説明

クレーン

【課題】 コンテナを正確に着床できるクレーンを提供することを目的とする。
【解決手段】 トロリ20から吊り下げられた吊下コンテナC1を、下方に設置された設置コンテナC2の上面に載置するクレーン1において、吊下コンテナC1の下面の一端が設置コンテナC2に当接したことを検知する振動検出器30を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、箱型形状のコンテナが多数設置される港湾のコンテナヤードにて、コンテナを搬送するクレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
港湾等のコンテナヤードでは、船舶へ積み込む前のコンテナや、船舶から積み下ろされたコンテナが多数設置されている。これらコンテナは、上方へ複数積み上げられた段積みコンテナとされ、各段積みコンテナが所定配列に従ってレーンごとに並べられている。各レーンには、レーンを跨ぐように、RTG(Rubber Tire Gantry crane)等の自走式の門型クレーンが配置されている。この門型クレーンによって、レーン内を走行するトレーラとのコンテナの受け渡しが行われ、また、レーン内のコンテナの設置等が行われる。
【0003】
門型クレーンは、ヤード上に積み付けてある設置コンテナ上または地上に、吊り下げた吊下コンテナを載置する場合、吊下コンテナを例えばトリム方向に傾斜させ、先ず下面の一端(一辺)を設置コンテナ上または地上に当接させ、その後、下面全体を当接させ、吊下コンテナを着床させる。従来、吊下コンテナの下面全体が着床したことは、着床センサによって検知されるようになっている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】実開昭53−115572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の着床センサは、吊下コンテナ下面の四隅が当接したことをもって着床したと判断するものなので、吊下コンテナが傾斜して一端が当接した状態については、着床センサによって検出するようになっていない。実際には、オペレータの目視や経験に基づく勘に頼っているのが現状である。これでは、これまで以上の過密スケジュールが要求されるようになると、正確で確実なコンテナの着床ができないおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、コンテナを正確に着床できるクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のクレーンは以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるクレーンは、トロリから吊り下げられた吊下コンテナを、下方に設置された設置コンテナの上面または地上に載置するクレーンにおいて、
前記吊下コンテナの下面の一端が前記設置コンテナまたは地上に当接したことを検知するコンテナ当接検出器を備えていることを特徴とする。
【0008】
吊下コンテナを例えばトリム方向に傾斜させて下降させ、先ず、設置コンテナの上面または地上に対して吊下コンテナ下面の一端を当接させる。この当接を確認した後に、更に吊下コンテナを下降させ、最終的に吊下コンテナを設置コンテナ上または地上に着床させる。本発明では、コンテナ当接検出器によって、吊下コンテナの下面の一端が設置コンテナまたは地上に当接したことが検出される。これにより、吊下コンテナの一端の当接が認識できることになり、オペレータの経験や勘に頼ることなく、吊下コンテナを容易に載置することができる。
なお、本発明の「コンテナ当接検出器」は、吊下コンテナの一端が設置コンテナまたは地上に当接したことを検出するものであり、この点で、吊下コンテナの下面全体が当接して着床したことを検出する着床検出器と異なる。
また、コンテナ当接検出器の出力を表示するランプ等の表示器を、オペレータ近傍に設けておけば、オペレータによる認識が確実なものとなる。
【0009】
さらに、前記コンテナ当接検出器は、振動検出器とされるとともに、前記吊下コンテナを把持する吊具に設けられていることが好ましい。
【0010】
吊下コンテナの下面の一端が設置コンテナまたは地上に当接すると、例えば2Hz程度の高周波振動が発生する。この高周波振動を振動検出器であるコンテナ当接検出器によって検出することとした。また、コンテナ当接検出器を吊具に設け、振動発生源に近づけることにより、振動の検出を精度良く行うこととした。
振動検出器としては、例えば、傾斜計や加速時計が用いられる。
【0011】
さらに、本発明のクレーンは、前記コンテナ当接検出器が前記吊下コンテナの前記設置コンテナに対する当接を検出した場合、該吊下コンテナの水平方向への移動を禁止することを特徴とする。
【0012】
吊下コンテナが設置コンテナ上に当接した状態で、吊下コンテナの位置決めを行うために吊下コンテナを水平方向へ移動させると、設置コンテナも同様に水平方向へ引きずられてしまい、設置コンテナが段積みされている場合には段積みコンテナが転倒してしまうおそれがある。そこで、本発明では、コンテナ当接検出器が吊下コンテナの当接を検出した場合には、吊下コンテナの水平方向の移動を禁止することとした。吊下コンテナの位置決めを行う場合には、吊下コンテナを再び上昇させてから位置決めを行う。
【発明の効果】
【0013】
振動検出器によって吊下コンテナの下面一端の当接が認識できるので、オペレータの経験や勘に頼ることなく、吊下コンテナを確実に着床させることができる。これにより、正確な着床が実現でき、ひいては荷役効率の向上を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本実施形態にかかるクレーン1が示されている。
クレーン1は、いわゆるRTG(Rubber Tire Gantry crane)とされ、複数のゴムタイヤ3によって自走する門型のクレーンとされている。クレーン1は、複数のコンテナCが上方に段積みされた段積みコンテナが所定配列をもって設置されたレーンRを跨ぐように配置され、レーンRの長手方向に走行する。
【0015】
クレーン1は、4つの走行装置5を備えており、各走行装置5に4つのゴムタイヤ3が設けられている。走行装置5は、走行制御装置7によって、その駆動が制御されるようになっている。走行装置5には、オートステアセンサ6が設けられている。このオートステアセンサ6は、レーンRの長手方向に敷設された磁気ガイドライン15からの磁気を検出するようになっており、これにより、クレーン1を走行方向に自動運転できるようになっている。
【0016】
左右(走行方向)に隣り合う走行装置5は、下梁9によって連結されており、この下梁9上に走行制御装置7が設置されている。ここで、左右とはクレーンの走行方向を意味し、前後とはトロリ20の移動方向を意味する。これは、トロリ20に設置された運転室22内のオペレータの姿勢を基準として定められたものである。
【0017】
下梁9の中央には、下方に向けた状態のベイセンサ8が設けられている。このベイセンサ8は、設置されたコンテナCの左右方向の単位であるベイ毎に敷設された磁石16からの磁気を検出するようになっており、これにより、クレーン1を目標のベイに停止させることができる。
下梁9の両端には、上方に立設する柱10がそれぞれ設けられている。各柱10の上端は、もう一方の下梁9から立設された柱10の上端とガーダ12によって連結されている。
【0018】
ガーダ12は左右方向に2本並列に設けられており、これらガーダ12上をトロリ20が前後方向に移動する。トロリ20には運転室22が設けられており、この運転室22内にオペレータが待機し、クレーン1の操作を行う。
【0019】
トロリ20からはスプレッダ(吊具)24が吊り下げられており、このスプレッダ24によってコンテナCが把持された状態で吊り下げられるようになっている。具体的には、スプレッダ24の四隅に、先端に拡大頭部を有するツイストロックピン(図示せず)が下方に突出した状態で設けられており、各ツイストロックピンの拡大頭部がコンテナCの上面四隅に設けられた穴に挿入された状態で回転させられることによって係合するようになっている。このようにスプレッダ24によって吊り下げられることにより、コンテナCはトロリ20の移動に応じて各位置に移動させられる。
【0020】
スプレッダ24には、振動検出器(コンテナ当接検出器)30が設けられている。この振動検出器30は、トロリ20から吊り下げられた吊下コンテナC1の下面一端がレーンR上に設置された設置コンテナC2の上面または地上に当接したときに発生する振動を検出できるようになっている。このように、振動検出器30をスプレッダ24に設け、振動発生源に近づけることにより、振動の検出を精度良く行うようになっている。
振動検出器30としては、傾斜計や加速時計が用いられる。
【0021】
振動検出器30には、図2に示すように、信号処理装置(コンテナ当接検出器)32が電気的に接続されている。信号処理装置32には、ハイパスフィルタ32aと、ハイパスフィルタ32aからの信号を処理する演算回路32bとが設けられている。ハイパスフィルタ32aは、吊下コンテナC1の当接時に発生する振動の周波数を選択的に検出できるように、例えば1Hz以上の振動を通過させるフィルタとなっている。演算回路32aは、ハイパスフィルタ32aからの出力の最大値と最小値の差(PP)と、設定値との比較が行われ、PPが設定値を超えている場合には、ランプ表示器34へランプ表示信号を出力する。
【0022】
信号処理装置32には、ランプ表示器34が電気的に接続されている。このランプ表示器34は、信号処理装置32からのランプ表示信号に基づいてランプが点灯するようになっている。ランプ表示器34は、運転室22内に設けられており、吊下コンテナC1の下面一端の当接がランプ表示器34の点灯によってオペレータが容易に確認できるようになっている。
【0023】
上記構成のクレーン1は、以下のように吊下コンテナC1の着床を行う。
トロリ20の下方に吊り下げられたスプレッダ24によって吊下コンテナC1を把持した状態で、上方から吊下コンテナを下降させていく。このとき、吊下コンテナC1は、トリムが与えられた状態で傾斜している。このように傾斜した状態で、吊下コンテナC1下面の左右いずれか一端(一辺)が設置コンテナC2上に当接される(図3参照)。
【0024】
この吊下コンテナC1の下面一端の当接は、振動検出器30及び信号処理装置32によって検出される。具体的には、図4に示すように、吊下コンテナC1の下面一端が当接すると、2Hz程度の上下方向の振動が発生し、この振動が振動検出器30によって検出される(ステップS1)。振動検出器30からの信号はハイパスフィルタ32aによって1Hz以下の周波数が除去され(ステップS2)、1Hz以上の高周波信号のみが出力される。出力された高周波信号は、演算回路32bによって0.5秒間(1周期に相当)の出力最大値と出力最小値との差(PP)を計算する(ステップS3)。その後、演算回路32bによって、PPが設定値であるしきい値以上か否かが判断される(ステップS4)。PPがしきい値よりも大きい場合には、ランプ表示器34へとランプ表示信号が送られ、ランプが点灯される(ステップS5)。
運転席22では、オペレータがランプ表示器34の点灯を確認し、吊下コンテナC1の下面一端が設置コンテナC2に当接したことを認識する。
そして、吊下コンテナC1を更に下降させて、吊下コンテナC1の下面全体を設置コンテナC2上面に載置し、着床を完了する。
【0025】
図5には、吊りコンテナC1の着床時の実験例が示されている。図5(a)は、スプレッダ24の巻高さと巻速度を時間に対して示したものである。横軸は時間を示し、一目盛が2秒に相当する。縦軸は、巻高さ及び巻速度を示す。同図(a)から、巻き高さが減少している時刻に対応して、巻速度の下降速度が与えられていることが分かる。
図5(b)には、振動検出器30に相当する傾斜計の生信号が示されている。横軸は時間を示し、図5(a)に対応した時刻となっている。同図(b)から、時刻t1において吊下コンテナC1が当接したことが分かる。
図5(c)には、傾斜計の信号にハイパスフィルタ32aを通した後の信号が示されている。同図(c)には、さらに、ハイパスフィルタ32a通過後の信号に対して演算回路32bによる処理を施した後に、ランプ表示器34のランプを点灯させるランプ表示信号と、着床信号とが示されている。この着床信号は、吊下コンテナC1の下面四隅の全てが設置コンテナC2上に当接したことをもって出力される信号である。同図(c)の横軸は時間を示し、図5(a)及び図5(b)に対応した時刻となっている。
同図(c)には、時刻t1で吊下コンテナC1の下面一端が当接した直後に、時刻t2でランプ表示信号が出力されることが示されている。そして、時刻t2から約0.7秒後に着床信号が出力されている。着床信号以降は、吊下コンテナC1が設置コンテナC2上に完全に着床した状態となっている。このように、ランプ表示信号は、吊下コンテナC1の下面一端が当接した直後に出力されるとともに、着床信号に先立って出力されることから、着床信号では得られない吊下コンテナC1の下面一端の当接をランプ表示によって検出できる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態のクレーン1によれば、振動検出器30によって吊下コンテナC1の下面一端の当接が認識できるので、オペレータの経験や勘に頼ることなく、吊下コンテナC1を確実に着床させることができる。これにより、正確な着床が実現でき、ひいては荷役効率の向上を実現することができる。
【0027】
なお、吊下コンテナC1の下面一端の当接の検出信号は、吊下コンテナC1の着床を自動で行う自動運転にも適用することができる。すなわち、吊下コンテナC1の下面一端の当接を検出した場合、吊下コンテナC1の水平方向への移動を禁止する制御を加える。このような制御を行うことにより、吊下コンテナC1が設置コンテナC2上に当接した状態で、吊下コンテナC1の位置決めを行うために吊下コンテナC1を水平方向へ移動させた場合、吊下コンテナC1と一緒に設置コンテナC2も水平方向へ引きずられて、段積みされた設置コンテナC2が転倒してしまうという事態を回避することができる。
自動運転によって吊下コンテナC1の位置決めを行う場合には、吊下コンテナC1を再び上昇させて当接状態を解除した後に、位置決めが行われる。
【0028】
以上説明した実施形態では、吊下コンテナC1を設置コンテナC2上に載置する場合について説明したが、本発明はこれには限定されず、吊下コンテナを地上に載置する場合にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のクレーンを示した斜視図である。
【図2】振動検出器からの出力信号の処理手段を示したブロック図である。
【図3】本発明のクレーンを示した側面図である。
【図4】振動検出器からの出力信号の処理を示したフローチャートである。
【図5】本発明の実験例を示した図である。
【符号の説明】
【0030】
1 クレーン
20 トロリ
24 スプレッダ(吊具)
30 振動検出器(コンテナ当接検出器)
C1(C) 吊下コンテナ
C2(C) 設置コンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロリから吊り下げられた吊下コンテナを、下方に設置された設置コンテナの上面または地上に載置するクレーンにおいて、
前記吊下コンテナの下面の一端が前記設置コンテナまたは地上に当接したことを検知するコンテナ当接検出器を備えていることを特徴とするクレーン。
【請求項2】
前記コンテナ当接検出器は、振動検出器とされるとともに、前記吊下コンテナを把持する吊具に設けられていることを特徴とする請求項1記載のクレーン。
【請求項3】
前記コンテナ当接検出器が前記吊下コンテナの前記設置コンテナに対する当接を検出した場合、該吊下コンテナの水平方向への移動を禁止することを特徴とする請求項1又は2に記載のクレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−145444(P2007−145444A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−338578(P2005−338578)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】