説明

クロック発生装置

【課題】PLL回路を使用し、より幅広い環境変動に適応して周波数を一定値にロックすることのできるクロック発生装置を得る。
【解決手段】クロック発生装置200は、基本的に同一構成で共にLC型VCOを備えた第1および第2のPLL回路201、202を備えている。マスタ側の第1のPLL回路201の第1のVCO2241に加わる第1の制御電圧2281は基準電圧検出回路212で3つの固定値と比較され、その結果に応じて第2のPLL回路202の容量スイッチ247、257の値を調整しておいて、出力セレクタ207で第1のPLL回路201から第2のPLL回路202にクロックの選択を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロック発生装置に係わり、特にLC型のVCOを使用したクロック発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
VCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)は、電圧によって発振周波数を制御する発振器であり、PLL(Phase Locked Loop)回路の構成部品として使用されることが多い。VCO発振周波数制御回路は、このVCOの発振周波数を制御する回路である。
【0003】
LC型VCOは、共振素子として可変容量とコイルを用いて構成した回路であり、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタを用いて構成することができる。LC型VCOは可変容量の調整幅が非常に小さい。このため、このようなLC型VCOは、複数の容量を用意しておき、これらをスイッチで選択できるような構成を採っている(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
図11は、従来提案されたこのようなLC型VCOの一例を表わしたものである。LC型VCO100は、図示しないPLL回路のローパスフィルタから入力される制御電圧101を印加される第1および第2の可変容量素子102、103と、これら第1および第2の可変容量素子102、103からなる直列回路に並列に接続されたインダクタ104と、このインダクタ104の両端に接続され、PMOS(Positive-channel Metal-Oxide Semiconductor)トランジスタ105とNMOS(Negative-channel Metal-Oxide Semiconductor)トランジスタ106の組み合わせと、PMOSトランジスタ107とNMOSトランジスタ108の組み合わせからなるインバータ回路と、このインバータ回路を構成するPMOSトランジスタ105とNMOSトランジスタ106の接続点とアースの間ならびにPMOSトランジスタ107とNMOSトランジスタ108の接続点とアースの間とに並列に接続された複数組の容量111〜116およびスイッチ117〜122の接点との直列回路からなる容量アレイによって構成されている。
【0005】
容量アレイを構成する各スイッチ117〜122には、コード情報123が供給されるようになっている。このコード情報に対応してスイッチ117〜122がオンまたはオフ状態に設定されることで、容量アレイとしての容量が所望の値に設定されるようになっている。そして、制御電圧101の値と、複数組の容量111〜116およびスイッチ117〜122の直列回路からなる容量アレイによる容量の設定によって、第2の可変容量素子103とインダクタ104の接続点から所定の発振周波数の信号125が出力されることになる。
【0006】
図12は、このようなLC型VCOにおける各コード情報が与えられた場合の発振周波数と制御電圧との関係を表わしたものである。この図で複数の平行な直線は設定されるそれぞれの容量に対応したコード情報1310〜131mを表わしている。一例としては、コード情報131nが与えられて容量アレイがこれに対応する容量に設定されると、制御電圧101が最小電圧Vminから最大電圧Vmaxまで変更されるとき、信号125の発振周波数Fは、最小周波数Fnminから最大周波数Fnmaxまで変動することになる。
【0007】
したがって、図11に示したLC型VCOから出力される信号125の発振周波数の所望の値を仮に周波数Fであるとすると、制御電圧101が最小電圧Vminから最大電圧Vmaxまで変更されるときの中間の電圧VMで周波数Fが発振されるようなコード情報131を外部から与えて、容量アレイによる容量の設定を行っておく必要がある。この例では、コード情報131nが与えられたときに、中間の電圧VMで周波数Fが得られるので、周波数Fに対して十分なマージンが得られることになる。
【特許文献1】特開2005−318509号公報(第0081段落、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このようにコード情報131の選択によってLC型VCO100の特性を十分なマージンが得られるように設定しても、その後の環境変化によって、その特性が大きく変化してしまう場合がある。
【0009】
図13は、環境変化によってLC型VCOの特性が変化した場合の一例を示したものである。コード情報131nで与えられる容量アレイによる容量の設定による特性が、その後の環境変化141によって破線142で示すように変化したとする。そうすると、今までは制御電圧101を調整することで所望の周波数F1を得ることができたのに、制御電圧101を最小電圧Vminから最大電圧Vmaxまで変化させても、その周波数F1を得ることができなくなる。すなわち、PLL回路は、このLC型VCO100で信号125を所望の周波数Fに維持することができなくなる。
【0010】
図11に示したLC型VCO100では、所望の周波数Fの出力を安定化させるために、最小電圧Vminと最大電圧Vmaxの中間の電圧VMで所望の周波数Fが得られるようにコード情報1310〜131mを初期的に選択することを提案している。しかしながら、近年、クロックサイクルが一段と高速化しており、初期的に選択したコード情報に対して十分なマージンが得られることで、環境変化に対して安定したクロックを発振させる要請が強い。
【0011】
そこで本発明の目的は、PLL回路を使用し、より幅広い環境変動に適応して周波数を一定値にロックすることのできるクロック発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明では、(イ)容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の制御電圧を発生させるマスタ側PLL回路と、(ロ)容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の前記した信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の制御電圧を発生させるスレーブ側PLL回路と、(ハ)マスタ側PLL回路の制御電圧を検出する制御電圧検出手段と、(ニ)この制御電圧検出手段が制御電圧として採り得る任意の電圧としての第1の電圧以上の電圧を検出したとき、この第1の電圧よりも低い電圧で同一の周波数のクロックを発生できるようにスレーブ側PLL回路の容量スイッチの設定を変更させるスレーブ側PLL回路制御手段と、(ホ)初期的にマスタ側PLL回路の電圧制御発振器の出力を選択し、制御電圧検出手段が第1の電圧よりも高く制御電圧の上限値よりも低い予め定めた第2の電圧を検出したとき、スレーブ側PLL回路の電圧制御発振器の出力を選択してクロックを出力するクロック選択手段とをクロック発生装置に具備させる。
【0013】
すなわち本発明では、マスタ側PLL回路とスレーブ側PLL回路という基本的に同一の回路構成のPLL回路を用意しておき、初期的にはマスタ側PLL回路から出力されるクロックをクロック選択手段が選択して出力している。制御電圧検出手段はマスタ側PLL回路の電圧制御発振器に入力される制御電圧を検出するようになっており、制御電圧として採り得る任意の電圧としての第1の電圧以上の電圧を検出したとき、スレーブ側PLL回路制御手段はこの第1の電圧よりも低い電圧で同一の周波数のクロックを発生できるようにスレーブ側PLL回路の容量スイッチの設定を変更させるようになっている。そして、この後、制御電圧検出手段が第1の電圧よりも高く制御電圧の上限値よりも低い予め定めた第2の電圧を検出したとき、クロック選択手段はスレーブ側PLL回路の電圧制御発振器の出力を選択してクロックを出力するようにして、より幅広い環境変動に適応して周波数を一定値にロックできるようにしている。
【0014】
請求項2記載の発明では、(イ)容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の制御電圧を発生させるマスタ側PLL回路と、(ロ)容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の前記した信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の制御電圧を発生させるスレーブ側PLL回路と、(ハ)マスタ側PLL回路の制御電圧を検出する制御電圧検出手段と、(ニ)この制御電圧検出手段が制御電圧として採り得る任意の電圧としての第1の電圧以下の電圧を検出したとき、この第1の電圧よりも高い電圧で同一の周波数のクロックを発生できるようにスレーブ側PLL回路の容量スイッチの設定を変更させるスレーブ側PLL回路制御手段と、(ホ)初期的にマスタ側PLL回路の電圧制御発振器の出力を選択し、制御電圧検出手段が第1の電圧よりも低く制御電圧の下限値よりも高い予め定めた第3の電圧を検出したとき、スレーブ側PLL回路の電圧制御発振器の出力を選択してクロックを出力するクロック選択手段とをクロック発生装置に具備させる。
【0015】
すなわち本発明では、マスタ側PLL回路とスレーブ側PLL回路という基本的に同一の回路構成のPLL回路を用意しておき、初期的にはマスタ側PLL回路から出力されるクロックをクロック選択手段が選択して出力している。制御電圧検出手段はマスタ側PLL回路の電圧制御発振器に入力される制御電圧を検出するようになっており、制御電圧として採り得る任意の電圧としての第1の電圧以下の電圧を検出したとき、スレーブ側PLL回路制御手段はこの第1の電圧よりも高い電圧で同一の周波数のクロックを発生できるようにスレーブ側PLL回路の容量スイッチの設定を変更させるようになっている。そして、この後、制御電圧検出手段が第1の電圧よりも低く制御電圧の下限値よりも高い予め定めた第3の電圧を検出したとき、クロック選択手段はスレーブ側PLL回路の電圧制御発振器の出力を選択してクロックを出力するようにして、より幅広い環境変動に適応して周波数を一定値にロックできるようにしている。
【0016】
請求項3記載の発明では、(イ)容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の制御電圧を発生させるマスタ側PLL回路と、(ロ)容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の前記した信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の制御電圧を発生させるスレーブ側PLL回路と、(ハ)マスタ側PLL回路の制御電圧を検出する制御電圧検出手段と、(ニ)この制御電圧検出手段が制御電圧として採り得る任意の電圧としての第1の電圧以上の電圧を検出したとき、この第1の電圧よりも低い電圧で同一の周波数のクロックを発生できるようにスレーブ側PLL回路の容量スイッチの設定を変更させると共に、制御電圧検出手段が第1の電圧未満の電圧を検出したとき、この第1の電圧よりも高い電圧で同一の周波数のクロックを発生できるようにスレーブ側PLL回路の容量スイッチの設定を変更させるスレーブ側PLL回路制御手段と、(ホ)初期的にマスタ側PLL回路の電圧制御発振器の出力を選択し、制御電圧検出手段が第1の電圧よりも高く制御電圧の上限値よりも低い予め定めた第2の電圧あるいは第1の電圧よりも低く制御電圧の下限値よりも高い予め定めた第3の電圧を検出したとき、スレーブ側PLL回路の電圧制御発振器の出力を選択してクロックを出力するクロック選択手段とをクロック発生装置に具備させる。
【0017】
すなわち本発明では、請求項1記載の発明と請求項2記載の発明を組み合わせて、制御電圧検出手段が第1の電圧以上の電圧を検出したときと第1の電圧未満の電圧を検出したときでスレーブ側PLL回路の対応する領域を違わせている。これにより、請求項1記載の発明や請求項2記載の発明単独の場合よりも幅広い環境変動に適応して周波数を一定値にロックできるようにしている。
【0018】
請求項4記載の発明では、(イ)容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の制御電圧を発生させるマスタ側PLL回路と、(ロ)容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の前記した信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の制御電圧を発生させるスレーブ側PLL回路と、(ハ)マスタ側PLL回路の制御電圧を検出する制御電圧検出手段と、(ニ)この制御電圧検出手段が制御電圧として採り得る任意の電圧としての第1の電圧以上の電圧を検出したとき、この第1の電圧よりも低い電圧で同一の周波数のクロックを発生できるようにスレーブ側PLL回路の容量スイッチの設定を変更させるスレーブ側PLL回路制御手段と、(ホ)初期的にマスタ側PLL回路の電圧制御発振器の出力を選択し、スレーブ側PLL回路制御手段によってスレーブ側PLL回路の容量スイッチの設定の変更が行われた後の所定の時点で、このスレーブ側PLL回路の電圧制御発振器の出力を選択してクロックを出力するクロック選択手段とをクロック発生装置に具備させる。
【0019】
すなわち本発明では、マスタ側PLL回路とスレーブ側PLL回路という基本的に同一の回路構成のPLL回路を用意しておき、初期的にはマスタ側PLL回路から出力されるクロックをクロック選択手段が選択して出力している。制御電圧検出手段はマスタ側PLL回路の電圧制御発振器に入力される制御電圧を検出するようになっており、制御電圧として採り得る任意の電圧としての第1の電圧以上の電圧を検出したとき、スレーブ側PLL回路制御手段はこの第1の電圧よりも低い電圧で同一の周波数のクロックを発生できるようにスレーブ側PLL回路の容量スイッチの設定を変更させるようになっている。そして、この後、クロック選択手段は、スレーブ側PLL回路制御手段によってスレーブ側PLL回路の容量スイッチの設定の変更が行われた後の所定の時点で、このスレーブ側PLL回路の電圧制御発振器の出力を選択してクロックを出力するようにしている。これによっても、より幅広い環境変動に適応して周波数を一定値にロックできる。
【0020】
請求項5記載の発明では、(イ)容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の制御電圧を発生させるマスタ側PLL回路と、(ロ)容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の前記した信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の制御電圧を発生させるスレーブ側PLL回路と、(ハ)マスタ側PLL回路の制御電圧を検出する制御電圧検出手段と、(ニ)この制御電圧検出手段が制御電圧として採り得る任意の電圧としての第1の電圧以下の電圧を検出したとき、この第1の電圧よりも高い電圧で同一の周波数のクロックを発生できるようにスレーブ側PLL回路の容量スイッチの設定を変更させるスレーブ側PLL回路制御手段と、(ホ)初期的にマスタ側PLL回路の電圧制御発振器の出力を選択し、スレーブ側PLL回路制御手段によってスレーブ側PLL回路の容量スイッチの設定の変更が行われた後の所定の時点で、このスレーブ側PLL回路の電圧制御発振器の出力を選択してクロックを出力するクロック選択手段とをクロック発生装置に具備させる。
【0021】
すなわち本発明では、マスタ側PLL回路とスレーブ側PLL回路という基本的に同一の回路構成のPLL回路を用意しておき、初期的にはマスタ側PLL回路から出力されるクロックをクロック選択手段が選択して出力している。制御電圧検出手段はマスタ側PLL回路の電圧制御発振器に入力される制御電圧を検出するようになっており、制御電圧として採り得る任意の電圧としての第1の電圧以下の電圧を検出したとき、スレーブ側PLL回路制御手段はこの第1の電圧よりも高い電圧で同一の周波数のクロックを発生できるようにスレーブ側PLL回路の容量スイッチの設定を変更させるようになっている。そして、この後、クロック選択手段は、スレーブ側PLL回路制御手段によってスレーブ側PLL回路の容量スイッチの設定の変更が行われた後の所定の時点で、このスレーブ側PLL回路の電圧制御発振器の出力を選択してクロックを出力するようにしている。これによっても、より幅広い環境変動に適応して周波数を一定値にロックできる。
【0022】
請求項6記載の発明では、(イ)容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の制御電圧を発生させるマスタ側PLL回路と、(ロ)容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の前記した信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の制御電圧を発生させるスレーブ側PLL回路と、(ハ)マスタ側PLL回路の制御電圧を検出する制御電圧検出手段と、(ニ)この制御電圧検出手段が制御電圧として採り得る任意の電圧としての第1の電圧以上の電圧を検出したとき、この第1の電圧よりも低い電圧で同一の周波数のクロックを発生できるようにスレーブ側PLL回路の容量スイッチの設定を変更させると共に、制御電圧検出手段が第1の電圧以下の電圧を検出したとき、この第1の電圧よりも高い電圧で同一の周波数のクロックを発生できるようにスレーブ側PLL回路の容量スイッチの設定を変更させるスレーブ側PLL回路制御手段と、(ホ)初期的にマスタ側PLL回路の電圧制御発振器の出力を選択し、スレーブ側PLL回路制御手段によってスレーブ側PLL回路の容量スイッチの設定の変更が行われた後の所定の時点で、このスレーブ側PLL回路の電圧制御発振器の出力を選択してクロックを出力するクロック選択手段とをクロック発生装置に具備させる。
【0023】
すなわち本発明では、請求項4記載の発明と請求項5記載の発明を組み合わせて、制御電圧検出手段が第1の電圧以上の電圧を検出したときと第1の電圧未満の電圧を検出したときでスレーブ側PLL回路の対応する領域を違わせている。これにより、請求項1記載の発明や請求項2記載の発明単独の場合よりも幅広い環境変動に適応して周波数を一定値にロックできるようにしている。
【0024】
以上の発明でスレーブ側PLL回路制御手段は、コード情報を用いて容量スイッチの設定を変更させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明によれば、PLL回路から出力されるクロックのロック状態をより広範囲な環境変化に対して維持することが可能になるので、PLL回路を用いたシステムの高性能化や高信頼性化が可能になる。また、クロック発生装置は同様の回路構成の2つのPLL回路を使用するので、コストアップを最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下実施例につき本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明の一実施例におけるVCO発振周波数制御回路を使用したクロック発生装置の構成を表わしたものである。このクロック発生装置200は、第1および第2のPLL回路201、202を備えており、それぞれに基準クロック203が供給されるようになっている。また、第1のPLL回路201の出力する第1のクロック205と、第2のPLL回路202の出力する第2のクロック206は、出力セレクタ207に入力されるようになっている。出力セレクタ207は、VCO制御回路208から供給される選択信号209によって第1のクロック205と第2のクロック206のいずれかを選択し、出力クロック211として出力するようになっている。ここで第1のPLL回路201はマスタ側の回路となっており、初期的にそのクロック205が出力クロック211として採用されている。環境変動によって第1のクロック205が所望の周波数を維持できないようになると、スレーブ側の第2のPLL回路202の出力する第2のクロック206が出力セレクタ207によって選択されるようになっている。
【0028】
クロック発生装置200には、以上の回路の他に基準電圧検出回路212が設けられている。基準電圧検出回路212は、クロック発生装置200の外部から電圧VH、VM、VLの3種類の基準電圧信号213H、213M、213Lを入力すると共にマスタ側の第1のPLL回路201の出力するチャージポンプ出力214を入力して、VCO制御回路208にその制御のための選択出力215と比較出力216を与えるようになっている。VCO制御回路208は、初期設定コード217の供給を受け、選択信号209を出力セレクタ207に出力すると共に、第1および第2のPLL回路201、202に第1および第2のコード情報218、219のうちの対応するものを供給するようになっている。第1および第2のコード情報218、219は、それぞれmビット(mは任意の正の整数)の調整値のコード[m−1:0]で構成されている。
【0029】
このようなクロック発生装置200で、第1のPLL回路201は、基準クロック203を入力する第1の位相比較器(PFD)2211と、第1のチャージポンプ(CP)2221と、第1のループフィルタ2231と、第1のVCO2241および第1のディバイダ(DIV)2251によって構成されている。ここで第1の位相比較器2211は、基準クロック203と第1のディバイダ2251の出力するクロック2261との位相差を検出するようになっている。電流源としての第1のチャージポンプ2221に接続された第1のループフィルタ2231は、この第1の検出出力2271の交流成分をカットして直流に変換し、第1のVCO2241は変換後の直流電圧としての第1の制御電圧2281に応じた周波数の第1のクロック205を出力することになる。
【0030】
一方、第2のPLL回路202は、基準クロック203を入力する第2の位相比較器2212と、第2のチャージポンプ2222と、第2のループフィルタ2232と、第2のVCO2242および第2のディバイダ2252によって構成されている。ここで第2の位相比較器2212は、基準クロック203と第2のディバイダ2252の出力するクロック2262との位相差を検出するようになっている。電流源としての第2のチャージポンプ2222に接続された第2のループフィルタ2232は、この第2の検出出力2272を直流に変換し、第2のVCO2242は変換後の直流電圧としての第2の制御電圧2282に応じた周波数の第2のクロック206を出力することになる。
【0031】
なお、第1のPLL回路201における第1のチャージポンプ2221のチャージポンプ出力214が基準電圧検出回路212に入力されるようになっている。また、VCO制御回路208の第1のコード情報218が第1のPLL回路201の第1のVCO2241に供給され、第2のコード情報219が第2のPLL回路202の第2のVCO2242に供給されるようになっている。
【0032】
図2は、第1のPLL回路に使用されている第1のVCOの具体的な回路構成を表わしたものである。なお、図1に示した第2のVCO2242は、この第1のVCO2241と回路構成が同一なので、その説明は省略する。
【0033】
第1のVCO2241は、図1に示した第1のループフィルタ2231の出力としての第1の制御電圧2281を印加される第1および第2の可変容量素子231、232と、これら第1および第2の可変容量素子231、232からなる直列回路に並列に接続されたインダクタ233と、このインダクタ233の両端に接続され、PMOSトランジスタ235とNMOSトランジスタ236の組み合わせと、PMOSトランジスタ237とNMOSトランジスタ238の組み合わせからなるインバータ回路と、このインバータ回路を構成するPMOSトランジスタ235とNMOSトランジスタ236の接続点と図示しないアースの間に並列に接続された複数組の容量241〜243およびスイッチ244〜246の接点との直列回路からなる第1の容量スイッチ247と、同じくインバータ回路を構成するPMOSトランジスタ237とNMOSトランジスタ238の接続点と図示しないアースの間に並列に接続された複数組の容量251〜253およびスイッチ254〜256の接点との直列回路からなる第2の容量スイッチ257によって構成されている。
【0034】
第1の容量スイッチ247のスイッチ244〜246と、第2の容量スイッチ257のスイッチ254〜256は、第1のコード情報218が供給されており、これに応じてこれらの接点がオンまたはオフに設定される。これにより第1および第2の容量スイッチ247、257の容量が調整され、所望の発振周波数が設定されるようになっている。
【0035】
図3は、図1に示した基準電圧検出回路の構成を具体的に表わしたものである。基準電圧検出回路212は、第1〜第3のアナログ電圧比較回路261〜263を備えている。これら第1〜第3のアナログ電圧比較回路261〜263の一方の入力端子IN+、IN−、IN+には、第1の制御電圧端子264から第1の制御電圧2281が入力されるようになっている。また、第1のアナログ電圧比較回路261の他方の入力端子IN−には、VH基準電圧入力端子265から基準電圧信号213Hが入力され、第2のアナログ電圧比較回路262の他方の入力端子IN−には、VL基準電圧入力端子266から基準電圧信号213Lが入力され、第3のアナログ電圧比較回路263の他方の入力端子IN−には、VM基準電圧入力端子267から基準電圧信号213Mが入力されるようになっている。
【0036】
このうち第1のアナログ電圧比較回路261の比較結果268は選択回路271の一方の入力端子に入力され、第2のアナログ電圧比較回路262の比較結果269は選択回路271の他方の入力端子に入力される。第3のアナログ電圧比較回路263の比較出力216は、比較出力端子272から図1に示したVCO制御回路208に入力されると共に、選択回路271に選択のための制御信号として入力されるようになっている。選択回路271は比較出力216の内容に応じて選択出力215を出力する。この選択出力215は、選択出力端子273を経由して図1に示したVCO制御回路208に入力されることになる。
【0037】
このような基準電圧検出回路212の動作を説明する。第1のアナログ電圧比較回路261は、高い電圧レベルの基準電圧信号213Hを第1の制御電圧2281と比較する。そして、第1の制御電圧2281の方が基準電圧信号213Hよりも高ければ、比較結果268をH(ハイ)レベルとする。これ以外の場合、すなわち第1の制御電圧2281が基準電圧信号213H以下であれば、比較結果268をL(ロー)レベルとする。
【0038】
第2のアナログ電圧比較回路262は、低い電圧レベルの基準電圧信号213Lを第1の制御電圧2281と比較する。そして、第1の制御電圧2281の方が基準電圧信号213Lよりも低ければ、比較結果269をHレベルとする。これ以外の場合、すなわち第1の制御電圧2281が213L以上であれば、比較結果268をLレベルとする。
【0039】
第3のアナログ電圧比較回路263は、中間の電圧レベルの基準電圧信号213Mを第1の制御電圧2281と比較する。そして、第1の制御電圧2281の方が基準電圧信号213Mよりも高ければ、比較出力216をHレベルとする。これ以外の場合、すなわち第1の制御電圧2281が基準電圧信号213M以下であれば、比較出力216をLレベルとする。
【0040】
選択回路271は、第3のアナログ電圧比較回路263の比較出力216がHレベルのときには比較結果268を選択し、これを選択出力215とする。これに対して、第3のアナログ電圧比較回路263の比較出力216がLレベルのときには比較結果269を選択、これを選択出力215とする。
【0041】
図4は、図1に示したVCO制御回路の具体的な構成を表わしたものである。VCO制御回路208は、初期設定コード217入力端子281から入力された初期設定コード217を増加回路282および減少回路283に入力すると共に、第1のコード情報218として第1のコード情報出力端子284に供給するようになっている。増加回路282は、入力された初期設定コード217としての[Code0]に「1」を加算して、出力ノ−ド[Code+]として選択回路286の一方の入力端子に供給するようになっている。これに対して減少回路283は、、入力された初期設定コード217としての[Code0]から「1」を減算して、出力ノ−ド[Code−]として選択回路286の他方の入力端子に供給するようになっている。
【0042】
選択回路286は、比較入力端子287から比較出力216を入力して、これを出力ノ−ド[Code+]と出力ノ−ド[Code−]の選択に使用するようになっている。選択回路286の出力は、第2のコード情報219として第2のコード情報出力端子288に入力される。また、選択出力入力端子289から入力される選択出力215は、そのまま選択信号209として選択出力出力端子291に入力されるようになっている。
【0043】
このような構成のVCO制御回路208で選択回路286は、図3の基準電圧検出回路212から出力される比較出力216がHレベルのとき、増加回路282から出力される出力ノ−ド[Code+]を第2のコード情報219として出力する。また、選択回路286は、この比較出力216がLレベルのときには、減少回路283から出力される出力ノ−ド[Code−]を第2のコード情報219として出力する。
【0044】
なお、図3あるいは図4で説明した第1〜第3のアナログ電圧比較回路261〜263、選択回路271、286、増加回路282および減少回路283は、当業者によく知られた回路である。したがって、これらの回路の詳細な説明は省略する。
【0045】
図5は、環境変動によって第1の制御電圧が高くなった場合のクロック発生装置の動作を説明するためのものである。図1〜図4と共に説明する。本実施例のクロック発生装置200では、第1のPLL回路201がマスタ側の回路として初期的に選択されている。したがって、すでに説明した通り、出力セレクタ207は初期的に第1のPLL回路201から出力される第1のクロック205を選択して、出力クロック211として出力する。
【0046】
図5(a)に示した右肩上がりの直線は、この環境変化に基づいて第1の制御電圧2281が徐々に上昇している様子を表わしている。このように第1の制御電圧2281が徐々に上昇したとする。すると、時刻t1に第1の制御電圧2281が図3に示した基準電圧信号213Mの電圧VMよりも高レベルとなる。これにより、図5(b)に示した比較出力216がLレベルからHレベルに変化する。
【0047】
このとき初期設定コード217の値が任意の整数「n」であったとする。基準電圧検出回路212における第3のアナログ電圧比較回路263の比較出力216は、VCO制御回路208に入力されて選択回路286に切り替えのための制御信号として供給されている。比較出力216が前記したようにHレベルのとき、増加回路282から出力される出力ノ−ド[Code+]が第2のコード情報219として出力される。したがって、第2のコード情報219は、初期設定コード217の値「n」が「1」加算された「n+1」になる。
【0048】
この第2のコード情報219は第2のPLL回路202の第2のVCO2242に供給される。これにより、第2のVCO2242では、第1の制御電圧2281の上昇に対応して図2の第1の容量スイッチ247および第2の容量スイッチ257に相当する回路部分の容量の調整が行われる。このとき、VCO制御回路208から第1のPLL回路201に対して出力される第1のコード情報218は、増加回路282や減少回路283による変更を受けない。したがって、現在、出力クロック211を出力している第1のPLL回路201については初期設定コード217の値「n」がそのまま伝達されるので、図2の第1の容量スイッチ247および第2の容量スイッチ257自体の容量の調整は行われない。
【0049】
この後の時刻t2に、図5(a)に示すように、第1の制御電圧2281が図3に示した基準電圧信号213Hの電圧VHよりも高レベルとなったとする。すると、第1のアナログ電圧比較回路261の比較結果268が図5(c)に示すように時刻t2にLレベルからHレベルに変化する。このとき、図5(d)に示すように第2のアナログ電圧比較回路262の比較結果269はLレベルのままであり、図3に示した第3のアナログ電圧比較回路263の比較出力216はHレベルになっている。
【0050】
したがって、基準電圧検出回路212の選択回路271は比較結果268を選択し、これを選択出力215としてVCO制御回路208に送出する。VCO制御回路208はこれを選択信号209(図5(e))として選択出力出力端子291を経由して図1の出力セレクタ207に入力する。この結果、この時点から出力セレクタ207はそれまでの第1のPLL回路201の第1のクロック205の代わりに第2のPLL回路202の第2のクロック209を選択して、出力クロック211として出力することになる。
【0051】
以上のように、環境変化に基づいて第1の制御電圧2281が基準電圧信号213Hの電圧VHよりも高レベルになると、第1のPLL回路201から第2のPLL回路202に出力の切り替えが行われる。第2のPLL回路202は、第1の制御電圧2281の上昇したことの情報を事前に受けて対応する調整をすでに行っている。このため、環境変化に基づく第1の制御電圧2281の上昇に十分対応できることになる。
【0052】
図6および図7は、図5で説明したように第1の制御電圧の電圧レベルが上昇していったときの第1の制御電圧と第2の制御電圧の関係を示したものである。これらの図では、第1のPLL回路201による第1の制御電圧2281を実線で、第2のPLL回路202による第2の制御電圧2282を破線で示している。
【0053】
このうち図6では、第1の制御電圧2281のレベルが、所望の周波数F1を得ることのできる状態で電圧VMと電圧VHの間にある。この状態のとき、第2のPLL回路202では、第1のPLL回路201のコード情報[n]が「1」だけ加算されたコード情報[n+1]に変化しており、第2の制御電圧2282の電圧レベルは、所望の周波数F1を得る状態で電圧VMよりも低い状態にある。このように第2のPLL回路202は、環境の変化に対応できるような準備を行っている。
【0054】
一方、図7に示したように第1の制御電圧2281のレベルが、所望の周波数F1を得ることのできる状態で電圧VHを超えたときには、図1に示す第2のPLL回路202側の出力する第2のクロック206が出力セレクタ207で選択され、出力クロック211として出力される。このようにして、本実施例のクロック発生装置200は第1の制御電圧2281が高くなる場合の環境変動により柔軟に対応できることになる。
【0055】
図8は、以上説明したのとは逆に、環境変動によって第1の制御電圧が低くなった場合のクロック発生装置の動作を説明するためのものである。図1〜図4と共に説明する。この場合にも、図1に示したクロック発生装置200で第1のPLL回路201がマスタ側の回路として初期的に選択されている。したがって、すでに説明した通り、出力セレクタ207は初期的に第1のPLL回路201から出力される第1のクロック205を選択して、出力クロック211として出力している。
【0056】
図8(a)に示した右肩下がりの直線は、この環境変化に基づいて第1の制御電圧2281が徐々に下降している様子を表わしている。このように第1の制御電圧2281が徐々に下降したとする。すると、時刻t3に第1の制御電圧2281が図3に示した基準電圧信号213Mの電圧VMよりも低レベルとなる。これにより、図8(b)に示した比較出力216がHレベルからLレベルに変化する。
【0057】
このとき初期設定コード217の値が任意の整数「n」であったとする。基準電圧検出回路212における第3のアナログ電圧比較回路263の比較出力216は、VCO制御回路208に入力されて選択回路286に切り替えのための制御信号として供給されている。比較出力216が前記したようにLレベルのとき、減少回路283から出力される出力ノ−ド[Code−]が第2のコード情報219として出力される。したがって、第2のコード情報219は、初期設定コード217の値「n」が「1」減算された「n−1」になる。
【0058】
この第2のコード情報219は第2のPLL回路202の第2のVCO2242に供給される。これにより、第2のVCO2242では、第1の制御電圧2281の下降に対応して図2の第1の容量スイッチ247および第2の容量スイッチ257に相当する回路部分の容量の調整が行われる。このとき、VCO制御回路208から第1のPLL回路201に対して出力される第1のコード情報218は、増加回路282や減少回路283による変更を受けない。したがって、現在、出力クロック211を出力している第1のPLL回路201については初期設定コード217の値「n」がそのまま伝達されるので、図2の第1の容量スイッチ247および第2の容量スイッチ257自体の容量の調整は行われない。
【0059】
この後の時刻t4に、図8(a)に示すように、第1の制御電圧2281が図3に示した基準電圧信号213Lの電圧VLよりもたか低レベルとなったとする。すると、第2のアナログ電圧比較回路262の比較結果269が図8(d)に示すように時刻t4にLレベルからHレベルに変化する。このとき、図8(c)に示すように第1のアナログ電圧比較回路261の比較結果268はLレベルのままであり、図3に示した第3のアナログ電圧比較回路263の比較出力216はLレベルになっている。
【0060】
したがって、基準電圧検出回路212の選択回路271は比較結果269を選択し、これを選択出力215としてVCO制御回路208に送出する。VCO制御回路208はこれを選択信号209(図8(e))として選択出力出力端子291を経由して図1の出力セレクタ207に入力する。この結果、この時点から出力セレクタ207はそれまでの第1のPLL回路201の第1のクロック205の代わりに第2のPLL回路202の第2のクロック209を選択して、出力クロック211として出力することになる。
【0061】
以上のように、環境変化に基づいて第1の制御電圧2281が基準電圧信号213Lの電圧VLよりも低レベルになると、第1のPLL回路201から第2のPLL回路202に出力の切り替えが行われる。第2のPLL回路202は、第1の制御電圧2281の下降したことの情報を事前に受けて対応する調整をすでに行っている。このため、環境変化に基づく第1の制御電圧2281の下降に十分対応できることになる。
【0062】
図9および図10は、図8で説明したように第1の制御電圧の電圧レベルが下降していったときの第1の制御電圧と第2の制御電圧の関係を示したものである。これらの図では、図6および図7と同様に、第1のPLL回路201による第1の制御電圧2281を実線で、第2のPLL回路202による第2の制御電圧2282を破線で示している。
【0063】
このうち図9では、第1の制御電圧2281のレベルが、所望の周波数F1を得ることのできる状態で電圧VMと電圧VLの間にある。この状態のとき、第2のPLL回路202では、第1のPLL回路201のコード情報[n]が「1」だけ減算されたコード情報[n−1]に変化しており、第2の制御電圧2282の電圧レベルは、所望の周波数F1を得る状態で電圧VMよりも高い状態にある。このように第2のPLL回路202は、環境の変化に対応できるような準備を行っている。
【0064】
一方、図10に示したように第1の制御電圧2281のレベルが、所望の周波数F1を得ることのできる状態で電圧VLを下回ったときには、図1に示す第2のPLL回路202側の出力する第2のクロック206が出力セレクタ207で選択され、出力クロック211として出力される。このようにして、本実施例のクロック発生装置200は第1の制御電圧2281が低くなる場合の環境変動により柔軟に対応できることになる。
【0065】
しかも本実施例のクロック発生装置200は、環境変動の方向に応じて第2のPLL回路202側の容量調整のためのコード情報の値を加算したり減算することにしたので、2つのPLL回路が予め固定的な範囲で用意されている場合と異なり、環境変動に広範囲に応えることができる。
【0066】
なお、実施例では基準となる電圧を3つ設定しておき、これを用いてマスタとしての第1のPLL回路201からスレーブとしての第2のPLL回路202への容量の変更の指示と出力するクロックの切り替えを行うことにしたが、これに限定されるものではない。要は、ある時点で第1のPLL回路201の状態に応じて第2のPLL回路202への容量の変更の指示をして、容量の変更が行われた後以降に第2のPLL回路202の出力するクロックに切り替えればよい。したがって、容量の変更の指示をしてからある程度時間が経った場合には、更に電圧が一歩進んだ段階にあることをチェックせずに第2のPLL回路202の出力するクロックに切り替えてもよい。
【0067】
また、実施例では環境変動によってコード情報の値を増加させる場合と減少させる場合の双方に対応するようにしたが、増加あるいは減少の一方であることが明らかな場合には、一方向の制御にのみ対応させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施例におけるVCO発振周波数制御回路を使用したクロック発生装置のブロック図である。
【図2】本実施例の第1のPLL回路に使用されている第1のVCOの具体的な回路構成を表わした回路図である。
【図3】図1に示した基準電圧検出回路の構成を具体的に表わした回路図である。
【図4】図1に示したVCO制御回路の具体的な構成を表わした回路図である。
【図5】本実施例で環境変動によって第1の制御電圧が高くなった場合のクロック発生装置の動作を示すタイミング図である。
【図6】本実施例で第1の制御電圧の電圧レベルが電圧VMよりも上昇したときの第1の制御電圧と第2の制御電圧の関係を示した説明図である。
【図7】本実施例で第1の制御電圧の電圧レベルが電圧VHよりも上昇したときの第1の制御電圧と第2の制御電圧の関係を示した説明図である。
【図8】本実施例で環境変動によって第1の制御電圧が低くなった場合のクロック発生装置の動作を示すタイミング図である。
【図9】本実施例で第1の制御電圧の電圧レベルが電圧VMよりも下降したときの第1の制御電圧と第2の制御電圧の関係を示した説明図である。
【図10】本実施例で第1の制御電圧の電圧レベルが電圧VLよりも下降したときの第1の制御電圧と第2の制御電圧の関係を示した説明図である。
【図11】従来提案されたLC型VCOの一例を表わした回路図である。
【図12】LC型VCOにおける各コード情報が与えられた場合の発振周波数と制御電圧との関係を表わした特性図である。
【図13】環境変化によってLC型VCOの特性が変化した場合の一例を示した説明図である。
【符号の説明】
【0069】
200 クロック発生装置
201 第1のPLL回路
202 第2のPLL回路
207 出力セレクタ
208 VCO制御回路
212 基準電圧検出回路
2241 第1のVCO
2242 第2のVCO
2281 第1の制御電圧
247 第1の容量スイッチ
257 第2の容量スイッチ
261 第1のアナログ電圧比較回路
262 第2のアナログ電圧比較回路
271、286 選択回路
282 増加回路
283 減少回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の前記制御電圧を発生させるマスタ側PLL回路と、
容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の前記信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の前記制御電圧を発生させるスレーブ側PLL回路と、
前記マスタ側PLL回路の前記制御電圧を検出する制御電圧検出手段と、
この制御電圧検出手段が前記制御電圧として採り得る任意の電圧としての第1の電圧以上の電圧を検出したとき、この第1の電圧よりも低い電圧で同一の周波数のクロックを発生できるように前記スレーブ側PLL回路の前記容量スイッチの設定を変更させるスレーブ側PLL回路制御手段と、
初期的に前記マスタ側PLL回路の前記電圧制御発振器の出力を選択し、前記制御電圧検出手段が第1の電圧よりも高く制御電圧の上限値よりも低い予め定めた第2の電圧を検出したとき、前記スレーブ側PLL回路の前記電圧制御発振器の出力を選択してクロックを出力するクロック選択手段
とを具備することを特徴とするクロック発生装置。
【請求項2】
容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の前記制御電圧を発生させるマスタ側PLL回路と、
容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の前記信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の前記制御電圧を発生させるスレーブ側PLL回路と、
前記マスタ側PLL回路の前記制御電圧を検出する制御電圧検出手段と、
この制御電圧検出手段が前記制御電圧として採り得る任意の電圧としての第1の電圧以下の電圧を検出したとき、この第1の電圧よりも高い電圧で同一の周波数のクロックを発生できるように前記スレーブ側PLL回路の前記容量スイッチの設定を変更させるスレーブ側PLL回路制御手段と、
初期的に前記マスタ側PLL回路の前記電圧制御発振器の出力を選択し、前記制御電圧検出手段が第1の電圧よりも低く制御電圧の下限値よりも高い予め定めた第3の電圧を検出したとき、前記スレーブ側PLL回路の前記電圧制御発振器の出力を選択してクロックを出力するクロック選択手段
とを具備することを特徴とするクロック発生装置。
【請求項3】
容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の前記制御電圧を発生させるマスタ側PLL回路と、
容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の前記信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の前記制御電圧を発生させるスレーブ側PLL回路と、
前記マスタ側PLL回路の前記制御電圧を検出する制御電圧検出手段と、
この制御電圧検出手段が前記制御電圧として採り得る任意の電圧としての第1の電圧以上の電圧を検出したとき、この第1の電圧よりも低い電圧で同一の周波数のクロックを発生できるように前記スレーブ側PLL回路の前記容量スイッチの設定を変更させると共に、前記制御電圧検出手段が第1の電圧未満の電圧を検出したとき、この第1の電圧よりも高い電圧で同一の周波数のクロックを発生できるように前記スレーブ側PLL回路の前記容量スイッチの設定を変更させるスレーブ側PLL回路制御手段と、
初期的に前記マスタ側PLL回路の前記電圧制御発振器の出力を選択し、前記制御電圧検出手段が第1の電圧よりも高く制御電圧の上限値よりも低い予め定めた第2の電圧あるいは第1の電圧よりも低く制御電圧の下限値よりも高い予め定めた第3の電圧を検出したとき、前記スレーブ側PLL回路の前記電圧制御発振器の出力を選択してクロックを出力するクロック選択手段
とを具備することを特徴とするクロック発生装置。
【請求項4】
容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の前記制御電圧を発生させるマスタ側PLL回路と、
容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の前記信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の前記制御電圧を発生させるスレーブ側PLL回路と、
前記マスタ側PLL回路の前記制御電圧を検出する制御電圧検出手段と、
この制御電圧検出手段が前記制御電圧として採り得る任意の電圧としての第1の電圧以上の電圧を検出したとき、この第1の電圧よりも低い電圧で同一の周波数のクロックを発生できるように前記スレーブ側PLL回路の前記容量スイッチの設定を変更させるスレーブ側PLL回路制御手段と、
初期的に前記マスタ側PLL回路の前記電圧制御発振器の出力を選択し、前記スレーブ側PLL回路制御手段によって前記スレーブ側PLL回路の前記容量スイッチの設定の変更が行われた後の所定の時点で、このスレーブ側PLL回路の前記電圧制御発振器の出力を選択してクロックを出力するクロック選択手段
とを具備することを特徴とするクロック発生装置。
【請求項5】
容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の前記制御電圧を発生させるマスタ側PLL回路と、
容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の前記信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の前記制御電圧を発生させるスレーブ側PLL回路と、
前記マスタ側PLL回路の前記制御電圧を検出する制御電圧検出手段と、
この制御電圧検出手段が前記制御電圧として採り得る任意の電圧としての第1の電圧以下の電圧を検出したとき、この第1の電圧よりも高い電圧で同一の周波数のクロックを発生できるように前記スレーブ側PLL回路の前記容量スイッチの設定を変更させるスレーブ側PLL回路制御手段と、
初期的に前記マスタ側PLL回路の前記電圧制御発振器の出力を選択し、前記スレーブ側PLL回路制御手段によって前記スレーブ側PLL回路の前記容量スイッチの設定の変更が行われた後の所定の時点で、このスレーブ側PLL回路の前記電圧制御発振器の出力を選択してクロックを出力するクロック選択手段
とを具備することを特徴とするクロック発生装置。
【請求項6】
容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の前記制御電圧を発生させるマスタ側PLL回路と、
容量を段階的に調整する容量スイッチで回路の調整を行うことで制御電圧に応じた周波数のクロックを出力する電圧制御発振器を備え、基準となる周波数の前記信号を入力してその位相をこの電圧制御発振器を経た信号の位相と比較しその比較結果に応じた値の前記制御電圧を発生させるスレーブ側PLL回路と、
前記マスタ側PLL回路の前記制御電圧を検出する制御電圧検出手段と、
この制御電圧検出手段が前記制御電圧として採り得る任意の電圧としての第1の電圧以上の電圧を検出したとき、この第1の電圧よりも低い電圧で同一の周波数のクロックを発生できるように前記スレーブ側PLL回路の前記容量スイッチの設定を変更させると共に、前記制御電圧検出手段が第1の電圧以下の電圧を検出したとき、この第1の電圧よりも高い電圧で同一の周波数のクロックを発生できるように前記スレーブ側PLL回路の前記容量スイッチの設定を変更させるスレーブ側PLL回路制御手段と、
初期的に前記マスタ側PLL回路の前記電圧制御発振器の出力を選択し、前記スレーブ側PLL回路制御手段によって前記スレーブ側PLL回路の前記容量スイッチの設定の変更が行われた後の所定の時点で、このスレーブ側PLL回路の前記電圧制御発振器の出力を選択してクロックを出力するクロック選択手段
とを具備することを特徴とするクロック発生装置。
【請求項7】
前記スレーブ側PLL回路制御手段は、コード情報を用いて前記容量スイッチの設定を変更させることを特徴とする請求項1〜請求項6いずれかに記載のクロック発生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2008−219464(P2008−219464A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53946(P2007−53946)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】