説明

クランプ構造

【課題】ワイヤハーネスが損傷を受けず、異音が発生せず、簡単な組付けにより作業性の向上を図れ、解体を容易に行なうことができるクランプ構造を提供すること。
【解決手段】このクランプ構造では、ワイヤハーネス保持部12に保持されたワイヤハーネス40がシートバック51内に位置するようにシートバッククランプ10がその表皮挿着部13,14を表皮57の挿着孔52,53に差し込まれながらシートバック51に取り付けられる。ワイヤハーネス40は、ワイヤハーネス保持部12とともに、シートバック51のクッションと表皮57の裏面とに挟み込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバック内にワイヤハーネスの電線等を保持しながら配策するのに用いるクランプ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクランプの一例として、本体部と、本体部の外面より突設した車体係止部と、バンド部と、を備え、本体部内面に係止片を突出させた貫通孔を設け、バンド部の外面に被係止爪を突出させ、そしてバンド部の幅方向の両端から間隔をあけた薄肉部を設けたもの(バンドクランプ)が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
自動車等といった車両のシートのシートフレームに被せられるシートバックの中に上記クランプを用いてワイヤハーネスを配策するためのクランプ構造の一例が図11に示される。図11のクランプ構造では、シートバック内にワイヤハーネスを配策するに際し、バンド部70をワイヤハーネス90に巻き付け固定したうえで、バンド部70を不図示の貫通孔に挿通して不図示の被係止爪を不図示の係止片に係止し、車体係止部71をシートフレーム91に設けられているクランプ孔92に嵌め込む。
【0004】
図11のクランプ構造では、ワイヤハーネス90が、シートフレーム91の上に距離L1だけ離れて(即ち、浮いて)配置されるため、シート内に組み込まれる他の電装部品や構造部品に接触して、ワイヤハーネス90の外面が損傷を受けたり、異音を発生したりする可能性がある。
【0005】
また、図11のクランプ構造では、金属製のシートフレーム91の予め定められた位置にクランプ孔92を設けなければならないが、シートフレーム91に後加工でクランプ孔92を形成することはなかなか難しいため、シートフレーム91を製造する際にクランプ孔92を予め持つようにシートフレーム91を成形する必要があり、このようにクランプ孔92の形成が厄介である。
【0006】
また、図11のクランプ構造では、シートフレーム91への組付けに際し、例えばパンチ等の特殊工具を用いて車体係止部71をシートフレーム91のクランプ孔92に嵌め込まなければならないので、簡単に組付けを行なえないのに加えて、車体係止部71の位置が、ワイヤハーネス90の長さ方向の所定の位置にかなり正確に配置されていないと、金属製のシートフレーム91への組付けができないため、車体係止部71の位置精度を高くせねばならず、ワイヤハーネス90への組付け時の位置精度を高くするのが面倒であるため、作業時間を多く必要として作業効率の向上が望めない。
【0007】
また、車体係止部71をシートフレーム91から容易に取り外すことができないので、図11のクランプ構造は車両の解体作業を困難なものにする。
【0008】
【特許文献1】特開2003−180023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイヤハーネスが損傷を受けず、異音が発生せず、簡単な組付けにより作業性の向上を図れ、解体を容易に行なうことができるクランプ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、本発明に係るクランプ構造は、下記(1)〜(4)を特徴としている。
(1) 車両のシートのシートフレームに被せられるシートバックの中にワイヤハーネスを配策するためのクランプ構造であって、
前記ワイヤハーネスを保持するためのワイヤハーネス保持部と、前記シートバックの表皮の開口部の縁に沿って延長するように形成された挿着孔に着脱自在に挿し込まれる表皮挿着部と、を有するクランプを備え、
前記ワイヤハーネス保持部に保持された前記ワイヤハーネスが前記シートバック内に位置するように前記クランプがその前記表皮挿着部を前記表皮の前記挿着孔に差し込まれながら前記シートバックに取り付けられること。
(2) 上記(1)のクランプ構造において、前記表皮挿着部が前記ワイヤハーネスと横並びとなるように前記クランプに形成され、そして前記ワイヤハーネスの前記ワイヤハーネス保持部に保持された部分の延長方向が前記表皮挿着部の前記挿着孔への差し込み方向と平行であること。
(3) 上記(1)または(2)のクランプ構造において、前記ワイヤハーネスが、前記ワイヤハーネス保持部とともに、前記シートバックのクッションと前記表皮の裏面とに挟み込まれること。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかのクランプ構造において、前記クランプは前記シートフレームに係止されるシートフレーム係止部を更に有し、当該シートフレーム係止部により前記表皮挿着部から前記ワイヤハーネス保持部へ向かう方向への前記クランプの移動が規制されること。
【0011】
上記(1)の構成のクランプ構造によれば、ワイヤハーネス保持部に保持されたワイヤハーネスがシートバック内に位置するように、シートバックの表皮の開口部の縁に沿って延長する挿着孔に着脱自在な表皮挿着部を差し込まれながらクランプがシートバックに取り付けられる。従って、このクランプ構造のためにシートフレームに孔を設ける必要はない。即ち、上記(1)の構成のクランプ構造では、金属製のシートフレームにではなく、例えば、天然皮革、合成皮革、等といった加工し易い柔軟な材料で形成されるシートバックの表皮に挿着孔を形成すればよい。それ故、シート内へのクランプの組付けに際して従来のもののように特殊工具等を用いる必要がなく、簡単に挿着を行なえ、更に、位置の誤差を吸収することができるので、作業性を向上させることができる。また、上記(1)の構成のクランプ構造では、解体時に表皮挿着部を表皮から簡単に取り外せるため、解体時における作業性を向上させることができる。
また、上記(2)の構成のクランプ構造によれば、クランプ上で表皮挿着部がワイヤハーネスと横並びとなっており、そしてワイヤハーネスのワイヤハーネス保持部に保持された部分の延長方向が表皮挿着部の挿着孔への差し込み方向と平行であるので、クランプの表皮挿着部をシートバックの表皮の開口部側に、そしてワイヤハーネスを該開口部の外側で且つシートバックの中にしてクランプの表皮挿着部をシートバックの表皮の挿着孔に差し込むことができる。従って、ワイヤハーネス保持部に保持されたワイヤハーネスが常にシートバック内に位置するようにクランプをシートバックへ取り付けることが可能である。
上記(3)の構成のクランプ構造によれば、ワイヤハーネスが、ワイヤハーネス保持部とともに、シートバックのクッションと表皮の裏面とに挟み込まれ、クッションがワイヤハーネスを表皮の裏面側に押し付けるので、ワイヤハーネスがシートバック内のいずれかの部分に常に接触し、従来のように浮いては配置されない。従って、ワイヤハーネスが、損傷を受けたり、異音を発生したりすることが防止される。
上記(4)の構成のクランプ構造によれば、例えば車両の乗車人がシートに座ることにより、シートバックの開口部を拡大する応力が働いても、シートバックに取り付けられているクランプのシートフレーム係止部がシートフレームに引っ掛かるため、ワイヤハーネスに張力等の応力が加えられることを阻止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワイヤハーネスが損傷を受けず、異音が発生せず、簡単な組付けにより作業性の向上を図れ、解体を容易に行なうことができる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明に係るクランプ構造の一実施形態を示すワイヤハーネスとクランプとシートバックとの組み立てを説明するための要部外観斜視図、図2は図1に示されるワイヤハーネス付きクランプのシートバックへの組付け状態を示す要部外観斜視図、図3は図1のワイヤハーネス付きクランプが組み付けられるシートバックを斜め後方から見た外観斜視図、図4は図3のシートバックが組み付けられるシートフレームを斜め後方から見た外観斜視図、図5は図1のワイヤハーネス付きクランプをシートバックに組み付ける際に用いるワイヤハーネス付きクランプのアッセンブリーの正面図、図6は図5のアッセンブリーをシートバックに組付ける直前の要部外観斜視図、図7は図6に示されるアッセンブリーとシートバックとの組み立て後の外観斜視図、図8は図5のアッセンブリーをシートバックに組み付けた状態を示す外観斜視図、図9はアッセンブリー付きシートバックを備えたシートバックを図8に示されるA−A矢視線のところで切断して見た断面図、そして図10は図9に示されるシートバックをシートフレームに組付けた状態を示す外観斜視図である。
【0016】
本発明に係るクランプ構造の一実施形態は、自動車等といった車両のシートのシートフレーム50(図4等参照。)に被せられる表皮57およびクッション58(図3等参照。)を有するシートバック51の中にワイヤハーネス40(図5等参照。)を配策するためのクランプ構造である。
【0017】
このクランプ構造は、例えば図1〜図3に示されるように、ワイヤハーネス40を保持するための一対のワイヤハーネス保持部12と、シートバック51の開口部56の縁(換言すれば、表皮57の縁)に沿って延長するように形成された一対の挿着孔52,53に着脱自在に挿し込まれる一対の表皮挿着部13,14と、を本体11に有するシートバッククランプ(クランプ)10を備える。
【0018】
ワイヤハーネス40は、ワイヤハーネス保持部12とともに、シートバック51のクッション58と表皮57の裏面とに挟み込まれる。この状態は、図9で具体的に示されている。
【0019】
このクランプ構造では、ワイヤハーネス保持部12に保持されたワイヤハーネス40がシートバック51内に位置するようにシートバッククランプ10がその表皮挿着部13,14を表皮57の挿着孔52,53に差し込まれながらシートバック51に取り付けられる。
【0020】
シートバッククランプ10では表皮挿着部13,14がワイヤハーネス40と横並びとなるように形成される。ワイヤハーネス40のワイヤハーネス保持部12に保持された部分の延長方向は、表皮挿着部13,14の挿着孔52,53への差し込み方向と平行である。
【0021】
このシートバッククランプ10は、シートフレーム50に係止されるシートフレーム係止部15を更に有する。当該シートフレーム係止部15により表皮挿着部13,14からワイヤハーネス保持部12へ向かう方向へのシートバッククランプ10の移動が規制される。
【0022】
このように構成されたクランプ構造の詳細について以下に説明する。
【0023】
シートバッククランプ10の本体11は、図1に示されるように、金属あるいは合成樹脂を素材とした厚みの薄い板材から形成されており、その外形寸法は作業者が手で持ち易い大きさになっている。
【0024】
ワイヤハーネス保持部12は、本体11の一端部の両側縁(図1では本体11の右端部の上下端部)からそれぞれ突出する板状部分である。このワイヤハーネス保持部12の裏面にワイヤハーネス40が載置されたうえで、当該ワイヤハーネス40が、例えばテープ巻き等で形成される結束部16,16によって、ワイヤハーネス保持部12の基端部から中央部にわたって保持される。各ワイヤハーネス保持部12の先端部には結束部16,16の抜け止めとして抜け止め部が両側方に突出する。
【0025】
表皮挿着部13,14は、それらの基端部および中央部がワイヤハーネス保持部12の基端部および中央部と平行に延長するように、シートバッククランプ10の本体11にそれぞれ片持ち状に形成される。具体的に、図1中の上方に配置された表皮挿着部13は、本体11中央の切欠18内で略コ字形の空隙を形成するように図1中の下方に向けて突出しており、板厚方向に僅かに撓み変形可能である。他方、図1中の下方に配置された表皮挿着部14は、本体11の下端部から下方に向けて突出しており、板厚方向に僅かに撓み変形可能である。各表皮挿着部13,14は、それらの先端部に、L字形状のフック部19,20を有する。
【0026】
シートフレーム係止部15は、本体11の他端部から図1中の後方に向けてL字形状に突出しており、シートバッククランプ10をシートフレーム(図4参照。)50に組み付けるのに用いられる。
【0027】
表皮57は合成皮革あるいは天然皮革を素材として縫い合わせて形成された可撓部材であって、その挿着孔52,53は例えば衣類等の縫い合わせ縁部に縫い付けられたブランド名等を示すタグのような環状帯部材54,55の内周面により画成される。これら表皮57の環状帯部材54,55は、表皮57を製造する際に形成され、表皮57の背面に形成された開口部56内にそれぞれ突出するように表皮57の縁に配置される。尚、表皮57の代わりに、合成糸、天然糸、ゴム糸、等を素材として織成された表織布を採用してもよいが、合成皮革、天然皮革、等を素材としたものの方が、可撓性を有しながらも、より丈夫であるため、好ましい。また、表皮57の代わりに表織布を採用する場合は、環状帯部材54,55を合成皮革、天然皮革、ゴム、等で形成すべきである。
【0028】
図2に示されるように、シートバッククランプ10は、ワイヤハーネス40が結束部16で保持されているワイヤハーネス保持部12を表皮57の裏面上に配置しつつ表皮挿着部13,14を表皮57の挿着孔52,53に挿し込むことにより、表皮57に組み付けられる。
【0029】
このとき、表皮挿着部13,14が僅かに可撓性を有し、そして環状帯部材54,55も可撓性を有するので、表皮挿着部13,14を環状帯部材54,55の挿着孔52,53に簡単に挿し込むことができる。そして表皮挿着部13,14を挿着孔52,53にそれぞれ同時に差し込んでいくと、フック部19,20が環状帯部材54,55の端部に引っ掛かり、これによりシートバッククランプ10が表皮57に係止される。ここで、表皮57は、可撓部材であるため、その環状帯部材54,55の挿着孔52,53にシートバッククランプ10の表皮挿着部13,14を挿し込まれた状態において、ワイヤハーネス40の延長方向におけるシートバッククランプ10の若干の配置誤差を吸収することができる。
【0030】
シートバッククランプ10が組み付けられるシートバック51は、図3に示されるように、表皮57の内側にクッション58を有しており、表皮57およびクッション58の内縁によって開口部56が形成されている。表皮57の内縁上には6対の環状帯部材54,55が予め定められた間隔を置いて設けられている。より詳細には、環状帯部材54,55は、表皮57の上縁に2対、左側縁に2対、そして右側縁に2対ある。
【0031】
図4に示されるように、シートバック51が組み付けられるシートフレーム50は、金属製であって、座側フレーム59と、背もたれ側フレーム60と、がヒンジを含むリクライニングデバイス61を介して連結されている。
【0032】
座側フレーム59は、不図示のシートスライドユニットを介して同じく不図示の車両のフロアパネルに前後方向や上下方向に移動自在となるように組み付けられ、そして背もたれ側フレーム60は、リクライニングデバイス61を介して座側フレーム59に対して傾動自在に組み付けられる。
【0033】
シートバック51は、背もたれ側フレーム60に被せられるように組み付けられる。背もたれ側フレーム60は、シートバッククランプ10のシートフレーム係止部15が係止されるロ字形状のフレーム内縁部62を有する。この背もたれ側フレーム60には、例えば、電動式ヘッドレスト用デバイス、電動式ランバーサポート用デバイス、電動収納式テーブル用デバイス、後席用モニタ用デバイス、等(全て不図示)といったデバイスが固定されるため、各デバイスに電気的に接続される不図示の電気端子を収容した不図示のコネクタが、フレーム内縁部62内に配置される。
【0034】
次に、図5、図6、図7および図8を参照しながらシートバッククランプ10を用いたワイヤハーネス40の配策手順について説明する。
【0035】
まず、図5に示すように、6個のシートバッククランプ10を用意し、ワイヤハーネス40の所定箇所を各ワイヤハーネス保持部12で保持したうえで、ワイヤハーネス40と各シートバッククランプ10とで、表皮57の開口部56に合わせたコ字形状のアッセンブリー30を作製する。
【0036】
尚、表皮57の両側部にそれぞれ配置される2個のシートバッククランプ10の間のワイヤハーネス40は、それぞれが中央部に向けて引き出されて枝線41,41となっており、各枝線41,41の先端部に、枝線41に電気的に接続された不図示の電気端子を収容したコネクタ42が組み付けられている。
【0037】
次に、アッセンブリー30のワイヤハーネス40の部分を開口部56から進入させて表皮57の裏側にもっていきながら、環状帯部材54,55の挿着孔52,53それぞれに、シートバッククランプ10の表皮挿着部13,14を順次挿し込んでいくことにより、シートバッククランプ10のワイヤハーネス保持部12に保持されたワイヤハーネス40がシートバック51の中に配策される。
【0038】
尚、図6に示されるように、表皮57の左右側縁には、枝線41,41を引き出す位置に、環状帯部材54,55と同様に、開口部56内に突出する被覆部材63,63が形成されている。被覆部材63は、一端部にマジックテープ(登録商標)等の面ファスナー64が取り付けられており、その面ファスナー64を他端部の面ファスナーに接合させることで、図7に示されるように、枝線41を被覆するようになっている。尚、面ファスナー64に代えて、両面テープ等を用いてもよい。
【0039】
図8に示されるように、シートバッククランプ10によりワイヤハーネス40が表皮57の裏側に配策され、被覆部材63,63によって被覆された枝線41,41の先端部のコネクタ42,42が開口部56の中央部に配置可能な状態にされることで、アッセンブリー30のシートバック51への組付けが完了する。
【0040】
図9に示されるように、シートバック51に組み付けられたアッセンブリー30におけるシートバッククランプ10のワイヤハーネス保持部12に保持されているワイヤハーネス40は、開口部56から露出せずに配策され、シートバック51のクッション58と表皮57の裏面とに弾性的に挟み込まれる。このとき、シートバッククランプ10のシートフレーム係止部15は、それぞれ開口部56の中央部に向けて配置される。
【0041】
そして、図10に示されるように、アッセンブリー30が組み付けられたシートバック51がシートフレーム50の背もたれ側フレーム60に組み付けられる。シートバック51は、上方から背もたれ側フレーム60に被せられ、そしてシートバッククランプ10のシートフレーム係止部15がフレーム内縁部62にそれぞれ係止される。
【0042】
そして、コネクタ42,42が、例えば、電動式ヘッドレスト用デバイス、電動式ランバーサポート用デバイス、電動収納式テーブル用デバイス、後席用モニタ用デバイス、等(全て不図示)といったデバイスのコネクタに電気的に接続される。
【0043】
このようにシートバッククランプ10を用いてシートバック51の中にワイヤハーネス40が配策される。
【0044】
以上、説明したように、本発明に係るクランプ構造の一実施形態によれば、ワイヤハーネス保持部12に保持されたワイヤハーネス40がシートバック51内に位置するように、シートバック51の表皮57の開口部56の縁に沿って延長する挿着孔52,53に着脱自在な表皮挿着部13,14を差し込まれながらシートバッククランプ10がシートバック51に取り付けられる。従って、このクランプ構造のためにシートフレーム50に孔を設ける必要はない。即ち、この構成のクランプ構造では、金属製のシートフレーム50にではなく、天然皮革、合成皮革、等といった加工し易い柔軟な材料で形成されるシートバック51の表皮57に挿着孔52,53を形成すればよい。
【0045】
それ故、シート内へのクランプ(シートバッククランプ10)の組付けに際して従来のもののように特殊工具等を用いる必要がなく、簡単に挿着を行なえ、更に、位置の誤差を吸収することができるので、作業性を向上させることができる。
【0046】
また、このクランプ構造では、解体時に表皮挿着部13,14を表皮57から簡単に取り外せるため、解体時における作業性を向上させることができる。
【0047】
また、本発明に係るクランプ構造の一実施形態によれば、シートバッククランプ10上で表皮挿着部13,14がワイヤハーネス40と横並びとなっており、そしてワイヤハーネス40のワイヤハーネス保持部12に保持された部分の延長方向が表皮挿着部13,14の挿着孔52,53への差し込み方向と平行であるので、シートバッククランプ10の表皮挿着部13,14をシートバック51の表皮57の開口部56側に、そしてワイヤハーネス40を該開口部56の外側で且つシートバック51の中にしてシートバッククランプ10の表皮挿着部13,14をシートバック51の表皮57の挿着孔52,53に差し込むことができる。従って、ワイヤハーネス保持部12に保持されたワイヤハーネス40が常にシートバック51内に位置するようにシートバッククランプ10をシートバック51へ取り付けることが可能である。
【0048】
また、本発明に係るクランプ構造の一実施形態によれば、ワイヤハーネス40が、ワイヤハーネス保持部12とともに、シートバック51のクッション58と表皮57の裏面とに挟み込まれ、クッション58がワイヤハーネス40を表皮57の裏面側に押し付けるので、ワイヤハーネス40がシートバック51内のいずれかの部分に常に接触し、従来のように浮いては配置されない。従って、ワイヤハーネス40が、損傷を受けたり、異音を発生したりすることが防止される。
【0049】
また、本発明に係るクランプ構造の一実施形態によれば、例えば車両の乗車人がシートに座ることにより、シートバック51の開口部56を拡大する応力が働いても、シートバック51に取り付けられているシートバッククランプ10のシートフレーム係止部15がシートフレーム50のフレーム内縁部62に引っ掛かるため、ワイヤハーネス40に張力等の応力が加えられることを阻止することができる。
【0050】
また、本発明に係るクランプ構造の一実施形態によれば、挿着孔52,53は、例えば衣類等の縫い合わせ縁部に縫い付けられたブランド名等を示すタグのような環状帯部材54,55の内周面により画成され、それら環状帯部材54,55は表皮57を製造する際に同時に形成することができるため、シートフレームに孔を形成する場合と比べて作製が容易であり、それによって生産性の向上を図ることができる。
【0051】
このように、本発明に係るクランプ構造の一実施形態によれば、ワイヤハーネス40が損傷を受けず、異音が発生せず、簡単な組付けにより作業性の向上を図れ、解体を容易に行なうことができる。
【0052】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0053】
シートバックの表皮に設けられる挿着孔は、環状帯部材により形成されるものに代えて、開口部近傍の表皮の端縁部に切欠状の孔として形成したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係るクランプ構造の一実施形態を示すワイヤハーネスとクランプとシートバックとの組み立てを説明するための要部外観斜視図である。
【図2】図1に示されるワイヤハーネス付きクランプのシートバックへの組付け状態を示す要部外観斜視図である。
【図3】図1のワイヤハーネス付きクランプが組み付けられるシートバックを斜め後方から見た外観斜視図である。
【図4】図3のシートバックが組み付けられるシートフレームを斜め後方から見た外観斜視図である。
【図5】図1のワイヤハーネス付きクランプをシートバックに組み付ける際に用いるワイヤハーネス付きクランプのアッセンブリーの正面図である。
【図6】図5のアッセンブリーをシートバックに組付ける直前の要部外観斜視図である。
【図7】図6に示されるアッセンブリーとシートバックとの組み立て後の外観斜視図である。
【図8】図5のアッセンブリーをシートバックに組み付けた状態を示す外観斜視図である。
【図9】アッセンブリー付きシートバックを備えたシートバックを図8に示されるA−A矢視線のところで切断して見た断面図である。
【図10】図9に示されるシートバックをシートフレームに組付けた状態を示す外観斜視図である。
【図11】従来のクランプ構造の一例の側面図である。
【符号の説明】
【0055】
10 シートバッククランプ(クランプ)
11 本体
12 ワイヤハーネス保持部
13,14 表皮挿着部
15 シートフレーム係止部
40 ワイヤハーネス
50 シートフレーム
51 シートバック
52,53 挿着孔
56 開口部
57 表皮
58 クッション
60 シートフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートのシートフレームに被せられるシートバックの中にワイヤハーネスを配策するためのクランプ構造であって、
前記ワイヤハーネスを保持するためのワイヤハーネス保持部と、前記シートバックの表皮の開口部の縁に沿って延長するように形成された挿着孔に着脱自在に挿し込まれる表皮挿着部と、を有するクランプを備え、
前記ワイヤハーネス保持部に保持された前記ワイヤハーネスが前記シートバック内に位置するように前記クランプがその前記表皮挿着部を前記表皮の前記挿着孔に差し込まれながら前記シートバックに取り付けられることを特徴とするクランプ構造。
【請求項2】
前記表皮挿着部が前記ワイヤハーネスと横並びとなるように前記クランプに形成され、そして前記ワイヤハーネスの前記ワイヤハーネス保持部に保持された部分の延長方向が前記表皮挿着部の前記挿着孔への差し込み方向と平行であることを特徴とする請求項1に記載したクランプ構造。
【請求項3】
前記ワイヤハーネスが、前記ワイヤハーネス保持部とともに、前記シートバックのクッションと前記表皮の裏面とに挟み込まれることを特徴とする請求項1または請求項2に記載したクランプ構造。
【請求項4】
前記クランプは前記シートフレームに係止されるシートフレーム係止部を更に有し、当該シートフレーム係止部により前記表皮挿着部から前記ワイヤハーネス保持部へ向かう方向への前記クランプの移動が規制されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載したクランプ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−1477(P2007−1477A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185174(P2005−185174)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】