説明

キラルジ−及びトリホスファイト

【課題】本発明は、適当な基で架橋された一般的化学式が(I)または(II)のキラルジ−及びトリホスファイトに関する。
【解決手段】本発明の化合物は、不斉遷移金属触媒反応に及びキラル遷移金属触媒として使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不斉遷移金属触媒反応及びキラル遷移金属触媒に使用するための、適当な基で架橋された一般的化学式が(I)または(II)のキラルジ(di)−及びトリ(tri)−ホスファイト(phosphites)に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、遷移金属−触媒不斉水素付加のようなエナンチオ選択的な遷移金属触媒工程は最近20年間工業的重要性が増している。この目的のために要求される配位子は、遷移金属と結合したホスフィン(phosphines)、ホスフォナイト(phosphonites)、ホスフィナイト(phosphinites)、ホスファイト(phosphites)またはホスホアミダイト(phosphoramidites)のようなキラルホスフォラス配位子(P配位子)である。典型的な例としては、BINAPのような光学的に活性なジホスフィン(diphosphines)のロジウム、ルテニウムまたはイリジウム錯体がある。
【0003】
キラル配位子の開発には、計画、試験、失敗を含め費用のかかる過程を伴う。補完的な調査法に組み合わせ不斉触媒反応と言われるものがある。モジュール的に構築したキラル配位子または触媒のライブラリーを準備しテストすることで、ヒットを見つける確率が増大する。これらシステムの課題は、多数の液体を準備するために労力がかかること、触媒により得られるエナンチオ選択性がしばしば十分ではないことである。従って、できるだけ簡単なルートで、新規、安価及び特に高性能な配位子を製造することについては、まだ工業的、学術的には研究段階である。
【0004】
ほとんどのキラルホスフォラス配位子が、キレート錯体として特定の遷移金属と結合しこれを安定化させているキレート化ジホスフォラス化合物、特にジホスフィン(diphosphines)であり、これにより触媒の不斉誘導の範囲を決定する。あるキラルモノホスフォナイト(monophosphonites)、モノホスファイト(monophosphites)、モノホスホアミダイト(monophosphoramidites)も同様に有効な配位子であることが以前から知られており、例えば、プロキラルオレフィン(olefins)のロジウム−触媒不斉水素付加反応がある。公知例は、バイノール(BINOL)由来の化合物に代表され、例えば配位子A、B、Cがある。分光学的力学的研究では、おのおのの場合、触媒中で二つのモノ−P配位子が金属と結合していることが示されている。金属−配位子比は通常1:2である。R123Pタイプのいくつかのキラルモノホスフィンも、遷移金属触媒中で優れた配位子である。しかしこれらは、通常高価である。
【0005】
【化10】

【0006】
A、B、Cタイプのモノホスフォラス含有配位子は特に容易に利用でき、モジュール構造であるため容易に変えることができる。A、B、CのRラジカルを変えることで多数のキラル配位子を構築することが可能となり、遷移金属−触媒反応(例えばプロキラルオレフィン(prochiral olefins)、ケトン(ketone)若しくはイミン(imine)の水素付加(hydrogenation)、またはプロキラルオレフィンのヒドロホルミル化(hydroformylation))における配位子の最適化が可能である。しかし、ここにも限界がある。つまり、多くの基質が、例えば水素付加またはヒドロホルミル化において、中程度か低いエナンチオ選択率で変化するに過ぎない。従って、工業的に使用するために遷移金属触媒中の新規かつ安価で有効なキラル配位子が、依然として必要とされている。
【非特許文献1】G.Wilkinson, Comprehensive Coordination Chemistry Pergamon Press,Oxford(1987)
【非特許文献2】B.Cornils,W.A.Herrmann,Applied Homogeneous Catalysis with Organometallic Compounds,VHC,Weinheim(1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、利用可能で新規な容易に製造できるキラルホスフォラス配位子を作成し、遷移金属錯体の配位子として遷移金属触媒作用、特に、オレフィン(olefins)、ケトン(ketones)及びケチミン(ketimines)の水素付加(hydrogenation)、ヒドロホウ素化(hydroboration)及びシアン化水素化(hydrocyanation)において高い能力を示す触媒を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明において、キラル化合物を一般式IまたはIIに示す。
【0009】
【化11】

【0010】
ここで、L1、L、L、L、L1´、L2´、L3´、L4´、L及びLはそれぞれ同一または相違し、式IのL1、L、L及びLのうちの少なくとも1つまたは式IIのL1´、L2´、L3´、L4´、L及びLのうちの少なくとも1つはキラルラジカルである。L1とL、LとL、L1´とL2´、L3´とL4´及びLとLは相互に結合していることがある。Y1、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y2´、Y3´、Y4´、Y5´、Y6´、Y、Y、Yは同一または相違し、それぞれO、SまたはNR´基である。R´は、水素、置換されてもよいC1〜C6アルキルまたは置換されてもよいアリール(aryl)である。置換基には、例えば、F、Cl、Br、I、OH、NO2、CN、カルボキシル(carboxyl)、カルボニル(carbonyl)、スルホニル(sulfonyl)、シリル(silyl)、CF3並びにRa及びRbをR1と定義してもよいNRabがある。
【0011】
1及びRは、それぞれC〜C22アルキレン(alkylene)であり、好ましくは、F、Cl、Br、I、OH、NO2、CN、CF3、NH2、スルホニル、シリル、モノまたはジ(C1〜C6)アルキルアミノ(alkylamino)、C1〜C6アルキル(alkyl)、C1〜C6アルコキシ(alkoxy)、カルボキシル(carboxyl)、カルボニル(carbonyl)のような置換基を有してもよいエチレン(ethylene)、n-プロピレン(propylene)、イソプロピレン(isopropylene)、n-ブチレン(butylene)、イソブチレン(isobutylene)、セカンダリーブチレン(sec-butylenes)、フェニレン(phenylene)及びジフェニレン(diphenylene) から選択された化合物である。m及びm´は、それぞれ1〜1000の間である。ただし、L及びLのうちの一つが酸素(O)、他方がN(CH2CH3)であり、L11とLのグループ及びLとLのグループがそれぞれお互いにビノールラジカル(binol radical)を形成し、mが1のとき、R1はエチレンではない。そして、L及びLがおのおの酸素(O)であり、L11とLのグループ及びLとLのグループがそれぞれお互いにビノールラジカル(binol radical)を形成するとき、mは4または5ではない。式Iの化合物のY-[R1]m部が-N(CH3)-C24-N(CH3)、-N(CH(CH32)-C-N(CH(CH32)または-N(CHPhCH3)-C-N(CHPhCH3)のとき、L11とLのグループ及びLとLのグループはそれぞれお互いにビノールラジカル(binol radical)を形成しない。
【0012】
本発明の式I及びII記載の化合物は新規である。これらの化合物は、遷移金属触媒作用で極めて良好な適合性を示す錯体に対応した遷移金属塩を使った簡易な方法を用いて、遷移金属−触媒に変化させることができる。
【0013】
式I及びIIの化合物は、亜リン酸(phosphorous acid)またはチオ亜リン酸(thio phosphorous acid)誘導体、つまり、Y1、Y、Y、Y、Y、Y、Y2´、Y3´、Y4´、Y5´、Y、Y、Yはそれぞれ酸素または硫黄が好ましい。
【0014】
本発明では、エナンチオ選択的遷移金属−触媒による水素付加、ヒドロホウ素化及びシアン化水素化において優れた選択性を有することに加えて、反応開始化合物を簡単な方法で製造でき、または商業的に安価に利用できる。
【0015】
本発明によれば、L1、L、L、L、L1´、L2´、L3´、L4´、L及びLラジカルのうちの少なくとも1つは、キラルである。つまり、1または2以上の光学活性成分を有している。特に、軸性キラリティー成分を含む配位子が好ましい。
【0016】
実施形態としては、L1及びL、L及びL、L1´及びL2´、L3´及びL4´並びにL及びLラジカルがそれぞれ架橋されるのが好ましく、特に好ましくは、これらのビノールラジカル(binol radical)を形成させることである。ラジカルが架橋された適切なL1-Y1、L-Y、L-Y、L-Y、L1´-Y1´、L2´-Y´、L3´-Y´、L4´-Y´、L-Y及びL-Yグループの例として、以下のものがある。
【0017】
【化12】





【0018】
-Y-[R1] m-及び-Y5´-[R6´] m-は、二つのキラルホスフォラス(phosphorus)を含む分子部分と結合し、それぞれアルキレンオキシ(alkyleneoxy)、チオアルキレンオキシ(thioalkyleneoxy)、ジ−またはトリアミノ化合物である。Y及びY6´は、好ましくはおのおのが酸素であり、そのため上記グループは、モノ−、ジ−、オリゴ−若しくはポリアルキレンオキサイド(polyalkylene oxide)ラジカルまたはポリアルキレンオキシ(polyalkyleneoxy)ラジカルから誘導されたラジカルである。R1及びR6´グループは、エチレンオキシド(ethylene oxide)(EO)、イソプロピレンオキシド(isopropylene oxide)(PO)、グリセロール(glycerol)に由来するのが好ましい。
【0019】
本発明の一般式I及びIIにおいて、m、m´は1〜1000の間であるが、1〜10が好ましく、より好ましくは1〜6である。特に、R1及びRラジカルがそれぞれエチレン、n-プロピレンまたはイソプロピレンのときは、m、m´はそれぞれ6以上でも差し支えない。
【0020】
本発明ではさらに、一般式IまたはIIの化合物を製造工程を提供する。
【0021】
【化13】



【0022】
ここで、L1、L、L、L、L1´、L2´、L3´、L4´、L、L、Y1、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y2´、Y3´、Y4´、Y5´、Y6´、Y、Y、Y、R1、R、m及びm´はそれぞれ上記と同様に定義される。下記の一般式IVまたはVの化合物が主成分として存在し、この化合物を下記の一般式IIIの化合物と反応させることにより、一般式IまたはIIの化合物を製造する。
【0023】
【化14】

【0024】
Lg1及びLgは、同一または相違し、それぞれL1-Y1、L-Y、L-Y、L-Y、L1´-Y1´、L2´-Y´、L3´-Y´、L4´-Y´、L-Y及びL-Yからなる群から選択されるグループである。
【0025】
【化15】

【0026】
さらに可能な実施形態として、一般式IまたはIIの化合物の製造のために、一般式VIまたはVIIの化合物を式Lg1またはLgの配位子と反応させ、一般式IまたはIIの化合物を製造する。
【0027】
【化16】

【0028】
少なくとも1つのキラル中心を有する式IまたはIIの本発明に係る化合物を得るために、式IIIからXIIの化合物うち少なくとも1つは、キラル中心(chiral center)または軸性キラリティー(axial chirality)を有する。実際のところは、スタート化合物として純粋なエナンチオマー(enantiomer)または富化されたエナンチオマーを使用するのが好ましい。本発明に係る式IまたはIIの化合物のエナンチオマー混合物を公知の化学的及び物理的分離方法により、純粋なエナンチオマーへと分離することができる。物理的分離法の一例として、クロマトグラフィーがある。分離は、例えばキラルでエナンチオメリカリー(enantiomerically)に純粋なアミンのような、適当なキラルでエナンチオメリカリー(enantiomerically)に富化した補助物質で共結晶化させることにより化学的ルートで行うことができる。
【0029】
1からLラジカルのうちの1つまたは2以上がアリール(aryl)ラジカルまたは架橋したアリール(bridged aryl)ラジカルのとき、立体異性体は、例えばキラルでエナンチオメリカリー(enantiomerically)に純粋なアミンといった適当なキラルでエナンチオメリカリー(enantiomerically)に富化した補助物質と共結晶化させることによって式IまたはIIの化合物をエナンチオマーに区分けすることにより、分離される。
【0030】
本発明はさらに、配位子として一般式I及び/またはIIのキラル化合物を含有した遷移金属触媒に関する。
【0031】
本発明はさらに、公知の方法で遷移金属塩を1または2以上の式I及び/またはIIの化合物と反応させることにより、一般式I及び/またはIIのキラル化合物の遷移金属錯体を含有する遷移金属触媒の製造工程に関する。
【0032】
この触媒または触媒前駆体は当業者に公知の方法で製造できる。これらの工程では、特定の配位子または配位子の混合物が、適当な遷移金属錯体と結合する。使用できる遷移金属には、周期律表のIIIb、IVb、Vb、VIb、VIIb、VIII、Ib及びIIb族の遷移金属などがあり、ランタニド(lanthanides)及びアクチノイド(actinides)でもよい。前記金属は、周期律表のVIII族及びIb族の遷移金属から選択されるのが好ましい。特に、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金及び銅の遷移金属錯体が好ましく、より好ましくは、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金及び銅の遷移金属錯体である。
【0033】
遷移金属錯体は、MXn(X=F、Cl、Br、I、BF4、BAr4:Arはフェニル、ベンジルまたは3,5−ビストリフルオロメチルフェニル(3, 5-bistrifluoromethylphenyl)、SbF6、PF6、ClO4、RCO2(−)、CF3SO3(−)、Acac(−))で表される塩でもよい。例えば、いくつか化合物名を挙げると、[Rh(OAc)2]2、Rh(acac)3、Rh(COD)2BF4、Cu(CF3SO3)2、CuBF4、Ag(CF3SO3)、Au(CO)Cl、In(CF3SO3)3、Fe(ClO4)3、NiCl2(COD)(COD=1,5−シクロオクタジエン)、Pd(OAc)2、[C3H5PdCl]2、PdCl2(CH3CN)2またはLa(CF3SO3)3がある。遷移金属錯体は、オレフィン(olefins)、ジエン(dienes)、ピリジン(pyridine)、COまたはNOを含む配位子から生ずる金属錯体でもよい。これら遷移金属錯体は、P配位子との反応により全体的にまたは部分的に置き換えられる。陽イオン金属錯体も同様に使用できる。
【0034】
当業者は、多数の可能性を知っている(G.ウイルキンソン、コンプリヘンシブ コーディネイション ケミストリー、ペルガモン出版、オックスフォード(1987);B.コルニル、W.A.ヘーラム、有機金属化合物を使用した同質な触媒反応への応用、VHC,ワインヘイム(1996))。共通例としていくつか化合物名を挙げると、Rh(COD)2BF4、[(シメン)RuCl2]2、(ピリジン)2Ir(COD)BF4、Ni(COD)2、(TMEDA)Pd(CH32(TMEDA:N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン)、Pt(COD)2、PtCl2(COD)または[RuCl2(CO)3]2がある。
【0035】
金属化合物と配位子、つまり式IまたはIIの化合物は、通常は触媒反応的に活性な化合物の形態となる量で使用される。従って、使用する金属化合物量は、一般式Iおよび/またはIIのキラル化合物を基準にして、例えば25〜200mol%であり、30〜100mol%が好ましく、さらに好ましくは80〜100mol%であり、90〜100mol%が特に好ましい。
【0036】
原位置(in situ)で生成した遷移金属錯体を含む触媒または単離した遷移金属錯体は、キラル化合物の製造工程に使用するのに特に適している。これらの触媒は不斉1,4付加(asymmetric1,4additions)、不斉ヒドロホルミル化(asymmetric hydroformylations)、不斉シアン化水素化(asymmetric hydrocyanation)、不斉ヒドロホウ素化(asymmetric hydroboration)、不斉ヒドロシリル化(asymmetric hydrosilylation)、不斉ヒドロビニル化(asymmetric hydrovinylation)、不斉ヘック(asymmetric Heck)反応、不斉水素付加(asymmetric hydrogenation)に使用されるのが好ましい。
【0037】
本発明はさらにプロキラルオレフィン、ケトンまたはケチミンの不斉遷移金属−触媒水素付加、ヒドロホウ素化、シアン化水素化、1,4付加、ヒドロホルミル化、ヒドロシリル化、ヒドロビニル化及びヘック反応の工程を開示する。この触媒は上記で定義した式I及び/またはIIのキラルな配位子を有することを特徴とする。
【0038】
本発明の好ましい実施態様は、遷移金属触媒を、プロキラルオレフィン、ケトンまたはケチミンの不斉水素付加、不斉ヒドロホウ素化または不斉シアン化水素化に使用することである。最終産物として高収率で高純度の光学異性体を得ることができる。
【0039】
好ましい不斉水素付加には、例えばプロキラルエナミン(prochiral enamines)、オレフィン及びエノールエーテル(enol ethers)のようなプロキラルC=C結合への水素付加、プロキラルケトンのようなプロキラルC=O結合への水素付加、プロキラルイミンのようなプロキラルC=N結合への水素付加がある。特に好ましい不斉水素付加は、プロキラルエナミン及びオレフィンへの水素付加である。
【0040】
使用する金属化合物量または遷移金属錯体量は、使用基質(substrate)を基準として0.0001〜5mol%であるが、0.0001〜0.5mol%が好ましく、より好ましくは0.0001〜0.1mol%であり、特に好ましくは0.001〜0.008mol%である。
【0041】
実施態様としては、例えば不斉水素付加は、触媒を金属化合物と一般式I及び/またはIIのキラル化合物から原位置で生成する方法にて行われるのが好ましい。適当な溶媒中に不斉水素付加の基質を添加し、反応混合物を反応温度にて水素圧力下においてもよい。
【0042】
水素付加を行うために、例えば金属化合物と配位子をベークアウト(baked−out)したオートクレーブ中で脱ガスした溶媒に溶解させる。この混合物を約5分間攪拌しておいてから、脱ガスした溶媒中に基質を加える。特定の温度とした後、高水素圧下にて水素付加される。
【0043】
不斉水素付加反応に適した溶媒には、例えば、塩化メチレン(methylene chloride)のような塩素化アルカン(chlorinated alkanes)、メタノール(methanol)、イソプロパノール(isopropanol)若しくはエタノール(ethanol)のような短鎖C〜Cアルコール(alcohols)、トルエン(toluene)若しくはベンゼン(benzene)のような芳香族炭化水素(aromatic hydrocarbons)、アセトン(acetone)のようなケトン(ketone)または酢酸エチル(ethyl acetate)のようなカルボン酸エステル(carboxylic esters)がある。
【0044】
不斉水素付加反応は、例えば−20〜200℃の温度で行われるが、0〜100℃が好ましく、より好ましくは20〜70℃である。
【0045】
水素圧は、例えば0.1〜200バール(bar)であるが、0.5〜50バール(bar)が好ましく、より好ましくは0.5〜5バール(bar)である。
【発明の効果】
【0046】
本発明に係る触媒は、特にキラル活性な薬品及び農芸化学品の成分またはこれら二分野の中間品の成分を製造する工程に適している。
【0047】
本発明の利点は、製造が簡単であり、特に不斉水素付加反応において例外的選択にも優れた作用を得るのが容易な配位子を使用できる点である。
【実施例】
【0048】
キラルなジ−及びトリホスファイト配位子の調製。
【0049】
[実施例1]
ビス−O−[(R)−4H−ジナフト[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]ジオキサホスフェピン−4,4´−ジイル] −1,2−エタン−ジオール(bis−O−[(R)−4H−dinaphtho[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]dioxaphosphepin−4,4´−diyl] −1,2−ethane−diol)の合成(I:L11及びL22=L33及びL44=バイノール(BINOL);Y5=O;R16=(CH2CH2O);m=1)
【0050】
上記化合物の合成のために、まず、(R)−2,2´−ビナフチルホスフォラスジエステルクロライド(binaphthylphosphorous diester chloride)0.93g(2.65mmol)を室温にて150mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテル(diethyl ether)中に添加した。このなかに純然たる(abs.)1,2−エタンジオール(ethanediol)74ul(0.082g、1.32mmol)と純然たる(abs.)トリエチルアミン(triethylamine)0.41ml(0.29g、2.91mmol)をピペットで入れた。オーバーナイトで攪拌した後、沈殿した無色の固形物をD4フリット(frit)に通してろ過し、5mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテルにて洗浄した。次にろ過液を溶媒から完全に分離した。これにより無色の粉末の生成物を0.71g(1.03mmol、77.9%)得られた。
【0051】
分析:1H NMR(CD2Cl2 300MHz) 7.91-7.95 [24H],3.92 (m) [2H],3.71 (m) [2H],13C NMR(CD2Cl2,75MHz) 63.62 (t) J=4.8Hz;31P NMR(CD2Cl2,121MHz) 141.53 (s);MS(EI,気化温度275℃) m/z=690 (17.29%),268 (100%),239 (38.82%) EA P:8.39%(calc.8.97%)。
【0052】
[実施例2]
ビス−O−[(S)−4H−ジナフト[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]ジオキサホスフェピン−4,4´−ジイル] −1,3−プロパン−ジオール(bis−O−[(S)−4H−dinaphtho[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]dioxaphosphepin−4,4´−diyl] −1,3−propane−diol)の合成(I:L11及びL22=L33及びL44=バイノール(BINOL);Y5=O;R16=(CH2CH2CH2O);m=1)
【0053】
上記化合物の合成のために、まず、(S)−2,2´−ビナフチルホスフォラスジエステルクロライド(binaphthylphosphorous diester chloride)1.97g(5.62mmol)を室温にて150mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテル(diethyl ether)中に添加した。このなかに純然たる(abs.)1,3−プロパンジオール(propanediol)200ul(0.21g、2.81mmol)と純然たる(abs.)トリエチルアミン(triethylamine)0.86ml(0.62g、6.18mmol)をピペットで入れた。オーバーナイトで攪拌した後、沈殿した無色の固形物をD4フリット(frit)に通してろ過し、5mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテルにて洗浄した。次にろ過液を溶媒から完全に分離した。これにより無色の粉末の生成物を1.6g(2.27mmol、81.1%)得られた。
【0054】
分析:1H NMR(CD2Cl2 300MHz) 7.90-7.12 [24H],3.84 (m) [4H],1.69 (m)[2H],13C NMR(CD2Cl2,75MHz) 60.43 (d) J=6.8Hz;31.38;31P NMR(CD2Cl2,121MHz) 141.92(s);MS(EI,気化温度280℃) m/z=704 (22.11%),373 (100%),268 (91.9%) EA P:7.99%(calc.8.79%)。
【0055】
[実施例3]
(S,S)ビス−O−[(S)−4H−ジナフト[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]ジオキサホスフェピン−4,4´−ジイル] −1,4−ブタンジオール((S,S)bis−O−[(S)−4H−dinaphtho[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]dioxaphosphepin−4,4´−diyl] −1,4−butanediol)の合成(I:L11及びL22=L33及びL44=バイノール(BINOL);Y5=O;R16=(CH2CH2CH2CH2O);m=1)
【0056】
上記化合物の合成のために、まず、(S)−2,2´−ビナフチルホスフォラスジエステルクロライド(binaphthylphosphorous diester chloride)1.10g(3.13mmol)を室温にて150mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテル(diethyl ether)中に添加した。このなかに純然たる(abs.)1,4−ブタンジオール(butanediol)140ul(0.14g、1.56mmol)と純然たる(abs.)トリエチルアミン(triethylamine)0.48ml(0.35g、3.44mmol)をピペットで入れた。オーバーナイトで攪拌した後、沈殿した無色の固形物をD4フリット(frit)に通してろ過し、5mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテルにて洗浄した。次にろ過液を溶媒から完全に分離した。これにより無色の粉末の生成物を0.86g(1.19mmol、76.7%)得られた。
【0057】
分析:1H NMR(CD2Cl2300MHz) 7.90-7.18 [24H],3.85 (m) [2H],3.68 (m)[ 2H],1.43 (m) [4H];13C NMR(CD2Cl2,75MHz) 63.87 (d) J=6.9Hz;26.50(d) J=4.1Hz;31P NMR(CD2Cl2,121MHz) 142.72(s);MS(EI,気化温度285℃) m/z=718 (15.05%),268 (100%),239 (50.5%) EA P:8.06%(calc.8.62%)。
【0058】
[実施例4]
1,7−ビス−O−[(S)−4H−ジナフト[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]ジオキサホスフェピン−4,4´−ジイル] −1,4,7−トリオキサヘプタン(1,7−bis−O−[(S)−4H−dinaphtho[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]dioxaphosphepin−4,4´−diyl] −1,4,7−trioxaheptane)の合成(I:L11及びL22=L33及びL44=バイノール(BINOL);Y5=O;R16=(CH2CH2O);m=2)
【0059】
上記化合物の合成のために、まず、(S)−2,2´−ビナフチルホスフォラスエステルクロライド(binaphthylphosphorous ester chloride)0.86g(2.45mmol)を室温にて150mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテル(diethyl ether)中に添加した。このなかに純然たる(abs.)ジエチレングリコール(diethylene glycol)120ul(0.13g、1.23mmol)と純然たる(abs.)トリエチルアミン(triethylamine)0.37ml(0.27g、2.69mmol)をピペットで入れた。オーバーナイトで攪拌した後、沈殿した無色の固形物をD4フリット(frit)に通してろ過し、5mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテルにて洗浄した。次にろ過液を溶媒から完全に分離した。これにより無色の粉末の生成物を0.50g(0.68mmol、55.3%)得られた。
【0060】
分析:1H NMR(CD2Cl2300MHz) 7.89-7.14 [24H],4.01 (m) [2H],3.87 (m)[ 2H],3.52 (m) [4H];13C NMR(CD2Cl2,75MHz) 69.89 (d) J=5.0Hz;63.58(d) J=5.7Hz;31P NMR(CD2Cl2,121MHz) 143.59(s);MS(EI,気化温度285℃) m/z=734 (9.05%),268 (100%),239 (43.46%) EA C:69.64%(calc.71.93%),H:5.15%(calc.4.39%),P:7.84%(calc.8.43%)。
【0061】
[実施例5]
1,10−ビス−O−[(S)−4H−ジナフト[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]ジオキサホスフェピン−4,4´−ジイル] −1,4,7,10−テトラオキサデカン(1,10−bis−O−[(S)−4H−dinaphtho[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]dioxaphosphepin−4,4´−diyl] −1,4,7,10−tetraoxadecane)の合成(I:L11及びL22=L33及びL44=バイノール(BINOL);Y5=O;R16=(CH2CH2O);m=3)
【0062】
上記化合物の合成のために、まず、(S)−2,2´−ビナフチルホスフォラスジエステルクロライド(binaphthylphosphorous diester chloride)0.88g(2.50mmol)を室温にて150mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテル(diethyl ether)中に添加した。このなかに純然たる(abs.)トリエチレングリコール(triethylene glycol)170ul(0.188g、1.25mmol)と純然たる(abs.)トリエチルアミン(triethylamine)0.38ml(0.28g、2.76mmol)をピペットで入れた。オーバーナイトで攪拌した後、沈殿した無色の固形物をD4フリット(frit)に通してろ過し、5mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテルにて洗浄した。次にろ過液を溶媒から完全に分離した。これにより無色の粉末の生成物を0.63g(0.81mmol、64.7%)得られた。
【0063】
分析:1H NMR(CD2Cl2300MHz) 7.86-7.12 [24H],3.95 (m) [2H],3.79 (m) [2H],3.50 (s) [4H],3.46 (m) [4H];13C NMR(CD2Cl2,75MHz) 69.90 (d) J=3.9Hz;69.81(s),63.61 (d) J=7.2Hz;31P NMR(CD2Cl2,121MHz) 143.84(s);MS(EI,気化温度275℃) m/z=778 (8.66%),376 (34.39%),268(100%),239(23.95%)EA P:7.96%(calc.7.19%)。
【0064】
[実施例6]
1,13−ビス−O−[(S)−4H−ジナフト[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]ジオキサホスフェピン−4,4´−ジイル] −1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデカン(1,13−bis−O−[(S)−4H−dinaphtho[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]dioxaphosphepin−4,4´−diyl] −1,4,7,10,13−pentaoxatridecane)の合成(I:L11及びL22=L33及びL44=バイノール(BINOL);Y5=O;R16=(CH2CH2O);m=4)
【0065】
上記化合物の合成のために、まず、(S)−2,2´−ビナフチルホスフォラスエステルクロライド(binaphthylphosphorous ester chloride)1.20g(3.40mmol)を室温にて150mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテル(diethyl ether)中に添加した。このなかに純然たる(abs.)テトラエチレングリコール(tetraethylene glycol)290ul(0.33g、1.70mmol)と純然たる(abs.)トリエチルアミン(triethylamine)0.52ml(0.38g、3.74mmol)をピペットで入れた。オーバーナイトで攪拌した後、沈殿した無色の固形物をD4フリット(frit)に通してろ過し、5mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテルにて洗浄した。次にろ過液を溶媒から完全に分離した。これにより無色の粉末の生成物を0.95g(1.15mmol、67.9%)得られた。
【0066】
分析:1H NMR(CD2Cl2300MHz) 7.87-7.16 [24H],3.95 (m) [2H],3.82 (m) [2H],3.51 (s) [8H],3.41 (m) [4H];13C NMR(CD2Cl2,75MHz) 70.27 (s) 69.78 (s),69.57 (s) 63.67 (d) J=7.1Hz;31P NMR(CD2Cl2,121MHz) 143.76(s);MS(EI,気化温度300℃) m/z=376 (29.67%),268 (100%),239(31.44%),EA P:6.45%(calc.7.52%)。
【0067】
[実施例7]
1,16−ビス−O−[(S)−4H−ジナフト[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]ジオキサホスフェピン−4,4´−ジイル] −1,4,7,10,13,16−ヘキサオキサヘキサデカン(1,16−bis−O−[(S)−4H−dinaphtho[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]dioxaphosphepin−4,4´−diyl] −1,4,7,10,13,16−hexaoxahexadecane)の合成(I:L11及びL22=L33及びL44=バイノール(BINOL);Y5=O;R16=(CH2CH2O);m=5)
【0068】
上記化合物の合成のために、まず、(S)−2,2´−ビナフチルホスフォラスエステルクロライド(binaphthylphosphorous ester chloride)0.86g(2.44mmol)を室温にて150mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテル(diethyl ether)中に添加した。このなかに純然たる(abs.)ペンタエチレングリコール(pentaethylene glycol)260ul(0.29g、1.22mmol)と純然たる(abs.)トリエチルアミン(triethylamine)0.38ml(0.27g、2.70mmol)をピペットで入れた。オーバーナイトで攪拌した後、沈殿した無色の固形物をD4フリット(frit)に通してろ過し、5mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテルにて洗浄した。次にろ過液を溶媒から完全に分離した。これにより無色の粉末の生成物を0.75g(0.86mmol、70.9%)得られた。
【0069】
分析:1H NMR(CD2Cl2300MHz) 7.89-7.13 [24H],3.95 (m) [2H],3.80 (m) [2H],3.46 (s) [12H],3.45 (m) [4H];13C NMR(CD2Cl2,75MHz) 71.70 (s) 69.81 (s),69.69 (s) 69.51 (s),63.65(d) J=7.2Hz;31P NMR(CD2Cl2,121MHz) 143.70(s);MS(EI,気化温度315℃) m/z=376 (28.61%),268 (100%),239(42.62%),EA P:6.60%(calc.7.14%)。
【0070】
[実施例8]
ビス−O−[(S)−4H−ジナフト[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]ジオキサホスフェピン−4,4´−ジイル] −1,2−ジヒドロキシベンゼン(bis−O−[(S)−4H−dinaphtho[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]dioxaphosphepin−4,4´−diyl] −1,2−dihydroxybenzene)の合成(I:L11及びL22=L33及びL44=バイノール(BINOL);Y5=O;R16=(CO);m=1)
【0071】
上記化合物の合成のために、まず、(S)−2,2´−ビナフチルホスフォラスエステルクロライド(binaphthylphosphorous ester chloride)0.73g(2.07mmol)を室温にて150mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテル(diethyl ether)に入れて、純然たる(abs.)トリエチルアミン(triethylamine)0.32ml(0.23g、2.28mmol)をピペットで入れた。この溶液を−80℃まで冷却した。この溶液に、20mlのジエチルエーテル(diethyl ether)に溶解させた1,2−ジヒドロキシベンゼン(1,2−dihydroxybenzene)0.114g(1.035mmol)を1時間以内に滴下して添加し、試料(suspension)を室温まで暖めた。オーバーナイトで攪拌した後、沈殿した無色の固形物をD4フリット(frit)に通してろ過し、5mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテルにて洗浄した。次にろ過液を溶媒から完全に分離した。これにより無色の粉末の生成物を0.54g(0.73mmol、70.6%)得られた。
【0072】
分析:1H NMR(CD2Cl2300MHz) 7.96-6.38 [28H];31P NMR(CD2Cl2,121MHz) 145.65(s);EA P:7.71%(calc. 8.38%)。
【0073】
[実施例9]
ビス−O−[(S)−4H−ジナフト[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]ジオキサホスフェピン−4,4´−ジイル] −1,3−ジヒドロキシベンゼン(bis−O−[(S)−4H−dinaphtho[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]dioxaphosphepin−4,4´−diyl] −1,3−dihydroxybenzene)の合成(I:L11及びL22=L33及びL44=バイノール(BINOL);Y5=O;R16=(CO);m=1)
【0074】
上記化合物の合成のために、まず、(S)−2,2´−ビナフチルホスフォラスエステルクロライド(binaphthylphosphorous ester chloride)0.44g(1.26mmol)を室温にて150mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテル(diethyl ether)中に添加した。これに0.07g(0.63mmol)の1,3−ジヒドロキシベンゼン(1,3−dihydroxybenzene)と0.19ml(0.14g、1.38mmol)の純然たる(abs.)トリエチルアミン(triethylamine)をピペットで入れた。オーバーナイトで攪拌した後、沈殿した無色の固形物をD4フリット(frit)に通してろ過し、5mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテルにて洗浄した。次にろ過液を溶媒から完全に分離した。これにより無色の粉末の生成物を0.29g(0.39mmol、62.3%)得られた。
【0075】
分析:1H NMR(CD2Cl2300MHz) 7.95-6.94 [28H];31P NMR(CD2Cl2,121MHz) 144.81;MS(EI,気化温度285℃) m/z=738 (63.22%),315 (88.94%),268(100%),239(20.42%);EA P:7.32%(calc. 8.38%)。
【0076】
[実施例10]
ビス−O−[(S)−4H−ジナフト[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]ジオキサホスフェピン−4,4´−ジイル] −1,4−ジヒドロキシベンゼン(bis−O−[(S)−4H−dinaphtho[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]dioxaphosphepin−4,4´−diyl] −1,4−dihydroxybenzene)の合成(I:L11及びL22=L33及びL44=バイノール(BINOL);Y5=O;R16=(CO);m=1)
【0077】
上記化合物の合成のために、まず、(S)−2,2´−ビナフチルホスフォラスエステルクロライド(binaphthylphosphorous ester chloride)0.56g(1.60mmol)を室温にて150mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテル(diethyl ether)中に添加した。これに0.088g(0.80mmol)の1,4−ジヒドロキシベンゼン(1,4−dihydroxybenzene)と0.24ml(0.18g、1.76mmol)の純然たる(abs.)トリエチルアミン(triethylamine)をピペットで入れた。オーバーナイトで攪拌した後、沈殿した無色の固形物をD4フリット(frit)に通してろ過し、5mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテルにて洗浄した。次にろ過液を溶媒から完全に分離した。これにより無色の粉末の生成物を0.26g(0.35mmol、44.0%)得られた。
【0078】
分析:1H NMR(CD2Cl2300MHz) 8.13-7.29 [28H];31P NMR(CD2Cl2,121MHz) 145.44;MS(EI,気化温度200℃) m/z=738 (42.75%),315 (100%),268(69.45%),239(15.08%);EA P:7.67%(calc. 8.38%)。
【0079】
[実施例11]
ビス−O−[(S)−4H−ジナフト[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]ジオキサホスフェピン−4,4´−ジイル] −1,2−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン(bis−O−[(S)−4H−dinaphtho[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]dioxaphosphepin−4,4´−diyl] −1,2−bis(hydroxymethyl)benzene)の合成(I:L11及びL22=L33及びL44=バイノール(BINOL);Y5=O;R16=CHCHO,m=1)
【0080】
上記化合物の合成のために、まず、(S)−2,2´−ビナフチルホスフォラスエステルクロライド(binaphthylphosphorous ester chloride)1.0g(2.85mmol)を室温にて150mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテル(diethyl ether)中に添加した。これに0.20g(1.42mmol)の1,2−ビスヒドロキシメチルベンゼン(1,2−bis(hydroxymethyl)benzene)と0.44ml(0.32g、3.13mmol)の純然たる(abs.)トリエチルアミン(triethylamine)をピペットで入れた。オーバーナイトで攪拌した後、沈殿した無色の固形物をD4フリット(frit)に通してろ過し、5mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテルにて洗浄した。次にろ過液を溶媒から完全に分離した。これにより無色の粉末の生成物を0.62g(0.81mmol、57.0%)得られた。
【0081】
分析:1H NMR(CD2Cl2300MHz) 7.87-7.09 [28H],5.14 (m) [2H],4.75 (m) [2H];13C NMR(CD2Cl2,75MHz) 63.37 (d) J=6.4Hz;31P NMR(CD2Cl2,121MHz) 140.97(s); EA P:7.43%(calc.8.08%)。
【0082】
[実施例12]
ビス−O−[(S)−4H−ジナフト[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]ジオキサホスフェピン−4,4´−ジイル] −1,1´−ビフェノール(bis−O−[(S)−4H−dinaphtho[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]dioxaphosphepin−4,4´−diyl] −1,1´−biphenol)の合成(I:L11及びL22=L33及びL44=バイノール(BINOL);Y5=O;R16=CO)
【0083】
上記化合物の合成のために、まず、(S)−2,2´−ビナフチルホスフォラスエステルクロライド(binaphthylphosphorous ester chloride)1.1g(3.10mmol)を室温にて150mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテル(diethyl ether)中に添加した。これに0.29g(1.55mmol)の1,1´−ビフェノール(1,1´−biphenol)と0.48ml(0.34g、3.40mmol)の純然たる(abs.)トリエチルアミン(triethylamine)をピペットで入れた。オーバーナイトで攪拌した後、沈殿した無色の固形物をD4フリット(frit)に通してろ過し、5mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテルにて洗浄した。次にろ過液を溶媒から完全に分離した。これにより無色の粉末の生成物を1.03g(1.26mmol、81.6%)得られた。
【0084】
分析:1H NMR(CD2Cl2300MHz) 7.87-7.09 [32H];31P NMR(CD2Cl2,121MHz) 145.23(s);MS(EI,気化温度250℃) m/z=814 (0.28%),483 (100%),268(10.14%),168(18.62%);EA P:7.15%(calc. 7.60%)。
【0085】
[実施例13]
4,4´−ビス−O−[(S)−4H−ジナフト[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]ジオキサホスフェピン−4,4´−ジイル]イソプロピリデンジフェノール(4,4´−bis−O−[(S)−4H−dinaphtho[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]dioxaphosphepin−4,4´−diyl] isopropylidenediphenol)の合成(I:L11及びL22=L33及びL44=バイノール(BINOL);Y5=O;R16=CC(CH3)2O)
【0086】
上記化合物の合成のために、まず、(S)−2,2´−ビナフチルホスフォラスエステルクロライド(binaphthylphosphorous ester chloride)0.68g(1.94mmol)を室温にて150mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテル(diethyl ether)中に添加した。これに0.22g(0.97mmol)の4,4´−イソプロピリデンジフェノール(4,4´−isopropylidenediphenol)と0.30ml(0.21g、2.13mmol)の純然たる(abs.)トリエチルアミン(triethylamine)をピペットで入れた。オーバーナイトで攪拌した後、沈殿した無色の固形物をD4フリット(frit)を通してろ過し、5mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテルにて洗浄した。次にろ過液を溶媒から完全に分離した。これにより無色の粉末の生成物を0.63g(0.73mmol、75.2%)得られた。
【0087】
分析:1H NMR(CD2Cl2300MHz) 7.90-6.98 [32H],1.55(s) [6H],;31P NMR(CD2Cl2,121MHz) 145.21(s);MS(EI,気化温度325℃) m/z=856 (41.56%),841 (24.68%),315(100%),268(73.43%);EA P:6.58%(calc. 7.23%)。
【0088】
[実施例14]
1,3,5−トリス−O−[(S)−4H−ジナフト[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]ジオキサホスフェピン−4,4´−ジイル]ベンゼン(1,3,5−tris−O−[(S)−4H−dinaphtho[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]dioxaphosphepin−4,4´−diyl] benzene)の合成(II:L及びL=L及びL=L及びL=バイノール(BINOL);Y=O;R2´6´=CO;m-=1)
【0089】
上記化合物の合成のために、まず、(S)−2,2´−ビナフチルホスフォラスエステルクロライド(binaphthylphosphorous ester chloride)1.15g(3.28mmol)を室温にて150mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテル(diethyl ether)中に添加した。これに0.137g(1.09mmol)の1,3,5−トリヒドロキシベンゼン(1,3,5−trihydroxybenzene)と0.30ml(0.36g、3.61mmol)の純然たる(abs.)トリエチルアミン(triethylamine)をピペットで入れた。オーバーナイトで攪拌した後、沈殿した無色の固形物をD4フリット(frit)に通してろ過し、5mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテルにて洗浄した。次にろ過液を溶媒から完全に分離した。これにより無色の粉末の生成物を0.92g(0.86mmol、79.0%)得られた。
【0090】
分析:1H NMR(CD2Cl2300MHz) 7.95-7.13 [36H],6.77(s) [3H];31P NMR(CD2Cl2,121MHz) 144.06(s); EA P:8.29%(calc. 8.69%)。
【0091】
[実施例15]
トリス−O−[(S)−4H−ジナフト[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]ジオキサホスフェピン−4,4´−ジイル]−2,2´,2´´−ニトリロトリエタノール(tris−O−[(S)−4H−dinaphtho[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]dioxaphosphepin−4,4´−diyl]−2,2´,2´´− nitrilotriethanol)の合成(II:L及びL=L及びL=L及びL=バイノール(BINOL);Y=Y6´-=YO;R=N(C;m-=1)
【0092】
上記化合物の合成のために、まず、(S)−2,2´−ビナフチルホスフォラスエステルクロライド(binaphthylphosphorous ester chloride)1.26g(3.60mmol)を室温にて150mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテル(diethyl ether)中に添加した。これに160ul(0.18g 1.2mmol)のトリエタノールアミン(triethanolamine)と0.55ml(0.40g、3.95mmol)の純然たる(abs.)トリエチルアミン(triethylamine)をピペットで入れた。オーバーナイトで攪拌した後、沈殿した無色の固形物をD4フリット(frit)に通してろ過し、5mlの純然たる(abs.)ジエチルエーテルにて洗浄した。次にろ過液を溶媒から完全に分離した。これにより無色の粉末の生成物を1.02g(0.93mmol、77.8%)得られた。
【0093】
分析:1H NMR(CD2Cl2300MHz) 7.98-7.07 [36H],3.71(m) [6H],2.59(t) [6H] J=5.7Hz;31P NMR(CD2Cl2,121MHz) 143.08(s); EA P:7.92%(calc. 8.51%)。
【0094】
[実施例16−18]
アミノアルコール(amino alcohols)から導かれる配位子の合成のための一般的方法。
【0095】
(S)−2,2´−ビナフチルホスフォラスエステルクロライド(binaphthylphosphorous ester chloride)600mg(1.71mmol)とトリエチルアミン(triethylamine)0.3ml(2.16mmol)を−78℃にて100mlのトルエン(toluene)中に添加して、適当なアミノアルコール0.5当量(equivalent)(0.86mmol)を混合した。16時間攪拌し室温まで暖めた後、生じた沈殿をろ過し、次にろ過液を溶媒から完全に分離した。高真空下で乾燥させた後、白色の固形物である配位子が42〜99%の収率にて得られた。
【0096】
[実施例16]
ビス−O−[(S)−4H−ジナフト[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]ジオキサホスフェピン−4,4´−ジイル]−N−メチル−2−アミノエタノール(bis−O−[(S)−4H−dinaphtho[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]dioxaphosphepin−4,4´−diyl]−N−methyl−2− aminoethanol)(I:L11及びL22=L33及びL44=バイノール(BINOL);Y5=NCH;R16=(CHCHO);m=1)
【0097】
分析:1H NMR(C6D6300.1MHz)δ= 7.70-6.90(m) [24H],3.75(m,1H),3.48(m) [1H],3.31(m) [1H],2.67(m)[1H],2.15(d,JPH=5.3Hz)[3H];31PNMR(C6D6,121.5MHz)149.8(s),139.0(s);MS(EI,pos.ions):m/z=703[M]
【0098】
[実施例17]
ビス−N,O−[(S)−4H−ジナフト[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]ジオキサホスフェピン−4,4´−ジイル]−3−アミノプロパノール(bis−N,O−[(S)−4H−dinaphtho[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]dioxaphosphepin−4,4´−diyl]−3−aminopropanol)(I:L11及びL22=L33及びL44=バイノール(BINOL);Y5=NH;R16=(CHCHCHO);m=1)
【0099】
分析:1H NMR(C6D6400.1MHz) 7.71-6.86(m) [24H],3.71(m) [1H],3.52(m) [1H],2.79-2.66(m)[2H],2.60(m)[1H],1.16(m)[2H];31PNMR(C6D6,162.0MHz)153.9(s),139.4(s);MS(EI,pos.ions):m/z=703[M];EA C:72.68%(calc.73.40%),H:4.80%(calc.4.44%),N:1.67%(calc.1.99%),P:8.44% (calc.8.80%) 。
【0100】
[実施例18]
ビス−N,O−[(S)−4H−ジナフト[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]ジオキサホスフェピン−4,4´−ジイル]−4−アミノブタノール(bis−N,O−[(S)−4H−dinaphtho[2,1−d:1´,2´−f] −[1,3,2]dioxaphosphepin−4,4´−diyl]−4− aminobutanol)(I:L11及びL22=L33及びL44=バイノール(BINOL);Y5=NH;R16=(CHCHCHCHO);m=1)
【0101】
分析:1H NMR(C6D6400.1MHz) 7.69-6.88(m) [24H],3.70(m) [1H],3.50(m) [1H],2.63(m) [1H],2.55-2.41(m)[2H],1.12(m)[2H],1.04(m)[2H];31PNMR(C6D6,162.0MHz)153.8(s),140.0(s);MS(EI,pos.ions):m/z=717[M];EA C:73.58%(calc.73.64%),H:4.70%(calc.4.63%),N:2.06%(calc.1.95%),P:8.52%(calc.8.63%)。
【0102】
[水素付加]
原位置(in situ)で製造した触媒による水素付加反応のための一般的方法。
まず、ジクロロメタン(dichloromethane)中の[Rh(cod)2]BF4の2mM溶液0.5mlをサイドタップ(side tap)で丸底フラスコに入れた。これに特定配位子の2mM溶液0.5mlを加えてから、ジクロロメタン中の0.11M基質溶液9.0mlを加えた。次に、この溶液を水素ガスで飽和してから、室温にて20時間、水素圧1.3バール(bar)で攪拌した。このようにして得られた溶液2mlをシリカ(silica)(70−230メッシュ、アクティビティーレベルI)にてろ過し、ガスクロマトグラフィーで分析した。
【0103】
[実施例19−36]
ジメチルイタコネート(dimethyl itaconate)のエナンチオ選択性水素付加反応。
実施例19−36は、ジメチルイタコネート(dimethyl itaconate)基質の水素付加により、ジメチル2−メチルスクシネート(dimethyl 2-methylsuccinate)が生成することを示している。ここでは、原位置(in situ)で製造した触媒により一般的な水素付加の方法を用いている。詳細な反応条件、転化率(conversions)、実現したエナンチオ選択率を表1に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
[実施例37−41]
メチル2−アセトアミドアクリレート(methyl 2-acetamidoacrylate)のエナンチオ選択性水素付加反応。
実施例37−41は、メチル2−アセトアミドアクリレート(methyl 2-acetamidoacrylate)基質の水素付加により、メチルN−アセチルアラニネート(methyl N-acetylalaninate)が生成することを示している。ここでは、原位置(in situ)で製造した触媒により一般的な水素付加の方法を用いている。詳細な反応条件、転化率、実現したエナンチオ選択率を表2に示す。
【0106】
【表2】

【0107】
[実施例42−43]
メチルα−アセトアミドシンナメート(methyl α-acetamidocinnamate)のエナンチオ選択性水素付加反応。
実施例42−43は、メチルα−アセトアミドシンナメート(methyl α-acetamidocinnamate)基質の水素付加により、メチルN−アセチルフェニルアラニネート(methyl N-acetylphenylalaninate)が生成することを示している。ここでは、原位置(in situ)で製造した触媒により一般的な水素付加の方法を用いている。詳細な反応条件、転化率、エナンチオ選択率を表3に示す。
【0108】
【表3】

【0109】
[実施例44−48]
α−アセトアミドスチレン(α-acetamidostyrene)のエナンチオ選択性水素付加反応。
実施例44−48は、α−アセトアミドスチレン(α-acetamidostyrene)基質の水素付加により、N−アセチル−1−フェニルエチルアミン(N-acetyl-1-phenylethylamine)が生成することを示している。2mMの配位子溶液0.5mlを[Rh(cod)2]BF4の2mM溶液0.5mlと混合した。上記基質の0.25M溶液2.0mlを加えた後、この混合液を60バールの水素圧にて20時間攪拌した。このようにして得られた溶液2mlをシリカ(silica)(70−230メッシュ、アクティビティーレベルI)にてろ過し、ガスクロマトグラフィーで分析した。詳細な反応条件、転化率、エナンチオ選択率を表4に示す。
【0110】
【表4】

【0111】
[実施例49−51]
1−フェニルビニルアセテート(1-phenylvinyl acetate)のエナンチオ選択性水素付加反応。
実施例49−51は、1−フェニルビニルアセテート(1-phenylvinyl acetate)基質の水素付加により、1−フェニルエタノールアセテート(1-phenylethanol acetate)が生成することを示している。2mMの配位子溶液0.25mlを[Rh(cod)2]BF4の2mM溶液0.25mlと混合した。上記基質の0.1M溶液1.0mlとジクロロメタン(dichloromethane)2.0mlを加えた後、この混合液を60バールの水素圧にて20時間攪拌した。このようにして得られた溶液2mlをシリカ(silica)(70−230メッシュ、アクティビティーレベルI)にてろ過し、ガスクロマトグラフィーで分析した。詳細な反応条件、転化率、エナンチオ選択率を表5に示す。
【0112】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式IまたはIIのキラル化合物。
【化1】

ここで、L1、L、L、L、L1´、L2´、L3´、L4´、L及びLはそれぞれ同一または相違し、式IのL1、L、L及びLのうちの少なくとも1つまたは式IIのL1´、L2´、L3´、L4´、L及びLのうちの少なくとも1つはキラルラジカルである。L1及びL、L及びL、L1´及びL2´、L3´及びL4´並びにL及びLは相互に結合していてもよい。
1、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y2´、Y3´、Y4´、Y5´、Y6´、Y、Y及びYは同一または相違し、それぞれO、SまたはNR´基である。
´は、水素、置換されてもよいC1〜C6アルキルまたは置換されてもよいアリールである。置換基は、F、Cl、Br、I、OH、NO2、CN、カルボキシル、カルボニル、スルホニル、シリル、CF3並びにRa及びRbをR1と定義してもよいNRabの群から選択される。
1及びRはそれぞれ、C〜C22アルキレンであり、好ましくは、F、Cl、Br、I、OH、NO2、CN、CF3、NH2、スルホニル、シリル、モノ若しくはジ(C1〜C6)アルキルアミノ、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、カルボキシルまたはカルボニルのような置換基を有してもよいエチレン、n-プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、イソブチレン、セカンダリーブチレン、フェニレン及びジフェニレンから選択される化合物である。
m及びm´は、それぞれ1〜1000の間である。ただし、L及びLのうちの一つが酸素(O)、他方がN(CH2CH3)であり、L11及びLのグループ並びにL及びLのグループがそれぞれお互いにビノールラジカルを形成し、mが1のとき、R1はエチレンではない。
そして、L及びLがおのおの酸素(O)であり、L11及びLのグループ並びにL及びLのグループがそれぞれお互いにビノールラジカルを形成するとき、mは4または5ではない。
式Iの化合物のY-[R1]m部が-N(CH3)-C24-N(CH3)、-N(CH(CH32)-C-N(CH(CH32)または-N(CHPhCH3)-C-N(CHPhCH3)のとき、L11及びLのグループ並びにL及びLのグループはそれぞれお互いにビノールラジカルを形成しない。
【請求項2】
前記R1及びR6´のグループが、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドから誘導されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記L1及びL、L及びL、L1´及びL2´、L3´及びL4´並びにL及びLが、それぞれ架橋していることを特徴とする請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
前記Y1、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y2´、Y3´、Y4´、Y5´、Y6´、Y、Y及びYが、それぞれ酸素または硫黄であることを特徴とする、請求項1ないし3の何れか1項に記載の化合物。
【請求項5】
前記架橋している配位子が、下式からなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の化合物。
【化2】




【請求項6】
下記の一般式IVまたはVの化合物が主成分として存在し、該化合物を下記の一般式IIIの化合物と反応させることを特徴とする、下記の前記一般式IまたはIIの化合物の製造方法。
【化3】


ここで、L1、L、L、L、L1´、L2´、L3´、L4´、L、L、Y1、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y2´、Y3´、Y4´、Y5´、Y6´、Y、Y、Y、R1、R、m及びm´はそれぞれ請求項1〜5で定義したものである。
【化4】

ここで、Lg1及びLgは同一または相違し、それぞれL1-Y1、L-Y、L-Y、L-Y、L1´-Y1´、L2´-Y´、L3´-Y´、L4´-Y´、L-Y及びL-Yからなる群から選択されたグループである。
【化5】

【請求項7】
下記の一般式VIまたはVIIの化合物を式Lg1またはLgの配位子と反応させることを特徴とする、下記の前記一般式IまたはIIの化合物の製造方法。
【化6】


ここで、L1、L、L、L、L1´、L2´、L3´、L4´、L、L、Y1、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y2´、Y3´、Y4´、Y5´、Y6´、Y、Y、Y、R1、R、m及びm´はそれぞれ請求項1〜6で定義したものである。
【化7】

【請求項8】
前記一般式I及び/またはIIのキラル化合物の遷移金属錯体を含んだ触媒。
【化8】


ここで、L1、L、L、L、L1´、L2´、L3´、L4´、L及びLはそれぞれ同一または相違し、式IのL1、L、L及びLのうちの少なくとも1つまたは式IIのL1´、L2´、L3´、L4´、L及びLのうちの少なくとも1つはキラルラジカルである。L1及びL、L及びL、L1´及びL2´、L3´及びL4´並びにL及びLは相互に結合していてもよい。
1、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y2´、Y3´、Y4´、Y5´、Y6´、Y、Y及びYは同一または相違し、それぞれO、SまたはNR´基である。
´は、水素、置換されてもよいC1〜C6アルキルまたは置換されてもよいアリールである。置換基は、例えば、F、Cl、Br、I、OH、NO2、CN、カルボキシル、カルボニル、スルホニル、シリル、CF3、Ra及びRbをR1と定義してもよいNRabの群から選択される。
1及びRはそれぞれ、C〜C22アルキレンであり、好ましくは、F、Cl、Br、I、OH、NO2、CN、CF3、NH2、スルホニル、シリル、モノ若しくはジ(C1〜C6)アルキルアミノ、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、カルボキシルまたはカルボニルのような置換基を有してもよいエチレン、n-プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、イソブチレン、セカンダリーブチレン、フェニレン及びジフェニレンから選択される化合物である。
m及びm´は、それぞれ1〜1000の間である。
【請求項9】
遷移金属塩を公知の方法で前記式I及び/またはIIの化合物と反応させることにより、前記一般式Ia及び/またはIIaのキラル化合物の遷移金属錯体を含んだ遷移金属触媒の製造方法。
【請求項10】
前記遷移金属塩が、周期律表のVIII族及びIb族の遷移金属から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
プロキラルオレフィン、ケトンまたはケチミンの不斉遷移金属−触媒水素付加、ヒドロホウ素化、シアン化水素化、1,4付加、ヒドロホルミル化、ヒドロシリル化、ヒドロビニル化及びヘック反応の方法において、前記触媒が下記の式Ia及び/またはIIaのキラル配位子を有することを特徴とする方法。
【化9】



ここで、L1、L、L、L、L1´、L2´、L3´、L4´、L、Y1、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y2´、Y3´、Y4´、Y5´、Y6´、Y、Y、Y、R1、R、m及びm´はそれぞれ請求項8で定義したものである。
【請求項12】
前記触媒が、MXnで表わされる錯体であって、該XがBF4、BAr4(Arはフェニル、ベンジルまたは3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)、SbF6及びPF6の群から選択される陰イオンであることを特徴とする、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
オレフィン、ケトンまたはケチミンから選択された前記プロキラル前駆体が、遷移金属触媒の存在下、水素付加、ヒドロホウ素化、シアン化水素化、1,4付加、ヒドロホルミル化、ヒドロシリル化、ヒドロビニル化及びヘック反応を受けることによるキラル化合物の製造方法であって、前記遷移金属触媒が前記一般式I及び/またはIIの化合物から選択される配位子を有することを特徴とする、キラル化合物の製造方法。




【公表番号】特表2007−512245(P2007−512245A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538651(P2006−538651)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【国際出願番号】PCT/DE2004/002493
【国際公開番号】WO2005/047299
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(591091515)シュトゥディエンゲゼルシャフト・コーレ・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (18)
【氏名又は名称原語表記】STUDIENGESELLSCHAFT KOHLE MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】