説明

グラフェン積層ナノカーボン、その製造方法及びグラフェン積層ナノカーボン製造用触媒

【課題】単位質量当たりに導入可能な官能基の量に優れたナノカーボンを提供すること。
【解決手段】触媒支援化学的気相成長法において、マグネシウム、カルシウム及びアルミニウムからなる第1の金属群から選ばれる少なくとも1種以上の金属の酸化物と、ニッケル、鉄及びコバルトからなる第2の金属群から選ばれる少なくとも1種以上の金属の酸化物とを、特定の割合で含有する多孔質複合金属酸化物を触媒として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単位質量当たりに導入可能な官能基の量に優れたナノカーボンに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノカーボンには、カーボンブラック、ナノカーボンファイバー、カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、カップスタックチューブ、カーボンナノホーン等が含まれる。これらのナノカーボンは、化学的安定性、高い電子伝導性、高い電子放出能、高い弾性率等の種々の優れた物性を有している。
【0003】
ナノカーボンは、前述のような物性を利用して、電界放出型電子放出素子、走査型プローブ顕微鏡用のプローブ、触媒、構造強化材料、電池の電極、センサー材料など、従来に無い特性を発揮しうる素材原料として各種材料への適用が期待されており、各適用対象に適った特性を備えたナノカーボンの開発が進められている。
【0004】
しかしながら、ナノカーボンを樹脂等との複合材料に用いるには基材に対する分散性が要求される一方、ナノカーボンそのものは凝集性が非常に高いため、ナノカーボン単独では樹脂中に均一に分散させることが難しい。そのため、ナノカーボンと共に分散材を含有させることが考えられるが、その場合、分散材を多量に必要とするため、実用化には至っていない。
【0005】
一方、ナノカーボンの表面に官能基を導入することで、ナノカーボンそのものの物性をコントロールして、例えば水溶液に対する分散性等を向上させることも試みられている。
【0006】
例えば、下記特許文献1には、1ミクロン以下の直径を有する多層カーボンナノチューブの表面を酸化処理する方法の発明が開示されており、下記特許文献1に開示される方法によれば、0.05〜約0.6meq/gの酸滴定量のカーボンナノチューブが得られるとされている。
【0007】
また、下記特許文献2には、グラファイト性ナノチューブの表面に官能基を導入する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許4465137号公報
【特許文献2】特表2002−503204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1及び2に示されている発明によれば、一応、カーボンナノチューブの表面に官能基を導入することは可能であるが、導入できる官能基の量が不十分であり、例えば分散材なしで、ナノカーボンを樹脂中に分散させたり、イオン交換樹脂の代替になる程度のイオン交換性能は実現できていない。
【0010】
本発明者は、単位質量当たりに導入できる官能基の量に優れ、表面修飾能の向上したナノカーボンを開発するために鋭意研究を重ね、気相成長法において特定の触媒条件を適用することで、従来のナノカーボンと比べて顕著に表面修飾能の向上したナノカーボンが得られること、及び、得られたナノカーボンの見掛け密度が従来のナノカーボンと比べて高いという特徴を有していることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、表面修飾能に優れたナノカーボン及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明のナノカーボンは、コーン形状ないしカップ型のナノグラフェンが複数積層されて、全体としてチューブ状をなしているグラフェン積層ナノカーボンであって、
透過型電子顕微鏡による格子像写真に基づいて求められる外径及び内径が、外径10nm以上100nm以下、内径1nm以上30nm以下であり、
直線状に配置した際の中心軸を通る平面と前記ナノグラフェンの円錐面部分との交わりによって得られる2本の線分のなす角の角度が、20°以上70°以下であり、
前記外径及び前記内径を基に、下記計算式によって求められる見掛け密度が、1.9g/cm以上2.2g/cm以下であることを特徴とする。
見掛け密度 =
(グラファイトの密度)×((外径/2)−(内径/2))/(外径/2)
【0013】
本発明にかかるグラフェン積層ナノカーボンは、単位質量あたりの表面修飾能に優れており、本発明にかかるグラフェン積層ナノカーボンをドライエッチングすることで、イオン交換容量が0.1meq/g以上のナノカーボンを容易に得ることができる。
【0014】
また、本発明にかかる触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボン製造方法は、触媒活性化ゾーン、ナノカーボン合成ゾーン及び冷却ゾーンを有する炉内に設置した反応管内に、多孔質複合金属酸化物と、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、イソプレン、n−ブタンから選択される少なくとも1種の炭化水素ガスとを連続的に供給し、
前記触媒活性化ゾーンにおいて、前記多孔質複合金属酸化物の一部が触媒活性した活性触媒体が得られ、
前記ナノカーボン合成ゾーンにおいて、前記炭化水素ガスと前記活性触媒体とを接触させることでナノカーボンが連続的に合成され、
前記活性触媒体と前記連続的に合成されたナノカーボンとの複合体を、前記冷却ゾーンを経て前記反応管内より取り出すことで連続的にナノカーボンを製造する、触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボン製造方法において、
前記多孔質複合金属酸化物として、マグネシウム、カルシウム及びアルミニウムからなる第1の金属群から選ばれる少なくとも1種以上の金属の酸化物と、
ニッケル、鉄及びコバルトからなる第2の金属群から選ばれる少なくとも1種以上の金属の酸化物と、から構成された多孔質複合金属酸化物であって、
前記第2の金属群から選ばれる少なくとも1種以上の金属酸化物の含有割合が、前記多孔質複合金属酸化物の総質量に対して、50質量%以上95質量%以下であり、かつ、粒子径が8nm以上100nm以下である多孔質複合金属酸化物を用いることを特徴とする。
【0015】
本発明にかかる触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボン製造方法によれば、容易に上記本発明にかかる単位質量あたりの表面修飾能に優れたグラフェン積層ナノカーボンを得ることが可能となる。
【0016】
なお、本発明にかかる触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボン製造方法に用いる上記多孔質複合金属酸化物は、マグネシウム硝酸塩、カルシウム硝酸塩及びアルミニウム硝酸塩から選ばれる少なくとも1種を、5質量%以上20質量%以下、
ニッケル硝酸塩、鉄硝酸塩及びコバルト硝酸塩から選ばれる少なくとも1種を、40質量%以上55質量%以下、
グリシンを20質量%以上35質量%以下、及び、
イオン交換水を10質量%以上18質量%以下の割合で混合した後、空気雰囲気中で焼成することによって容易に得ることが可能である。
【0017】
本発明にかかる触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボン製造方法において触媒として働く上記多孔質複合金属酸化物は、その粒子径によって得られるナノカーボンの大きさが左右されるものであるが、上記多孔質複合金属酸化物の製造工程における焼成前の混合操作において処理時間の変更や撹拌性能の異なる器具を用いる等、混合操作の条件を変化させることで、容易に粒子径を制御することができる。外径10nm以上100nm以下の外径を持つグラフェン積層ナノカーボンを生成するには、上記多孔質複合金属酸化物の粒子径を8nm以上100nm以下とすることが必要であり、10nm以上80nm以下とすることがより好ましい。
【0018】
また、本発明にかかる触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボン製造方法によって得られるグラフェン積層ナノカーボンは、グラフェン積層ナノカーボンと活性触媒体との複合体の状態のまま粉砕処理し、その後、化学洗浄処理を実施して前記活性触媒体を除去することで、容易に粒子サイズの均一なグラフェン積層ナノカーボンとすることができる。
【0019】
なお、前記グラフェン積層ナノカーボンと活性触媒体との複合体の粉砕処理においては、前記グラフェン積層ナノカーボンと活性触媒体との複合体をジルコニアビーズ及び水とともに密閉容器に収容し、前記密閉容器を400rpm以上の速度で高速遊星回転させて、前記ナノカーボンと活性触媒との複合体の粒子径を、1μm以上50μm以下となるように粉砕すると、前記グラフェン積層ナノカーボンの長さを50nm以上1000nm以下の範囲に容易に揃えることが可能となるため好ましい。また、前記化学洗浄処理としては、硝酸水溶液または塩酸水溶液を用いることができる。
【0020】
また、上記本発明にかかる触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボン製造方法によって得られるグラフェン積層ナノカーボンは、単位質量あたりの表面修飾能に優れており、400℃から900℃に加熱したゾーンに該グラフェン積層ナノカーボンを供給すると同時に、活性ガスとして窒素またはアルゴンガスをキャリアガスにより水、硝酸、硫酸から1種を選択した液体の蒸気を供給し、10分から20時間保持することによりドライエッチングすることで、容易にイオン交換容量が0.1meq/g以上、15.0meq/g以下であるグラフェン積層ナノカーボンを得ることができる。
【0021】
ナノカーボンには、グラフェンの配向性から、プレート状、ヘーリングボーン状、カップスタック状などのナノファイバーとナノチューブがあり、グラフェンが繊維平面に対して平行に配向しているチューブ状のものは特にカーボンナノチューブと呼ばれる。プレート状、ヘーリングボーン状、カップスタック状のカーボンナノファイバは、いずれもグラフェンは繊維平面に対して一定の角度を持って配向している。これらもTEMによる観察などから確認することができる。
【0022】
本発明のグラフェン積層ナノカーボンは、外径が10nmから100nmで、内径が1nmから30nmで、中心線に沿った断面において積層したグラフェン同士の傾斜角が20°から70°でかつグラフェン同士の底が部分的に連続的になっており、見掛け密度が1.9から2.2であることを特徴としている。さらに付け加えれば、通常のカーボンナノチューブはアスペクト比(L/D)が少なくとも10、多くの場合10以上であるが、本発明のグラフェン積層ナノカーボンのアスペクト比(L/D)は2から200好ましくは2から100である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1にかかる多孔質複合金属酸化物のFE−SEM画像である。
【図2】実施例4〜8及び比較例1にかかるナノカーボンの製造に使用したナノカーボン製造装置の概略図である。
【図3】実施例4にかかるグラフェン積層ナノカーボンと活性触媒体との複合体のTEM画像である。
【図4】表示倍率を変更した図3に対応するTEM画像である。
【図5】実施例4にかかるグラフェン積層ナノカーボンのTEM画像である。
【図6】実施例4にかかるグラフェン積層ナノカーボンの角度ωを示すTEM画像である。
【図7】図7Aは実施例14にかかるグラフェン積層ナノカーボンと活性触媒体との複合体の遊星ミル処理前のTEM画像であり、図7Bは実施例14にかかるグラフェン積層ナノカーボンと活性触媒体との複合体の遊星ミル処理後のTEM画像である。
【図8】図8Aは実施例14にかかる解砕予備処理したグラフェン積層ナノカーボンの分散液をシリコンウェーハー表面にスピンコーティングしたFE−SEM画像であり、図8Bは図8AのVIIIBで示す領域に相当する拡大FE−SEM画像である。
【図9】図9Aは実施例10にかかるグラフェン積層ナノカーボンの湿式ジェットミル処理1パス後、図9Bは湿式ジェットミル処理5パス後のFE−SEM写真である。
【図10】実施例14にかかるナノカーボンのドライ表面修飾処理に使用したドライ表面修飾処理装置の概略図である。
【図11】実施例15〜19及び比較例3、4にかかるナノカーボンの単位質量あたりのイオン交換容量を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施例を用いて本発明を実施するための形態を説明する。ただし、以下に示す各実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのグラフェン積層ナノカーボン、多孔質複合金属酸化物及びそれらの製造方法を例示するものであって、本発明をこの実施例に特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
【0025】
[実施例1〜3]
[多孔質複合金属酸化物の製造]
第1種の金属の水溶性化合物として7gの硝酸マグネシウム六水和物と、第2種の金属の水溶性化合物として48gの硝酸ニッケル六水和物と、13gのイオン交換水との混合物を40℃に加温した後、この混合物をクラボウ製の遊星式撹拌脱泡装置により均一溶液を作製した。
【0026】
次いで、得られた均一溶液に有機化合物として32gのグリシンを加えて上記遊星式撹拌脱泡装置により混合した。この組成物をステンレス製容器に移し、空気雰囲気中で670℃に保持した焼成炉に投入した。16分後にセラミック化した多孔質複合金属酸化物を得た。これを粉砕して400μmのメッシュパスした粉体とすることで、実施例1にかかるナノカーボン製造用触媒としての多孔質複合金属酸化物を得た。このようにして得られた多孔質複合金属酸化物のFE−SEMにより観察された画像を図1に示す。
【0027】
なお、上記の多孔質複合金属酸化物の製造方法においては、焼成前の撹拌の程度によって、触媒の粒子径を制御することが可能であり、撹拌の程度が小さい場合は、触媒の粒子径が大きくなり、撹拌の程度を大きくすることで、得られる触媒の粒子径が小さくなる。例えば、硝酸マグネシウム六水和物と硝酸ニッケル六水和物とイオン交換水とグリシンの組成体を一緒にしてマグネットスターラーなどの撹拌能力の低い混合方法で混合すると、ニッケルのリッチゾーンが大きくなり、触媒の粒子径が大きくなる。また、同一の撹拌装置を用いた場合でも、その混合時間を変更することで撹拌の程度を異ならせることも可能である。上記の多孔質複合金属酸化物の製造方法において、遊星式撹拌脱泡装置による混合時間を、1分(実施例1)、2分(実施例2)及び10分(実施例3)と異ならせた場合に得られる多孔質複合金属酸化物の粒子径を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
[触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造]
[実施例4及び5]
[ナノカーボン製造装置]
多孔質触媒支援化学的気相成長法を用いた大型の量産装置として、ロータリーキルン及びスクリューコンベアの併用方式を採用し、上述のようにして得られた実施例1にかかる多孔質複合金属酸化物を触媒として触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボンの製造を行った。用いたナノカーボン製造装置を図2により説明する。このロータリーキルン及びスクリューコンベアの併用方式を採用したナノカーボン製造装置30は、電気炉31内にロータリーキルン32が配置されている。
【0030】
ロータリーキルン32は図示省略したモーターによって所定の一定速度で回転されている。電気炉31は、ロータリーキルン32の長さ方向に亘って、触媒活性化ゾーン31a、ナノカーボン合成ゾーン31b及び冷却ゾーン31cのそれぞれが個別に所定の温度となるように、温度制御装置34によって制御されている。
【0031】
ロータリーキルン32の入口端32aには、粉塵回収ホッパー32cが設けられており、出口端32bにはナノカーボンと活性触媒体の複合体の排出ホッパー36が配置されている。また、ロータリーキルン32の入口端32aから触媒活性化ゾーン31aに亘って、スクリューコンベア33が配置されている。このスクリューコンベア33の入口端33aには、多孔質複合金属酸化物からなる触媒の供給用ホッパー35が配置されており、出口端33bはロータリーキルン32内に開放されている。
【0032】
そして、ロータリーキルン32の出口端32bには、炭化水素ガスの供給配管37a及び不活性ガスの供給配管37b(なお、ここでは炭化水素ガスの供給配管37aに不活性ガス供給配管37bが接続されているものを示した。)が接続され、同じく入口端32aに接続された粉塵回収ホッパー32cには排ガス配管37cが接続されている。
【0033】
また、スクリューコンベア33の出口端33bには還元性ガス又は不活性ガスの供給配管37dが接続され、入口端33aに配置された触媒の供給用ホッパー35には排ガス配管37eが接続されている。そして、これらの排ガス配管37c及び37eは、共に水素回収システム38aを経て、水素ガスを燃料とする周知の燃料電池システム38bに接続されている。さらに、ロータリーキルン32内の温度、ガス濃度及び圧力を測定するために、適宜各種センシング手段39が設けられている。
【0034】
なお、ロータリーキルン32の直径は150mmであり、触媒活性化ゾーン31a、ナノカーボン合成ゾーン31b及び冷却ゾーン31cのそれぞれの長さは700mmであり、ロータリーキルン32中のナノカーボンと活性触媒体の複合体の占める保有率を10%、合成量0.2kg/hrとなるようにロータリーキルン32及びスクリューコンベア33の運転条件を選定した。
【0035】
[製造準備処理工程]
実施例21のナノカーボン製造装置30において、温度制御装置34により、電気炉31のナノカーボン合成ゾーン31bの温度が600℃±5℃になるように温度制御した。この時、ロータリーキルン32の内部及びスクリューコンベア33の内部を、不活性ガスの供給配管37b及び還元性ガス又は不活性ガスの供給配管37dから不活性ガスの窒素ガスを供給することにより、1%以下の酸素濃度なるまで置換した。
【0036】
[多孔質複合金属酸化物の供給]
上述のようにして作製された多孔質複合金属酸化物の粉体を、触媒の供給用ホッパー35からスクリューコンベア33の入口端33aに12g/hrの定量・定速度で供給した。この時、還元性ガスの供給配管37bより還元性ガスであるアルゴン−5%水素混合ガスを還元性ガス又は不活性ガスの供給配管37dを経てスクリューコンベア33の出口端33bからスクリューコンベア33に供給した。これにより、少なくとも触媒活性化ゾーン31aで多孔質複合金属酸化物であるNiO−MgO多孔体のNiOの一部が活性化した活性触媒体が生成される。
【0037】
[ナノカーボンの合成]
次いで、多孔質複合金属酸化物の粉体がスクリューコンベア33の出口端33b付近に来たことを確認して、不活性ガスの供給配管37bから供給されていた不活性ガスに換えて炭化水素ガスの供給配管37aから炭化水素ガスであるブタンガスを110L/hrの割合で活性触媒体の供給方向に対向するように流した。また、ブタンガスの活性触媒体周辺で反応がスムースに進行させるようにするため、ロータリーキルン32内の圧力は−0.1kPa〜10kPaの範囲に設定した。
【0038】
これにより、触媒活性化ゾーン31aで生成した活性触媒体は、ロータリーキルン32により、運動しながらナノカーボン合成ゾーン31bに搬送され、対向して供給された炭化水素ガスであるブタンガスと接触することにより、ナノカーボンが活性触媒体周辺に合成され、同時に540L/hrの割合で水素ガスが生成される。ナノカーボンと活性触媒体の複合体のナノカーボン合成ゾーン31bでの滞留時間は30分に設定されている。
【0039】
このナノカーボン合成中に、触媒活性化ゾーン31a、ナノカーボン合成ゾーン31b及び冷却ゾーン31cのメタン、水素及び水蒸気の濃度を分析し、炭化水素ガスとしてのメタンガスの流量を制御することにより、触媒活性化ゾーン31aでの水素ガス濃度が80%以上となるように制御した。これによって、触媒活性化ゾーン31aでは、ナノカーボン合成時に生成される水素ガスにより多孔質複合金属酸化物であるNiO−MgO多孔体のNiOの一部が活性化した活性触媒体が連続的に生成される。
【0040】
[ナノカーボンおよび水素ガスの排出]
活性触媒体の上にナノカーボンが合成された複合体は、ロータリーキルン32により、運動しながら冷却ゾーン31cを経由して排出ホッパー36に蓄積される。一方、生成した水素ガスや水蒸気は水素回収システム38aに導かれ、ここで水素が分離されて、さらに燃料電池システム38bにて有効利用される。このようにして得られたナノカーボンと活性触媒体との複合体の倍率を変えたFE−SEMにより観察された画像を図3及び図4に示した。
【0041】
なお、ナノカーボンと活性触媒体の複合体の排出速度は0.25kg/hrであり、1日24時間、15日の連続運転をした結果、89kgの複合体が得られた。合成したナノカーボンを透過電子顕微鏡で構造観察した結果、図5に示すように、カップ形状をしたナノグラフェンが多数積層された、グラフェン積層ナノカーボンであった。
【0042】
上述のようにして得られた、実施例4に係るグラフェン積層ナノカーボンは上記得られたTEM写真から、
外径:18nm、内径:2.9nm、角度:64°であることが導かれ(図6参照)、下記計算式から求められる見掛け密度は、2.21g/cmであった。
見掛け密度 =
(グラファイトの密度)×((外径/2)−(内径/2))/(外径/2)
なお、グラファイトの密度として、2.267の値を用いて計算した。また、角度とは、グラフェン積層ナノカーボンを直線状に配置した際の、チューブの中心軸と、チューブを構成する個々のグラフェン積層ナノカーボンの円錐面部分との交わりによって得られる2本の線分のなす角の角度のことを意味し、図6におけるωに相当する。
また、実施例5に係るグラフェン積層ナノカーボンは、外径:23.1nm、内径:4.9nm、角度:47°見掛け密度:2.16g/cmであった。
【0043】
[実施例6及び7]
実施例6及び7にかかるグラフェン積層ナノカーボンは、触媒として用いた多孔質複合金属酸化物を実施例2に変更した以外は、実施例1と同様にして作製した。得られたTEM写真より、
実施例6は外径:47.9nm、内径:11nm、角度:31°見掛け密度:2.15g/cmで、
実施例7は外径:46.9nm、内径:11.7nm、角度:34°見掛け密度:2.12g/cmであった。
【0044】
[実施例8]
実施例8にかかるグラフェン積層ナノカーボンは、触媒として用いた多孔質複合金属酸化物を実施例3に変更した以外は、実施例1と同様にして作製した。得られたTEM写真より、
実施例8は外径:52nm、内径:12nm、角度:34°見掛け密度:2.15g/cmであった。
【0045】
[比較例1及び2]
比較例1及び2にかかるグラフェン積層ナノカーボンは、以下のようにして作成した。すなわち、原料にベンゼンを用い、ほぼ25℃の蒸気圧となる分圧で、水素気流により反応器に、流量0.3/Hrでチャンバーに送り込んだ。触媒はフェロセンを用い、190℃で気化させ、ほぼ4×10-7mol/sの濃度でチャンバーに送り込んだ。反応温度を1100℃、反応時間を20分として、グラフェン積層ナノカーボンを得た。
比較例1は外径:177nm、内径:107nm、角度:60°見掛け密度:1.44g/cmで、
比較例2は外径:80nm、内径:50nm、角度:60°見掛け密度:1.38g/cmであった。
【0046】
【表2】

[実施例9〜13]
実施例9〜13に係るグラフェン積層ナノカーボンは、第1種の金属の水溶性化合物として(マグネシウム硝酸塩、カルシウム硝酸塩、アルミニウム硝酸塩から1種以上)、第2種の金属の水溶性化合物として(ニッケル硝酸塩、鉄硝酸塩、コバルト硝酸塩から1種以上)の組合せ以外は、実施例4と同様にして作製した。また、グラフェン積層ナノカーボンの合成条件も実施例1と同様にして作製した。それぞれの活性触媒体の上にグラフェン積層ナノカーボンが合成された複合体の合計質量を測定した。このようにして測定された「(グラフェン積層ナノカーボン複合体の質量)/(複合金属酸化物の質量)」を多孔質複合金属酸化物の組成と共に表3にまとめて示した。なお、表3の「(グラフェン積層ナノカーボン複合体の質量)/(複合金属酸化物の質量)」は、(グラフェン積層ナノカーボン複合体の質量)=(活性触媒体の質量+グラフェン積層ナノカーボンの質量)であるので、実質的にグラフェン積層ナノカーボンの合成レート(収量)に対応する数値を表している。
【0047】
【表3】

【0048】
[グラフェン積層ナノカーボンの短片化及び触媒の除去]
上記のようにして得られたグラフェン積層ナノカーボンのうち、実施例4にかかるグラフェン積層ナノカーボンと活性触媒体との複合体について、切断及び洗浄処理を加えた。以下に詳細を示す。
【0049】
[実施例14]
短片化に際して、まず遊星ミルによる一次切断処理を行った。遊星ミル処理には、シンキー製の自転・公転ミキサーARE−310を用いた。ARE−310用300ml容器に、グラフェン積層ナノカーボンと活性触媒体との複合体60gと水105gとジルコニアビーズ60gとを一緒に入れ、2000rpmの回転数にて2分間の粉砕を10分間の休憩を挟み4回実施した。
【0050】
上記遊星ミル処理の前後におけるFE−SEM写真を図7に示す。なお、図7AのFE−SEM写真は処理前で、図7Bは処理後であり、ビーズミル処理により実施例4に係るグラフェン積層ナノカーボンと活性触媒体との複合体(の凝集物)が粒子径として10μm程度まで均一に小さく粉砕されていることが確認できた。
【0051】
続いて、遊星ミル処理後のグラフェン積層ナノカーボンと活性触媒体との複合体について、30%硝酸溶液による化学洗浄処理を実施して触媒を除去した。化学洗浄処理後でも外観は一次切断処理後の複合体と同じ凝集体であるので、解砕するための予備処理を行った。グラフェン積層ナノカーボン同士のバンドル状態またはグラフェン積層ナノカーボンの表面に形成したアモルファス状カーボンを低減するため、加湿した窒素気流中にて850℃で2時間のドライエッチング処理を行った。
【0052】
解砕予備処理したグラフェン積層ナノカーボン1gとイオン交換水99gを計量後、超音波ホモジナイザーで解砕・分散処理し、イオン交換水−1質量%ナノカーボンの分散液を得た。得られた分散液をシリコンウェーハー表面にスピンコーティングしたFE−SEM写真を図8A及び図8Bに示す。図8Aは低倍率、図8Bは図8Aの一部を拡大し高倍率で表示したものである。
【0053】
図8A及び図8Bに示されるようにグラフェン積層ナノカーボンは均一に分散しており、本発明に係るナノカーボンは、非常に分散性が良好であり、水溶媒へ分散させる際に特に分散剤を必要としないことがわかる。また、図8Bから、上記ビーズミルによる一次切断処理により、実施例4に係るカーボンナノチューブは2μm以下の長さに短片化されていることがわかる。
【0054】
続いて、500nmより短くするための二次切断処理として、イオン交換水−1wt%ナノカーボンの分散液について、200MPaでの湿式ジェットミル処理を行った。処理液は直径500μmのチャンネルの中でせん断を受ける繰り返しパス回数により解砕・粉砕が進行する。図9に湿式ジェットミル処理後のFE−SEM画像を示す、図9Aは湿式ジェットミル処理1パス後であり、図9Bは湿式ジェットミル処理5パス後である。図9A及び図9Bに示されるとおり、5回の湿式ジェットミル処理により、ナノカーボンはほぼ100nmの長さに切断されていることがわかる。
【0055】
以上のようにして、実施例14に係る断片化されたグラフェン積層ナノカーボンを得た。なお、500nm以下にする場合には湿式ジェットミルは必須ではなく、ビーズミル、遊星ミルでも粉砕時間を長く処理するほど短くなる。湿式ジェットミルでは粉砕メディアのビーズがないのでコンタミネーションが少ないためより好ましい。
【0056】
また、実施例4にかかるナノカーボンと活性触媒体の複合体に対して、上記一次切断処理前に化学洗浄をし、続いて一次切断処理及び二次切断処理を行った場合、サイズ分布が不均一となり、粒子径が100μm程度の大きな凝集粒が生じていた。したがって、本発明におけるグラフェン積層ナノカーボンの短辺化に際しては、複合体の状態で粉砕しない場合大きい粒子が残留して不均一になりやすいため、複合体の状態で粉砕することが好ましい。
【0057】
[実施例15〜19]
[ナノカーボンのドライ表面修飾処理]
上述のようにして得られた、実施例14に係るグラフェン積層ナノカーボンに、以下のようにしてドライ表面修飾処理を施した。
図10に示したドライ表面修飾処理装置10は、電気炉11内に反応管12としてのφ40mmの石英ガラスチューブが配置されており、この反応管12内にφ35mmのステンレス製の回転ドラム容器13が配置されている。電気炉11はプログラム温度制御装置14によって所定の温度に制御され、また、回転ドラム容器13はモーター15によって所定の回転速度で回転させられるようになっている。
【0058】
ここでは、ステンレス製の回転ドラム容器13内に化学洗浄処理後のグラフェン積層ナノカーボンの粉体16を8.0g挿入し、モーター15により回転ドラム容器13を2rpmの回転速度で回転させ、グラフェン積層ナノカーボンの粉体16を撹拌した。バブラー19により水も同時に供給し、200℃〜750℃まで30分かけて昇温し、所定の表面修飾処理ガスの条件のもと750℃±10℃の温度範囲で120分間維持することでドライ表面修飾処理を行いその後冷却することで、実施例15〜18にかかるドライ表面修飾処理後のグラフェン積層ナノカーボンを作成した。
【0059】
表面修飾処理ガスの条件は、窒素−水素混合ガス(実施例15)、窒素−水素混合ガスのキャリアガスをバブラーとしての水に流す(実施例16)、窒素−水素混合ガスのキャリアガスをバブラーとしての硝酸水溶液に流す(実施例17)、空気(実施例18)、窒素−水素混合ガスのキャリアガスをバブラーとしての硫酸水溶液に流す(実施例19)とした。
【0060】
[グラフェン積層ナノカーボンの予備解砕処理・表層エッチング処理]
なお、上記ナノカーボンのドライ表面修飾処理に先立って、グラフェン積層ナノカーボン同士のバンドル状態またはグラフェン積層ナノカーボンの表面に形成したアモルファス状カーボンを低減する予備解砕処理・表層エッチング処理が重要である。グラフェン積層ナノカーボンを600℃から900℃に加熱したゾーンにグラフェン積層ナノカーボンを供給すると同時に、エッチングガスとして窒素またはアルゴンガスをキャリアガスにより水の蒸気を供給し、10分から20時間保持することによりグラフェン積層ナノカーボンの予備解砕処理してもよい。また、グラフェン積層ナノカーボンを400℃から500℃に加熱したゾーンにグラフェン積層ナノカーボンを供給すると同時に、エッチングガスとして空気を供給し、10分から20時間保持することによりグラフェン積層ナノカーボンの予備解砕処理してもよい。
[イオン交換能の測定]
【0061】
上述のようにして得られた実施例14〜19にかかるドライ表面修飾処理をしていないもしくはドライ表面修飾処理後のグラフェン積層ナノカーボンについて、以下のようにしてイオン交換容量を測定した。
【0062】
カチオン交換基導入量:1N硝酸でH型にしたのち、1NのNaCl水溶液を通水して、Naイオンを吸着させた後水洗浄を行い、1Nの硝酸で脱着し、脱着液について、原子吸光法でNaイオン濃度を求めた。その後エタノールで置換し50℃で2時間真空乾燥を行い乾燥重量を求めカチオン交換基導入量を求めた。尚,原子吸光装置は,セイコー電子工業社製のSAS−727を用いた。
【0063】
アニオン交換基導入量:1Nの水酸化ナトリウム溶液を十分量通水し、アニオン交換基をOH型にした後、1NのNaCl水溶液を通水して、Clイオンを吸着させた後、1Nの硝酸カリウム溶液を十分量通水し、透過液について、沈殿滴定し、Clイオン吸着量を求めた。その後エタノールで置換し50℃で2時間真空乾燥を行い乾燥重量を求めアニオン交換基導入量を求めた。
【0064】
キレート交換基導入量:キレート交換基を導入した焼結体を、1N塩酸でH型にしたのち、100ppmの硫酸銅溶液を通水して、Cuイオンを吸着させ、1N塩酸で脱着し、脱着液について、原子吸光法で銅イオン濃度を求めた。その後エタノールで置換し50℃で2時間真空乾燥を行い乾燥重量を求めキレート交換基導入量を求めた。尚、原子吸光装置は、セイコー電子工業社製のSAS−727を用いた。
【0065】
一般的な陰イオン交換樹脂のイオン交換容量は1meq/gであり、無機陰イオン交換体においても、1meq/gがイオン交換体としての実用的なイオン交換性能の目安となる。
【0066】
なお、イオン交換容量とはイオン交換体の単位質量あたりのイオン交換量を表し、通常イオン交換体1g当たりのミリ当量(meq/g)で表す。結果を表4に纏めて示す。
【0067】
【表4】

【0068】
表4から、実施例14にかかるドライ表面修飾処理前のグラフェン積層ナノカーボンのイオン交換容量が0.12meq/gであり、実施例15〜19にかかるドライ表面修飾処理後のグラフェン積層ナノカーボンのイオン交換容量が0.7meq/gを超えていることがわかる。すなわち、本発明にかかる触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボン製造方法によって得られるナノカーボンによれば、0.1meq/gを超えるイオン交換容量を備えたグラフェン積層ナノカーボンを容易に得ることが可能であり、更に、得られたグラフェン積層ナノカーボンに一般的なドライ表面修飾処理を施すことにより、0.7meq/gを超えるイオン交換容量を備えたグラフェン積層ナノカーボンを得ることが可能であることがわかる。
【0069】
また、図11において、上記特許文献1に開示される、酸化された多層カーボンナノチューブ(比較例3及び4)と実施例15〜19のイオン交換容量の比較を示した。本発明にかかる表面処理されたグラフェン積層ナノカーボンは、実用的なイオン交換性能の目安である1meq/gを越える性能を示すことがわかる
【0070】
[ラマン分光測定によるカーボンの構造解析]
また、上述のようにして得られた実施例15〜18にかかるドライ表面修飾処理後グラフェン積層ナノカーボンについては、実施例14にかかるドライ表面修飾処理をしていないグラフェン積層ナノカーボンとともに、ラマン分光スペクトルを測定した。得られたスペクトルをピーク分離し、G−band1580(1580cm−1付近のピーク)、D−band1346(1346cm−1付近のピーク)、D−band1613(1613cm−1付近のピーク)に着目しそれぞれの半価幅を求め、更に、G−band1580に対するD−band1346またはD−band1613の割合(%)を求めた。結果を表5に纏めて示す。
【0071】
【表5】

【0072】
表5から以下のことがわかる。すなわち、実施例14ではD−band1613のピークが存在しないのに対し、実施例15〜18ではいずれもD−band1613が出現しており、グラフェン積層ナノカーボンを表面修飾処理することにより、D−band1613ピークが出現することが判明した。ゼータ電位もこの処理に関連して変化していることより、このD−band1613ピークはグラフェン積層ナノカーボンの表面に形成された官能基によるものと考えられる。
【0073】
また、実施例16及び18では、G−band1580のピークの半価幅が実施例14の約70%になっており、このことから実施例16及び18のグラフェン積層ナノカーボンは、実施例14のグラフェン積層ナノカーボンに対して表層に存在するアモルファスカーボンが低減して、表層の結晶性が向上しているものと考えられる。
【0074】
従って、ナノカーボンのドライ表面修飾処理に先立って、グラフェン積層ナノカーボンを750℃に加熱したゾーンにグラフェン積層ナノカーボンを供給すると同時に、窒素−5%水素ガスをキャリアガスにより水の蒸気を供給し、2時間保持することによりグラフェン積層ナノカーボンの予備解砕処理することは高機能なグラフェン積層ナノカーボンを製造する上で重要である。
【0075】
また、イオン交換容量が0.7meq/g以上、15.0meq/g以下であるグラフェン積層ナノカーボンを製造する上で、ラマン分光スペクトル測定により得られた(D−band1613の半価幅)/(G−band1580の半価幅)の割合を10%以上50%以下となるように管理することも重要である。
【0076】
[FTIRによる表面官能基の評価]
実施例14〜19にかかるドライ表面修飾処理をしていないもしくはドライ表面修飾処理後のグラフェン積層ナノカーボンについて、日本分光株式会社製FT/IR−6300赤外分光光度計により、FTIRスペクトルを評価した。なお、各ピークは以下を基準に判定した。
C−H:3000〜2840cm−1と1600〜1400cm−1
C−O−H:3650〜3580cm−1と3550〜3200cm−1
C=O:1740〜1690cm−1
COOH:3300〜2500cm−1と1720〜1700cm−1と1000〜850cm−1
C−SOH:1030〜1060、1300〜1350cm−1、1120〜1160cm−1
C−CH=CH:3100〜3000cm−1と1600〜1580cm−1と1500〜1450cm−1
C−NO:1600−1500cm−1と1400〜1300cm−1
C−NH:3500〜3400cm−1と1640〜1560cm−1
【0077】
各グラフェン積層ナノカーボンは、それぞれ下記の官能基のピークを検出し、ドライ表面修飾処理により、実施例15〜19において各官能基が導入されていることが確認された。
実施例14:C−H
実施例15:C−H、C−CH=CH
実施例16:C−H、COOH
実施例17:C−H、C−O−H、COOH、C=O、C−NH、C−NO
実施例18:C−O−H、COOH、C=O
実施例19:C−H、C−O−H、COOH、C=O、C−SO
【0078】
[分散性評価]
更に、実施例14〜19にかかるドライ表面修飾処理をしていないもしくはドライ表面修飾処理後のグラフェン積層ナノカーボンについて、下記のようにして分散性の評価を行った。すなわち、グラフェン積層ナノカーボン0.01gとイオン交換水9.99gを計量後、超音波ホモジナイザーで解砕・分散処理することでグラフェン積層ナノカーボン分散液を作成し、得られた分散液を静置後にナノカーボンが分離する時間を計測した。なお20日間を超えても分離が見られないものは「分離せず」とした。更に、上記グラフェン積層ナノカーボン分散液をイオン交換水で10倍に希釈した10倍希釈分散液のゼータ電位をゼータサイザーにより測定した。結果を纏めて表6に示す。
【0079】
【表6】

【0080】
表6より、実施例14〜19にかかるグラフェン積層ナノカーボンは、非常に分散性に優れていることが示され、本発明にかかる触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボン製造方法によれば、非常に分散性の高いナノカーボンが得られることがわかる。
【符号の説明】
【0081】
10…ドライ表面修飾処理装置
11…電気炉
12…反応管
13…回転ドラム容器
14…プログラム温度制御装置
15…モーター
16…粉体
19…水
30…ナノカーボン製造装置
31b…ナノカーボン合成ゾーン
31a…触媒活性化ゾーン
31…電気炉
31c…冷却ゾーン
32…ロータリーキルン
32c…粉塵回収ホッパー
33…スクリューコンベア
34…温度制御装置
35…供給用ホッパー
36…排出ホッパー
37a、37b、37d…供給配管
37c、37e…排ガス配管
38a…水素回収システム
38b…燃料電池システム
39…各種センシング手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換容量が0.1meq/g以上、15.0meq/g以下であることを特徴とするグラフェン積層ナノカーボン。
【請求項2】
コーン形状ないしカップ型のナノグラフェンが複数積層されて、全体としてチューブ状をなしているグラフェン積層ナノカーボンであって、
透過型電子顕微鏡による格子像写真に基づいて求められる外径及び内径が、外径10nm以上100nm以下、内径1nm以上30nm以下であり、
直線状に配置した際の中心軸を通る平面と前記ナノグラフェンの円錐面部分との交わりによって得られる2本の線分のなす角の角度が、20°以上70°以下であり、
前記外径及び前記内径を基に、下記計算式によって求められる見掛け密度が、1.9g/cm以上2.2g/cm以下であることを特徴とする、グラフェン積層ナノカーボン。
見掛け密度 =
(グラファイトの密度)×((外径/2)−(内径/2))/(外径/2)
【請求項3】
前記外径が15nm以上100nm以下、前記内径が1.5nm以上30nm以下であり、
前記見掛け密度が2.0g/cm以上2.2g/cm以下であることを特徴とする、請求項2に記載のグラフェン積層ナノカーボン。
【請求項4】
長さが、50nm以上、2μm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のグラフェン積層ナノカーボン。
【請求項5】
マグネシウム、カルシウム及びアルミニウムからなる第1の金属群から選ばれる少なくとも1種以上の金属の酸化物と、
ニッケル、鉄及びコバルトからなる第2の金属群から選ばれる少なくとも1種以上の金属の酸化物と、から構成された多孔質複合金属酸化物であって、
前記第2の金属群から選ばれる少なくとも1種以上の金属酸化物の含有割合が、前記多孔質複合金属酸化物の総質量に対して、50質量%以上95質量%以下であり、かつ、粒子径が8nm以上100nm以下であることを特徴とする、触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボン製造用触媒。
【請求項6】
マグネシウム硝酸塩、カルシウム硝酸塩及びアルミニウム硝酸塩から選ばれる少なくとも1種を、5質量%以上20質量%以下、
ニッケル硝酸塩、鉄硝酸塩及びコバルト硝酸塩から選ばれる少なくとも1種を、40質量%以上55質量%以下、
グリシンを20質量%以上35質量%以下、及び、
イオン交換水を10質量%以上18質量%以下の割合で混合した後、空気雰囲気中で焼成することを特徴とする、触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボン製造用触媒の製造方法。
【請求項7】
触媒活性化ゾーン、ナノカーボン合成ゾーン及び冷却ゾーンを有する炉内に設置した反応管内に、多孔質複合金属酸化物と、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、イソプレン、n−ブタンから選択される少なくとも1種の炭化水素ガスとを連続的に供給し、
前記触媒活性化ゾーンにおいて、前記多孔質複合金属酸化物の一部が触媒活性した活性触媒体が得られ、
前記ナノカーボン合成ゾーンにおいて、前記炭化水素ガスと前記活性触媒体とを接触させることでナノカーボンが連続的に合成され、
前記活性触媒体と前記連続的に合成されたナノカーボンとの複合体を、前記冷却ゾーンを経て前記反応管内より取り出すことで連続的にナノカーボンを製造する、触媒支援化学的気相成長法による連続的ナノカーボン製造方法において、
前記多孔質複合金属酸化物として、
マグネシウム硝酸塩、カルシウム硝酸塩及びアルミニウム硝酸塩から選ばれる少なくとも1種を、5質量%以上20質量%以下、
ニッケル硝酸塩、鉄硝酸塩及びコバルト硝酸塩から選ばれる少なくとも1種を、40質量%以上55質量%以下、
グリシンを20質量%以上35質量%以下、及び、
イオン交換水を10質量%以上18質量%以下の割合で混合した後、空気雰囲気中で焼成することで得られる多孔質複合金属酸化物を用いることを特徴とする、グラフェン積層ナノカーボンの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のグラフェン積層ナノカーボンの製造方法によってナノカーボンと活性触媒との複合体を得た後、
前記ナノカーボンと活性触媒との複合体と、ジルコニアビーズと、水とが収容された密閉容器を400rpm以上の速度で高速遊星回転させることで、前記ナノカーボンと活性触媒との複合体を粉砕し、
粉砕された前記ナノカーボンと活性触媒との複合体を化学洗浄することで前記活性触媒を除去することを特徴とするグラフェン積層ナノカーボンの製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のグラフェン積層ナノカーボンの製造方法によって得られたナノカーボンに対し、
400℃から900℃に加熱したゾーンに該グラフェン積層ナノカーボンを供給すると同時に、活性ガスとして窒素またはアルゴンガスをキャリアガスにより水、硝酸、硫酸から1種を選択した液体の蒸気を供給し、10分から20時間保持することによりドライエッチング処理をすることを特徴とするグラフェン積層ナノカーボンの製造方法。

【図2】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−166989(P2012−166989A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30285(P2011−30285)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(500462834)ビジョン開発株式会社 (51)
【Fターム(参考)】