説明

クランプ装置

【課題】小さい力で確実にスイングバーをロックすることができるクランプ装置を提供する。
【解決手段】本体11と、スイングバー軸を介して本体11に円弧運動可能に支持されるスイングバー12と、カム軸132を介して本体11に円弧運動可能に支持されるカム13と、第一の連結アーム軸141を介してスイングバー12に円弧運動可能に連結されるとともに、第二の連結アーム軸142を介してカム13に円弧運動可能に連結されてスイングバー12とカム13とを連結する連結アーム14とを有し、カム13が円弧運動の可動範囲の一端に向かって円弧運動すると、カム13の運動が連結アーム14を介して前記スイングバー12に伝達されてスイングバー12が円弧運動するとともに、カム13は円弧運動の可動範囲の前記一端においてスイングバー12に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ装置に関する。詳しくは、機械加工などにおいてワークをテーブルなどに固定するために用いられるクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークを作業台や工作機械のテーブルなどに固定するための種々のクランプが開発されており、用途などに応じて様々な仕様のクランプが用いられている。一般に、従来のクランプ装置は、操作用のハンドルと、リンクやカムを介してハンドル操作で作動するクランプ板とを備え、クランプ板によってワークを固定する。その場合、ワークに対するクランプ板の作用の仕方に応じて横押し型、下方圧型あるいは引張り型等に分類されることがある。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されるトグルクランプにおいては、ハンドルレバーに窓孔が形成され、基台ブラケットに一体に形成されたロックレバーホルダーに枢支した爪付きロックレバーがロック用ばねにより一方へ付勢され、クランプ時に爪付きロックレバーの爪が窓孔の端縁に弾性的に噛み合うようにしている。この例を始めとして極めて多様なクランプ装置が知られ、それぞれの特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−108593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来のクランプ装置は、次のような問題を有することがある。ワークを固定する力を大きくしようとすると、固定の際に大きな力が必要になる。小さな力で固定できるようにするため、ハンドルを長くする構成が考えられるが、そうするとクランプ装置が大型化するのみならず、ハンドルの操作に必要なスペースも大きくなり、クランプ装置の使用箇所が制限されるおそれがある。
【0006】
前記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、小さい力で確実にスイングバーをロックすることができるクランプ装置を提供することである。また、本発明が解決しようとする課題は、小型化や部品点数の削減や構成の簡素化を図ることができるクランプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、本体と、スイングバー軸を介して前記本体に円弧運動が可能に支持されるスイングバーと、カム軸を介して前記本体に円弧運動が可能に支持されるカムと、一の連結アーム軸を介して前記スイングバーに円弧運動が可能に連結されるとともに、他の一の連結アーム軸を介して前記カムに円弧運動が可能に連結されて、前記スイングバーと前記カムとを連結する連結アームとを有し、前記カムが円弧運動の可動範囲の一端に向かって円弧運動すると、前記スイングバーが前記連結アームによって前記カムに連動して円弧運動するとともに、前記カムは円弧運動の可動範囲の前記一端において前記スイングバーに当接することを特徴とする。
【0008】
前記本体には前記スイングバーが当接可能な当接部が設けられ、前記カムは、円弧運動の可動範囲の前記一端に位置すると、前記スイングバーを前記本体の前記当接部に付勢して当接させることを特徴とする。
【0009】
前記カムが円弧運動の可動範囲の前記一端に位置すると、前記他の連結アーム軸の中心は、前記他の連結アーム軸の軸線方向視において、前記他の連結アーム軸の中心と前記カム軸の中心とを通過する直線よりも、前記カム軸の中心と前記カムが前記スイングバーに接触する位置とを通過する直線の側に位置することを特徴とする。
【0010】
前記本体には、外部の部材に取り付け可能な取付部が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スイングバーをカムによって直接的にロックできる。このため、小さい力で確実にスイングバーをロックすることができる。また、小さい力で操作できるため、ハンドルの小型化を図ることができる。そして、ハンドルの小型化を図ることができるから、ハンドルの操作に必要なスペースの小型化を図ることができる。そうすると、使用場所の制限を受けることが少なくなる。
【0012】
また、本発明によれば、ハンドルを操作してスイングバーのロックを解除すると、カムの動作に連動してスイングバーが解放側端に向かって移動する。このように、カムによるスイングバーのロックを解除すると同時に、スイングバーを引き上げることができる。したがって、スイングバーを別途引き上げる動作が不要になるほか、たとえばバネなどによってスイングバーを引き上げる構成と比較すると、構成の簡素化や部品点数の削減を図ることができる。
【0013】
さらに本発明によれば、ハンドルを操作してスイングバーをロックする動作において、カムが固定側端に到達する直前(=カムがスイングバーをロックする直前)に、ハンドルにかかる負荷が変化する。このため、使用者は、ハンドルの操作の感触の変化によって、スイングバーがロックされたことを検知できる。このため、作業者はスイングバーのロックを確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施形態にかかるクランプ装置の構成を模式的に示す外観斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態にかかるクランプ装置の構成を模式的に示す外観斜視図であり、図1とは反対側から見た図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態にかかるクランプ装置の内部の構成を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態にかかるクランプ装置の内部の構成を模式的に示す断面斜視図である。
【図5】図5は、スイングバーおよびカムが解放側端に位置する状態を模式的に示す断面図である。
【図6】図6は、スイングバーおよびカムが固定側端に位置する状態を模式的に示す断面図である。
【図7】図7は、スイングバーと第一の連結アーム軸と第二の連結アーム軸とカム軸との位置関係を模式的に示す図であって、(a)は、スイングバーおよびカムが解放側端に位置する状態を示す図であり、(b)は、固定側端に位置する状態を示す図である。
【図8】図8は、スイングバーおよびカムの動作と位置関係を模式的に示す図であって、(a)は、スイングバーが円弧運動の固定側端に位置するがカムは固定側端に位置しない状態を示す図であり、(b)はスイングバーおよびカムがともに固定側端に位置する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施形態にかかるクランプ装置1は、カムスイング式のクランプであり、スイングバーが円弧運動(=スイング)することによって、ワークWを固定する状態と固定しない状態とに切り替わる。そして、各種作業台や工作機械などに取り付けて使用され、ワークWを各種作業台や各種工作機械のテーブルなどに固定することができる。
【0016】
まず、本発明の実施形態にかかるクランプ装置1の全体構成について、図1〜図4を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態にかかるクランプ装置1の構成を模式的に示す外観斜視図である。図2は、本発明の実施形態にかかるクランプ装置1の構成を模式的に示す外観斜視図であり、図1とは反対側から見た図である。図3は、本発明の実施形態にかかるクランプ装置1の内部の構成を模式的に示す図である。図4は、本発明の実施形態にかかるクランプ装置1の内部の構成を模式的に示す断面斜視図である。図1〜図4に示すように、本発明の実施形態にかかるクランプ装置1は、本体11と、スイングバー12と、スイングバー軸121と、連結アーム14と、二つの連結アーム軸(=第一の連結アーム軸141および第二の連結アーム軸142)と、カム13と、カム軸132と、ハンドル133と、取付部15(取付プレート)とを有する。
【0017】
本体11は、本発明の実施形態にかかるクランプ装置1の筐体となる部分である。そして本体11は、二枚の支持部111と二か所の当接部(=第一の当接部112と第二の当接部113)とを有する。二枚の支持部111は、それぞれ平板状に構成され、所定の間隔をおいて略平行に設けられる。そして、二枚の支持部111の間に、スイングバー12と、連結アーム14と、カム13とが設けられる。二か所の当接部(=第一の当接部112と第二の当接部113)は、スイングバー12が当接することができる部分である。
【0018】
スイングバー12は、ワークWを固定する部材である。スイングバー12は棒状に構成され、その軸線方向の中間において、スイングバー軸121によって本体11の二枚の支持部111に円弧運動可能に(=スイング可能に)支持される。スイングバー軸121よりも先端側は、本体11から外部に突出している。そして、本体11から突出する部分には、ワークWに当接するパッドなどが取り付けられるような構成を有する。スイングバー軸121よりも後端側(スイングバー軸121よりも後端側の部分を、「後端部」と称する)には、連結アーム14の一端部が、第一の連結アーム軸141を介して円弧運動可能に連結される。スイングバー12がスイングバー軸121を中心として円弧運動することによって、ワークWを固定する状態と固定しない状態とに切り替わる。すなわち、スイングバー12は、円弧運動の可動範囲の一端に位置すると、ワークWを固定できる状態となり、円弧運動の可動範囲の当該一端から離れると、ワークWを固定しない状態となる。なお、スイングバーの断面形状は特に限定されないが、たとえば各図に示すように略円形の断面が適用できる。
【0019】
カム13は、スイングバー12を連動して作動させるとともにロックする部材である。カム13は、カム軸132によって本体11の二枚の支持部111に円弧運動可能に支持される。そして、カム13には、連結アーム14の他端部が、第二の連結アーム軸142によって円弧運動可能に連結される。また、カム13には、使用者がカム13を操作するためのハンドル133が設けられる。ハンドル133は、たとえば、棒状の構成を有し、一端がカム13にネジなどによって固定され、他端側が本体11から外部に突出する。なお、ハンドル133は、使用者がカム13をカム軸132を中心として円弧運動させることができる構成であればよく、具体的な構成は特に限定されない。
【0020】
連結アーム14は、スイングバー12とカム13とを連結する部材であり、たとえば、短冊状の構成を有する。そして、連結アーム14の長手方向の一端部は、第一の連結アーム軸141を介してスイングバー12に円弧運動可能に連結される。また、連結アーム14の他端部は、第二の連結アーム軸142を介してカム軸132に円弧運動可能に連結される。このように、スイングバー12とカム13とは、連結アーム14によって連結されるため、連動して機械的な動作をする。
【0021】
ここで、本体11とスイングバー12とカム13と連結アーム14との組み付け構成について、簡単に説明する。図1〜図4に示すように、スイングバー軸121と、カム軸132と、第一の連結アーム軸141と、第二の連結アーム軸142とは互いに平行である。そして、スイングバー12と、カム13と、連結アーム14とは、同一平面内または互いに平行な平面内を円弧運動することができる。スイングバー12の後端部には、スイングバー12の円弧運動の軌跡の平面に平行なスリットが形成され、このスリットの内部に連結アームの一端部が挿入される。そして、スイングバー12の後端部と連結アーム14の一端部とを貫通するように、第一の連結アーム軸141が設けられる。このため、スイングバー12と連結アーム14の一端部とは、第一の連結アーム軸141によって円弧運動可能に連結される。また、カムに13は、円弧運動の軌跡の平面に平行なスリットが形成され、このスリットの内部に、連結アーム14の他端部が挿入される。そして、カム13と連結アーム14の他端部とを貫通するように、第二の連結アーム軸142が設けられる。このため、カム13と連結アーム14の他端部とは、第二の連結アーム軸142によって円弧運動可能に連結される。
【0022】
取付部15(取付プレート)は、本発明の実施形態にかかるクランプ装置1を、作業台や工作機械などに取り付けるための部分である。取付部15は、ネジ152などによって本体11に着脱可能に取付けられる。取付部15の具体的な構成は、取り付けられる側の作業台や工作機械の構成などに応じて適宜設定される。たとえば、図1〜4に示すように、取付部15には、ネジなどを挿通可能な貫通孔151が形成される板状の構成が適用できる。そして、取付部15が本体11に着脱可能な構成であると、各種の作業台や工作機械に対応する取付部15を、選択的に取付けることができる。
【0023】
次いで、本発明の実施形態にかかるクランプ装置1の動作と、動作の際の各部の位置関係について、図5〜図8を参照して説明する。説明の便宜上、スイングバー12およびカム13の円弧運動の可動範囲の一端であって、ワークWを固定する側の端を「固定側端」と称し、反対側の一端であってワークWを固定しない側の端を「解放側端」と称する。図5は、スイングバー12およびカム13が解放側端に位置する状態を模式的に示す断面図である。図6は、スイングバー12およびカム13が固定側端に位置する状態を示す断面図である。図7は、スイングバー軸121と第一の連結アーム軸141と第二の連結アーム軸142とカム軸132との位置関係を模式的に示す図である。そして、(a)は、スイングバー12およびカム13が解放側端に位置する状態を示し、(b)は、固定側端に位置する状態を示す。図8は、スイングバー12およびカム13の動作と位置関係を模式的に示す図である。そして、(a)はスイングバー12が固定側端に位置するが、カム13が固定側端の近傍(ただし、固定側端ではない)に位置する状態を示し、(b)はスイングバー12およびカム13がいずれも固定側端に位置する状態を示す。
【0024】
図5に示すように、スイングバー12およびカム13が解放側端に位置すると、カム13に設けられるカム面131とスイングバー12とが離れるとともに、スイングバー12が本体11に設けられる二か所の当接部112,113から離れる。この状態においては、特に図7(a)に示すように、各軸121,132,141,142の軸線方向視において、第二の連結アーム軸142の中心C2は、第一の連結アーム軸141の中心C1とカム軸132の中心C3とを通過する直線L1上にはなく、この直線から一方側に離れた位置にある。そして、使用者は、この状態からハンドル133を操作して、スイングバー12を固定側端に向かって移動させる。
【0025】
図6に示すようにスイングバー12およびカム13が固定側端に位置すると、スイングバー12が、本体11に設けられる二か所の当接部112,113に接触する。具体的には、後端部の側面が第一の当接部112に当接し、スイングバー軸121よりも先端側であって、第一の当接部112と接触する側面とは反対側の側面が第二の当接部113に当接する。また、カム13に設けられるカム面131が、スイングバー12の後端部であって、第一の当接部112に接触する側とは反対側の側面に当接する。そして、カム13がスイングバー12の後端部を第一の当接部112に付勢して押し付ける。このため、スイングバー12の後端部は、カム13に設けられるカム面131と本体11に設けられる第一の当接部112とに挟持され、固定側端に位置する状態に維持される。この状態においては、特に図7(b)に示すように、各軸121,132,141,142の軸線方向視において、第二の連結アーム軸142の中心C2は、第一の連結アーム軸141の中心C1とカム軸132の中心C3とを通過する直線L1上にはなく、可動側端に位置する状態とは反対側の一方側に位置する。このため、特に図7(a),(b)に示すように、第二の連結アーム軸142の中心C2は、スイングバー12が可動側端に位置する状態と固定側端に位置する状態とで、第一の連結アーム軸141の中心C1とカム軸132の中心C3とを通過する直線L1を挟んで互いに反対側に位置する。
【0026】
ここで、スイングバー12およびカム13が固定側端に位置する状態での各部の位置関係について、図6と図7(b)を参照して説明する。この状態においては、カム13に設けられるカム面131とスイングバー12との接触位置P(以下、単に「接触位置P」と称する)は、第一の連結アーム軸141の中心C1よりもさらに後側に位置する。すなわち、スイングアーム軸121の中心C4と接触位置Pとは、スイングバー12の軸線L3の方向に関し、第一の連結アーム軸141の中心C1を挟んで互いに反対側に位置する。そして、たとえば、スイングバー12の軸線L3と、カム軸132の中心C3と接触箇所Pとを通過する直線L4とは、略直角になる。なお、スイングバー12の軸線L3とは、各軸121,132,141,142の軸線方向視において、スイングバー軸121の中心C4と第一の連結アーム軸141の中心C1とを通過する直線をいうものとする。
【0027】
また、第一の連結アーム軸141の中心C1と第二の連結アーム軸142の中心C2を通過する直線L2(以下、連結アーム14の軸線L2と称する)と、第一の連結アーム軸141の中心C1とカム軸132の中心C3とを通過する直線L1は、いずれも、カム軸132の中心C3と接触箇所Pとを通過する直線L4、およびスイングバー12の軸線L3とは平行ではなく、所定の角度をもって傾斜する。そして、各軸121,132,141,142の軸線方向視において、第二の連結アーム軸142の中心C2は、第一の連結アーム軸141の中心C1とカム軸132の中心C3とを通過する直線L1と、カム軸132の中心C3と接触箇所Pとを通過する直線L4との間に位置する。このため、矢印Aの側(=各軸121,132,141,142の軸線方向視において、スイングバー12の軸線L3に直角な方向)から見ると、スイングバー12の先端側から順に、スイングバー軸121の中心C4、第一の連結アーム軸141の中心C1、第二の連結アーム軸142の中心C2、カム軸132の中心C3の順に並ぶ。
【0028】
このような構成であると、スイングバー12は、カム13および連結アーム14によって、固定側端に位置する状態に二重にロックされる。すなわち、ワークWからの反力など、スイングバー12に解放側端に向かって円弧運動させる外力が加わると、スイングバー12の後端部がカム面131を介してカム13を押圧する。図6と図7(b)においては、スイングバー12の後端部がカム13を下側に向かって押圧する。ここで、スイングバー12の軸線L3と、カム軸132の中心C3およびカム面131とスイングバー12との接触箇所Pとを通過する直線L4とは略直角である。このため、スイングバー12の後端部がカム面131を押圧しても、カム13にはカム13の円弧運動の半径方向の力が加わるが、円周方向の力は加わらない。すなわち、カム13には、解放側端に円弧運動させるような力は加わらない。このため、カム13は固定側端に位置する状態に維持され、スイングバー12が解放側端に向かって円弧運動することを阻止する。すなわち、カム13によってスイングバー12がロックされる。
【0029】
また、スイングバー12およびカム13が、固定側端から解放側端に向かって円弧運動するためには、各軸121,132,141,142の軸線方向視において、第二の連結アーム軸142の中心C2が、第一の連結アーム軸141の中心C1とカム軸132の中心C3とを通過する直線L1を横断して移動する必要がある。スイングバー12およびカム13が固定側端に位置する状態において、スイングバー12にワークWからの反力がかかるなどすると、第二の連結アーム軸142は、連結アーム14を介して押圧される。ここで、第二の連結アーム軸142の中心C2は、第一の連結アーム軸141の中心C1とカム軸132の中心C3とを通過する直線L1から一方側であって、カム軸132の中心C3およびカム面131とスイングバー12との接触箇所Pを通過する直線L4の側にずれた位置にある。このため、カム13にはカム軸132を中心とするモーメントがかかるが、このモーメントは、カム13を固定側端に円弧運動させる向きに作用する。したがって、カム13には、解放端側に向かって円弧運動させるような力が加わらず、むしろ固定側端に向かって押し付けられるような力が加わる。したがって、カム軸132は固定側端に位置する状態に維持され、スイングバー12は解放側端に向かって円弧運動できない。すなわち、連結アーム14によってスイングバー12がロックされる。
【0030】
このように、スイングバー12は、カム13と連結アーム14とによって、二重にロックされる。したがって、ワークWからの反力など、スイングバー12に解放側端に向かって円弧運動させるような力が加わっても、スイングバー12は固定側端に位置する状態に維持される。すなわち、本発明の実施形態にかかるクランプ装置1は、ワークWを固定する状態を維持する。
【0031】
次に、スイングバー12およびカム13の固定側端の近傍における動作について説明する。本発明の実施形態にかかるクランプを用いてワークWを固定するためには、使用者は、図5に示すように、スイングバー12およびカム13が解放側端(またはその近傍)に位置する状態から、ハンドル133を操作してカム13を固定側端に向けて円弧運動させる。そうすると、スイングバー12とカム13とは連結アーム14によって連動し、固定側端に向かって円弧運動する。そして、スイングバー12およびカム13が固定側端に向かって円弧運動すると、図8(a)に示すように、カム13が固定側端に到達するよりも先に、スイングバー12が固定側端に達する。そうすると、スイングバー12の後端部の一方の側面が本体11の第一の当接部112に当接するとともに、スイングバー12のスイングバー軸121よりも先端側の部分が第二の当接部113に当接する。そして、カム13に設けられるカム面131が、スイングバー12の後端部に当接する。すなわち、無負荷の状態においては、カム軸132の中心C3からカム面131までの寸法X2は、カム軸132の中心C3からスイングバー12の後端部の外周面までの距離X1よりもわずかに大きい寸法に設定される。そして、使用者は、図8(a)に示す位置に達するまでは、ほぼ無負荷の状態でハンドル133を操作してカム13を円弧運動させることができる。
【0032】
使用者は、図8(a)に示す状態から、さらにハンドル133を操作してカム13を固定側端に向かって円弧運動させる。そうすると、図8(b)に示すように、本発明の実施形態にかかるクランプ装置1の各部が撓むことによって、カム13が円弧運動して固定側端に到達する。図8(a)に示す状態から図8(b)に示す状態に移行するまでの間は、ハンドル133の操作の負荷が大きくなる。このため、使用者は、ハンドル133を操作する感触の変化によって、カム13が固定側端に達してスイングバー12がロックされたことを感知できる。したがって、本発明の実施形態にかかるクランプ装置1によれば、ワークWを固定する際に、スイングバー12がロックされない状態となることを防止できる。また、この状態では、カム13に設けられるカム面131が、スイングバー12の後端部を、各部の弾性力によって本体11に設けられる第一の当接部112に付勢して押圧する状態となる。したがって、スイングバー12は、がたつきが生じることなく、固定側端に位置する状態に維持される。
【0033】
本発明の実施形態にかかるクランプ装置1による効果は次のとおりである。本発明の実施形態にかかるクランプ装置1によれば、スイングバー12をカム13によって直接的にロックできる。このため、小さい力で確実にスイングバー12をロックすることができる。また、小さい力で操作できるため、ハンドル133の小型化を図ることができる。そして、ハンドル133の小型化を図ることができるから、ハンドル133の操作に必要なスペースの小型化を図ることができる。そうすると、使用場所の制限を受けることが少なくなる。
【0034】
また、本発明の実施形態にかかるクランプ装置1によれば、スイングバー12とカム13とは、連結アーム14によって連結されているため、連動して円弧運動する。このため、ハンドル133を操作してスイングバー12のロックを解除すると、カム13の動作に連動してスイングバー12が解放側端に向かって移動する。このように、カム13によるスイングバー12のロックを解除すると同時に、スイングバー12を引き上げることができる。したがって、スイングバー12を別途引き上げる動作が不要になるほか、たとえばバネなどによってスイングバー12を引き上げる構成と比較すると、構成の簡素化や部品点数の削減を図ることができる。
【0035】
本発明の実施形態にかかるクランプ装置1によれば、ハンドル133を操作してスイングバー12をロックする動作において、カム13が固定側端に到達する直前(=カム13がスイングバー12をロックする直前)に、ハンドル133にかかる負荷が変化する。このため、使用者は、ハンドル133の操作の感触の変化によって、スイングバー12がロックされたことを検知できる。このため、作業者はスイングバー12のロックを確実に行うことができる。
【0036】
本発明の実施形態にかかるクランプ装置1によれば、スイングバー12は、カム13と連結アーム14とによって二重にロックされる。このため、スイングバー12のロックが使用者の意に反して外れることを防止でき、安定したクランプ状態を作り出すことができる。
【0037】
本発明の実施形態にかかるクランプ装置1によれば、スイングバー12は、本体11に設けられる二つの当接部112,113にカム13によって付勢されて押し付けられ、固定側端に位置する状態に維持される。このため、スイングバー12は固定側端に位置する状態においては、がたつきなどが生じない。したがって、安定したクランプ状態を作り出すことができる。
【0038】
取付部15が、本体11に着脱可能な別個の部材であると、取付部15を交換することにより、本発明の実施形態にかかるクランプ装置1を、種々の構成の工作機械のテーブルや工作台に固定することができる。したがって、本発明の実施形態にかかるクランプ装置1の適用範囲を広げることができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明したが、本発明は前記実施形態に何ら限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変が可能であり、これらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1:クランプ装置
11:本体
111:支持部
112:第一の当接部
113:第二の当接部
12:スイングバー
121:スイングバー軸
13:カム
131:カム面
132:カム軸
133:ハンドル
14:連結アーム
141:第一の連結アーム軸
142:第二の連結アーム軸
15:取付部(取付プレート)
151:貫通孔(ネジ孔)
152:ネジ

1:第一の連結アーム軸の中心
2:第二の連結アーム軸の中心
3:カム軸の中心
4:スイングバー軸の中心
1:第一の連結アーム軸の中心とカム軸の中心とを通過する直線
2:第一の連結アーム軸の中心と第二の連結アーム軸の中心とを通過する直線
3:スイングバーの軸線
4:カム軸の中心とカム面の接触位置とを通過する直線
W:ワーク
1:カム軸の中心からスイングバーの後端部までの距離
2:カム軸の中心からカム面までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
スイングバー軸を介して前記本体に円弧運動が可能に支持されるスイングバーと、
カム軸を介して前記本体に円弧運動が可能に支持されるカムと、
一の連結アーム軸を介して前記スイングバーに円弧運動が可能に連結されるとともに、他の一の連結アーム軸を介して前記カムに円弧運動が可能に連結されて、前記スイングバーと前記カムとを連結する連結アームと、
を有し、
前記カムが円弧運動の可動範囲の一端に向かって円弧運動すると、前記スイングバーが前記連結アームによって前記カムに連動して円弧運動するとともに、前記カムは円弧運動の可動範囲の前記一端において前記スイングバーに当接することを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
前記本体には前記スイングバーが当接可能な当接部が設けられ、
前記カムは、円弧運動の可動範囲の前記一端に位置すると、前記スイングバーを前記本体の前記当接部に付勢して当接させることを特徴とする請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
前記カムが円弧運動の可動範囲の前記一端に位置すると、前記他の連結アーム軸の中心は、前記他の連結アーム軸の軸線方向視において、前記他の連結アーム軸の中心と前記カム軸の中心とを通過する直線よりも、前記カム軸の中心と前記カムが前記スイングバーに接触する位置とを通過する直線の側に位置することを特徴とする請求項1または2に記載のクランプ装置。
【請求項4】
前記本体には、外部の部材に取り付け可能な取付部が設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のクランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−52452(P2013−52452A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190454(P2011−190454)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(510207494)関羽工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】