説明

クエン酸、亜鉛およびアルギニンからなる皮膚線条予防および治療用組成物

本発明は、クエン酸、亜鉛およびアルギニンを活性成分として含む皮膚線条の予防および治療のための組成物に関するもので、前記組成物は、局所塗布用医薬品または化粧品に剤形化して病変に適用することができる。本発明の活性成分は入手し易い天然成分であって、人体に安全であるうえ、少量でも皮膚線条を予防し治療することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚線条予防および治療用組成物に関し、より詳しくは、クエン酸、亜鉛およびアルギニンを活性成分として含む皮膚線条予防および治療用組成物に関するものである。前記組成物は、局所塗布用医薬品または化粧品に剤形化して病変に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
皮膚線条(肉割れ)は、股や腹部などの皮膚の表面に亀裂が走った状態のことをいう。
一般に、皮膚線条は、急激な体重増加に皮膚がついていけず、皮膚が破裂するために発生する。
【0003】
ところが、体重増加なしでも成長ホルモン、妊娠、重量挙げなどの運動後または内分泌疾患があるときにも発生する可能性がある。
また、ステロイドホルモン剤を長期間塗布した後にも発生する可能性がある。
【0004】
皮膚線条は原因によって病変部位が異なる。
例えば、皮膚線条は、思春期または体重増加による場合には主に足部位に発生し、妊娠中には主に下腹と大腿部に発生し、内分泌疾患による場合には人体のいずれの部位でも発生する可能性がある。
皮膚線条の初期病変は、尻、太股、下腹、膝の後ろまたは乳房などの皮膚の上層部が萎縮し、皮膚の深い所で弾力繊維が消失して赤色の線または帯が現われると同時に、正常皮膚よりやや沈むので、触ると凸凹に感じられる。このような初期病変の色は時間経過に伴って白色に変わる。
【0005】
皮膚線条は、治療時期が非常に重要であって、初期には比較的良い効果が見られるが、後期に入ると、満足すべき治療効果を期待することが難しい。
当業界では、初期段階の皮膚線条はバーサパルスレーザを用いて色調の変化を誘導し、レチノイン酸(retinoic acid)をつける方法で治療し、後期段階の皮膚線条はレチノイン酸を数ヶ月間つけながら炭酸ガスレーザまたはエルビウムヤグレーザによって3〜4ヶ月間隔で約3回治療する方法で治療している。
ところが、レチノイン酸は皮膚乾燥症、奇形児出産などの副作用があり、レーザ治療は高価で、場合によっては色素沈着を誘発するおそれもある。
【0006】
一方、大韓民国特許公開第2001−0097020号は、ツボクサ定量抽出物を含有した皮膚線条治療用組成物に関するもので、より詳しくはアジアチコサイド約40%、マデカシン酸約30%、アシアチン酸約30%からなるツボクサ定量抽出物に界面活性剤および脂質を添加してニオゾームを製造し、セラマイドに植物油およびラブラファクなどを混合して油相を作った後、この油相物にニオゾームを混合して作った新規のニオゾーム−多重乳剤型の外用剤を開示している。
【0007】
また、国際特許公開WO2003/004043号は、玉ねぎ抽出物を含有する各種傷跡および皮膚線条治療用組成物を開示したもので、前記玉ねぎ抽出物は、乾燥した玉ねぎをまず40〜90℃で浸出させて抽出用溶剤で抽出した後、浸出液を減圧の下に30℃以上の温度で蒸発させて収得したものである。
【0008】
ところが、前記組成物は、いずれも活性成分を収得するために抽出過程を経なければならないので、製造方法が複雑であるという欠点がある。
【発明の開示】
【0009】
本発明者は、前記のような抽出過程を必要とすることなく、商業的に容易に入手することが可能なクエン酸、亜鉛およびアルギニンからなる組成物が、ケラチノサイトおよび繊維芽細胞の成長を促進しコラーゲン合成を増加させることにより、皮膚線条を予防および治療することができることを確認し、本発明の完成に至った。
【0010】
本発明のある観点によれば、活性成分としてクエン酸、亜鉛およびアルギニンを薬剤学的に許容される担体と共に含有することを特徴とする、皮膚線条の予防および治療用局所塗布用薬剤学的組成物を提供する。
【0011】
本発明の他の観点によれば、活性成分としてクエン酸、亜鉛およびアルギニンを化粧品用に許容される担体と共に含有することを特徴とする、化粧品用組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、クエン酸、亜鉛およびアルギニンを活性成分として含有する皮膚線条予防および治療用組成物に関するもので、前記組成物は、皮膚に生じた皮膚線条を予防し治療する効能を持っているため、皮膚に局所的に適用する医薬品または化粧品に剤形化して用いることができる。以下、これらをそれぞれ具体的に説明する。
【0013】
ある観点として、本発明は、活性成分としてクエン酸、亜鉛およびアルギニンを薬剤学的に許容される担体と共に含有し、皮膚線条の予防および治療する局所塗布用薬剤学的組成物を提供する。
【0014】
前記薬剤学的組成物は、組成物全体100重量%に対し、クエン酸を0.01〜20重量%、好ましくは0.5〜5重量%含有し、亜鉛を0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜1重量%含有し、アルギニンを0.01〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%含有し、残部が薬剤学的に許容される担体からなる。
前記薬剤学的組成物の活性成分として用いられるアルギニン、クエン酸及び亜鉛は、これに制限されないが、下記のような形で本発明に係る局所塗布用薬剤学的組成物に含有できる。
【0015】
本発明のクエン酸は遊離酸または塩の形で含まれてもよいが、このようなクエン酸は、通常、商標的に入手することができる。
クエン酸は様々な植物の種子または果汁の中に遊離状態で存在するクエン酸を抽出して製造される。また、クエン酸はカビのアスペルギルスニガー(Aspergillus niger)を用いた表面発酵方式(surface fermentation process)または液内発酵方式(submerged fermentation process)によっても製造されるが、これも本発明の組成物に利用できる。前記クエン酸の生産工程では、糖蜜が糖含有原料源として用いられ、ノズル型遠心分離機、自動排出型遠心分離機、デカンタなどの様々な遠心分離機がクエン酸分離のための装備として活用できる。
【0016】
本発明のアルギニンは、遊離塩基または塩の形で含まれてもよいが、このようなアルギニンは、通常、商業的に入手することができる。アルギニンは発酵または蛋白質からの抽出によって製造されるが、本発明では、発酵方法を用いて製造されたものを使用することが好ましい。発酵によるアルギニンの製造方法は、例えばアルギニン類似体に対する耐性を有する菌株を用いる方法(Agricultural Biological Chemistry, 1972, vol. 36, p339; Journal of General Applied Microbiology, 1973, vol. 19, p339;日本特公昭48−003391号および米合衆国第3,723,249号)、炭素源、窒素源から直接アルギニンを生産する方法であって、グルタミン酸生産菌株のブレビバクテリウムまたはコリネバクテリウム属微生物から誘導された変異株を用いる方法(日本特開昭57−1634875号、日本特開昭60−83593号及び日本特開昭62−2659885号)、細胞融合によって生育改善されたアミノ酸生産菌株を用いる方法(日本特開昭58−158185号)およびアルギニン生合成経路に属する遺伝子およびベクターを含有する組み換えDNAを保有する菌株を用いる製造方法(日本特開昭63−079597号、日本特開昭60−066989号および米合衆国特許第4,775,623号)などがある。
【0017】
本発明の亜鉛は、牡蠣、甲殻類、魚、赤い肉のような動物性食品、および穀類、豆類、堅果類、種子類などの様々な植物性食品に十分な濃度で含有されているものを抽出して使用することができる。本発明の組成物に含有できる亜鉛の形は、これに制限されないが、ピコリネート(picolinate)、アセテート、クエン酸塩、グリセリン酸塩またはモノメチオニンと亜鉛との結合形態などがある。このような亜鉛も、通常、商業的に入手することができる。
【0018】
一方、本発明に係る薬剤学的組成物は、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、リニメント剤、ローションといった通常の局所塗布用製剤に剤形化することができ、目的とした剤形に応じて利用できる薬剤学的に許容される担体の種類と濃度は様々であるが、当業者であれば容易に決定することができる。
【0019】
前記薬剤学的組成物の一様態は軟膏剤である。この製剤は軟膏基剤、活性成分、その他の添加物を適正の割合で配合処理することにより製造することができる。軟膏基剤は、公知のものを使用することができ、例えば、高級脂肪酸またはそのエステル類(例えば、アジピン酸、ミルスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、セバシン酸ジメチル、ラウリン酸ヘキシル、イソオクタン酸セチルなど)、ワックス類(例えば、鯨蝋、蜜蝋、セレシンなど)、界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなど)、高級アルコール(例えば、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコールなど)、シリコン油(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、グリコールメチルポリシロキサン、シリコングリコールポリマーなど)、炭化水素類(例えば、親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィンなど)、水、保湿剤(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ソルビトールなど)、感染防止剤などから選択して使用することができる。
【0020】
他の様態はゲル剤である。この製剤は、ゲル基剤、活性成分、その他の添加物を適正の割合で配合処理することにより製造することができる。ゲル基剤は、公知のものを使用することができ、例えば、ゲル化剤(例えば、カルボキシビニール重合体、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステルなど)、アルコール(例えば、エタノール、イソ低級プロピルアルコールなど)、水、中和剤(例えば、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、水酸化ナトリウムなど)、界面活性剤(例えば、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなど)、感染防止剤などから選択して使用することができる。
【0021】
別の様態はクリーム剤である。この製剤は、クリーム基剤、活性成分、その他の添加物を適正の割合で配合処理することにより製造することができる。クリーム基剤は、公知のものを使用することができ、例えば、高級脂肪酸エステル類(例えば、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、セバシン酸ジエチル、ラウリン酸ヘキシル、イソオクタン酸セチルなど)、低級アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノールなど)、炭水化物(例えば、流動パラフィン、スクアランなど)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなど)、高級アルコール(例えば、2−ヘキシルデカノール、セタノール、2−オクチルドデカノールなど)、乳化剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルなど)、防腐剤(例えば、パラオキシ安息香酸エステルなど)、感染防止剤などから選択して用いることができる。
【0022】
さらに別の様態はリニメント剤である。この製剤は、アルコール類(例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの1価アルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどの多価アルコールなど)、水、脂肪酸エステル(例えば、アジピン酸、セバシン酸、ミリスチン酸の各種エステルなど)、界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなど)に活性成分、紫外線吸収剤および必要に応じて抗酸化剤、pH調整のための中和剤、粘性付与剤(例えば、メチルセルロース、カルボキシビニールポリマー、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、感染防止剤などを適切に配合処理することにより得ることができる。
【0023】
さらに別の様態はエアロゾル剤である。この製剤は、活性成分の液剤または懸濁液と推進剤に剤形化することにより製造することができる。液剤または懸濁液を作る場合、通常用いられる希釈剤、または注射剤の製造に用いられる希釈剤を使用することができる。推進剤としては、通常用いられる推進剤を使用することができ、例えばフレオン−12(クロロジフルオロメタン)、フレオン−123(トリフルオロジクロロエタン)などのクロロフルオロカーボンのような液化ガス推進剤、または窒素、二酸化炭素ガスなどの圧縮ガス推進剤などが含まれる。エアロゾル剤は、通常の溶解補助剤、緩衝剤などをさらに含有することができ、必要に応じて発色剤、保存剤、香料、香味剤などを添加することもできる。
【0024】
本発明に係る薬剤学的組成物の有効塗布量は、1日につき体重1kg当たり0.1μg〜約500mg、好ましくは体重1kg当たり約1μg〜約250mg、最も好ましくは体重1kg当たり約2μg〜約100mgである。当業者には明らかなように、患者に塗布される薬剤学的組成物の特定量は、患者の症状および薬物の耐性など多数の因子によって異なる。
【0025】
他の観点として、本発明は、活性成分としてクエン酸、亜鉛およびアルギニンを化粧品用に許容される担体と共に含有する化粧品用組成物を提供する。
前記化粧品用組成物は、組成物全体100重量%に対し、クエン酸を0.01〜20重量%、好ましくは0.5〜5重量%含有し、亜鉛を0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜1重量%含有し、アルギニンを0.01〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%含有し、残部が化粧品用に許容される担体からなる。
前記化粧品用組成物の活性成分として用いられるアルギニン、クエン酸および亜鉛は、前述した薬剤学的組成物における形と同様の形で含まれることができる。
【0026】
一方、前記「化粧品用に許容される担体」には、精製水、オイル、ワックス、脂肪酸、脂肪酸アルコール、脂肪酸エステル、界面活性剤、吸湿剤(humectant)、増粘剤(thickening agent)、抗酸化剤、粘度安定化剤(viscosity stabilizer)、キレート剤、緩衝剤、防腐剤、低級アルコールなどが含まれるが、これに制限されるものではない。必要に応じて美白剤、保湿剤、抗炎症剤、抗バクテリア剤、抗真菌剤、ビタミン、紫外線遮断剤、抗生剤、ニキビ防止剤、香水、染料が含まれてもよい。
具体的に、前記オイルとしては水素化植物性油、ヒマシ油、綿実油、オリーブ油、ヤシ油、ホホバ油、アボカド油を用いてもよく、ワックスとしては蜜蝋、鯨蝋、カルナウバ、カンデリラ、モンタン、セレシン、液体パラフィン、ラノリンを用いてもよい。脂肪酸としてはステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、オレイン酸を用いてもよく、脂肪酸アルコールとしてはセチルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、パンテノール、ラノリンアルコール、ステアリルアルコール、ヘキサデカノールを用いてもよく、脂肪酸エステルとしてはミチスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチルを用いてもよいが、これに制限されない。
【0027】
界面活性剤の例には、ステアリン酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、N−アシルグルタミン酸ナトリウムのような陰イオン界面活性剤、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドおよびステアリルトリメチルアンモニウムクロライドのような陽イオン界面活性剤、アルキルアミノエチルグリシンヒドロクロライドおよびレシチンのような陽性界面活性剤、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、スクロース脂肪酸エステル、モノステアリン酸プロピレングリコール、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンココナツ脂肪酸モノエタノールアルニド(monoethanolarnide)、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリンのような非イオン性界面活性剤などが含まれる。
【0028】
吸湿剤としてはグリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコールを用いてもよく、低級アルコールとしてはエタノール、イソプロパノールを用いてもよい。
増粘剤の例には、アルギン酸ナトリウム、カゼイン酸ナトリウム、ゼラチン寒天、キサンタンガム、澱粉、セルロースエーテル(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ポリビニールピロリドン、ポリビニールアルコール、ポリエチレングリコールおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムなどが含まれるが、これに制限されない。
抗酸化剤としては、ブチルヒドロキシトルエン(butylatedhydroxytoluene)、ブチルヒドロキシアニソール(butylatedhydroxyanisole)、没食子酸プロピル、クエン酸、エトキシキン(ethoxyquin)を用いてもよく、キレート剤としてはエデト酸2ナトリウム、エタンヒドロキシジフォスフェートを用いてもよく、緩衝剤としてはクエン酸、クエン酸ナトリウム、硼酸、ボラックス(borax)、リン酸水素二ナトリウムを用いてもよく、防腐剤としてはメチルパラヒドロキシ安息香酸、エチルパラヒドロキシ安息香酸、ジヒドロ酢酸、サリシル酸、安息香酸を用いてもよいが、これに制限されない。
【0029】
本発明に係る化粧品用組成物は、皮膚線条が発生し易いが、薬物をむやみに塗布することができない妊産婦または広い部位に亘って皮膚線条が現れる患者に特に有用である。
【実施例】
【0030】
実施例1:本発明に係る皮膚線条予防および治療用組成物の製造
適切な容器にクエン酸(Sigma U.S.A):2重量%、亜鉛(Sigma U.S.A):0.1重量%、アルギニン(Sigma U.S.A):5重量%およびヒドロキシエチルセルロース:残部を添加し、均一に混合した後、生成された沈澱物から本発明に係る皮膚線条予防および治療用組成物を製造した。
【0031】
実施例2:本発明の組成物によるケラチノサイト増食能テスト
本発明の皮膚線条予防および治療用組成物によるケラチノサイト増食能は、ケラチノサイト細胞生存率を測定することによりテストした。この際、細胞生存率が高いほど、ケラチノサイト増食を促進するものと解釈できる。
【0032】
24ウェルプレートにウェル当たり0.001×10細胞を接種し、この中の80%以上をウェルの底に付着させた。実施例1で製造された皮膚線条予防および治療用組成物を1:2000、1:5000および1:10000の割合で希釈し、前記希釈液を二日につき1回ずつ各ウェルに添加して8日間培養した。次に、MTT溶液を添加して4時間培養した後、溶菌緩衝溶液(lysis buffer)を添加して24時間反応させた。その後、590nmの波長で吸光度を測定した。
測定結果は下記表1と図1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
対照群と比較したとき、本発明の皮膚線条予防および治療用組成物は、1:10000で希釈した場合に細胞生存率を約20%程度増加させることを確認することができた。すなわち、本発明の皮膚線条予防および治療用組成物は、低濃度でケラチノサイトの細胞増殖を促進することを確認することができた。
【0035】
実施例3:本発明の組成物によるコラーゲン合成率テスト
本発明の皮膚線条予防および治療用組成物によってコラーゲンの合成が増加するか否かをテストした。
24ウェルプレートで24時間培養した繊維芽細胞を、実施例1で製造された皮膚線条予防および治療用組成物を含有した培地に取り替えて24時間培養した。このように収得した培養物をシルコル染料(sircol dye)と混合して10分間遠心分離した後、上澄液を除去し、アルカリ溶液を入れた後、十分攪拌した。540nmの波長で吸光度を測定して標準曲線によって培養物中のコラーゲンの濃度を計算した。
測定結果は下記表2と図2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
本発明に係る皮膚線条予防および治療用組成物は、対照群と比較したとき、0.01〜4%程度コラーゲン合成を増加させることを確認することができた。
【0038】
実施例4:本発明の組成物による繊維芽細胞の増食能テスト
本発明の皮膚線条予防および治療用組成物による繊維芽細胞増食能は、繊維芽細胞の細胞生存率を測定することによりテストした。この際、細胞生存率が高いほどケラチノサイト増殖を促進するものと判断することができる。
24ウェルプレートで24時間培養した細胞を、実施例1で製造された組成物を含有した培地に取り替えて24時間培養した。次に、各ウェルにMTT溶液50μLを仕込んで4時間反応させた後、細胞溶菌緩衝溶液1mLを仕込んで一晩中静置した。その後、590nmで吸光度を測定し、標準曲線によって細胞数を計算した。
測定結果は下記表3と図3に示す。
【0039】
【表3】

【0040】
対照群と比較したとき、本発明の皮膚線条予防および治療用組成物は、1:10000で希釈した場合に細胞芽細胞の生存率を約20%程度増加させることを確認することができた。すなわち、本発明の皮膚線条予防および治療用組成物は、低濃度で繊維芽細胞の細胞増殖を促進することを確認することができた。
【0041】
実施例5:本発明に係る化粧品用組成物の製造
クエン酸5g、亜鉛0.8g、アルギニン5g、蒸留水75g、保湿剤のグリセリン5g、キレート剤のEDTA0.05g、増粘剤のKOH0.15gをビーカーに入れて約70℃で均一に混合して水相を製造した。
一方、オリーブ油4g、ステアリン酸3g、界面活性剤3gをビーカーに仕込んだ後、約70℃で均一に混合して油相を製造した。
前記水相と油相とを混合して7000〜8000rpmで十分攪拌した後分散させ、本発明に係る化粧品用組成物を製造した。
【0042】
実施例6:本発明に係る化粧品用組成物の皮膚線条治療効果確認
実施例5で製造された化粧品用組成物約1mgを1日につき2回ずつ皮膚線条患者7名に2ヶ月間塗布した後、皮膚線条が治療されるか否かを確認した。このために、患者への本発明に係る化粧品用組成物の塗布前、塗布中および塗布後の皮膚状態を写真撮影した。
【0043】
図4a、図5a、図6a、図7aおよび図8aは、本発明に係る化粧品用組成物の塗布前の皮膚線条にかかった皮膚状態を、図4b、図5b、図6b、図7bおよび図8bは本発明に係る化粧品用組成物の塗布後の皮膚状態を示すもので、赤色または白色を呈した皮膚線条の帯が殆どまたは完全に無くなったことを確認することができた。すなわち、本発明に係る化粧品用組成物が皮膚線条を緩和および治療することが可能であることを確認することができた。
また、図9aおよび図10aは、本発明に係る化粧品用組成物の塗布前の皮膚線条にかかった皮膚状態を、図9bおよび図10bは本発明に係る化粧品用組成物を約1ヶ月間塗布した後の皮膚状態を、図9cおよび図10cは本発明に係る化粧品用組成物を2ヶ月間塗布した後の皮膚状態をそれぞれ示すもので、本発明に係る化粧品用組成物を、約1ヶ月間塗布した後にも皮膚線条が相当緩和し、2ヶ月間塗布した後には皮膚線条が殆ど治療されることを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る組成物は、ケラチノサイト、コラーゲン及び繊維芽細胞を活性化させて皮膚の再生を促進することにより、皮膚線条を予防し治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る皮膚線条予防および治療用組成物の濃度別ケラチノサイト増殖能を示すグラフである。
【図2】本発明に係る皮膚線条予防および治療用組成物の濃度別コラーゲン合成率を示すグラフである。
【図3】本発明に係る皮膚線条予防および治療用組成物の濃度別繊維芽細胞増殖能を示すグラフである。
【図4】a 本発明に係る化粧品用組成物の塗布前の皮膚線条にかかった皮膚状態を示す図である。 b 本発明に係る化粧品用組成物の塗布後の皮膚状態を示す図である。
【図5】a 本発明に係る化粧品用組成物の塗布前の皮膚線条にかかった皮膚状態を示す図である。 b 本発明に係る化粧品用組成物の塗布後の皮膚状態を示す図である。
【図6】a 本発明に係る化粧品用組成物の塗布前の皮膚線条にかかった皮膚状態を示す図である。 b 本発明に係る化粧品用組成物の塗布後の皮膚状態を示す図である。
【図7】a 本発明に係る化粧品用組成物の塗布前の皮膚線条にかかった皮膚状態を示す図である。 b 本発明に係る化粧品用組成物の塗布後の皮膚状態を示す図である。
【図8】a 本発明に係る化粧品用組成物の塗布前の皮膚線条にかかった皮膚状態を示す図である。 b 本発明に係る化粧品用組成物の塗布後の皮膚状態を示す図である。
【図9】a 本発明に係る化粧品用組成物の塗布前の皮膚線条にかかった皮膚状態を示す図である。 b 本発明に係る化粧品用組成物の塗布中の皮膚状態を示す図である。 c 本発明に係る化粧品用組成物の塗布後の皮膚状態を示す図である。
【図10】a 本発明に係る化粧品用組成物の塗布前の皮膚線条にかかった皮膚状態を示す図である。 b 本発明に係る化粧品用組成物の塗布中の皮膚状態を示す図である。 c 本発明に係る化粧品用組成物の塗布後の皮膚状態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分としてクエン酸、亜鉛およびアルギニンを薬剤学的に許容される担体と共に含有することを特徴とする、皮膚線条の予防および治療用局所塗布用薬剤学的組成物。
【請求項2】
全体組成物100重量%に対し、クエン酸0.01〜20重量% 、亜鉛0.001〜5重量%、アルギニン0.01〜20重量%を含有し、残部が薬剤学的に許容される担体からなることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚線条予防および治療用薬剤学的組成物。
【請求項3】
活性成分としてクエン酸、亜鉛およびアルギニンを化粧品用に許容される担体と共に含有することを特徴とする、化粧品用組成物。
【請求項4】
全体組成物100%重量に対し、クエン酸0.01〜20重量%、亜鉛0.001〜5重量%、アルギニン0.01〜20重量%を含有し、残部が薬剤学的に許容される担体からなることを特徴とする、請求項3に記載の化粧品用組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−531550(P2008−531550A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556957(P2007−556957)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000527
【国際公開番号】WO2006/090940
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(507284558)
【氏名又は名称原語表記】BAE, Seog−Nyeon
【出願人】(505162179)
【Fターム(参考)】