説明

クラスI膜融合誘発性エンベロープタンパク質をもつRNAウイルスの融合開始領域の機能を阻害することによってウイルス:細胞融合を妨げる方法

本発明は、細胞のウイルス感染、及び/又はウイルスのエンベロープと前記ウイルスの標的となった細胞膜との融合を予防又は阻害する(それによってウイルスゲノムの細胞質へのデリバリー(ウイルス感染のために必要な一工程)を妨げる)方法に関する。本発明は、特にこの融合プロセスを仲介する融合タンパク質としてクラスI膜融合タンパク質を有する、RNAウイルスの複数のファミリー(アレナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス及びレトロウイルスを含む)に関する。本発明は、これらのウイルスの融合開始領域(FIR)と呼ばれる保存されたモチーフ又はドメインを同定する方法を提供する。本発明はさらに、そのようなウイルスによる感染をそれらのFIRと干渉することによって防止する方法を提供する。本発明はさらに、そのようなウイルスによって誘発される疾患の治療及び予防方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本出願は、米国仮特許出願60/517,181号(2003年11月4日出願)(前記は参照により本明細書に含まれる)の権利を主張する。
本発明は、細胞のウイルス感染及び/又はウイルスのエンベロープと前記ウイルスにより標的とされた細胞の膜との間の融合を予防又は阻害する方法に関する(前記によって、ウイルスゲノムの前記細胞の細胞質へのデリバリー(ウイルス感染に必要な工程)を防止する)。本発明は、前記ウイルスの融合開始領域(又はFIR)を同定する方法を提供する。本発明は、これら複数のウイルスで前記FIR領域を同定する方法を提供する。本発明はさらに、I型ウイルスによる感染をFIRとの干渉によって防止する方法を提供する。
【0002】
背景技術
ウイルスはいずれもそれらの標的細胞に結合し侵入して複製する。エンベロープを有する動物ウイルス(クラスI膜融合タンパク質(I型ウイルス)をもつRNAウイルスを含む)の場合、前記プロセスは以下を必要とする(a)ビリオンの標的細胞への結合、(b)ウイルスのエンベロープと形質膜又は細胞内膜との融合、(c)融合領域のウイルスエンベロープ及び細胞膜の脱安定化による融合孔の生成、(d)前記孔からウイルスRNAの移入、及び(e)ウイルスRNAによる細胞機能の改変。
ウイルス膜と細胞エンベロープの融合(上記工程(b)及び(c))は、ウイルスのトランスメンブレン糖タンパク質(融合タンパク質)と標的細胞の表面タンパク質及び膜との相互作用によって仲介される。これらの相互作用によって、標的細胞膜にウイルス融合ペプチドの挿入をもたらす融合タンパク質に構造的変化が惹起される。この挿入に続いて、ウイルスエンベロープと細胞膜を直近に近接させる、融合タンパク質内の更なる構造変化が生じ、2つの二重層膜の融合が生じる。
もしこの融合プロセスが破壊されたならば、ウイルスはその宿主の中で拡散し増殖することができない。この融合プロセスの意図的な破壊は、融合タンパク質配列と相同なペプチド及びペプチド模倣体、融合タンパク質を認識する抗体、及び融合タンパク質に敵対作用をもつ他の因子を誘導することによって達成することができる。
RNAウイルスクラスI融合タンパク質間の構造的類似性
インフルエンザウイルス(オルトミクソウイルスである)のヘマグルチニン2(HA2)は、RNAウイルスクラスI融合タンパク質の基本型であり、アミノ末端の疎水性ドメイン(融合ペプチドと称される)を含み、前記はヘマグルチニン前駆体タンパク質の切断時に露出される。異なるいくつかのファミリーに由来するRNAウイルス(アレナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス及びレトロウイルスを含む)の膜融合タンパク質は、HA2といくつかの共通の構造的特性を共有し、クラスIウイルス融合タンパク質と称された。HIVの融合タンパク質、トランスメンブレン糖タンパク質及び他のレトロウイルストランスメンブレンタンパク質は、オルトミクソウイルス及びパラミクソウイルスのそれのように、前駆体(gp160)の切断時に露出される疎水性の融合ペプチドドメインを保有する(Gallaher, 1987;Gronzalez-Scarano et al., 1987)。これらの類似性及びタンパク質の立体配置を予測するコンピュータアルゴリズムを基にして、HIV-1トランスメンブレンタンパク質及び他のレトロウイルスのトランスメンブレンタンパク質の外側部分(エクトドメイン、アミノ末端)はいずれも、x-線結晶学によって決定されたように、HA2構造の枠組みに適合しえるであろうと提唱された(Wilson, Skehel and Wiley, 1981)。
【0003】
これらの観察を基にして、レトロウイルスのトランスメンブレンタンパク質は、既知のHA2構造に共通の融合ペプチドの他に、いくつかの構造的特徴(長く伸びたアミノ末端ヘリックス(N-ヘリックス、通例は“ヘプタッドリピート”又は“ロイシンジッパー”)、カルボキシ末端ヘリックス(C-ヘリックス)及びトランスメンブレドメイン基部の芳香族モチーフを含む)を有することが予想された。これら5つのドメインのうち少なくとも4つの存在によって、ウイルスエンベロープタンパク質はクラスI融合タンパク質と定義される。このレトロウイルスのトランスメンブレンタンパク質モデルは、構造決定及び変異分析によってその後確認された(Chan et al., 1997;Kowalski et al., 1991;Weissenhorn et al., 1997)。共通の構造的モチーフはオルトミクソウイルス及びレトロウイルスの融合タンパク質だけでなく、パラミクソウイルス、フィロウイルス(例えばエボラウイルス(Ebo V))(Gallaher, 1996)及びアレナウイルス(Gallaher, DiSimone and Buchmeier, 2001)の融合タンパク質にも存在している。Ebo V融合タンパク質(GP2)のGallaherの構造モデルもまたx-線結晶学的方法によって確認された(Malashkevich et al., 1999;Weissenhorn et al., 1998)。
図1は、I型ウイルスに属する6ファミリーの融合タンパク質の前述の5つのドメインを示している。融合タンパク質は疎水性融合タンパク質で始まり、アンカーペプチドで終わり、さらに長く伸びたアミノ末端α-ヘリックス(N-ヘリックス、通例は“ヘプタッドリピート”又は“ロイシンジッパー”)、カルボキシ末端α-ヘリックス(C-ヘリックス)(Carr and Kim, 1993;Suarez et al., 2000;Wilson, Skehel and Wiley, 1981)、及び時にはビリオンエンベロープ基部の芳香族モチーフを取り込んでいる。さらにまた、本発明者らによって発見された6番目のドメイン、融合開始領域(FIR)も示されている。
【0004】
I型ウイルスの融合阻害
I型ウイルスでの融合を阻害するペプチド及びペプチド模倣体、抗体並びに他の因子を設計する、本発明者ら(Garry)及び他の研究者らによる以前の試みは、融合タンパク質の融合ペプチド、N-ヘリックス及びC-ヘリックスに焦点が当てられていた。融合ペプチドの場合には、オルトミクソウイルス及びパラミクソウイルス(Richardson, Schied and Choppin, 1980)及びHIV-1(Gallaher et al., 1992;Owens et al., 1990;Silburn et al., 1998)の融合ペプチドドメインの類似体が、おそらくは不活性な異種凝集物の形成によってウイルス感染を阻止することが見出された。N-ヘリックス及びC-ヘリックスの部分に対応するペプチドもまた、in vitro及びin vivoの両方でウイルス感染阻害に有効であることが見出された。例えば、HIV-1融合タンパク質のN-ヘリックスのカルボキシ末端部分(CS3領域と定義される)に対応する17-アミノ酸のペプチドはHIV感染を阻止した(Qureshi et al., 1990)。さらにまた、他のN-ヘリックス及びC-ヘリックス阻害性ペプチド(C-ヘリックス抗HIV-1ペプチドドラッグDP178(T-20又はFUZEON(商標)を含む)が、前記融合タンパク質の構造モデルを基にして開発された(Wild, Greenwell and Matthews, 1993;Wild et al., 1992)。DP-178は、C-ヘリックスと芳香族性アンカー基部ドメインにオーバーラップし、注射後にin vivoで達成することができる非常に低濃度で(1.7nMで50%阻害)HIV-1ビリオン:細胞融合を阻害する。臨床試験では、100mg/日のDP178によって、感染個体の血中HIV-1負荷がほぼ100分の1に減少した(Kilby et al., 1998)。この結果は、トランスメンブレンタンパク質構造を基にした他のHIV-1阻害性ペプチドの探索に大きな刺激を与えた(Pozniak, 2001;Sodroski, 1991)。パラミクソウイルスのペプチド性阻害物質もまたウイルスの複製を阻害することが示された(Lambert et al., 1996;Young et al., 1999)。Watanabeと共同研究者らによる研究によって、Ebo VのGP2のN-ヘリックス及びC-ヘリックスを標的とする同様なアプローチもまた有用な阻害物質をもたらすことが示唆された(Watanabe et al., 2000)。融合タンパク質ドメインの部分に対する中和抗体もまたビリオン:細胞融合を疎外することが示された。
【0005】
HIV-1における観察
多くの研究が、I型RNAウイルスの1つであるヒト免疫不全ウイルス、HIV-1の融合阻害に向けられた。Bolognesiら(5,464,933)及び本発明者ら(Garry, USPN5,567,805)は、HIV-仲介殺細胞は、HIV-1ビリオンのトランスメンブレン融合タンパク質の部分と結合するペプチドを導入することによって阻害できることを教示した。前記BolognesiのDP178結合領域(図7ではFUZEON(商標)と標識されている)は主としてC-ヘリックス上にあり、本出願で記載されているもの、融合開始領域(FIR)の外側にある。Bolognesiは阻害があることは明らかにしたが、阻害方法は教示していない。本発明者ら(Garry)は、HIV-1 TMのCS3領域(図7ではCS3と標識されている)での阻害を明らかにしたが、阻害方法については特定せず、CS3:CS3-レセプター相互作用が阻害されるということだけを提唱した。予想に反する本発明者らのFIRの発見(本明細書に現在記載しているように)及びFIR内にCS3配列が存在するという事実は、USPN5,567,805に記載されたCS3:CS3レセプター結合は、実際FIRのCS3部分と細胞膜の部分(前記部分に対してFIRのCS3部分が親和性を有する)で生じる結合であることを示している。さらにまた、Melikyan、Watanabe、Bewley及び他の研究者らが導入されたペプチドによる融合阻害を記載したが、彼らは前記阻害が生じるメカニズムについては説明しなかった。それに対応して、FUZEON(商標)ペプチドの位置はFIRから離れており、このことは、融合プロセスの他の成分がFUZEON(商標)領域で機能していることを強く示唆している。
上述の事柄を考慮すれば、感染プロセスで必要とされるウイルスの領域を同定するためのより有効な手段、及びウイルス感染を予防又は阻害するために有効な組成物に対する要請が当業界には存在することは明白である。本発明は、これら要請に対する効果的な解決を開示し、さらにこれを提供する。
【0006】
発明の要旨
本発明の種々の実施態様は、ウイルスとそれら宿主細胞との間の膜融合を阻害し、それによって宿主細胞のウイルスによる感染を予防又は阻害することができる“因子”(化合物)を同定する方法を提供する。本発明のこの実施態様の特徴は、これら阻害“因子”を同定する方法を提供する。この実施態様では、前記方法は以下の工程を含む:(a)2つ又は3つ以上の長く伸びたαヘリックス、融合ペプチド及び融合開始領域(FIR)を有するエンベロープ融合タンパク質をもつウイルスを同定する工程;(b)FIRのアミノ酸配列を含む“標的”を調製する工程;(c)前記“標的”を1つ又は2つ以上のテスト化合物に暴露する工程;及び(d)前記“標的”と物理的に相互作用するテスト化合物を同定する工程。例えば、物理的相互作用は、固相に結合させた“標的”及び蛍光又は放射能により標識したテスト化合物を標準的な結合アッセイで用いて検出することができる。マイクロモル範囲又はそれより低い解離係数(Kd)を有する標的とテスト化合物は陽性に相互作用すると考えられる。
本発明の他の特徴は、ウイルスの融合開始領域(FIR)又はFIRの機能的セグメントのアミノ酸配列を有するか、又はFIR若しくはFIRの機能的セグメントの配列と類似するアミノ酸配列を有する単離ペプチドを含む組成物を提供する。本明細書で用いられる、類似するアミノ酸配列又はペプチド配列は、同一又は化学的に類似する大半のアミノ酸を原型配列と同じ順番で含む配列である。そのような化学的類似性は当業者には周知である。
【0007】
本発明のこの実施態様の他の特徴は、宿主細胞のウイルス感染を予防又は阻害することができる、及び/又はウイルスと宿主細胞との膜融合を阻害することができる、単離された、典型的には実質的に精製されたペプチド又はペプチド類似体を提供する(この場合、ウイルスは、2つの(長く伸びた)αヘリックス、融合ペプチド及びFIRを有する膜融合タンパク質を含む)。
本発明のさらに別の実施態様はウイルス感染を治療又は予防する方法を提供し、前記方法は、本明細書に記載された方法によりウイルス感染を阻害することができると同定された化合物の1つ又は2つ以上を患者に投与することによる。本発明のこの実施態様の種々の特徴において、投与される化合物は、ウイルスのFIR配列の全部又は機能的セグメントを含むペプチド又はペプチド類似体である。本発明のこの実施態様のいずれの特徴においても、投与される化合物は抗原性を有し、免疫応答を誘引するために十分な量で投与される。
本発明の他の実施態様は、“分子性因子(molecular factor)”、例えばプラスミド、組換えウイルス、又は他の物質を提供する(後者の他の物質は、細胞又は生物のウイルス感染を予防又は阻害することができるペプチド又はペプチド類似体を前記細胞又は生物に生成させるか、又は生成を刺激する物質である)。この実施態様のいずれの特徴においても、“分子的因子”は、患者に投与されたときウイルス感染を予防又は阻害することができる。
【0008】
本発明のまた別の実施態様は、2つの長く伸びたαヘリックス、融合ペプチド及びFIRを含む融合タンパク質をもつウイルスのウイルス:細胞膜融合を阻害することができる抗体を提供する。本発明のこの実施態様のいずれの特徴においても、前記抗体は、FIR配列を含むアミノ酸配列、又は抗体に認識させるために十分なサイズをもつFIRのフラグメントと特異的に結合することができる。本発明の実施態様の種々の特徴において抗体を製造する方法が提供される。この実施態様のある種の特徴では、抗体の製造方法は以下の工程を含む:(a)抗原としてウイルスの融合開始領域(FIR)又はFIRの抗原性フラグメントを含むペプチドを提供する工程;(b)前記抗原を動物に導入して免疫応答を誘引する工程;(c)前記動物から抗体を採集する工程;及び場合によって(d)前記採集した抗体を精製して、前記抗原に対して高い特異性を有する前記採集抗体の分画を同定する工程。
本発明の他の実施態様は患者を治療する方法を提供し、前記方法は、ウイルスのFIR領域を含むか、又はそのようなFIR領域の機能的フラグメントを含むペプチドを特異的に認識してこれと結合する抗体を患者に投与することを含む(この場合、後者の機能的フラグメントは抗体によるその特異的認識を可能にするために十分なサイズを有する、すなわち前記は抗原性フラグメントである)。
本発明の他の実施態様は、FIR又はその機能的フラグメントに特異的な抗体の製造方法を提供する。
【0009】
本発明の説明に供する実施態様
クラスI膜融合タンパク質を有するRNAウイルスの6番目のドメイン
アレナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス及びレトロウイルスは、クラスI膜融合エンベロープタンパク質を有する、これまでに同定されたRNAウイルスの6つのファミリーである。これらI型ウイルスの融合タンパク質は、以前に本発明者ら(Garry)及び他の研究者らによって、5個の保存されたモチーフまたはドメインを取り込んでいることが示された(Carr and Kim, 1993;Gallaher et al., 1989;Suarez et al., 2000;Wilson, Skehel and Wiley, 1981)。これらのドメインは、融合ペプチド、N-ヘリックス、C-ヘリックス及び芳香族モチーフ(前記は全てエクトドメインである)並びにアンカーペプチド(前記はエンドドメインである)を含む。
コンピュータによる分析、二次構造モデル、境界面の疎水性の計算及び他の技術を用いて、驚くべきことに本発明者らは高度に保存された6番目のドメインを発見した。前記ドメインは極めて多様なウイルスの融合タンパク質内に存在する(この6番目のドメインは本明細書で開示される)。このドメインを保有するウイルスには上記に挙げた6つのクラスのRNAウイルスが含まれるが、ただし必ずしもこれらに限定されない。この新規に同定されたドメイン(前記はエクトドメインである)の重大な機能を強調するために、本明細書ではこのドメインをウイルスの融合開始領域(FIR;fusion initiation region)と称する。
【0010】
本発明の種々の実施態様は、アレナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス及びレトロウイルスのウイルスファミリーでFIRを同定する方法を提供する。さらに、FIRが、他の既知のウイルスファミリー、又は新規に見出されたいずれかのウイルスファミリーに存在するのか否かを決定する方法もまた提供される。
本明細書で用いられる、“長く伸びた”αヘリックスは、4つを超える“アルファヘリックスターン”(特に14を超えるアミノ酸)を有するαヘリックスを指す。
他の実施態様は、ウイルス感染及び/又はウイルス:細胞融合の予防又は阻害に有効であることを本発明者らが予期せずに見出した“因子”を提供する。
本明細書で用いられる、“因子”という用語には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):新規に記載した融合開始領域(FIR)ドメインの単離ペプチド又は機能的ペプチドセグメント(又はそのペプチド類似体)、ペプチド模倣体(“ペプチド模倣体”とはFIRに干渉するペプチドの代用物として機能することができる任意の化合物又は物質を指し、前記はFIRの機能的セグメントの特性を模倣する任意の化合物である)、機能的FIRドメインに特異的な抗体(例えばイディオタイプ又は抗イディオタイプ抗体)、及びウイルス:細胞結合及び/又は融合に干渉する他の分子性化合物。
本明細書で用いられる、融合開始領域(FIR)の“機能的セグメント”又は“機能的フラグメント”は、ウイルス:細胞融合を阻害することができる、ウイルス感染を阻害することができる、FIRを認識しこれと特異的に結合することができる抗体を誘引することができる、及び/又はFIR仲介細胞感染に干渉することができるフラグメントを指す。
【0011】
本明細書で用いられる、“ペプチド類似体”又は“改変ペプチド”は、好ましくは、そのアミノ末端にアミノ基、アセチル基、疎水基(例えばカルボベンゾキシル、ダンシル又はt-ブチルオキシカルボニル)、又は巨大分子性担体基(例えば脂質複合物、ポリエチレングリコール、炭水化物又はタンパク質)を含むように改変されたFIRペプチドと定義される。
FIRペプチド類似体のさらに別のクラスは、そのカルボキシル末端にカルボキシル基、アミド基、疎水基又は巨大分子性担体基を含む。他のペプチド類似体は、隣接するアミノ酸残基を連結する少なくとも1つの結合が非ペプチド結合(例えばイミド、エステル、ヒドラジン、セミカルバゾイド又はアゾ結合)であるFIRペプチド、少なくとも1つのアミノ酸残基がD-異性体配置にあるペプチド、又はアミノ酸の順番が倒置されているペプチドと定義される。さらに別の類似体は、第一のアミノ酸残基が第二の別のアミノ酸残基に代わって用いられる少なくとも1つのアミノ酸置換を受け入れているFIRペプチドである(前記アミノ酸置換は保存的置換でも非保存的置換でもよい)。本明細書で用いられる、そのようなペプチド類似体は類似するアミノ酸配列を含むことができ、この場合、前記類似する配列は、大半が同一又は化学的に同様であるアミノ酸を原型配列と同じ順番で含んでいる。
【0012】
本明細書で用いられる、“融合開始領域(FIR)”という用語は、一般的には、ウイルスの感染及び/又は宿主細胞との融合の最初の工程又はいくつかの工程で必要とされるウイルス融合タンパク質の一領域を指す。
本明細書で用いられる“ペプチド模倣体”には、有機化合物又はFIRペプチドの構造若しくは機能を模倣する他の化学物質が含まれるが、ただしこれらに限定されない。ペプチド模倣体の例には、アミノ酸又はペプチドの官能側鎖基を含むけれども炭素/窒素骨格又はペプチド結合を欠く有機化合物が含まれるが、ただしこれらに限定されない。ペプチド模倣体はまたこれら官能側鎖基と他の成分との作用を模倣する化合物も指す。
他の分子、例えばイディオタイプ若しくは抗イディオタイプ抗体、又はファージディスプレー法により選択されるタンパク質(本出願に記載されているペプチド、ペプチド類似体又はペプチド模倣体と結合する)もまた、ウイルス感染及び/又はウイルス:細胞融合の阻害物質として機能することができる。本発明に包含されるものはまた、プラスミド、組換えウイルス、又は前記阻害性化合物の類似体を患者に産生させるか若しくは産生するように刺激を与える他の分子である。例えば、操作された細菌、菌類又は哺乳動物細胞で生成された組換えタンパク質を用いて、ウイルスの融合タンパク質のFIRの免疫原性類似体を製造することができる。同様に、抗イディオタイプ応答は、FIR特異的抗体の結合部位に対応する配列を含む、操作されたタンパク質を用いることによって個体で誘発することができる。
本明細書で用いられる“融合ペプチド”という用語は、好ましくはクラスIウイルス融合タンパク質のアミノ末端の、又はアミノ末端近くの疎水性配列を指す(Gallaher et al., 1987;1992を参照されたい)。
【0013】
本明細書で用いられる“実質的に精製された”ペプチド又はペプチド類似体という用語は、好ましくは、約80%を超える純度を有するペプチド又はペプチド類似体を指す。より好ましくは、“実質的に精製された”とは、約90%を超えるか、又は約95%を超える純度を有するペプチド又はペプチド類似体を指す。もっとも好ましくは、前記は、96%、97%、98%又は99%を超える純度を有するペプチド又はペプチド類似体を指す。機能的には、“実質的に精製された”とは、本明細書で提供される目的に対して前記ペプチド又はペプチド類似体が適切である程度に前記が夾雑物質を含まないことを意味する。純度を判定する方法は当業者には周知である。適切な方法には、質量分析と連携させたガスクロマトグラフィー(GC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析、及び細胞培養系での機能的アッセイでとりわけ細胞毒性を判定するものが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
本明細書で用いられる“安定な類似体”という用語は、生物学的な系で薬理学的に活性な半減期を有するペプチドを指す。60分を超える生物学的半減期が意図される。
本明細書で用いられる“ペプチド誘導体”という用語は、ウイルスの融合タンパク質のFIR配列のアミノ酸と異なる置換されたアミノ酸を有するペプチドを指す。この場合、前記置換はペプチドを本発明にとって有用でないものにする置換ではない。
本発明のこの実施態様の種々の特徴にしたがえば、ペプチド、ペプチド類似体、ペプチド模倣体及び他の因子は、化学合成、組換えDNAによる方法及び前記の組合せを含む(ただしこれらに限定されない)、当業界で公知の任意の手段によって生成することができる。
本発明は、I型及び他のウイルスのFIRを同定する方法、及びこれらのウイルスによる感染を治療又は予防する方法を提供する。本発明によって感染を予防及び/又は阻害することができる可能な1つのメカニズムは、FIR仲介ウイルス:細胞融合の阻害によってである。
【0014】
図面の簡単な説明
図1は、これら6つのウイルスファミリー(すなわちアレナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス及びレトロウイルス)のそれぞれの1メンバーの融合タンパク質のドメインを示す。図1の中の円は、例示した各ウイルスのFIRの凡その位置を示す。
【0015】
図2から7は、これらの融合タンパク質のアミノ酸配列(それぞれ配列番号:16−21に対応する)及びそれらの外側部(ectopic)の構造の模式図を示す。特に、表示されているものは、前述の5つのドメイン、すなわち融合ペプチド、N-ヘリックス、C-ヘリックス、芳香族モチーフ(存在する場合)及びアンカーペプチドである。新規に見出された6番目のドメイン、融合開始領域(又はFIR)もまた特定されている。図2から7では、各FIRは多角形によって示されている。
図2−7の各図において、融合タンパク質の後ろの円で囲まれた領域は、ウイルスの主要なウイルス:細胞結合タンパク質(VCBP)を表す。VCBPは通常融合タンパク質の部分と相互反応する。融合タンパク質はウイルス膜からもっとも離れており、したがって図にもそのような配置で示されている。高度に保存された融合タンパク質とは異なり、各ウイルスファミリーのVCBPはより多様である。ウイルスの宿主範囲を指令し、さらにどの宿主細胞タイプが感染の標的であるかを決定するのは通常はVCBPである。VCBPは、特定の細胞表面タンパク質を認識し、これと結合することによってこの能力範囲で機能する。標的とされる細胞タンパク質とVCBPとの結合はウイルス:細胞融合の前に生じ、典型的にはウイルス:細胞融合の必須の要件である。
【0016】
図8は、融合開始領域ペプチドによるコロナウイルス感染の阻害を示す。マウス肝炎ウイルス株A59又はSARSコロナウイルス株Urbaniの50から100PFUを、血清非含有DMEM中の表示ペプチド(〜100μM)とともに、又は前記ペプチドなしに1時間プレ-インキュベートした。続いて細胞をペプチド処理接種物又は賦形剤コントロール(ペプチド無し)に暴露した。1時間の吸着後、接種物を除去し、細胞を2回1Xのリン酸緩衝食塩水で洗浄し、前記細胞に10%FBS及び0.5%アガロースを含むDMEMを重層した。感染48時間後に、感染単層細胞を固定し、クリスタルバイオレットで染色してプラーク数を決定した。
【0017】
図9は、融合開始領域ペプチドによるラッサウイルス感染の阻害を示す。50から100PFUのラッサウイルスを、血清非含有BME中の表示ペプチド(〜100μM)とともに、又は前記ペプチドなしに1時間プレ-インキュベートした。続いて細胞をペプチド処理接種物又は賦形剤コントロール(ペプチド無し)に暴露した。1時間の吸着後、接種物を除去し、細胞を2回1Xのリン酸緩衝食塩水で洗浄し、前記細胞に5%FBS、10mMのHEPES及び0.5%アガロースを含むBMEを重層した。感染4日後に、5%の中性紅を含む2回目の重層を適用し、プラークを24時間後に数えた。
【0018】
クラスI膜融合タンパク質を有することが今や判明したRNAウイルス(I型ウイルス)の6つのファミリー及び各ファミリーの代表的なメンバーは以下のとおりである:
クラスI膜融合タンパク質を有する代表的なRNAウイルス(I型ウイルス)

【0019】
図に示したウイルスは以下のとおりである:

【0020】
例示したクラスI膜融合タンパク質(I型ウイルス)の配列リスト
ラッサGP2(Genbankアクセッション番号:A43492、アミノ酸257−490):
LLGT FTWTLSDSEG NETPGGYCLT RWMLIEAELK CFGNTAVAKC
NEKHDEEFCD MLRLFDFNKQ AIRRLKTEAQ MSIQLINKAV NALINDQLIM
KNHLRDIMGI PYCNYSRYWY LNHTSTGKTS LPRCWLISNG SYLNETKFSD
DIEQQADNMI TEMLQKEYID RQGKTPLGLV DLFVFSTSFY LISIFLHLVK
IPTHRHIVGK PCPKPHRLNH MGICSCGLYK QPGVPVRWKR(配列番号:16)

SARS S(Genbankアクセッション番号:AAQ9406、アミノ酸864−1256):
WTF GAGAALQIPF AMQMAYRFNG IGVTQNVLYE NQKQIANQFN
KAISQIQESL TTTSTALGKL QDVVNQNAQA LNTLVKQLSS NFGAISSVLN
DILSRLDKVE AEVQIDRLIT GRLQSLQTYV TQQLIRAAEI RASANLAATK
MSECVLGQSK RVDFCGKGYH LMSFPQAAPH GVVFLHVTYV PSQERNFTTA
PAICHEGKAY FPREGVFVFN GTSWFITQRN FFSPQIITTD NTFVSGNCDV
VIGIINNTVY DPLQPELDSF KEELDKYFKN HTSPDVDLGD ISGINASVVN
IQKEIDRLNE VAKNLNESLI DLQELGKYEQ YIKWPWYVWL GFIAGLIAIV
MVTILLCCMT SCCSCLKGAC SCGSCCKFDE DDSEPVLKGV KLHYT(配列番号:17)

エボラGP2(Genbankアクセッション番号:AAM76043、アミノ酸502−676):
EAIVNAQPK CNPNLHYWTT QDEGAAIGLA WIPYFGPAAE GIYTEGLMHN
QDGLICGLRQ LANETTQALQ LFLRATTELR TFSILNRKAI DFLLQRWGGT
CHILGPDCCI EPHDWTKNIT DKIDQIIHDF VDKTLPDQGD NDNWWTGWRQ
WIPAGIGVTG VIIAVIALFC ICKFVF(配列番号:18)

インフルエンザHA2(Genbankアクセッション番号:P03437、アミノ酸346−566):
GLFGA IAGFIENGWE GMIDGWYGFR HQNSEGTGQA ADLKSTQAAI
DQINGKLNRV IEKTNEKFHQ IEKEFSEVEG RIQDLEKYVE DTKIDLWSYN
AELLVALENQ HTIDLTDSEM NKLFEKTRRQ LRENAEEMGN GCFKIYHKCD
NACIESIRNG TYDHDVYRDE ALNNRFQIKG VELKSGYKDW RCNICI(配列番号:19)

麻疹F1(Genbankアクセッション番号:VGNZMV、アミノ酸116−553):
FAGVV LAGAALGVAT AAQITAGIAL HQSMLNSQAI DNLRASLETT
NQAIEAIRQA GQEMILAVQG VQDYINNELI PSMNQLSCDL IGQKLGLKLL
RYYTEILSLF GPSLRDPISA EISIQALSYA LGGDINKVLE KLGYSGGDLL
GILESRGIKA RITHVDTESY FIVLSIAYPT LSEIKGVIVH RLEGVSYNIG
SQEWYTTVPK YVATQGYLIS NFDESSCTFM PEGTVCSQNA LYPMSPLLQE
CLRGSTKSCA RTLVSGSFGN RFILSQGNLI ANCASILCKC YTTGTIINQD
PDKILTYIAA DHCPVVEVNG VTIQVGSRRY PDAVYLHRID LGPPISLERL
DVGTNLGNAI AKLEDAKELL ESSDQILRSM KGLSSTSIVY ILIAVCLGGL
IGIPALICCC RGRCNKKGEQ VGMSRPGLKP DLTGTSKSYV RSL(配列番号:20)

HIV TM(Genbankアクセッション番号:AAB50262、アミノ酸512−710)
AVGIGALFL GFLGAAGSTM GAASMTLTVQ ARQLLSGIVQ QQNNLLRAIE
AQQHLLQLTV WGIKQLQARI LAVERYLKDQ QLLGIWGCSG KLICTTAVPW
NASWSNKSLE QIWNHTTWME WDREINNYTS LIHSLIEESQ NQQEKNEQEL
LELDKWASLW NWFNITNWLW YIKLFIMIVG GLVGLRIVFA VLSIVNRVRQ (配列番号:21)
【0021】
FIRを同定する方法
本発明のある種の実施態様は、ウイルスの融合タンパク質内で保存されたモチーフを同定する方法を含む。種々のウイルス由来のFIR領域の保存されたモチーフは類似の構造及び機能を有するであろう。さらにまた、関連ウイルスのFIR領域は高度に類似する一次アミノ酸配列を有しえる(ただし必ずしもというわけではない)。本発明は、これらの領域を公知の配列に対するそれらの同一性/類似性を基準にして、又は前記に関係なく同定する手段を提供する。
本発明の他の実施態様は、ウイルス感染及び/又はウイルス:細胞融合の予防又は阻害に有用な方法を提供し、前記方法は、特定のウイルスのFIRを標的とし、前記FIRの機能と干渉するペプチド、ペプチド模倣体、抗体又は他の因子を用いる。
FIRは典型的には長さが50から100アミノ酸であるが、いくつかのウイルスではもっと長い場合もある。本実施態様の種々の特徴において、ウイルスの融合タンパク質のFIRを同定する方法が提供され、前記方法は以下の(1)から(3)の工程を含む:
(1)対象の融合タンパク質中のN-ヘリックス及びC-ヘリックスを同定するために、まず初めに前記融合タンパク質の配列をHIVのトランスメンブレン融合タンパク質の枠組み(前記はN-ヘリックス、C-ヘリックス及び他の前述のドメインを含む)に適合させる。この適合プロセスは、少なくとも1つの共有結合ループ(前記はこれらの配列の全てではないが大半に存在するであろう)を形成する傾向をもつ2つ又は3つ以上のシステインについて、前記タンパク質の一次アミノ酸配列を検索することによって促進される。続いてN-ヘリックスは、このシステインループに先行する領域において、荷電アミノ酸及びアルファヘリックスを形成する傾向を有する他のアミノ酸(例えばグルタミン(Q)、アラニン(A)、トリプトファン(W)、リジン(K)及びロイシン(L))について前記領域を精査することによって同定することができる。
(2)続いてFIRのアミノ末端をN-ヘリックス上で同定する。この末端は、通常N-ヘリックスの最後の10から20アミノ酸内に存在し、さらに典型的には3つから4つの疎水性アミノ酸(例えばロイシン(L)又はアラニン(A))、陽性荷電アミノ酸(例えばリジン(K)又はアルギニン(R))、陰性荷電アミノ酸(例えばグルタメート(E))及び芳香族アミノ酸(例えばチロシン(Y))を含むであろう。
【0022】
(3)続いてFIRのカルボキシ末端を同定する。コロナウイルス及びパラミクソウイルスを除き全てのファミリーの事例で、この末端は、N-ヘリックスを越えて見出される陽性の境界面疎水性をもつ第一のペプチド配列のカルボキシ末端である。この末端は、システインループが存在する場合は通常システインループを超えて位置し、時にはC-ヘリックスとオーバーラップするか、又はC-ヘリックス上に位置する。前記の陽性の境界面疎水性配列は、高いパーセンテージで芳香族アミノ酸(例えばトリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)及びチロシン(Y))及び小さい疎水性アミノ酸(例えばグリシン(G))を有する。これらの配列の境界面疎水性の程度は、ウィムリー-ホワイト(Wimley-White)境界面疎水性規準を用い、好ましくはコンピュータプログラム(例えば前記規準を取り入れているMPEXプログラム)により決定することができる。(“境界面疎水性”は、水溶液から膜二重層境界面へ移るペプチドの能力の大きさであり、実験的に決定されたウィムリー-ホワイト全残基疎水性規準を基にしている(Jaysinghe, Hristova and White, 2000)。この規準を用いるコンピュータプログラムは、陽性の境界面疎水性スコアをもち、したがって膜の表面と結合する可能性が高いペプチド鎖のペプチド配列を特定することができる)。エボラウイルスのFIRの同定のためのこの方法の適用例として、実施例1を参照されたい。
コロナウイルス(前記はより長いアルファヘリックスを有し、一般的に規模がより大である)及びパラミクソウイルス(前記ではFIRは非FIR配列の挿入物のために不連続である)の場合、FIRのカルボキシ末端は、N-へリックスを超えて見出される陽性の鏡界面疎水性をもつ第二のペプチド配列のカルボキシ末端である。パラミクソウイルスのF1タンパク質中のN-ヘリックスとC-ヘリックスとの間の配列は、クラスIウイルス融合タンパク質をもつ他のウイルスのヘリックス間配列よりも長い。パラミクソウイルスのF2タンパク質(前記はレセプター結合機能に役立つ)はしたがって短い。コンピュータモデルの精査に際して、F1タンパク質はN-ヘリックスとC-ヘリックスとの間に挿入配列を含むことは当業者には明白である。結果として、パラミクソウイルスのFIRは、2つのシステインループ及び2つの高い境界面疎水性をもつ配列を含み、さらに別のアミノ酸(前記はパラミクソウイルスだけの特徴で、N-ヘリックスと第一の高い境界面疎水性をもつ配列との間に出現する)がFIRから除外されるので不連続である。
【0023】
FIR配列
図2から図7に示した6つの対応するウイルスの各々について融合タンパク質及びFIRの配列が、対応する図及び下記に提供されている配列リストに示されている(配列16から配列21は対応する融合タンパク質を提供し、配列番号:1から配列番号:7は対応するFIRを提供する)。これら6つのファミリーの各々内の姉妹ウイルス間に何らかの小さな配列変動は存在するが、いずれのI型ウイルスのFIRも該当する図面に提供された代表的な配列を用いて容易に同定することができる。
これらのウイルスで融合を阻害する方法
本発明の他の実施態様は、FIRの機能と干渉することによってウイルス:細胞融合を阻害する方法を提供する。これらの実施態様の種々の特徴は、ウイルス:細胞融合に干渉するために、ペプチド、ペプチド類似体及び他の因子(これらはFIRの類似体であっても類似体でなくてもよい)によりFIRを標的とすることを含む。本発明のこの実施態様の種々の特徴において、前記ペプチド、ペプチド模倣体、及びペプチド類似体は長さが約6から150アミノ酸である。より好ましくは、それらは長さが約8から50残基であり、さらに好ましくは、それらは長さが約8から40アミノ酸であるか、又はウイルス感染の効果的な阻害を提供するために必要な長さを有する。本明細書で用いられる、“ウイルス感染の効果的な阻害を提供するために必要な長さ”は、本発明にしたがって用いたとき、好ましくは5倍又はそれより大きなウイルス感染性の減少を提供するために十分な長さを指す。ウイルス感染性の減少を定量する方法は当業者には周知である。例えばウイルス活性の減少は、プラーク減少アッセイ、結合阻害アッセイ、力価減少アッセイによって、又は動物攻撃実験によって決定することができる。
本発明の部分として意図されるFIRペプチド、類似の配列をもつペプチド、又はそのフラグメント若しくは誘導体には、一次アミノ酸配列として、以下の1つ又は2つ以上の全て又は有効な部分を含むものが含まれる(ただしこれらに限定されない):
【0024】
ラッサ
X-LIMKNHLRDIMGIPYCNYSRYWYLNHTSTGKTLPRCWLI-Z(配列番号:1)
SARS
X-LIRAAEIRASANLAATKMSECVLGQSKRVDFCGKGYHLMSFPQAAPH GVVFLHVTYVPSQERNFTTAPAICHEGKAYFPREGVFVFNGTSWFITQRNFFS-Z(配列番号:2)
エボラ
X-LRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCI-Z(配列番号:3)
インフルエンザ
X-IQDLEKYVEDTKIDLWSYNAELLVALENQHTIDLTDSEMNKLF-Z(配列番号:4)
麻疹
X-LGLKLLRYYTEILSLFG-Z(配列番号:5)
----
X-WYTTVPKYVATQGYLISNFDESSCTFMPEGTVCSQNALYPMSPLLQE
CLRGSTKSCARTLVSGSFGNRFILSQGNLIANCASILCKCYTTGTII-Z(配列番号:6)
(“----”は前記麻疹ウイルスのFIRは不連続であることを示している)。
HIV
X-LQARILAVERYLKDQQLLGIWGCSGKLICTTAVPWNASWSNKSLE QIWNHTTWMEWD-Z(配列番号:7)
【0025】
前述の配列の各々において、“X”及び“Z”は、それぞれペプチドのアミノ末端若しくはカルボキシ末端又は下記に記載するように追加成分を示す。
本発明によって提供される他のペプチドにはFIR領域の配列を有するものが含まれる。この実施態様の好ましい特徴では、FIR領域は、アレナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス及びレトロウイルスから成る群から選択されるウイルスファミリーの1つに属するウイルスに由来する。この実施態様のより好ましい特徴では、前記FIRは、ラッサウイルス、リンパ球性脈絡膜炎ウイルス(LCMV)、ジュニンウイルス(Junin Virus)、マクポウイルス(Machupo Virus)、グァナリトウイルス(Guanarito Virus)、サビアウイルス(Sabia Virus)、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス、ネズミ肝炎ウイルス(MHV)、ウシコロナウイルス、イヌコロナウイルス、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス、エボラウイルス、マルブルクウイルス、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、インフルエンザCウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、イヌジステンパーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)、ヒト免疫不全ウイルス2(HIV-2)、ヒトT細胞向性ウイルス1(HTLV-1)、ヒトT細胞向性ウイルス2(HTLV-2)、ヒト槽内A型粒子1(Human Intracisternal A-type Particle, HIAP-1)、ヒト槽内A型粒子2(HIAP-2)から成る群から選択されるウイルスに由来する。
【0026】
本発明のこの実施態様の他の特徴は、FIR配列の機能的フラグメント又は前記と類似する配列を含む配列を提供し、前記配列は、特にアレナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス及びレトロウイルスから成る群から選択されるウイルスファミリーの1つに属するウイルスに由来するが、ただし本発明者ら(Garry)が以前に記載し図7にも示されているHIV-1 TM CS3ペプチドは除外される。この実施態様の別の好ましい特徴では、前記ペプチドは、ラッサウイルス、リンパ球性脈絡膜炎ウイルス(LCMV)、ジュニンウイルス、マクポウイルス、グァナリトウイルス、サビアウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス、ネズミ肝炎ウイルス(MHV)、ウシコロナウイルス、イヌコロナウイルス、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス、エボラウイルス、マルブルクウイルス、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、インフルエンザCウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、イヌジステンパーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)、ヒト免疫不全ウイルス2(HIV-2)、ヒトT細胞向性ウイルス1(HTLV-1)、ヒトT細胞向性ウイルス2(HTLV-2)、ヒト槽内A型粒子1(HIAP-1)、ヒト槽内A型粒子2(HIAP-2)から成る群から選択されるウイルスに由来する機能的フラグメント(HIV-1 TM CS3フラグメントは除く)又は機能的フラグメントに類似する配列を含む。
【0027】
上記に記したように、本発明はまた、上述のFIRペプチドの誘導体及び前記に類似する配列も意図する。これらの誘導体ペプチドは、機能的に等価のアミノ酸残基によって前記配列内の残基が置換され、結果としてサイレント変化を生じる変異配列を含むことができる。例えば、配列内の1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を、機能的等価物として作用する類似の極性を有する別のアミノ酸によって置き換えることができ、結果としてサイレント変異を生じる(例えばロイシンをイソロイシンで置換)。配列内のあるアミノ酸の置換は、前記アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択することができる。例えば非極性(疎水性)アミノ酸にはアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンが含まれる。極性中性アミノ酸にはグリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンが含まれる。陽性荷電(塩基性)アミノ酸にはアルギニン、リジン及びヒスチジンが含まれる。陰性荷電(酸性)アミノ酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれる。更に例示すれば(制限としてではなく)、そのようなペプチドはまたD-アミノ酸を含むことができ、及び/又は前記ペプチドは効力をもたない担体タンパク質を含んでいてもよいが、又は全く担体タンパク質を含まなくてもよい。
FIRペプチドは、“X”がアミノ基、アセチル基、疎水基、巨大分子基を含み、及び/又は“Z”がカルボキシル基、アミド基、疎水基、又は巨大分子基を含むペプチドを含むことができる。本発明の種々の特徴では、“X”成分は、疎水性成分、カルボベンゾキシル成分、ダンシル成分又はt-ブチルオキシカルボニル成分を含む群から選択することができるペプチドが提供される。本発明のペプチドのいずれにおいても、“Z”成分は、疎水性成分、t-ブチルオキシカルボニル成分を含む群から選択することができる。
【0028】
本発明のこの実施態様の他の特徴では、“X”成分は巨大分子性担体基を含むことができる。そのような巨大分子性担体基は、脂質複合物、ポリエチレングリコール成分、又は炭水化物成分を含む群(ただしこれらに限定されない)から選択することができる。同様に、“Z”もまた巨大分子担体基を含むことができ、前記巨大分子担体は、脂質複合物、ポリエチレングリコール成分、又は炭水化物成分を含む群(ただしこれらに限定されない)から選択される。
本発明のこの特徴の種々の実施態様はまた、隣接するアミノ酸残基を連結する1つ又は2つ以上の分子結合が非ペプチド結合であるペプチドも意図する。そのような非ペプチド結合にはイミド、エステル、ヒドラジン、セミカルバゾイド及びアゾ結合が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
本発明のさらに他の特徴では、D-異性体アミノ酸である1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を含むペプチドが提供される。
本発明の他の特徴では1つ又は2つ以上のアミノ酸置換を含むペプチドが提供され、この場合、第一のアミノ酸残基は、上記に提供された配列(又はその機能的セグメント)で第二の別個のアミノ酸残基によって置換される。この実施態様の種々の特徴において、前記アミノ酸置換は保存的置換である。この実施態様の他の特徴では、前記アミノ酸置換は非保存的置換である。本発明のこの実施態様のさらに別の特徴では、上述のペプチドが提供されるが、ただし1つ又は2つ以上のアミノ酸残基が欠失している。
【0029】
本実施態様の種々の好ましい特徴では、FIRペプチドはFIRの少なくとも3つの連続する残基を含む。より好ましくは、FIRペプチドはFIRの少なくとも8つの連続する残基を含む。本明細書で用いられる、“FIR阻害性ペプチド”という用語は、好ましくはFIR(又はその機能的セグメント)の配列を有するペプチド、又は1つ又は2つ以上のアミノ酸残基が機能的に等価又は化学的に類似のアミノ酸によって置換されているペプチド又はその機能的セグメント(下記参照)を指す。前記用語はまた、これらのペプチドの誘導体(ベンジル化誘導体、グリコシル化誘導体を含むが、ただしこれらに限定されない)、及び天然に存在するアミノ酸の鏡像体を含むペプチドも指す。この実施態様の好ましい特徴では、前記ペプチドは、配列番号:1−7、8−15、22−25及び30のいずれかの配列を有するペプチドから選択される。この実施態様の特に好ましい特徴では、前記ペプチドは、配列番号:22−25及び30から成る群から選択される配列を有する。
本発明のこの実施態様のさらに他の特徴では、FIRペプチドは、担体分子、例えばタンパク質(ヒト血清アルブミンを含むが、ただしこれに限定されない)と結合されてあってもよい。
さらにまた、本発明は、X及びZ成分の任意の組合せ及び/又は上述の他のペプチド改変を含む分子も意図する。
【0030】
本発明のペプチドは、天然に存在するウイルスタンパク質又は組換えウイルスタンパク質から製造することができる。前記ペプチドはまた、標準的な組換えDNA技術を用いて製造することができる。前記技術は、例えば所望のペプチドをコードする組換え核酸分子を含む微生物によるペプチドの発現、適切な転写プロモーターの制御下での発現、及び前記微生物からの所望のペプチドの採集である。本発明の好ましい特徴では、本発明のペプチドのいずれも、メリーフィールドの固相合成(Clark-Lewis et al., 1986, Science 231:134-139)を含む(ただしこれに限定されない)、当業者に公知の任意の化学合成方法を用いて製造することができる。
本発明の実施態様はまた、ウイルスによる細胞の感染を治療又は予防するための有用な他の化合物を提供する。これらの化合物には、抗体(又は活性を有するそのセグメント、FIR領域又はその機能的セグメントを特異的に認識することができる抗体の重要な部分)及び他の分子が含まれる。本発明のこの実施態様のある種の特徴は、FIR又はその抗原性フラグメントを特異的に認識する抗体、及び/又は、ウイルスによる細胞の感染を防止又は減少させるために十分にウイルス:細胞相互作用と干渉することができる抗体を提供する。本発明のこれらの実施態様の抗体はモノクローナルでもポリクローナルでもよい。
本発明の種々の実施態様は、FIRを特異的に認識することができる抗体、及び/又はウイルスによる細胞の感染を予防又は減少させることができる抗体の製造方法を提供する。抗体を製造するための一般的な方法は当業者には周知である。本発明の抗体を製造する方法は以下の工程を含む:(i)FIR又はその抗原性フラグメントを含む抗原を提供する工程(そのような抗原は未改変ペプチド、ペプチド模倣体、ペプチド類似体又はペプチド誘導体でありえる);(ii)動物の免疫系を前記抗原に暴露して免疫応答を誘発する工程;(iii)前記動物から抗体を採集し、FIR(又はその機能的セグメント)を特異的に認識するか、或いはウイルスの感染性を測定するアッセイにおいて用量対応態様でウイルス:細胞感染を阻害又は減少させることができる抗体を同定する工程。
【0031】
本発明の他の実施態様は、FIRを含むウイルスによる感染を予防又は阻害することができるか、又はウイルス感染の予防又は阻害を目的とする薬剤の開発のための薬剤指標として有用な化合物を同定する方法を提供する。そのような方法は以下の工程を含む:(i)ウイルス:細胞融合に必須である融合開始領域を含む少なくとも1つの膜融合タンパク質をもつウイルスを同定する工程;(ii)FIR又はFIRの機能的セグメントのアミノ酸配列を含む標的を調製する工程;(iii)複数の化合物をスクリーニングし、標的と結合する少なくとも1つの化合物を同定し、それによって標的結合化合物を同定する工程;(iv)少なくとも1つの標的結合化合物をスクリーニングして、前記標的が得られたウイルスによる感染を特異的に予防又は減少させることができるか、又はそのようなウイルスによる感染を特異的に予防又は減少させる薬剤の開発のための薬剤指標として有用な標的結合化合物を同定する工程。本明細書で用いられる、“ウイルス感染を特異的に予防又は減少させる”という語句は、化合物が、関連のないウイルスに対して実質的な影響を全く示すことなく、標的ウイルスによる感染を特異的に防止することを意味する。例えば、SARSウイルスによる感染を特異的に防止する化合物は、HIV-1ウイルスによる感染を防止しないであろう。
本明細書で用いられるように、上記の方法で同定される化合物(例えば薬剤又は薬剤指標)は任意のタイプでありえる。非包括的に列挙すれば、それらは、任意のペプチド(又はその誘導体、類似体若しくは模倣体)(前記には典型的にはファージディスプレーライブラリーで用いられるような短いペプチドが含まれる)、任意の抗体又はその活性なフラグメント(すなわち、標的を特異的に認識することができる任意のフラグメント、例えばFab)、又は他の任意の有機若しくは無機分子であろう。
【0032】
本発明のいずれの実施態様においても、FIRは、少なくとも2つの長く伸びたアルファヘリックス、融合ペプチド及び融合開始領域を含む膜融合タンパク質をもつ任意のウイルスに由来することができる。好ましくは、ウイルスは、アレナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス及びレトロウイルスから成る群から選択されるウイルスファミリーから選択される。より好ましくは、前記ウイルスは、ラッサウイルス、SARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルス、エボラウイルス、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス及びHIV-1(ヒト免疫不全ウイルス1型)から成る群から選択される。
本発明の種々の特徴に従えば、細胞のウイルス感染の治療又は予防に有用な本発明のペプチド及び/又は因子は、FIRシステインループ周辺及び前記ループ内のアミノ酸、FIRのN-ヘリックスの遠位部分、FIRの境界面の任意の疎水性領域、FIRの他の領域、又はそれらの組合せを標的とすることができる。これらの因子、抗体、ペプチド又はペプチド類似体(総合的に化合物)は個々に用いることができるが、また別には、それらは2つ又は3つ以上を組み合わせて用い、前記ウイルスによる細胞の感染を予防又は阻害することができる。本発明によって提供されるFIRの機能を阻害することによる細胞のウイルス感染を予防又は阻害する方法はまた、内因的又は外因的に生成された、FIRの全体又は部分に対する中和抗体の使用を含む。そのような使用の目的は、FIRの機能と干渉し、それによって細胞のウイルス感染及び/又はウイルス:細胞膜融合を阻害することである。
【0033】
本発明の他の実施態様は、組成物(医薬組成物を含む)を提供する。前記組成物は、本発明の化合物、ペプチド(その類似体、誘導体、及び模倣体を含む)、抗体、又は本発明の他の任意の分子若しくは本発明の方法によって同定される任意の他の分子を含む。これには、FIR又はFIRの機能的セグメントを含むか、本質的に前記から成るか、又は前記から成る任意の分子を含む組成物が含まれるが、ただしこれらに限定されない。前記にはさらに、ウイルスのFIRを特異的に認識するか、前記と結合するか、又は前記の機能と干渉する任意の化合物を含む組成物が含まれるが、ただしこれらに限定されない。本明細書で用いられる、“FIRの機能と干渉する”という語句は、化合物がFIRと相互作用するか、又はFIRを認識するレセプターとして機能する細胞性タンパク質と相互作用して、ウイルスによる細胞の感染を防止又は減少させることを意味する。さらにまた、前記組成物は、開示の分子の1つ又は前記分子の2つ若しくは3つ以上の混合物を含みえることが意図される。
本発明のさらに別の実施態様は、本発明の任意の化合物、及び/又は本発明のいずれかの方法によって同定された任意の化合物を用いて、ウイルス(前記ウイルスはFIRを含む)による細胞の感染を治療又は予防する方法を提供する。本発明のこの実施態様の種々の特徴は、本明細書に記載した任意の医薬組成物の有効量を、ウイルス(前記ウイルスはFIRを含む)に暴露された疑いがある(又はウイルスに暴露される可能性がある)患者に投与することを提供する。本発明の種々の特徴では、医薬組成物は、FIR(又はFIRの機能的セグメント)を特異的に認識してこれと結合する抗体、又はFIR若しくはFIRの機能的セグメントを特異的に認識してこれと結合する抗体のフラグメントを含む。
本発明のこの実施態様のさらに他の特徴は、少なくとも1つの組換えDNA又はRNA分子を含む組成物の有効量を患者に投与することを含む方法を提供する。ここで、前記RNA又はDNAは、FIR(又はその機能的フラグメント)又は、FIR若しくはFIRを認識する細胞性レセプターと特異的に結合してウイルスによる感染を予防又は減少させることができる分子をコードする。この実施態様の好ましい特徴では、組換えRNA又はDNA分子及び/又は医薬組成物は、前記RNA又はDNA分子によって発現されるタンパク質がヒトの細胞で発現されることを可能にするために必要なエレメントを含む。非制限的に例示すれば、本発明のこの実施態様のある種の特徴では、前記組換えRNA又はDNA分子は組換えプラスミド又は組換えウイルスの一部分である。
【0034】
実施例
実施例1:エボラウイルスのFIRの同定
クラスIウイルス融合タンパク質のFIRを同定する方法は、2つの例によって例証することができる。第一の例は、エボラウイルス(フィロウイルス)の最小クラスI融合タンパク質である糖タンパク質2(GP2)のFIRの同定である。エボラウイルスGP2のN-ヘリックス及びC-ヘリックスの境界はX-線結晶学的方法によって決定された(Malashkevich et al., 1999)。N-ヘリックスの末端アミノ酸は、配列ILNPKAIDF(配列番号:8)を含み、前記配列は、3つ又は4つの疎水性アミノ酸、1つの陽性荷電アミノ酸、1つの陰性荷電アミノ酸及び1つの芳香族アミノ酸を含むコアのコンセンサスと適合する。配列CHILGPDC(配列番号:9)にはこれら2つのヘリックスの間に2つのシステインが存在する。エボラウイルスGP2 FIRの末端の範囲を規定するものは、配列FLLQRWGGTCHILGPDCCI(配列番号:10)であり、前記はMPEXプログラム(Jaysinghe et al., 2002)によって決定したとき2.59のウィムリー-ホワイト境界面疎水性スコアを有する。したがって、エボラウイルスGP2のFIRはアミノ酸579から610に広がる。
【0035】
実施例2:麻疹ウイルスのFIRの同定
第二の例は複雑なクラスI融合タンパク質、麻疹ウイルス(パラミクソウイルス)のF1タンパク質である。麻疹ウイルスのF1のN-及びC-ヘリックスは、ヘリックスを形成する傾向をもつアミノ酸について一次配列を精査することによって同定することができる。麻疹ウイルスのF1の一次配列を別のパラミクソウイルスのF1タンパク質、ニューカッスル病ウイルスのF1の一次アミノ酸配列とアラインメントすることは、ヘリックスの境界の同定に有用である。ニューカッスル病ウイルスのF1タンパク質の構造はX-線結晶学的方法で決定された(Chen et al., 2001)。N-及びC-ヘリックスの境界はしたがって、それぞれアミノ酸131−217及び455−491であると予想することができる。エボラウイルスGP2及び他の大半のウイルスのクラスI融合タンパク質とは対照的に、麻疹ウイルスのN-及びC-ヘリックス間の一次配列は100アミノ酸より長い。麻疹ウイルスのF1のFIR領域は挿入物を含み、前記は、コンピュータモデルの精査時に当業者には明白で、したがってFIRの構造は、前記一次配列の2つの部分を一緒にする二次編成によって形成される。前記挿入配列はFIRの外側にループを形成する。N-ヘリックスの末端アミノ酸はLKLLRYYTE(配列番号:11)を含み、前記は、3つ又は4つの疎水性アミノ酸、1つの陽性荷電アミノ酸、1つの陰性荷電アミノ酸及び1つの芳香族アミノ酸を含むコアのコンセンサスと適合する。麻疹ウイルスF1にはN-ヘリックスとC-ヘリックスとの間に8つのシステイン残基が存在する。ニューカッスル病ウイルスのF1とのアラインメントを基にして、最初の2つのシステイン及び二番目の2つのシステインがジスルフィド結合ループを形成すると決定することができる。配列CTFMPEGTVCの最初のシステイン対はFIRの部分である。なぜならば、前記は、MPEXプログラムによって測定したとき3.36のウェムリー-ホワイト境界面疎水性スコアをもつ配列WYTTVRKYVATQGYLISNF(配列番号:13)によって結合されているからである。配列CLRGSTKSC(配列番号:14)中の第二のシステイン対はまたFIRの部分である。なぜならば、前記は、MPEXプログラムによって測定したとき2.54のウェムリー-ホワイト境界面疎水性スコアをもつ配列TLVSGSFGNRFILSQGNLIANCASILCKCYTTGTII(配列番号:15)に隣接するからである。したがって、麻疹ウイルスF1のFIRはアミノ酸205から407に広がるが、アミノ酸221から314はFIR機能に参画しない挿入物を表す。
【0036】
実施例3:コロナウイルスの融合阻害ペプチドの同定
背景
重症急性呼吸器症候群(SARS)は、2000年後半/2003年初頭の中国南部からアジア、ヨーロッパ及び北アメリカのいくつかの国々に広まった、新しく認知された疾病である(Guan et al., 2004)。SARSは通常38℃を超える発熱で始まる。最初の症状はまた頭痛、倦怠感及び軽度の呼吸器症状を含みえる。2日から1週間以内に、SARSの患者は空咳を発し、呼吸困難を生じえる。病期がより進行したSARS患者は肺炎又は呼吸窮迫症候群を発症する。最初の流行では、世界中で8098症例があり、全体的な死亡率は9.6%であった。以前に認識されなかったコロナウイルス(CoV)がこの新しい疾患の原因であることが明らかにされた(Poutanen et al., 2003;Peiris et al., 2003;Droste et al., 2003;Rota et al., 2003;Mara et al., 2003)。公衆衛生への介入、例えば監視、渡航制限及び強制隔離によって2003年のSARS CoVの最初の流行が抑制され、さらに2004年の新しい数症例の出現後SARSの流行は停止したようにみえる。しかしながら、このような厳しい抑制手段がヒトのSARS CoVの出現のたびに持続されえるか否かは明確ではない。さらにまた、この新規で時には致死的であるCoVの生物テロの脅威としての潜在性は明白である。
コロナウイルスは、典型的には広い宿主域をもつ、大きな陽性鎖をもつRNAウイルスである。他のエンベロープを有するウイルスのように、CoVはウイルスと細胞膜との間の融合(ウイルスのスパイク(S)タンパク質によって仲介されるプロセス)により標的細胞に侵入する。今日までに明らかにされたCoV Sタンパク質の特徴は、非共有結合により結合した2つのサブユニット、S1及びS2から成るようである。コンピュータによる分析を用いて、GarryとGallaher(2003)は最初、S2サブユニットに対応するSARS-CoVのSタンパク質はクラスIウイルス融合タンパク質のプロトタイプモデルに適合すると提唱した。前記は、S2のN-及びC-末端の2つの予想されるアルファヘリックス領域(N-ヘリックス、C-ヘリックス)の存在、及びトランスメンブレンアンカードメインの直ぐ前の芳香族アミノ酸に富む領域の存在を基にしている。
【0037】
材料と方法
L2細胞及びVero E6細胞は、0.15%HCO3を含有する、10%ウシ胎児血清(FBS)、ペニシリンG(100U/mL)、ストレプトマイシン(100mg/mL)及び2mMのL-グルタミンを補充された完全ダルベッコー改変イーグル培養液(DMEM)で単層培養として5%CO2インキュベーターで37℃で維持した。マウス肝炎ウイルス(MHV)A59株又はSARS CoVのウルバニ(Urbani)株又はHKはL2細胞で増殖させた。プラークアッセイについては、L2細胞又はVero E6細胞を6ウェルプレートの各ウェルに1x106細胞の密度で播種した。MHV又はSARS CoVの50から100プラーク形成単位(p.f.u.)を、血清非含有DMEM中のほぼ100μg/mLのペプチドとともに、又は前記ペプチド無しに1時間プレ-インキュベートした。続いて細胞をペプチド処理接種物又は賦形剤コントロール接種物で感染させた。1時間の吸着後、接種物を取り除き、細胞を1xのリン酸緩衝食塩水で2回洗浄し、前記細胞に0.5%SEAPLAQUE(商標)アガロース(Cambrex Bio Science Rockland, Inc., Rockland, ME)を含む10%FBS/DMEMを重層した。感染後2日で、単層細胞を3.7%のホルマリンで固定し、1xのクリスタルバイオレットで染色し、光学顕微鏡によりプラーク数を決定した。
【0038】
結果と考察
MHV又はSARS CoV Sタンパク質のFIRドメインに対応する合成ペプチドを、これらコロナウイルスによる感染を阻害するそれらの能力についてテストした。単層細胞でのプラーク形成を阻害する能力は、潜在的な感染阻害薬剤のもっとも厳しいin vitro試験である。MHV FIR由来の2つのペプチド(GNHILSLVQNAPYGLYFIHFSW、配列番号:22及びGYFVQDDGEWKFTGSSYYY、配列番号:23)は、MHVによるプラーク形成を阻害することができるが、最初のMHV FIRがより有効である(図8A参照)。SARS CoVのFIR由来の2つのペプチド(GYHLMSFPQAAPHGVVFLHVTY、配列番号:24及びGVFVFNGTSWFITQRNFFS、配列番号:25)は、このコロナウイルスによるプラーク形成を阻害した(図8B参照)。残留プラークの平均直径においても有意な減少があった(〜50%)。これらの結果は、このペプチドがMHVの侵入及び拡散の両方を阻害することを示している。これらの阻害性ペプチドによる同様な結果が別個の実験で得られ、50%プラーク抑制が<5μMの濃度で観察された。これらの結果は、このペプチドの非特異的な細胞障害作用によるとの説明は蓋然性が低いことを示している。プラークを除いて単層細胞は無傷で生存していた。生じたプラークの少数がコントロールプラークのサイズと類似していた。他の領域に由来するペプチドもまたこれらのウイルスによる感染を阻害したが、もっとも活性が強いFIRペプチドよりもその程度は低かった(図8)。例えば、MHV及びSARS CoV Sの融合ペプチド領域及びカルボキシ末端ヘリックス(C-ヘリックス)由来のペプチドはある程度の阻害を提供した(MHV S融合ペプチド=MFPPWSAAAGVPFSLSVQY、配列番号:26;MHV S C-ヘリックス=QDAIKKLNESYINLKEVGTYEMYVKW、配列番号:27;SARS CoV S融合ペプチド=MYKTPTLKYFGGFNFSQIL、配列番号:28;SARS CoV S C-ヘリックス=AACEVAKNLNESLIDLQELGKYEQYIKW、配列番号:29)。μM範囲の阻害活性が、コロナウイルスのC-ヘリックスペプチドを用いてBoschら(2003)及び他の研究者(Bosch et al., 2004;Lui et al., 2004;Yuan et al., 2004;Zhu et al., 2004)によって最近報告された。しかしながら、FIRコロナウイルス阻害性ペプチドはこれまで報告されていない。それにもかかわらず、引用した参考文献は本発明のすばらしい利点についての支持を提供している。すなわち、これらの参考文献は、本発明の方法は、コロナウイルスファミリーのメンバーによる融合/感染性を阻害する合成ペプチドの同定に有利に用いることができるという本発明者らの主張と一致している。
【0039】
実施例4:アレナウイルス融合阻害ペプチドの同定
背景
ラッサ熱は、最初に記載された症例が1969年に発生したナイジェリアのイェドセラム(Yedseram)渓谷の町の名前が付けられた、しばしば致死的な出血性疾患である(Buckley and Casals, 1970)。ギニア、シェラレオーネ、ナイジェリア及びリベリアの一部にこの病原因子、ラッサウイルス(LasV)による風土病が存在する。この風土病発生地域におけるLasVの公衆衛生における影響は計り知れない。疾病予防管理センター(Centers for Control and Prevention, CDC)は、西アフリカでは毎年100,000から300,000症例のラッサが発生し、5,000人が死亡すると概算している。シェラレオーネのいくらかの地域では、病院に収容された全患者の10−15%がラッサ熱である。ラッサ熱の疾患死亡率は典型的には15から20%であるが、風土病発生地域では全体的な死亡率は45%にも達する。妊娠最終月の妊婦の死亡率は常に高く〜90%であり、さらにLasV感染は、いずれの妊娠時期においても高率で胎児死亡を引き起こす。ラッサの死亡率は北アフリカではいっそう高いようであり、このことは、ラッサがもっとも一般的に外に持ち出される出血熱であるので気がかりである。高い死亡率及び人との接触によって容易に拡散するその能力のために、LasVは、生物安全性レベル4及びNIAID生物防御カテゴリーA因子に分類されている。
LasVはアレナウイルス科のメンバーである。アレナウイルスのゲノムは、2つのセグメントの一本鎖のアンビセンスRNAから成る。透過型電子顕微鏡で観察したとき、エンベロープで包まれた球形のビリオン(直径:110−130nm)は顆粒状の粒子を示し、前記粒子は宿主細胞から得たリボソームである(Murphy and Whitefield)。したがって、ラテン語の“arena”(“砂状”を意味する)という科の名称が使用されている。LasVの他に、ヒトで疾病を引き起こす他のアレナウイルスには、ジュニンウイルス(アルゼンチン出血熱)、マクポウイルス(ボリビア出血熱)、グァナリトウイルス(ヴェネズエラ出血熱)及びサビアウイルス(ブラジル出血熱)が含まれる。人間に伝染する動物のウイルスで、各ウイルスは特定のげっ歯類の種と密接に関係している(Bowen, Peters and Nichol, 1997)。LasVの貯蔵庫は、マストミス(Mastomys)属の“マルチマンメイトラット”である(Monath et al., 1974)。アフリカにおけるマストミスの広域分布はこのげっ歯類貯蔵庫の根絶を非現実的なものにし、生態学的にも望ましくない。
ラッサ熱の徴候及び症状(ウイルスに暴露後1−3週間で発症する)は非常に多様であるが、発熱、胸骨後方、背中又は腹部の痛み、咽喉のただれ、咳、嘔吐、下痢、結膜充血及び顔面腫脹が含まれる。LasVは内皮細胞に感染し、結果として毛細管の透過性を高め、有効な循環容積を低下させ、ショック及び多器官不全を生じる。明白な出血(通常は粘膜(歯茎など))が症例の1/3未満に生じるが、予後は不良である。聴覚低下、振せん及び脳炎を含む神経学的な問題もまた記載されている。生存患者は、発症後2−3週間で解熱し始める。もっとも一般的な合併症は難聴である。一過性又は永久的な一側性又は両側性難聴は回復期のラッサ熱患者の〜30%に生じ、急性症状の重篤度とは関連しない。抗ウイルス薬リバビリンはラッサ熱の治療に有効であるが、疾患進行の初期(6日まで)に投与された場合に限られる(Johnson et al., 1987;McCormick et al., 1986)。リバビリンが他のアレナウイルス(例えばジュニン、マクポ又はサビアウイルス)に対して有効であるか否かは不明である。LasVワクチンは現在のところ利用できない。
【0040】
材料と方法
Vero細胞は、10mMのHEPES及び5%のFBSを含むイーグル基準培養液(Basal Medium Eagle, BME)で維持した。ラッサウイルス(ヨシア(Josiah)株)はVero細胞で増殖させた。プラークアッセイのために、6ウェルプレートの各ウェルにVero細胞を1x106細胞の密度で播種した。50から100p.f.u.のLasVを、血清非含有BME中のペプチドとともに、又はペプチド無しで1時間プレ-インキュベートした。続いて細胞をペプチド処理接種物又は賦形剤コントロール接種物で感染させた。1時間の吸着後、接種物を除去し、細胞を1xのリン酸緩衝食塩水で2回洗浄し、さらに細胞に10mMのHEPES及び5%FBSを含むBME中の0.5%アガロースを2mL重層した。5%の中性紅を含む2回目の重層を適用し、24時間後にプラークを数えた。
結果と考察
LasV糖タンパク質2(GP2)のFIRドメインに対応する合成ペプチドを、このアレナウイルスによる感染阻害能力についてテストした。配列番号:1(ラッサFIR)由来の配列NYSRYWYLNHTSTGKと類似のペプチド(NYSKYWYLNHTTTGR、配列番号:30)は、LasVによるプラーク形成を阻害することができる(図9)。別のGP2領域(融合ペプチド)と類似のペプチド(GTFTWTLSDSEGKDTPGGY、配列番号:31)もまたLasVによる感染を阻害した。総合すれば、これらの結果は、我々のアプローチによってアレナウイルス科のメンバーによる融合/感染性を阻害する合成ペプチドを同定できることを提唱している。これらの結果は、コロナウイルスのFIR阻害性ペプチドを用いた我々の実験結果と合わせて、FIR領域ペプチドはウイルス阻害物質として機能することができるという原則を証明した。
【0041】
参考文献
以下に示す文献は参照することにより本明細書に組み込まれる。
Bolognesi et al. US Pat. No. 5,464,933 “Synthetic Peptide Inhibitors of HIV Transmission”

Bosch, B.J., B.E. Martina, Z.R. Van Der, J. Lepault, B.J. Haijema, C. Versluis, A.J. Heck, R. DeGroot, A.D. Osterhaus, and P.J. Rottier. 2004. “Severe acute respiratory syndrome coronavirus (SARS-CoV) infection inhibition using spike protein heptad repeat-derived peptides.” Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 101:8455-8460.

Bosch, B.J., Z.R. van der, C.A. de Haan, and P.J. Rottier. 2003. “The coronavirus spike protein is a class I virus fusion protein: structural and functional characterization of the fusion core complex.” J Virol 77:8801-8811.

Bowen M.D., Peters, C. J., and Nichol, S. T. (1997). “Phylogenetic analysis of the Arenaviridae: patterns of virus evolution and evidence for cospeciation between arenaviruses and their rodent hosts.” Mol Phylogenet Evol 8(3), 301-16.

Buckley, S. M., and Casals, J. (1970). “Lassa fever, a new virus disease of man from West Africa. 3. Isolation and characterization of the virus.” Am J Trop Med Hyg 19(4), 680-91.

Carr, C. M., and Kim, P. S. (1993). A spring-loaded mechanism for the conformational change of influenza hemagglutinin. Cell 73(4), 823-32.

Chan, D. C., Fass, D., Berger, J. M., and Kim, P. S. (1997). Core structure of gp41 from the HIV envelope glycoprotein. Cell 89(2), 263-73.

Chen, L., Gorman, J.J., McKimm-Breschkin, J., Lawrence, L.J., Tulloch, P.A., Smith, B.J., Colman, P.M., and Lawrence, M.C. (2001). The structure of the fusion glycoprotein of Newcastle disease virus suggests a novel paradigm of the molecular mechanism of membrane fusion Structure 9 (3), 255-266.

Clark-Lewis I, Aebersold R, Ziltener H, Schrader JW, Hood LE, Kent SB. (1986). Automated chemical synthesis of a protein growth factor for hemopoietic cells, interleukin-3. Science. 231:134-9.

Drosten, C., Gunther, S., Preiser, W., van der Werf, S., Brodt, H. R., Becker, S., Rabenau, H., Panning, M., Kolesnikova, L., Fouchier, R. A., Berger, A., Burguiere, A. M., Cinatl, J., Eickmann, M., Escriou, N., Grywna, K., Kramme, S., Manuguerra, J. C., Muller, S., Rickerts, V., Sturmer, M., Vieth, S., Klenk, H. D., Osterhaus, A. D., Schmitz, H., and Doerr, H. W. (2003). “Identification of a novel coronavirus in patients with severe acute respiratory syndrome.” New England J Med 348, 1967-76.

Gallaher, W., Fermin, C., Henderson, L., Montelaro, R., Martin, A., Qureshi, M., Ball, J., Luo-Zhang, H., and Garry, R. (1992). Membrane interactions of HIV: Attachment, fusion and cytopathology. Adv. Membrane Fluidity 6, 113-142.

Gallaher, W. R. (1987). Detection of a fusion peptide sequence in the transmembrane protein of human immunodeficiency virus. Cell 50(3), 327-8.

Gallaher, W. R. (1996). Similar structural models of the transmembrane glycoproteins of Ebola and avian sarcoma viruses. Cell 85, 1-2.

Gallaher, W. R., Ball, J. M., Garry, R. F., Griffin, M. C., and Montelaro, R. C. (1989). A general model for the transmembrane proteins of HIV and other retroviruses. AIDS Res Hum Retroviruses 5(4), 431-40.
【0042】
Gallaher, W. R., DiSimone, C., and Buchmeier, M. J. (2001). The viral transmembrane superfamily: possible divergence of Arenavirus and Filovirus glycoproteins from a common RNA virus ancestor. BMC Microbiol 1(1), 1.

Gallaher, W.R. and Garry, R.F. (2003). Model of the pre-insertion region of the spike (S2) fusion glycoprotein of the human SARS coronavirus: implications for antiviral therapeutics. <www.virology.net/Articles/sars/s2model.html> May 1, 2003.

Gonzalez-Scarano, F., Waxham, M. N., Ross, A. M., and Hoxie, J. A. (1987). Sequence similarities between human immunodeficiency virus gp41 and paramyxovirus fusion proteins. AIDS Res Hum Retroviruses. 3(3), 245-52.

Guan, Y., Peiris, J.S., Zheng, B., Poon, L.L., Chan, K.H., Zeng, F.Y., Chan, C.W., Chan, M.N., Chen, J.D., Chow, K.Y., Hon, C.C., Hui, K.H., Li, J., Li, V.Y., Wang, Y., Leung, S.W., Yuen, K.Y., and Leung, F.C. (2004). Molecular epidemiology of the novel coronavirus that causes severe acute respiratory syndrome. Lancet 363, 99-104.

Guan, Y., Zheng, B.J., He, Y.Q., Liu, X.L., Zhuang, Z.X., Cheung, C.L., Luo, S.W., Li, P.H., Zhang, L.J., Guan, Y.J., Butt, K.M., Wong, K.L., Chan, K.W., Lim, W., Shortridge, K.F., Yuen, K.Y., Peiris, J.S., and Poon, L.L. (2003). Isolation and characterization of viruses related to the SARS coronavirus from animals in southern China. Science 302, 276-278.

Henderson, Coy and Garry, U.S. Pat. No. ,567,805, “The Cellular Receptor for the CS3 Peptide of HIVI”

Jaysinghe, S., Hristova, K., and White, S. H. (2000). Membrane Protein Explorer. www.blanco.biomol.uci.edu/mpex.

Johnson, K. M., McCormick, J. B., Webb, P. A., Smith, E. S., Elliott, L. H., and King, I. J. (1987). Clinical virology of Lassa fever in hospitalized patients. J Infect Dis 155(3), 456-64.

Kilby, J. M., Hopkins, S., Venetta, T. M., DiMassimo, B., Cloud, G. A., Lee, J. Y., Alldredge, L., Hunter, E., Lambert, D., Bolognesi, D., Matthews, T., Johnson, M. R., Nowak, M. A., Shaw, G. M., and Saag, M. S. (1998). Potent suppression of HIV-1 replication in humans by T-20, a peptide inhibitor of gp41-mediated virus entry. Nat Med 4(11), 1302-7.

Kowalski, M., Potz, J., Basiripour, L., Dorfman, T., Haseltine, W., and Sodroski, J. (1991). Attenuation of HIV-1 cytopathic effect by mutation affecting the transmembrane glycoprotein. J. Virol. 65, 281-291.

Ksiazek, T. G., Erdman, D., Goldsmith, C. S., Zaki, S. R., Peret, T., Emery, S., Tong, S., Urbani, C., Comer, J. A., Lim, W., Rollin, P. E., Dowell, S. F., Ling, A. E., Humphrey, C. D., Shieh, W. J., Guarner, J., Paddock, C. D., Rota, P., Fields, B., DeRisi, J., Yang, J. Y., Cox, N., Hughes, J. M., LeDuc, J. W., Bellini, W. J., and Anderson, L. J. (2003). A novel coronavirus associated with severe acute respiratory syndrome. N Engl J Med 348, 1953-66.
【0043】
Lambert, D. M., Barney, S., Lambert, A. L., Guthrie, K., Medinas, R., Davis, D. E., Bucy, T., Erickson, J., Merutka, G., and Petteway, S. R., Jr. (1996). Peptides from conserved regions of paramyxovirus fusion (F) proteins are potent inhibitors of viral fusion. Proc Natl Acad Sci U S A 93(5), 2186-91.

Liu, S., G. Xiao, Y. Chen, Y. He, J. Niu, C. Escalante, H. Xiong, J. Farmar, A.K. Debnath, P. Tien, Jiang, S. 2004. Interactions between the heptad repeat 1 and 2 regions in spike protein of SARSassociated coronavirus: implication for virus fusogenic mechanism and identification of fusion inhibitors. Lancet 363:938-947.

Malashkevich, V. N., Schneider, B. J., McNally, M. L., Milhollen, M. A., Pang, J. X., and Kim, P. S. (1999). Core structure of the envelope glycoprotein GP2 from Ebola virus at 1.9-A resolution. Proc Natl Acad Sci U S A 96(6), 2662-7.

Marra, M. A., Jones, S. J., Astell, C. R., Holt, R. A., Brooks-Wilson, A., Butterfield, Y. S., Khattra, J., Asano, J. K., Barber, S. A., Chan, S. Y., Cloutier, A., Coughlin, S. M., Freeman, D., Girn, N., Griffith, O. L., Leach, S. R., Mayo, M., McDonald, H., Montgomery, S. B., Pandoh, P. K., Petrescu, A. S., Robertson, A. G., Schein, J. E., Siddiqui, A., Smailus, D. E., Stott, J. M., Yang, G. S., Plummer, F., Andonov, A., Artsob, H., Bastien, N., Bernard, K., Booth, T. F., Bowness, D., Drebot, M., Fernando, L., Flick, R., Garbutt, M., Gray, M., Grolla, A., Jones, S., Feldmann, H., Meyers, A., Kabani, A., Li, Y., Normand, S., Stroher, U., Tipples, G. A., Tyler, S., Vogrig, R., Ward, D., Watson, B., Brunham, R. C., Krajden, M., Petric, M., Skowronski, D. M., Upton, C., and Roper, R. L. (2003). The genome sequence of the SARS-associated coronavirus. Science 300, 1399-1404.

McCormick, J. B., King, I. J., Webb, P. A., Scribner, C. L., Craven, R. B., Johnson, K. M., Elliott, L. H., and Belmont-Williams, R. (1986). Lassa fever. Effective therapy with ribavirin. N Engl J Med 314(1), 20-6. .

Monath, T. P., Newhouse, V. F., Kemp, G. E., Setzer, H. W., and Cacciapuoti, A. (1974). Lassa virus isolation from Mastomys natalensis rodents during an epidemic in Sierra Leone. Science 185(147), 263-5.

Murphy, F. A., and Whitfield, S. G. (1975). Morphology and morphogenesis of arenaviruses. Bull World Health Organ 52(4-6), 409-19.

Owens, R. J., Tanner, C. C., Mulligan, M. J., Srinivas, R. V., and Compans, R. W. (1990). Oligopeptide inhibitors of HIV-induced syncytium formation. AIDS Res Hum Retroviruses 6(11), 1289-96.

Peiris, J. S., Lai, S. T., Poon, L. L., Guan, Y., Yam, L. Y., Lim, W., Nicholls, J., Yee, W. K., Yan, W. W., Cheung, M. T., Cheng, V. C., Chan, K. H., Tsang, D. N., Yung, R. W., Ng, T. K., and Yuen, K. Y. (2003). Coronavirus as a possible cause of severe acute respiratory syndrome. Lancet 361, 1319-25.

Pozniak, A. (2001). HIV fusion inhibitors. J HIV Ther 6(4), 91-4.
【0044】
Poutanen, S. M., Low, D. E., Henry, B., Finkelstein, S., Rose, D., Green, K., Tellier, R., Draker, R., Adachi, D., Ayers, M., Chan, A. K., Skowronski, D. M., Salit, I., Simor, A. E., Slutsky, A. S., Doyle, P. W., Krajden, M., Petric, M., Brunham, R. C., and McGeer, A. J. (2003). Identification of severe acute respiratory syndrome in Canada. New England J Med 348, 1995-2005.

Qureshi, N., Coy, D., Garry, R., and LA, H. (1990). Characterization of a putative cellular receptor for HIV-1 transmembrane glycoprotein using synthetic peptides. AIDS 4, 553-558.

Richardson, C. D., Scheid, A., and Choppin, P. W. (1980). Specific inhibition of paramyxovirus and myxovirus replication by oligopeptides with amino acid sequences similar to those at the N-termini of the F1 or HA2 viral polypeptides. Virology 105(1), 205-22.

Rota, P. A., Oberste, M. S., Monroe, S. S., Nix, W. A., Campagnoli, R., Icenogle, J. P., Penaranda, S., Bankamp, B., Maher, K., Chen, M. H., Tong, S., Tamin, A., Lowe, L., Frace, M., DeRisi, J. L., Chen, Q., Wang, D., Erdman, D. D., Peret, T. C., Burns, C., Ksiazek, T. G., Rollin, P. E., Sanchez, A., Liffick, S., Holloway, B., Limor, J., McCaustland, K., Olsen-Rassmussen, M., Fouchier, R., Gunther, S., Osterhaus, A. D., Drosten, C., Pallansch, M. A., Anderson, L. J., and Bellini, W. J. (2003). Characterization of a novel coronavirus associated with Severe Acute Respiratory Syndrome. Science, 300, 1394-1399.

Silburn, K. A., McPhee, D. A., Maerz, A. L., Poumbourios, P., Whittaker, R. G., Kirkpatrick, A., Reilly, W. G., Manthey, M. K., and Curtain, C. C. (1998). Efficacy of fusion peptide homologs in blocking cell lysis and HIV-induced fusion. AIDS Res Hum Retroviruses 14(5), 385-92.

Sodroski, J. G. (1999). HIV-1 entry inhibitors in the side pocket. Cell 99(3), 243-6.
Suarez, T., Gallaher, W. R., Agirre, A., Goni, F. M., and Nieva, J. L. (2000). Membrane interface-interacting sequences within the ectodomain of the human immunodeficiency virus type 1 envelope glycoprotein: putative role during viral fusion. J Virol 74(17), 8038-47.

Watanabe, S., Takada, A., Watanabe, T., Ito, H., Kida, H., and Kawaoka, Y. (2000). Functional importance of the coiled-coil of the Ebola virus glycoprotein. J Virol 74(21), 10194-201.

Weissenhorn, W., Carfi, A., Lee, K. H., Skehel, J. J., and Wiley, D. C. (1998). Crystal structure of the Ebola virus membrane fusion subunit, GP2, from the envelope glycoprotein ectodomain. Mol Cell 2(5), 605-16.

Weissenhorn, W., Dessen, A., Harrison, S. C., Skehel, J. J., and Wiley, D. C. (1997). Atomic structure of the ectodomain from HIV-1 gp41. Nature 387(6631), 426-30.

Wild, C., Greenwell, T., and Matthews, T. (1993). A synthetic peptide from HIV-1 gp41 is a potent inhibitor of virus-mediated cell-cell fusion. AIDS Research & Human Retroviruses 9(11), 1051-3.
【0045】
Wild, C., Oas, T., McDanal, C., Bolognesi, D., and Matthews, T. (1992). A synthetic peptide inhibitor of human immunodeficiency virus replication: correlation between solution structure and viral inhibition. Proc Natl Acad Sci U S A 89(21), 10537-41.

Wilson, I. A., Skehel, J. J., and Wiley, D. C. (1981). Structure of the haemagglutinin membrane glycoprotein of influenza virus at 3 A resolution. Nature 289(5796), 366-73.

Young, J. K., Li, D., Abramowitz, M. C., and Morrison, T. G. (1999). Interaction of peptides with sequences from the Newcastle disease virus fusion protein heptad repeat regions. J Virol 73(7), 5945-56.

Yuan, K., L. Yi, J. Chen, X. Qu, T. Qing, X. Rao, P. Jiang, J. Hu, Z. Xiong, Y. Nie, et al. 2004. Suppression of SARS-CoV entry by peptide corresponding to heptad regions on spike glycoprotein. Biochem. Biophys. Res. Commun. 319:746-752.

Zhu, J., G. Xiao, Y. Xu, F. Yuan, C. Zheng, Y. Liu, H. Yan, D.K. Cole, J.I. Bell, Z. Rao, 2004. Following the rule: formation of the 6-helix bundle of the fusion core from severe acute respiratory syndrome coronavirus spike protein and identification of potent peptide inhibitors. Biochem. Biophys. Res. Commun. 319:283-288.
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、6つのウイルスファミリー(すなわちアレナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス及びレトロウイルス)のそれぞれの1メンバーの融合タンパク質のドメインを示す。
【図2】図2は、融合タンパク質のアミノ酸配列及びそれらの外側部の構造の模式図を示す。
【図3】図3は、融合タンパク質のアミノ酸配列及びそれらの外側部の構造の模式図を示す。
【図4】図4は、融合タンパク質のアミノ酸配列及びそれらの外側部の構造の模式図を示す。
【図5】図5は、融合タンパク質のアミノ酸配列及びそれらの外側部の構造の模式図を示す。
【図6】図6は、融合タンパク質のアミノ酸配列及びそれらの外側部の構造の模式図を示す。
【図7】図7は、融合タンパク質のアミノ酸配列及びそれらの外側部の構造の模式図を示す。
【図8】図8は、融合開始領域ペプチドによるコロナウイルス感染の阻害を示す。
【図9】図9は、融合開始領域ペプチドによるラッサウイルス感染の阻害を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、宿主細胞のウイルス感染を予防又は阻害することができる化合物を同定する方法:
(a)ウイルスの融合開始領域(FIR)のアミノ酸配列を含む標的を調製する工程、ここで前記FIRは、(i)少なくとも2つの長く伸びたアルファヘリックス、(ii)融合ペプチド及び(iii)融合開始領域を含む膜融合タンパク質をもつウイルスに由来し;
(b)複数の化合物をスクリーニングして、前記標的と結合する少なくとも1つの化合物(標的結合化合物)を同定する工程;
(c)少なくとも1つの標的結合化合物をスクリーニングして、FIRを含む融合タンパク質をもつウイルスによる宿主細胞のウイルス感染を予防又は阻害することができる標的結合化合物を同定する工程。
【請求項2】
2つ又は3つ以上のアルファヘリックス、融合ペプチド及び融合開始領域(FIR)を含む膜融合タンパク質をもつウイルスを同定する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記標的がペプチド類似体、ペプチド誘導体又はペプチド模倣体である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記化合物が抗体又はその機能的フラグメントである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ウイルスが、アレナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス及びレトロウイルスから成る群から選択されるウイルスファミリーに由来する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記ウイルスが、ラッサウイルス、リンパ球性脈絡膜炎ウイルス(LCMV)、ジュニンウイルス、マクポウイルス、グァナリトウイルス、サビアウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス、ネズミ肝炎ウイルス(MHV)、ウシコロナウイルス、イヌコロナウイルス、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス、エボラウイルス、マルブルクウイルス、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、インフルエンザCウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、イヌジステンパーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)、ヒト免疫不全ウイルス2(HIV-2)、ヒトT細胞向性ウイルス1(HTLV-1)、ヒトT細胞向性ウイルス2(HTLV-2)、ヒト槽内A型粒子1(HIAP-1)、ヒト槽内A型粒子2(HIAP-2)から成る群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
以下を含む単離ペプチド:
(a)ウイルスの融合開始領域(FIR)のアミノ酸配列又は前記と類似の配列;又は
(b)アレナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス及びレトロウイルスから成るウイルスファミリー群の1つに属するウイルスに由来するFIRの機能的セグメント又は前記と類似の配列、ここで前記機能的セグメントはHIV-1 TM CS3を含まない。
【請求項8】
アレナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス及びレトロウイルスから成るウイルスファミリー群から選択されるウイルスファミリーのウイルスに由来するウイルス融合開始領域のアミノ酸配列又は前記と類似の配列を含む、請求項7記載のペプチド。
【請求項9】
前記FIRが、ラッサウイルス、リンパ球性脈絡膜炎ウイルス(LCMV)、ジュニンウイルス、マクポウイルス、グァナリトウイルス、サビアウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス、ネズミ肝炎ウイルス(MHV)、ウシコロナウイルス、イヌコロナウイルス、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス、エボラウイルス、マルブルクウイルス、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、インフルエンザCウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、イヌジステンパーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)、ヒト免疫不全ウイルス2(HIV-2)、ヒトT細胞向性ウイルス1(HTLV-1)、ヒトT細胞向性ウイルス2(HTLV-2)、ヒト槽内A型粒子1(HIAP-1)、ヒト槽内A型粒子2(HIAP-2)から成る群から選択されるウイルスに由来するか、又は前記機能的FIRフラグメントが、ラッサウイルス、リンパ球性脈絡膜炎ウイルス(LCMV)、ジュニンウイルス、マクポウイルス、グァナリトウイルス、サビアウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス、ネズミ肝炎ウイルス(MHV)、ウシコロナウイルス、イヌコロナウイルス、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス、エボラウイルス、マルブルクウイルス、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、インフルエンザCウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、イヌジステンパーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)、ヒト免疫不全ウイルス2(HIV-2)、ヒトT細胞向性ウイルス1(HTLV-1)、ヒトT細胞向性ウイルス2(HTLV-2)、ヒト槽内A型粒子1(HIAP-1)、ヒト槽内A型粒子2(HIAP-2)から成る群から選択されるウイルスに由来する、請求項7記載のペプチド。
【請求項10】
配列番号:1−7、8−15、22−25及び30から成る群から選択される配列を有する請求項7記載のペプチド。
【請求項11】
配列番号:22−25及び30から成る群から選択される配列を有する請求項7記載のペプチド。
【請求項12】
配列番号:1−7から成る群から選択される配列又は配列番号:1−7のいずれかの配列の機能的セグメントを有する、請求項7のペプチド。
【請求項13】
請求項1から6に記載の方法のいずれかによって同定された化合物を患者に投与することを含む、ウイルスの感染を治療又は予防する方法。
【請求項14】
請求項7から12のいずれかに記載のペプチドを患者に投与することを含む、ウイルスの感染を治療又は予防する方法。
【請求項15】
請求項7から12のいずれかに記載のペプチドを産生する能力を患者に付与、又は前記を産生するように患者を刺激する組換えDNA分子を含む組成物の有効量を患者に投与することを含む、ウイルスの感染を治療又は予防する方法。
【請求項16】
融合開始領域と特異的に結合する抗体の有効量を患者に投与することを含む、ウイルスの感染を治療又は予防する方法。
【請求項17】
請求項1記載の方法によって同定される単離抗体。
【請求項18】
少なくとも2つの長く伸びたアルファ-ヘリックス及び融合ペプチドを含む膜融合タンパク質をもつウイルスの膜融合を阻害することができる請求項17に記載の抗体であって、これらのタンパク質が細胞融合に必須の融合開始領域(FIR)を含み、前記抗体がFIR内のアミノ酸配列と結合する、前記膜融合を阻害する抗体。
【請求項19】
アレナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス及びレトロウイルスから成る群から選択されるウイルスファミリーに属するウイルスに由来するウイルスFIR配列又は前記と類似の配列を有するポリペプチドをコードすることができる単離核酸配列。
【請求項20】
以下の工程を含む抗体の製造方法:
(a)(i)ウイルスの融合開始領域(FIR)又は(ii)アレナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス及びレトロウイルスから成るウイルスファミリー群の1つに属するウイルスに由来するFIRの抗原性フラグメント(前記フラグメントはHIV-1 TM CS3を含まない)を特異的に認識する抗体を誘引することができる抗原を提供する工程;
(b)前記抗原を動物に導入し、前記に対する免疫応答を誘引する工程;
(c)前記動物から抗体を採集する工程;及び
(d)FIR又はその抗原性フラグメントを特異的に認識する抗体を同定する工程。
【請求項21】
前記抗原が、アレナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス及びレトロウイルスから成るウイルスファミリー群から選択されるウイルスファミリーのウイルスに由来するウイルス融合開始領域(FIR)のアミノ酸配列又は前記と類似の配列から成る、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記抗原が、融合開始領域(又はその抗原性フラグメント)のペプチド類似体、ペプチド誘導体、又はペプチド模倣体を含む、請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記抗原が、単離ウイルス又は単離ウイルスのエンベロープ融合タンパク質を含む、請求項20記載の方法。
【請求項24】
以下の工程を含む、ウイルス融合タンパク質配列内のウイルス融合開始領域(FIR)を同定する方法:
(a)ウイルス融合タンパク質配列をHIVのトランスメンブレン融合タンパク質の枠組みに適合させる工程;
(b)FIRのアミノ末端を同定する工程;及び
(c)FIRのカルボキシ末端を同定する工程。
【請求項25】
前記ウイルスのFIRが、アレナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス及びレトロウイルスから成る群から選択されるウイルスファミリーに属するウイルスに由来する、請求項24記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2007−514408(P2007−514408A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538450(P2006−538450)
【出願日】平成16年11月3日(2004.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/036578
【国際公開番号】WO2005/044992
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(502137178)ザ アドミニストレイターズ オブ ザ テューレイン エデュケイショナル ファンド (5)
【Fターム(参考)】