説明

クリップ

【課題】 クリップ本体をクリップ孔に対してしっかりと取り付けることが可能になるとともに、クリップ本体に対する差込ピンの差し込み量が十分であるかどうかを確認することができるようにする。
【解決手段】 クリップ孔に取り付けられるクリップ10であって、クリップ孔に挿入される一対の可撓片21a,21bを備えるクリップ本体20と、一対の可撓片21a,21bの間に差し込み可能な差込ピン31とを備えるとともに、一対の可撓片21a,21bの間に差込ピン31が差し込まれると、一対の可撓片21a,21bが互いに離間する方向に撓み、一対の可撓片21a,21bがクリップ孔52に抜け止め状態で係合するようになっており、クリップ本体20には、差込ピン31が一対の可撓片21a,21bの間から抜け出ることを防止するための係合爪40a,40bが設けられている、クリップ10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップ孔に取り付けられるクリップに関する。さらに詳しくは、自動車のボデーパネル等に設けられているクリップ孔に対して部品等を取り付けるために使用されるクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクリップとしては、例えば特許文献1に記載のクリップが知られている。このクリップは、クリップ本体(アウター部材)と差込ピン(インナー部材)の二部材によって構成されており、クリップ本体は中空形状でかつ複数個の可撓片に分断された構造になっている。このクリップをクリップ孔に取り付けるためには、まず、クリップ孔にクリップ本体を挿入する。つづいて差込ピンをクリップ本体の中空部に差し込むことにより、クリップ本体の各可撓片が外側へ撓んでクリップ孔に係合し、クリップ孔に対してクリップ本体が取り付けられる。クリップ本体をクリップ孔から取り外す場合は、差込ピンをクリップ本体の中空部から引き戻して、その後にクリップ本体をクリップ孔から抜き取る。
【0003】
【特許文献1】特開2001−221213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のクリップをクリップ孔に取り付けるときには、クリップ本体の中空部に差込ピンを差し込むだけであるが、このとき、クリップ本体に対する差込ピンの差し込み量が不十分となって、クリップ孔からはクリップ本体が不測に脱落するおそれがあるので問題であった。また、クリップ本体をクリップ孔に取り付ける際には、クリップ本体に対する差込ピンの差し込み量が十分であるかどうかを確認する手段がないので、このこともクリップ装着に関する不具合発生の一つの要因となっていた。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、クリップ本体及び差込ピンによって構成されるクリップにおいて、クリップ本体をクリップ孔に対してしっかりと取り付けることが可能になるとともに、クリップ本体に対する差込ピンの差し込み量が十分であるかどうかを確認することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、クリップ孔に取り付けられるクリップであって、前記クリップ孔に挿入される少なくとも一対の可撓片を備えるクリップ本体と、前記一対の可撓片の間に差し込み可能な差込ピンとを備えるとともに、前記一対の可撓片の間に前記差込ピンが差し込まれると、前記一対の可撓片が互いに離間する方向に撓み、前記一対の可撓片が前記クリップ孔に抜け止め状態で係合するようになっており、前記クリップ本体には、前記差込ピンが前記一対の可撓片の間から抜け出ることを防止するロック手段が設けられており、前記ロック手段は、前記差込ピンが所定の深さまで差し込まれることによって当該差込ピンの基端に設けられているフランジ部に弾性的に係合する係合爪により構成されている、クリップである。
第1の発明によれば、一対の可撓片の間に差込ピンを所定の深さまで差し込むことによって、その差込ピンの基端に設けられているフランジ部に係合爪が係合する。これにより、一対の可撓片の間から差込ピンが抜け出ることが防止されるとともに、クリップ孔からのクリップ本体の不測の脱落が防止される。しかも、差込ピンは所定の深さまでしっかりと差し込まなければ係合爪が係合しないので、これによってクリップを取り付ける作業者は差込ピンの差し込み量が十分であるかどうかを確認することができる。
【0007】
第2の発明は、上記第1の発明において、クリップ本体とフランジ部とがヒンジによって連結されている、クリップである。
第2の発明によれば、クリップ本体とフランジ部がヒンジによって連結されているので、ヒンジを中心とするフランジ部の開閉操作によって、クリップ本体と差込ピンとを簡単にロックさせることが可能である。しかも、クリップ本体と差込ピンが一体に連結されて分離することがないので、クリップ孔に対するクリップ本体の取り付け作業がやりやすくなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るクリップによれば、クリップ本体をクリップ孔に対してしっかりと取り付けることが可能になるとともに、クリップ本体に対する差込ピンの差し込み量が十分であるかどうかを作業者が確認することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、自動車のボデーパネル50に設けられたクリップ孔52に対してクリップ10を取り付ける際の状態を示す斜視図である。図1に示すように、本実施の形態に係るクリップ10は、自動車のボデーパネル50に設けられたクリップ孔52に対して、自動車に装備されている部品60を取り付けるために使用されるものである。この部品60は、自動車に装備されることのある部品であれば何でも良い。部品60の具体例としては、自動車の電子部品を制御する電子制御基板などを収容するためのボックス等を挙げることができる。
【0010】
図2は、クリップ10の拡大斜視図である。図3は、図2に示すクリップ10の正面図である。図4は、図2に示すクリップ10の側面図である。図5は、図2に示すクリップ10の上面図である。図2〜図5に示すように、本実施の形態に係るクリップ10は、大別すると、クリップ本体20、差込部30の2つの部分で構成されている。クリップ本体20の下面側には、一対の可撓片21a,21bが設けられている。差込部30には、前記一対の可撓片21a,21bの間に差し込まれる差込ピン31が設けられている。一対の可撓片21a,21bがクリップ孔52に挿入された後に、一対の可撓片21a,21bの間に差込ピン31が差し込まれることによって、一対の可撓片21a,21bが互いに離間する方向に撓み、これによって一対の可撓片21a,21bがクリップ孔52に係合するようになっている。
【0011】
クリップ本体20と差込部30は、ヒンジ32によって連結されている。具体的には、ヒンジ32は薄肉の樹脂製バンドで構成されており、このヒンジ32によって、クリップ本体20と差込ピン31の基端に設けられているフランジ部34とが連結されている。このヒンジ32によって差込部30の開閉操作が可能となっており、クリップ本体20と差込ピン31とのロック操作が簡単に行えるようになっている。また、クリップ本体20と差込部30がヒンジ32によって連結されているので、これらが互いに分離することがなく、クリップ孔52に対するクリップ10の取り付け作業がやりやすくなっている。
【0012】
図2に示すように、クリップ本体20は、合成樹脂により一体的に形成されているブラケット状の部材である。このクリップ本体20は、左の縦板部22aと、右の縦板部22bと、左右の縦板部22a,22bの下端部間に位置する底板部23を有している。これら左右の縦板部22a,22b及び底板部23が一方の端部において部品60の側面部61に一体的に取り付けられた状態となっている。左右の縦板部22a,22bには、差込ピン31が一対の可撓片22a,22bの間から抜け出ることを防止するための係合爪40a,40bがそれぞれ設けられている。この係合爪40a,40bが、本発明における「係合爪」ないし「ロック手段」に対応している。
【0013】
一対の可撓片21a,21bは所定の厚みを有する板状の部材であって、クリップ本体20の底板部23の下面側に一体的に設けられている。一対の可撓片21a,21bは、例えばポリプロピレンなどの可撓性を有する合成樹脂材料により形成されている。この一対の可撓片21a,21bは互いに一定の距離を保った状態でほぼ平行に設けられている。一対の可撓片21a,21bの間に差込ピン31が差し込まれることによって、一対の可撓片21a,21bが互いに離間する方向に撓むようになっている。これにより、クリップ孔52に差し込まれた一対の可撓片21a,21bが当該クリップ孔52に抜け止め状態で係合するようになっている。クリップ本体20の底板部23には円形の差込孔24が設けられており、この差込孔24に差込ピン31が差し込まれることによって、一対の可撓片21a,21bの間に差込ピン31が差し込まれる。
【0014】
図2に示すように、差込部30は、一対の可撓片21a,21bの間に差し込み可能な差込ピン31を備えている。この差込ピン31は、合成樹脂により略円筒状に形成された部材であって、その先端側には面取部33が形成されて先細り状となっている。差込ピン31の基端には平板状のフランジ部34が一体的に形成されており、差込ピン31はフランジ部34のほぼ中央から突出するように形成されている。差込ピン31の側部には、差込ピン31が差込孔24に差し込まれたときにその差込孔24の孔縁部に弾性的に係合して抜け止めをなす抜止爪35a,35bが設けられている。つまり、差込ピン31は、クリップ本体20に設けられている係合爪40a,40b、及び、差込ピン31に設けられている抜止爪35a,35bによって2重にロックされる。これによって差込ピン31は一対の可撓片21a,21bの間から非常に抜けにくくなっている。
【0015】
図6、図7は、一対の可撓片21a,21bの間に差込ピン31が差し込まれる際の態様を(a)、(b)、(c)の3段階で示す断面図である。ただし、図6は、図5におけるA−A線の断面図に対応しており、図7は、図5におけるB−B線の断面図に対応している。
図6、図7に示すように、一対の可撓片21a,21bの内面側には、差込ピン31をガイドするためのガイド溝25がそれぞれ形成されている。このガイド溝25の形状は、上半分はほぼ円筒状の凹部である円筒部25aとなっており、下半分はほぼ円錐状の凹部である円錐部25bとなっている。このガイド溝25に沿って差込ピン31が差し込まれることによって、上半分の円筒部25aでは差込ピン31がそのまま差し込まれるが、下半分の円錐部25bでは差込ピン31が一対の可撓片21a,21bを内側から押し出すようになっている。これにより、一対の可撓片21a,21bの間に差込ピン31が差し込まれると、差込ピン31がガイド溝25に沿って真っ直ぐにガイドされるとともに、一対の可撓片21a,21bが互いに離間する方向に撓み、これによって一対の可撓片21a,21bがクリップ孔52に係合するようになっている。
【0016】
図6(a)〜図6(c)に示すように、クリップ本体20の左右の側壁部22a,22bには、係合爪40a,40bがそれぞれ設けられている。一対の可撓片21a,21bの間に差込ピン31が所定の深さ(図6(c)で示される深さ)まで差し込まれることによって、係合爪40a,40bが差込ピン31の基端に設けられているフランジ部34に弾性的に係合するようになっている。これにより、一対の可撓片21a,21bの間から差込ピン31が抜け出ることが防止されるとともに、差込ピン31の差し込み量が不十分となることが防止されている。
すなわち、図6(b)の段階では、係合爪40a,40bがフランジ部34によって押し込まれている途中であり、この係合爪40a,40bの弾発力によって、差込部30全体が一対の可撓片21a,21bの間から抜け出る方向(図6(b)において上方向)に付勢されている状態である。しかし、一対の可撓片21a,21bを互いに離間させることで当該一対の可撓片21a,21bをクリップ孔52に係合させることのできる深さまで差込ピン31を差し込んだときには、図6(c)に示すように、フランジ部34の縁部に対して係合爪40a,40bが「カチッ」と係合し、このときに感じる節度感によって、差込ピン31を差し込む作業者は当該差込ピン31が十分な深さまで差し込まれたことを確認することができるようになっている。
【0017】
なお、クリップ10の各部の形状は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において他の形状に変更することも可能である。例えば、差込ピン31の形状として、円筒状以外の他の形状(例えば角柱状)を採用することも可能である。
また、クリップ本体20に対して一対の可撓片21a,21bが一組だけ設けられている例を示したが、可撓片の数はこれに限定するものではない。例えば、クリップ本体に対して3個以上の可撓片を設けることも可能である。また、一対の可撓片を二組以上設けることも可能である。
また、クリップ10が、車両のボデーパネル50に部品60を取り付けるために使用されるクリップである例を示したが、これに限定するものではない。例えば、自動車のボデーパネル同士を結合するためのクリップとして、本発明に係るクリップを使用することも可能である。
【0018】
以上説明したように、本発明に係るクリップによれば、クリップ本体及び差込ピンによって構成されるクリップにおいて、クリップ本体をクリップ孔に対してしっかりと取り付けることが可能になるとともに、クリップ孔からのクリップ本体の脱落を防止できる。また、本発明に係るクリップによれば、差込ピンを十分な深さまで差し込まなければ係合爪によるロックがなされないので、クリップ本体に対する差込ピンの差し込み量が十分であるかどうかを確認することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】自動車のボデーパネルに設けられたクリップ孔に対してクリップを取り付ける際の状態を示す斜視図である。
【図2】クリップの拡大斜視図である。
【図3】図2に示すクリップの正面図である。
【図4】図2に示すクリップの側面図である。
【図5】図2に示すクリップの上面図である。
【図6】一対の可撓片の間に差込ピンが差し込まれる際の態様を(a)、(b)、(c)の3段階で示す断面図である。
【図7】一対の可撓片の間に差込ピンが差し込まれる際の態様を(a)、(b)、(c)の3段階で示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
10 クリップ
20 クリップ本体
21a,21b 可撓片
30 差込部
31 差込ピン
32 ヒンジ
34 フランジ部
35a,35b 抜止爪
40a,40b 係合爪
50 ボデーパネル
52 クリップ孔
60 部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリップ孔に取り付けられるクリップであって、
前記クリップ孔に挿入される少なくとも一対の可撓片を備えるクリップ本体と、前記一対の可撓片の間に差し込み可能な差込ピンとを備えるとともに、前記一対の可撓片の間に前記差込ピンが差し込まれると、前記一対の可撓片が互いに離間する方向に撓み、前記一対の可撓片が前記クリップ孔に抜け止め状態で係合するようになっており、
前記クリップ本体には、前記差込ピンが前記一対の可撓片の間から抜け出ることを防止するロック手段が設けられており、
前記ロック手段は、前記差込ピンが所定の深さまで差し込まれることによって当該差込ピンの基端に設けられているフランジ部に弾性的に係合する係合爪により構成されている、クリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のクリップであって、
クリップ本体とフランジ部とがヒンジによって連結されている、クリップ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−225092(P2007−225092A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50217(P2006−50217)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000208293)大和化成工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】