説明

キー操作部の製造方法および携帯電子機器

【課題】円形キーの全周に隣接キーを配置する場合に、円形キーの方向性を正確に位置決めできるキー操作部の製造方法を提案する。
【解決手段】円形キー40を含む複数のキーボタン41を板状のキー貼付治具42に対して配置した後に、複数のキーボタン41とキー基材23を当接して複数のキーボタン41とキー基材23を接合させるキー操作部7の製造方法であって、円形キー40の表面に第一部位45を形成すると共にキー貼付治具42に第一部位45と嵌合する第二部位46を形成し、キー貼付治具42に円形キー40を配置する際に第一部位45と第二部位46とを嵌合させて円形キー40を位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キー操作部の製造方法およびそのキー操作部を備えた携帯電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の携帯電子機器においては、入力部として複数のキーを備える場合が多々ある。このようなキーは、通常、樹脂等の絶縁性材料によって形成されたキーシート部材の一方の面側に配置されたキー部材が、携帯電子機器の筐体に形成された開口部から外部に向けて露出されることによって構成されている。
【0003】
ところで、このような携帯電子機器に備えられるキーにおいて、4方向若しくは8方向に押すことが出来るマルチファンクションキーを搭載するものが一般的になっている。また、マルチファンクションキーは、上下左右の4方向に方向又は機能を示す指標が設けられており、特に丸形のマルチファンクションキーでは、その指標が携帯電子機器筐体に対して正しい方向を示して取り付けられるように、種々の回転防止機構が提案されている。
【0004】
例えば、図7に示すようにキー貼付治具70に、回転防止用の一対の突起71a、71bをそれぞれ立設するとともに丸形のマルチファンクションキー72の対応位置(外周外側)に突部72a、72bが設けられている。
この様に構成されたキーボタン74及びキー基材75は、先ずキー貼付治具70の突起71a、71bにマルチファンクションキー72の突部72a、72bがそれぞれ係合するようにセットするとともに、キー貼付治具70の凹部76にマルチファンクションキー72を含むキーボタン74をセットする。そして、キーボタン74の上面に接着剤を塗布し、その上からキー基材75を載せ、加圧、結合させた後、キー貼付治具70から取り外して、図8に示すようなキー操作部77を形成する。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、別の従来例として、図9、10に示すように円形のマルチファンクションキー90の外周でキー操作部とした際に外部から見えない部分に回転防止用の突起90a、90bを形成し、そのマルチファンクションキー90と隣接する機能キー91、92のキー基材93との接着面側に開口し、キー操作部とした際に外部からは見えない凹部91a、92aを形成する。
この様に構成されたマルチファンクションキー90は、先ず、隣接する機能キー91、92の凹部91a、92aに回転防止用の突起90a、90bを係合させて回転防止を行った後、キー貼付治具94の凹部97にマルチファンクションキー90及びキーボタン95をセットする。そして、キーボタン95、マルチファンクションキー90の上面に接着剤を塗布し、その上からキー基材93を載せ、加圧、結合させた後、キー貼付治具94から取り外して図10に示すようなキー操作部96を形成する。
【0006】
図11は、従来の他の回転防止機構を示す説明図である。図11(a)は、マルチファンクションキー100の外周を略四角形にして直線部分100aを上下左右に形成して廻り止めとしたものである。また、図11(b)は、丸形マルチファンクションキー101の左右両側を切り落として直線部分101aを形成して廻り止めとしたものである。このように周囲に直線部分を設けることにより、筐体ケースやキー貼付治具によって回転を規制するものである。
【特許文献1】特開2004−281331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、今日ではキー操作性を向上する為にキーの範囲を大きくしたり、デザイン性を向上させる為にマルチファンクションキーの周り全周に隣接キーを配置する場合が有り、従来の図7に示すキー貼付治具側に突起を設ける方法では、突起が邪魔となってマルチファンクションキーの周り全周に隣接キーを配置することはできなかった。
【0008】
また、図9に示す様に、隣接する機能キーに凹部を形成する方法では、マルチファンクションキーの周り全周に隣接キーを配置することは可能であるが、図12に示すように隣接キーの肉厚を確保しながらマルチファンクションキーの突起90a、90bを形成しなければならず、その間のクリアランスが少ないと、隣接キーを押圧した際に、マルチファンクションキーも同時に押されてしまい、キー押しフィーリングが悪くなる虞れがあった。また、クリアランスを大きくすると、キー部分の厚さが増して、電子機器筐体全体の厚さが増加してしまった。
【0009】
更に、図13に示すようにキーの操作性を向上させる為に、突起90a、90bと凹部91a、92aとの間にクリアランス98を設けるが、キー貼付治具94にキーを取り付ける際、クリアランスの分だけマルチファンクションキーの取り付け角度が回転してしまい、正確に取り付ける事が困難であった。逆に、クリアランスを小さくすると、キー押圧時に突起90a、90bと凹部91a、92aとが引っ掛かり、異音が発生したり、キーフィーリングが悪化した 。
更に、図11に示す方法では、丸形のマルチファンクションキーを製造できなかった。
【0010】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、マルチファンクションキー等の円形キーの全周に隣接キーを配置する場合に、円形キーの方向性を正確に位置決めできるキー操作部の製造方法を提案することを目的とする。また、位置決めのための部位をキー操作の際の指標として使用できるキー操作部の製造方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るキー操作部の製造方法および携帯電子機器では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
本発明に係るキー操作部の製造方法は、円形キーを含む複数のキーボタンを板状のキー貼付治具に対して配置した後に、前記複数のキーボタンとキー基材を当接して前記複数のキーボタンと前記キー基材を接合させるキー操作部の製造方法であって、前記キー貼付治具に前記円形キーを配置する際に、前記円形キーの表面に形成された第一部位と前記キー貼付治具に形成された第二部位とを嵌合させて前記円形キーを位置決めすることを特徴とする。
【0012】
また、上記第一部位は、凸形又は凹形に形成される構成を採用することができる。
また、前記第一部位は、前記表面のうち外縁側に形成される構成を採用することができる。
また、上記第一部位は、前記表面の中心に対して対称な複数の位置に形成されるという構成を採用することができる。
【0013】
本発明に係る携帯電子機器は、上記キー操作部の製造方法製造されたキー操作部を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、円形キーを含む複数のキーボタンと前記複数のキーが接合されるキー基材とを備えたキー操作部を有する携帯電子機器において、前記円形キーは、前記キー基材との接合面が形成される面とは反対側の面に、キー貼付治具に嵌合される凸形又は凹形の第一部位が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、円形キーの表面に形成された第一部位とキー貼付治具に前記第一部位と嵌合する第二部位を形成し、キー貼付治具に円形キーを配置する際に第一部位と前記第二部位とを嵌合させている。したがって、本発明のキー操作部の製造方法によれば、外周が隣接キーで囲まれた丸形マルチファンクションキーを正確な角度位置に取り付けることができ、携帯電子機器自体の薄型化を図ることが可能となる。また、製造工数を増すことなく、製造することができる。更に、位置決めのための部位をキー操作の際の指標として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のキー操作部の製造方法および携帯電子機器の実施形態について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る携帯電話機Kの正面図である。
携帯電話機Kは、ディスプレイ4やスピーカ5を備える第1筐体1と、複数のキートップ1a〜1e,2a〜2e,3a〜3e,4a〜4eが露出して配置される第2筐体2とがヒンジ部3を介して接続されており、必要に応じて(例えば、待機状態)折り畳める構造となっている。
また、本実施形態の携帯電話機Kは、図1に示すように、キートップ2a〜2e,3a〜3e,4a〜4e同士が隣接して配置されるフレームレスキー構造を採用している。このため、キートップ2a〜2e,3a〜3e,4a〜4e間には、筐体の一部が各キートップ2a〜2e,3a〜3e,4a〜4eを支持するための枠体として配置されていない。
【0018】
図2は、図1におけるA−A線断面を部分的に示した断面図である。
図2に示すように、携帯電話機Kの第2筐体2には、キートップ1a〜1e,2a〜2e,3a〜3e,4a〜4eの配置領域に応じた開口部21が形成されている。なお、図2においては、キートップ2a〜2e,3a〜3e,4a〜4eの配置領域を全て含む大きな開口部21のみが図示されているが、第2筐体2には、キートップ1a〜1eの各々に対応した複数の開口部が形成されている。
そして、第2筐体2の内部には、キー操作部7、回路基板8及びバッテリー9等が配置されている。なお、図2に示す、回路基板8とバッテリー9との間の空間には、必要に応じて電子部品(例えばアンテナ等)が配置される。
【0019】
更に、図2に示すように、回路基板8は、電子回路が実装された基板であり、上述のように第2筐体2内部の支持部22によって支持されることで、キー基材23の他方の面(キートップが配置される面と逆の面)に一方の面81を向けて対向配置されている。この回路基板8の一方の面81側には、各キートップ1a〜1e,2a〜2e,3a〜3e,4a〜4eの押下によって動作されるキースイッチ部材10が配置されている。
【0020】
図3は、携帯電話機Kのキー操作部7の分解斜視図である。
キー操作部7は、キー基材23の一方の面側にキートップ1a〜1e,2a〜2e,3a〜3e,4a〜4eが配置されるものである。キー基材23は、絶縁性材料によって形成されている。具体的には、キー基材23は、例えば、樹脂やゴム等の弾力性を有する材料によって形成することができる。
【0021】
そして、キー基材23及びキートップ1a〜1e,2a〜2e,3a〜3e,4a〜4e(キーボタン41)を備えて構成されるキー操作部7は、図2に示すように、第2筐体2内部の支持部22によって支持された回路基板8上に配置される。これによって、キー基材23に配置されたキートップ1a〜1e,2a〜2e,3a〜3e,4a〜4eが第2筐体2の開口部21において露出されるように第2筐体2の内部にキー操作部7が支持される。
【0022】
次に、図4、5に従って本実施形態に係るキー操作部7の製造方法について説明する。
本実施形態に係るキー操作部7の製造方法では、予め、マルチファンクションキーである円形キー40(キートップ1e)の表面に第一部位45を形成すると共に、板状のキー貼付治具42に第一部位45と嵌合する第二部位46を形成しておく。
第一部位45は、円形キー40の中心40aに対して点対称の位置に一対形成されている。また、第一部位45は、円形キー40の表面周縁部に半径方向に形成された直線状の凹溝であり、第二部位46は、キー貼付治具42の円形キー40のセットされる凹部47内に形成された突起である。また、第一部位45の長さ、幅、深さについては、円形キー40の回動角度の許容値、キー貼付治具42の精度に応じて調整することができる。
【0023】
そして、キー基材23に対して、円形キー40(キートップ1e)を含む複数のキーボタン41(キートップ1a〜1e,2a〜2e,3a〜3e,4a〜4e)をキー貼付治具42に対して配置する。この際、キー貼付治具42に形成された第二部位46である突起と円形キー40に形成された第一部位45である凹溝が係合するようにセットする。これにより、円形キー40がキー貼付治具42に対して位置決め(特に回転方向の位置決め)が行われる。
その後、円形キー40を含む複数のキーボタン41の上面等に接着剤を塗布し、その上からキー基材23を載せ、加圧し、結合させた後、キー貼付治具42から取り外してキー操作部7を形成する。
【0024】
このようにしてキー操作部7を製造することにより、円形キー40の周囲に隙間なく他のキーボタン41が配置させた場合であっても、円形キー40の位置決めを確実に行うことができる。
また、従来に比べて製造工数や製造コストを増すことなく製造できる。更に、キー操作部7を薄型に製造でき、携帯電話機K自体の薄型化が可能である。また、マルチファンクションキー(円形キー40)のキーフィーリングを悪化させることなく製造することができる。
また、マルチファンクションキー(円形キー40)に形成した第一部位45は、キー操作の際の指標として使用することができる。
【0025】
なお、以上の実施形態では、第一部位45を円形キー40の中心40aに対して点対称の位置(上下位置)に一対形成する例について説明したが、左右位置に形成してもよい。また、二対以上或いは奇数個形成してもよい。
また、第一部位45を凹溝、第二部位46を突起とする場合に限らず、第一部位45を突起、第二部位46を凹溝としてもよい。
【0026】
図6は、円形キーに形成された第一部位の変形例を示す図である。
マルチファンクションキーである円形キー40に形成される第一部位60は、中心40aに対して点対称の位置に配置された一対の円形凹部である。また、図示しないキー貼付治具には、第一部位60に対応する位置に、円柱突起である第二部位が形成されている。
【0027】
以上の場合においても、先ずマルチファンクションキーである円形キー40及び複数のキーボタン41をキー貼付治具に取り付ける。この際、キー貼付治具に形成された第二部位である円柱突起と円形キー40側に形成された第一部位60である一対の円形凹部が一致するようにセットする。その後、キーボタン41の上面に接着剤を塗布し、その上からキー基材23を載せ、加圧し、結合させた後、キー貼付治具から取り外してキー操作部7を形成する。
【0028】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳説したが、具体的な構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において設計変更等が可能である。
【0029】
例えば、上記実施形態において、第一部位45と第二部位46は、直線状の凹溝と直線状の突起(突条)である例を説明したが、それ以外の相互に嵌合し合う形状であってもよい。
【0030】
また、本発明の携帯電子機器の一例として、携帯電話機を挙げて説明したが、本発明は、携帯電話機に限定されるものではなく、丸形マルチファンクションキーを備える携帯電子機器に対して適用することが可能である。
【0031】
また、上記実施形態の携帯電話機は折り畳み型のものであったが、本発明はヒンジ部3を備えないストレート型等の携帯電話機にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯電話機の正面図である。
【図2】図1のA−A線断図である。
【図3】携帯電話機のキー操作部の分解斜視図である。
【図4】キー操作部の製造方法の説明図である。
【図5】キー操作部の製造方法の説明図である。
【図6】円形キーに形成された第一部位の変形例を示す図である。
【図7】従来のキー操作部の製造方法を示す図である。
【図8】従来のキー操作部を示す図である。
【図9】従来のキー操作部の製造方法を示す図である。
【図10】従来のキー操作部を示す図である。
【図11】従来の円形キーを示す図である。
【図12】従来の円形キーを示す斜視図断面である。
【図13】従来の円形キーを示す要部説明図である。
【符号の説明】
【0033】
K…携帯電話機(携帯電子機器)、 7…キー操作部、 23…キー基材、 40(1e)…円形キー(キートップ)、 41…キーボタン、 42…キー貼付治具、 45,60…第一部位、 46…第二部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形キーを含む複数のキーボタンを板状のキー貼付治具に対して配置した後に、前記複数のキーボタンとキー基材を当接して前記複数のキーボタンと前記キー基材を接合させるキー操作部の製造方法であって、
前記キー貼付治具に前記円形キーを配置する際に、前記円形キーの表面に形成された第一部位と前記キー貼付治具に形成された第二部位とを嵌合させて前記円形キーを位置決めすることを特徴とするキー操作部の製造方法。
【請求項2】
前記第一部位は、凸形又は凹形に形成されることを特徴とする請求項1に記載のキー操作部の製造方法。
【請求項3】
前記第一部位は、前記表面のうち外縁側に形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のキー操作部の製造方法。
【請求項4】
前記第一部位は、前記表面の中心に対して対称な複数の位置に形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のキー操作部の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の製造方法により製造されたキー操作部を備えることを特徴とする携帯電子機器。
【請求項6】
円形キーを含む複数のキーボタンと前記複数のキーが接合されるキー基材とを備えたキー操作部を有する携帯電子機器において、
前記円形キーは、前記キー基材との接合面が形成される面とは反対側の面に、キー貼付治具に嵌合される凸形又は凹形の第一部位が形成されることを特徴とする携帯電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−129277(P2010−129277A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300929(P2008−300929)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】