位置決めピン26bが形成されたものを使用し、位置決めピン26bを位置決め用ポケット14に嵌合させつつスプロケットホール13を穿孔するなどして形成することにより、キャリアテープ10Aを製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品などを収納して搬送するキャリアテープの製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を基板などに実装する自動実装工程では、複数の電子部品を収納し搬送できるキャリアテープが使用される場合が多い。
このようなキャリアテープは、通常、樹脂からなる帯状の基材が成形加工されたものであって、例えば図11に示すように、電子部品を収納するための凹状の物品収納用ポケット(以下、収納ポケットという。)41と、このキャリアテープ40をピンローラなどで搬送するための複数のスプロケットホール(送り穴)42とが、長手方向に一定の間隔でそれぞれ形成されたものがある。このようなキャリアテープ40には電子部品が収納された後、通常、収納ポケット41を塞ぐようにカバーテープがシールされる。
【0003】
キャリアテープ40を製造する方法としては、収納ポケット成形用の金型とスプロケットホール穿孔用のピアスピンとを同一金型内に備えたプレス成形機を使用する方法がある。
この方法では、基材に対して、収納ポケット41の成形とスプロケットホール42の穿孔とを同時に行うため、収納ポケット41とスプロケットホール42との位置関係が厳密に制御されたキャリアテープ40を再現性良く製造できるという長所がある。
キャリアテープ40を使用した自動実装工程においては、キャリアテープ40で搬送される電子部品を確実にピックアップでき、ピックアップエラーが少ないことが重要である。そのためには、キャリアテープ40における収納ポケット41とスプロケットホール42との位置関係が厳密に制御されていることが不可欠であるため、成形と穿孔を同一金型で行うプレス成形機を使用したこのような製造方法は好適である。
【0004】
ところが、電子部品の軽薄短小化に伴い、キャリアテープには、収納ポケットとスプロケットホールとの位置関係が制御されていることに加えて、収納ポケット自体も微細な電子部品を確実に収納できる精密な内部形状であることが要求されてきている。プレス成形機により収納ポケットを形成する上述の方法は、精密な内部形状の微細な収納ポケットを形成するには困難を伴うものであった。
このような問題を解決する方法として、プレス成形よりも精密成形が可能な真空成形や圧空成形で収納ポケットを形成し、その後、ピアスピンを備えたパンチングプレスによりスプロケットホールを穿孔していく方法がある。
【0005】
ところが、このような方法では、より精密な内部形状の収納ポケットを成形できるものの、収納ポケットの成形とスプロケットホールの穿孔とが別の工程で行われるために、収納ポケットとスプロケットホールとの位置関係を厳密に制御することは難しい。また、最近では、キャリアテープの製造の多品種小ロット化が進んでいて、その場合には、収納ポケットの成形とスプロケットホールの穿孔とを共にプレス成形で行い、しかも、これらをあえて別工程としてプレス金型を各品種で共有化し、品種ごとの金型コストの抑制を図ることも考えられている。このような場合でも、収納ポケットとスプロケットホールとの位置関係の制御は困難であった。
そのため、収納ポケットの成形とスプロケットホールの穿孔とが別の工程で行われる方法においては、スプロケットホールを穿孔するピアスピンに加え、ピアスピンが正確な位置を穿孔するように、基材を位置固定するためのパイロットピンを備えたパンチングプレスを使用する場合がある(特許文献1参照)。このような方法では、収納ポケットに沿う先端形状のパイロットピンを既に成形されている収納ポケットに嵌合させ基材を位置固定した状態で、ピアスピンを下降させてスプロケットホールを穿孔するため、収納ポケットとスプロケットホールとの位置関係が厳密に制御されたキャリアテープを製造できる。
【0006】
しかしながら、さらに電子部品の軽薄短小化が進行するに従い、収納ポケットにパイロットピンを嵌合させるこのような位置合わせ方法にも問題が生じていた。すなわち、収納ポケットが比較的大きい場合には、パイロットピンと収納ポケットとの位置が若干ずれていて、下降してきたパイロットピンの先端が収納ポケットに正確に嵌合せずに収納ポケットの周縁部に当接したとしても、その当接によりキャリアテープは自ずと所定の正確な位置に移動するという位置補正機能が働く。その結果、パイロットピンは収納ポケットに正確に嵌合するので、確実な位置合わせができる。ところが、例えば0.4mm×0.2mmの0402チップなど微細な電子部品を収納するための小さな収納ポケットでは、パイロットピンと収納ポケット周縁部との接触面積が減少して上述のような位置補正機能が働きにくくなるうえ、収納ポケットの深さも浅いため、位置補正機能が働く間もなくパイロットピンが下降しきってしまい、位置合わせが正確に行われない。
【0007】
そこで、本出願人は、収納ポケットの大きさにかかわらず、正確な位置合わせをしつつスプロケットホールを穿孔可能な方法として、収納ポケットの他に位置合わせを行うためのダミーポケットを、パイロットピンによる位置補正機能が十分に働く大きさでキャリアテープの空きスペースに別途形成する方法を提案している(特許文献2参照。)。
この方法によれば、収納ポケットが小さく浅い場合であっても、位置合わせにはダミーポケットが利用されることから、収納ポケットとスプロケットホールとの位置関係が厳密に制御される。
【特許文献1】特開2002−332008号公報
【特許文献2】特開2004−345688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような方法で製造されたキャリアテープにおいては、収納ポケットよりもダミーポケットの方が深く大きいために、電子部品を収納した後にカバーテープをシールする工程や、電子部品を基板などに実装する自動実装工程において、ダミーポケットがキャリアテープを搬送するためのガードレールに引っかかるなどして、キャリアテープを安定に搬送できないという問題があった。
また、このような方法では、パンチングプレス内の限られたスペースに、スプロケットホールを穿孔するためのピアスピンの他にパイロットピンを別途設ける必要があり、設置可能なパイロットピンの本数が限定されるという問題があった。すなわち、パイロットピンの本数が多いほど、多くの箇所でキャリアテープの位置固定がなされることとなり、位置合わせの精度は向上するが、そのような多くのパイロットピンの設置は困難であった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、収納ポケットの大きさにかかわらず、収納ポケットとスプロケットホールとの位置関係が厳密に制御され、しかも自動実装工程などでの安定搬送が可能なキャリアテープを製造することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のキャリアテープの製造方法は、帯状の基材に、収納ポケットと位置決め用ポケットとを形成する成形工程と、ピアスピンによりスプロケットホールを形成する加工工程とを有し、前記ピアスピンの先端には前記位置決め用ポケットに嵌合する位置決め部が形成されていて、前記加工工程では、前記位置決め部を前記位置決め用ポケットに嵌合させつつ前記スプロケットホールを形成することを特徴とする。
前記加工工程は穿孔工程であることが好ましい。
前記位置決め用ポケットは凹状に形成され、前記位置決め部は前記位置決め用ポケットに嵌合する凸状に形成されていることが好ましい。
本発明のキャリアテープの製造装置は、帯状の基材に、収納ポケットと位置決め用ポケットとを形成する成形機と、スプロケットホールを形成するピアスピンとを備え、前記ピアスピンの先端には前記位置決め用ポケットに嵌合する位置決め部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、収納ポケットの大きさにかかわらず、収納ポケットとスプロケットホールとの位置関係が厳密に制御され、しかも自動実装工程などでの安定搬送が可能なキャリアテープを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の製造方法の第1実施形態により製造されたキャリアテープの一例であって、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂からなる帯状の基材11に、電子部品などの物品を収納するための凹状の収納ポケット12と、このキャリアテープ10Aをピンローラなどで搬送するための略円形の貫通穴からなるスプロケットホール13とが形成されたものである。収納ポケット12はこの例では真空成形で形成され、スプロケットホール13はピアスピンのプレスにより穿孔されたものであって、ぞれぞれキャリアテープ10Aの長手方向に一列に、所定の一定間隔で複数形成されている。
この例では、収納ポケット12の大きさは幅W1が0.45mm、長さL1が0.25mm、深さが0.25mmで、スプロケットホール13の直径Dは1.55mmであり、各スプロケットホール13の開口面積が各収納ポケット12の開口面積よりも大きくなっている。また、この例では基材11の厚さは0.2mmである。
【0013】
このようなキャリアテープ10Aは、図2のキャリアテープ製造装置20で製造できる。
このキャリアテープ製造装置20は、基材11に、収納ポケット12と位置決め用ポケットとを形成するための真空成形機21と、スプロケットホール13を穿孔するためのパンチングプレス22とを有して構成されている。
真空成形機21は、基材11を加熱するための一対の加熱ロール23と、加熱された基材11に収納ポケット12と位置決め用ポケットとを形成するためのロータリー式の凸型金型24とを具備していて、収納ポケット12と位置決め用ポケットとを基材11の長手方向に連続的に形成できるようになっている。なお、位置決め用ポケットは、詳しくは後述するが、最終的に得られるキャリアテープ10Aには残存しないものであるため、図1には示されていない。また、図2中、符号34は基材11の原反ロールで、符号25はキャリアテープ10Aの巻取機である。
【0014】
パンチングプレス22は、基材11の流れ方向に一定の間隔で配置された3本のピアスピン26を備えていて、1回のプレスにより3個のスプロケットホール13を同時に穿孔できるようになっている。そして、各ピアスピン26の先端は、図3に拡大して示すように、周縁部が環状の穿孔刃26aになっていて、中央部には位置決め部として、真空成形機21で形成された凹状の位置決め用ポケットに嵌合する形状(この例では略四角柱状の凸状)の位置決めピン26bが形成されている。また、各位置決めピン26bは、3つの位置決め用ポケットにそれぞれ嵌合するものであるので、ピアスピン26の配置ピッチは、位置決め用ポケットの配置ピッチと一致するように決定されている。
【0015】
図2の製造装置により図1のキャリアテープ10Aを製造する場合には、まず、原反ロール34から基材11を真空成形機21の加熱ロール23に供給し、基材11を所定の温度まで加熱する。ついで、加熱された基材11は、ロータリー式の凸型金型24に搬送され、凸型金型24の表面に形成された図示略の微小な吸引孔に吸引されて凸型金型24に沿い、収納ポケット12と位置決め用ポケットとが立体成形される。
【0016】
このような成形工程により、図4に示すように、収納ポケット12と位置決め用ポケット14とがそれぞれ長手方向に一列に、所定の一定間隔で複数形成されたキャリアテープ中間品10A’が得られる。
なお、この例で形成される収納ポケット12の大きさは、すでに述べたように幅W1が0.45mm、長さL1が0.25mmである。一方、位置決め用ポケット14の大きさは、後述する位置決めが確実にできるように、収納ポケット12よりも大きく、幅W2および長さL2が0.6mmで、深さは0.5mmの略四角柱状とされている。また、位置決め用ポケット14は、後述する穿孔工程でのスプロケットホール13の形成にともなって切除されるものであるので、形成されるスプロケットホール13よりも小さい開口面積に形成されることが必要である。
【0017】
ついで、成形工程で得られたキャリアテープ中間品10A’をパンチングプレス22に供給し、ピアスピン26によりスプロケットホール13を穿孔する穿孔工程(加工工程)を行う。
具体的には、パンチングプレス22を作動させて、3本のピアスピン26をキャリアテープ中間品10’に形成された3つの位置決め用ポケット14に向けて一体に下降させる。すると、各ピアスピン26は、位置決め用ポケット14に嵌合する形状の位置決めピン26bをその先端に有しているので、まず、図5(a)に示すように、位置決めピン26bが位置決め用ポケット14に嵌合して、このキャリアテープ中間品10A’を位置固定する。そして、このように位置決めピン26bを位置決め用ポケット14に嵌合させつつ、図5(b)に示すように、さらにピアスピン26を下降させることにより、位置決め用ポケット14を囲む略円形にキャリアテープ中間品10A’が打ち抜かれ、スプロケットホール13が穿孔される。
このような穿孔工程により、成形工程で形成された位置決め用ポケット14は、穿孔くずとなって切除され、図1に示すキャリアテープ10Aが得られる。得られたキャリアテープ10Aは、パンチングプレス22の後段に設けられた巻取機25によりロール状に巻き取られる。
【0018】
このような製造方法によれば、成形工程においては、真空成形により収納ポケット12を形成しているので、0402チップのような微細な物品を収納するための小さな収納ポケット12であっても、精密な内部形状に形成できる。また、穿孔工程における収納ポケット12とスプロケットホール13との位置合わせに際しては、物品を収納する収納ポケット12ではなく、成形工程で形成された位置決め用ポケット14を利用するので、収納ポケット12の大きさにかかわらず、正確な位置合わせができ、その精度はプレス成形で収納ポケット12とスプロケットホール13とを同時に成形した場合と同程度となる。よって、得られたキャリアテープ10Aは、自動実装工程におけるピックアップエラーの少ない高品質なものとなる。
【0019】
さらに、形成された位置決め用ポケット14は、穿孔工程でのスプロケットホール13の形成にともなって切除されてしまい、最終的に得られるキャリアテープ10Aには残存しない。そのため、たとえ位置決め用ポケット14を位置合わせに十分な大きさで形成したとしても、後のカバーテープのシール工程や自動実装工程におけるキャリアテープ10Aの安定搬送を妨げることはない。また、位置決め用ポケット14の形成位置は、後にスプロケットホール13が形成される部分であって、別途スペースを確保する必要もないので、位置決め用ポケット14の形成により収容ポケット12の形成頻度が制限されることもない。
【0020】
さらに、このような製造装置20によれば、ピアスピン26が穿孔刃26aとともに位置決め用ピン26bを有しているため、位置決め用のパイロットピンをパンチングプレス22に別途備える必要がない。よって、装置構成が簡単となるとともに、パンチングプレス22内の限られたスペースに多くのピアスピン26を設けることが可能となる。ピアスピン26は、パンチングプレス22に少なくとも1本設けられていればよいが(図示例では3本)、多数設けられていると1回のプレスにより多数のスプロケットホール13を形成できるために生産性が優れるとともに、多数の位置決め用ポケット14を利用した位置固定が同時になされることとなるため、より高い精度の位置合わせが可能となる。
また、位置決めピン26bの形状は、位置決め用ポケット14に嵌合する形状であればよく、位置決め用ポケット14の形状に応じたものであればよいが、この例のように略四角柱状などの角柱状とすると、円柱状である場合よりもより精密な位置合わせができる。
【0021】
なお、以上説明した第1実施形態では、位置決め部としてピアスピン26の先端に凸状の位置決めピン26bが形成され、位置決め用ポケット14がこれに嵌合する凹状に形成された場合を例示したが、第2実施形態として図6に示すように、ピアスピン27の先端の中央部に、位置決め部として凹状の位置決め凹部27bが形成され、位置決め用ポケット28がこれに嵌合する凸状に形成されていてもよい。この場合には、位置決め用ポケット28と収納ポケットとは、逆向きに突出した状態に形成されることとなる。このような第2実施形態においても、ピアスピン27の先端の周縁部27aを環状の穿孔刃に形成しておくことにより、第1実施形態と同様の穿孔工程によりスプロケットホールを形成できる。また、この場合でも、位置決め凹部27bの形状が略四角柱状などの角柱状であると、円柱状である場合よりもより精密な位置合わせができる。
【0022】
上述の第1および第2実施形態では、加工工程として穿孔工程を例示し、貫通穴からなるスプロケットホール13を形成する場合について説明したが、スプロケットホールを形成する加工工程としては穿孔工程に限定されず、次に第3実施形態を例示して説明するようなプレス工程であってもよい。第3実施形態では図7に示すように、ドーム形状からなる凹状のスプロケットホール29が形成される。このように貫通していないスプロケットホール29であっても、これに嵌合する歯車などの送りピンを備えたピンローラを使用することにより、キャリアテープ10Bを問題なく一定量ずつ、または連続的に搬送できる。
【0023】
すなわち、図7のキャリアテープ10Bを製造する場合には、まず、真空成形により収納ポケット12と位置決め用ポケットとを形成し、図8に示すキャリアテープ中間品10B’を得る成形工程を行う。ここで形成される位置決め用ポケット30は、後の加工工程において切除されずスプロケットホール29の一部として残存するものであり、貫通しない凹状のドーム形状である点で第1および第2実施形態とは異なっている。
【0024】
ついで、このキャリアテープ中間品10B’を図9のようなピアスピン31と、図10に示す金型33とを備えた図示略のプレス加工機へと供給し、凹状のドーム形状のスプロケットホール29を冷間プレスにより形成するプレス工程を行う。
具体的には、ここで使用されるピアスピン31は、凸状のドーム形状からなるピン部32をその先端に備えていて、これの突端から基端側に向かって途中までが位置決め用ポケット30に嵌合する位置決め部32aとなっている。よって、プレス加工機を作動させて、ピアスピン31をキャリアテープ中間品10B’に形成された位置決め用ポケット30に向けて下降させることにより、まず、図10(a)に示すように、位置決め部32aが位置決め用ポケット30に嵌合して、このキャリアテープ中間品10B’を位置固定する。そして、このように位置決め部32aを位置決め用ポケット30に嵌合させつつ、図10(b)に示すように、さらにピアスピン31を金型33に向けて下降させることにより、ピン部32の全体が位置決め用ポケット30に押し込まれ、位置決め用ポケット30よりも直径および深さが大きな凹状のドーム形状のスプロケットホール29が形成され、図7のキャリアテープ10Bが得られる。
【0025】
以上説明した第1〜第3実施形態では、成形工程として真空成形機による真空成形を例示して説明したが、圧空成形機を使用した圧空成形であってもよい。また、使用する金型は凹型金型でもよい。真空成形および圧空成形は、熱により軟化した基材を金型に密着させる成形法であるので、金型形状の再現性が高く、プレス成形に比べて精密な内部形状の収納ポケットおよび位置決め用ポケットを形成できる。しかしながら、成形工程はプレス成形機によるプレス成形により行われてもよい。例えば、最近増加傾向にある多品種小ロットでのキャリアテープ製造においては、収納ポケットの形成とスプロケットホールの形成とを共にプレス成形で行う場合であっても、これらをあえて別工程としてプレス金型を各品種で共有化し、品種ごとの金型コストの抑制を図ることも考えられている。このような場合でも、位置決め用ポケットを形成、利用してスプロケットホールを正確な位置に形成する本製造方法は有効である。
【0026】
なお、ロータリー式の金型を用いた真空成形や圧空成形により、基材に収納ポケットと位置決め用ポケットとを形成する場合には、収納ポケットを形成するための金型パーツと位置決め用ポケットを形成するための金型パーツとを組み合わせた金型が使用される。そのため、得られたキャリアテープには、これらパーツの境界線に対応したスジが形成されることがあるが、そのようなスジが形成されてもキャリアテープの使用には全く支障ない。
【0027】
さらに、以上の例では、帯状の基材に、収納ポケットとスプロケットホールとを一列ずつ形成する場合について説明したが、幅広の帯状の基材に対して、収納ポケットとスプロケットホールとを互い違いにそれぞれ複数列形成してもよい。その場合には、例えば図2の製造装置においてパンチングプレスの後段側に、各列ごとに基材を切断するスリット装置を設ければい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態の製造方法で製造されるキャリアテープを示す平面図である。
【図2】図1のキャリアテープを製造する製造装置の概略構成図である。
【図3】図2の製造装置の要部の拡大図であり、(a)ピアスピンの正面図と(b)ピアスピンの先端側からの平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の製造方法で製造されるキャリアテープ中間品を示す平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態の製造方法のうち穿孔工程(加工工程)を説明する説明図であり、(a)ピアスピンの凸状の位置決めピンを凹状の位置決め用ポケットに嵌合させた状態と、(b)ピアスピンをさらに下降させてスプロケットホールを穿孔した状態を示すものである。
【図6】本発明の第2実施形態の製造方法のうち穿孔工程(加工工程)を説明する説明図であり、(a)ピアスピンの凹状の位置決め部を凸状の位置決め用ポケットに嵌合させた状態と、(b)ピアスピンをさらに下降させてスプロケットホールを穿孔した状態を示すものである。
【図7】本発明の第3実施形態の製造方法で製造されるキャリアテープを示す(a)平面図と、(b)(a)のI−I’線に沿う断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態の製造方法で製造されるキャリアテープ中間品を示す(a)平面図と、(b)(a)のII−II’線に沿う断面図である。
【図9】図7のキャリアテープを製造する製造装置要部の拡大図であり、(a)ピアスピンの正面図と(b)ピアスピンの先端側からの平面図である。
【図10】本発明の第3実施形態の製造方法のうちプレス工程(加工工程)を説明する説明図であり、(a)ピアスピンの位置決め部を位置決め用ポケットに嵌合させた状態と、(b)ピアスピンをさらに下降させてドーム状のスプロケットホールを形成した状態を示すものである。
【図11】従来のキャリアテープの一例を示す(a)平面図と、(b)(a)のA−A’線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10A,10B キャリアテープ
11 基材
12 収納ポケット
13,29 スプロケットホール
14,28,30 位置決め用ポケット
20 キャリアテープ製造装置
26,27,31 ピアスピン
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品などを収納して搬送するキャリアテープの製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を基板などに実装する自動実装工程では、複数の電子部品を収納し搬送できるキャリアテープが使用される場合が多い。
このようなキャリアテープは、通常、樹脂からなる帯状の基材が成形加工されたものであって、例えば図11に示すように、電子部品を収納するための凹状の物品収納用ポケット(以下、収納ポケットという。)41と、このキャリアテープ40をピンローラなどで搬送するための複数のスプロケットホール(送り穴)42とが、長手方向に一定の間隔でそれぞれ形成されたものがある。このようなキャリアテープ40には電子部品が収納された後、通常、収納ポケット41を塞ぐようにカバーテープがシールされる。
【0003】
キャリアテープ40を製造する方法としては、収納ポケット成形用の金型とスプロケットホール穿孔用のピアスピンとを同一金型内に備えたプレス成形機を使用する方法がある。
この方法では、基材に対して、収納ポケット41の成形とスプロケットホール42の穿孔とを同時に行うため、収納ポケット41とスプロケットホール42との位置関係が厳密に制御されたキャリアテープ40を再現性良く製造できるという長所がある。
キャリアテープ40を使用した自動実装工程においては、キャリアテープ40で搬送される電子部品を確実にピックアップでき、ピックアップエラーが少ないことが重要である。そのためには、キャリアテープ40における収納ポケット41とスプロケットホール42との位置関係が厳密に制御されていることが不可欠であるため、成形と穿孔を同一金型で行うプレス成形機を使用したこのような製造方法は好適である。
【0004】
ところが、電子部品の軽薄短小化に伴い、キャリアテープには、収納ポケットとスプロケットホールとの位置関係が制御されていることに加えて、収納ポケット自体も微細な電子部品を確実に収納できる精密な内部形状であることが要求されてきている。プレス成形機により収納ポケットを形成する上述の方法は、精密な内部形状の微細な収納ポケットを形成するには困難を伴うものであった。
このような問題を解決する方法として、プレス成形よりも精密成形が可能な真空成形や圧空成形で収納ポケットを形成し、その後、ピアスピンを備えたパンチングプレスによりスプロケットホールを穿孔していく方法がある。
【0005】
ところが、このような方法では、より精密な内部形状の収納ポケットを成形できるものの、収納ポケットの成形とスプロケットホールの穿孔とが別の工程で行われるために、収納ポケットとスプロケットホールとの位置関係を厳密に制御することは難しい。また、最近では、キャリアテープの製造の多品種小ロット化が進んでいて、その場合には、収納ポケットの成形とスプロケットホールの穿孔とを共にプレス成形で行い、しかも、これらをあえて別工程としてプレス金型を各品種で共有化し、品種ごとの金型コストの抑制を図ることも考えられている。このような場合でも、収納ポケットとスプロケットホールとの位置関係の制御は困難であった。
そのため、収納ポケットの成形とスプロケットホールの穿孔とが別の工程で行われる方法においては、スプロケットホールを穿孔するピアスピンに加え、ピアスピンが正確な位置を穿孔するように、基材を位置固定するためのパイロットピンを備えたパンチングプレスを使用する場合がある(特許文献1参照)。このような方法では、収納ポケットに沿う先端形状のパイロットピンを既に成形されている収納ポケットに嵌合させ基材を位置固定した状態で、ピアスピンを下降させてスプロケットホールを穿孔するため、収納ポケットとスプロケットホールとの位置関係が厳密に制御されたキャリアテープを製造できる。
【0006】
しかしながら、さらに電子部品の軽薄短小化が進行するに従い、収納ポケットにパイロットピンを嵌合させるこのような位置合わせ方法にも問題が生じていた。すなわち、収納ポケットが比較的大きい場合には、パイロットピンと収納ポケットとの位置が若干ずれていて、下降してきたパイロットピンの先端が収納ポケットに正確に嵌合せずに収納ポケットの周縁部に当接したとしても、その当接によりキャリアテープは自ずと所定の正確な位置に移動するという位置補正機能が働く。その結果、パイロットピンは収納ポケットに正確に嵌合するので、確実な位置合わせができる。ところが、例えば0.4mm×0.2mmの0402チップなど微細な電子部品を収納するための小さな収納ポケットでは、パイロットピンと収納ポケット周縁部との接触面積が減少して上述のような位置補正機能が働きにくくなるうえ、収納ポケットの深さも浅いため、位置補正機能が働く間もなくパイロットピンが下降しきってしまい、位置合わせが正確に行われない。
【0007】
そこで、本出願人は、収納ポケットの大きさにかかわらず、正確な位置合わせをしつつスプロケットホールを穿孔可能な方法として、収納ポケットの他に位置合わせを行うためのダミーポケットを、パイロットピンによる位置補正機能が十分に働く大きさでキャリアテープの空きスペースに別途形成する方法を提案している(特許文献2参照。)。
この方法によれば、収納ポケットが小さく浅い場合であっても、位置合わせにはダミーポケットが利用されることから、収納ポケットとスプロケットホールとの位置関係が厳密に制御される。
【特許文献1】特開2002−332008号公報
【特許文献2】特開2004−345688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような方法で製造されたキャリアテープにおいては、収納ポケットよりもダミーポケットの方が深く大きいために、電子部品を収納した後にカバーテープをシールする工程や、電子部品を基板などに実装する自動実装工程において、ダミーポケットがキャリアテープを搬送するためのガードレールに引っかかるなどして、キャリアテープを安定に搬送できないという問題があった。
また、このような方法では、パンチングプレス内の限られたスペースに、スプロケットホールを穿孔するためのピアスピンの他にパイロットピンを別途設ける必要があり、設置可能なパイロットピンの本数が限定されるという問題があった。すなわち、パイロットピンの本数が多いほど、多くの箇所でキャリアテープの位置固定がなされることとなり、位置合わせの精度は向上するが、そのような多くのパイロットピンの設置は困難であった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、収納ポケットの大きさにかかわらず、収納ポケットとスプロケットホールとの位置関係が厳密に制御され、しかも自動実装工程などでの安定搬送が可能なキャリアテープを製造することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のキャリアテープの製造方法は、帯状の基材に、収納ポケットと位置決め用ポケットとを形成する成形工程と、ピアスピンによりスプロケットホールを形成する加工工程とを有し、前記ピアスピンの先端には前記位置決め用ポケットに嵌合する位置決め部が形成されていて、前記加工工程では、前記位置決め部を前記位置決め用ポケットに嵌合させつつ前記スプロケットホールを形成することを特徴とする。
前記加工工程は穿孔工程であることが好ましい。
前記位置決め用ポケットは凹状に形成され、前記位置決め部は前記位置決め用ポケットに嵌合する凸状に形成されていることが好ましい。
本発明のキャリアテープの製造装置は、帯状の基材に、収納ポケットと位置決め用ポケットとを形成する成形機と、スプロケットホールを形成するピアスピンとを備え、前記ピアスピンの先端には前記位置決め用ポケットに嵌合する位置決め部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、収納ポケットの大きさにかかわらず、収納ポケットとスプロケットホールとの位置関係が厳密に制御され、しかも自動実装工程などでの安定搬送が可能なキャリアテープを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の製造方法の第1実施形態により製造されたキャリアテープの一例であって、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂からなる帯状の基材11に、電子部品などの物品を収納するための凹状の収納ポケット12と、このキャリアテープ10Aをピンローラなどで搬送するための略円形の貫通穴からなるスプロケットホール13とが形成されたものである。収納ポケット12はこの例では真空成形で形成され、スプロケットホール13はピアスピンのプレスにより穿孔されたものであって、ぞれぞれキャリアテープ10Aの長手方向に一列に、所定の一定間隔で複数形成されている。
この例では、収納ポケット12の大きさは幅W1が0.45mm、長さL1が0.25mm、深さが0.25mmで、スプロケットホール13の直径Dは1.55mmであり、各スプロケットホール13の開口面積が各収納ポケット12の開口面積よりも大きくなっている。また、この例では基材11の厚さは0.2mmである。
【0013】
このようなキャリアテープ10Aは、図2のキャリアテープ製造装置20で製造できる。
このキャリアテープ製造装置20は、基材11に、収納ポケット12と位置決め用ポケットとを形成するための真空成形機21と、スプロケットホール13を穿孔するためのパンチングプレス22とを有して構成されている。
真空成形機21は、基材11を加熱するための一対の加熱ロール23と、加熱された基材11に収納ポケット12と位置決め用ポケットとを形成するためのロータリー式の凸型金型24とを具備していて、収納ポケット12と位置決め用ポケットとを基材11の長手方向に連続的に形成できるようになっている。なお、位置決め用ポケットは、詳しくは後述するが、最終的に得られるキャリアテープ10Aには残存しないものであるため、図1には示されていない。また、図2中、符号34は基材11の原反ロールで、符号25はキャリアテープ10Aの巻取機である。
【0014】
パンチングプレス22は、基材11の流れ方向に一定の間隔で配置された3本のピアスピン26を備えていて、1回のプレスにより3個のスプロケットホール13を同時に穿孔できるようになっている。そして、各ピアスピン26の先端は、図3に拡大して示すように、周縁部が環状の穿孔刃26aになっていて、中央部には位置決め部として、真空成形機21で形成された凹状の位置決め用ポケットに嵌合する形状(この例では略四角柱状の凸状)の位置決めピン26bが形成されている。また、各位置決めピン26bは、3つの位置決め用ポケットにそれぞれ嵌合するものであるので、ピアスピン26の配置ピッチは、位置決め用ポケットの配置ピッチと一致するように決定されている。
【0015】
図2の製造装置により図1のキャリアテープ10Aを製造する場合には、まず、原反ロール34から基材11を真空成形機21の加熱ロール23に供給し、基材11を所定の温度まで加熱する。ついで、加熱された基材11は、ロータリー式の凸型金型24に搬送され、凸型金型24の表面に形成された図示略の微小な吸引孔に吸引されて凸型金型24に沿い、収納ポケット12と位置決め用ポケットとが立体成形される。
【0016】
このような成形工程により、図4に示すように、収納ポケット12と位置決め用ポケット14とがそれぞれ長手方向に一列に、所定の一定間隔で複数形成されたキャリアテープ中間品10A’が得られる。
なお、この例で形成される収納ポケット12の大きさは、すでに述べたように幅W1が0.45mm、長さL1が0.25mmである。一方、位置決め用ポケット14の大きさは、後述する位置決めが確実にできるように、収納ポケット12よりも大きく、幅W2および長さL2が0.6mmで、深さは0.5mmの略四角柱状とされている。また、位置決め用ポケット14は、後述する穿孔工程でのスプロケットホール13の形成にともなって切除されるものであるので、形成されるスプロケットホール13よりも小さい開口面積に形成されることが必要である。
【0017】
ついで、成形工程で得られたキャリアテープ中間品10A’をパンチングプレス22に供給し、ピアスピン26によりスプロケットホール13を穿孔する穿孔工程(加工工程)を行う。
具体的には、パンチングプレス22を作動させて、3本のピアスピン26をキャリアテープ中間品10’に形成された3つの位置決め用ポケット14に向けて一体に下降させる。すると、各ピアスピン26は、位置決め用ポケット14に嵌合する形状の位置決めピン26bをその先端に有しているので、まず、図5(a)に示すように、位置決めピン26bが位置決め用ポケット14に嵌合して、このキャリアテープ中間品10A’を位置固定する。そして、このように位置決めピン26bを位置決め用ポケット14に嵌合させつつ、図5(b)に示すように、さらにピアスピン26を下降させることにより、位置決め用ポケット14を囲む略円形にキャリアテープ中間品10A’が打ち抜かれ、スプロケットホール13が穿孔される。
このような穿孔工程により、成形工程で形成された位置決め用ポケット14は、穿孔くずとなって切除され、図1に示すキャリアテープ10Aが得られる。得られたキャリアテープ10Aは、パンチングプレス22の後段に設けられた巻取機25によりロール状に巻き取られる。
【0018】
このような製造方法によれば、成形工程においては、真空成形により収納ポケット12を形成しているので、0402チップのような微細な物品を収納するための小さな収納ポケット12であっても、精密な内部形状に形成できる。また、穿孔工程における収納ポケット12とスプロケットホール13との位置合わせに際しては、物品を収納する収納ポケット12ではなく、成形工程で形成された位置決め用ポケット14を利用するので、収納ポケット12の大きさにかかわらず、正確な位置合わせができ、その精度はプレス成形で収納ポケット12とスプロケットホール13とを同時に成形した場合と同程度となる。よって、得られたキャリアテープ10Aは、自動実装工程におけるピックアップエラーの少ない高品質なものとなる。
【0019】
さらに、形成された位置決め用ポケット14は、穿孔工程でのスプロケットホール13の形成にともなって切除されてしまい、最終的に得られるキャリアテープ10Aには残存しない。そのため、たとえ位置決め用ポケット14を位置合わせに十分な大きさで形成したとしても、後のカバーテープのシール工程や自動実装工程におけるキャリアテープ10Aの安定搬送を妨げることはない。また、位置決め用ポケット14の形成位置は、後にスプロケットホール13が形成される部分であって、別途スペースを確保する必要もないので、位置決め用ポケット14の形成により収容ポケット12の形成頻度が制限されることもない。
【0020】
さらに、このような製造装置20によれば、ピアスピン26が穿孔刃26aとともに位置決め用ピン26bを有しているため、位置決め用のパイロットピンをパンチングプレス22に別途備える必要がない。よって、装置構成が簡単となるとともに、パンチングプレス22内の限られたスペースに多くのピアスピン26を設けることが可能となる。ピアスピン26は、パンチングプレス22に少なくとも1本設けられていればよいが(図示例では3本)、多数設けられていると1回のプレスにより多数のスプロケットホール13を形成できるために生産性が優れるとともに、多数の位置決め用ポケット14を利用した位置固定が同時になされることとなるため、より高い精度の位置合わせが可能となる。
また、位置決めピン26bの形状は、位置決め用ポケット14に嵌合する形状であればよく、位置決め用ポケット14の形状に応じたものであればよいが、この例のように略四角柱状などの角柱状とすると、円柱状である場合よりもより精密な位置合わせができる。
【0021】
なお、以上説明した第1実施形態では、位置決め部としてピアスピン26の先端に凸状の位置決めピン26bが形成され、位置決め用ポケット14がこれに嵌合する凹状に形成された場合を例示したが、第2実施形態として図6に示すように、ピアスピン27の先端の中央部に、位置決め部として凹状の位置決め凹部27bが形成され、位置決め用ポケット28がこれに嵌合する凸状に形成されていてもよい。この場合には、位置決め用ポケット28と収納ポケットとは、逆向きに突出した状態に形成されることとなる。このような第2実施形態においても、ピアスピン27の先端の周縁部27aを環状の穿孔刃に形成しておくことにより、第1実施形態と同様の穿孔工程によりスプロケットホールを形成できる。また、この場合でも、位置決め凹部27bの形状が略四角柱状などの角柱状であると、円柱状である場合よりもより精密な位置合わせができる。
【0022】
上述の第1および第2実施形態では、加工工程として穿孔工程を例示し、貫通穴からなるスプロケットホール13を形成する場合について説明したが、スプロケットホールを形成する加工工程としては穿孔工程に限定されず、次に第3実施形態を例示して説明するようなプレス工程であってもよい。第3実施形態では図7に示すように、ドーム形状からなる凹状のスプロケットホール29が形成される。このように貫通していないスプロケットホール29であっても、これに嵌合する歯車などの送りピンを備えたピンローラを使用することにより、キャリアテープ10Bを問題なく一定量ずつ、または連続的に搬送できる。
【0023】
すなわち、図7のキャリアテープ10Bを製造する場合には、まず、真空成形により収納ポケット12と位置決め用ポケットとを形成し、図8に示すキャリアテープ中間品10B’を得る成形工程を行う。ここで形成される位置決め用ポケット30は、後の加工工程において切除されずスプロケットホール29の一部として残存するものであり、貫通しない凹状のドーム形状である点で第1および第2実施形態とは異なっている。
【0024】
ついで、このキャリアテープ中間品10B’を図9のようなピアスピン31と、図10に示す金型33とを備えた図示略のプレス加工機へと供給し、凹状のドーム形状のスプロケットホール29を冷間プレスにより形成するプレス工程を行う。
具体的には、ここで使用されるピアスピン31は、凸状のドーム形状からなるピン部32をその先端に備えていて、これの突端から基端側に向かって途中までが位置決め用ポケット30に嵌合する位置決め部32aとなっている。よって、プレス加工機を作動させて、ピアスピン31をキャリアテープ中間品10B’に形成された位置決め用ポケット30に向けて下降させることにより、まず、図10(a)に示すように、位置決め部32aが位置決め用ポケット30に嵌合して、このキャリアテープ中間品10B’を位置固定する。そして、このように位置決め部32aを位置決め用ポケット30に嵌合させつつ、図10(b)に示すように、さらにピアスピン31を金型33に向けて下降させることにより、ピン部32の全体が位置決め用ポケット30に押し込まれ、位置決め用ポケット30よりも直径および深さが大きな凹状のドーム形状のスプロケットホール29が形成され、図7のキャリアテープ10Bが得られる。
【0025】
以上説明した第1〜第3実施形態では、成形工程として真空成形機による真空成形を例示して説明したが、圧空成形機を使用した圧空成形であってもよい。また、使用する金型は凹型金型でもよい。真空成形および圧空成形は、熱により軟化した基材を金型に密着させる成形法であるので、金型形状の再現性が高く、プレス成形に比べて精密な内部形状の収納ポケットおよび位置決め用ポケットを形成できる。しかしながら、成形工程はプレス成形機によるプレス成形により行われてもよい。例えば、最近増加傾向にある多品種小ロットでのキャリアテープ製造においては、収納ポケットの形成とスプロケットホールの形成とを共にプレス成形で行う場合であっても、これらをあえて別工程としてプレス金型を各品種で共有化し、品種ごとの金型コストの抑制を図ることも考えられている。このような場合でも、位置決め用ポケットを形成、利用してスプロケットホールを正確な位置に形成する本製造方法は有効である。
【0026】
なお、ロータリー式の金型を用いた真空成形や圧空成形により、基材に収納ポケットと位置決め用ポケットとを形成する場合には、収納ポケットを形成するための金型パーツと位置決め用ポケットを形成するための金型パーツとを組み合わせた金型が使用される。そのため、得られたキャリアテープには、これらパーツの境界線に対応したスジが形成されることがあるが、そのようなスジが形成されてもキャリアテープの使用には全く支障ない。
【0027】
さらに、以上の例では、帯状の基材に、収納ポケットとスプロケットホールとを一列ずつ形成する場合について説明したが、幅広の帯状の基材に対して、収納ポケットとスプロケットホールとを互い違いにそれぞれ複数列形成してもよい。その場合には、例えば図2の製造装置においてパンチングプレスの後段側に、各列ごとに基材を切断するスリット装置を設ければい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態の製造方法で製造されるキャリアテープを示す平面図である。
【図2】図1のキャリアテープを製造する製造装置の概略構成図である。
【図3】図2の製造装置の要部の拡大図であり、(a)ピアスピンの正面図と(b)ピアスピンの先端側からの平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の製造方法で製造されるキャリアテープ中間品を示す平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態の製造方法のうち穿孔工程(加工工程)を説明する説明図であり、(a)ピアスピンの凸状の位置決めピンを凹状の位置決め用ポケットに嵌合させた状態と、(b)ピアスピンをさらに下降させてスプロケットホールを穿孔した状態を示すものである。
【図6】本発明の第2実施形態の製造方法のうち穿孔工程(加工工程)を説明する説明図であり、(a)ピアスピンの凹状の位置決め部を凸状の位置決め用ポケットに嵌合させた状態と、(b)ピアスピンをさらに下降させてスプロケットホールを穿孔した状態を示すものである。
【図7】本発明の第3実施形態の製造方法で製造されるキャリアテープを示す(a)平面図と、(b)(a)のI−I’線に沿う断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態の製造方法で製造されるキャリアテープ中間品を示す(a)平面図と、(b)(a)のII−II’線に沿う断面図である。
【図9】図7のキャリアテープを製造する製造装置要部の拡大図であり、(a)ピアスピンの正面図と(b)ピアスピンの先端側からの平面図である。
【図10】本発明の第3実施形態の製造方法のうちプレス工程(加工工程)を説明する説明図であり、(a)ピアスピンの位置決め部を位置決め用ポケットに嵌合させた状態と、(b)ピアスピンをさらに下降させてドーム状のスプロケットホールを形成した状態を示すものである。
【図11】従来のキャリアテープの一例を示す(a)平面図と、(b)(a)のA−A’線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10A,10B キャリアテープ
11 基材
12 収納ポケット
13,29 スプロケットホール
14,28,30 位置決め用ポケット
20 キャリアテープ製造装置
26,27,31 ピアスピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の基材に、物品収納用ポケットと位置決め用ポケットとを形成する成形工程と、ピアスピンによりスプロケットホールを形成する加工工程とを有し、
前記ピアスピンの先端には前記位置決め用ポケットに嵌合する位置決め部が形成されていて、前記加工工程では、前記位置決め部を前記位置決め用ポケットに嵌合させつつ前記スプロケットホールを形成することを特徴とするキャリアテープの製造方法。
【請求項2】
前記加工工程が穿孔工程であることを特徴とする請求項1に記載のキャリアテープの製造方法。
【請求項3】
前記位置決め用ポケットは凹状に形成され、前記位置決め部は前記位置決め用ポケットに嵌合する凸状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のキャリアテープの製造方法。
【請求項4】
帯状の基材に、物品収納用ポケットと位置決め用ポケットとを形成する成形機と、スプロケットホールを形成するピアスピンとを備え、
前記ピアスピンの先端には前記位置決め用ポケットに嵌合する位置決め部が形成されていることを特徴とするキャリアテープの製造装置。
【請求項1】
帯状の基材に、物品収納用ポケットと位置決め用ポケットとを形成する成形工程と、ピアスピンによりスプロケットホールを形成する加工工程とを有し、
前記ピアスピンの先端には前記位置決め用ポケットに嵌合する位置決め部が形成されていて、前記加工工程では、前記位置決め部を前記位置決め用ポケットに嵌合させつつ前記スプロケットホールを形成することを特徴とするキャリアテープの製造方法。
【請求項2】
前記加工工程が穿孔工程であることを特徴とする請求項1に記載のキャリアテープの製造方法。
【請求項3】
前記位置決め用ポケットは凹状に形成され、前記位置決め部は前記位置決め用ポケットに嵌合する凸状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のキャリアテープの製造方法。
【請求項4】
帯状の基材に、物品収納用ポケットと位置決め用ポケットとを形成する成形機と、スプロケットホールを形成するピアスピンとを備え、
前記ピアスピンの先端には前記位置決め用ポケットに嵌合する位置決め部が形成されていることを特徴とするキャリアテープの製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−321502(P2006−321502A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144029(P2005−144029)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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