説明

キートップ板

【課題】厚みの薄型化が図れ、表面を容易に平面状にすることができ、押圧感触を適度に硬くて良好な押圧感触とすることができ、合成樹脂フイルム等からなる複数の部材間の積層接着を精度良く容易に行うことができるキートップ板を提供する
【解決手段】スイッチ接点431を押圧するキートップ310を複数設置してなるキートップ板1−1である。キートップ板1−1は、合成樹脂フイルム211からなる表面側板部材210と、合成樹脂フイルム231からなる裏面側板部材230と、ゴム状弾性板250とを、この順番に第1,第2接着層270,290を介して一体に貼り合わせて構成される。第1接着層270を光硬化性樹脂に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含んだ接着層で構成し、第2接着層290を光硬化性樹脂からなる接着層で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ接点を押圧するキートップを複数設置してなるキートップ板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば1枚の可撓性を有する合成樹脂フイルム中に複数の成形樹脂製のキートップ本体を取り付けることで複数のキートップを設けてなるキートップ板がある(例えば特許文献1の図3参照)。しかしながらこの種のキートップ板においては、厚みの薄型化が図れず、また合成樹脂フイルムにキートップ本体を取り付ける等、その製造工程が煩雑であって低コスト化が図れず、またキートップ板の表面を平面状にしたいという要望にも答えられない。
【0003】
上記問題を解決するため、例えば特許文献1の図7や図8に示すように、キートップ板(キートップ板40,銘板98)を1枚の可撓性を有する合成樹脂フイルムで構成し、その下側に複数のスイッチ接点を配置し、キートップ板の上面を押圧してこれを撓めることで各スイッチ接点をオンオフするスイッチ機構もある。しかしながらこのキートップ板は1枚の合成樹脂フイルムで構成されているので、これを押圧した際、キートップ板の押圧感触が軟らかすぎ、良好な押圧感触が得られない等の問題があった。
【0004】
このため例えば、可撓性を有する合成樹脂フイルムを複数枚接着材によって積層一体化してキートップ板とする方法も考えられる。このように構成すれば、キートップ板を押圧した際の押圧感触が合成樹脂フイルムを積層した分、適度に硬くなる。しかしながら2枚の合成樹脂フイルムを積層した押圧感触以上の押圧感触を得たい場合があるが、そのような要望には答えられなかった。また複数の合成樹脂フイルムを積層接着するのに感圧型の接着層を用いた場合は、両合成樹脂フイルムを接着する際に接着位置がずれるなどによって両板を精度良く接着できなくなる恐れがあった(感圧型の接着層は一度触れると引き剥がすのが困難)。さらにキートップ板の押圧感触を硬くするため、前記積層接着した合成樹脂フイルムにさらに別の部材を感圧型の接着層によって接着するような場合は、積層する接着層が増加するので、さらにそれら各部材間の正確な積層・接着が困難となっていた。これに対して前記接着層として光硬化性の樹脂材を用いれば、合成樹脂フイルムにこれを塗布しただけではその接着性が小さいので、この接着層に合成樹脂フイルムが一度触れても容易に剥がすことができ、従って合成樹脂フイルムの精度の良い積層・接着を行うことができる。しかしながら例えば2枚の合成樹脂フイルムの他にさらに別の部材を積層するような場合は、まず2枚の合成樹脂フイルムを接着層を介して積層した後に光を照射して硬化した後、再び別の部材を接着層を介して積層した後に光を照射して硬化させるなど、その製造が煩雑になるという問題があった。
【特許文献1】特開2000−188036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、厚みの薄型化が図れ、その表面を容易に平面状にすることができ、押圧感触を適度に硬くて良好な押圧感触とすることができ、さらに合成樹脂フイルム等からなる複数の部材間の積層接着を精度良く容易に行うことができるキートップ板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1に記載の発明は、スイッチ接点を押圧するキートップを複数設置してなるキートップ板において、前記キートップ板は、合成樹脂フイルムからなる表面側板部材と、合成樹脂フイルムからなる裏面側板部材と、ゴム状弾性板とを、この順番に第1,第2接着層を介して一体に貼り合わせて構成され、前記第1接着層を光硬化性樹脂に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含んだ接着層で構成し、前記第2接着層を光硬化性樹脂からなる接着層で構成したことを特徴とするキートップ板にある。なお光は紫外線や赤外線を含む概念である(以下においても同様)。
【0007】
本願請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のキートップ板の製造方法において、前記表面側板部材と裏面側板部材とゴム状弾性板とを用意し、表面側板部材と裏面側板部材とを、光硬化性樹脂に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含ませることで光を照射する前に微粘着性を有する第1接着層によって接着する第1接着工程と、前記裏面側板部材とゴム状弾性板とを、光硬化性樹脂からなる第2接着層によって接着する第2接着工程と、前記第1,第2接着層に同時に光を照射することでこれら第1,第2接着層を硬化する接着層硬化工程と、を有することを特徴とするキートップ板の製造方法にある。
【0008】
本願請求項3に記載の発明は、前記表面側板部材と裏面側板部材の内の少なくとも一方を、ポリエチレンテレフタレートフイルムで構成したことを特徴とする請求項2に記載のキートップ板の製造方法にある。
【0009】
本願請求項4に記載の発明は、前記第1接着工程は、前記裏面側板部材に前記第1接着層を形成した後に、この裏面側板部材と第1接着層とに前記キートップとなる部分の周囲を切り欠くスリットを形成し、その後第1接着層に前記表面側板部材を接着する接着工程であることを特徴とする請求項2又は3に記載のキートップ板の製造方法にある。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、合成樹脂フイルム製の表面側板部材と裏面側板部材とゴム状弾性板とを貼り合わせてキートップ板としたので、その厚みを薄く構成でき、また容易にその表面を平面状にすることができる。また表面側板部材と裏面側板部材とゴム状弾性板とからなるキートップなので、その硬度が増して押圧感触を適度に硬くすることができて良好な押圧感触を得ることができる。
また第1接着層を光硬化性樹脂に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含んだ接着層で構成し、第2接着層を光硬化性樹脂からなる接着層で構成したので、このキートップ板を製造する際に、積層する表面側板部材と裏面側板部材とゴム状弾性板とを加熱・加圧することなく、しかも精度良く、強い強度の接着力によってこれら各部材を一体化できる。特に第1接着層を光硬化性樹脂に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含んだ接着層で構成したので、この接着層には微粘着性があり、従って表面側板部材と裏面側板部材との接着時に貼り直し等ができて両者の接着精度を容易に高めることができ、また予め表面側板部材と裏面側板部材とを接着しておいてそのまま半完成品として保管しておくこともでき、また表面側板部材と裏面側板部材とが接着後にずれることがないのでこれらをゴム状弾性板に精度良く容易に接着することができる。またゴム状弾性板との接着には光硬化性樹脂からなる第2接着層を用いるので、積層の際の粘着性は低く、容易且つ精度良くゴム状弾性板を積層でき、その後光を照射することで第1,第2接着層を容易且つ強固に硬化させて各部材を一体化することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、表面側板部材と裏面側板部材とを、光硬化性樹脂に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含ませることで光を照射する前に微粘着性を有する第1接着層によって接着し、次に裏面側板部材とゴム状弾性板とを光硬化性樹脂からなる第2接着層によって接着し、次に第1,第2接着層に同時に光を照射することで第1,第2接着層を硬化することとしたので、積層する表面側板部材と裏面側板部材とゴム状弾性板とを加熱・加圧することなく、しかも精度良く、強い強度の接着力によってこれら各部材を一体化できる。特に第1接着層を光硬化性樹脂に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含んだ接着層で構成したので、この接着層には微粘着性があり、従って表面側板部材と裏面側板部材との接着時に貼り直し等ができて両者の接着精度を容易に高めることができ、また予め表面側板部材と裏面側板部材とを接着しておいてそのまま半完成品として保管しておくこともでき、また表面側板部材と裏面側板部材とが接着後にずれることがないのでこれらをゴム状弾性板に精度良く容易に接着することができる。またゴム状弾性板との接着には光硬化性樹脂からなる第2接着層を用いるので、積層の際の粘着性は低く、容易且つ精度良くゴム状弾性板を積層でき、その後光を照射することで第1,第2接着層を容易且つ強固に硬化させて各部材を一体化することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、第1,第2接着層の硬化時に加熱・加圧する必要がないので、表面側板部材や裏面側板部材として熱に弱いが安価なポリエチレンテレフタレートフイルムを用いることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、裏面側板部材に第1接着層を形成した後にスリットを形成したので、予めスリットを形成した裏面側板部材に第1接着層を後から印刷等によって形成する場合に比べ、第1接着層がスリットを形成した部分付近で不均一な厚みとならず、表面側板部材との接着を確実に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の1実施形態にかかるキートップ板1−1の分解斜視図である。同図に示すキートップ板1−1は、合成樹脂フイルム211からなる表面側板部材210と、合成樹脂フイルム231からなる裏面側板部材230と、ゴム状弾性板250とを、この順番で第1,第2接着層270,290を介して一体に貼り合わせて構成され、さらに前記裏面側板部材230に下記するキートップ310の周囲を囲むスリット233を設けて構成されている。以下各構成部品について説明する。
【0015】
表面側板部材210は可撓性を有する合成樹脂フイルム211を矩形状に形成し、その下面(裏面側板部材230に対向する側の面)に所望の印刷層213を形成して構成されている。この実施形態においては合成樹脂フイルム211として熱可塑性のポリエチレンテレフタレート(PET)フイルムを用いている。合成樹脂フイルム211は透明であってその厚みは50μm程度である。なお合成樹脂フイルム211の材質としてはPETフイルムに限らず、可撓性のある他の各種合成樹脂フイルム(熱可塑性でも熱硬化性でも光硬化性でも良い)であれば良く、例えばポリフェニレンスルフイド(PPS)フイルム、ポリイミド(PI)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フイルム、ポリエーテルイミド(PEI)フイルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フイルム、ポリエーテルケトン(PEK)フイルム、ポリカーボネート(PC)フイルム、ポリブチレンナフタレート(PBN)フイルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フイルム等を用いても良い。
【0016】
印刷層213は印刷(スクリーン印刷等)やその他の各種手段(蒸着等)によって形成されている。図1では印刷層213は各キートップ310(図2(b)参照)となる部分のみに形成されているが、例えば遮光性を有する印刷層を合成樹脂フイルム211の下面全体に形成して所定の位置(例えばキートップ310となる部分)に抜き文字状の透光部を設けてもよい。またその透光部を覆うように透光性を有する別の印刷層を積層しても良い。
【0017】
裏面側板部材230は可撓性を有する合成樹脂フイルム231を矩形状(合成樹脂フイルム211と同一外形寸法)に形成し、各キートップ310となる部分の周囲を囲む切り欠きからなるスリット233を設けて構成されている。この実施形態においては合成樹脂フイルム231として、熱可塑性のPETフイルムを用いている。合成樹脂フイルム231は透明であってその厚みは50μm程度である。なお合成樹脂フイルム231の材質は上記合成樹脂フイルム211と同様に、PETフイルムに限らず、可撓性のある他の各種合成樹脂フイルム(熱可塑性でも熱硬化性でも光硬化性でも良い)であれば良く、例えばPPSフイルム、PIフィルム、PENフイルム、PEIフイルム、PEEKフイルム、PEKフイルム、PCフイルム、PBNフイルム、PBTフイルム等を用いても良い。
【0018】
スリット233は各キートップ310となる部分の周囲を囲むように略矩形のC字状に切り欠いて形成され、裏面側板部材230を上下に貫通するように形成されている。裏面側板部材230のスリット233によって囲まれる部分は、キートップ本体部235となっている。キートップ本体部235はその周囲をスリット233によって囲まれることで周囲の部分と連結部(ヒンジ部)237を介して連結されている。
【0019】
ゴム状弾性板250は透光性を有する材料、例えばシリコーンゴム(例えば厚み200μm)を前記表面側板部材210及び裏面側板部材230と略同一外形寸法の略矩形の板状に形成して構成されており、表面側板部材210及び裏面側板部材230を取り付ける側の面の反対側の面の下記する各キートップ310に対向する位置にそれぞれ突起状の押圧部251を設けている。なおゴム状弾性板250はシリコーンゴムに限らず、ゴム状弾性を有する他の各種材質であっても良く、例えばイソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム等の熱硬化性エラストマーや、スチレン系、エステル系、ウレタン系、オレフィン系、アミド系、ブタジエン系、エチレン−酢酸ビニル系、フッ素ゴム系、イソプレン系、塩素化ポリエチレン系等の熱可塑性エラストマー等を用いることができる。これらのゴム状弾性部材の内、シリコーンゴムや、スチレン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマーは、反発弾性が優れ、高い耐久性を有するので好ましい。
【0020】
裏面側板部材230の上面(表面側板部材210に対向する側の面)には、透明な第1接着層270が塗布によって設けられている。第1接着層270は少なくとも光硬化性樹脂(この実施形態では紫外線硬化性樹脂)を含む接着層であり、この接着層は、比較的粘度が高く(即ち固体状に近く)、同時に弱い粘着性(接着性)を有している。即ちこの接着層を構成する樹脂材は、少なくとも光硬化性樹脂に、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含んだものに、溶剤を混合した液状の樹脂材である。裏面側板部材230に第1接着層270を形成するには、まずスリット233を設けていない平板状の裏面側板部材230の一方の面全体に第1接着層270をスクリーン印刷等によって塗布して形成する。次にこの裏面側板部材230を例えば70〜80℃で加熱して溶剤を揮発させ、これによって樹脂材中の熱硬化性又は熱可塑性の樹脂成分を硬化させて樹脂材全体を半硬化状態(軟らかすぎない状態)、即ち比較的粘度が高く固体に近い状態とし、同時に前記粘性によって弱い粘着性(接着性)を有するようにする。そして裏面側板部材230と第1接着層270とを同時にプレス加工することによってスリット233を形成する。これによって図1に示す第1接着層270が形成されたスリット233付きの裏面側板部材230が完成する。樹脂材に混合する光硬化性樹脂としては、例えば光硬化性のアクリレート樹脂等を用いる。アクリレート樹脂には、エステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、アクリル樹脂アクリレート、不飽和ポリエステルアクリレート等がある。また前記樹脂材に混合する熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂としては、例えばポリエステル樹脂を用いる。ポリエステル樹脂の中には熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とがある。なお光硬化性の樹脂及び熱硬化性の樹脂及び熱可塑性の樹脂として、他の各種材質のものを用いても良い。また紫外線硬化性以外の各種光硬化性樹脂材を用いても良い。
【0021】
裏面側板部材230とゴム状弾性板250間を接着する第2接着層290は透明であり、溶剤を含まない光硬化性樹脂(この実施形態では紫外線硬化性樹脂)からなる接着剤によって構成されている。この第2接着層290は、各キートップ310となる部分(裏面側板部材230のキートップ本体部235に対向する部分)にスリット233と同一外形寸法の開口291を設けている。
【0022】
次にキートップ板1−1の製造方法を説明する。図2はキートップ板1−1の製造方法説明図である。キートップ板1−1を製造するには、図2(a)に示すように、予め表面側板部材210の下面に印刷層213をスクリーン印刷等によって形成しておく。また裏面側板部材230の上面全体に上述のようにして第1接着層270を塗布しておく。そして裏面側板部材230と表面側板部材210とを第1接着層270を介して積層する。このとき第1接着層270は微粘着性を有するので、表面側板部材210と裏面側板部材230は弱く接着し、ずれが生じ難い。次に裏面側板部材230の下面に第2接着層290を塗布し、その下面側にゴム状弾性板250を当接する。なお第2接着層290を塗布するのは、ゴム状弾性板250側であっても良い。そして透光性を有するゴム状弾性板250側から光(この実施形態では紫外線)を照射すれば、第2接着層290と、透明な裏面側板部材230を通して第1接着層270とに光が照射され、第1,第2接着層270,290が同時に硬化する。これによって図2(b)に示すように、表面側板部材210と裏面側板部材230とゴム状弾性板250とが一体化され、本実施形態にかかるキートップ板1−1が完成する。
【0023】
上記キートップ板1−1において、図2(b)に示すように、裏面側板部材230の各キートップ本体部235と、表面側板部材210及びゴム状弾性板250の各キートップ本体部235に対向する積層部分とによって各キートップ310が構成されている。即ちキートップ板1−1は、下記するスイッチ接点431を押圧するキートップ310を複数設置しており、合成樹脂フイルム211からなる表面側板部材210と、合成樹脂フイルム231からなる裏面側板部材230と、ゴム状弾性板250とを、この順番で第1,第2接着層270,290を介して一体に貼り合わせて構成され、第1接着層270を光硬化性樹脂に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含んだ接着層で構成し、第2接着層290を光硬化性樹脂からなる接着層で構成している。
【0024】
図3は上記キートップ板1−1を用いて組み立てられる携帯機器(この実施形態では携帯電話機)400の要部(キー入力部)の概略断面図である。この携帯機器400を組み立てるには、まず図3に示すケース410の収納部411内に各キートップ310によって押圧操作されるスイッチ接点431を設けたスイッチ基板430及びその他の図示しない各種部品を収納する。次に前記キートップ板1−1をケース410上に設置し、ケース410の外周を囲む側壁上面413に接着層415によってキートップ板1−1の外周下面を接着する。これによってキートップ板1−1の各押圧部251はスイッチ基板430の各スイッチ接点431上に位置する。各スイッチ接点431はその上部に設置した反転板431aを押圧してこれを反転することでそのスイッチ接点431がオンする構造となっている。従って何れかのキートップ310を表面側板部材210の上から押圧すれば、そのキートップ310が下降してその押圧部251が反転板431aを反転し、そのスイッチ接点431がオンする。
【0025】
ところで本実施形態によれば、合成樹脂フイルム211製の表面側板部材210と合成樹脂フイルム231製の裏面側板部材230とゴム状弾性板250とを貼り合わせてキートップ板1−1としたので、その厚みを薄く構成でき、また容易にその表面を平面状にすることができる。また表面側板部材210と裏面側板部材230とゴム状弾性板250とからなるキートップ310なので、その硬度が増して押圧感触を適度に硬くすることができて良好な押圧感触を得ることができる。
【0026】
またこの実施形態によれば、第1接着層270を光硬化性樹脂に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含んだ接着層で構成し、第2接着層290を光硬化性樹脂からなる接着層で構成したので、このキートップ板1−1を製造する際に、積層する表面側板部材210と裏面側板部材230とゴム状弾性板250とを加熱・加圧することなく、しかも精度良く、強い強度の接着力によってこれら各部材を一体化できる。なお一般の加熱の必要ない常温感圧接着材の場合、その接着力が非常に弱い。一方高温・高圧プレス型感圧接着材の場合、接着強度は強いが、高温に弱い材質の合成樹脂フイルムからなる表面側板部材210や裏面側板部材230には使用できない。これに対してこの実施形態によれば、上述のように第1,第2接着層270,290の硬化時に加熱・加圧する必要がないので、表面側板部材210や裏面側板部材230として熱に弱いが安価なPETフイルム等の合成樹脂フイルムを用いることができる。
【0027】
特に第1接着層270を光硬化性樹脂に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含んだ接着層で構成したので、この接着層には微粘着性があり、従って表面側板部材210と裏面側板部材230との接着時に貼り直し等ができて両者の接着精度を容易に高めることができ、また予め表面側板部材210と裏面側板部材230とを第1接着層270によって接着(光は照射しない)しておいてそのまま半完成品として保管しておくこともでき、また表面側板部材210と裏面側板部材230とが接着後にずれることがないのでこれらを容易にゴム状弾性板250に精度良く接着することができる。またゴム状弾性板250との接着には光硬化性樹脂からなる第2接着層290を用いるので、積層の際の粘着性は低く、容易且つ精度良くゴム状弾性板250に積層でき、その後光を照射することで第1,第2接着層270,290を容易且つ強固に硬化させて各部材を一体化することができる。
【0028】
また裏面側板部材230にキートップ310の周囲を囲むスリット233を設けたので、表面側板部材210と裏面側板部材230とゴム状弾性板250とを貼り合わせることでその柔軟性が小さくなったキートップ板1−1の各キートップ310を容易に押圧することができ、同時にスリット233によって区画された表面側板部材210と裏面側板部材230とゴム状弾性板250とからなるキートップ310の硬度が増して押圧感触を適度に硬くできて良好な押圧感触が得られる。なお第1接着層270を裏面側板部材230に形成した後にスリット233を形成したので、予めスリット233を形成した裏面側板部材230に第1接着層270を後から印刷等によって形成する場合に比べ、第1接着層270がスリット233を形成した部分付近で不均一な厚みとならず、表面側板部材210との接着を確実に行うことが可能となる。即ち一般的には裏面側板部材230にスリット233を形成した後に第1接着層270を塗布するが、そうするとスリット233周囲の部分に塗布される第1接着層270の厚みにばらつきが生じ易くになり、表面側板部材210との接着強度が不均一になり、最悪の場合、剥がれが生じる恐れがある。これに対して本実施形態によれば、予め均一に第1接着層270を塗布できるので、このような問題は生じない。
【0029】
図4,図5は本発明の参考例にかかるキートップ板1−2の分解斜視図であり、図4は上側から見た分解斜視図、図5は下側から見た分解斜視図である。両図に示すようにキートップ板1−2は、合成樹脂フイルムからなる表面側板部材10と、合成樹脂フイルムからなる裏面側板部材30とを、接着層50を介して一体に貼り合わせて構成されている。
【0030】
表面側板部材10は可撓性を有する合成樹脂フイルム11を矩形状に形成し、その下面(裏面側板部材30に対向する側の面)に所望の印刷層13を形成して構成されている。この参考例においては合成樹脂フイルム11としてPETフイルムを用いている。合成樹脂フイルム11は透明であってその厚みは50μm程度である。なお合成樹脂フイルム11の材質としてはPETフイルムに限らず、可撓性のある他の各種合成樹脂フイルム(熱可塑性でも熱硬化性でも光硬化性でも良い)であれば良く、例えばPPSフイルム、PIフィルム、PENフイルム、PEIフイルム、PEEKフイルム、PEKフイルム、PCフイルム、PBNフイルム、PBTフイルム等を用いても良い。
【0031】
印刷層13は印刷(スクリーン印刷等)やその他の各種手段(蒸着等)によって形成されている。図4,5では印刷層13は各キートップ40(図7参照)となる部分のみに形成されているが、例えば遮光性を有する印刷層を合成樹脂フイルム11の下面全体に形成して所定の位置(例えばキートップ40となる部分)に抜き文字状の透光部を設けてもよい。またその透光部を覆うように透光性を有する別の印刷層を積層しても良い。
【0032】
裏面側板部材30は可撓性を有する合成樹脂フイルム31を矩形状(合成樹脂フイルム11と同一外形寸法)に形成し、各キートップ40となる部分の周囲を囲む切り欠きからなるスリット33を設けて構成されている。この参考例においては合成樹脂フイルム31としてPETフイルムを用いている。合成樹脂フイルム31は透明であってその厚みは250μm程度である。つまり裏面側板部材30の厚みは表面側板部材10の厚みよりも厚く形成している。なお合成樹脂フイルム31の材質は上記合成樹脂フイルム11と同様に、PETフイルムに限らず、可撓性のある他の各種合成樹脂フイルム(熱可塑性でも熱硬化性でも光硬化性でも良い)であれば良く、例えばPPSフイルム、PIフィルム、PENフイルム、PEIフイルム、PEEKフイルム、PEKフイルム、PCフイルム、PBNフイルム、PBTフイルム等を用いても良い。
【0033】
スリット33は各キートップ40となる部分の周囲を囲むように略矩形のC字状の切り欠きによって形成されており、裏面側板部材30を上下に貫通するように形成されている。裏面側板部材30のスリット33によって囲まれる部分はキートップ本体部35となっている。キートップ本体部35はその周囲をスリット33によって囲むことでスリット33の外側の部分と連結部(ヒンジ部)37を介して連結されている。キートップ本体部35の下面(表面側板部材10に対向する面の反対側の面)の略中央には小突起状に突出する押圧部39が設けられている。押圧部39は光硬化型樹脂(この実施形態では紫外線硬化型樹脂)によって形成されている。
【0034】
裏面側板部材30の上面(表面側板部材10に対向する側の面)には、透明な接着層50が塗布によって設けられている。接着層50は光硬化型(この実施形態では紫外線硬化型)の接着剤によって形成されている。
【0035】
次にこのキートップ板1−2の製造方法を説明する。図6はキートップ板1−2の製造方法説明図である。キートップ板1−2を製造するには、図6(a)に示すように、予め表面側板部材10の下面に印刷層13をスクリーン印刷等によって形成しておく。一方裏面側板部材30の各キートップ本体部35の下面に光硬化型の樹脂を印刷やポッティング等によって塗布し、これに光(紫外線)を照射して硬化させることにより小突起状の押圧部39を形成する。
【0036】
そして裏面側板部材30の上面全体に接着層50を塗布する。次に図6(b)に示すように裏面側板部材30の上面に接着層50を介して表面側板部材10を積層する。そして透明な裏面側板部材30側から光(紫外線)を照射し、これによって接着層50を硬化すれば、表面側板部材10と裏面側板部材30とが一体化され、本参考例にかかるキートップ板1−2が完成する。
【0037】
上記キートップ板1−2において、図6(b)に示すように、裏面側板部材30の各キートップ本体部35と、表面側板部材10のキートップ本体部35に対向する積層接着部分とによって各キートップ40が構成されている。即ちキートップ板1−2は、下記するスイッチ接点131を押圧するキートップ40を複数設置しており、合成樹脂フイルム11からなる表面側板部材10と、合成樹脂フイルム31からなる裏面側板部材30とを、接着層50を介して一体に貼り合わせて構成され、裏面側板部材30にキートップ40の周囲を切り欠くスリット33を設けて構成されている。またこの実施形態では裏面側板部材30の厚みを表面側板部材10の厚みよりも厚く構成している。
【0038】
図7は上記キートップ板1−2を用いて組み立てられる携帯機器(この実施形態では携帯電話機)100の要部(キー入力部)の概略断面図である。この携帯機器100を組み立てるには、まず図7に示すケース110の収納部111内に各キートップ40によって押圧操作されるスイッチ接点131を設けたスイッチ基板130及びその他の図示しない各種部品を収納する。次に前記キートップ板1−2をケース110上に設置し、ケース110の外周を囲む側壁上面113に接着層115によってキートップ板1−2の外周下面を接着する。これによってキートップ板1−2の各押圧部39はスイッチ基板130の各スイッチ接点131上に位置する。各スイッチ接点131はその上部に設置した反転板131aを押圧してこれを反転することでそのスイッチ接点131がオンする構造となっている。従って何れかのキートップ40を表面側板部材10の上から押圧すれば、そのキートップ40が下降してその押圧部39が反転板131aを反転し、そのスイッチ接点131がオンする。なおスイッチ基板130上に発光素子を設置しておいてこれを発光すれば、キートップ板1−2をその下面側から照光することができる(この点、上記本願実施形態においても同様である)。
【0039】
ところで本参考例によれば、合成樹脂フイルム11製の表面側板部材10と合成樹脂フイルム31製の裏面側板部材30とを接着層50を介して貼り合わせてキートップ板1−2としているので、その厚みを薄く構成でき、また合成樹脂フイルム11,31の貼り合わせなので成形金型等が不要で製造が容易で低コスト化が図れる。また容易にその表面を平面状にすることができる。さらに裏面側板部材30にスリット33を設けたので、表面側板部材10と裏面側板部材30を貼り合わせることでその柔軟性が小さくなったキートップ板1−2の各キートップ40の押圧を容易に行うことができ、同時にスリット33によって区画された表面側板部材10と裏面側板部材30とからなるキートップ40の硬度を適度に硬くできて良好な押圧感触を得ることができる。またキートップ板1−2は、合成樹脂フイルム製の表面側板部材10に印刷等によって容易に多色印刷を行うことができ、その装飾を良好なものとすることができる(前記キートップ板1−1においても同様)。またこの参考例の場合、裏面側板部材30の厚みを表面側板部材10の厚みよりも厚くすることでキートップ40の硬度を容易に増加・調整することができ、キートップ40の押圧感触をさらに硬くできて良好なものとすることができる(前記キートップ板1−1においても裏面側板部材230の厚みの方を表面側板部材210の厚みより厚くしても良い)。
【0040】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えばスイッチ接点は反転板を設置しない構造のスイッチ接点でも良い。またスリットの形状も、各種変形が可能であり、コ字型やその他の各種形状であっても良い。また印刷層213を形成するのは合成樹脂フイルム211の下面に限らず、合成樹脂フイルム211の上面でも良く、また合成樹脂フイルム231の上面又は下面でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】キートップ板1−1の分解斜視図である。
【図2】キートップ板1−1の製造方法説明図である。
【図3】携帯機器400の要部概略断面図である。
【図4】キートップ板1−2を上側から見た分解斜視図である。
【図5】キートップ板1−2を下側から見た分解斜視図である。
【図6】キートップ板1−2の製造方法説明図である。
【図7】携帯機器100の要部概略断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1−1 キートップ板
210 表面側板部材
211 合成樹脂フイルム
213 印刷層
230 裏面側板部材
231 合成樹脂フイルム
233 スリット
235 キートップ本体部
250 ゴム状弾性板
251 押圧部
270 第1接着層
290 第2接着層
310 キートップ
431 スイッチ接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ接点を押圧するキートップを複数設置してなるキートップ板において、
前記キートップ板は、合成樹脂フイルムからなる表面側板部材と、合成樹脂フイルムからなる裏面側板部材と、ゴム状弾性板とを、この順番に第1,第2接着層を介して一体に貼り合わせて構成され、
前記第1接着層を光硬化性樹脂に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含んだ接着層で構成し、前記第2接着層を光硬化性樹脂からなる接着層で構成したことを特徴とするキートップ板。
【請求項2】
請求項1に記載のキートップ板の製造方法において、
前記表面側板部材と裏面側板部材とゴム状弾性板とを用意し、
表面側板部材と裏面側板部材とを、光硬化性樹脂に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含ませることで光を照射する前に微粘着性を有する第1接着層によって接着する第1接着工程と、
前記裏面側板部材とゴム状弾性板とを、光硬化性樹脂からなる第2接着層によって接着する第2接着工程と、
前記第1,第2接着層に同時に光を照射することでこれら第1,第2接着層を硬化する接着層硬化工程と、を有することを特徴とするキートップ板の製造方法。
【請求項3】
前記表面側板部材と裏面側板部材の内の少なくとも一方を、ポリエチレンテレフタレートフイルムで構成したことを特徴とする請求項2に記載のキートップ板の製造方法。
【請求項4】
前記第1接着工程は、前記裏面側板部材に前記第1接着層を形成した後に、この裏面側板部材と第1接着層とに前記キートップとなる部分の周囲を切り欠くスリットを形成し、その後第1接着層に前記表面側板部材を接着する接着工程であることを特徴とする請求項2又は3に記載のキートップ板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−234961(P2008−234961A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71941(P2007−71941)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】