説明

クリール装置における糸切れ検出装置のアドレス設定方法およびクリール装置における糸切れ検出装置

【課題】クリール装置1において、ディップスイッチ等のハード的なアドレス設定器を設けずに、各制御器11によるアドレス設定動作を順次自動的に行われるようにする。
【解決手段】給糸体2の支持部材3a毎の複数の糸切れセンサ9に対応して設けられ直列接続された複数の制御器11とク−ル装置1全体の糸切れを監視するための中央処理装置12とを接続してなる糸切れ検出装置10において、中央処理装置12は、最上流側の制御器11に、アドレス情報を含む信号を出力する。最上流側の制御器11は、入力信号に基づいて自らのアドレスを認識・記憶すると共に、入力した信号の情報を基に所定の演算規則に従って下流側の後続の制御器のアドレス情報を求め、このアドレス情報を含む信号を下流側の後続の制御器11に出力する。これにより、各制御器11は、下流側の後続のすべての制御器に対し順次アドレスを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリール装置に備えられる糸切れ検出装置において、糸切れ検出装置の複数の制御器にアドレスを設定する方法およびアドレス設定機能を有する糸切れ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
織機等に使用される経糸ビームの準備段階では、クリール装置に仕掛けられた多数の給糸体から糸を一斉に引き出し、巻取装置等でビームに巻き取ることが行われる。クリール装置から引き出される多数本の糸のうち、その1本が切れても、ビームに巻かれる糸の本数が不足する状態となるため、巻き取り工程では、すべての糸について糸切れを検出する必要がある。また、糸切れが発生したとき、作業者がその糸切れを修復するために、どの給糸体で糸切れが発生したかを特定できるようにすることが望ましい。
【0003】
そこで、複数の給糸体を支持するための多数の支持部材毎に糸切れセンサを設けると共に各支持部材の列単位で1以上の列に対応して設けられた複数の制御器に糸切れセンサからの信号が入力されるようにし、さらに、各制御器からの糸切れ情報を中央処理装置により監視・処理することが行われる。
【0004】
ちなみに、クリール装置は、多数個の給糸体を挿着可能とすべく、それに応じた数の支持部材が備えており、この支持部材は、複数個毎に上下方向に列をなして並設され、かつその列が多数列となるように配設されている。具体的には、例えば、クリール装置が1000個の給糸体を搭載可能なように1000個の支持部材を備えており、この支持部材が、1列を10個として100列に亘って設けられている、等が挙げられる。そして、その例の場合、上記した制御器は列の数つまり100個設けられていることになる。
【0005】
上記のような多数の制御器(スレーブ制御装置)と1つの中央処理装置(ホスト制御装置)との間データのやり取りを行う場合、下記の特許文献1に開示されているように、シリアル通信が使用されるのが一般的である。このようなシリアル通信を使用する場合も含め、多数のスレーブ制御装置と1つのホスト制御装置との間でデータのやり取りを行う場合、一般的には各スレーブ制御装置に対しアドレスが設定される。従来は、各スレーブ制御装置に対し8ビット等のディップスイッチを設け、作業者が各制御器のディップスイッチを手動操作することによりアドレスを設定する作業を行っていた。
【0006】
上記の技術によると、次のような問題がある。まず(1)上述の例でも100個と述べたように、クリール装置に設けられるスレーブ制御装置の数は非常に多く、その1つひとつに対しアドレスを設定する作業は手間と労力を要する。(2)設定作業は、作業者がディップスイチを1つずつ操作して行うものであるため、設定ミスが発生し易い。(3)全てのスレーブ制御装置に対しアドレス設定用のスイッチを設けなければならないため、装置の構成が複雑化すると共に価格が割高となる。
【特許文献1】特開2000−73238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、給糸体支持用の多数の支持部材列毎の複数の糸切れセンサに対応して設けられた複数の制御器とクリ−ル装置全体の糸切れを監視するための中央処理装置とを接続してなるクリールの糸切れ検出装置において、各制御器の装置構成を簡略化すると共に、各制御器に対するアドレスの設定を容易化することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題のもとに、本発明は、給糸体支持用の多数の支持部材列毎の複数の糸切れセンサに対応して設けられた複数の制御器とクリ−ル装置全体の糸切れを監視するための中央処理装置とを接続してなるクリール装置の糸切れ検出装置において、各制御器に対しディップスイッチ等のハード的なアドレス設定器を設けずに、各制御器によるアドレス設定動作を順次に実行することによって、複数の制御器に対するアドレスの設定を自動的に行われるようにしている。
【0009】
具体的には、本発明のアドレス設定動作は以下のようにして行われる。中央処理装置は、直列接続された複数の制御器のうちの最上流側の制御器に対し、そのアドレスに対応する情報を含む信号を出力する。最上流側の制御器は、入力した信号に基づいて自らのアドレスを認識して記憶すると共に、下流側の後続の制御器に対し、入力した信号の情報を基に設定された演算規則に従って後続の制御器のアドレス対応する信号情報を求め、この情報を含む信号を出力する。このように、各制御器は、入力した自身のアドレスに対応する情報を含む信号に基づいて自らのアドレスを認識・記憶すると共に、下流側の後続の制御器に対しその制御器のアドレスに対応する情報を含む信号を出力し、これにより、すべての制御器に対し順次アドレスが設定される。
【0010】
ここで「演算規則」とは、入力した信号の情報を基に後続の制御器に固有のアドレス対応する信号情報を求める計算の規則のことであり、仮に、複数の制御器に、最も一般的な例えばある等差数列をアドレスとして割り当てたとき、ある制御器のアドレスに等差数列の公差を加えて、下流側の後続の制御器のアドレスを計算することをいう。もっとも単純な自然数(数列1、2、3、・・)がアドレスとして採用するとき、演算規則は前のアドレスの数字に公差+1を加算して、下流側の後続のアドレスを求めることになる。この公差は途中から変わってもよく、常に一定の数値でなくてもよい。もちろん、アドレスは、ある制御器に固有のもので、他の制御器のアドレスと区別できれば、等差数列に限らず、その他の数列や記号列を利用することもできる。
【0011】
なお、上記の特許文献1のようにシリアル通信を採用した場合、シリアル通信では各制御器に対しアドレスが設定された状態でないと、中央処理装置が特定の制御器に対し情報信号を出力することができないため、各制御器にアドレスが設定されていない状態から自動的にアドレスを設定するということはできない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、各制御器にアドレス設定用のスイッチを設ける必要がないため、その分のコストが抑えられる。また、作業者が各制御器に対しアドレス設定の作業を行わなくてもよく、複数の制御器に対してアドレスが自動的に設定されるため、作業者の手間を省略することができると共に、アドレスの設定ミスの発生を有効に防止することができる。また、最下流の制御器から中央処理装置へ戻ってくる信号の内容および経過時間から最終的にアドレス設定の状況が判断できるため、アドレス設定の正否の確認も容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1ないし図4はV字形のクリール装置1の機械的な構成を示している。図1ないし図4において、クリール装置1は、多数の給糸体2を支持するために、平面的に見て、V字形の形態の機枠3を有しており、これらの機枠3に取り付けられた給糸体枠3bは、縦方向および横方向に並設された支持部材3aを多数備えている。図示の例によると、支持部材3aは、縦方向の1列毎に10段、横方向にN列となっており、合計10×N個の給糸体2を支持できるようになっている。整経に必要な数の給糸体2は、合計10×N個の支持部材3aに対して適当な位置に配置される。ここでは、給糸体2が10×N個の支持部材3aのすべてに支持されているものとする。
【0014】
すべての給糸体2から引き出された多数の経糸4は、各支持部材3aに対応して設けられた各糸切れセンサ9を経由してから、筬5によって合流し、所定幅の1つのシート状となる。このシート状の経糸4は、複数のガイドロール6を経て巻取装置7の巻取ビーム8に巻き取られる。
【0015】
そして、クリール装置1の糸切れ検出装置10は、多数の糸切れセンサ9のほか、複数の制御器11および中央処理装置12を備える。糸切れセンサ9は、各支持部材3aに対応して設けられ、各支持部材3aに支持された給糸体2からの経糸4の糸切れ時に、糸切れの信号を発生する。制御器11は、支持部材3aの各列に対応してN個設けられ、各列における10個の糸切れセンサ9からの信号を受けるものとする。また、中央処理装置12は、N個の制御器11に接続されてクリ−ル装置1全体の糸切れを監視する。
【0016】
次に図5は、糸切れセンサ9、N個の制御器11および中央処理装置12の相互の接続関係を示している。図5において、#1、#2、・・、#Nの各制御器11は、入力ポート15、出力ポート18、制御部16および記憶部17を含んでいる。
【0017】
中央処理装置12とN個の制御器11とは第1の伝送ライン13により直列接続され、中央処理装置12からの信号は第1の伝送ライン13を経て#1、#2、・・、#Nの制御器11の入力ポート15に順次に入る。具体的には、#1の制御器11の入力ポート15は中央処理装置12に接続され、#1、#2、・・、#N−1の制御器11の出力ポート18はそれぞれ1つ下流側で後続の#2、・・、#Nの制御器11の入力ポート15に接続され、#Nの制御器11の出力ポート18は中央処理装置12に接続されている。ここで最上流側の制御器11は、中央処理装置12に最も近い#1の制御器11となる。
【0018】
また、中央処理装置12と各制御器11とは第2の伝送ライン14によりバス接続されており、中央処理装置12の信号は第2の伝送ライン14を共通の信号伝送路として#1、#2、・・、#Nの制御器11の入力ポート15に並列的に入力される。
【0019】
このように、入力ポート15は、第1の伝送ライン13による中央処理装置12または上流側の制御器11からの信号及び第2の伝送ライン14からの信号のほか、各列における10個の糸切れセンサ9からの信号を並列的に入力可能となっている。なお、各制御器11の出力ポート18は、第1の伝送ライン13、第2の伝送ライン14とは別の伝送ライン19でも中央処理装置12とバス接続されている。この別の伝送ライン19は、例えば糸切れに伴う停止信号や糸切れ位置の情報を示す信号を中央処理装置12へ送るために設けられる。
【0020】
各制御器11の制御部16は、第2の伝送ライン14における中央処理装置12からの信号の出力状態がアドレス設定モードを示すものか否かを判別する機能を有している。さらに制御部16は、第1の伝送ライン13を介して中央処理装置12または上流側の制御器11から入力ポート15に対し出力された自身のアドレスに対応する情報を含む信号に基づいてアドレスを認識すると共に、その入力した信号の情報を基に、設定された演算規則に従って下流側に接続された制御器11のアドレスに対応する信号情報を求めることができる。そのために制御部16には、演算規則が設定されている。なお、この例では、上流側の制御器11から順に1、2、3、・・、Nとアドレスが設定されるものとする。従って、制御部16に設定される演算規則は、演算値として1が設定されると共に、それを加算する規則(演算規則=+1)が設定されている。アドレス設定モードつまりアドレスの設定の動作は、装置の電源投入時など所定のタイミングに行われるものとする。
【0021】
なお、上記の「上流」および「下流」とは、中央処理装置12に対する位置ではなく、第1の伝送ライン13に出力される信号の伝送方向における上流、下流の意味で用いられている。ちなみに、各制御部16に関して、上記の「中央処理装置12または上流側の制御器11」は、#1の制御器11については、上流側となる中央処理装置12からの自身のアドレスに対応する情報を含む信号に基づいてアドレスを認識することを意味しており、#2、・・、#Nの各制御器11については、1つ上流側の#1、#2、・・、#N−1の制御器11からの自身のアドレスに対応する情報を含む信号に基づいてアドレスを認識することを意味する。したがって、これは1つ上流側の信号出力手段(中央処理装置12および制御器11)とも言える。
【0022】
また上記の「アドレスに対応する情報を含む信号」は、出力先の制御器11のアドレスに対応するパルス数を有するパルス列信号とすることができる。すなわち、中央処理装置12から第1の伝送ライン13へ向けて出力される信号をパルス列信号とし、そのパルス列信号に含まれるパルス数が設定されるべきアドレスに対応するものとすることができる。そしてこの場合、各制御器11は、制御部16がこのパルス列信号に含まれるパルスの数をカウントすることにより、自身のアドレスを認識するものとする。このため、各制御器11(制御部16)は、図示しないカウンタを有しているものとする。
【0023】
中央処理装置12は、最下流(#N)側の制御器11から出力された信号が、最下流側の制御器11に入力されたその制御器11に設定されるべきアドレスに対応する情報を含む信号を基に上記の所定の演算規則に従って求められた情報を含む信号と一致するか否かを判別し、一致しない場合に異常と判断する機能を有している。さらに、中央処理装置12は、第1の伝送ライン13に信号を出力した時点から所定の時間内に最下流側の制御器11から信号が出力されなかった場合に異常と判断する機能を有している。
【0024】
出力ポート18は、制御部16で求められた情報を含む信号を下流の制御器11の入力ポート15に出力する。記憶部17は対応の制御部16で認識したアドレスを記憶する。このアドレスの記憶により、その後、各制御器11は内部の記憶部17のアドレスを利用できる状態となる。
【0025】
図6はアドレス自動設定の動作順序を示している。図6において、装置の電源が投入されると、中央処理装置12は、アドレス自動設定の動作を開始(START)し、先ずステップ1で、第2の伝送ライン14における信号の出力状態(アドレス設定モード)を判別する。具体的には、この判別の結果、例えば第2の伝送ライン14における信号の出力状態がONのときに、つぎのステップ2へ進んで各制御器11はアドレス設定モードをONに設定され、OFFのときは制御器11が他のモードに設定されるものとする。
【0026】
アドレス設定に関しては、第2の伝送ライン14における信号の出力状態がOFFのときは、ステップ10に進み、各制御器11はアドレス設定モードをOFFに設定され、アドレス設定モードを終了(END)となる。もちろん第2の伝送ライン14における信号の出力状態ON・OFFは上記の逆でもよい。さらに、図示の例では、各制御器11の入力ポ−ト15にバス接続される第2の伝送ライン14を1本としたが、これを2本とし、これらの2本の第2の伝送ライン14の信号出力状態(ONまたはOFF)の組み合わせにより複数のモードに設定できるようにしてもよい。
【0027】
ステップ2で、アドレス設定モードがONに設定されると、つぎのステップ3で、各制御器11は、その時点まで記憶していたアドレス(カウンタ)をリセットしてカウント値0とし、第1の伝送ライン13を介して伝送される中央処理装置12または上流側の制御器11からの信号の出力に備え待機する。
【0028】
この後、中央処理装置12は、第1の伝送ライン13を介し、最上流側の#1の制御器11に対してそのアドレスに対応する情報を含む信号、すなわち#1の制御器11のアドレスに対応するパルス列信号を出力する。なお、この例では、この第1の伝送ライン13を介して出力されるパルス列信号は、その出力先の制御器11のアドレスに一致する数のパルスを含むものとする。また、この例では、前述のように#1、#2、・・、#Nの各制御器11のアドレスを最上流側のものから順に1、2、・・、Nとするものである。従って、中央処理装置12から#1の制御器11に対して出力される信号は、パルス数1のパルス列信号である。
【0029】
次のステップ4で、#1の制御器11は、中央処理装置12からパルス列信号の入力を判断する。すなわち、パルスの立上がりの検出が行われたか否かについて、検出が確認されない場合(NOの場合)は、待機状態を継続して中央処理装置12からパルス列信号に備える。また、パルスの立上がりの検出が確認された場合(YESの場合)は、次のステップ5に移行し、ステップ5において、制御部16に内蔵されたカウンタのカウント値0に+1を加算する。
【0030】
次いで、ステップ6では、出力されたパルス列信号に含まれるパルスの数を確認する動作が行われる。具体的には、パルスの立上がりが検出された時点から所定時間が経過したか否かを判断し、所定時間が経過していない場合(NOの場合)は、再びパルスの立上がりが検出されるか否かの確認を行うため、ステップ7に進む。
【0031】
なお、上記の所定時間は、パルス列信号のパルス周期に基づいて適当な時間値に設定されるものであり、パルス列信号のパルス周期よりも長い時間に設定される。具体的には、例えばパルス列信号のパルス周期が10msecのときに上記所定時間を20msecとする等が考えられる。従って、パルス列信号に含まれるパルスの数が2以上の場合、所定時間が経過する前にステップ7で再びパルスの立上がりの検出が確認され、再びステップ5に戻る。
【0032】
しかし、#1の制御器11の場合に、中央処理装置12からパルス列信号に含まれるパルスの数は1であるため、所定時間が経過しても次のパルスの立上がりが検出されない。従って、ステップ6では、所定時間が経過した(YES)と判断される。これにより#1の制御器11における制御部16は、中央処理装置12からのパルス列信号の出力が完了したと判断すると共に、ステップ8に進み、そのときまでのカント値1を記憶部17に出力し、記憶部17に#1の制御器11のアドレスとして1を保持する。
【0033】
次いで、ステップ9では、#1の制御器11は、制御部16が、入力した信号のアドレスに関する情報、すなわちパルスの数である1と上記した演算規則に基づいて下流側の#2の制御器11のアドレスに対応する情報(2)を求め、この情報を含むパルス列信号、すなわちパルス数が2のパルス列信号を、出力ポート18を介し、#2の制御器11の入力ポ−ト15に出力する。この出力が完了した時点で、#1の制御器11は、自身のアドレス設定が完了したと判断し、ステップ10でアドレス設定モードをOFFとし、アドレス設定動作を終了する。
【0034】
これ以降、下流側の各制御器11は、上記の#1の制御器11と同様に、入力したパルス列信号によって自らのアドレスを認識すると共にそのアドレスを記憶し、さらに、下流側の後続の制御器11のアドレスに対応する情報を設定された演算規則に基づいて求め、その情報を含むパルス列信号を下流側の制御器11に対し出力する。このようにして、各制御器11に対するアドレスは、上流側から下流側へと順次に自動的に設定される。
【0035】
なお、上記の処理動作によれば、最下流側の#Nの制御器11は、第1の伝送ライン13を介し、中央処理装置12へパルス数N+1のパルス列信号を出力することになる。そこで、中央処理装置12は、#Nの制御器11から返信されてくるパルス列信号の判別機能を有するものとし、最初に#1の制御器11へパルス列信号を出力した時点から所定時間内に、#Nの制御器11から上記パルス数N+1のパルス列信号が入力されるかどうかを判別するものとすることができる。
【0036】
仮に、いずれかの制御器11に異常があったり、もしくは上記のアドレス設定に関する処理にカウントミスや演算ミスなどのミスが生じた場合、上記した所定時間内で中央処理装置12に信号が入力されなかったり、あるいは所定時間内に信号が入力されても、そのパルス数が少なかったりするときもある。このようなとき、中央処理装置12は、再度、アドレス設定の動作を実行するか、あるいは警報や警告表示などで作業者にその旨を知らせるようにする。単純な処理ミスである場合、再度の実行で正常アドレス設定が行える可能性があるため、アドレス設定動作を再度実行し、それでも同じ状態となった場合に警報等を出力するようにしてもよい。
【0037】
本発明は上記実施例に限らず、上記実施例の内容を変形して実施することもできる。上記実施例では、信号に含まれるアドレスに対応する情報を、パルス列信号におけるパルス数としたが、本発明はこれに限らず、例えば、パルス幅(パルスの立上りから立下りまでの時間)あるいはパルス周期(連続する2つパルスの最初のパルスの立上りから2つ目のパルスの立上りまでの時間)としてもよい。例えば、パルス幅(パルス間隔)が、1/1000〜9/1000msecならアドレス:1、10/1000〜19/1000msecならアドレス:2、・・等として設定することもできる。この場合、前述の演算規則は時間に関して設定され、例えば、+10msec等とする。また、上記いずれの場合にも限定されず、単純なかたちでアドレスを示すことができるものであれば、どのような形態の信号であってもよい。
【0038】
上記実施例では、第1の伝送ライン13による制御器11の直列接続に関し、中央処理装置12に近い方の#1の制御器11を、第1の伝送ライン13における信号の伝送方向の上流側としたが、これに限らず、中央処理装置12から遠い方の#Nの制御器11を上流側としてもよい。#Nの制御器11を上流側とした場合、中央処理装置12から最も遠い側の#Nの制御器11が最上流例の制御器11となり、中央処理装置12から第1の伝送ライン13を介して送られる信号が、まず、この最も遠い#Nの制御器11の入力ポ−ト15に入力される。そして、上流側の#Nの制御器11から第1の伝送ライン13を介して出力される信号が、順次に下流側の制御器11、すなわち中央処理装置12に近い方の制御器11へ送られることになる。
【0039】
また、上記実施例のように、最上流側の制御器11のアドレスを最も小さい値1とし、下流側に向けて順次値が大きくなるようにアドレスを設定しているが、これに限らず、その逆であってもよい。例えば、上記のように中央処理装置12から最も遠い側の#Nの制御器11を最上流側とする場合において、そのアドレスを1と設定するのではなく、N+1と設定し、その下流側の制御器11のアドレスを、順にN−1、N−2、・・とするようにしてもよい。すなわち前述の演算規則は、所定の演算値1を加算するものであったが、それに限らず、所定の演算値を減算するものであってもよい。また、乗算あるいは除算を行って下流側の制御器11のアドレスを求めるように演算規則を設定してもよい。なお、全ての制御器11に対し同じ演算規則が一様に設定されていれば、各制御器11に設定されるアドレスは、必然的に、上流側から下流側に向けて所定の規則に従って順次異なる値となる。このように、各制御器11に設定されるアドレスは、その整列順に順次所定の規則を持って異なる値になればよく、演算規則はどのようなものであってもよい。
【0040】
また、上記実施例では、制御器11が支持部材3aの各列に対応して設けられるものとしたが、これに限らず、制御器11は、支持部材3aの列を単位として複数列、例えば、2列または3列毎に設けられるものとしてもよい。さらには、各制御器11が対応する支持部材3aの列の数を同じとするものに限らず、例えば、隣り合う2つの制御器11のそれぞれに対応する支持部材3aの数が異なるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、図1の形態いわゆるV字形のクリール装置1に限定されず、どのような形態のクリール装置にも適用できる。また、図1の例では、経糸列が2つの給糸体枠3bに分けて並置されているが、この場合、第1の伝送ライン13による制御器11の並列接続を給糸体枠3b毎に独立したものとし、給糸体枠3b毎に中央処理装置12を設けることもできる。すなわち、2本の第1の伝送ライン13が中央処理装置12に接続され、各第1の伝送ライン13が、それぞれ1つの給糸体枠3bに対応する制御器11を直列接続する。また、これとは別に、各給糸体列に対応する制御器11の全てを第1の伝送ライン13で直列接続してもよい。この場合、給糸体枠3b単位で接続するようにして、一方の給糸体枠3bの端部の給糸体列に対応する制御器11と他方の給糸体枠3bの端部の給糸体列に対応する制御器11とを接続するようにしてもよいし、給糸体枠3bとは無関係に給糸体列の位置に応じた順で接続するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】クリール装置1の平面図である。
【図2】クリール装置1の側面図である。
【図3】クリール装置1の給糸体2の支持部分の拡大断面図である。
【図4】クリール装置1の給糸体2の支持部分の拡大側面図である。
【図5】クリール装置1の糸切れ検出装置10のブロック線図である。
【図6】アドレス設定動作のフローチャート図である。
【符号の説明】
【0043】
1 クリール装置
2 給糸体
3 機枠、3a 支持部材 3b 給糸体枠
4 経糸
5 筬
6 ガイドロール
7 巻取装置
8 巻取ビーム
9 糸切れセンサ
10 糸切れ検出装置
11 制御器
12 中央処理装置
13 第1の伝送ライン
14 第2の伝送ライン
15 入力ポート
16 制御部
17 記憶部
18 出力ポート
19 伝送ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の給糸体(2)を支持するために上下方向に並設された複数の支持部材(3a)を多数列備えてなるクリール装置(1)に備えられる糸切れ検出装置(10)であって、各支持部材(3a)に対応して設けられた複数の糸切れセンサ(9)と、対応する列の糸切れセンサ(9)からの信号を受ける複数の制御器(11)と、この複数の制御器が接続されてクリール装置(1)全体における糸切れを監視する中央処理装置(12)とを備えてなる糸切れ検出装置(10)において、
中央処理装置(12)と複数の制御器(11)とが第1の伝送ライン(13)を介して直列接続されると共に、中央処理装置(12)と複数の制御器(11)とが第2の伝送ライン(14)によりバス接続されており、
中央処理装置(12)は、所定のタイミングで、第2の伝送ライン(14)による各制御器(11)に対する信号の出力状態をアドレス設定モードを示す状態に設定すると共に、第1の伝送ライン(13)を介して 最上流側の制御器(11)に対しそのアドレスに対応する情報を含む信号を出力し、
各制御器(11)は、第2の伝送ライン(14)における中央処理装置(12)からの信号の出力状態に基づいてアドレス設定モードに設定されると共に、第1の伝送ライン(13)を介して中央処理装置(12)または上流側の制御器(11)から出力された信号に基づいてアドレスを認識して記憶し、さらにその入力した信号の情報を基に設定された演算規則に従って下流側に接続された制御器(11)のアドレスに対応する情報を求め、その情報を含む信号を出力することを特徴とするクリール装置における糸切れ検出装置のアドレス設定方法。
【請求項2】
多数の給糸体(2)を支持するために上下方向に並設された複数の支持部材(3a)を多数列備えてなるクリール装置(1)に備えられる糸切れ検出装置(10)であって、各支持部材(3a)に対応して設けられた複数の糸切れセンサ(9)と、対応する列の糸切れセンサ(9)からの信号を受ける複数の制御器(11)と、この複数の制御器が接続されてクリール装置(1)全体における糸切れを監視する中央処理装置(12)とを備えてなる糸切れ検出装置(10)において、
中央処理装置(12)と複数の制御器(11)とを直列接続する第1の伝送ライン(13)と、中央処理装置(12)と各制御器(11)とをバス接続する第2の伝送ライン(14)とを備え、
各制御器(11)は、複数の信号を並列的に入力可能な入力ポート(15)と、該入力ポート(15)に接続された第2の伝送ライン(14)における中央処理装置(12)からの信号の出力状態に応じてアドレス設定モードを判別すると共に、上記入力ポート(15)に対し第1の伝送ライン(13)を介して中央処理装置(12)または上流側の制御器(11)から出力された自身のアドレスに対応する情報を含む信号に基づいてアドレスを認識し、さらにその入力した信号の情報を基に設定された演算規則に従って下流側に接続された制御器(11)のアドレスに対応する信号情報を求める制御部(16)と、該制御部(16)で求められた情報を含む信号を出力する出力ポート(18)と、上記制御部(16)で認識したアドレスを記憶する記憶部(17)とを備えることを特徴とするクリール装置における糸切れ検出装置(10)。
【請求項3】
上記アドレスに対応する情報を含む信号は、出力先の制御器(11)のアドレスに対応する数のパルスを有するパルス列信号であることを特徴とする請求項2記載のクリール装置における糸切れ検出装置(10)。
【請求項4】
上記中央処理装置(12)は、最下流側の制御器(11)から出力された信号が、最下流側の制御器(11)に入力されたその制御器(11)に設定されるべきアドレスに対応する情報を含む信号を基に上記演算規則に従って求められた情報を含む信号と一致するか否かを判別し、一致しない場合に異常と判断することを特徴とする請求項2記載のクリール装置における糸切れ検出装置(10)。
【請求項5】
中央処理装置(12)は、第1の伝送ライン(13)に信号を出力した時点から所定時間内に最下流側の制御器(11)から信号が出力されなかった場合に異常と判断することを特徴とする請求項2記載のクリール装置における糸切れ検出装置(10)。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−152463(P2006−152463A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341742(P2004−341742)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000215109)津田駒工業株式会社 (226)
【Fターム(参考)】