説明

クエン酸エステル

本発明は、モノエステルとジエステルとの比が特定された、選択されたエトキシル化アルコールの選択されたクエン酸エステル混合物に関する。本発明はまた、その製法、および発泡性の高い低刺激性化粧用製剤を製造するためのその使用(場合により他の界面活性剤と組み合せての使用)にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノエステルとジエステルとの比が特定された、選択されたエトキシル化アルコールの選択されたクエン酸エステル混合物に関し、また、その製法、および発泡性の高い低刺激性化粧用製剤を製造するためのその使用(場合により他の界面活性剤と組み合せての使用)に関する。
【背景技術】
【0002】
クエン酸エステル(アルキルエーテルシトレートとしても知られる)は、化粧用生成物中に既に用いられているよく知られた化合物である。例えばヨーロッパ特許出願EP282289A1には、1〜7モルのEOでエトキシル化されたC10−18アルコールのモノアルキルクエン酸塩を含有する化粧用組成物が記載されている。該文献によると、クエン酸エステルの95%を越える特に高いモノエステル含量が望ましく、これは、無水クエン酸と対応するエトキシル化アルコールとの反応によって得られる。
【0003】
国際特許出願WO94/10970には、香料および化粧用組成物(例えば繊維製品および身体の手入れおよび洗浄用の製剤)の成分として、C7−10アルキル基を有するモノアルキルシトレートを含有する可溶化剤が記載されている。公開されたヨーロッパ特許出願EP199131Aには、1〜20モルのEOでエトキシル化されたC8−20アルコールのクエン酸エステルが記載されている。このエステルはモノ、ジまたはトリエステルでありうる。該文献によると、7モルのEOでエトキシル化されたC11、C12およびC13アルコールの混合物2モルと、クエン酸1モルとから製造されるクエン酸エステルが、低刺激性であり、許容しうる発泡性を示す。
【0004】
油含有化粧用組成物の洗浄除去性を改善するためにクエン酸エステルを使用することが、ヨーロッパ特許EP852944B1により知られている。該文献によると、クエン酸エステルは、5〜30モルのEOでエトキシル化されたC12−18アルコールのエステルであり、モノ、ジおよび/またはトリエステルでありうる。その実施例によれば、7または9モルのEOでエトキシル化されたヤシ油アルコール(これは常に不飽和アルコールをも含有する)のモノまたはジエステルが、特に適当である。
【0005】
米国特許US6413527によると、3〜9モルのEOでエトキシル化されたC8−22アルコールのクエン酸エステルを含有するナノエマルジョンが、良好な毛髪および皮膚保湿性を示し、モノ、ジおよび/またはトリエステルが等しく好適である。
【0006】
R. Diez らの文献である、Proceedings, 4th World Surfactant Congress, バルセロナ(1996)、第2巻、第129頁以降によると、アルキルエーテルシトレートは化粧品用の好適なアニオン性界面活性剤である。モノ、ジおよび/またはトリエステルとして存在しうる、エトキシル化度の異なる(3、6および9)ラウリルアルコールのクエン酸エステルが試験された。該文献に挙げられたモノエステルは、モノエステルとジエステルとの比が5:1である混合物である。エステルは、例えば中程度の発泡性を示し、3および6モルのエチレンオキシドでエトキシル化されたラウリルアルコールのモノエステルはジエステルよりも発泡性が良好であり、エチレンオキシド9モルの場合のエステルはモノエステルよりもジエステルの方が良好である。
【0007】
しかし、従来知られた生成物には様々な欠点がある。すなわち、従来知られたクエン酸エステルは、特に他の界面活性剤と組み合わされた場合、化粧用製剤(特にシャンプーおよび浴用剤)に消費者が求める発泡性を示さないことがしばしばである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、発泡速度論と長時間経過後の発泡性とのいずれの点でも非常に良好な発泡性を示すクエン酸エステルを提供することである。更に、そのようなクエン酸エステルは、刺激性を殆ど示さないものである。本発明の課題はまた、化粧用生成物中に通常用いられる他の界面活性剤と共に清澄に製剤化するのに役立つクエン酸エステルを提供することである。また、本発明によるクエン酸エステルは、それ自体、界面活性性の高いものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、式(I):
O(CHCHO)H (I)
[式中、Rはアルキル基であり、nはエトキシル化度を表す。]
で示されるエトキシル化アルコールのクエン酸エステル混合物であって、Rが、C12アルコール45〜75重量%、C14アルコール15〜35重量%、C16アルコール0〜15重量%およびC18アルコール0〜20重量%を含有する脂肪アルコール混合物から誘導される直鎖アルキル基であり、nが5〜9の値であり、クエン酸エステル混合物中のモノエステルとジエステルとの重量比が3:1ないし10:1であるクエン酸エステル混合物に関する。
【0010】
本発明はまた、本発明のクエン酸エステル混合物、すなわち式(I):
O(CHCHO)H (I)
[式中、Rは、C12アルコール45〜75重量%、C14アルコール15〜35重量%、C16アルコール0〜15重量%およびC18アルコール0〜20重量%を含有する脂肪アルコール混合物から誘導される直鎖アルキル基であり、nは5〜9の値である。]
で示されるエトキシル化アルコールのクエン酸エステル混合物で、モノエステルとジエステルとの重量比が3:1ないし10:1であるものを製造する方法であって、クエン酸を式(I)で示されるアルコールエトキシレートで、モル比0.9:1ないし1.1:1、好ましくは1:1でエステル化することを含んで成る方法にも関する。
【0011】
本発明はまた、式(I)で示されるエトキシル化アルコールのクエン酸エステル混合物を、場合により他の界面活性剤と組み合わせて、皮膚に穏やかな発泡性の化粧用製剤の製造に使用することにも関する。
【0012】
本発明により選択されるクエン酸エステル混合物は、驚くべきことに、他の界面活性剤と組み合わせた場合でも、優れた発泡性を示すと共に、皮膚刺激性は示さない。アニオン性基(カルボキシレート基)を有する界面活性剤はノニオン性基(エステル基)を有する界面活性剤よりも刺激性が大きいから、クエン酸ジエステルと比較して本発明の刺激性が小さいことは、特に驚くべきことである。
【0013】
クエン酸エステル混合物
本発明のクエン酸エステル混合物は、式(I):
O(CHCHO)H (I)
[式中、Rおよびnは前記と同意義である。]
で示されるエトキシル化アルコールから誘導する。
【0014】
アルコール混合物は、主としてカプリンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコールおよび/またはステアリルアルコールを指定の重量比で含有する混合物である。このような混合物は、個々のアルコールを混合することによって、または対応するアルコール混合物を混合することによって得られる。
【0015】
本発明の好ましい態様は、C12アルコール65〜75重量%、C14アルコール20〜30重量%、C16アルコール0〜5重量%およびC18アルコール0〜5重量%を含有する脂肪アルコール混合物から誘導される直鎖アルキル基をRが表す式(I)のアルコールのクエン酸エステル混合物である。このようなクエン酸エステル混合物を導くアルコール混合物は、市販のアルコール混合物、例えばDognis Deutschland GmbH & Co. KG の生成物であるDehydol LS(登録商標)である。この脂肪アルコール混合物は、次のような鎖長分布(重量%)を有し、例えばパーム核油またはヤシ油から得ることができる:C10:0〜2%、C12:70〜75%、C14:24〜30%、C16:0〜2%。
【0016】
本発明の他の好ましい態様は、C12アルコール45〜60重量%、C14アルコール15〜30重量%、C16アルコール5〜15重量%およびC18アルコール8〜20重量%を含有する脂肪アルコール混合物から誘導される直鎖アルキル基をRが表す式(I)のエトキシル化アルコールのクエン酸エステル混合物である。このようなクエン酸エステル混合物を導くアルコール混合物は、市販のアルコール混合物、例えばCognis Deutschland GmbH & Co. KG の生成物であるDehydol LT(登録商標)である。この脂肪アルコール混合物は、次のような鎖長分布(重量%)を有し、例えばパーム核油またはヤシ油から得ることができる:<C12:0〜3%、C12:48〜58%、C14:18〜24%、C16:8〜12%、C18:11〜15%、>C18:0〜1%。
【0017】
本発明によると、エトキシル化度nは6〜8の値で、整数であっても整数でなくてもよい。
特に有利な脂肪アルコール混合物のエトキシル化生成物は、C12アルコール45〜60重量%、C14アルコール15〜30重量%、C16アルコール5〜15重量%およびC18アルコール8〜20重量%を含有する脂肪アルコール混合物をエチレンオキシド6〜8モルでエトキシル化したもので、とりわけDehydol LT(登録商標)のエチレンオキシド7モルによるエトキシル化生成物である。
【0018】
(脂肪)アルコール混合物は、短鎖アルコールまたは比較的長鎖のアルコールを、少量、好ましくはアルコール混合物に対して全部で10重量%未満、より好ましくは5重量%未満の量で含有しうる。
【0019】
本発明のクエン酸エステル混合物は、式(II):
【化1】

[式中、R'、R''、R'''は、Xおよび/または式(I)のものと同意義のエトキシル化アルキル基Rを表し、置換基R'、R''およびR'''は、モノエステルとジエステルとの重量比が3:1ないし10:1となるように分布する。]
で示される異性体化合物の混合物である。好ましい態様において、モノエステルとジエステルとの重量比は5:1ないし8:1である。
【0020】
すなわち、本発明のクエン酸エステル混合物はモノおよびジエステルを必ず含有し、モノおよびジエステルを、混合物に対してモノおよびジエステルとして、好ましくは50〜90重量%、より好ましくは60〜80重量%の量で含有する。混合物は、100重量%とする残部としてトリエステルおよび遊離クエン酸をも含有しうる。しかし、混合物は好ましくは遊離クエン酸を殆ど含有せず、好ましくは混合物に対して10重量%未満の量で含有する。
【0021】
したがって、本発明のクエン酸エステルは概ね、少なくとも1個の遊離カルボキシル基を有するクエン酸部分エステルである。すなわち、エステルはまた酸性エステルまたはその中和生成物であり得、式(II)中のXは水素またはカチオンでありうる。部分エステルは好ましくはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩および/またはグルカンモニウム塩の形態で存在する(すなわちXはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン、アルカノールアンモニウムイオンおよび/またはグルカンモニウムイオンである)。
【0022】
本発明のクエン酸エステルを製造するには、クエン酸を式(I)のアルコールエトキシレートで、モル比0.9:1ないし1.1:1、とりわけ1:1でエステル化する。
【0023】
合成条件自体は従来のものに対応する。反応を窒素雰囲気中で行う必要がありうる。さらに、反応温度を150〜170℃、好ましくは160℃に調節するのが有利でありうる。最終生成物として本発明のクエン酸エステル混合物を得る。エステルは遊離形態または塩として存在しうる。通例、製法に関連する理由から、低割合、好ましくは10重量%未満のクエン酸が、未エステル化のままとなる。未エステル化クエン酸の含量が8%まで、とりわけ5%までである反応生成物が特に好ましい。
【0024】
好ましくは、本発明に従って得られる生成物の酸価は120〜180の範囲であり、ケン化価は200〜280の範囲である(いずれもDINに従って測定)。
【0025】
本発明のクエン酸エステル混合物は、他の界面活性剤、とりわけアニオン性および/またはノニオン性界面活性剤と共に製剤化しうる。
【0026】
界面活性剤
更なる界面活性剤は、ノニオン性、アニオン性、カチオン性および/または両性/双性イオン性の界面活性剤でありうる。
【0027】
アニオン性界面活性剤の例は、石鹸、アルキルベンゼンスルホネート、アルカンスルホネート、オレフィンスルホネート、アルキルエーテルスルホネート、グリセロールエーテルスルホネート、α−メチルエステルスルホネート、スルホ脂肪酸、アルキルスルフェート、脂肪アルコールエーテルスルフェート、グリセロールエーテルスルフェート、脂肪酸エーテルスルフェート、ヒドロキシ混合エーテルスルフェート、モノグリセリド(エーテル)スルフェート、脂肪酸アミド(エーテル)スルフェート、モノおよびジアルキルスルホスクシネート、モノおよびジアルキルスルホスクシナメート、スルホトリグリセリド、アミド石鹸、エーテルカルボン酸およびその塩、脂肪酸イセチオネート、脂肪酸サルコシネート、脂肪酸タウリド、N−アシルアミノ酸、例えばアシルラクチレート、アシルタートレート、アシルグルタメートおよびアシルアスパルテート、アルキルオリゴグルコシドスルフェート、アルキルグルコースカルボキシレート、タンパク質脂肪酸縮合物(特に、小麦系植物性の生成物)、並びにアルキル(エーテル)ホスフェートである。アニオン性界面活性剤がポリグリコールエーテル鎖を有する場合、通常の同族体分布を有し得るが、狭い同族体分布を有することが好ましい。
【0028】
ノニオン性界面活性剤の例は、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪酸アミドポリグリコールエーテル、脂肪アミンポリグリコールエーテル、アルコキシル化トリグリセリド、混合エーテルおよび混合ホルマール、場合により部分的に酸化されたアルキル(アルケニル)オリゴグリコシドまたはグルクロン酸誘導体、脂肪酸−N−アルキルグルカミド、タンパク質加水分解物(特に小麦系植物性の生成物)、ポリオール脂肪酸エステル、糖エステル、ソルビタンエステル、ポリソルベート並びにアミンオキシドである。ノニオン性界面活性剤がポリグリコールエーテル鎖を有する場合、通常の同族体分布を有し得るが、狭い同族体分布を有することが好ましい。
【0029】
カチオン性界面活性剤の通常の例は、第四級アンモニウム化合物、およびエステルクォート(esterquats)、とりわけ第四級化脂肪酸トリアルカノールアミンエステル塩である。両性または双性イオン性界面活性剤の例は、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アミノプロピオネート、アミノグリシネート、イミダゾリニウムベタインおよびスルホベタインである。
【0030】
特に好ましいノニオン性界面活性剤はアルキルポリグリコシドである。特に適当なアニオン性界面活性剤は、アルキルおよび/またはアルケニルスルフェート並びにアルキルエーテルスルフェートを包含する。しかし、ノニオン性および/またはアニオン性界面活性剤の選択は、そのような界面活性剤に限定されない。
【0031】
しばしば脂肪アルコールスルフェートとも称されるアルキルおよび/またはアルケニルスルフェートは、式(III):
O−SOM (III)
[式中、Rは炭素原子数6〜22、好ましくは12〜18の直鎖または分枝状の脂肪族アルキルおよび/またはアルケニル基であり、Mはアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属、アンモニウム、アルキルアンモニウム、アルカノールアンモニウムまたはグルカンモニウムである。]
で示される第一級アルコールの硫酸化生成物であると理解される。
【0032】
本発明に従って使用し得るアルキルスルフェートの通常の例は、下記アルコールの硫酸化生成物である:カプロンアルコール、カプリルアルコール、カプリンアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、ペトロセリニルアルコール、アラキルアルコール、ガドレイルアルコール、ベヘニルアルコール、およびエルシルアルコール、ならびにそれらの工業用混合物(工業用メチルエステルフラクションまたはRoelenのオキソ合成由来のアルデヒドを高圧水素化することによって得られる)。硫酸化生成物は、アルカリ金属塩、とりわけナトリウム塩の形態で使用することが有利であり得る。C16/18獣脂脂肪アルコールまたは対応する炭素鎖分布を有する植物性脂肪アルコールから誘導する、ナトリウム塩の形態のアルキルスルフェートが特に好ましい。
【0033】
アルキルエーテルスルフェート(「エーテルスルフェート」)は、既知のアニオン性界面活性剤であり、工業的規模では、脂肪アルコールまたはオキソアルコールのポリグリコールエーテルをSOまたはクロロスルホン酸(CSA)で硫酸化し、次いで中和することによって製造される。
【0034】
本発明に従って使用するのに適当なエーテルスルフェートは、式(IV):
O−(CHCHO) SOZ (IV)
[式中、Rは炭素原子数6〜22の直鎖または分枝状のアルキルおよび/またはアルケニル基であり、mは1〜10の値であり、Zはアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属、アンモニウム、アルキルアンモニウム、アルカノールアンモニウムまたはグルカンモニウムである。]
で示される。
【0035】
その例は、下記アルコールのエチレンオキシド平均1〜10モル(特に1〜5モル)付加物のスルフェートで、ナトリウムおよび/またはマグネシウム塩の形態のものである:カプロンアルコール、カプリルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、カプリンアルコール、ラウリルアルコール、イソトリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、ペトロセリニルアルコール、アラキルアルコール、ガドレイルアルコール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール、およびブラシジルアルコール、ならびにそれらの工業用混合物。エーテルスルフェートは、通常の同族体分布を有するものでも、狭い同族体分布を有するものでもよい。工業用C12/14またはC12/18ヤシ油脂肪アルコールフラクションのエチレンオキシド平均2〜3モル付加物から誘導する、ナトリウムおよび/またはマグネシウム塩の形態のエーテルスルフェートを使用することが特に好ましい。
【0036】
アルキルおよびアルケニルオリゴグリコシドは、式(V):
O−[G] (V)
[式中、Rは、炭素原子数4〜22のアルキルおよび/またはアルケニル基であり、Gは炭素原子数5または6の糖単位であり、pは1〜10の値である。]
で示される既知のノニオン性界面活性剤である。アルキルおよび/またはアルケニルオリゴグリコシドは、関連の有機化学的合成方法によって得られる。
【0037】
アルキルおよび/またはアルケニルオリゴグリコシドは、炭素原子数5または6のアルドースまたはケトースから、好ましくはグルコースから誘導し得る。すなわち、好ましいアルキルおよび/またはアルケニルオリゴグリコシドは、アルキルおよび/またはアルケニルオリゴグルコシドである。
【0038】
式(V)中の指数pは、オリゴマー化度(DP)、すなわちモノ−およびオリゴグリコシドの分布を示し、1〜10の値である。個々の化合物のpは常に整数であり、特に1〜6の値であり得るが、アルキルオリゴグリコシドとしての値pは、分析学的に求めた計算値であって、通例整数でない。平均オリゴマー化度pが1.1〜3.0であるアルキルおよび/またはアルケニルオリゴグリコシドを使用することが好ましい。オリゴマー化度が1.7未満、とりわけ1.2〜1.4であるアルキルおよび/またはアルケニルオリゴグリコシドが、適用の観点から好ましい。
【0039】
アルキルまたはアルケニル基Rは、炭素原子数4〜11、好ましくは8〜10の第一級アルコールから誘導し得る。そのようなアルコールの例は、ブタノール、カプロンアルコール、カプリルアルコール、カプリンアルコールおよびウンデシルアルコール、並びにそれらの工業用混合物(例えば、工業用脂肪酸メチルエステルを水素化することによるか、または Roelen のオキソ合成由来のアルデヒドを水素化することによって得られる)である。工業用C8-18ヤシ油脂肪アルコールの分留において最初の蒸留物として得られ、不純物としてのC12アルコールの含量が6重量%未満であり得るアルコールから誘導した、鎖長C8-10のアルキルオリゴグルコシド(DP=1〜3)、および工業用C9/11オキソアルコールから誘導したアルキルオリゴグルコシド(DP=1〜3)が好ましい。
【0040】
また、アルキルまたはアルケニル基Rは、炭素数12〜22、好ましくは12〜14の第一級アルコールから誘導してもよい。そのようなアルコールの例は、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、ペトロセリニルアルコール、アラキルアルコール、ガドレイルアルコール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール、ブラシジルアルコール、およびそれらの工業用混合物(前記のようにして得られる)である。水素化C12/14ヤシ油脂肪アルコールから誘導した、DPが1〜3であるアルキルオリゴグルコシドが好ましい。
【0041】
工業的適用
本発明のクエン酸エステル混合物は、皮膚に穏やかな発泡性化粧用製剤を製造するために、単独で使用することができ、好ましくは上記界面活性剤1種またはそれ以上と組み合わせて使用する。
【0042】
化粧用製剤は、水不含有製剤または水含有製剤でありうる。本発明の化合物は、特にヘアシャンプー、ヘアローション、発泡浴剤、シャワー浴剤、クリーム、ゲル、ローション、アルコール溶液、水/アルコール溶液、エマルジョン、ワックス/脂肪配合物、スティック製剤、パウダーまたは軟膏中に使用する。本発明のクエン酸エステル混合物はまた、化粧用製剤中に通常存在する他の助剤および添加剤、例えば油成分、乳化剤、過脂肪剤、真珠光沢ワックス、コンシステンシー付与剤、増粘剤、ポリマー、シリコーン化合物、脂肪、ワックス、レシチン、リン脂質、安定剤、生体由来物質、防臭剤、制汗剤、フケ防止剤、フィルム形成剤、膨潤剤、UV保護剤などと組み合わせて使用しうる。
【0043】
クエン酸エステル混合物は、化粧用製剤に対して、好ましくは0.1〜20重量%の量、より好ましくは0.5〜10重量%の量で使用する。
【0044】
式(V)で示されるAPG化合物と本発明のクエン酸エステル混合物との重量比範囲3:1ないし1:3の混合物が、化粧用製剤用に特に有利な性質を示す。
水含有製剤、とりわけ弱酸性(好ましくはpH5〜6.5)のものが特に好ましい。
【0045】
実施例
使用した材料:
1.Dehydol LT 7(登録商標):Cognis Deutschland GmbH & Co. KGの生成物。エチレンオキシド7モルでエトキシル化された脂肪アルコール混合物。この脂肪アルコール混合物の鎖長分布(重量%)は、<C12:0〜3%;C12:48〜58%;C14:18〜24%;C16:8〜12%;C18:11〜15%;>C18:0〜1%。
2.Dehydol LS 6(登録商標):Cognis Deutschland GmbH & Co. KGの生成物。エチレンオキシド6モルでエトキシル化された脂肪アルコール混合物。この脂肪アルコール混合物の鎖長分布(重量%)は、<C10:0〜2%;C12:70〜75%;C14:24〜30%;C16:0〜2%。
【0046】
3.エチレンオキシド10モルでエトキシル化された脂肪アルコール混合物。この脂肪アルコール混合物の鎖長分布(重量%)は、<C12:0〜3%;C12:48〜58%;C14:18〜24%;C16:8〜12%;C18:11〜15%;>C18:0〜1%。
4.Dehydol 04(登録商標):Cognis Deutschland GmbH & Co. KGの生成物。エチレンオキシド4モルでエトキシル化されたオクタノール。
【0047】
実施例1
12−18アルコール+7EOのクエン酸エステル; モノエステル:ジエステル 6:1
撹拌反応器において、窒素雰囲気中で、水不含有クエン酸(28.05kg、0.146キロモル)およびDehydol LT 7(登録商標)(76.16kg、0.146キロモル)を160℃に加熱し、その温度で、理論量の水が生成するまで(5.5時間)撹拌した。下記特性を示す薄黄色透明の液体生成物が得られた:
実施例1のクエン酸エステルの特性:
ケン化価: 222
酸価: 132
遊離クエン酸: 2.8重量%
モノエステル:ジエステル重量比: 6:1
【0048】
実施例2
12/14アルコール+6EOのクエン酸エステル; モノエステル:ジエステル 6:1
実施例1と同様に、撹拌反応器において、窒素雰囲気中で、水不含有クエン酸(249.7g、1.3モル)およびDehydol LS 6(登録商標)(607.9g、1.3モル)を160℃に加熱し、その温度で、理論量の水が生成するまで(2時間)撹拌した。下記特性を示す薄黄色透明の液体生成物が得られた:
実施例2のクエン酸エステルの特性:
ケン化価: 253
酸価: 173
遊離クエン酸: 7.1重量%
モノエステル:ジエステル重量比: 6:1
【0049】
比較例1
12−18アルコール+7EOのクエン酸エステル; モノエステル:ジエステル 1:1
撹拌反応器において、窒素雰囲気中で、水不含有クエン酸(172.9g、0.9モル)およびDehydol LT 7(登録商標)(905.8g、1.8モル)を160℃に加熱し、その温度で、理論量の水が生成するまで(7時間)撹拌した。下記特性を示す鮮やかな黄色の液体生成物が得られた:
比較例1のクエン酸エステルの特性:
ケン化価: 126.1
酸価: 48.6
遊離クエン酸: 0.2重量%
モノエステル:ジエステル重量比: 1:1
【0050】
比較例2
12−18アルコール+10EOのクエン酸エステル; モノエステル:ジエステル 6:1
実施例1と同様に、撹拌反応器において、窒素雰囲気中で、水不含有クエン酸(0.9モル)およびエチレンオキシド10モルでエトキシル化された脂肪アルコール混合物(使用した材料3)(0.9モル)を160℃に加熱し、その温度で、理論量の水が生成するまで(2.5時間)撹拌した。下記特性を示す薄黄色透明の液体生成物が得られた:
比較例2のクエン酸エステルの特性:
ケン化価: 214.6
酸価: 139.7
遊離クエン酸: 6.1重量%
モノエステル:ジエステル重量比: 6:1
【0051】
比較例3
アルコール+4EOのクエン酸エステル; モノエステル:ジエステル 6:1
実施例1と同様に、撹拌反応器において、窒素雰囲気中で、水不含有クエン酸(0.9モル)およびDehydol 04(登録商標)(0.9モル)を160℃に加熱し、その温度で、理論量の水が生成するまで(2時間)撹拌した。下記特性を示す薄黄色透明の液体生成物が得られた:
比較例3のクエン酸エステルの特性:
ケン化価: 369.0
酸価: 230
遊離クエン酸: 9.6重量%
モノエステル:ジエステル重量比: 6:1
ケン化価(SV)はDGF C−V3に従って測定した。
酸価(AV)はDIN53402に従って測定した。
【0052】
性能試験
発泡性の評価
発泡性を評価するために、ローター発泡法(DIN13996(発行準備中))によって、30秒後の発泡速度論ならびに60、90、120、150および180秒後の発泡力を測定した。ローター発泡試験機は、加熱可能な二重壁円筒形ガラス器(内径17.5cm)から成る。泡の高さおよび液体レベルが読み取れるよう、mm目盛りが円筒形ガラス器に付けられている。また、ガラス器にはStyropor蓋が取り付けられており、これは器を覆うためと絶縁するために用いられる。撹拌機は、長さ28cmおよび直径1cmの撹拌軸を有する特殊な撹拌ヘッドおよびJK撹拌機(デジタル回転カウンター付き)から成る。サーモスタット、ストップウォッチおよび温度計(デジタル)も必要である。
【0053】
ある硬度(15°dH)の水を用いて試験溶液を調製した。
Styropor蓋で覆ったガラス器に、それが40±1℃の必要な温度に達したら、40±1℃に予め加熱したサンプル(試験物質0.5g/l;pH6)200mlを縁に沿わせてゆっくりと注ぎ込んだ。ローター速度を1300r.p.mとした。
【0054】
30秒後に最初の泡高さ値の測定を行った。この目的のために、撹拌機のスイッチを、長くて10秒間まで切った。さらに、60秒後および180秒後に泡量を測定した。
【0055】
【表1】

【0056】
表1から明らかなように、選択されたモノエステル:ジエステル比を有する本発明のクエン酸エステルは、ジエステル含量のより高いクエン酸エステルよりも顕著に優れた発泡性を示す(実施例1と比較例1との比較)。また、選択されたエトキシル化度を有する本発明のクエン酸エステルは、エトキシル化度のより高いエステルと比較した場合(実施例1と比較例2との比較)またはアルコール鎖のより短いエステルと比較した場合(実施例1および2と比較例3との比較)のいずれにおいても、発泡速度および比較的長時間後の泡の両方の点でより優れた発泡性を示す。
【0057】
RBC試験による刺激性の評価
W.PapeおよびU. Hoppeの方法によってRBC試験を行った[Arzneim. -Forsch./Drug Res. 40(1), No. 4 (1990);第498頁以降]。
【0058】
【表2】

【0059】
表2から明らかなように、本発明のクエン酸エステルは非催涙性であり、それ故、ジエステル含量のより高い同様のクエン酸エステル(比較例1)およびアルキル鎖のより短いクエン酸エステル(比較例3)よりも適合性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
O(CHCHO)H (I)
[式中、Rはアルキル基であり、nはエトキシル化度を表す。]
で示されるエトキシル化アルコールのクエン酸エステル混合物であって、Rが、C12アルコール45〜75重量%、C14アルコール15〜35重量%、C16アルコール0〜15重量%およびC18アルコール0〜20重量%を含有する脂肪アルコール混合物から誘導される直鎖アルキル基であり、nが5〜9の値であり、クエン酸エステル混合物中のモノエステルとジエステルとの重量比が3:1ないし10:1であるクエン酸エステル混合物。
【請求項2】
モノエステルとジエステルとの重量比が5:1ないし8:1である請求項1に記載のクエン酸エステル混合物。
【請求項3】
式(I)において、エトキシル化度nが6〜8の値である請求項1に記載のクエン酸エステル混合物。
【請求項4】
式(I)において、Rが、C12アルコール65〜75重量%、C14アルコール20〜30重量%、C16アルコール0〜5重量%およびC18アルコール0〜5重量%を含有する脂肪アルコール混合物から誘導される直鎖アルキル基である請求項1に記載のクエン酸エステル混合物。
【請求項5】
式(I)において、Rが、C12アルコール45〜60重量%、C14アルコール15〜30重量%、C16アルコール5〜15重量%およびC18アルコール8〜20重量%を含有する脂肪アルコール混合物から誘導される直鎖アルキル基である請求項1に記載のクエン酸エステル混合物。
【請求項6】
式(I)において、nが6〜8の値であり、Rが、C12アルコール45〜60重量%、C14アルコール15〜30重量%、C16アルコール5〜15重量%およびC18アルコール8〜20重量%を含有する脂肪アルコール混合物から誘導される直鎖アルキル基である請求項1に記載のクエン酸エステル混合物。
【請求項7】
式(I):
O(CHCHO)H (I)
[式中、Rは、C12アルコール45〜75重量%、C14アルコール15〜35重量%、C16アルコール0〜15重量%およびC18アルコール0〜20重量%を含有する脂肪アルコール混合物から誘導される直鎖アルキル基であり、nは5〜9の値である。]
で示されるエトキシル化アルコールのクエン酸エステル混合物で、モノエステルとジエステルとの重量比が3:1ないし10:1であるものを製造する方法であって、クエン酸を式(I)で示されるアルコールエトキシレートで、モル比0.9:1ないし1.1:1、好ましくは1:1でエステル化することを含んで成る方法。
【請求項8】
場合により他の界面活性剤と組み合わせて、皮膚に穏やかな発泡性の化粧用製剤を製造するための請求項1に記載のクエン酸エステル混合物の使用。
【請求項9】
他の界面活性剤として、アルキルスルフェート、アルケニルスルフェートおよび/またはアルキルエーテルスルフェートから成る群から選択するアニオン性界面活性剤を使用する請求項8に記載の使用。
【請求項10】
他の界面活性剤として、アルキルポリグルコシドから成る群から選択するノニオン性界面活性剤を使用する請求項8に記載の使用。
【請求項11】
クエン酸エステル混合物を、化粧用製剤に対して0.1〜20重量%の量、好ましくは0.5〜10重量%の量で使用する請求項8に記載の使用。

【公表番号】特表2006−525253(P2006−525253A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505209(P2006−505209)
【出願日】平成16年4月21日(2004.4.21)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004209
【国際公開番号】WO2004/096749
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】