説明

クライオポンプ及びスパッタリング装置及び半導体製造装置

【課題】本発明は特に真空容器内を真空とする真空形成手段として用いられるクライオポンプ及びこれを用いたスパッタリング装置、半導体製造装置に関し、クールダウン時間の短縮を図りつつ真空容器を所望の真空度とすることを課題とする。
【解決手段】クライオポンプ20に設けられる熱シールド24を、ルーバー26と冷凍機30との間で熱の通路を形成する第1のシールド部材33と、この熱の通路を形成しない第2のシールド部材34とを含む複数の部材に分割した。そして、第1のシールド部材33の材料として第2のシールド部材34に比べて高い熱伝導率を有する材料(銅)を用いると共に、第2のシールド部材34の材料として、同一体積で比較した場合に第1のシールド部材33に比べて小さい熱容量を有する材料(アルミニウム)を用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクライオポンプ及びスパッタリング装置及び半導体製造装置に係り、特にプロセスチャンバ等の真空容器内を真空とする真空形成手段として用いられるクライオポンプ及びこれを用いたスパッタリング装置、半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LSIや超LSIを製造する際等に、オイルレスの清浄な真空を形成するために用いられる真空ポンプとして多段式クライオポンプが知られている。このクライオポンプは、プロセスガスを流入させるプロセスチャンバ等の真空容器に連結し、この真空容器内のガスを極低温面に吸着凝縮させて真空を生成する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、従来の一例である蓄冷器式冷凍機を用いたクライオポンプを示している。クライオポンプは、2段式GM(ギフォード・マクマホン)サイクル冷凍機51(以下、単に冷凍機51という)と、この冷凍機51にガス管53を介して接続されたヘリウム圧縮機52とを備えており、冷凍機51の低温部分は、断熱真空外筒61に挿入されている。更に、断熱真空外筒61には、図示しないプロセスチャンバ等の真空容器が接続されている。
【0004】
冷凍機51は、第1段冷却ステージ54と第2段冷却ステージ55を有している。第1段冷却ステージ54には、第1の冷却パネルとして機能する熱シールド56が取り付けられ、この熱シールド56には、クライオパネル58の上方に間隔をおいて、ルーバー60が設けられている。この熱シールド56及びルーバー60は、例えば80K程度に冷却され、真空容器中の水蒸気、炭酸ガス等の凝固点が比較的高い気体成分を凝縮する。
【0005】
第2段冷却ステージ55には、クライオパネル58が取り付けられ、例えば、約20K程度に冷却される。これにより、真空容器中の窒素、アルゴン等のより低凝固点のガスは、クライオパネル58に凝縮される。また、超高真空を得るためには、更に凝固点の低い水素やヘリウムを排気する必要があり、この場合にはクライオパネル58の一部に水素やヘリウム等の気体成分を吸着する吸着剤として活性炭59が貼付される。
【0006】
また、凝縮及び吸着により気体成分を溜め込んだクライオパネル58は、所望の時期に再生される。この再生は、例えば熱シールド56及びクライオパネル58を所定の温度まで昇温させ、凝縮及び吸着された気体成分をクライオパネル58から放出することにより行われる。また、その後再び真空度を上げるために冷却する時間をクールダウンタイムという。
【特許文献1】特開平5−312149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のクライオポンプは、熱シールド56が単一の材料により製造されていた。一般には、熱シールド56は銅(Cu)或いはアルミニウム(Al)により製造されている。
【0008】
しかしながら、熱シールド56を銅により製造した場合には、アルミニウムにより熱シールド56を製造した場合に比べて熱容量が大きくなり、前記した再生時においてクールダウン時間を長く要し、効率のよい再生処理を行なうことができないという問題点があった。
【0009】
これを具体例を挙げて説明する。熱容量とは、ある物質の温度を摂氏1℃上げるのに要する熱量をいい、一様な物質では質量と比熱との積となる。いま、熱シールド56の温度が300K、熱シールド56の体積をV(cm3)であったとすると、銅(Cu)の比熱が400(J/KgK)、アルミニウム(Al)の比熱が900(J/KgK)、銅(Cu)の密度が8.96×10-3(Kg/cm3)、アルミニウム(Al)の密度が2.69×10-3(Kg/cm3)とする。すると、銅(Cu)の熱容量は、V(cm3)×8.96×10-3(Kg/cm3)×400(J/KgK)=3.584×V(J/K)となる。これに対してアルミニウム(Al)の熱容量は、V(cm3)×2.69×10-3 (Kg/cm3)×900(J/KgK)=2.42×V(J/K)となる。このように、熱シールド56を銅で製造した場合には、アルミニウムで熱シールド56を製造した場合に比べて熱容量が大きくなる。
【0010】
一方、熱シールド56をアルミニウムにより製造した場合には、冷凍機51の第1段冷却ステージ54からルーバー60に至る間における熱勾配が大きくなってしまう。即ち、アルミニウムは銅に比べて熱伝導率が低いため、例えば温度の高いプロセスガスがルーバー60に当たってルーバー60の温度が上昇し、冷凍機51の第1段冷却ステージ54で発生する寒冷がルーバー60まで熱伝達されない。
【0011】
このため、ルーバー60を効率よく冷却することができず、ルーバー60で吸着されるべき真空容器中の気体成分が十分に凝縮されないままクライオパネル58に至ることとなる。これにより、気体成分のクライオパネル58への凝縮及び吸着が効率よく行われなくなり、真空容器を所望の真空度とすることができないおそれがあるという問題点があった。
【0012】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、クールダウン時間の短縮を図りつつ真空容器を所望の真空度としうるクライオポンプ及びスパッタリング装置及び半導体製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0014】
請求項1記載の発明は、
第1凝縮パネルを設けた熱シールドと、該熱シールドに接続される冷凍機とを有するクライオポンプにおいて、
前記熱シールドを、前記第1凝縮パネルと前記冷凍機との間で熱の通路を形成する第1の部材と、前記熱の通路を形成しない第2の部材とを含む複数の部材に分割し、
前記第1の部材の材料として、前記第2の部材に比べて高い熱伝導率を有する材料を用いると共に、
前記第2の部材の材料として、同一体積で比較した場合に前記第1の部材に比べて小さい熱容量を有する材料を用いたことを特徴とするものである。
【0015】
上記発明によれば、第1凝縮パネルと冷凍機との間で熱の通路を形成する熱シールドの第1の部材は、第2の部材に比べて高い熱伝導率を有する材料を用いているため、熱負荷があった場合でも第1凝縮パネルと冷凍機との間で温度勾配を低く抑えることができ、第1凝縮パネルの温度上昇を防止することが可能となる。
【0016】
また、前記熱の通路を形成しない第2の部材は、同一体積で比較した場合に第1の部材に比べて小さい熱容量を有する材料を用いているため、クライオポンプの再生時におけるクールダウンタイムを短縮することができる。
【0017】
また、請求項2記載の発明のように、
請求項1記載のクライオポンプにおいて、
前記第1の部材が銅であり、前記第2の部材がアルミニウムであることを特徴とするものである。
【0018】
上記発明によれば、銅はアルミニウムに比べて高い熱伝導率を有し、かつアルミニウムは銅に比べて同体積で小さい熱容量を有するため、第1の部材として銅を用いると共に第2の部材としてアルミニウムを用いることにより、プロセスガスによる熱負荷があった場合でも、一段凝縮パネルの温度上昇を防止すると共にクールダウンタイムの短いクライオポンプを実現することができる。
【0019】
また、請求項3記載の発明は、
請求項1または2記載のクライオポンプにおいて、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に、輻射熱の侵入を防止すると共に前記熱シールド内部への気体分子の流入を可能とする第3の部材を設けたことを特徴とするものである。
【0020】
上記発明によれば、熱シールドの外部に存在する気体分子は、第3の部材を設けた構成により熱シールドの内部へ流入することが可能となり、冷凍機により凝縮固化される。よって、真空容器と熱シールドの隙間の真空度をよくすることで、気体分子が常温から熱シールドへの熱伝導を起こさないため熱シールドの温度が上昇することはない。また、第3の部材は輻射熱の侵入を防止し、冷凍機への入熱が防止される。
【0021】
また、請求項4記載の発明は、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のクライオポンプにおいて、
前記冷凍機を前記熱シールドの側部に接続したことを特徴とするものである。
【0022】
上記発明によれば、冷凍機を熱シールドの底部に接続する構成に比べ、ルーバーと冷凍機との間における熱の通路を短くすることができ、ルーバーを効率的に冷却することができる。
【0023】
また、請求項5記載の発明のように、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のクライオポンプをスパッタリング装置に設けた構成してもよい。
【0024】
また、請求項6記載の発明のように、
請求項1乃至4のいずれかに記載のクライオポンプを半導体製造装置に設けた構成としてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ルーバーを早期かつ確実に冷却することが可能となると共に、クライオポンプの再生時におけるクールダウンタイムを短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面と共に説明する。
【0027】
図1は本発明の一実施例であるクライオポンプ20を設けた半導体製造装置を示している。クライオポンプ20の説明に先立ち、まず半導体製造装置の構成及びこれを用いたウェハ18に対する加工手順について説明しておく。
【0028】
半導体製造装置は、プロセスチャンバ10を有している。このプロセスチャンバ10は、機械的な回転ポンプである粗引きポンプ12と、クライオポンプ20と、プロセスガス導入口14を接続して気密に形成され、内部でスパッタリング等のプロセスを行なうため、ターゲット16やウェハ18を設置し、スパッタリング加工を行なう。
【0029】
この半導体製造装置を用いたウェハ18の加工手順は次のとおりである。
【0030】
まず、粗引きポンプ12を用いて真空容器10aの内部を1Pa程度まで粗く真空引きを行なう。クライオポンプ20は、ある程度の真空以上でなければ、気体分子の熱伝導により常温からの入熱量が大きく冷却ができない。このために、必ず機械的なポンプ12を用いて真空容器10aを真空引きをする必要がある。
【0031】
まず、プロセスチャンバ10と真空容器10aはゲートバルブ40で分離され(図1に示す状態)、その後に粗引きポンプ12によりプロセスチャンバ10に対して粗い真空引きが行われる。次にクライオポンプ20を運転して、真空容器10a内を10-7Pa程度の高真空にし、ゲートバルブ40を開く。
【0032】
クライオポンプ20は、ルーバー26、クライオパネル28(2段(冷却)ステージ22に接続されるので2段パネルとも称する)等を気体分子の固化温度以下に冷却し、そこへ気体分子の凝縮固化、または活性炭の冷却による気体分子の吸着により、高真空を実現する。
【0033】
クライオポンプ20により、プロセスチャンバ10内が10-7Pa程度の高真空となると、次にスパッタリング作業を行なうため、Ar、N2等のプロセスガスをプロセスガス導入口14よりプロセスチャンバ10内に導入する。
【0034】
続いて、上記のように機能するクライオポンプ20の構成について説明する。
【0035】
クライオポンプ20は、プロセスチャンバ10に接続されている。このクライオポンプ20には、通常2段式のGM(ギフォード・マクマホン式)冷凍機30が使用され、温度が高い1段(冷却)ステージ21には熱シールド24を設けて2段(冷却)ステージ22を被覆している。
【0036】
熱シールド24は、常温から来る輻射熱を遮断する目的で設けられ、2段ステージ22への入熱を抑えている。更に、気体分子の入口には、熱シールド24の先端にルーバー26等を設置している。
【0037】
また、ルーバー26は熱シールド24に接続されており、この熱シールド24を介して冷却される。これにより、比較的凝固する温度の高い気体分子(特にH2O)等は、クライオパネル28に至る前にルーバー26により凝縮される。
【0038】
一方、2段ステージ22は10K程度まで冷却されるので、クライオパネル28も同程度の温度まで冷却され、酸素、窒素等の凝縮を行なう。また、クライオパネル28に取り付けてある活性炭を冷却し、該活性炭の微細穴にもガスの吸着を行なう。これにより、プロセスチャンバ10内の気体分子はクライオポンプ20に凝縮・吸着されることにより減少し、よってプロセスチャンバ10内を高真空とすることができる。
【0039】
ここで、熱シールド24の構成に注目し、図1乃至図3を参照しつつ以下説明する。
【0040】
前記したように、従来(図6参照)では熱シールド56は銅(Cu)或いはアルミニウム(Al)の単一の材料により製造されていたため、熱シールド56を銅により製造した場合には熱容量が大きいためクールダウン時間が長くなり、またアルミニウムにより製造した場合には温度勾配が大きくなりルーバー60が熱負荷によって温度上昇するという問題点があった。
【0041】
これに対して本実施例では、熱シールド24を複数のシールド部材に分割したことを特徴としている。具体的には、本実施例では熱シールド24を第1のシールド部材33、第2のシールド部材34、及び第3のシールド部材35の3つの部材に分割した構成としている。
【0042】
第1のシールド部材33は、ルーバー26と冷凍機30との間で熱の通路を形成する機能を奏するものである。この第1のシールド部材33は、熱シールド24の上部に位置しており、ルーバー26と一体的な構成とされている。この第1のシールド部材33は1段ステージ21と熱的に接続されており、よって冷凍機30が駆動することにより第1のシールド部材33及びルーバー26は80K程度に冷却される。
【0043】
また、本実施例では、この第1のシールド部材33を後述する第2及び第3のシールド部材34,35の材質であるアルミニウム(Al)よりも熱伝導性の高い銅(Cu)により形成したことを特徴とする。尚、表1に銅とアルミニウムの熱伝導率を比較して示す。
【0044】
【表1】

また、第2のシールド部材34は、主に熱シールド24としの本来の機能を奏するものであり、常温から来る輻射熱を遮断し2段ステージ22への入熱を抑える機能を奏している。この第2のシールド部材34は、第1のシールド部材33と異なりアルミニウムにより形成されている。
【0045】
また、第2のシールド部材34は、第1のシールド部材33に対して下方に離間した位置に配置されている。更に、第2のシールド部材34は、冷凍機30の1段ステージ21に接続されている。従って、第2のシールド部材34も冷凍機30が駆動することにより、80K程度に冷却される。
【0046】
第3のシールド部材35は、分割離間された第1及び第2のシールド部材33,34の内側にブロック状の支持部材32(図2及び図3に示す)を用いて固定されている。この第3のシールド部材35は、輻射熱の侵入を防止すると共に、真空容器10a内の気体分子を熱シールド24の内部に流入可能とする機能を奏するものである(この気体分子の流れを図1に矢印Bで示す)。この第3のシールド部材35はアルミニウムにより形成されており、図3に示されるように2段ステージ22及びクライオパネル28を囲むよう配設されている。
【0047】
ここで、第3のシールド部材35の機能について、従来の熱シールド(熱シールドが一体的な構成)と比較しつつ説明する。いま、熱シールドが従来のように一体的であったとすると、真空容器10aと熱シールドとの間に形成される空間25にAr、N2等の気体分子(プロセスガス)が進入した場合、この気体分子により常温から熱シールドへ熱伝導が発生することが考えられる。この場合には、熱シールドの温度が上昇してルーバー26に気体分子が凝縮されない可能性がある。
【0048】
これに対して本実施例のように、第1及び第2のシールド部材33,34の内側に第3のシールド部材35を直射光を防げるように設けることにより、輻射熱は第3のシールド部材35により遮断され、熱シールド24の内部に侵入されるのを防止できる。また、空間25にAr、N2等の気体分子が進入した場合、この気体分子は第1及び第2のシールド部材33,34の離間部分から熱シールド24の内部に流入する(気体分子の流れを図1に矢印Bで示す)。
【0049】
そして、熱シールド24内に流入した気体分子は、冷凍機30により冷却されたクライオパネル28で凝縮される。よって、熱シールド24の温度が上昇することを防止できる。
【0050】
続いて、熱シールド24に第1のシールド部材33と第2のシールド部材34とを分離して設けたことによる作用効果について説明する。
【0051】
上記したように、ルーバー26が一体的に設けられた第1のシールド部材33は銅により形成されており、常温から来る輻射熱を遮断する機能を主に奏する第2のシールド部材34はアルミニウムにより形成されている。このように、第1のシールド部材33と第2のシールド部材34は異なる材質により形成されているため、分割された構成とされている。
【0052】
第1のシールド部材33の材料となる銅は、第2のシールド部材34の材料となるアルミニウムに比べて高い熱伝導性を有している(先に示した表1参照)。また、アルミニウムは、同一体積で比較した場合、銅に比べて小さい熱容量有している。
【0053】
即ち、本実施例に係る熱シールド24は、第1のシールド部材33として第2のシールド部材34に比べて高い熱伝導率を有する材料を用いると共に、第2のシールド部材34の材料として、同一体積で比較した場合に第1のシールド部材33に比べて小さい熱容量を有する材料を用いたことを特徴としている。
【0054】
この構成とすることにより、ルーバー26と冷凍機30(1段ステージ21)との間で熱の通路を形成する第1のシールド部材33は、第2のシールド部材34に比べて高い熱伝導率を有する材料を用いているため、ルーバー26と冷凍機30との間における温度勾配を低く抑えることができ、よってルーバー26は、プロセスガス等の熱負荷に耐えることが可能となる。
【0055】
これにより、比較的固化する温度の高い気体分子(特にH2O)等は、クライオパネル28に至る前にルーバー26で凝縮され、クライオパネル28に至ることを防止できる。
【0056】
また、第2のシールド部材34は、ルーバー26から離間しているため、冷凍機30からルーバー26に至る熱の通路を形成することはない。しかしながら、第2のシールド部材34の材質は、同一体積で比較した場合に第1のシールド部材33に比べて小さい熱容量を有する材料を用いている。このため、クライオポンプ20の再生時におけるクールダウンタイムを短縮することができ、よってクライオポンプ20の稼働率を高めることができる。尚、本実施例では1段凝縮パネルとしてルーバー26を用いた例について説明しているが、シェブロンやバッフル等を含むことはいうまでもない。
【0057】
更に、本実施例では、冷凍機30が熱シールド24の側部に接続した構成とされている。この構成によれば、冷凍機を熱シールドの底部に接続する構成(図6参照)に比べ、ルーバー26と冷凍機30との間における熱の通路を短くすることができ、ルーバー26をより効率的に冷却することができる。
【0058】
図4及び図5は、本実施例に係るクライオポンプ20の効果を説明するための図である。図4に示すのは、本実施例に係るクライオポンプ20のクールダウンタイムを従来と比較して示す図である。同図は縦軸に熱シールド24の温度を示しており、横軸は時間を示している。
【0059】
また、実線は本実施例に係る銅よりなる第1のシールド部材33とアルミニウムよりなる第2のシールド部材34とにより熱シールド24を形成したクライオポンプ20の特性を示している。これに対し、一点鎖線は熱シールドの全体を銅により形成したクライオポンプの特性を示し、破線は熱シールドの全体をアルミニウムにより形成したクライオポンプの特性を示している。また、クールダウン時間は、100K到達時間にて判断した。
【0060】
本実施例に係るクライオポンプ20は、クールダウン時間が59分であるのに対し、熱シールドの全体をアルミニウムにより形成したクライオポンプのクールダウン時間が54分、熱シールドの全体を銅により形成したクライオポンプのクールダウン時間が67分であった。よって図4より、アルミニウムで熱シールドを形成したクライオポンプに比べては若干遅いもの、熱シールドの全体を銅により形成したクライオポンプに比べてはクールダウン時間を大幅に低減できることが証明された。
【0061】
図5は、プロセスガス(気体分子)の入熱を仮想的に決めてルーバー26に印加した場合のシミュレーション結果を示している。同図において、実施例として示すのが本実施例に係るクライオポンプ20に対するシミュレーション結果である。
【0062】
また、同図において比較例1として示しているのは、熱シールドをアルミニウムにより形成したクライオポンプに対するシミュレーション結果である。更に、比較例2として示しているのは、熱シールドを銅により形成したクライオポンプに対するシミュレーション結果である。
【0063】
尚、いずれにおいても、ルーバーは銅により形成されているものとし、また熱負荷は5,15,30Wとした。更に、温度測定点は、ルーバーの中心位置とした。
【0064】
同図より、各熱負荷において本実施例に係るクライオポンプ20のルーバー26の温度は、熱シールドの全体をアルミニウムにより形成したクライオポンプにおけるルーバーの温度と、熱シールドの全体を銅より形成したクライオポンプにおけるルーバーの温度との間の温度となっており、特に熱シールドの全体を銅より形成した場合の特性に近い値となっていることが分かる。
【0065】
これは、ルーバー26と同様に第1のシールド部材33が熱伝導率が高い銅により形成されているため、ルーバー26に印加された熱は第1のシールド部材33を熱伝導して1段ステージ21に至り冷却され、よってルーバー26の温度を低温に保つことができることによる。従って、本実施例に係るクライオポンプ20を用いることにより、比較的固化する温度の高い気体分子はルーバー26により確実に凝縮され、よってクライオポンプ20による高真空が維持される。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、スパッタリング装置や半導体製造装置だけでなく、ガスプロセスでクライオ
ポンプを作動させ、あらゆる設備に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本発明の一実施例であるクライオポンプを用いた半導体製造装置を示す要部断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施例であるクライオポンプを構成する熱シールドを拡大して示す斜視図である。
【図3】図3は、図2におけるA−A線に沿う断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施例であるクライオポンプのクールダウン時おける熱シールドの温度変化を、従来のものと比較して示す図である。
【図5】図5は、本発明の一実施例であるクライオポンプに設けられたルーバーの温度変化を、従来のものと比較して示す図である。
【図6】図6は、従来の一例であるクライオポンプの要部断面図である。
【符号の説明】
【0068】
10 プロセスチャンバ
10a 真空容器
12 粗引きポンプ
14 プロセスガス導入口
20 クライオポンプ
21 1段(冷却)ステージ
22 2段(冷却)ステージ
24 熱シールド
26 ルーバー
28 クライオパネル
30 冷凍機
33 第1のシールド部材
34 第2のシールド部材
35 第3のシールド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一段凝縮パネルを設けた熱シールドと、該熱シールドに接続される冷凍機とを有するクライオポンプにおいて、
前記熱シールドを、前記一段凝縮パネルと前記冷凍機との間で熱の通路を形成する第1の部材と、前記熱の通路を形成しない第2の部材とを含む複数の部材に分割し、
前記第1の部材の材料として、前記第2の部材に比べて高い熱伝導率を有する材料を用いると共に、
前記第2の部材の材料として、同一体積で比較した場合に前記第1の部材に比べて小さい熱容量を有する材料を用いたことを特徴とするクライオポンプ。
【請求項2】
前記第1の部材が銅であり、前記第2の部材がアルミニウムであることを特徴とする請求項1記載のクライオポンプ。
【請求項3】
前記第1の部材と前記第2の部材との間に、輻射熱の侵入を防止すると共に前記熱シールド内部への気体分子の流入を可能とする第3の部材を設けたことを特徴とする請求項1または2記載のクライオポンプ。
【請求項4】
前記冷凍機を前記熱シールドの側部に接続したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のクライオポンプを備えたことを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載のクライオポンプを備えたことを特徴とする半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−132273(P2007−132273A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−326319(P2005−326319)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】