説明

グラデーション樹脂版面及びその作製方法並びにグラデーション樹脂版面を用いた印刷物

【課題】 本発明は、連続的な階調表現を有する階調模様を得る樹脂版面に関する。
【解決手段】 原画像取得部にて、樹脂版材へ付与する階調模様の原画像を取得し、デジタルデータへ変換又はあらかじめデジタルデータ化されている原画像を取得する原画像取得工程と、デジタルデータにおける階調表現に連続的に緩やかな高低差を付与するために、原画像における画像濃度と前記原画像をもとに作製した印刷物における画像濃度の対比を示す階調再現カーブに基づき、デジタルデータの階調範囲を補正し、レーザ加工部にて出力可能なデータ形式の加工用データを作製する加工用データ作製工程と、加工用データに基づいて、加工条件を設定し、加工条件をレーザ加工部へ送信するレーザ加工条件設定工程と、加工用データ及びレーザ加工条件に従って樹脂版材におけるレーザ加工領域に、レーザ加工部からレーザ光線を照射し、階調模様を形成するレーザ加工工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的な階調表現を有する階調模様が付与された印刷物等を得る樹脂版面に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂版面を用いて金属、布、紙等の被印刷物へ連続的な階調表現を有する階調模様を付与する印刷方法として、グラデーション印刷が知られている。グラデーション印刷方法は、画像の濃淡をハイライトから中間調を経てシャドーに至るまで、段階的に変化させることで、連続的な階調表現を有する階調模様を得る印刷方法である。例えば、グラデーション印刷方法としては、オーバーラップ印刷方法等がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、オーバーラップ印刷方法を用いたグラデーション印刷物とその印刷方法が開示されている。オーバーラップ印刷方法とは、まず、感光性樹脂版材を公知の方法により露光及び現像することで、網点面積率又は万線の線幅が変化した部分版を複数作製する。作製した部分版は、それぞれ印刷機における同一のブランケット上に転写されるように取り付ける。次に、刷色濃度の異なる複数のインキを、それぞれ部分版上に着肉したのち、ある程度のオーバーラップ(重ね合わせ)を持たせ、集合ブランケット上へ転写させる。転写したインキは、集合ブランケット上においてインキが多く重なり合う個所は刷色濃度が高く、反対に重なり具合の少ない個所は刷色濃度が低くなる。最後に、集合ブランケット上のインキを樹脂版面に着肉したのち、被印刷物へ転写することで、階調模様が付与された印刷物を得ることができる。
【0004】
また、本出願人は、連続的な階調を有する原画フィルムを用いて作製した樹脂版面について、既に出願している(特許文献2参照)。図17(a)は、従来の感光性樹脂版材による樹脂版面の横断面図であり、図17(b)は、図17(a)に示した樹脂版面を用いて得られたフレキソ印刷物の平面図である。また、図17(c)は、特許文献2にて開示されている樹脂版面の横断面図であり、図17(d)は、図17(c)に示した樹脂版面を用いて得られたフレキソ印刷物の平面図である。
【0005】
図17(c)に示した、樹脂版面の作製方法としては、はじめに網点面積率が連続的に変化した原画フィルムを作製する。次に、感光性樹脂版材を、作製した原画フィルムを介して紫外線等の活性光線を照射し露光及び硬化させ、階調模様を形成する。網点面積率が連続的に変化した原画フィルムを介して露光することで、網点面積率ごとに活性光線の透過量が変化し、感光性樹脂版材の露光状態が変化する。最後に、露光後の感光性樹脂版材を溶剤により洗い流すことで、図17(c)に示した、樹脂版面となる。作製した樹脂版面を用いて、フレキソ印刷機により印刷をして得られたフレキソ印刷物は、図17(d)に示したように、階調模様が付与された印刷物となる。
【0006】
【特許文献1】特公平5−64600号
【特許文献2】特願2007−133048号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されているオーバーラップ印刷方法では、刷色濃度の異なる複数のインキのオーバーラップにより、連続的な階調表現のある階調模様を得ている。そのため、あらかじめ刷色濃度の異なるインキを複数用意する必要がある。また、得られた階調模様をルーペ等で拡大して視認した際、階調模様内においてオーバーラップ個所が視認される。そのため、オーバーラップ個所をカムフラージュするために、階調模様印刷個所に用いるインキを淡色インキに限定する必要や、階調模様内のオーバーラップ個所上に、カムフラージュ模様を重ねて印刷する必要がある。
【0008】
また、特許文献2に開示されている樹脂版面では、連続的な階調を有する原画フィルムを介して露光することで、樹脂版面を作製しているため、樹脂版材を用いて連続的に階調表現をすることが可能となった。感光性樹脂版材は、一定量の活性光線照射量における硬化部と溶解部を交互に積層して形成している。そのため、図17(c)に示すように、作製した樹脂版面は、インキ着肉面が階段状の傾斜面となり、得られたフレキソ印刷物も、図17(d)に示すように、段階的に階調が変化した階調模様を有する印刷物となる。つまり、図17(c)の樹脂版面を用いて、連続的、かつ、緩やかに階調が変化する階調模様を得ることには、まだ課題が残っていた。また、原画フィルムを必要とするため、製版工程が複数工程に及ぶことから、多くの労力及び時間が費やされる。
【0009】
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、具体的には、樹脂版材へ階調模様を形成して樹脂版面を作製する際、連続的に緩やかな高低差を有する階調模様とすることを目的とする。また、被印刷物に連続的な階調表現を有する階調模様を、一度刷りで付与するこが可能な樹脂版面を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的を達成するために、請求項1の発明は、取得手段を少なくとも有する原画像取得部と、データ作製部及びレーザ加工部から成るグラデーション樹脂版面作製装置を用いて、樹脂版材におけるレーザ加工領域に、レーザ光線の照射により連続的に緩やかな高低差の階調模様を付与するグラデーション樹脂版面作製方法であって、原画像取得部において、樹脂版材へ付与する階調模様の原画像を取得し、デジタルデータへ変換又はあらかじめデジタルデータ化されている原画像を取得する原画像取得工程と、デジタルデータにおける階調表現に連続的に緩やかな高低差を付与するために、あらかじめ作製してある、原画像における画像濃度と原画像をもとに作製した印刷物における画像濃度の対比を示す階調再現カーブに基づき、デジタルデータの階調範囲を補正し、レーザ加工部にて出力可能なデータ形式の加工用データを作製する加工用データ作製工程と、加工用データに基づいて、レーザ光線の強度、回転速度、ピッチ及び制御信号の加工条件を設定し、加工条件をレーザ加工部へ送信するレーザ加工条件設定工程と、加工用データ及びレーザ加工条件に従って樹脂版材におけるレーザ加工領域に、レーザ加工部からレーザ光線を照射し、階調模様を形成するレーザ加工工程とを少なくとも有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1記載のレーザ加工によるグラデーション樹脂版面作製方法において、加工用データ作製工程は、レーザ加工部にて樹脂版材へ付与する階調模様の画像入力解像度を決定するために、デジタルデータの画像入力解像度を設定する画像入力解像度設定手段と、画像入力解像度を設定したデジタルデータにおける階調範囲を決定するために、原画像において最も高い第一の画像濃度及び最も低い第二の画像濃度を測定し、測定した画像濃度と同じ値に、デジタルデータの画像濃度を設定する画像濃度設定手段と、原画像をもとに作製した印刷物における階調を、原画像が有する階調を忠実に再現したものとするために、あらかじめ作製してある、原画像における画像濃度と原画像をもとに作製した印刷物における画像濃度の対比を示す階調再現カーブをもとに階調範囲を補正し、画像濃度を設定したデジタルデータにおける画像濃度と、原画像をもとに作製した印刷物における画像濃度を比例関係とした階調補正データを作製する階調範囲補正手段と、階調補正データを、レーザ加工部にて出力可能なデータとするために、0階調から255階調までを一定の濃度間隔を有する無彩色により表したグレースケールデータに変換するグレースケールデータ変換手段とを少なくとも有することを特徴とする。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のレーザ加工によるグラデーション樹脂版面作製方法において、加工用データ作製工程は、画像入力解像度設定手段後のデジタルデータにおける階調表現を連続的に緩やかな高低差を有する樹脂版面を得るために、デジタルデータの階調表現が網点の大小及び/又は網点の重なりにより表現したデータであった際に、デジタルデータを1マスの大きさが1ピクセルの大きさとしたマトリックス状に分割し、マトリックス状に配置したピクセルごとの画像濃度を測定し、網点表現からピクセル表現へ変換したい所望のピクセル及び所望のピクセルの周囲を取り囲むピクセルにおける画像濃度の平均値を算出し、平均値を所望のピクセルへ一様にベタ状により画像濃度を表すことで、マトリックス状に配置したピクセルごとの画像濃度変化により階調表現したデジタルデータへと変換する階調変換手段、画像濃度設定手段後のデジタルデータに連続的な階調表現を付与するために、連続階調が付与されていない原画像を元にデジタルデータを取得した際に、デジタルデータへシャドー、中間調及びハイライトから成る階調効果を少なくとも一つ以上付与する階調効果付与手段、階調範囲補正手段後の階調補正データを、画像処理ソフトウェアの種類に依存しないデータとするために、階調補正データが画像処理ソフトウェアの種類に依存するデータであった際に、階調補正データをポストスクリプトデータへと変換するポストスクリプトデータ変換手段、階調範囲補正手段後の階調補正データを、多色印刷可能なデジタルデータへと変換するために、原画像が複数色から成るカラー原稿であった際に、色分解を行う色分解手段を少なくとも一つ更に有することを特徴とする。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、請求項1から3いずれかに記載のレーザ加工によるグラデーション樹脂版面作製方法において、グレースケールデータへの変換は、デジタルデータにおける階調を、0階調から255階調までをISO/DIS12218:1996で規定した0.15の一定の濃度間隔を有する無彩色で表すことを特徴とする。
【0014】
また、請求項5記載の発明は、請求項1から4いずれかの方法により得られる連続的に緩やかな高低差を有するグラデーション樹脂版面であることを特徴とする。
【0015】
さらに、請求項6記載の発明は、請求項5に記載のグラデーション樹脂版面より得られる印刷物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
樹脂版面の作製方法において、原画像をもとに加工用データを作製し、それを用いて樹脂版材にレーザ加工を行うことで、単純な凹凸のみの樹脂版面又は階段状の凹凸形状から成る樹脂版面ではなく、連続的に緩やかな高低差を有する樹脂版面を作製することができる。また、樹脂版面を、図15に示すような凸版印刷方式等公知の印刷機を用いて印刷することにより、被印刷物に連続的な階調表現を有する階調模様を、一度刷りで付与することが可能となる。
【0017】
さらには、本発明における階調模様は、網点形状を有することなく連続的に階調が変化している。その為、インクジェットプリンタ、複写機等を用いて模倣された階調模様と異なり、ルーペ等を用いて拡大して観察することで簡単に判別可能なことから、複写牽制に有効な階調模様を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他色々な形態が実施可能である。
【0019】
図1は、本発明にかかわるグラデーション樹脂版面作製装置全体構成を表す模式図の一例である。図2は、本発明にかかわるグラデーション樹脂版面作製装置の構成を示すブロック図である。図3は、本発明にかかわるデジタルデータにおける階調を網点表現からピクセル表現へ変換する手順を示す模式図の一例である。図4は、本発明にかかわる画像濃度とレーザ出力を示す図である。図5は、本発明にかかわるデジタルデータにおける階調範囲補正手順を示す模式図の一例である。図6は、本発明にかかわるグラデーション樹脂版面の作製工程の流れを示すフローチャートである。図7は、本発明にかかわるグラデーション樹脂版面の作製工程におけるステップ2の流れを示すフローチャートである。図8は、本発明にかかわる画像濃度設定後のデジタルデータへ階調効果を付与する一例である。図9は、本発明にかかわるデジタルデータにおける画像濃度を階調補正する際に用いるトーンカーブである。図10は、本発明にかかわるグラデーション樹脂版面の横断面図及び連続的に緩やかな高低差を有する樹脂版面から得られる印刷物の平面図である。図11は、本発明にかかわる原画像を示す平面図である。図12は、本発明にかかわるピクセルごとの画像濃度変化により表現したデジタルデータである。図13は、本発明にかかわるグレースケールデータである。図14は、本発明にかかわるグラデーション樹脂版面である。図15は、本発明にかかわる凸版印刷機における印刷部の概略図である。図16は、本発明にかかわるグラデーション樹脂版を用いて得られた印刷物及び模倣印刷物を示す平面図である。図17は、従来の感光性樹脂版材による樹脂版面及び特許文献2の感光性樹脂版材による樹脂版面との差異を説明する図である。
【0020】
図1は、本発明におけるグラデーション樹脂版面を作製するための、グラデーション樹脂版面作製装置全体構成を表す模式図の一例である。グラデーション樹脂版面作製装置(1)は、原画像取得部(2)、データ作製部(3)及びレーザ加工部(4)から成り、それぞれが接続手段(5)を介して直接的及び/又は間接的に接続されている。原画像取得部(2)は、樹脂版材(S)へ形成する階調模様の原画像を取得するところであり、データ作製部(3)は、原画像取得部(2)にて取得した原画像に基づき、加工用データを作製するところである。また、レーザ加工部(4)は、データ作製部(3)にて作製した加工用データに基づき、樹脂版材(S)へレーザ光線を照射するところである。なお、本発明における接続手段(5)には、ケーブル、無線LAN、情報通信網等が挙げられる。
【0021】
図2は、前述したグラデーション樹脂版面作製装置(1)の構成を示すブロック図である。グラデーション樹脂版面作製装置(1)における原画像取得部(2)は、樹脂版材(S)へ形成する階調模様の原画像を取得又は入力する取得手段(6)を少なくとも有している。取得手段(6)により取得又は入力した原画像が、デジタルデータ化されていない場合には、デジタルデータへ変換する必要があるため、原画像をデジタルデータへ変換するデータ変換手段(7)を更に有することが必要となる。この原画像取得部(2)において取得した原画像のデジタルデータは、接続手段(5)を介してデータ作製部(3)へ送信される。
【0022】
原画像取得部(2)は、樹脂版材(S)に付与する階調模様の元となる原画像を取得する取得手段(6)と、取得した原画像をデジタルデータに変換するデータ変換手段(7)を一つの機器内に備えたスキャナ等の読取機器又はデジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯端末等の撮像機器としても良い。また、取得手段(6)は、あらかじめ作製及び/又は取得した原画像を既にデジタルデータとして記録してあるCD−ROM、FD、USBメモリ等の情報記録媒体からデジタルデータを取得するMOドライブ、CD−ROMドライブ、FDドライブ、イメージカードリーダ等の入出力機器としても良い。この場合においては、前述のとおり、原画像は既にデジタルデータ化されているため、データ変換手段(7)を必要とはしない。さらに、デジタルデータ化されている原画像を、接続手段(5)を介して遠隔地から取得手段(6)において取得する場合においても、既にデジタルデータ化されているため、データ変換手段(7)を必要とはしない。
【0023】
次に、データ作製部(3)について説明する。グラデーション樹脂版面作製装置(1)におけるデータ作製部(3)は、パーソナルコンピュータ(以下「PC」という。)とし、CPU(10)、RIP(11)、ルックアップテーブル作製手段(12)、記憶手段(13)、表示手段(14)、キーボード(8)及びポインティングデバイス(9)から成る。CPU(10)は、画像入力解像度設定手段(15)、階調変換手段(16)、画像濃度設定手段(17)、階調効果付与手段(18)、階調補正手段(19)及びポストスクリプトデータ変換手段(20)から成る。さらに、RIP(11)は、色分解手段(21)、グレースケールデータ変換手段(22)及びTIFFデータ変換手段(23)から成る。
【0024】
画像入力解像度設定手段(15)は、CPU(10)に入力したデジタルデータの画像入力解像度を設定したのち、画像濃度設定手段(17)へと送信する手段である。画像入力解像度とは、PC(3)に入力したデジタルデータをレーザ加工部(4)においてレーザ光線の照射により、樹脂版材へ付与する階調模様の画像出力解像度であり、その解像度は、スクリーン線数により表す。スクリーン線数とは、1インチ間又は1cm間にある網点の列の数である。スクリーン線数の数が大きくなるとデジタルデータ上の網点は目立たなくなり、小さくなるとデジタルデータ上に網点が目立つ。画像入力解像度は適宜設定することが可能だが、200〜300lpiの範囲とすることが好ましい。
【0025】
階調変換手段(16)とは、CPU(10)に入力したデジタルデータの階調表現が網点の大小及び/又は網点の重なりにより表現したデータであった際に、マトリックス状に配置したピクセルごとの画像濃度変化により階調表現したデジタルデータへと変換する手段である。デジタルデータにおける画像の階調を網点により表現した際、得られる版面は、図17(a)に示すように、高低差のない樹脂版面となる。しかし、デジタルデータにおける画像の階調を、ピクセルごとの画像濃度変化により表現した際には、得られる版面は、連続的に緩やかな高低差を有する樹脂版面となる。なお、マトリックス状に配置したピクセルごとの画像濃度変化により階調表現した原画像としたデジタルデータを取得した場合には、階調変換手段(16)を必要とはしない。
【0026】
図3は、デジタルデータにおける階調を網点表現からピクセル表現へ変換する手順を示す模式図の一例である。図3(1)に示すように、網点の大小及び/又は網点の重なりにより階調表現したデジタルデータを、ピクセルごとの画像濃度変化により階調表現したデジタルデータへと変換する方法としては、まず、図3(2)に示すように、デジタルデータを1マスの大きさが1ピクセルの大きさのマトリックス状に分割する。次に、図3(3)に示すように、ピクセルごとに任意の記号等を割り当てる。例として(a)から(i)とする。(e)を網点表現からピクセル表現へ変換するには、まず(a)から(i)九つのピクセルごとの画像濃度を測定する。次に、図3(4)に示すように、網点表現からピクセル表現へ変換したい所望のピクセル(e)及びその所望のピクセルの周囲を取り囲むピクセル(a)、(b)、(c)、(d)、(f)、(g)、(h)及び(i)の各画像濃度から、九つのピクセルの平均値を算出する。さらに、図3(5)に示すように、算出した画像濃度を(e)の場所へ一様にベタ状で表現することで、デジタルデータにおける(e)の領域は、ピクセル表現への変換が終了となる。次に図3(6)に示したように、(e)と一部隣り合う(f)も同様の手順を繰り返すことで、図3(7)の示すように、デジタルデータにおける(f)の領域は、ピクセル表現への変換が終了となる。さらに、マトリックス状に分割したすべてのピクセルで同様の手順を繰り返すことで、図3(8)に示すように、デジタルデータにおける階調が、網点表現からピクセルごとの画像濃度変化により表現したデジタルデータへと変換する。
【0027】
画像濃度設定手段(17)とは、デジタルデータの画像濃度を設定する手段である。画像濃度は、原画像において最も画像濃度が高い個所における画像濃度(以下、「第一の画像濃度」という。)と、最も画像濃度が低い個所における画像濃度(以下、「第二の画像濃度」)を、反射濃度測定器等公知の濃度測定器を用いて測定したのち、測定した各画像濃度と同じ値にデジタルデータの画像濃度を設定する。それにより、デジタルデータにおける階調範囲を設定することが可能となる。
【0028】
階調効果付与手段(18)とは、デジタルデータに連続的な階調表現を付与したのち、階調補正手段(19)へと送信する手段であり、付与する階調表現は、シャドー、中間調及びハイライトである。シャドーとは、階調模様における暗い部分であり、中間調とは、階調模様におけるシャドー及びハイライトの中間の濃淡部分であり、ハイライトとは、階調模様における明るい部分である。なお、連続階調を付与した原画像を元にデジタルデータを取得した場合には、デジタルデータは既に連続階調が付与されているため、階調効果付与手段(18)を必要としない。
【0029】
階調補正手段(19)とは、階調効果付与後のデジタルデータの階調範囲を補正する手段である。デジタルデータは、前述のとおり0階調から255階調までをカラー画像により表している。まず、原画像に対するデジタルデータの階調範囲を補正しなければならない理由について説明する。
【0030】
図4は、画像濃度とレーザ出力を示す図である。原画像が有する階調範囲を忠実に再現するためには、原画像が有する画像濃度と、原画像をもとにグラデーション樹脂版面を作製し、かつ、その樹脂版面を用いて印刷し、作製した印刷物における画像濃度の関係を比例関係とする必要がある。図4(a)において、横軸は、原画像から得たデジタルデータにおける画像濃度であり、縦軸は、その画像濃度にあわせたレーザ出力である。デジタルデータにおける最も画像濃度が高い第一の画像濃度(A)は、最も印圧が大きい個所である。後述する、図10に示すように、レーザ加工により得られる樹脂版面は、厚みがあるほど印圧が大きい。またレーザ出力が大きいほど樹脂版面は薄くなることから、最も印圧が大きい個所は、レーザ出力値が最も小さい個所(以下、「最小出力値」という。)となる。
【0031】
デジタルデータにおける最も画像濃度が低い第二の画像濃度(B)は、最も印圧が小さい個所である。先に述べたように、レーザ加工により得られる樹脂版面は、厚みがあるほど印圧が大きいことから、反対に最も印圧が小さい個所は、レーザ出力値が最も大きい個所(以下、「最大出力値」とする。)となる。第一の画像濃度(A)及び第二の画像濃度(B)をもとに、最大出力値及び最小出力値を設定したのち、それぞれを結ぶことで、画像濃度ごとにレーザ出力値を設定する(以下、最大出力値及び最小出力値を結ぶ線(Y1)を「出力カーブ」という。)。なお、最大出力値及び最小出力値は、用いる樹脂版面、印圧等により変化するため、適宜設定する必要がある。
【0032】
図4(b)は、原画像における画像濃度と、図4(a)に示す、レーザ出力により作製したグラデーション樹脂版面を用いて印刷し、作製した印刷物における画像濃度の対比を示す第一の階調再現カーブ(X1)の一例である。原画像の持つトーン(画像濃淡)が、印刷物においてどのように再現されているのかを示すのが、階調再現カーブである。図4(b)に示すように、実際には、単純に最小出力値と最大出力値を結ぶことで設定したレーザ出力では、印刷物において原画像における画像濃度を忠実に再現することはできない。
【0033】
そこで、図4(c)に示すように、横軸に表す原画像における画像濃度と、縦軸に表すレーザ加工により得られる樹脂版面をもとに作製した印刷物における画像濃度とが、比例関係の理想的な第二の階調再現カーブ(X2)となるように、第一の階調再現カーブ(X1)を修正する。原画像における画像濃度と、レーザ加工により得られる樹脂版面をもとに作製した印刷物における画像濃度とが、比例関係となることで、原画像の持つトーン(画像濃淡)が、印刷物において忠実に再現されることとなる。
【0034】
図4(d)は、図4(b)に示した第一の階調再現カーブ(X1)と、図4(c)に示した第二の階調再現カーブ(X2)を重ねた図である。図4(d)に示すように、第一の階調再現カーブ(X1)と第二の階調再現カーブ(X2)には、差(α)が生じている。この差(α)に基づき、図4(a)における出力カーブ(Y1)を修正する必要がある。そこで、図4(e)に示すように、図4(a)に示した出力カーブ(Y1)に対して、差(α)だけ変形させた出力カーブ(Y2)を求める。
【0035】
図4(e)にて求めた出力カーブ(Y2)に基づいて作製したグラデーション樹脂版面を用いて印刷した印刷物における画像濃度と、原画像における画像濃度の対比は、図4(f)に示すような、第三の階調再現カーブ(X3)となる。出力カーブ(Y1)から、出力カーブ(Y2)へと修正することによって、原画像における画像濃度と、レーザ加工により得られる樹脂版面をもとに作製した印刷物における画像濃度とが、比例関係となる。つまり、原画像の持つトーン(画像濃淡)が、印刷物において忠実に再現されることとなる。
【0036】
前述した、デジタルデータの階調範囲補正に用いる階調再現カーブは、レーザ加工部(4)におけるレーザ加工条件、樹脂版材(S)の種類、印刷方法、印刷に用いるインキ等の各種作業条件を変更したものを、あらかじめ複数作製し、後述する記憶手段(13)に準備データ(25)として記憶しておく。複数作製した階調再現カーブの中から、作業条件が適合するものを記憶手段(13)から読み込み、その階調再現カーブに基づきデジタルデータの階調範囲を補正する。
【0037】
図5は、デジタルデータにおける階調範囲補正手順を示す模式図の一例である。あらかじめ複数作製した階調再現カーブの中に、作業条件が適合するものがない場合には、図5に示すように、新たに階調範囲を補正する必要がある。階調範囲を補正する方法としては、まず、図5(a)に示した、原画像として0階調から255階調までを一定の画像濃度間隔を有する無彩色により表したグレースケールデータを作製したのち、デジタルデータへと変換する。次に、デジタルデータをもとに加工用データを作製し、樹脂版材(S)へ従来の作製方法により、図5(b)に示した、グレースケール版面(以下、従来の作製方法により作製した樹脂版面を「グレースケール版面」という。)を作製する。この際、用いる樹脂版材(S)は、本発明のグラデーション樹脂版面を作製する際に用いる樹脂版材(S)と同じものを使用する。次に、グレースケール版面を用いてオフセット印刷等、公知の方法により印刷して図5(c)に示した印刷物を作製する。最後に作製した印刷物における画像濃度を、反射濃度測定器等公知の濃度測定器を用いて測定することで、図5(d)に示すような原画像における画像濃度とグレースケール版面を用いて印刷し、作製した印刷物における画像濃度の対比を示す階調再現カーブを作製する。
【0038】
次に、デジタルデータにおける画像濃度とグレースケール版面を用いて印刷し、作製した印刷物における画像濃度の関係が比例関係となるように、階調補正手段(19)によりデジタルデータの階調を補正する。なお、補正方法について詳細は後述する。図5(e)は、原画像における画像濃度と、階調範囲補正後のデジタルデータを用いて作製したグレースケール版面を用いて印刷し、作製した印刷物における画像濃度の対比を示す階調再現カーブの一例である。図5(e)に示すように、階調範囲を補正することで、単純な比例関係の加工用データとすることが可能である。単純な比例関係の加工用データを得るためには、前述した図5(a)から図5(d)までの工程を繰り返す必要がある。
【0039】
なお、一度見極めた階調範囲は、後述する記憶手段(13)に準備データ(25)として新たに記憶し、必要に応じて適宜呼び出すことも可能である。
【0040】
ポストスクリプトデータ変換手段(20)とは、階調補正データをポストスクリプトデータへと変換する手段である。ポストスクリプトデータとは、文字、図形等のデータを交換するファイル形式の一つであり、PostScript言語で記述したデータに、配置、表示内容及び画像を付加してファイルにしたものである。ポストスクリプトデータは、ファイルに付加する画像をベクトル形式及びビットマップ形式の両方を含めることから、ポストスクリプトデータへ変換することで、汎用されている公知の画像処理ソフトウェアの種類に依存せずに、データをRIP(11)へ送信することが可能となる。なお、用いる画像処理ソフトウェアの種類によっては、ポストスクリプトデータへ変換せずに、階調補正データをそのままRIP(11)へ送信することが可能な場合もある。その際には、ポストスクリプトデータ変換手段(20)により階調補正データをポストスクリプトデータへと変換する必要はない。
【0041】
RIP(11)は、色分解手段(21)、グレースケールデータ変換手段(22)及びTIFFデータ変換手段(23)から成る。RIPとは、Raster Image Processorの一般的な略であり、入力されたページ記述言語に基づき、解像度に応じた画素の集合としての画像データをラスタ(ライン)単位で生成し、連続階調データを作製する手段である。
【0042】
色分解手段(21)とは、階調補正データを多色印刷可能なデジタルデータへ変換するために、色分解を行う手段である。原画像が複数色から成るカラー原稿であった際に、色分解を行う必要がある。色分解には、アナログ分解法とデジタル分解法がある。アナログ分解法とは、まず、カラー原稿を、赤、緑及び青紫の3色のフィルタを通して撮影する。フィルタが、自身の色と補色関係の色を吸収することから、カラー原稿中のフィルタ色(吸収色)を除いたCMY(シアン、マゼンタ、イエロー)の3種類のデータを得ることである。デジタル分解法とは、階調補正データをCMYの3種類のデータ又はCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)の4種類のデータで表現されたデータへ変換し、それぞれの色成分ごとの階調補正データを得ることである。なお、単色により表現したデジタルデータを原画像に用いた際には、階調補正データが、CMYKのいずれか1種類のデータにより表現されている場合もある。その際には、色分解手段(21)により階調補正データを色分解変換する必要はない。
【0043】
グレースケールデータ変換手段(22)は、グレースケールデータを取得するために、階調補正データをグレースケールデータに変換する手段である。グレースケールデータとは、白、灰及び黒のような輝度成分しか持たない色である無彩色により表したものである。グレースケールデータにおいて0階調は黒色となり、255階調は白色となり、0階調から255階調までを一定の画像濃度間隔により表している。なお、一定の画像濃度間隔とは、ISO/DIS12218:1996では0.15と規定している。グレースケールデータを、レーザ加工部(4)に送信することで、加工用データとなる。
【0044】
TIFFデータ変換手段(23)とは、グレースケールデータをTIFFデータへと変換する手段である。グレースケールデータは、ウィンドウズ(登録商標)、マッキントッシュ(登録商標)等のOS(Operating System)の種類に依存するため、データ形式によってはそのままレーザ加工部(4)にて出力できない場合がある。その際、TIFFデータ変換手段(23)にて、グレースケールデータをTIFFデータへと変換することで、レーザ加工部(4)にて出力可能な加工用データとなる。TIFFとは、Tagged Image File Fomatの一般的な略であり、画像データの保存形式の一つである。TIFFデータへと変換することで、階調変換後のグレースケールデータは、OSの種類に依存せずに、すべてのOSで扱うことが可能なデータ形式の加工用データとなる。なお、OSの種類によってはTIFFデータへと変換しなくても、グレースケールデータをレーザ加工部(4)にて出力可能な場合がある。その際においては、TIFFデータ変換手段(23)を必要とはせず、グレースケールデータはそのまま加工用データとなる。
【0045】
ルックアップテーブル作製手段(12)とは、加工用データ及びトーンカーブに基づき、ルックアップテーブル(以下「LUT」という。)を作製する手段である。LUTとは、まず、あらかじめ計算したデータを、配列又は変換表に保存しておく。次に、PCにより、配列又は対応表から目的のデータを取り出す。それにより、データの変換時間が、目的のデータへのアクセス時間のみとなり、高速にデータ変換が行えるものである。本発明においてLUTは、加工用データにおける各ピクセルの画像濃度に対応するレーザ出力値と、それに対応する樹脂版面の深度を記憶した変換表である。LUTを作製することで、任意のトーンカーブを用いた際に、各ピクセルの画像濃度に対応する彫刻深度を簡単に検索することが可能となる。樹脂版面の深度は、図5(e)に示すような、階調再現カーブを得られた際に用いたグレースケール版面の深度をあらかじめ測定し、その値を用いるものとする。LUTは、LUT作製時に用いた加工用データ及びトーンカーブにより異なる。そのため、異なる加工用データ及びトーンカーブを用いる際には、再度LUTを作製する必要がある。ただし、一度作製したLUTは、後述する記憶手段(13)に準備データ(25)として記憶し、必要に応じて適宜呼び出すことも可能である。
【0046】
記憶手段(13)は、CPUデータ(24)、準備データ(25)を記憶する手段である。CPUデータ(24)とは、CPU(10)を動作するプログラムデータである。準備データ(25)とは、あらかじめ作製及び/又は取得した原画像をデジタルデータとして記憶したデータ、デジタルデータの階調範囲補正に用いる階調再現カーブのデータ及びレーザ加工部(4)にて樹脂版材(S)にレーザ加工する際のレーザ加工条件をあらかじめ記憶したデータである。
【0047】
表示手段(14)は、CPU(10)に入力したデジタルデータを表示する手段であり、例えば、ディスプレイとする。キーボード(8)及びポインティングデバイス(9)は、ディスプレイ(14)上に原画像をデジタルデータとして入力したり、入力動作により記憶手段(13)に記憶したCPUデータ(24)、準備データ(25)及びLUTを読み出したりする手段である。
【0048】
次に、レーザ加工部(4)について説明する。グラデーション樹脂版面作製装置(1)におけるレーザ加工部(4)は、レーザ照射手段(26)及びシリンダ(27)から成る。レーザ照射手段(26)は、データ制御手段(28)、発振器(29)、集光レンズ(30)及び図示しないスキャナモータから成る。データ制御手段(28)は、PC(3)にて作製した加工用データを受信したのち、受信した加工用データに対応したLUTに基づき画素単位ごとのレーザ出力となる電気エネルギーを決定する手段である。発振器(29)は、レーザ光を励起したのち出力する手段であり、データ制御手段(28)にて決定した電気エネルギーに応じて励起したレーザ光を出力する。集光レンズ(30)は、レーザ光を集光するレンズであり、発振器(29)にて出力したレーザ光を、樹脂版材(S)におけるレーザ加工領域(S1)へ集光する手段である。スキャナモータは、集光レンズ(30)で集光したレーザ光を、後述するシリンダ(27)の軸方向へと走査する手段である。レーザ加工領域(S1)へ集光したレーザ光は、スキャナモータにより集光レンズ(30)を走査することで、熱加工により樹脂版材(S)におけるレーザ加工領域(S1)上に、凹凸から成る階調模様を付与する。階調模様付与後の樹脂版材(S)は、グラデーション樹脂版面となる。
【0049】
シリンダ(27)は、樹脂版材(S)を載置する円筒である。シリンダ(27)は中空であり、その内周面に樹脂版材(S)を載置する。シリンダ(27)は、アルミニウム材で製作され、その内周面は、表面の凹凸が±5μmの範囲となるように高精度に研磨されている。これは、レーザ照射手段(26)とシリンダ(27)の内周面との距離を常に一定保持するためである。また、シリンダ(27)は、図示しないシリンダ回転機構を備える。シリンダ回転機構は、シリンダ(27)の両端にシリンダ(27)を保持するように設ける。集光レンズ(30)で集光したレーザ光は、シリンダ(27)に載置した樹脂版材(S)の表面をシリンダ(27)の円周方向に順次走査することで、加工用データに基づき階調模様の一部となる凹凸を付与する。次に、集光レンズ(30)をスキャナモータによりシリンダ(27)の軸方向へ1画素分移動したのち、再度加工用データに基づき階調模様の一部となる凹凸を付与する。このように、レーザ光照射時において、シリンダ(27)及びシリンダ回転機構が回転し、かつ、集光レンズ(30)がスキャナモータによりシリンダ(27)の軸方向へ移動することで、レーザ光が樹脂版材(S)の表面を順次走査し、加工用データに基づいたグラデーション樹脂版面を作成することが可能となる。
【0050】
なお、シリンダ(27)上には、吸引手段を備えることが好ましい。吸引手段とは、レーザ光を樹脂版材(S)に照射した際に発生する燃焼カス等の生成物を除去する手段である。レーザ加工時において吸引手段を動作させることで、燃焼カスがレーザ加工領域(S1)に付着した際に発生する、加工ムラ等を抑制することができる。
【0051】
以降、図6及び図7により、図1のグラデーション樹脂版面作製装置(1)を用いて原画像を樹脂版材(S)に階調模様を付与し、グラデーション樹脂版面を作製する方法について説明する。
【0052】
図6は、グラデーション樹脂版面の作製工程の流れを示すフローチャートである。はじめに、樹脂版材(S)上へ付与する階調模様の原画像を取得する(ステップ1)。まずユーザは、樹脂版材(S)上へ付与する階調模様の原画像を準備する。原画像を取得する方法としては、原画像が施されている媒体から直接取得する方法、PC(3)により原画像を作製及び/又は入力して取得する方法、撮像機器により原画像を撮像し、取得する方法、入出力機器により原画像を取得する方法又はあらかじめPC(3)に記憶している原画像を読み込んで取得する方法がある。原画像が施されている媒体から直接取得する方法とは、まず、写真、ロゴマーク、文字、絵画等の原画像が付与された媒体を準備する。原画像が付与された媒体とは、原画像が印刷された印刷物又は原画像が焼付けられた印画紙等とする。次に、原画像取得部(2)における取得手段(6)を動作し、準備した媒体から原画像を読み取ったのち、データ変換手段(7)へと送信する。データ変換手段(7)は、受信した原画像をデジタルデータへと変換したのち、接続手段(5)を介してPC(3)におけるCPU(10)へ送信する。
【0053】
PC(3)により原画像を作製及び/又は入力して取得する方法とは、PC(3)に備えたキーボード(8)及び/又はポインティングデバイス(9)により原画像を作製及び/又は入力する方法である。画像処理ソフトウェア(例えば、アドビ社製Photoshop等)を用いて、キーボード(8)及び/又はポインティングデバイス(9)を動作し、ディスプレイ(14)上に原画像を作製及び/又は入力する。作製及び/又は入力した原画像は、デジタルデータとして直接CPU(10)へ送信することができる。なお、一度作製及び/又は入力した原画像は、記憶手段(13)に準備データ(25)として記憶することで、再度原画像として用いることが可能となる。
【0054】
撮像機器により原画像を撮像し、取得する方法とは、風景、人物、写真等の被写体を、撮像機器を動作し、撮像することで原画像を取得する。取得した原画像は、デジタルデータへと変換し、接続手段(5)を介してPC(3)におけるCPU(10)へ送信する。
【0055】
入出力機器により原画像を取得する方法とは、あらかじめ作製及び/又は取得した原画像をデジタルデータとして記録した情報記録媒体から、PC(3)と接続手段(5)を介して接続した入出力機器を用いて、原画像を取得する方法である。取得した原画像は、デジタルデータとして直接CPU(10)へ送信する。
【0056】
あらかじめPC(3)における記憶手段(13)に記憶している原画像を読み込み取得する方法とは、PC(3)により作製及び/又は入力し、PC(3)における記憶手段(13)に準備データ(25)として記憶した原画像を、キーボード(8)及び/又はポインティングデバイス(9)を動作して読み込むことにより取得する方法である。取得した原画像は、デジタルデータとして直接CPU(10)へ送信する。さらには、原画像は、接続手段(5)を介して遠隔地からデジタルデータとして直接CPU(10)へ入力する構成としてもよい。次にデジタルデータは、接続手段(5)を介してPC(3)へ送信する。
【0057】
原画像が、赤、緑、青、黄、紫等フルカラーにより表したカラー画像においては、PC(3)にて受信したデジタルデータの階調も、0階調から255階調までフルカラーにより表す。しかし、レーザ加工により樹脂版材(S)へ施す階調模様は、0階調から255階調まで階調を無彩色により表している。そこで、次に、PC(3)に記憶したデジタルデータから、レーザ加工部(4)において入出力可能な無彩色のデジタルデータを得るために、加工用データを作製する(ステップ2)。
【0058】
図7は、本発明にかかわるグラデーション樹脂版面の作製工程におけるステップ2の流れを示すフローチャートである。まず、原画像取得部(2)におけるデータ変換手段(7)より送信されたデジタルデータを、PC(3)におけるCPU(10)にて受信する。受信したデジタルデータは、画像入力解像度設定手段(15)により、デジタルデータの画像入力解像度を設定する(ステップ2−1)。画像入力解像度設定手段(15)には、画像処理ソフトウェア(例えば、アドビ社製Photoshop等)を用いる。画像処理ソフトウェアを用いて、解像度を設定することで、レーザ加工部(4)にて、レーザ光線の照射により、樹脂版材へ付与する階調模様の画像入力解像度が決定する。
【0059】
デジタルデータにおける階調表現が、網点の大小及び/又は網点の重なりにより表現したデータであった際には、階調変換手段(16)において、マトリックス状に配置したピクセルごとの画像濃度変化により階調表現したデジタルデータへと変換する(ステップ2−2−1)。階調変換手段(16)には、画像処理ソフトウェア(例えば、アドビ社製Photoshop等)のぼかし処理を用いた。ぼかし処理とは、図3(1)から図3(8)において示した、ピクセルごとの画像濃度変化により階調表現したデジタルデータへの変換を行う手段である。ぼかし処理を用いることで、デジタルデータにおける階調が、網点表現からピクセル表現へと変化したデータとなる。
【0060】
次に、画像濃度設定手段(17)において、デジタルデータにおける画像濃度を設定する(ステップ2−2)。原画像における階調は、0階調から255階調を画像濃度の変化により表している。まず、原画像において、最も画像濃度が高い第一の個所と、最も画像濃度が低い第二の個所における、それぞれの画像濃度を、反射濃度測定器等、公知の濃度測定器を用いて測定する。次にデジタルデータ上における第一の個所及び第二の個所の画像濃度を、測定した原画像の画像濃度と同じ画像濃度に設定する。それにより画像濃度設定後のデジタルデータは、原画像と同じ階調範囲が設定されたデータとなる。
【0061】
連続階調が付与されていない原画像を元にデジタルデータを取得した場合には、階調効果付与手段(18)において、階調効果を付与する(ステップ2−2−1)。図8を用いて、画像濃度設定後のデジタルデータへ階調効果を付与する一例を説明する。まず、図8(a1)に破線で示すように、デジタルデータにおける、階調効果を付与する領域を選択する。図8(a1)には、図8(b1)に示す連続階調を施すこととする。次に、図8(c1)に示したように、図8(a1)にて選択した領域をシャドー、中間調及びハイライトと適宜分割する。なお、本実施の形態においては、図8(c1)のように、(i)、(ii)及び(iii)と三分割にする。次に、図8(c1)において(i)、(ii)及び(iii)に示した領域へ付与する階調効果を選択する。付与する階調効果は、シャドー、中間調及びハイライトとする。本発明においては、図8(c1)において、(i)にはシャドーを付与し、(ii)には中間調を付与し、更に(iii)にはハイライトを付与する。それにより、得られるデジタルデータは、図8(d1)に示すように、連続的に階調が変化したデータとなる。
【0062】
また、図8(a2)に示した、中間調及びハイライトが付与された原画像を元にデジタルデータを取得した際にも、階調効果付与手段(18)において、階調効果を付与する。まず、図8(a2)に破線で示すように、デジタルデータにおける、階調効果を付与する領域を選択する。図8(a2)には、図8(b2)に示す連続階調を施す。次に、図8(c2)に示したように、図8(a2)にて選択した領域内において階調効果を付与する領域を適宜分割する。なお、本実施の形態においては、図8(a2)のように、原画像内に中間調及びハイライトが既に付与されていたので、図8(c2)のように、階調が付与されていない(i)に示した領域を選択した。次に、図8(c2)において(i)に示した領域へ付与する階調効果を選択する。付与する階調効果は、シャドーとする。それにより、得られるデジタルデータは、図8(d2)に示すように、連続的に階調が変化したデータとなる。
【0063】
さらに、シャドー、中間調及びハイライトが複数個所に付与することも可能である。まず、図8(a3)に破線で示すように、デジタルデータにおける、階調効果を付与する領域を選択する。図8(a3)には、図8(b3)に示す連続階調を施す。次に、図8(c3)に示したように、図8(a3)にて選択した領域をシャドー、中間調及びハイライトと適宜分割する。なお、本実施の形態においては、図8(c3)のように、(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)と五分割にする。次に、図8(c3)において(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)に示した領域へ付与する階調効果を選択する。付与する階調効果は、シャドー、中間調及びハイライトとする。本発明においては、図8(c3)において、(i)及び(v)にはシャドーを付与し、(ii)及び(iv)には中間調を付与し、更に(iii)にはハイライトを付与する。それにより、得られるデジタルデータは、図8(d3)に示すように、連続的に階調が変化したデータとなる。
【0064】
本発明における階調効果付与手段(18)は、例えばペンタブレットや、Photoshop(アドビ社製)、Illustrator(アドビ社製)等既存の画像処理ソフトウェアを用いることができる。ペンタブレットとは、ポインティングデバイス(9)である入力部及びタブレットから成る。入力部は、ペン形状の位置指示器であり、内部には、ペン先に加えられた筆圧を検出する圧力センサー、ペン先の指示する座標を検出する位置センサー及びペン先を中心とした軸回転角を検出する回転角センサーを備えている。タブレットは、板状の検出器であり、入力部の指示する座標、筆圧及び軸回転角を検出する。
【0065】
操作方法としては、まず、描画サイズ、解像度、カラーモード、描画色、描画モード及び描画する線の種類を設定する。描画サイズとは、階調効果を付与する作業を行う表示手段(14)上のキャンパスサイズのことであり、画像の幅と高さ方向をピクセル数により設定することが可能である。解像度とは、表示画像における1インチあたりのピクセル数のことである。1インチあたりのピクセル数が増加すると、解像度は高くなる。一般的に、画像の解像度が高いほど、出力画像の品質が高くなるが、網点を使用して画像を出力する場合、適切な解像度は、プリンタ等出力機器が有する網点線数により異なる。一般的には、スクリーン線数と同じ解像度では、出力画像の品質は低く、スクリーン線数の1.5倍の解像度で、出力画像の品質は標準となる。またスクリーン線数の2倍の解像度で、出力画像の品質は高くなる。カラーモードとは、原画像が有する色情報により、画像を表示手段(14)上に表示又は出力機器により印刷する際使用する色情報の表示形式であり、RGB(レッド、グリーン、ブルー)、CMYK、Labカラー(CIE L*a*b*)及びグレースケールより選択することが可能である。なお、本発明においては、インキにより印刷を行う版面を作製することを目的としていることから、通常の製版時に用いられるRGBにカラーモードを設定する。
【0066】
描画色とは、描画及び塗りつぶしに用いられる色のことであり、RGB値がそれぞれ、0から255の範囲で設定することができる。描画モードとは、描画及び画像の編集方法や不透明度を指定する手段であり、通常、ディザ合成、比較(暗)、乗算、比較(明)、覆い焼き(リニア)- 加算、差の絶対値、色相、彩度、カラー、輝度、カラー比較(明)及びカラー比較(暗)がある。また、描画時に用いる色の不透明度は、設定することで任意の領域を描画するときに、ポインティングデバイス(9)を離すまでは、その領域内で複数回ポインティングデバイス(9)を動かしても、不透明度が設定値を超えることはない。 不透明度が100%においては、透過性がなくなる。反対に不透明度が1%に近づくにつれて透過性は高くなる。
【0067】
ペンタブレットを用いた階調効果付与方法とは、まず、図8(a1)に破線で示すように、デジタルデータにおける、階調効果を付与する領域を選択する。図8(a1)には、図8(b1)に示す連続階調を施すとする。次に、図8(c1)に示したように、図8(a1)にて選択した領域を適宜分割する。なお、図8(c1)においては、(i)、(ii)及び(iii)と三分割にする。次に、図8(c1)において(i)、(ii)及び(iii)に示した領域へ付与する階調効果を選択する。付与する階調効果は、シャドー、中間調及びハイライトとする。シャドーを付与する際には、前述したペンタブレットの不透明度を100%とし、ハイライトを付与する際には、不透明度は1%とし、中間調においては、対象領域内で複数回ポインティングデバイス(9)を動かすことで付与することが可能となる。本発明においては、図8(c1)において、(i)にはシャドーを付与し、(ii)には中間調を付与し、更に(iii)にはハイライトを付与する。また、(i)、(ii)及び(iii)においてそれぞれ他の領域と隣り合う境界は、その境界線上において複数回ポインティングデバイス(9)を動かすことで連続的に階調が変化したデジタルデータとなる。
【0068】
階調効果を有したデジタルデータは、次に階調補正手段(19)により、階調範囲を補正する(ステップ2−3)。階調範囲は、あらかじめ図4に示す階調再現カーブを作製しておき、その階調再現カーブに基づき補正する。階調補正手段(19)には、例えば、Photoshop(アドビ社製)等公知の画像処理ソフトウェアを用いる。図9は、デジタルデータにおける画像濃度を階調補正する際に用いるトーンカーブである。図9に示した、画像処理ソフトウェアにおけるトーンカーブを変形することで、デジタルデータの階調範囲は補正される。
【0069】
トーンカーブとは、画像濃度を階調補正する手段であり、横軸、縦軸及びチャンネルから成る。横軸は、階調効果を付与したデジタルデータにおける画像濃度(以下「入力値」という。)であり、デジタルデータがRGBならば、その値は255〜0としている。なお、デジタルデータがCMYKならば、その値は0〜100とする。縦軸は、階調補正後の階調効果を付与したデジタルデータにおける画像濃度(以下「出力値」という。)であり、デジタルデータがRGBならば、その値は255〜0としている。なお、デジタルデータがCMYKならば、その値は0〜100とする。チャンネルは、入力値がRGBであるかCMYKであるかを設定する手段であり、RGBであるならば、図9に示したようにRGBモードに切り替え、CMYKであるならば、横軸及び縦軸は、値が大きくなるほどそれぞれ画像濃度が高くなる。つまり、値が大きくなるほど明から暗へと変化する。階調補正前は、入力値と出力値が同一のため45度に傾いた、比例関係の直線グラフとしている。この直線をカーブ状に変形させることにより、シアン、マゼンタ及びイエローの3色の彫刻データを調整し、デジタルデータにおいて、第一の画像濃度及び第二の画像濃度の画像濃度差であるコントラスト値を調整する。なお、本発明においては、画像濃度差を大きくすることを「コントラスト値を強める」といい、反対に画像濃度差を小さくすることを「コントラスト値を弱める」という。
【0070】
デジタルデータにおけるコントラスト値を強める際には、まず、入力値及び出力値をそれぞれ均等に分割することで、図9(a)に示すように、グラフ内を(イ)から(ニ)の4分割にする。次に、4分割した領域(ハ)のほぼ中心を下へ下げる。下へ下げることで、出力値は入力値よりも下がるので、階調補正後の画像濃度は低くなる。さらに、4分割した領域(ロ)のほぼ中心を上へ上げる。上へ上げることで、出力値は入力値よりも上がるので、階調補正後の画像濃度は高くなる。このように、トーンカーブをS字カーブ状に変形することで、デジタルデータのコントラスト値は強くなる。
【0071】
デジタルデータにおけるコントラスト値を弱める際には、図9(b)に示すように、まず、図9(a)と同様にグラフ内を(イ)から(ニ)と4分割にする。次に、4分割した領域(ハ)のほぼ中心を上へ上げる。さらに、4分割した領域(ロ)のほぼ中心を下へ下げることで、トーンカーブは逆S字カーブ状に変形する。逆S字カーブ状に変形することにより、デジタルデータのコントラスト値は弱くなる。
【0072】
デジタルデータにおける明度を下げる際には、図9(c)に示すように、まず、図9(a)及び図9(b)と同様にグラフ内を(イ)から(ニ)と4分割にする。次に、4分割した領域(イ)から(ニ)におけるほぼ中心を下へ下げる。それにより、トーンカーブは中心がへこんだ形状に変形する。中心がへこんだ形状に変形することにより、デジタルデータの明度は下がる。
【0073】
デジタルデータにおける明度上げる際には、図9(d)に示すように、まず、図9(a)、図9(b)及び図9(c)と同様にグラフ内を(イ)から(ニ)と4分割にする。次に、4分割した領域(イ)から(ニ)におけるほぼ中心を上へ上げる。それにより、トーンカーブは中心が膨らんだ形状に変形する。中心が膨らんだ形状に変形することにより、デジタルデータの明度は上がる。
【0074】
本発明における階調再現カーブは、トーンカーブを変更したものを複数用意し、デジタルデータにおける画像濃度と、グラデーション樹脂版面を用いて得た印刷物における画像濃度の関係が比例関係となる階調再現カーブが存在するまで作製する。次に、デジタルデータにおける画像濃度と、グラデーション樹脂版面を用いて得た印刷物における画像濃度の関係が、比例関係となる階調再現カーブを用いてデジタルデータの画像濃度を補正することで、得られる印刷物は、前述したデジタルデータに付与した連続階調を再現した連続階調を有する印刷物となる。階調範囲補正後のデジタルデータは、階調補正データとなる。階調補正データは、次にRIP(11)へと送信する。
【0075】
なお、用いる画像処理ソフトウェアの種類によっては、ポストスクリプトデータへ変換する必要がある(ステップ2−3−1)。その際は、階調補正データをポストスクリプトデータ変換手段(20)によりポストスクリプトデータへと変換したのち、RIP(11)へと送信する。
【0076】
次に、RIP(11)内のグレースケールデータ変換手段(22)により、階調補正データは、グレースケールデータとなる(ステップ2−4)。グレースケールデータ変換手段(22)には、画像処理ソフトウェア(例えば、アドビ社製Photoshop)を用いる。画像処理ソフトウェアを用いて、0階調から255階調までを、RGBのフルカラーにより表した階調補正データを、0階調から255階調までを無彩色の画像濃度変化により表現することで、グレースケールデータとなる。なお、原画像が、白、灰及び黒の無彩色により表した白黒画像の際には、PC(3)にて受信したデジタルデータは、そのままグレースケールデータとなる。
【0077】
フルカラーにより表したカラー画像を原画像とした際には、グレースケールデータ変換前に、色分解手段(21)により色分解する(ステップ2−3−2)。色分解することで、CMYの3種類のデータ又はCMYKの4種類のデータへと変換する。
【0078】
次に、グレースケールデータは、TIFFデータ変換手段(23)によりTIFFデータへと変換する(ステップ2−4−1)。TIFFデータへ変換することで、連続階調データとなる。
【0079】
次に、ルックアップテーブル作製手段(12)において、連続階調データと前述した階調再現カーブをもとに、LUTを作製する(ステップ2−4−1)。LUTは、加工用データにおける各ピクセルの画像濃度に対応するレーザ出力値と、それに対応する樹脂版面の深度を記憶した変換表であるので、まず連続階調データと同じ大きさの変換表を、例えば、Photoshop(アドビ社製)、Illustrator(アドビ社製)、RTI RIP−Kit(グローバルグラフィックス社製)等、既存の画像処理ソフトウェアを用いて作製する。次に、連続階調データにおける画素ごとの濃度にあわせた深度と、それに対応するレーザ出力値を作製した変換表に振り分けていく。最後に、振り分けた変換表を、ルックアップテーブルデータとして保存することで、加工用データとなる。
【0080】
次に、樹脂版材(S)に階調模様を付与する際のレーザ加工条件の設定を行う(ステップ3)。レーザ加工条件としては、レーザ光強度、回転速度、ピッチ、制御信号等がある。レーザ光強度、回転速度及びピッチは、加工用データにおけるすべての画素単位で同じ設定とし、制御信号においては、加工用データの画素単位ごとの画像濃度に応じて変化する。ただし、異なる原画像を用いてグラデーション樹脂版面を新たに作製する際には、レーザ加工条件を設定し直す必要がある。
【0081】
レーザ加工条件設定後、樹脂版材(S)上にレーザ照射手段(26)を用いてレーザ光を照射し、レーザ加工を行う(ステップ4)。レーザ照射手段(26)は、従来公知のものであり、例えば、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等を用いる。はじめに、紫外線で前露光を施し、樹脂を硬化させてからシリンダ(27)上に樹脂版材(S)を接着テープ等で固定する。前露光をすることで、感光性樹脂層を硬化させる。次に、PC(3)で作製した加工用データを、レーザ照射手段(26)におけるデータ制御手段(28)に送信する。データ制御手段(28)は、受信した加工用データにおける画素ごとの画像濃度に応じたレーザ光を、発振器(29)より出力する。画像濃度が大きい際には、発振器(29)より出力するレーザ光は、画像濃度の大きさにともない大きくなる。反対に、画像濃度が小さい際には、発振器(29)より出力するレーザ光は、画像濃度の小ささにともない小さくなる。出力したレーザ光は、集光レンズ(30)を通して樹脂版材(S)の表面で集光したのち、スキャナモータを走査することにより樹脂版材(S)へ照射する。レーザ光を照射することで、樹脂版材(S)に、原画像に基づく連続階調を有する階調模様を加工する。レーザ加工完了後、レーザ照射手段(26)を停止させ、シリンダ(27)から樹脂版材(S)を取り外し、水で軽く洗い流す。最後に乾燥させることで、グラデーション樹脂版面を得る。なお、前露光での硬化量によっては、乾燥後に、紫外線で再度露光を施して樹脂を硬化させてもよい。
【0082】
図10は、グラデーション樹脂版面の横断面図及び連続的に緩やかな高低差を有する樹脂版面から得られる印刷物の平面図である。図10(a)に示したように、本発明により作製したグラデーション樹脂版面は、インキ着肉面が連続的に緩やかな高低差を有する面となり、得られる印刷物も図10(b)に示したように、連続的に階調が緩やかに変化した階調模様を有する印刷物となる。また、グラデーション樹脂版面において、版面厚さが増加するにつれて、印圧も増加する。それにより、この連続的に緩やかな高低差により印圧が連続的に変化することで、被印刷物に連続的に緩やかな階調表現を有する階調模様を一度刷りで付与することが可能となる。
【0083】
なお、レーザ加工による階調模様を作製する樹脂版材(S)は、レーザ彫刻可能で、かつ、寸法安定性の良好な材料であれば、ゴム系材料を加硫架橋させて形成したもの、熱硬化性樹脂を熱架橋させて形成したもの、感光性樹脂を光架橋させて形成したもの等を用いることが可能である。ゴム系材料としては、ウレタンゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム等がある。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等がある。感光性樹脂としては、液状タイプ及び固形タイプがある。液状タイプでは、不飽和ポリエステル、アクリルモノマー、ウレタンオリゴマー、ポリチオール等を基本成分としたものがある。固形タイプでは、PVA、アクリルアミドオリゴマー、ナイロン、アクリルモノマー、不飽和ウレタンオリゴマー、水溶性ナイロン、酢酸セルロース等を基本成分としたものがある。また、それらの重合体から成るフィルム、異なる材料を複数積層したもの、軟質又は硬質の多孔性樹脂としたもの等がより好ましい。なお、印刷適正や印刷品質の観点から、固体状又は液状の感光性樹脂を光硬化させ、これを樹脂版材とすることがより好ましい。また樹脂版材の厚みは、用いる印刷機等に応じて適宜設定することが可能だが、0.1〜0.7mmとすることが好ましい。
【実施例】
【0084】
以下、本発明の実施例について図面を参照にして更に具体的に説明するが、本発明を限定するものではない。
【0085】
実施例として図11に示した、原画像であるカラー原稿から、図14(a)、(b)及び(c)に示したレーザ加工によるグラデーション樹脂版面を作製する例を説明する。なお、当該の図は、本発明において採用する任意の模様を有するカラー原稿であるが、これは一例に過ぎず、この例に限定されるものではない。
【0086】
はじめに、図11(a)に示す原画像を準備した。原画像は、絵画をインクジェットプリンタ(PX−6000、エプソン社製)により紙基材に付与した印刷物である。図11(b)は、図11(a)に示した印刷物上において、図示した領域(Z)を800%拡大した図である。原画像は、図11(b)に示したように、網点により階調を表現していた印刷物である。
【0087】
次に、準備した印刷物を、原画像取得部(2)における取得手段(6)を動作して画像を読み取った。本実施例において、原画像取得部(2)は、スキャナ(GT−X700、エプソン社製)とした。読み取った画像は、スキャナ(2)におけるデータ変換手段(7)へと送信したのち、デジタルデータへと変換した。次にデジタルデータは、ケーブル(5)を介してPC(3)へ送信した。次に、PC(3)にて受信したデジタルデータをもとに、加工用データを作製した。まず、スキャナ(2)より送信されたデジタルデータを、PC(3)におけるCPU(10)にて受信した。受信したデジタルデータは、画像入力解像度設定手段(15)において、解像度を変換した。画像入力解像度設定手段(15)には、画像処理ソフトウェア(アドビ社製Photoshop)を用いた。なお解像度は、350dpiとした。
【0088】
次に、階調変換手段(16)において、デジタルデータにおける階調を網点表現から、ピクセルごとの画像濃度変化により表現したデータへと変換した。階調変換手段(16)には、画像処理ソフトウェア(アドビ社製Photoshop)を用いた。画像濃度変化後のデジタルデータは、図12(a)に示すような、ピクセルごとの画像濃度変化により表現したデジタルデータへと変換した。図12(b)は、図12(a)に示したデジタルデータにおいて、図示した領域(Z)を800%拡大した図である。デジタルデータは、図12(b)に示したように、連続的な階調表現のあるデータとなった。
【0089】
次に、画像濃度設定手段(17)において、デジタルデータにおける画像濃度を設定した。まず、原画像において、最も画像濃度が高い第一の画像濃度(A)と、最も画像濃度が低い第二の画像濃度(B)を、それぞれ反射濃度測定器(D−196C、グレタク社製)を用いて測定した。第一の画像濃度(A)は、画像濃度2.8であり、第二の画像濃度(B)は、画像濃度0.3であった。次に、画像処理ソフトウェア(アドビ社製Photoshop)を用いて、デジタルデータ上における第一の個所及び第二の個所の画像濃度を、測定した原画像の画像濃度と同じ画像濃度に設定した。なお、実施例に用いた原画像においては、図11に示すように、連続階調が付与されていたため、階調効果付与手段(18)は必要としない。
【0090】
次に、階調補正手段(19)において、あらかじめ作製した図5(e)に示す階調再現カーブに基づき、デジタルデータにおける階調範囲を補正した。階調補正手段(19)には、画像処理ソフトウェア(アドビ社製Photoshop)におけるトーンカーブを用いた。なお、本実施例においては、図5(e)に示した階調再現カーブを得るために、デジタルデータにおけるトーンカーブを、図9(d)示すように変形させることで、階調を補正し、階調補正データを得た。
【0091】
画像処理ソフトウェアの種類に依存せずに、RIP(11)へ送信することが可能とするために、次に、階調補正データをポストスクリプトデータ変換手段(20)において、ポストスクリプトデータへと変換した。ポストスクリプトデータ変換手段(20)には、画像処理ソフトウェア(アドビ社製Photoshop)を用いた。次に、ポストスクリプトデータを、RIP(11)内の、色分解手段(21)によりCMYの3色に色分解した。色分解手段(21)には、画像処理ソフトウェア(例えば、アドビ社製Photoshop)を用いた。
【0092】
色分解後の、CMYの色成分ごとのポストスクリプトデータは、次に、グレースケールデータ変換手段(22)により、それぞれグレースケールデータへと変換した。グレースケールデータ変換手段(22)には、画像処理ソフトウェア(アドビ社製Photoshop)におけるカラーモードをグレースケールに設定することで、ポストスクリプトデータは、図13に示す、0階調から255階調までを無彩色の画像濃度変化により表現したグレースケールデータとなった。図13(a)は、シアングレースケールデータ、図13(b)は、マゼンタグレースケールデータ及び図13(c)は、イエローグレースケールデータである。次に、各グレースケールデータは、TIFFデータ変換手段(23)により、TIFFデータへ変換し、連続階調データとした。TIFFデータ変換手段(23)には、画像処理ソフトウェア(アドビ社製Photoshop)を用いた。
【0093】
次に、ルックアップテーブル作製手段(12)において、連続階調データと前述した階調再現カーブをもとに、LUTを作製した。まず、連続階調データと同じ大きさの変換表を、画像処理ソフトウェア(グローバルグラフィックス社製RTI RIP−Kit)におけるCalibration(DotGain)Managerを用いて作製した。次に、連続階調データにおける画素ごとの濃度にあわせた深度と、それに対応するレーザ出力値を作製した変換表に振り分けた。最後に、振り分けた変換表を、ルックアップテーブルデータとして保存する。このルックアップデータを、加工用データとした。
【0094】
加工用データを用いて、樹脂版材(S)にレーザ光を照射することで、グラデーション樹脂版面を構成する部分版が完成した。レーザ照射手段(26)としては、炭酸ガスレーザを用いるフレキソダイレクト彫刻機(Adflex、株式会社コムテックス製)を用いた。まず、フレキソダイレクト彫刻機(26)を起動し、モードをオンラインに切り替えるとともに、出力モードを3Dエンボスモードに切り替えた。3Dエンボスモードとは、8ビット256階調の濃淡画像(モノクロ濃淡画像)を、被レーザ加工物の深さ方向に対して滑らかにレーザ加工することが可能な機能である。そのため、前機能により作製したレーザ加工物は、連続的に緩やかな高低差を有する凸部が形成される。このレーザ加工物を印刷版とした際には、網点を有しない凸版となり、また、作製された凸版を用いて得られた印刷物は、網点を有しない連続的な階調表現のある印刷物となる。
【0095】
既に作製した加工用データは、Windows(登録商標)を用いてPC(3)と接続したディスプレイ(14)画面上にプレビュー表示したのち、樹脂版材(S)における許容サイズ内での任意の位置指定、画角サイズ及び拡大縮小値を設定してプロットしたのち、フレキソダイレクト彫刻機(26)におけるデータ制御手段(28)に送信した。次に、データ制御手段(28)にて受信した加工用データに基づき、樹脂版材(S)に階調模様を施す際のレーザ加工条件を設定した。なお、本実施例においては、レーザ光強度300W、回転速度180cm/s及びピッチ20.0μmに設定した。
【0096】
レーザ加工条件設定後、フレキソダイレクト彫刻機(26)におけるシリンダ(27)上にシート状の樹脂版材(富士フィルム株式会社製、WSH83HT IV)を接着テープで固定した。なお、樹脂版材(S)は、前述した前露光として紫外線を40分照射したものを用いた。まず、レーザ光照射時においては、シリンダ(27)及びシリンダ回転機構が回転し、次に、発振器(29)より、加工用データにおける画像濃度に応じた制御信号が発振した。制御信号の発振により、レーザ強度が画像濃度に応じて可変的に変化しながら樹脂版材(S)表面を走査することで、樹脂版材(S)上に連続的に緩やかな高低差を有する凸部が形成された。
【0097】
レーザ加工完了後、フレキソダイレクト彫刻機(26)を停止させたのち、接着テープで固定した樹脂版材(S)を取り外した。その後、樹脂版材(S)に付着した生成物を水で洗い流して除去したのち、自然乾燥した。最後に、自然乾燥後の樹脂版材(S)を、紫外線で後露光を5分間施して硬化させ、図12に示したグラデーション樹脂版面を完成させた。なお、図14(a)は、シアン印刷版であり、図14(b)は、マゼンタ印刷版であり、図14(c)は、イエロー印刷版である。
【0098】
次に、作製したグラデーション樹脂版面を用いて印刷物を得る方法として凸版印刷機を用いた例を説明する。図15は、凸版印刷機における印刷部の概略図であり、版胴(31、32、33)、圧胴(34、35、36)、インキ着けローラ(37、38、39)、図示しない三つのインキ壺から成る。版胴(31、32、33)外周面には、図15(a)に示したシアン印刷版(40)、図15(b)に示したマゼンタ印刷版(41)、図15(c)に示したイエロー印刷版(42)をそれぞれ設置した。インキ壺には、シアン、マゼンタ、イエローのインキを投入した。インキ壺から供給されたインキは、インキ着けローラ(37、38、39)をそれぞれ介し、シアン印刷版(40)、マゼンタ印刷版(41)及びイエロー印刷版(42)に着肉した。その後、矢印方向に紙等の被印刷物(紀州上質紙)が、シアン印刷版(40)、マゼンタ印刷版(41)、イエロー印刷版(42)及び圧胴(34、35、36)間を搬送することで、各印刷版に着肉したインキが被印刷物上へと転移し、階調模様を有する印刷物を得た。
【0099】
図16(a)は、本発明により作製したグラデーション樹脂版面を用いて得られた印刷物の平面図である。図16(a)に示したように、連続的に緩やかな高低差を有する凸部が形成されたグラデーション樹脂版面を用いて得られた印刷物は、連続的な階調表現のある階調模様を有する印刷物となる。図16(b)は、図16(a)に示した印刷物上において、図示した領域(Z)を800%拡大した図である。
【0100】
図16(c)は、本発明の実施例と同じ原画像をもとに、図16(a)に示した従来の作製方法により樹脂版面を作製したのち、図16に示した、凸版印刷機を用いて作製した模倣印刷物において、同様に原画像における(Z)領域を同倍率に拡大した図である。本発明により作製したグラデーション樹脂版面を用いて得られた印刷物は、網点を有しないため、図16(b)に示したように、拡大して観察した際においても連続的に濃淡階調が変化した印刷物となった。反対に、模倣印刷物は図16(c)に示したように、網点を有するため拡大して観察した際には、連続的に濃淡階調が変化した印刷物とはいえない。
【0101】
本発明は、レーザ光の照射のみで連続的に緩やかな高低差を連続的に変化させることができ、複数回に及ぶ現像の繰り返しや、現像に用いるフィルムを作製する必要がなく、効率的に、かつ、簡便に階調を有するグラデーション樹脂版面が作製できる。
【0102】
また、作製したグラデーション樹脂版面は、網点を有しないため、得られる印刷物も網点を有しない。そのため、印刷物をオフセット印刷方式、インクジェットプリンタ等を用いて模倣し、模倣印刷物を作製した際には、ルーペ等を用いて拡大して観察した際の網点の有無によって簡単に真偽判別することが可能となる。
【0103】
なお、本実施例においてはフルカラーでデザインデータを作製したが、これに限定されるものではなく、モノクロ階調でデザインデータを作製してもよい。また、モノクロ階調でデザインデータを作製した場合は、グラデーション樹脂版面の各色部分を作製する必要はなく、この場合に得られる印刷物は、単色により連続的濃淡階調が変化した印刷物となる。
【0104】
また、シート状の樹脂版材を用いたが、中空円筒状の樹脂版材を用いてもよい。中空円筒状の樹脂版材を用いた際には、継ぎ目のない連続的な中空円筒状のグラデーション樹脂版面となり、それ自体を印刷機に設置することができる。
【0105】
なお、本発明を実施するにあたり使用した印刷装置は凸版印刷機としたが、ドライオフセット印刷機、フレキソ印刷機等、公知の印刷機を用いることが可能である。また、被印刷物も紙に限定されるものではなく、金属、布等から適宜選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明にかかわるグラデーション樹脂版面作製装置全体構成を表す模式図の一例。
【図2】本発明にかかわるグラデーション樹脂版面作製装置の構成を示すブロック図。
【図3】本発明にかかわるデジタルデータにおける階調を網点表現からピクセル表現へ変換する手順を示す模式図の一例。
【図4】本発明にかかわる画像濃度とレーザ出力を示す図。
【図5】本発明にかかわるデジタルデータにおける階調範囲補正手順を示す模式図の一例。
【図6】本発明にかかわるグラデーション樹脂版面の作製工程の流れを示すフローチャート。
【図7】本発明にかかわるグラデーション樹脂版面の作製工程におけるステップ2の流れを示すフローチャート。
【図8】本発明にかかわる画像濃度設定後のデジタルデータへ階調効果を付与する一例。
【図9】本発明にかかわるデジタルデータにおける画像濃度を階調補正する際に用いるトーンカーブ。
【図10】本発明にかかわるグラデーション樹脂版面の横断面図及び連続的に緩やかな高低差を有する樹脂版面から得られる印刷物の平面図。
【図11】本発明にかかわる原画像を示す平面図。
【図12】本発明にかかわるピクセルごとの画像濃度変化により表現したデジタルデータ。
【図13】本発明にかかわるグレースケールデータ。
【図14】本発明にかかわるグラデーション樹脂版面。
【図15】本発明にかかわる凸版印刷機における印刷部の概略図。
【図16】本発明にかかわるグラデーション樹脂版を用いて得られた印刷物及び模倣印刷物を示す平面図。
【図17】従来の感光性樹脂版材による樹脂版面及び特許文献2の感光性樹脂版材による樹脂版面との差異を説明する図。
【符号の説明】
【0107】
1 グラデーション樹脂版面作製装置
2 原画像取得部
3 データ作製部
4 レーザ加工部
5 接続手段
6 取得手段
7 データ変換手段
8 キーボード
9 ポインティングデバイス
10 CPU
11 RIP
12 ルックアップテーブル作製手段
13 記憶手段
14 表示手段
15 画像入力解像度設定手段
16 階調変換手段
17 画像濃度設定手段
18 階調効果付与手段
19 階調補正手段
20 ポストスクリプトデータ変換手段
21 色分解手段
22 グレースケールデータ変換手段
23 TIFFデータ変換手段
24 CPUデータ
25 準備データ
26 レーザ照射手段
27 シリンダ
28 データ制御手段
29 発振器
30 集光レンズ
31、32、33 版胴
34、35、36 圧胴
37、38、39 インキ着けローラ
40 シアン印刷版
41 マゼンタ印刷版
42 イエロー印刷版
S 樹脂版材
S1 レーザ加工領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取得手段を少なくとも有する原画像取得部と、データ作製部及びレーザ加工部から成るグラデーション樹脂版面作製装置を用いて、樹脂版材におけるレーザ加工領域に、レーザ光線の照射により連続的に緩やかな高低差の階調模様を付与するグラデーション樹脂版面作製方法であって、
前記原画像取得部において、前記樹脂版材へ付与する前記階調模様の原画像を取得し、デジタルデータへ変換又はあらかじめデジタルデータ化されている原画像を取得する原画像取得工程と、
前記デジタルデータにおける階調表現に連続的に緩やかな高低差を付与するために、あらかじめ作製してある、前記原画像における画像濃度と前記原画像をもとに作製した印刷物における画像濃度の対比を示す階調再現カーブに基づき、前記デジタルデータの階調範囲を補正し、前記レーザ加工部にて出力可能なデータ形式の加工用データを作製する加工用データ作製工程と、
前記加工用データに基づいて、前記レーザ光線の強度、回転速度、ピッチ及び制御信号の加工条件を設定し、前記加工条件を前記レーザ加工部へ送信するレーザ加工条件設定工程と、
前記加工用データ及び前記レーザ加工条件に従って前記樹脂版材における前記レーザ加工領域に、前記レーザ加工部からレーザ光線を照射し、前記階調模様を形成するレーザ加工工程と、を少なくとも有することを特徴とするレーザ加工によるグラデーション樹脂版面作製方法。
【請求項2】
前記加工用データ作製工程は、前記レーザ加工部にて樹脂版材へ付与する階調模様の画像入力解像度を決定するために、前記デジタルデータの画像入力解像度を設定する画像入力解像度設定手段と、
前記画像入力解像度を設定したデジタルデータにおける階調範囲を決定するために、前記原画像において最も高い第一の画像濃度及び最も低い第二の画像濃度を測定し、前記測定した画像濃度と同じ値に、前記デジタルデータの画像濃度を設定する画像濃度設定手段と、
前記原画像が有する階調を忠実に再現したものとするために、あらかじめ作製してある、前記原画像における画像濃度と前記原画像をもとに作製した印刷物における画像濃度の対比を示す階調再現カーブをもとに階調範囲を補正し、前記画像濃度を設定したデジタルデータにおける画像濃度と、前記原画像をもとに作製した印刷物における画像濃度を比例関係とした階調補正データを作製する階調範囲補正手段と、
前記階調補正データを、前記レーザ加工部にて出力可能なデータとするために、0階調から255階調までを一定の濃度間隔を有する無彩色により表したグレースケールデータに変換するグレースケールデータ変換手段と、を少なくとも有することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工によるグラデーション樹脂版面作製方法。
【請求項3】
前記加工用データ作製工程は、前記画像入力解像度設定手段後のデジタルデータにおける階調表現を連続的に緩やかな高低差を有する樹脂版面を得るために、前記デジタルデータの階調表現が網点の大小及び/又は網点の重なりにより表現したデータであった際に、前記デジタルデータを1マスの大きさが1ピクセルの大きさとしたマトリックス状に分割し、前記マトリックス状に配置したピクセルごとの画像濃度を測定し、網点表現からピクセル表現へ変換したい所望のピクセル及び前記所望のピクセルの周囲を取り囲むピクセルにおける前記画像濃度の平均値を算出し、前記平均値を前記所望のピクセルへ一様にベタ状により画像濃度を表すことで、マトリックス状に配置したピクセルごとの画像濃度変化により階調表現したデジタルデータへと変換する階調変換手段、
前記画像濃度設定手段後のデジタルデータに連続的な階調表現を付与するために、連続階調が付与されていない原画像を元に前記デジタルデータを取得した際に、前記デジタルデータへシャドー、中間調及びハイライトから成る階調効果を少なくとも一つ以上付与する階調効果付与手段、
前記階調範囲補正手段後の前記階調補正データを、画像処理ソフトウェアの種類に依存しないデータとするために、前記階調補正データが画像処理ソフトウェアの種類に依存するデータであった際に、前記階調補正データをポストスクリプトデータへと変換するポストスクリプトデータ変換手段、
前記階調範囲補正手段後の前記階調補正データを、多色印刷可能なデジタルデータへと変換するために、前記原画像が複数色から成るカラー原稿であった際に、色分解を行う色分解手段、を少なくとも一つ更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ加工によるグラデーション樹脂版面作製方法。
【請求項4】
前記グレースケールデータへの変換は、前記デジタルデータにおける階調を、0階調から255階調までをISO/DIS12218:1996で規定した0.15の一定の濃度間隔を有する無彩色で表すことを特徴とする請求項1から3いずれかに記載のレーザ加工によるグラデーション樹脂版面作製方法。
【請求項5】
請求項1から4いずれかの方法により得られる連続的に緩やかな高低差を有するグラデーション樹脂版面。
【請求項6】
請求項5記載のグラデーション樹脂版面により得られる印刷物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2010−100019(P2010−100019A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275997(P2008−275997)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】