説明

クリーニング装置、クリーニング方法及び液体噴射装置

【課題】クリーニング動作における液体の消費量を低減させること。
【解決手段】液体噴射ヘッドのうち液体を噴射する複数のノズルが形成された噴射面に対向して配置され、前記液体を保持可能なベルト部材と、前記ベルト部材の一部を前記噴射面側に押圧する押圧部と、複数の前記ノズルによる前記液体の噴射状態を検出可能な検出部と、複数の前記ノズルのうち前記検出部の検出結果が不良であった不良ノズルの液体が前記ベルト部材に付着するように前記押圧部を制御する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング装置、クリーニング方法及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体噴射装置として、噴射ヘッドのノズルから記録媒体にインクを噴射するインクジェット式記録装置が知られている。このようなインクジェット式記録装置では、時間の経過に伴ってノズルからのインクの吐出速度や吐出量が変化し、インクの噴射状態が変化する。このため、インクの噴射速度や噴射量を所望の範囲に維持するために、定期的に噴射ヘッドからインクを排出させるフラッシング動作などのクリーニング動作が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−43218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のフラッシング動作は、全てのノズルについて均一に行われるため、フラッシングの必要の無いノズルからもインクが排出されてしまい、インクが無駄に消費されてしまうといった問題があった。
【0005】
このような事情に鑑み、本発明は、クリーニング動作における液体の消費量を低減させることができるクリーニング装置、クリーニング方法及び液体噴射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るクリーニング装置は、液体噴射ヘッドのうち液体を噴射する複数のノズルが形成された噴射面に対向して配置され、前記液体を保持可能なベルト部材と、前記ベルト部材の一部を前記噴射面側に押圧する押圧部と、複数の前記ノズルによる前記液体の噴射状態を検出可能な検出部と、複数の前記ノズルのうち前記検出部の検出結果が不良であった不良ノズルの液体が前記ベルト部材に付着するように前記押圧部を制御する制御部とを備える。
【0007】
本発明によれば、複数のノズルのうち検出部の検出結果が不良であった不良ノズルの液体がベルト部材に付着するように押圧部を制御することにより、不良ノズルに対して選択的にクリーニング動作を行うことができる。これにより、クリーニング動作における液体の消費量を低減させることができる。また、クリーニング動作の必要ない正常なノズルに対してはクリーニング動作が行われないため、このような正常なノズルからインクを除去してしまう、いわゆる誘発抜けを回避することができる。
【0008】
なお、「不良ノズルの液体がベルト部材に付着するように押圧部を制御する」についての具体的な態様としては、例えば不良ノズルにベルト部材の一部を接触させる態様、不良ノズルから膨出した液体にベルト部材の一部を接触させる態様、不良ノズルの近傍の噴射面にベルト部材の一部を接触させる態様などが挙げられる。
【0009】
不良ノズルにベルト部材の一部を接触させる態様について、より具体的には、不良ノズル内部にベルト部材を入り込ませる態様や、不良ノズルの開口部をベルト部材の一部で塞ぐ態様などが挙げられる。この場合、不良ノズルに直接ベルト部材の一部を接触させることにより、不良ノズルに付着した異物や液体を掻き取ることができ、当該異物や液体を物理的に除去することができる。
【0010】
また、不良ノズルから膨出した液体にベルト部材の一部を接触させる態様は、不良ノズルに直接ベルト部材の一部を接触させるものではなく、例えば不良ノズルから膨出した液体に接触して当該液体をベルト部材によって吸収することで、液体が排出される流れを不良ノズルに形成することができる。当該流れにより、不良ノズル内の異物が押し出され、当該不良ノズルの詰まりを解消することができる。
【0011】
また、不良ノズルの近傍の噴射面にベルト部材の一部を接触させる態様では、不良ノズルの近傍の噴射面に異物が付着している場合に、当該異物をベルト部材の一部で払拭して除去することができる。
【0012】
上記のクリーニング装置は、前記ベルト部材を移動させるベルト駆動部を備え、前記制御部は、前記押圧部により前記ベルト部材の一部を前記噴射面側に押圧した状態で前記ベルト部材が移動するように前記ベルト駆動部を制御することが好ましい。
本発明によれば、押圧部によりベルト部材の一部を噴射面側に押圧した状態でベルト部材が移動するようにベルト駆動部を制御することができるため、ベルト部材のうち未使用の清潔な部分に不良ノズルの液体を付着させることができる。
【0013】
上記のクリーニング装置は、前記押圧部のうち前記ベルト部材に接触する部分は、回転可能に形成されていることが好ましい。
本発明によれば、押圧部のうちベルト部材に接触する部分が回転可能に形成されているため、押圧部とベルト部材との間に発生する摩擦を低減させることができる。これにより、押圧部とベルト部材とが接触している状態においてベルト部材をスムーズに移動させることができる。
【0014】
上記のクリーニング装置は、前記制御部は、前記噴射面から離間し、かつ前記噴射面と対向するように前記ベルト部材を配置させるように前記ベルト駆動部を制御することが好ましい。
本発明によれば、噴射面から離間し、かつ当該噴射面対向するようにベルト部材を配置させることができるので、液体噴射ヘッドの複数のノズルから液体が排出される場合において、排出された液体をベルト部材によって受けさせることができる。
【0015】
上記のクリーニング装置は、前記押圧部は、前記ベルト部材のうち複数個所を押圧可能に形成されており、前記制御部は、前記不良ノズルが複数検出された場合に、複数の前記不良ノズルの液体が前記ベルト部材に付着するように前記押圧部を制御することが好ましい。
本発明によれば、押圧部がベルト部材のうち複数個所を押圧可能に形成されている場合において、不良ノズルが複数検出された場合に複数の不良ノズルについて液体をベルト部材に付着させることができるため、より効率的にクリーニング動作を行うことができる。
【0016】
上記のクリーニング装置は、前記押圧部は、複数の前記ノズルに対応する位置に配置された複数の押圧部材を有し、複数の前記押圧部材は、個別に前記ベルト部材を押圧可能に形成されていることが好ましい。
本発明によれば、押圧部が複数のノズルに対応する位置に配置された複数の押圧部材を有する場合において、複数の押圧部材を個別にベルト部材に押圧させることができるので、より効率的にクリーニング動作を行うことができる。
【0017】
上記のクリーニング装置は、前記押圧部は、複数の前記ノズルに沿って移動可能に設けられ前記ベルト部材を押圧する移動部材を有し、前記噴射面に沿って前記移動部材を移動させる移動部材駆動部を更に備えることが好ましい。
本発明によれば、押圧部に設けられた移動部材を噴射面に沿って移動させることができるため、当該移動部材を複数のノズルのうち例えば不良ノズルに対応する位置に移動させることができる。これにより、効率的にクリーニング動作を行うことができる。
【0018】
本発明に係るクリーニング方法は、液体噴射ヘッドの噴射面に設けられ液体を噴射する複数のノズルによる前記液体の噴射状態を前記ノズル毎に検出する検出ステップと、可撓性を有し前記液体を保持可能なベルト部材を前記噴射面に対向して配置させる対向ステップと、前記ベルト部材の一部を押圧して、複数の前記ノズルのうち前記検出部の検出結果が不良であった不良ノズルの液体を前記ベルト部材に付着させる押圧ステップとを含む。
【0019】
本発明によれば、複数のノズルのうち検出部の検出結果が不良であった不良ノズルの液体をベルト部材に付着させることにより、不良ノズルに対して選択的にクリーニング動作を行うことができる。これにより、液体の消費量を低減させることができる。
【0020】
上記のクリーニング方法は、前記ベルト部材が前記噴射面に対向して配置された状態で複数の前記ノズルから前記ベルト部材へ向けて前記液体を排出させる排出ステップを更に含む。
本発明によれば、ベルト部材が噴射面に対向して配置された状態で複数のノズルからベルト部材へ向けて液体を排出させることとしたので、排出された液体をベルト部材に保持させることができる。これにより、ベルト部材を用いて複数のノズルのフラッシング動作を行うことができる。
【0021】
本発明に係る液体噴射装置は、液体を噴射する複数のノズルが形成された噴射面を有する液体噴射ヘッドと、前記噴射面に接触して前記液体噴射ヘッドのクリーニングを行うクリーニング装置とを備え、前記クリーニング装置として、上記のクリーニング装置が用いられている。
【0022】
本発明によれば、クリーニング動作に要する液体の消費量を低減させることができるため、ランニングコストを低減させることが可能な液体噴射装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る印刷装置の概略構成を示す図。
【図2】ヘッドの構成を示す平面図。
【図3】クリーニング装置の構成を示す図。
【図4】クリーニング装置の一部の構成を示す図。
【図5】検出部の構成を示す模式図。
【図6】検出部による検出動作の一例を示す図。
【図7】検出部による検出結果の一例を示すグラフ。
【図8】印刷装置の制御系の構成を示すブロック図。
【図9】クリーニング動作の一例を示す図。
【図10】クリーニング動作の一例を示す図。
【図11】クリーニング動作の一例を示す図。
【図12】クリーニング動作の他の例を示す図。
【図13】クリーニング動作の他の例を示す図。
【図14】クリーニング動作の他の例を示す図。
【図15】クリーニング動作の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る印刷装置PRT(液体噴射装置)の概略構成を示す図である。本実施形態では、印刷装置PRTとしてインクジェット型の印刷装置を例に挙げて説明する。
【0025】
図1に示す印刷装置PRTは、紙、プラスチックシートなどのシート状の媒体Mを搬送しつつ印刷処理を行う装置である。印刷装置PRTは、筐体PBと、媒体Mにインクを噴射するインクジェット機構IJと、当該インクジェット機構IJにインクを供給するインク供給機構ISと、媒体Mを搬送する搬送機構CVと、インクジェット機構IJの保全動作を行うメンテナンス機構MNと、これら各機構を制御する制御装置CONTとを備えている。
【0026】
以下、XYZ直交座標系を設定し、当該XYZ直交座標系を適宜参照しつつ各構成要素の位置関係を説明する。本実施形態では、媒体Mの搬送方向をX方向とし、当該媒体Mの搬送面においてX方向に直交する方向をY方向とし、X軸及びY軸を含む平面に垂直な方向をZ方向と表記する。また、X軸周りの回転方向をθX方向、Y軸周りの回転方向をθY方向、Z軸周りの回転方向をθZ方向とする。
【0027】
筐体PBは、Y方向を長手とするように形成されている。筐体PBには、上記のインクジェット機構IJ、インク供給機構IS、搬送機構CV、メンテナンス機構MN及び制御装置CONTの各部が取り付けられている。筐体PBには、プラテン13が設けられている。プラテン13は、媒体Mを支持する支持部材である。プラテン13は、筐体PBのうちX方向の中央部に配置されている。プラテン13は、+Z方向に向けられた平坦面13aを有している。当該平坦面13aは、媒体Mを支持する支持面として用いられる。
【0028】
搬送機構CVは、搬送ローラーや当該搬送ローラーを駆動するモーターなどを有している。搬送機構CVは、筐体PBの−X側から当該筐体PBの内部に媒体Mを搬送し、当該筐体PBの+X側から当該筐体PBの外部に排出する。搬送機構CVは、筐体PBの内部において、媒体Mがプラテン13上を通過するように当該媒体Mを搬送する。搬送機構CVは、制御装置CONTによって搬送のタイミングや搬送量などが制御される。
【0029】
インクジェット機構IJは、インクを噴射するヘッドHと、当該ヘッドHを保持して移動させるヘッド移動機構ACとを有している。ヘッドHは、プラテン13上に送り出された媒体Mに向けてインクを噴射する。ヘッドHは、インクを噴射する噴射面Haを有している。噴射面Haは、Z方向に向けられており、プラテン13の支持面13aに対向するように配置されている。噴射面Haは、例えばステンレス鋼等の金属板材で形成されている。
【0030】
図2は、ヘッドHを−Z側から見たときの構成を示す図である。
図2に示すように、噴射面Haには、複数のノズルNZが形成されている。噴射面Haには、複数のノズルNZによって媒体Mの搬送方向(X方向)に平行な複数のノズル列Lが形成されている。本実施形態では、ノズル列Lが4列(L1〜L4)形成されている。
【0031】
図1に戻って、ヘッド移動機構ACは、キャリッジCAを有している。ヘッドHは、当該キャリッジCAに固定されている。キャリッジCAは、筐体PBの長手方向(Y方向)に架けられたガイド軸8に当接されている。ヘッドH及びキャリッジCAは、プラテン13の+Z方向に配置されている。
【0032】
ヘッド移動機構ACは、キャリッジCAの他、パルスモーター9と、当該パルスモーター9によって回転駆動される駆動プーリー10と、駆動プーリー10とはプリンタ本体5の幅方向の反対側に設けられた遊転プーリー11と、駆動プーリー10と遊転プーリー11との間に掛け渡されてキャリッジCAに接続されたタイミングベルト12とを有している。
【0033】
キャリッジCAは、当該タイミングベルト12に接続されている。キャリッジCAは、タイミングベルト12の回転に伴ってY方向に移動可能に設けられている。Y方向へ移動する際、キャリッジCAは、ガイド軸8によって案内される。
【0034】
インク供給機構ISは、ヘッドHにインクを供給する。インク供給機構ISには、複数のインクカートリッジCTRが収容されている。本実施形態の印刷装置PRTは、インクカートリッジCTRがヘッドHとは異なる位置に収容される構成(オフキャリッジ型)である。インク供給機構ISは、ヘッドHとインクカートリッジCTRとを接続する供給チューブTBを有している。インク供給機構ISは、当該供給チューブTBを介してインクカートリッジCTR内に貯留されるインクをヘッドHに供給する不図示のポンプ機構を有している。
【0035】
メンテナンス機構MNは、ヘッドHのホームポジションに配置されている。このホームポジションは、媒体Mに対して印刷が行われる領域から外れた領域に設定されている。本実施形態では、プラテン13の+Y側にホームポジションが設定されている。ホームポジションは、印刷装置PRTの電源がオフである時や、長時間に亘って記録が行われない時などに、ヘッドHが待機する場所である。
【0036】
メンテナンス機構MNは、噴射面Haを覆うキャッピング機構CPを有している。キャッピング機構CPは、トレイ状に形成されたキャップ部材50を有している。また、メンテナンス機構MNは、ヘッドHのクリーニング動作を行うクリーニング装置CLを有している。この他、メンテナンス機構MNは、当該噴射面Haを払拭するワイピング機構(不図示)などを有している。
【0037】
図3は、クリーニング装置CLの一部の構成を示す側面図である。
図1及び図3に示すように、クリーニング装置CLは、ベルト部材31、ベルト駆動部32、押圧部33及び検出部34を有している。クリーニング装置CLは、キャッピング機構CPに並んで配置されている。
【0038】
ベルト部材31は、可撓性を有し、インクを吸収可能な材料によって形成されている。このような材料としては、例えば、ポリエステルや、ポリエステルとナイロンとの混合物などが挙げられる。より具体的には、信濃化工製のESM−3506や、KBセーレン製のクラウゼンW023、東レ製の73001TR(MKタイプ)、57120TF(BSタイプ)などが挙げられる。ベルト部材31は、不図示のベルト部材供給機構から供給され、搬送ローラー32a及び32bに掛けられた状態で配置されている。当該ベルト部材31は、不図示のベルト部材回収機構によって回収される。
【0039】
搬送ローラー32a及び32bは、例えば円筒形あるいは円柱形に形成されており、周方向に回転可能に設けられている。搬送ローラー32a及び32bは、回転軸がY方向に沿うように配置されている。具体的には、搬送ローラー32a及び32bは、回転軸がY方向に対して例えば5°以下の傾きを有する状態で配置されている。なお、搬送ローラー32a及び32bの配置例としては、当該搬送ローラー32a及び32bのうち少なくとも一方がY軸に平行である場合も含まれる。
【0040】
搬送ローラー32a及び32bは、Z方向上の同一の位置に配置されている。したがって、ベルト部材31は、搬送ローラー32a及び32bに掛けられた状態においては、XY平面に平行に配置されることになる。搬送ローラー32a及び32bは、ノズル列LのX方向両端部同士の間隔よりも大きい間隔を空けて配置されている。
【0041】
ベルト駆動部32は、上記の搬送ローラー32a及び32bと、当該搬送ローラー32a及び32bを回転させる回転駆動部32cとを有している。搬送ローラー32a及び32bのうち、+X側に配置された搬送ローラー32bが主動ローラーであり、−X側に配置された搬送ローラー32aが従動ローラーである。回転駆動部32cは、搬送ローラー32bを回転させるように形成されている。勿論、回転駆動部32cが搬送ローラー32aを回転させる構成であっても構わない。回転駆動部32cは、搬送ローラー32bを回転させることにより、ベルト部材31を+X方向に移動させることができる。回転駆動部32cの回転量、回転のタイミングなどについては、制御装置CONTによって制御される。
【0042】
押圧部33は、移動部材33a、回転部33b及び移動部材駆動部33cを有している。移動部材33aは、ベルト部材31の対向部31aの−Z側に配置されている。なお、対向部31aは、ベルト部材31のうち搬送ローラー32aと搬送ローラー32bとで挟まれた部分であって、ヘッドHに対向させる部分である。移動部材33aは、X方向、Y方向及びZ方向に移動可能に設けられている。
【0043】
回転部33bは、移動部材33aの+Z側の端部に配置されている。回転部33bは、移動部材33aによって回転可能に支持されている。図4は、回転部33bの構成を拡大して示す図である。以下の説明では、回転部33bの構成をヘッドHの一部の構成と比較して説明するため、図4において当該ヘッドHの一部の構成が示されている。
【0044】
図4に示すように、回転部33bは、ベルト部材31の対向部31aに接触する部分である。回転部33bは、例えば径R1を有する円盤状に形成されている。回転部33bは、当該回転部33bの径R1がノズル列LにおけるノズルNZのピッチP1よりも小さく形成されている。
【0045】
図3に示すように、移動部材駆動部33cは、移動部材33aを移動させる例えばエアシリンダ機構などの直線駆動機構を有している。移動部材駆動部33cにより、移動部材33aと回転部33bとがベルト部材31の−Z側を一体的に移動する。移動部材駆動部33cによる駆動量や駆動のタイミングなどについては、制御装置CONTによって制御される。
【0046】
移動部材33aが+Z側に移動すると、回転部33bがベルト部材31の対向部31aをヘッドH側に押圧することになる。回転部33bによって押圧されたベルト部材31の対向部31aは、X方向の両端が搬送ローラー32a及び32bに掛けられた状態で+Z側に変形し、ヘッドHの噴射面Haに接触する位置まで移動する(図3の一点鎖線部参照)。
【0047】
このように、移動部材駆動部33cによって移動部材33a及び回転部33bのXY方向上の配置を調整し、移動部材33a及び回転部33bを+Z側へ移動させることにより、噴射面HaのうちXY方向上の所望の位置にベルト部材31の一部を接触させることができる。図4に示すように、本実施形態では、回転部33bの径R1がノズル列LにおけるノズルNZのピッチP1よりも小さいため、ベルト部材31の一部を各ノズルNZに対して個別に接触させることができる。
【0048】
検出部34は、複数のノズルNZによるインクの噴射状態をノズルNZ毎に検出する。図5は、検出部34の構成を示す模式図である。図5に示すように、検出部34は、インク滴センサ80を備えている。インク滴センサ80は、ヘッドHのノズルから吐出されるインク滴を帯電させ、この帯電したインク滴Dが飛翔する際の静電誘導に基づく電圧変化を検出信号として出力することで、ノズルのインク吐出状態を把握するセンサである。
【0049】
インク滴センサ80は、ヘッドHの噴射面Haと所定ギャップを介して対向するように配置されている。インク滴センサ80は、インク滴検出装置76及び処理装置82を備える。
【0050】
インク滴検出装置76は、キャッピング機構CPに設けられた検出電極79を有している。キャップ部材50の内部にはインク吸収体77が設けられている。インク吸収体77は、インクDを保持可能(吸収可能)なスポンジ状部材、あるいは多孔部材等で形成されている。検出電極79はインク吸収体77の+Z側の面上に設けられている。なお、キャップ部材50の底部には、不図示の吸引ポンプ17が接続されている。インク吸収体77によって吸収されたインク滴Dは、吸引ポンプ17によって吸引され外部に排出される。
【0051】
検出電極79は、例えばステンレス鋼等の金属のメッシュ部材で形成されている。検出電極79の+Z側の面には、検出面78が形成されている。検出面78は、キャップ部材50の+Z側端面よりも−Z側の位置に配置されている。
【0052】
インク滴検出装置76は、当該検出面78とヘッドHの噴射面Haとの間に電圧を印加する電圧印加器75と、検出面78の電圧を検出する電圧検出器81とを有している。電圧印加器75は、検出電極79が正極となり、噴射面Haが負極となるように、直流電源と抵抗素子とを介して、検出電極79と噴射面Haとを電気的に接続する。
【0053】
本実施形態では、噴射面Haがステンレス鋼等の板材で形成されており、検出電極79がステンレス鋼等の金属で形成されているため、噴射面Ha及び検出電極79はそれぞれは導電性を有する構成である。このため、電圧印加器75は、噴射面Haと検出面78との間に電圧を印加可能となっている。
【0054】
電圧検出器81は、検出電極79の電圧信号を積分して出力する積分回路と、この積分回路から出力された信号を反転増幅して出力する反転増幅回路と、及びこの反転増幅回路から出力された信号をA/D変換して出力するA/D変換回路とを含む。
【0055】
ノズルNZから噴射され、検出面78上に着弾したインク滴Dは、格子状の検出電極79の隙間を通過して下側に配置されたインク吸収体77に保持(吸収)される。検出電極79の構成としては、ノズルNZから噴射されたインク滴Dをインク吸収体77側に通過させることができる構成であれば、メッシュ部材には限られず、他の構成であってもよい。
【0056】
インク滴検出装置76は、噴射面Haと検出面78との間に電界を与えて、ノズルNZから検出面78にインクが移動するときの静電誘導に基づく電圧値の時間的変化を検出波形として処理装置82に出力する。処理装置82は、インク滴検出装置76の出力を演算処理可能であり、インク滴検出装置76から出力された検出波形に基づいて、インクの重量に関する情報を取得可能となっている。そして、その取得情報を制御装置CONTへと出力する。
【0057】
次に、インク滴センサ80の原理、すなわち静電誘導によって誘導電圧が生じる原理について図面を参照しながら説明する。図6(a)及び図6(b)は、静電誘導によって誘導電圧が生じる原理を説明する模式図である。図6(a)はインク滴Dが吐出された直後の状態を示し、図6(b)はインク滴Dがキャップ部材50の検査領域74に着弾した状態を示している。また、図7は、インク滴センサ80から出力される検出信号(インク1滴分)の波形の一例を示す図である。
【0058】
まず、噴射面Haと検出電極79との間に電圧が印加した状態で、任意の一つノズルNZからインク滴Dを吐出させる。この際、噴射面Haは負極となっているため、図6(a)に示すように、噴射面Haの一部の負電荷がインク滴Dに移動し、吐出されたインク滴Dは負に帯電する。このインク滴Dがキャップ部材50の検出面78に対して近づくに連れ、静電誘導によって検出電極79の表面では正電荷が増加する。これにより、噴射面Haと検出電極79との間の電圧は、静電誘導によって生じる誘導電圧により、インク滴Dを吐出しない状態における当初の電圧値よりも高くなる。
【0059】
その後、図6(b)に示すように、インク滴Dが検出電極79に着弾すると、インク滴Dの負電荷により検出電極79の正電荷が中和される。このため、噴射面Haと検出電極79との間の電圧は当初の電圧値を下回る。その後、噴射面Haと検出電極79との間の電圧は当初の電圧値に戻る。
【0060】
したがって、図7に示すように、インク滴センサ80から出力される検出波形は、一旦電圧が上昇した後に、当初の電圧値を下回るまで下降し、その後当初の電圧値に戻る波形となる。このようにして、インク滴センサ80により各ノズルNZからインク滴Dを吐出した際の電圧変化が検出される。
【0061】
ところが、例えばインク滴Dが増粘している場合、噴射量が正常時に比べて減少する。このため、図7において、実線で示すように、インク滴センサ80から出力される検出信号(検出波形Z)の振幅Aは、正常時の検出信号(理想波形Z0:図7の破線)の振幅A0に比べて小さくなる(振幅差ΔA)。また、吐出パルスDPを印加してからインク滴Dが噴射面Haから離間するまでの時間も、正常時に比べて遅くなる(電圧上昇するタイミングが時間差ΔTだけずれる。)。
【0062】
したがって、インク滴センサ80から出力される検出波形Zの振幅Aや電圧上昇のタイミングを理想波形Z0のそれらと比較(ΔA,ΔTを検出)することで、ヘッドHの各ノズルNZ内におけるインクDの増粘状態を求めることができる。さらにインクが増粘した状態では、ノズルNZからインクを良好に吐出することができないため、不良ノズルとなる。その状態ではインクが吐出されないので波形は検出されない。すなわち、インク滴センサ80は上述したように各ノズルNZにおけるインクの噴射状況(不良ノズルであるか否かを判定)を検出可能となっている。
【0063】
図8は印刷装置PRTの電気的な構成を示すブロック図である。
制御装置CONTには、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を入力する入力装置IP、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を記憶した記憶装置MRなどが接続されており、上述した搬送機構CVや、ヘッド移動機構AC、メンテナンス機構MN等が接続されている。制御装置CONTは、メンテナンス機構MNのうちキャッピング機構CPや、ベルト駆動部32、押圧部33及び検出部34(インク滴センサ80)を含めたクリーニング装置CLなどを制御可能である。
【0064】
印刷装置PRTは、それぞれのノズルNZについて設けられる圧電振動子38に入力する駆動信号を発生する駆動信号発生器62を備えている。この駆動信号発生器62は、制御装置CONTに接続されている。駆動信号発生器62には、ヘッドHの圧電振動子38に入力する吐出パルスの電圧値の変化量を示すデータ、及び吐出パルスの電圧を変化させるタイミングを規定するタイミング信号が入力される。駆動信号発生器62は、各圧電振動子38に対して、個別に駆動信号を供給可能に設けられている。
【0065】
次に、上記のように構成された印刷装置PRTの動作を説明する。
ヘッドHによる印刷動作を行う場合、制御装置CONTは、搬送機構CVによって媒体MをヘッドHの−Z側に配置させる。媒体Mを配置させた後、制御装置CONTは、ヘッドHを移動させつつ、印刷する画像の画像データに基づいてノズルNZに係る駆動信号発生器62から圧電振動子38に駆動信号を入力する。圧電振動子38に駆動信号が入力されると、圧電振動子38が伸縮し、ノズルNZからインクが噴射される。ノズルNZから噴射されたインクによって、媒体Mに所望の画像が形成される。
【0066】
時間の経過に伴い、インクが増粘し、インクの吐出速度や吐出量が低下して吐出不良が生じる場合がある。そこで、制御装置CONTは、定期的にノズルNZのクリーニング動作を行わせる。
【0067】
制御装置CONTは、クリーニング動作として、まず、複数のノズルNZによるインクの噴射状態をノズルNZ毎に検出する検出ステップを行わせる。制御装置CONTは、図9に示すように、ヘッドHをキャッピング機構CPの+Z側に配置させ、各ノズルNZからインクを噴射させた後、検出部34によって増粘や抜けが認められる不良ノズルENを検出する。
【0068】
検出ステップの後、制御装置CONTは、ヘッドHの噴射面Haをベルト部材31の対向部31aに対向して配置させる対向ステップを行わせる。制御装置CONTは、図10に示すように、噴射面Haのうちノズル列Lの両端がベルト部材31の対向部31aに収まった状態で噴射面Haとベルト部材31の対向部31aとが対向するように、ヘッドHの位置を調整する。
【0069】
対向ステップの後、制御装置CONTは、ベルト部材31の対向部31aの一部を不良ノズルENへ向けて移動させる押圧ステップを行わせる。押圧ステップでは、制御装置CONTは、不良ノズルENのインクDがベルト部材31に付着するように当該対向部31aの一部を不良ノズルENへ向けて移動させる。
【0070】
具体的な態様としては、不良ノズルENに対向部31aの一部を接触させる態様が挙げられる。この場合、例えば不良ノズルENの内部に対向部31aの一部を入り込ませる態様などが挙げられる。以下の説明では、不良ノズルENの内部に対向部31aの一部を入り込ませる態様を例に挙げることとする。
【0071】
この場合、制御装置CONTは、まず、移動部材駆動部33cによって移動部材33aを不良ノズルENのX方向上の位置及びY方向上の位置に等しい位置に移動させる。この状態で、制御装置CONTは、図11に示すように、移動部材駆動部33cによって移動部材33aを+Z方向に移動させる。当該移動により、移動部材33aの+Z側の先端に配置された回転部33bが対向部31aを押圧し、対向部31aの一部が不良ノズルENに接触する。
【0072】
制御装置CONTは、移動部材33aを更に+Z側に移動させることにより、対向部31aの一部が不良ノズルENに入り込んだ状態となる。制御装置CONTは、対向部31aの一部が不良ノズルENに保持されているインクに接触する位置まで当該対向部31aを不良ノズルENに入り込ませる。
【0073】
この状態において、不良ノズルEN内に保持されていたインクは、対向部31aに吸収される。不良ノズルEN内の増粘したインクはこのように対向部31aに吸収される。また、不良ノズルEN内に異物が存在する場合には、インクの流れに沿って排出され、ノズル外部へと除去されことになる。このようにして、不良ノズルENの増粘や詰まりなどが解消されるため、当該不良ノズルENは噴射状態において問題の無い状態に復帰することになる。なお、複数のノズル列Lに亘って不良ノズルENが検出された場合には、例えばノズル列L毎にベルト部材31の対向部31aの接触動作を行わせても良い。
【0074】
このように、本実施形態では、制御装置CONTが複数のノズルNZの全体に対してクリーニング動作を行わせるのではなく、不良ノズルENに対して選択的にクリーニング動作を行わせるため、噴射状態に問題の無いノズルに対してまでクリーニング動作が行われてしまうのを回避することができる。
【0075】
制御装置CONTは、ベルト部材31を不良ノズルENに接触させた後、移動部材駆動部33cによって移動部材33aを−Z側に移動させてベルト部材31の接触状態を解除させる。ベルト部材31が不良ノズルENと離間した後、搬送ローラー32a及び32bによってベルト部材31の当該接触箇所を+X側へ移動させる。この動作により、ベルト部材31のうち使用済みの部分を噴射面Haの対向位置から退避させ、未使用の部分が新たに噴射面Haに対向して配置されることになる。+X側に退避したベルト部材31の使用済みの部分は、例えば不図示の切断機構などによって切断されて回収される。
【0076】
以上の本実施形態によれば、複数のノズルNZのうち検出部34の検出結果が不良であった不良ノズルENにベルト部材31の一部を接触させることにより、不良ノズルENに対して選択的にクリーニング動作を行うことができる。これにより、クリーニング動作におけるインクの消費量を低減させることができる。また、クリーニング動作の必要ない正常なノズルNZに対してはクリーニング動作が行われないため、このような正常なノズルNZからインクを除去してしまう、いわゆる誘発抜けを回避することができる。
【0077】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態では、押圧部33によってベルト部材31の対向部31aの一部を不良ノズルENに接触させた状態とした後、接触状態を解消してからベルト部材31を+X側に搬送する態様を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。
【0078】
例えば図12に示すように、制御装置CONTは、対向部31aの一部を不良ノズルENに接触させた状態で搬送ローラー32bを回転させても良い。搬送ローラー32bの回転により、ベルト部材31が搬送されて+X方向に移動する。すなわち、ベルト部材31は、不良ノズルENに接触した状態のまま移動する。このため、不良ノズルENは、ベルト部材31によって払拭されることになる。押圧部33側においては、回転部33bがベルト部材31に接触しているため、ベルト部材31のX方向への移動に従って回転部33bが回転することになる。このため、押圧部33とベルト部材31との間に摩擦力が発生するのを抑制することができる。
【0079】
また、上記実施形態では、押圧部33がベルト部材31の対向部31aの1箇所を押圧する構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、押圧部33がベルト部材31の対向部31aの複数個所を押圧する構成であっても構わない。
【0080】
例えば図13に示すように、押圧部33がノズル列L1〜L4に対してそれぞれ第一押圧部331、第二押圧部332、第三押圧部333及び第四押圧部334を有する構成であっても構わない。この場合、第一押圧部331〜第四押圧部334は、それぞれ移動部材33a及び回転部33bを有する構成である。移動部材駆動部33cは、第一押圧部331〜第四押圧部334の各移動部材33aを個別に駆動するように設けられている。このため、第一押圧部331〜第四押圧部334は独立して移動可能である。
【0081】
この場合、制御装置CONTは、複数のノズル列L1〜L4に発生した不良ノズルENについて、ノズル列L1〜L4毎にクリーニング動作を行わせることができる。このため、効率的なクリーニング動作が可能となる。なお、第一押圧部331〜第四押圧部334のいずれかが異なるノズル列Lに亘って移動してクリーニング動作を行わせる構成であっても構わない。
【0082】
また、上記実施形態のクリーニング動作に加えて、制御装置CONTは、例えば図14に示すように、ヘッドHの噴射面Haを対向部31aに対向させた状態で、各ノズルNZからインクDを排出させる排出ステップを行わせても良い。この場合、排出されたインクDは、ベルト部材31の対向部31aにおいて吸収される。
【0083】
この場合、図14に示すように、搬送ローラー32a及び32bをZ方向に移動可能な構成としても構わない。搬送ローラー32a及び32bをZ方向に移動させることにより、当該搬送ローラー32aと搬送ローラー32bとの間に掛けられるベルト部材31の対向部31aと、ヘッドHの噴射面Haとの距離を調整することができる。例えば、対向部31aと噴射面Haとの距離を、噴射面Haとプラテン13の平坦面13aとの距離にほぼ等しく設定することができる。このような構成により、インクミストの発生を抑制しつつ、フラッシング動作を行うことができる。
【0084】
排出ステップは、インクの消費を伴うものの、例えば多数の不良ノズルENが検出された場合において、1つ1つのノズルに対してベルト部材31の一部を接触するよりも短時間で噴射状態を復帰させることができる。したがって、制御装置CONTは、検出された不良ノズルENの個数が予め設定された閾値を超えない場合にはベルト部材31の一部を接触させる動作を行わせ、検出された不良ノズルENの個数が予め設定された閾値を超える場合にはベルト部材31に対してフラッシング動作を行わせることができる。
【0085】
また、上記実施形態においては、ベルト部材31の供給及び回収について不図示のベルト部材供給機構及びベルト部材回収機構が設けられた構成を例に挙げて説明したが、当該ベルト部材供給機構及びベルト部材回収機構として、例えば図15に示すように、供給ローラー132a及び回収ローラー132bを有する構成としても構わない。
【0086】
図15に示すように、ベルト部材31は、供給ローラー132aと回収ローラー132bとにそれぞれロール状に巻かれた状態となっている。供給ローラー132aは、図中時計回りに回転することにより、ベルト部材31を送り出す。回収ローラー132bは、図中時計回りに回転することにより、ベルト部材31を巻き取って回収する。この構成により、使用済みベルト部材31の交換や廃棄、未使用のベルト部材31の装着など、ハンドリング性に優れた構成となる。
【0087】
また、上記実施形態では、回転部33bの構成について、ローラー状の構成としたが、これに限られることは無い。他の構成として、回転部33bが球状である構成でも構わない。
【0088】
また、上記実施形態では、検出部34の構成として、複数のノズルNZからインクDを吐出させることで抜けや増粘を検出する構成であったが、これに限られることは無く、例えばレーザー光などを用いてノズルNZを検出する構成であっても構わない。
【0089】
また、上記実施形態では、ベルト部材31の対向部31aの一部を不良ノズルENに対してのみ接触させる態様を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば不良ノズルENだけでなく、その他の正常なノズルNZにもベルト部材31の対向部31aの一部が接触する態様であっても良い。
【0090】
また、上記実施形態では、ベルト部材31が一層で形成された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えばベルト部材31が複数層で形成された構成であっても構わない。この場合、ベルト部材31のうち噴射面Haに対向させる層についてはインクを吸収可能な材料で形成し、噴射面Haに対して裏面側の層についてはインクを浸透させないフィルムなどで形成する構成であっても良い。この場合、ベルト部材31によって吸収されたインクが裏面側から漏れるのを防ぐことができる。
【0091】
また、上記実施形態においては、不良ノズルENのインクDをベルト部材31の対向部31aの一部に付着させる態様として、不良ノズルENに対向部31aの一部を接触させる態様、より具体的には、不良ノズルENの内部に対向部31aの一部を入り込ませる態様を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、例えば、不良ノズルENに対向部31aの一部を接触させる態様としては、不良ノズルENの開口部を対向部31aの一部で塞ぐ態様であっても良い。
【0092】
また、不良ノズルENのインクDをベルト部材31の対向部31aの一部に付着させる他の態様として、例えば不良ノズルENから膨出したインクにベルト部材31の対向部31aの一部を接触させる態様であっても良い。この場合、不良ノズルENから膨出したインクに接触して当該インクをベルト部材31によって吸収することで、インクが排出される流れを不良ノズルEN内部に形成することができる。当該流れにより、不良ノズルEN内の異物が押し出され、当該不良ノズルENの詰まりを解消することができる。
【0093】
また、不良ノズルENのインクDをベルト部材31の対向部31aの一部に付着させる他の態様として、噴射面Haのうち不良ノズルENの近傍にベルト部材31の一部を接触させる態様であっても良い。この場合、噴射面Haのうち不良ノズルENの近傍に異物が付着している場合など、当該異物をベルト部材31の一部で払拭して除去することができる。
【0094】
また、上記実施形態では、ヘッドHが媒体M上を操作しつつ印刷を行うシリアル方式の印刷装置PRTの構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、ヘッドHの位置を固定させつつ印刷を行うライン方式の印刷装置であっても、本発明の適用は可能である。
【0095】
また、上記実施形態においては、搬送ローラー32a及び32bがZ方向上の同一の位置に配置されている構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、搬送ローラー32aと搬送ローラー32bとがZ方向にずれた位置に配置された構成としても良い。
【0096】
上記実施形態では、記録方式としてインクジェット方式を採用した記録装置について記載したが、電子写真方式や熱転写方式など、任意の記録方式の記録装置に変更することもできる。また、記録装置は印刷装置に限らず、FAX装置、コピー装置、あるいはこれら複数機能を備えた複合機等であってもよい。さらに、記録装置として、インク以外の他の液体の微小量の液滴を噴射したり吐出したりする液体噴射ヘッド等を備える液体噴射装置を採用してもよい。
【0097】
なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。
【0098】
ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置等であってもよい。
【符号の説明】
【0099】
PRT…印刷装置 M…媒体 MN…メンテナンス機構 CONT…制御装置 H…ヘッド Ha…噴射面 L…ノズル列 NZ…ノズル EN…不良ノズル CP…キャッピング機構 CL…クリーニング装置 31…ベルト部材 31a…対向部 32…ベルト駆動部 32a…搬送ローラー 32c…回転駆動部 32b…搬送ローラー 33…押圧部 33a…移動部材 33b…回転部 33c…移動部材駆動部 34…検出部 80…インク滴センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射ヘッドのうち液体を噴射する複数のノズルが形成された噴射面に対向して配置され、前記液体を保持可能なベルト部材と、
前記ベルト部材の一部を前記噴射面側に押圧する押圧部と、
複数の前記ノズルによる前記液体の噴射状態を検出可能な検出部と、
複数の前記ノズルのうち前記検出部の検出結果が不良であった不良ノズルの液体が前記ベルト部材に付着するように前記押圧部を制御する制御部と
を備えるクリーニング装置。
【請求項2】
前記ベルト部材を移動させるベルト駆動部を備え、
前記制御部は、前記押圧部により前記ベルト部材の一部を前記噴射面側に押圧した状態で前記ベルト部材が移動するように前記ベルト駆動部を制御する
請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項3】
前記押圧部のうち前記ベルト部材に接触する部分は、回転可能に形成されている
請求項1又は請求項2に記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記噴射面から離間し、かつ前記噴射面と対向するように前記ベルト部材を配置させるように前記ベルト駆動部を制御する
請求項2又は請求項3に記載のクリーニング装置。
【請求項5】
前記押圧部は、前記ベルト部材のうち複数個所を押圧可能に形成されており、
前記制御部は、前記不良ノズルが複数検出された場合に、複数の前記不良ノズルの液体が前記ベルト部材に付着するように前記押圧部を制御する
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載のクリーニング装置。
【請求項6】
前記押圧部は、複数の前記ノズルに対応する位置に配置された複数の押圧部材を有し、
複数の前記押圧部材は、個別に前記ベルト部材を押圧可能に形成されている
請求項5に記載のクリーニング装置。
【請求項7】
前記押圧部は、複数の前記ノズルに沿って移動可能に設けられ前記ベルト部材を押圧する移動部材を有し、
前記噴射面に沿って前記移動部材を移動させる移動部材駆動部を更に備える
請求項5又は請求項6に記載のクリーニング装置。
【請求項8】
液体噴射ヘッドの噴射面に設けられ液体を噴射する複数のノズルによる前記液体の噴射状態を前記ノズル毎に検出する検出ステップと、
可撓性を有し前記液体を保持可能なベルト部材を前記噴射面に対向して配置させる対向ステップと、
前記ベルト部材の一部を押圧して、複数の前記ノズルのうち前記検出部の検出結果が不良であった不良ノズルの液体を前記ベルト部材に付着させる押圧ステップと
を含むクリーニング方法。
【請求項9】
前記ベルト部材が前記噴射面に対向して配置された状態で複数の前記ノズルから前記ベルト部材へ向けて前記液体を排出させる排出ステップを更に含む
請求項8に記載のクリーニング方法。
【請求項10】
液体を噴射する複数のノズルが形成された噴射面を有する液体噴射ヘッドと、
前記噴射面に接触して前記液体噴射ヘッドのクリーニングを行うクリーニング装置と
を備え、
前記クリーニング装置として、請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載のクリーニング装置が用いられている
液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−126090(P2012−126090A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281739(P2010−281739)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】