説明

クリーニング部材、クリーニング機能付搬送部材、および基板処理装置のクリーニング方法

【課題】クリーニング部位に汚染を生じることなく、微細な異物、好ましくはサブミクロンレベルの異物を簡便、確実、十分に除去できるクリーニング部材を提供すること。該クリーニング部材を有するクリーニング機能付搬送部材、および該クリーニング機能付搬送部材を用いた基板処理装置のクリーニング方法を提供すること。
【解決手段】本発明のクリーニング部材は、表面に柱状構造の凸部を複数備えたクリーニング層を有するクリーニング部材であって、該柱状構造の凸部のアスペクト比が5以上であり、該クリーニング層表面の柱状構造の凸部の密度が1.0×10個/cm以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な異物を除去するためのクリーニング部材、クリーニング機能付搬送部材、および該クリーニング機能付搬送部材を用いた基板処理装置のクリーニング方法に関する。より詳細には、例えば、半導体、フラットパネルディスプレイ、プリント基板、基板処理装置など、微細な異物を嫌う基板や装置から該異物を除去するためのクリーニング部材、該クリーニング部材を有するクリーニング機能付搬送部材、および該クリーニング機能付搬送部材を用いた基板処理装置のクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、フラットパネルディスプレイ、プリント基板などの製造装置や検査装置など、異物を嫌う各種の基板処理装置などでは、各搬送系と基板とを物理的に接触させながら搬送する。その際、基板や搬送系に異物が付着していると、後続の基板をつぎつぎと汚染するため、定期的に装置を停止し、洗浄処理する必要がある。その結果、基板処理装置の稼動率が低下するという問題や基板処理装置の洗浄処理のために多大な労力が必要となるという問題がある。
【0003】
このような問題を克服するため、板状部材を搬送することにより基板裏面に付着する異物を除去する方法(特許文献1参照)が提案されている。このような方法によれば、基板処理装置を停止させて洗浄処理を行う必要がないので、基板処理装置の稼動率が低下するという問題は解消される。しかし、この方法では、微細な異物を十分に除去することはできない。
【0004】
一方、粘着性物質を固着した基板をクリーニング部材として基板処理装置内に搬送することにより、当該処理装置内に付着した異物をクリーニング除去する方法(特許文献2参照)が提案されている。この方法は、特許文献1に記載の方法の利点に加えて異物の除去性にも優れるので、基板処理装置の稼動率が低下するという問題や基板処理装置の洗浄処理のために多大な労力が必要となるという問題はいずれも解消される。
【0005】
上記のように、粘着性物質を有するクリーニング部材にて異物をクリーニング除去する方法は、異物を有効に除去する方法としては優れているが、粘着性物質がクリーニング部位と強く接着しすぎて剥れないという問題が生じるおそれや、クリーニング部位に粘着剤残りを起こして逆に汚染させてしまうという問題が生じるおそれがある。また、糊残りを防止するために粘着力を低下させた場合、肝心の異物の除塵性に劣るという問題がある。
【0006】
また、異物の除去方法として、ウェスにアルコールをしみこませて拭く方法(アルコール拭き)では、異物の取り残しや異物除去にムラが生じてしまうなど、除塵性に劣るという問題があった。
【0007】
最近は、微細な異物を嫌う基板や装置で問題となる該異物のサイズがサブミクロン(1μm以下)レベルとなってきている。上記の方法では、確実にこれらサブミクロンサイズの異物を除去することが難しい。
【0008】
数十ミクロン程度の粒径を有する異物を除去するために、フォトレジストや切削研磨によって数十ミクロン角前後のドットパターンを表面に形成したクリーニングウエハが提案されている(特許文献3参照)。しかし、このクリーニングウエハにおいては、ドットパターンのスペース部分に異物が保持されることによって異物が除去されるため、数十ミクロン程度の粒径を有する異物は除去可能であるが、サブミクロンサイズの微細な異物を十分に除去することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−87458号公報
【特許文献2】特開平10−154686号公報
【特許文献3】特開2004−63669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、クリーニング部位に汚染を生じることなく、微細な異物、好ましくはサブミクロンレベルの異物を簡便、確実、十分に除去できるクリーニング部材を提供することにある。さらに、該クリーニング部材を有するクリーニング機能付搬送部材、および該クリーニング機能付搬送部材を用いた基板処理装置のクリーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、クリーニング部材に備えられたクリーニング層の表面に、特定の大きさのアスペクト比を有する柱状構造の凸部を複数設けることによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明のクリーニング部材は、表面に柱状構造の凸部を複数備えたクリーニング層を有するクリーニング部材であって、該柱状構造の凸部のアスペクト比が5以上であり、該クリーニング層表面の柱状構造の凸部の密度が1.0×10個/cm以上である。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記柱状構造の凸部の突出部分の長さが100nm以上である。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記クリーニング層の比表面積が2.0以上である。
【0015】
好ましい実施形態においては、上記クリーニング部材は、基板上の異物の除去に用いられる。
【0016】
好ましい実施形態においては、上記クリーニング部材は、基板処理装置内の異物の除去に用いられる。
【0017】
本発明の別の局面によれば、クリーニング機能付搬送部材が提供される。このクリーニング機能付搬送部材は、搬送部材と、該搬送部材の少なくとも片面に設けられた上記クリーニング部材とを有する。
【0018】
本発明の別の局面によれば、基板処理装置のクリーニング方法が提供される。この基板処理装置のクリーニング方法は、上記クリーニング機能付搬送部材を基板処理装置内に搬送することを含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、クリーニング部位に汚染を生じることなく、微細な異物、好ましくはサブミクロンレベルの異物を簡便、確実、十分に除去できるクリーニング部材を提供することが可能となる。さらに、該クリーニング部材を有するクリーニング機能付搬送部材、および該クリーニング機能付搬送部材を用いた基板処理装置のクリーニング方法を提供することが可能となる。
上記のような効果は、クリーニング部材に備えられたクリーニング層の表面に、特定の大きさのアスペクト比を有する柱状構造の凸部を複数設けることによって発現することが可能となる。このような効果は、クリーニング部材に備えられたクリーニング層が、クリーニング部位との間にファンデルワールス力を働かせることにより発現するものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好ましい実施形態により得られるクリーニング部材の概略断面図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態により得られるクリーニング機能付搬送部材の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
A.クリーニング部材
図1は、本発明の好ましい実施形態であるクリーニング部材の概略断面図である。このクリーニング部材100は、支持体10と、クリーニング層20とを有する。支持体10は、目的に応じて省略してもよい。すなわち、クリーニング部材は、クリーニング層単独で構成されてもよい。クリーニング層20は、その表面に、柱状構造の凸部30を複数備えている。本発明のクリーニング部材において、クリーニング層20が支持体10上に設けられている場合は、クリーニング層20を設ける面は支持体10の少なくとも片面に設ければ良い。すなわち、片面のみに設けても良いし、両面に設けても良い。また、全面に設けても良いし、端面(エッジ部)などの一部のみに設けても良い。
【0022】
上記凸部30は柱状構造を有している。本発明にいう柱状構造としては、厳密に柱状の構造のみならず略柱状の構造をも含む。例えば、円柱状構造、多角形柱状構造、コーン状構造、繊維状構造などが好ましく挙げられる。また、上記柱状構造の断面形状は、凸部全体にわたって均一であってもよいし不均一であっても良い。さらに、凸部の突出は、略直線に沿って向かっていても良いし、曲線に沿って向かっていても良い。
【0023】
上記柱状構造の凸部の突出方向とクリーニング層の表面との成す角度は、本発明の目的が達成できる範囲で、任意の適切な角度が採用され得る。例えば、クリーニング層の表面から上記柱状構造の凸部が略垂直に突出している形態でも良いし、クリーニング層の表面から上記柱状構造の凸部が傾斜して突出している形態でも良い。
【0024】
本発明においては、上記柱状構造の凸部のアスペクト比が5以上である。本発明において「アスペクト比」とは、柱状構造の凸部の径が最も太い部分の径の長さ(A)と凸部の突出部分の長さ(B)の比(ただし、(A)と(B)の単位は同じものとする)を表す。柱状構造の凸部が歪曲して形成している場合は、凸部の突出部分においてクリーニング層の表面から垂直方向に最も離れている部分までの長さを凸部の突出部分の長さとする。上記柱状構造の凸部のアスペクト比は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上である。上記柱状構造の凸部のアスペクト比の上限は、好ましくは1000以下であり、より好ましくは100以下であり、さらに好ましくは50以下である。上記柱状構造の凸部のアスペクト比が上記の範囲にあることにより、微細な異物、好ましくはサブミクロンレベルの異物を簡便、確実、十分に除去し得る。このような効果は、上記柱状構造の凸部のアスペクト比が上記の範囲にあることにより、クリーニング部材に備えられたクリーニング層とクリーニング部位との間にファンデルワールス力が働くためと考えられる。
【0025】
柱状構造の凸部の突出部分の長さは、好ましくは100nm以上であり、より好ましくは200nm以上、さらに好ましくは300nm以上である。柱状構造の凸部の突出部分の長さの上限は、好ましくは100000nm以下であり、より好ましくは10000nm以下であり、さらに好ましくは5000nm以下である。柱状構造の凸部の突出部分の長さが上記の範囲にあることにより、微細な異物、好ましくはサブミクロンレベルの異物を簡便、確実、十分に除去し得る。このような効果は、柱状構造の凸部の突出部分の長さが上記の範囲にあることにより、クリーニング部材に備えられたクリーニング層とクリーニング部位との間にファンデルワールス力が働くためと考えられる。
【0026】
柱状構造の凸部の突出部分の長さは、任意の適切な測定方法によって測定すれば良い。測定の容易さ等の点から、好ましくは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた測定が挙げられる。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた測定は、例えば、SEM観察試料台に表面に柱状構造の凸部を複数備えたクリーニング層を貼り付け、側面方向から観察することで、柱状構造の凸部の突出部分の長さを求めることが可能である。
【0027】
本発明においては、上記クリーニング層表面の柱状構造の凸部の密度が、好ましくは1.0×10個/cm以上であり、より好ましくは2.0×10個/cm以上であり、さらに好ましくは3.0×10個/cm以上である。上記クリーニング層表面の柱状構造の凸部の密度の上限は、好ましくは1.0×1012個/cm以下であり、より好ましくは1.0×1011個/cm以下であり、さらに好ましくは3.0×1010個/cm以下である。上記クリーニング層表面の柱状構造の凸部の密度が上記の範囲にあることにより、微細な異物、好ましくはサブミクロンレベルの異物を簡便、確実、十分に除去し得る。このような効果は、上記クリーニング層表面の柱状構造の凸部の密度が上記の範囲にあることにより、クリーニング部材に備えられたクリーニング層とクリーニング部位との間にファンデルワールス力が働くためと考えられる。
【0028】
本発明においては、上記クリーニング層の比表面積が、好ましくは2.0以上であり、より好ましくは2.2以上であり、さらに好ましくは2.5以上である。上記クリーニング層の比表面積の上限は、好ましくは50以下であり、より好ましくは30以下であり、さらに好ましくは10以下である。上記クリーニング層の比表面積が上記の範囲にあることにより、クリーニング層が被クリーニング部位に存在する微細な異物や被クリーニング部位の凹凸に効果的に追従し、微細な異物、好ましくはサブミクロンレベルの異物を簡便、確実、十分に除去し得る。このような効果は、上記クリーニング層の比表面積が上記の範囲にあることにより、クリーニング部材に備えられたクリーニング層とクリーニング部位との間にファンデルワールス力が働くためと考えられる。
【0029】
本発明において、「クリーニング層の比表面積」とは、クリーニング層の実表面積を見かけ表面積で割った値である。実表面積とはクリーニング層表面に形成した微細構造に起因する表面積の増大に基づく実際の表面積を意味する。見かけ表面積とは、クリーニング層表面が平滑であると仮定した場合の通常の面積算出式から求められる表面積を意味する。
【0030】
実表面積は通常の面積を求める算出式では求めることができない。そこで、実際の表面積の測定に対して、不活性ガスの表面への吸着量によって求める「BET法」を用いた。
【0031】
BET法は、まず試料を試料管(吸着セル)に入れ加熱しながら真空排気し、脱ガス後の試料重量を測定する。その後、再び装置に吸着セルを取りつけ、セル内にガスを送り込む。試料表面に窒素ガスが吸着し、吹きこむガスの量を増やしていくと、試料表面はガス分子で覆われていく。そして、ガス分子が多重に吸着していく様子を圧力の変化に対する吸着量の変化としてプロットする。このグラフから試料表面にだけ吸着したガス分子吸着量を、式(1)で表されるBET吸着等温式より求める。
【0032】
P/V(P−P) = 1/VC + {(C−1)/VC}×(P/P) ・・・(1)
ただし、式(1)中の各記号は、それぞれ以下の通りである。
P:吸着平衡にある吸着質の気体の圧力
:吸着温度における吸着質の飽和蒸気圧
V:吸着平衡圧Pにおける吸着量
:単分子層吸着量
C:固体表面と吸着質との相互作用の大きさに関する定数、BET定数(C=exp{(E−E)/RT})
:第一層の吸着熱(kJ/mol)
:吸着質の測定温度における液化熱(kJ/mol)
【0033】
本発明においては、実表面積の測定に流動式比表面積自動測定装置(株式会社島津製作所製、フローソーブIII2300)を用い、表面に微細構造を備えたクリーニング層を有する試料の実表面積を、クリプトンガスを用いたBET法により測定した。
【0034】
本発明において、クリーニング層表面に柱状構造の凸部を作製する方法としては、本発明の目的を達成し得る範囲において、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、プラズマエッチング処理、スパッタリング処理、レーザー処理、フォトリソグラフィー処理、ナノインプリント(スタンピング)処理などが挙げられる。作製の容易さ等の点から、好ましくはプラズマエッチング処理である。
【0035】
プラズマエッチング処理でクリーニング層表面に柱状構造の凸部を形成させる場合、用いられるガス種としては、本発明の目的を達成し得る範囲において、任意の適切なガスを採用し得る。例えば、酸素ガス、水素ガス、水蒸気ガス、窒素ガス、アルゴンガス、酸素と水蒸気の混合ガスなどが挙げられる。特に、酸素ガスを用いた場合が好適である。
【0036】
プラズマエッチング処理でのガス流量としては、本発明の目的を達成し得る範囲において、任意の適切なガス流量を採用し得る。例えば、好ましくは0.1sccm以上であり、より好ましくは1sccm以上である。
【0037】
プラズマエッチング処理での真空度ガス気圧としては、本発明の目的を達成し得る範囲において、任意の適切な真空度ガス気圧を採用し得る。例えば、好ましくは100Pa以下であり、より好ましくは50Pa以下である。
【0038】
プラズマエッチング処理での表面処理条件としては、本発明の目的を達成し得る範囲において、任意の適切な条件を採用し得る。例えば、放電電力密度と処理時間の積で表される放電電力エネルギーは、好ましくは100W・sec/cm以上であり、より好ましくは250W・sec/cm以上である。電極間距離は、好ましくは0.1mm以上1m以下である。電源は、好ましくはRFである。放電電力密度は、好ましくは0.01W/cm以上であり、より好ましくは0.1W/cm以上である。処理時間は、好ましくは60秒以上であり、より好ましくは300秒以上である。
【0039】
上記クリーニング層の引張弾性率は、クリーニング部材の使用温度領域において好ましくは0.5MPa以上であり、より好ましくは1〜10000MPaであり、さらに好ましくは10〜10000MPaである。引張弾性率がこのような範囲であれば、異物除去性能と搬送性能のバランスに優れたクリーニング部材が得られる。なお、引張弾性率は、JIS K7127に準じて測定される。クリーニング層の弾性率を上記範囲とすることで、微細な異物、好ましくはサブミクロンレベルの異物を簡便、確実、十分に除去し得る。
【0040】
上記クリーニング層は、例えばシリコンウェハのミラー面に対する180度引き剥がし粘着力が、好ましくは0.2N/10mm幅以下、さらに好ましくは0.01〜0.10N/10mm幅である。このような範囲であれば、クリーニング層は、良好な異物除去性能および搬送性能を有する。180度引き剥がし粘着力は、JIS Z0237に準じて測定される。
【0041】
上記クリーニング層の厚みは、本発明の目的を達成し得る範囲において、任意の適切な条件を採用し得る。好ましくは1〜200μmであり、より好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは5〜50μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。このような範囲であれば、微細な異物、好ましくはサブミクロンレベルの異物を簡便、確実、十分に除去し得る。
【0042】
上記クリーニング層は、好ましくは、実質的に粘着力を有しない。ここで、実質的に粘着性を有しないとは、粘着の本質を滑りに対する抵抗である摩擦としたとき、粘着性の機能を代表する感圧性タックがないことを意味する。この感圧性タックは、たとえばDahlquistの基準にしたがうと、粘着性物質の弾性率が1MPaまでの範囲で発現するものである。
【0043】
上記クリーニング層を構成する材料としては、本発明の目的を達成し得る範囲において、任意の適切な材料が採用され得る。クリーニング層を構成する材料の具体例としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、EVA、PEEK、PMMA、POM等の高分子樹脂などが挙げられる。特に、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂は耐熱性があり、好適に用いられる。
【0044】
上記クリーニング層を構成する材料は、本発明の目的を達成し得る範囲において、任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。添加剤の具体例としては、界面活性剤、可塑剤、酸化防止剤、導電性付与材、紫外線吸収剤、光安定化剤が挙げられる。用いる添加剤の種類および/または量を調整することにより、目的に応じた所望の特性を有するクリーニング層が得られる。
【0045】
クリーニング層は、本発明の目的を達成し得る範囲において、任意の適切な方法によって形成すれば良い。例えば、クリーニング層を単層フィルムとして形成する方法、支持体上に樹脂をコーティングする方法、樹脂層を別途形成してから支持体上に貼着する方法などが挙げられる。より具体的には、例えば、単層フィルムで用いる方法、クリーニング層をスピンコート法、スプレー法などを用いて、シリコンウエハなどの支持体(例えば、搬送部材)上に直接塗布する方法、PETフィルムや、ポリイミドフィルム上にコンマコート法や、ファウンテン法、グラビア法などを用いて塗工形成してクリーニング層を形成する方法などが挙げられる。
【0046】
上記支持体は、クリーニング層を支持できるものであれば、任意の適切な支持体を採用し得る。支持体の厚さは、本発明の目的を達成し得る範囲において、任意の適切な厚さを採用し得る。好ましくは500μm以下、さらに好ましくは3〜300μm、最も好ましくは5〜250μmである。
【0047】
上記支持体の表面は、隣接する層との密着性,保持性などを高めるために、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理などの化学的または物理的処理,下塗剤(例えば、上記粘着性物質)によるコーティング処理が施されていてもよい。なお、支持体は単層であっても多層体であってもよい。
【0048】
上記支持体の材料としては、本発明の目的を達成し得る範囲において、目的に応じて任意の適切な材料が採用される。例えば、エンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックのフィルムが挙げられる。エンジニアリングプラスチックおよびスーパーエンジニアリングプラスチックの具体例としては、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミドが挙げられる。分子量などの諸物性は、本発明の目的を達成し得る範囲において、任意の適切な物性を採用し得る。支持体の成形方法は、本発明の目的を達成し得る範囲において、任意の適切な方法を採用し得る。
【0049】
上記クリーニング層には、代表的には、予め保護フィルムが貼り合わせられ、使用時など適切な段階で剥離され得る。保護フィルムは、代表的には、クリーニング層の形成時や、クリーニング層と支持体を貼り合わせる(圧着する)際、クリーニング層の保護を目的として使用され得る。
【0050】
保護フィルムは、本発明の目的を達成し得る範囲において、任意の適切なフィルムが採用される。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネートなどからなるプラスチックフィルムやポリイミド、フッ素樹脂フィルムが挙げられる。
【0051】
保護フィルムは、目的に応じて離型処理剤などで離型処理が施されていることが好ましい。離型処理剤は、例えば、シリコーン系化合物、長鎖アルキル系化合物、フッ素系化合物、脂肪酸アミド系化合物、シリカ系化合物を挙げることができる。シリコーン系化合物が特に好ましい。
【0052】
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂系のフィルムについては、離型処理剤を用いなくとも離型性を有するので、それ単体を保護フィルムとして使用することもできる。
【0053】
保護フィルムの厚さは、好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは10〜100μmである。保護フィルムの形成方法は、本発明の目的を達成し得る範囲において、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法により形成することができる。
【0054】
本発明のクリーニング部材の用途としては、本発明の目的の範囲内において、任意の適切な用途を採用し得る。好ましくは、基板上の異物の除去や、基板処理装置内の異物の除去に用いられる。より具体的には、例えば、半導体、フラットパネルディスプレイ、プリント基板などの製造装置や検査装置など、微細な異物を嫌う基板処理装置のクリーニング用途に好適に用いられる。基板処理装置内を搬送させることによってクリーニングする場合に用いられる搬送部材としては、本発明の目的の範囲内において、任意の適切な搬送部材を採用し得る。具体的には、例えば、半導体ウェハ、LCD、PDPなどのフラットパネルディスプレイ用基板、その他のコンパクトディスク、MRヘッドなどの基板が挙げられる。
【0055】
本発明において、除塵が行われる基板処理装置としては特に限定されず、たとえば、露光装置、レジスト塗布装置、現像装置、アッシング装置、ドライエッチング装置、イオン注入装置、PVD装置、CVD装置、外観検査装置、ウエハプローバーなどがあげられる。
【0056】
B.クリーニング機能付搬送部材
図2は、本発明におけるクリーニング機能付搬送部材の概略断面図である。図2に示すように、クリーニング機能付搬送部材200は、搬送部材50と、搬送部材50の少なくとも片面(図示例では片面)にクリーニング層20とを有する。すなわち、この実施形態においては、クリーニング層20が搬送部材50上に直接形成されている。このようなクリーニング機能付搬送部材を装置内で搬送し、被洗浄部位に接触・移動させることにより、上記装置内に付着する異物による搬送トラブルを生じることなく簡便かつ確実にクリーニング除去することができる。
【0057】
上記搬送部材50としては、異物除去の対象となる基板処理装置の種類に応じて任意の適切な基板が用いられる。具体例としては、半導体ウェハ(例えば、シリコンウェハ)、LCD、PDPなどのフラットパネルディスプレイ用基板、コンパクトディスク、MRヘッドなどの基板が挙げられる。
【0058】
上記クリーニング機能付搬送部材におけるクリーニング層20については、上記A項におけるクリーニング層の説明が援用できる。
【0059】
上記クリーニング機能付き搬送部材は、搬送部材上にクリーニングシートを貼り合わせて製造しても良いし、搬送部材の少なくとも片面にクリーニング層を直接設けて製造しても良い。すなわち、クリーニング層の材料としての上記A項で説明した硬化型の樹脂組成物や、耐熱性を有する高分子樹脂を塗布し、活性エネルギー源により硬化させたり、乾燥後に高温で熱処理させたりするなどの方法にて、クリーニング層を形成してもよい。このクリーニング層の形成後または形成過程で、好ましくは、このクリーニング層上に上記A項で説明した保護フィルムを貼り合わせる。
【0060】
C.クリーニング方法
本発明におけるクリーニング方法は、本発明のクリーニング機能付搬送部材を基板処理装置内に搬送することを含む。本発明のクリーニング機能付搬送部材を所望の基板処理装置内に搬送し、その被洗浄部位に接触させることにより、当該被洗浄部位に付着した異物を簡便かつ確実にクリーニング除去することができる。
【0061】
上記クリーニング方法により洗浄される基板処理装置は、特に限定されない。基板処理装置の具体例としては、本明細書ですでに記載した装置に加えて、回路形成用の露光照射装置、レジスト塗布装置、スパッタリング装置、イオン注入装置、ドライエッチング装置、ウェハプローバなどの各種の製造装置や検査装置、さらに、オゾンアッシャー、レジストコーター、酸化拡散炉、常圧CVD装置、減圧CVD装置、プラズマCVD装置などの高温下で使用される基板処理装置などが挙げられる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。また、実施例における「部」は重量基準である。
【0063】
〔クリーニング層の比表面積〕
実表面積を、流動式比表面積自動測定装置(株式会社島津製作所製、フローソIII2300)を用い、吸着ガスとしてクリプトンガスを用いて測定した。
表面に柱状構造の凸部を備えたクリーニング層について、式(2)によって、比表面積を求めた。
=S/S ・・・(2)
:比表面積
:試料片面の実表面積({試料両面の実表面積−(未処理試料の両面の実表面積/2)})
:試料片面の見かけ表面積
一方、表面に柱状構造の凸部を備えないクリーニング層について、式(3)によって、比表面積を求めた。
=S/S ・・・(3)
:比表面積
:試料片面の実表面積(試料両面の実表面積/2)
:試料片面の見かけ表面積
【0064】
〔クリーニング層表面の柱状構造の凸部の密度〕
クリーニング層表面の柱状構造の凸部の密度は、クリーニング層表面1cm上の柱状構造の凸部の数を数えることにより測定した。
【0065】
〔柱状構造の凸部のアスペクト比〕
クリーニング層表面の柱状構造の凸部のアスペクト比は、クリーニング層を側面からSEM観察することにより測定した。
【0066】
〔柱状構造の凸部の突出部分の長さ〕
クリーニング層表面の柱状構造の凸部の突出部分の長さは、クリーニング層を側面からSEM観察することにより測定した。
【0067】
〔除塵性〕
除塵性については以下の方法で評価した。すなわち、8インチシリコンウェハ上に平均粒子径0.5μmのシリコン粉末を粒子数およそ10000個となるように均一に付着させた。次に、表面に柱状構造の凸部を備えたクリーニング層を有する高分子樹脂フィルムを10cm×10cmに切り出し、シリコン粉末が付着した8インチシリコンウェハ上に1分間、当該クリーニング層を接触させた。2分後、活性化処理されたフィルムを取り除き、パーティクルカウンター(KLA tencor製、SurfScan−6200)にて、0.5μmのシリコン粉末粒子の個数を測定し、除塵率を算出した。測定は3回行い、その平均を求めた。
【0068】
〔実施例1〕
ポリイミドフィルム(カネカ製、アピカルNPI25−NPS)を見かけ表面積100cmになるように切り取り、酸素プラズマエッチング処理(A)をフィルム片面に施して、表面に柱状構造の凸部を複数備えたクリーニング層を作製した。
【0069】
酸素プラズマエッチング処理(A)は、酸素ガスによるプラズマエッチング処理であり、プラズマ発生装置の電極間距離10cm、RF電源、酸素ガス流量300sccm、放電電力密度0.78W/cm、処理時間600秒、放電電力エネルギー468W・sec/cmで行った。
【0070】
得られたクリーニング層について、クリーニング層の比表面積、クリーニング層表面の柱状構造の凸部の密度、柱状構造の凸部のアスペクト比、柱状構造の凸部の突出部分の長さ、および除塵性を測定した。結果を表1に示す。
【0071】
〔実施例2〕
ポリイミドフィルム(カネカ製、アピカルNPI25−NPS)を見かけ表面積100cmになるように切り取り、酸素プラズマエッチング処理(B)をフィルム片面に施して、表面に柱状構造の凸部を複数備えたクリーニング層を作製した。
【0072】
酸素プラズマエッチング処理(B)は、酸素ガスによるプラズマエッチング処理であり、プラズマ発生装置の電極間距離10cm、RF電源、酸素ガス流量300sccm、放電電力密度0.78W/cm、処理時間300秒、放電電力エネルギー234W・sec/cmで行った。
【0073】
得られたクリーニング層について、クリーニング層の比表面積、クリーニング層表面の柱状構造の凸部の密度、柱状構造の凸部のアスペクト比、柱状構造の凸部の突出部分の長さ、および除塵性を測定した。結果を表1に示す。
【0074】
〔実施例3〕
ポリイミドフィルム(カネカ製、アピカルNPI25−NPS)を見かけ表面積100cmになるように切り取り、酸素プラズマエッチング処理(C)をフィルム片面に施して、表面に柱状構造の凸部を複数備えたクリーニング層を作製した。
【0075】
酸素プラズマエッチング処理(C)は、酸素ガスによるプラズマエッチング処理であり、プラズマ発生装置の電極間距離10cm、RF電源、酸素ガス流量20sccm、放電電力密度0.07W/cm、処理時間6600秒、放電電力エネルギー462W・sec/cmで行った。
【0076】
得られたクリーニング層について、クリーニング層の比表面積、クリーニング層表面の柱状構造の凸部の密度、柱状構造の凸部のアスペクト比、柱状構造の凸部の突出部分の長さ、および除塵性を測定した。結果を表1に示す。
【0077】
〔比較例1〕
ポリイミドフィルム(カネカ製、アピカルNPI25−NPS)を見かけ表面積100cmになるように切り取り、酸素プラズマエッチング処理(D)をフィルム片面に施して、表面に柱状構造の凸部を複数備えたクリーニング層を作製した。
【0078】
酸素プラズマエッチング処理(D)は、酸素ガスによるプラズマエッチング処理であり、プラズマ発生装置の電極間距離10cm、RF電源、酸素ガス流量300sccm、放電電力密度0.78W/cm、処理時間60秒、放電電力エネルギー47W・sec/cmで行った。
【0079】
得られたクリーニング層について、クリーニング層の比表面積、クリーニング層表面の柱状構造の凸部の密度、柱状構造の凸部のアスペクト比、柱状構造の凸部の突出部分の長さ、および除塵性を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
〔比較例2〕
ポリイミドフィルム(カネカ製、アピカルNPI25−NPS)を見かけ表面積100cmになるように切り取り、クリーニング層を作製した。
【0081】
得られたクリーニング層について、クリーニング層の比表面積、クリーニング層表面の柱状構造の凸部の密度、柱状構造の凸部のアスペクト比、柱状構造の凸部の突出部分の長さ、および除塵性を測定した。結果を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
表1から判るように、実施例1〜3では優れた除塵性を示すのに対し、比較例1〜2では十分な除塵性が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のクリーニング部材およびクリーニング機能付搬送部材は、各種の製造装置や検査装置のような基板処理装置のクリーニングに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0085】
10 支持体
20 クリーニング層
50 搬送部材
100 クリーニング部材
200 クリーニング機能付搬送部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に柱状構造の凸部を複数備えたクリーニング層を有するクリーニング部材であって、該柱状構造の凸部のアスペクト比が5以上であり、該クリーニング層表面の柱状構造の凸部の密度が1.0×10個/cm以上である、クリーニング部材。
【請求項2】
前記柱状構造の凸部の突出部分の長さが100nm以上である、請求項1に記載のクリーニング部材。
【請求項3】
前記クリーニング層の比表面積が2.0以上である、請求項1または2に記載のクリーニング部材。
【請求項4】
基板上の異物の除去に用いられる、請求項1から3までのいずれかに記載のクリーニング部材。
【請求項5】
基板処理装置内の異物の除去に用いられる、請求項1から3までのいずれかに記載のクリーニング部材。
【請求項6】
搬送部材と、該搬送部材の少なくとも片面に設けられた請求項5に記載のクリーニング部材とを有する、クリーニング機能付搬送部材。
【請求項7】
請求項6に記載のクリーニング機能付搬送部材を基板処理装置内に搬送することを含む、基板処理装置のクリーニング方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−138625(P2012−138625A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−83791(P2012−83791)
【出願日】平成24年4月2日(2012.4.2)
【分割の表示】特願2007−169958(P2007−169958)の分割
【原出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】