説明

グリーンボールの加工装置およびグリーンボールの加工方法

【課題】量産性が高いグリーンボールの加工装置およびグリーンボールの加工方法を提供する。
【解決手段】グリーンボールの加工装置は、上加工定盤部と下加工定盤部とを備えている。上加工定盤部が第1の高さ位置にある状態で、上加工定盤部と下加工定盤部とは、下加工定盤部の第1の平面と上加工定盤部の第2の平面との間にグリーンボールを挟み込むための内部空間を有している。上加工定盤部は、第1の高さ位置で内部空間にグリーンボールを挿入するための挿入部を含んでいる。上加工定盤部と下加工定盤部とは、上加工定盤部が第1の高さ位置にある状態で内部空間にグリーンボールを保持でき、かつ上加工定盤部が第2の高さ位置にある状態で、グリーンボールを上加工定盤部と下加工定盤部との間の空間から排出できるように構成されている。下加工定盤部は、グリーンボールを下加工定盤部の第1の平面上から排出するための排出部を含み、排出部は内部空間の範囲外に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリーンボールの加工装置およびグリーンボールの加工方法に関し、特に、グリーンボールを研磨加工するためのグリーンボールの加工装置およびグリーンボールの加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド軸受、オールセラミックス軸受などにセラミックス製ボールが使用されている。従来、軸受用のセラミックス製ボールを製造する場合、セラミックスの未焼結のボール、すなわちグリーンボールが成形される。このグリーンボールが焼結された後に研磨される。これにより、グリーンボールは真球に近い形状に仕上げられている。
【0003】
しかし、セラミックス製ボールは硬度が非常に高く、そのため加工時間が長くなっている。焼結前のグリーンボールは、硬度が低いため加工が容易であるので、焼結後の研磨に比べて格段に高い能率で加工できる。このような背景を基に、たとえば、特開平7−314308号(特許文献1)にグリーンボールの加工方法および加工装置が提案されている。
【0004】
この公報のグリーンボールの加工方法は、互いに平面で対向する一対の加工定盤間に複数個のセラミックスのグリーンボールを挟み込み、両加工定盤の対向平面に沿う複数系統の相対移動で、前記グリーンボールに公転と、各種方向の自転とを行わせながら、グリーンボールを真球に近い形状に研磨する。
【0005】
また、この公報のグリーンボールの加工装置では、下加工定盤の加工用の粗面が研磨粉の通過可能な格子目の粗面構成部材で形成されている。そして、粗面構成部材の下側の加工定盤部分に上面に開口する多数の孔が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−314308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この公報では、複数個のグリーンボールを挟んで加工するため、同時に複数個のグリーンボールを加工することができる。しかしながら、この公報では、下加工定盤のグリーンボールを挟み込む領域に複数個のグリーンボールを載せてから上加工定盤でグリーンボールを挟み込むため、複数個のグリーンボールを挟み込む作業に時間がかかる。
【0008】
また、複数個のグリーンボールを研磨加工した後、研磨加工された複数個のグリーンボールが加工装置から取り除かれてから下加工定盤のグリーンボールを挟み込む領域に新たな複数個のグリーンボールが載せられる。このため、研磨加工された複数個のグリーンボールを加工装置から取り除き、新たな複数個のグリーンボールを下加工定盤に載せる作業に時間がかかる。したがって、この公報では高い量産性が得られない。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、量産性が高いグリーンボールの加工装置およびグリーンボールの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のグリーンボールの加工装置は、複数のグリーンボールを研磨加工するためのグリーンボールの加工装置であって、第1の平面を有する下加工定盤部と、下加工定盤部の上に配置され、かつ第1の平面と対向する第2の平面を有し、かつ下加工定盤部に対して相対的に回転可能であり、かつ下加工定盤部に対して第1の高さ位置と第1の高さ位置より高い第2の高さ位置との間で相対的に上下動可能な上加工定盤部とを備えている。上加工定盤部が第1の高さ位置にある状態で、上加工定盤部と下加工定盤部とは、第1の平面と第2の平面との間にグリーンボールを挟み込むための内部空間を有している。上加工定盤部は、第1の高さ位置で内部空間にグリーンボールを挿入するための挿入部を含んでいる。上加工定盤部と下加工定盤部とは、上加工定盤部が第1の高さ位置にある状態で内部空間にグリーンボールを保持でき、かつ上加工定盤部が第2の高さ位置にある状態で、グリーンボールを上加工定盤部と下加工定盤部との間の空間から排出できるように構成されている。下加工定盤部は、グリーンボールを下加工定盤部の第1の平面上から排出するための排出部を含み、排出部は内部空間の範囲外に構成されている。
【0011】
本発明のグリーンボールの加工装置によれば、上加工定盤部が第1の高さ位置にある状態で内部空間にグリーンボールを保持でき、かつ上加工定盤部と下加工定盤部とは、上加工定盤部が第2の高さ位置にある状態で、グリーンボールを上加工定盤部と下加工定盤部との間の空間から排出できるように構成されている。このため、上加工定盤部が第2の高さ位置に移動することによって研磨加工後の複数のグリーンボールが上加工定盤部と下加工定盤部との間の空間から排出された状態で、上加工定盤部が第1の高さ位置に移動することによって内部空間において新たな複数のグリーンボールを研磨加工することができる。したがって、研磨加工後の複数のグリーンボールの上加工定盤部と下加工定盤部との間の空間からの排出と新たなグリーンボールの内部空間における研磨加工を同時に行うことができる。これにより、連続的に複数のグリーンボールを研磨することができるため、研磨加工されるグリーンボールの量を増やすことができる。よって、量産性を向上することができる。
【0012】
また、排出部は内部空間の範囲外に構成されているため、研磨加工後の複数のグリーンボールを排出部から排出しつつ新たな複数のグリーンボールを内部空間で研磨加工することができる。また、下加工定盤部はグリーンボールを下加工定盤部の第1の平面上から排出するための排出部を含んでいるため、研磨加工後の複数のグリーンボールを下加工定盤部2から自動的に排出することができる。したがって、研磨加工後の複数のグリーンボールを下加工定盤部から取り除くために、下加工定盤部を停止させる必要がない。これにより、連続的に複数のグリーンボールを研磨することができるため、研磨加工されるグリーンボールの量を増やすことができる。よって、量産性を向上することができる。
【0013】
また、上加工定盤部が第1の高さ位置にある状態で、内部空間に挿入部からグリーンボールが挿入され、内部空間にグリーンボールが保持される。内部空間が形成された状態で、複数のグリーンボールが挿入されるため、複数のグリーンボールを内部空間に迅速に挟み込むことができる。そのため、複数のグリーンボールを内部空間に挟み込む作業時間を短くすることができる。よって、量産性を向上することができる。
【0014】
上記のグリーンボールの加工装置において好ましくは、挿入部は、研磨加工前のグリーンボールが上加工定盤部を通過可能なように上加工定盤部に設けられた挿入用貫通孔を有している。これにより、挿入用貫通孔は貫通孔であるため、グリーンボールを内部空間に迅速に挿入することができる。よって、量産性を向上することができる。
【0015】
上記のグリーンボールの加工装置において好ましくは、挿入用貫通孔は、上加工定盤部の回転軸部内に形成されている。これにより、内部空間に挿入されたグリーンボールは、遠心力により回転軸部内に形成された挿入用貫通孔と第1の平面との間の空間から上ガイド壁の内周に移動する。そのため、回転軸部内に形成された挿入用貫通孔と第1の平面との間の空間では複数のグリーンボールは保持されない。したがって、複数のグリーンボールが保持されない位置に挿入用貫通孔が形成されているため、挿入用貫通孔が研磨加工の妨げとならない。このため、挿入用貫通孔により研磨加工の効率が低下しない。よって、量産性を向上することができる。
【0016】
上記のグリーンボールの加工装置において好ましくは、挿入用貫通孔は、上加工定盤部の回転軸部よりも外周側に形成されている。これにより、上加工定盤部の回転軸部を細くすることができる。このため、上加工定盤部を軽量化することができる。そのため、上加工定盤部の回転速度を向上させることができる。よって、量産性を向上させることができる。
【0017】
上記のグリーンボールの加工装置において好ましくは、挿入用貫通孔は、上加工定盤部の回転軸部内に形成された第1の貫通孔と、回転軸部よりも外周側に形成された第2の貫通孔とを含んでいる。これにより、第1の貫通孔と第2の貫通孔との両方から複数のグリーンボールを内部空間に挿入することができる。そのため、内部空間に複数のグリーンボールを迅速に挿入することができる。よって、量産性を向上させることができる。
【0018】
上記のグリーンボールの加工装置において好ましくは、挿入用貫通孔は、第1の平面に対して斜めに延びるように形成されている。これによりグリーンボールは第1の平面に対して斜めの角度で内部空間に挿入される。そのため、先に内部空間に挿入されたグリーンボールは、次に内部空間に挿入されたグリーンボールによって押されて第1の平面に沿う方向に移動する。また、内部空間に挿入されたグリーンボールが上ガイド壁まで移動しやすい。
【0019】
このため、挿入用貫通孔の直径が小さい場合でも挿入用貫通孔と第1の平面との間にグリーンボールが詰まることを抑制することができる。したがって、グリーンボールの挿入の効率を向上することができる。よって、量産性を向上させることができる。
【0020】
上記のグリーンボールの加工装置において好ましくは、挿入用貫通孔は、グリーンボールの直径の2倍より大きい直径の円形を有している。このため、挿入用貫通孔にグリーンボールを2つ同時に挿入しても、挿入用貫通孔にグリーンボールが詰まることがない。そのため、グリーンボールを内部空間に挿入する作業時間を短くすることができる。よって、量産性を向上することができる。
【0021】
上記のグリーンボールの加工装置において好ましくは、排出部は、研磨加工後のグリーンボールが下加工定盤部を通過可能なように下加工定盤部に設けられた排出用貫通孔を含んでいる。これにより、排出用貫通孔は、貫通孔であるため迅速にグリーンボールを排出部から排出することができる。よって、量産性を向上することができる。
【0022】
上記のグリーンボールの加工装置において好ましくは、排出部は、第1の平面に対して窪んだ谷部を含み、谷部は、グリーンボールを排出用貫通孔に案内するように構成されている。これにより、谷部により複数のグリーンボールが列となって排出用貫通孔に案内されるため、排出部でグリーンボールが詰まることが防止される。このため、複数のグリーンボールの排出の効率を向上することができる。よって、量産性を向上することができる。
【0023】
上記のグリーンボールの加工装置において好ましくは、上加工定盤部と下加工定盤部との双方が回転するよう構成されている。これにより、複数のグリーンボールの研磨加工と、研磨加工後の複数のグリーンボールの上加工定盤部と下加工定盤部との間の空間からの排出とを独立して行うことができる。このため、複数のグリーンボールの研磨加工および排出の効率を向上することができる。よって、量産性を向上することができる。
【0024】
上記のグリーンボールの加工装置において好ましくは、上加工定盤部の回転中心と下加工定盤部の回転中心とが偏心するように構成されている。このため、上加工定盤部と下加工定盤部とに挟み込まれた複数のグリーンボールをあらゆる方向に自転させることができる。そのため、複数のグリーンボールを短い時間で研磨加工することができる。よって、量産性を向上することができる。
【0025】
上記のグリーンボールの加工装置において好ましくは、下加工定盤部は、グリーンボールが研磨されて生じた研磨粉を内部空間から排出するための孔を含んでいる。このため、研磨粉が内部空間に詰まることを防止することができる。したがって、複数のグリーンボールの研磨加工の効率を向上することができる。よって、量産性を向上することができる。
【0026】
本発明のグリーンボールの加工方法は、上加工定盤部と下加工定盤部とで形成された内部空間に挿入された複数のグリーンボールを上加工定盤部と下加工定盤部とで挟み込んで上加工定盤部を下加工定盤部に対して相対的に回転させて複数のグリーンボールを研磨加工する工程と、研磨加工後の複数のグリーンボールが内部空間から下加工定盤部に排出された状態で、研磨加工後の複数のグリーンボールを下加工定盤部から排出するための排出部へ研磨加工後の複数のグリーンボールを案内しながら、内部空間に新たな複数のグリーンボールを挟み込んで上加工定盤部を下加工定盤部に対して相対的に回転させて新たな複数のグリーンボールを研磨加工する工程とを備えている。
【0027】
本実施の形態のグリーンボールの加工方法によれば、研磨加工後の複数のグリーンボールが内部空間から下加工定盤部に排出された状態で、排出部へ研磨加工後の複数のグリーンボールを案内しながら、内部空間に新たな複数のグリーンボールが挟み込まれて研磨加工される。このため、研磨加工後の複数のグリーンボールを排出部へ案内しながら新たなグリーンボールを内部空間で研磨加工することができる。これにより、連続的に複数のグリーンボールを研磨することができるため、研磨加工されるグリーンボールの量を増やすことができる。よって、量産性を向上することができる。
【0028】
上記のグリーンボールの加工方法において好ましくは、上加工定盤部に内部空間に連通する貫通孔が形成されており、貫通孔を通じて複数のグリーンボールが内部空間に挿入され、排出部は内部空間の範囲外に形成された排出孔を有しており、排出孔を通じて研磨加工後の複数のグリーンボールが下加工定盤部から排出される。
【0029】
これにより、貫通孔を通じて複数のグリーンボールが内部空間に挿入されるため、貫通孔を通してグリーンボールを内部空間に迅速に挿入することができる。また、内部空間に複数のグリーンボールが挿入されるため、複数のグリーンボールを内部空間に挟み込む作業時間を短くすることができる。よって、量産性を向上することができる。
【0030】
また、排出部は内部空間の範囲外に形成された排出孔を有しており、排出孔を通じて研磨加工後の複数のグリーンボールが下加工定盤部から排出されるため、研磨加工後のグリーンボールを排出部から排出しつつ新たなグリーンボールを内部空間で研磨加工することができる。これにより、連続的に複数のグリーンボールを研磨することができるため、研磨加工されるグリーンボールの量を増やすことができる。よって、量産性を向上することができる。
【0031】
また、研磨加工後の複数のグリーンボールを下加工定盤部から自動的に排出することができる。したがって、研磨加工後の複数のグリーンボールを下加工定盤部から取り除くために、下加工定盤部を停止させる必要がない。これにより、連続的に複数のグリーンボールを研磨することができるため、研磨加工されるグリーンボールの量を増やすことができる。よって、量産性を向上することができる。
【0032】
上記のグリーンボールの加工方法において好ましくは、上加工定盤部を下加工定盤部に対して相対的に上側に移動させることにより内部空間から研磨加工後の複数のグリーンボールが排出され、上加工定盤部を下加工定盤部に対して相対的に下側に移動させることにより内部空間に新たなグリーンボールを挟み込むことが可能となる。
【0033】
このため、上加工定盤部を下加工定盤部に相対的に上下動させることで、内部空間から研磨加工後の複数のグリーンボールを排出し、さらに内部空間に新たな複数のグリーンボールを挟み込むことができる。したがって、複数のグリーンボールを内部空間から排出させ、かつ内部空間に挟み込むことを迅速に行うことができる。よって、量産性を向上することができる。
【0034】
上記のグリーンボールの加工方法において好ましくは、上加工定盤部と前記下加工定盤部との双方が回転する。これにより、上加工定盤部と下加工定盤部との双方が回転するため、複数のグリーンボールの研磨加工と、研磨加工後の複数のグリーンボールの上加工定盤部と下加工定盤部との間の空間からの排出とを独立して行うことができる。このため、複数のグリーンボールの研磨加工および排出の効率を向上することができる。よって、量産性を向上することができる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明によれば、量産性の高いグリーンボールの加工装置およびグリーンボールの加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態1におけるグリーンボールの加工装置の概略断面図であって、上加工定盤部が第1の高さ位置にある状態を示す概略断面図である。
【図2】図1のグリーンボールの加工装置を示す概略平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う概略断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1における下加工定盤の研磨加工用の粗面の概略平面図である。
【図5】本発明の実施の形態1におけるグリーンボールの加工装置の概略断面図であって、上加工定盤部が第2の高さ位置にある状態で、グリーンボールが上加工定盤部と下加工定盤部との間の空間から移動した様子を示す概略断面図である。
【図6】図5のグリーンボールの加工装置を示す概略平面図である。
【図7】本発明の実施の形態1におけるグリーンボールの加工装置において、グリーンボールが下加工定盤部から排出部へ移動する軌跡の一例を示す概略平面図である。
【図8】本発明の実施の形態1におけるグリーンボールの加工装置の概略断面図であって、上加工定盤部が第1の高さ位置にある状態で、グリーンボールが下加工定盤部から排出部へ移動する様子を示す概略断面図である。
【図9】図8のグリーンボールの加工装置を示す概略平面図である。
【図10】本発明の実施の形態2におけるグリーンボールの加工装置の概略断面図であって、上加工定盤部が第1の高さ位置にある状態を示す概略断面図である。
【図11】図10のグリーンボールの加工装置を示す概略平面図である。
【図12】本発明の実施の形態3におけるグリーンボールの加工装置の概略断面図であって、上加工定盤部が第1の高さ位置にある状態を示す概略断面図である。
【図13】本発明の実施の形態4におけるグリーンボールの加工装置の概略断面図であって、上加工定盤部が第1の高さ位置にある状態を示す概略断面図である。
【図14】図13のグリーンボールの加工装置を示す概略平面図である。
【図15】本発明の実施例および比較例について、加工所要時間と加工回数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
最初に、本発明の実施の形態1のグリーンボールの加工装置の構成について説明する。
【0038】
図1および図2を参照して、本実施の形態のグリーンボール10の加工装置1は、下加工定盤部2と、上加工定盤部3と、第1回転駆動装置13と、昇降装置14と、第2回転駆動装置15とを主に有している。図1は、図2におけるI−I線に沿った概略断面図である。
【0039】
このグリーンボール10の加工装置1は、複数のグリーンボール10を研磨加工するためのものである。下加工定盤部2と上加工定盤部3とは、上加工定盤部3が第1の高さ位置H1にある状態で、下加工定盤部2の第1の平面2aと上加工定盤部3の第2の平面3aとの間のグリーンボール10を挟み込むための内部空間4で複数のグリーンボール10を挟み込んで研磨加工するためのものである。この第1の高さ位置H1とは、上加工定盤部3と下加工定盤部2とでグリーンボール10を挟み込んで研磨加工可能な下加工定盤部2に対する上加工定盤部3の高さ位置である。
【0040】
第1回転駆動装置13は、上加工定盤部3を回転中心J2まわりに回転駆動させるためのものである。昇降装置14は、上加工定盤部3を下加工定盤部2に対して昇降移動させるためのものである。第2回転駆動装置15は、下加工定盤部2を回転中心J1まわりに回転駆動させるためのものである。
【0041】
上加工定盤部3は、下加工定盤部2の上に配置されている。上加工定盤部3は、回転軸部3cと、回転軸部3cの下加工定盤部2側において回転軸部3cの外周側に拡がるように設けられた上フランジ部3dとを有している。上加工定盤部3は、第1の高さ位置H1でグリーンボール10を図1中矢印A1に示すように内部空間4に挿入するための挿入部5を有している。挿入部5は、研磨加工前のグリーンボール10が上加工定盤部3を通過可能なように上加工定盤部3に設けられた挿入用貫通孔5aを有している。挿入用貫通孔5aは、回転軸部3c内において回転軸部3cの径方向の中央に回転軸部3cの軸方向に沿って内部空間4に達するように貫通孔を有している。挿入用貫通孔5aは、グリーンボール10の直径の2倍より大きい直径の円形を有している。
【0042】
上加工定盤部3は、一部の回転軸部3cおよび一部の上フランジ部3dの下加工定盤部2側の面において、下加工定盤部2の第1の平面2aと対向する第2の平面3aを有している。なお、挿入部5が形成された部分には第2の平面3aは設けられていない。第2の平面3aにはグリーンボール10を押さえるゴムまたは樹脂製の弾性板12が設けられている。上加工定盤部3の第2の平面3aの外周縁には円筒形状の上ガイド壁3bが下側に突き出すように設けられている。上ガイド壁3bの突き出し量はグリーンボール10が上ガイド壁3bを超えないように構成されている。
【0043】
下加工定盤部2は、下回転軸部2cと、下回転軸部2cの上加工定盤部3側において下回転軸部2cから外周側に拡がるように設けられた下フランジ部2dとを有している。下加工定盤部2は、上加工定盤部3の第2の平面3aの全面と対向するように上加工定盤部3よりも大きく形成されている。下加工定盤部2は、下回転軸部2cおよび一部の下フランジ部2dの上加工定盤部3側の面において、第1の平面2aを有している。下加工定盤部2の第1の平面2aには、金網または布などの格子目の粗面構成部材11が設けられている。この粗面構成部材11により研磨用の粗面が形成されている。
【0044】
下加工定盤部2は、グリーンボール10が研磨されて生じた研磨粉10aを排出するための孔8を有している。この孔8は、第1の平面2aに開口するように形成されている。この孔8は複数個形成されている。下加工定盤部2は、この孔8によってハニカム構造を有している。孔8は下加工定盤部2を貫通するように構成されているが、貫通しないように構成されていてもよい。
【0045】
下加工定盤部2の第1の平面2aおよび排出部6の外周縁には円筒形状の下ガイド壁2bが上側に突き出すように設けられている。下ガイド壁2bの突き出し量は、グリーンボール10が下ガイド壁2bを超えて移動しないように構成されている。
【0046】
下加工定盤部2は、グリーンボール10を下加工定盤部2の第1の平面2a上から排出するための排出部6を有している。排出部6は内部空間4の範囲外に構成されている。排出部6は、第1の平面2aに連続して設けられており、第1の平面2aより下方に傾斜するように構成されている。排出部6は、第1の平面2aの外側に配置されている。排出部6は、研磨加工後のグリーンボール10が下加工定盤部2を通過可能なように下加工定盤部2に設けられた排出用貫通孔6aを有している。
【0047】
図2および図3を参照して、排出部6は、第1の平面2aに対して窪んだ谷部7を有している。谷部7は、排出部6の短手方向の中央が低くなるように窪んだ凹形状を有するように構成されており、長手方向に沿って形成されている。谷部7は、グリーンボール10を第1の平面2aから排出用貫通孔6aに案内するように構成されている。
【0048】
図4を参照して、粗面構成部材11として金網を使用する場合は、網の目が1mm以下のもの、たとえば60メッシュや100メッシュのものが好ましい。布の場合は、アムンゼン織りの合成繊維等が使用できる。なお、研磨粉が落ちる構造とはならないが、粗面構成部材11としてエメリー紙(♯60〜500)を使用しても良く、また下加工定盤部2を電着砥石としてもよく、また下加工定盤部2の第1の平面2aをローレット加工して研磨用粗面としてもよい。
【0049】
第1回転駆動装置13は、上加工定盤部3に接続されており、第1回転駆動装置13の駆動力により上加工定盤部3を回転中心J2まわりに図中矢印R2方向に回転させるように構成されている。昇降装置14は、上加工定盤部3に接続されており、昇降装置14の駆動力により上加工定盤部3を下加工定盤部2に対して昇降させるように構成されている。第2回転駆動装置15は、下加工定盤部2に接続されており、第2回転駆動装置15の駆動力により第2回転駆動装置15を回転中心J1まわりに図中矢印R1方向に回転させるように構成されている。
【0050】
なお、第1回転駆動装置13および第2回転駆動装置15の回転方向は上記に限定されない。第1回転駆動装置13および第2回転駆動装置15の回転方向は、互いに同一方向でもよく、また互いに逆方向でもよい。
【0051】
上加工定盤部3の回転中心J2と下加工定盤部2の回転中心J1とは下加工定盤部2と上加工定盤部3との重なる方向からみて偏心するように構成されている。
【0052】
なお、上加工定盤部3には第1回転駆動装置13が接続されていなくてもよい。また、上加工定盤部3は下加工定盤部2の駆動力がグリーンボール10を介して伝わることにより回転するよう構成されていてもよい。また、上加工定盤部3は回転しないように構成されていてもよい。
【0053】
なお、昇降装置14が上加工定盤部3に接続されている場合について説明したが、昇降装置14は下加工定盤部2に接続されていてもよい。また、昇降装置14は、上加工定盤部3と下加工定盤部2の双方に接続されていてもよい。
【0054】
つまり、上加工定盤部3は、下加工定盤部2に対して相対的に回転可能に構成されていればよい。また、上加工定盤部3は、下加工定盤部2に対して第1の高さ位置H1と第1の高さ位置H1より高い第2の高さ位置H2との間で相対的に上下動可能に構成されていればよい。この第2の高さ位置とは、上加工定盤部3と下加工定盤部2との間からグリーンボール10が排出可能な下加工定盤部2に対する上加工定盤部3高さ位置である。
【0055】
上加工定盤部3と下加工定盤部2とは、上加工定盤部3が下加工定盤部2に対して相対的に下側に移動することによって上加工定盤部3が第1の高さ位置H1にある状態で内部空間4にグリーンボール10を保持することができるように構成されている。また、上加工定盤部3と下加工定盤部2とは、上加工定盤部3が下加工定盤部2に対して相対的に下側に移動することによって上加工定盤部3が第2の高さ位置H2にある状態で、グリーンボール10を上加工定盤部3と下加工定盤部2との間の空間から排出できるように構成されている。
【0056】
次に、本実施の形態のグリーンボールの加工方法について説明する。
図1および図2を参照して、第2回転駆動装置15により下加工定盤部2が回転中心J2まわりに図中矢印R2方向に回転されている。下加工定盤部2が回転している状態で、昇降装置14により上加工定盤部3が下加工定盤部2に対して相対的に下側に移動することによって上加工定盤部3が第1の高さ位置H1に配置される。この上加工定盤部3が第1の高さ位置H1にある状態で、上加工定盤部3と下加工定盤部2とで形成された内部空間4に複数のグリーンボール10が挿入される。上加工定盤部3に内部空間4に連通する貫通孔である挿入用貫通孔5aが形成されている。挿入用貫通孔5aを通じて、複数のグリーンボール10は内部空間4に挿入される。
【0057】
内部空間4において複数のグリーンボール10が上加工定盤部3と下加工定盤部2とで挟み込まれて保持される。複数のグリーンボール10は、下加工定盤部2の粗面構成部材11と上加工定盤部3の弾性板12とに接触する。
この状態で第1回転駆動装置13により上加工定盤部3が図中矢印R1方向に回転される。これにより、上加工定盤部3を下加工定盤部2に対して相対的に回転させて複数のグリーンボール10が研磨加工される。複数のグリーンボール10は、下加工定盤部2および上加工定盤部3の摩擦力と遠心力とによって図1および図2中矢印R2方向に上ガイド壁3bの内周を自転しながら公転する。下加工定盤部2と上加工定盤部3とはグリーンボール10の公転を妨げない程度の速度で回転される。
【0058】
昇降装置14により上加工定盤部3に下向きの荷重が加えられることによって、下加工定盤部2の粗面構成部材11の粗面が研磨面として働くことで各グリーンボール10が削られる。各グリーンボール10は、突部が優先的に研磨されることにより、各グリーンボール10の形状が真球に近づくように加工される。削りとられた研磨粉10aは、金網または布からなる粗面構成部材11の格子目を通って下加工定盤部2設けられた多数の孔8から下方に落ちる。なお、孔8が非貫通孔である場合は、研磨粉10aは孔8内に溜まる。
【0059】
図5および図6を参照して、複数のグリーンボール10の研磨加工が終了すると、昇降装置14により上加工定盤部3が下加工定盤部2に対して相対的に上側に移動することによって上加工定盤部3が第2の高さ位置H2に配置される。上加工定盤部3が下加工定盤部2に対して相対的に上側に移動することによって、上加工定盤部3の上ガイド壁3bと下加工定盤部2の第1の平面2aとの距離が複数のグリーンボール10の直径よりも大きくなると、下加工定盤部2の摩擦力と遠心力とによって上ガイド壁3bと第1の平面2aとの隙間から研磨加工後の複数のグリーンボール10が内部空間4から下加工定盤部2に排出される。なお、上加工定盤部3は第2の高さ位置H2にある状態では、回転していてもよく、また回転していなくてもよい。
【0060】
図7を参照して、研磨加工後のグリーンボール10が内部空間4から排出されて下加工定盤部2を経由して排出部6に移動する様子を説明する。
【0061】
上加工定盤部3と下加工定盤部2との間の空間から排出されたグリーンボール10は、下加工定盤部2の摩擦力によって下加工定盤部2の回転に従って図中矢印R1方向に移動しながら、遠心力によって下ガイド壁2bに向かって移動する。そして、グリーンボール10が下ガイド壁2bまで移動すると、グリーンボール10は下加工定盤部2の摩擦力と遠心力とによって図中矢印R1方向に下ガイド壁2bの内周を自転しながら公転する。下ガイド壁2bは第1の平面2aと排出部6の外周に連続して設けられているため、グリーンボール10は下ガイド壁2bの内周に沿って第1の平面2aから排出部6に移動する。排出部6は内部空間4の範囲外に形成された排出孔である排出用貫通孔6aを有している。さらに、排出部6に移動したグリーンボール10は、谷部7に案内されて排出用貫通孔6aに移動する。排出用貫通孔6aを通じて研磨加工後の複数のグリーンボール10は下加工定盤部2から排出される。
【0062】
図8および図9を参照して、研磨加工後の複数のグリーンボール10が内部空間4から下加工定盤部2に排出された状態で、研磨加工後の複数のグリーンボール10が排出部6へ案内されている。この研磨加工後の複数のグリーンボール10が下加工定盤部2上を移動している状態で、上加工定盤部3を下加工定盤部2に対して相対的に下側に移動させることにより、上加工定盤部3が第1の高さ位置H1に移動する。この状態で、内部空間4に挿入用貫通孔5aから新たな複数のグリーンボール10が挿入され、内部空間4に新たなグリーンボール10が挟み込まれる。そして、内部空間4に新たな複数のグリーンボール10を挟み込んで上加工定盤部3を下加工定盤部2に対して相対的に回転させて新たな複数のグリーンボール10が研磨加工される。
【0063】
なお、下加工定盤部2と上加工定盤部3との双方が回転する場合について説明したが、下加工定盤部2が回転していればよい。
【0064】
なお、グリーンボール10は、研磨後に焼結されて、さらに必要に応じて焼結後研磨されて軸受用などのセラミックスボールとされる。
【0065】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態のグリーンボールの加工装置1によれば、上加工定盤部3が第1の高さ位置H1にある状態で内部空間4にグリーンボール10を保持でき、かつ上加工定盤部3と下加工定盤部2とは、上加工定盤部3が第2の高さ位置H2にある状態で、グリーンボール10を上加工定盤部3と下加工定盤部2との間の空間から排出できるように構成されている。このため、上加工定盤部が第2の高さ位置H2に移動することによって研磨加工後の複数のグリーンボール10が上加工定盤部3と下加工定盤部2との間の空間から排出された状態で、上加工定盤部3が第1の高さ位置H1に移動することによって内部空間4において新たな複数のグリーンボール10を研磨加工することができる。したがって、研磨加工後の複数のグリーンボール10の上加工定盤部3と下加工定盤部2との間の空間からの排出と新たなグリーンボール10の内部空間4における研磨加工を同時に行うことができる。これにより、連続的に複数のグリーンボール10を研磨することができるため、研磨加工されるグリーンボール10の量を増やすことができる。よって、量産性を向上することができる。
【0066】
また、排出部6は内部空間4の範囲外に構成されているため、研磨加工後の複数のグリーンボールを排出部6から排出しつつ新たな複数のグリーンボール10を内部空間4で研磨加工することができる。また、下加工定盤部2はグリーンボール10を下加工定盤部2の第1の平面2a上から排出するための排出部6を含んでいるため、研磨加工後の複数のグリーンボール10を下加工定盤部2から自動的に排出することができる。したがって、研磨加工後の複数のグリーンボール10を下加工定盤部2から取り除くために、下加工定盤部2を停止させる必要がない。これにより、連続的に複数のグリーンボール10を研磨することができるため、研磨加工されるグリーンボール10の量を増やすことができる。よって、量産性を向上することができる。
【0067】
また、上加工定盤部3が第1の高さ位置H1にある状態で、内部空間4に挿入部5からグリーンボール10が挿入され、内部空間4にグリーンボール10が保持される。内部空間4が形成された状態で、複数のグリーンボール10が挿入されるため、複数のグリーンボール10を内部空間4に迅速に挟み込むことができる。そのため、複数のグリーンボール10を内部空間4に挟み込む作業時間を短くすることができる。よって、量産性を向上することができる。
【0068】
本実施の形態のグリーンボールの加工装置1によれば、挿入部5は、研磨加工前のグリーンボール10が上加工定盤部3を通過可能なように上加工定盤部3に設けられた挿入用貫通孔5aを有している。挿入用貫通孔5aは貫通孔であるため、グリーンボール10を内部空間4に迅速に挿入することができる。よって、量産性を向上することができる。
【0069】
本実施の形態のグリーンボール10の加工装置1によれば、挿入用貫通孔5aは、上加工定盤部3の回転軸部3c内に形成されている。内部空間4に挿入されたグリーンボール10は、遠心力により回転軸部3c内に形成された挿入用貫通孔5aと第1の平面2aとの間の空間から上ガイド壁3bの内周に移動する。そのため、回転軸部3c内に形成された挿入用貫通孔5aと第1の平面2aとの間の空間では複数のグリーンボール10は保持されない。したがって、複数のグリーンボール10が保持されない位置に挿入用貫通孔5aが形成されているため、挿入用貫通孔5aが研磨加工の妨げとならない。このため、挿入用貫通孔5aにより研磨加工の効率が低下しない。よって、量産性を向上することができる。
【0070】
本実施の形態のグリーンボール10の加工装置1によれば、挿入用貫通孔5aは、グリーンボール10の直径の2倍より大きい直径の円形を有している。このため、挿入用貫通孔5aにグリーンボール10を2つ同時に挿入しても、挿入用貫通孔5aにグリーンボール10が詰まることがない。そのため、グリーンボール10を内部空間4に挿入する作業時間を短くすることができる。よって、量産性を向上することができる。
【0071】
本実施の形態のグリーンボール10の加工装置1によれば、排出部6は、研磨加工後のグリーンボール10が下加工定盤部2を通過可能なように下加工定盤部2に設けられた排出用貫通孔6aを含んでいる。排出用貫通孔6aは、貫通孔であるため迅速にグリーンボール10を排出部6から排出することができる。よって、量産性を向上することができる。
【0072】
本実施の形態のグリーンボール10の加工装置1によれば、排出部6は、第1の平面2aに対して窪んだ谷部7を含み、谷部7は、グリーンボール10を排出用貫通孔6aに案内するように構成されている。谷部7により複数のグリーンボール10が列となって排出用貫通孔6aに案内されるため、排出部6でグリーンボール10が詰まることが防止される。このため、複数のグリーンボール10の排出の効率を向上することができる。よって、量産性を向上することができる。
【0073】
本実施の形態のグリーンボール10の加工装置1によれば、上加工定盤部3と下加工定盤部2との双方が回転するよう構成されているため、複数のグリーンボール10の研磨加工と、研磨加工後の複数のグリーンボール10の上加工定盤部3と下加工定盤部2との間の空間からの排出とを独立して行うことができる。このため、複数のグリーンボール10の研磨加工および排出の効率を向上することができる。よって、量産性を向上することができる。
【0074】
本実施の形態のグリーンボール10の加工装置1によれば、上加工定盤部3の回転中心J2と下加工定盤部2の回転中心J1とが偏心するように構成されている。このため、上加工定盤部3と下加工定盤部2とに挟み込まれた複数のグリーンボール10をあらゆる方向に自転させることができる。そのため、複数のグリーンボール10を短い時間で研磨加工することができる。よって、量産性を向上することができる。
【0075】
本実施の形態のグリーンボール10の加工装置1によれば、下加工定盤部2は、グリーンボール10が研磨されて生じた研磨粉10aを内部空間4から排出するための孔8を含んでいる。このため、研磨粉10aが内部空間4に詰まることを防止することができる。したがって、複数のグリーンボール10の研磨加工の効率を向上することができる。よって、量産性を向上することができる。
【0076】
本実施の形態のグリーンボール10の加工方法によれば、研磨加工後の複数のグリーンボール10が内部空間4から下加工定盤部2に排出された状態で、排出部6へ研磨加工後の複数のグリーンボール10を案内しながら、内部空間4に新たな複数のグリーンボール10が挟み込まれて研磨加工される。このため、研磨加工後の複数のグリーンボール10を排出部6へ案内しながら新たなグリーンボール10を内部空間4で研磨加工することができる。これにより、連続的に複数のグリーンボール10を研磨することができるため、研磨加工されるグリーンボール10の量を増やすことができる。よって、量産性を向上することができる。
【0077】
本実施の形態のグリーンボール10の加工方法によれば、貫通孔(挿入用貫通孔5a)を通じて複数のグリーンボール10が内部空間4に挿入されるため、貫通孔(挿入用貫通孔5a)を通してグリーンボール10を内部空間4に迅速に挿入することができる。また、内部空間4に複数のグリーンボール10が挿入されるため、複数のグリーンボール10を内部空間4に挟み込む作業時間を短くすることができる。よって、量産性を向上することができる。
【0078】
また、排出部6は内部空間4の範囲外に形成された排出孔(排出用貫通孔6a)を有しており、排出孔(排出用貫通孔6a)を通じて研磨加工後の複数のグリーンボール10が下加工定盤部2から排出されるため、研磨加工後のグリーンボール10を排出部6から排出しつつ新たなグリーンボール10を内部空間4で研磨加工することができる。これにより、連続的に複数のグリーンボール10を研磨することができるため、研磨加工されるグリーンボール10の量を増やすことができる。よって、量産性を向上することができる。
【0079】
また、研磨加工後の複数のグリーンボール10を下加工定盤部2から自動的に排出することができる。したがって、研磨加工後の複数のグリーンボール10を下加工定盤部2から取り除くために、下加工定盤部2を停止させる必要がない。これにより、連続的に複数のグリーンボール10を研磨することができるため、研磨加工されるグリーンボール10の量を増やすことができる。よって、量産性を向上することができる。
【0080】
本実施の形態のグリーンボール10の加工方法によれば、上加工定盤部3を下加工定盤部2に対して相対的に上側に移動させることにより内部空間4から研磨加工後の複数のグリーンボール10が排出され、上加工定盤部3を下加工定盤部2に対して相対的に下側に移動させることにより内部空間4に新たなグリーンボールを挟み込むことが可能となる。
【0081】
このため、上加工定盤部3を下加工定盤部2に相対的に上下動させることで、内部空間4から研磨加工後の複数のグリーンボール10を排出し、さらに内部空間4に新たな複数のグリーンボールを挟み込むことができる。したがって、複数のグリーンボール10を内部空間4から排出させ、かつ内部空間4に挟み込むことを迅速に行うことができる。よって、量産性を向上することができる。
【0082】
本実施の形態のグリーンボール10の加工方法によれば、上加工定盤部3と下加工定盤部2との双方が回転するため、複数のグリーンボール10の研磨加工と、研磨加工後の複数のグリーンボール10の上加工定盤部3と下加工定盤部2との間の空間からの排出とを独立して行うことができる。このため、複数のグリーンボール10の研磨加工および排出の効率を向上することができる。よって、量産性を向上することができる。
【0083】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2のグリーンボールの加工装置は、実施の形態1と比較して、挿入用貫通孔5aの構成が主に異なっている。
【0084】
図10および図11を参照して、本実施の形態のグリーンボール10の加工装置1では、挿入用貫通孔5aは、上加工定盤部3の回転軸部3cよりも外周側に形成されている。挿入用貫通孔5aは回転軸部3cの外周側に拡がるように設けられた上フランジ部3dに形成されている。
【0085】
上加工定盤部3が第1の高さ位置H1にある状態で、グリーンボール10が図10中矢印A2に示すように内部空間4に挿入用貫通孔5aから挿入される。なお、本実施の形態のこれ以外の構成および加工方法は、上述した実施の形態1の構成と同様であるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0086】
本実施の形態のグリーンボール10の加工装置1によれば、挿入用貫通孔5aは上加工定盤部3の回転軸部3cよりも外周側に形成されているため、上加工定盤部3の回転軸部3cを細くすることができる。このため、上加工定盤部3を軽量化することができる。そのため、上加工定盤部3の回転速度を向上させることができる。よって、量産性を向上させることができる。
【0087】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3のグリーンボールの加工装置は、実施の形態2と比較して、挿入用貫通孔5aの構成が主に異なっている。
【0088】
図12を参照して、本実施の形態のグリーンボール10の加工装置1では、挿入用貫通孔5aは、第1の平面2aに対して斜めに延びるように形成されている。
【0089】
上加工定盤部3が第1の高さ位置H1にある状態で、グリーンボール10が図10中矢印A3に示すように内部空間4に挿入用貫通孔5aから挿入される。なお、本実施の形態のこれ以外の構成および加工方法は、上述した実施の形態2の構成と同様であるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0090】
本実施の形態のグリーンボール10の加工装置1によれば、挿入用貫通孔5aは、第1の平面2aに対して斜めに延びるように形成されているため、グリーンボール10は第1の平面2aに対して斜めの角度で内部空間4に挿入される。そのため、先に内部空間4に挿入されたグリーンボール10は、次に内部空間4に挿入されたグリーンボール10によって押されて第1の平面2aに沿う方向に移動する。また、内部空間4に挿入されたグリーンボール10が上ガイド壁3bまで移動しやすい。このため、挿入用貫通孔5aの直径が小さい場合でも挿入用貫通孔5aと第1の平面2aとの間にグリーンボール10が詰まることを抑制することができる。したがって、グリーンボール10の挿入の効率を向上することができる。よって、量産性を向上させることができる。
【0091】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4のグリーンボールの加工装置は、実施の形態1と比較して、挿入用貫通孔5aの構成が主に異なっている。
【0092】
図13および図14を参照して、本実施の形態のグリーンボール10の加工装置1では、挿入用貫通孔5aは、上加工定盤部3の回転軸部3c内に形成された第1の貫通孔5a1と、回転軸部3cよりも外周側に形成された第2の貫通孔5a2とを含んでいる。第1の貫通孔5a1は回転軸部3c内に形成されている。第2の貫通孔5a2は回転軸部3cの外周側に拡がるように設けられた上フランジ部3dに形成されている。
【0093】
上加工定盤部3が第1の高さ位置H1にある状態で、グリーンボール10が内部空間4に第1の貫通孔5a1と第2の貫通孔5a2とから挿入される。なお、本実施の形態のこれ以外の構成および加工方法は、上述した実施の形態1の構成と同様であるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0094】
本実施の形態のグリーンボール10の加工装置1によれば、挿入用貫通孔5aは、上加工定盤部3の回転軸部3c内に形成された第1の貫通孔5a1と、回転軸部3cよりも外周側に形成された第2の貫通孔5a2とを含んでいるため、第1の貫通孔5a1と第2の貫通孔5a2との両方から複数のグリーンボール10を内部空間4に挿入することができる。そのため、内部空間4に複数のグリーンボール10を迅速に挿入することができる。よって、量産性を向上させることができる。
【実施例】
【0095】
以下、本発明の実施例について説明する。
本発明の実施の形態1のグリーンボールの加工装置と、従来のグリーンボールの加工装置とで、複数のグリーンボールの研磨加工を行った。そして、本発明の実施の形態1のグリーンボールの加工装置と、従来のグリーンボールの加工装置との加工所要時間と加工回数とを比較した。本発明の実施の形態1のグリーンボールの加工装置を実施例とした。また、本本発明の挿入部および排出部を有さない従来のグリーンボールの加工装置を比較例とした。
【0096】
実施例および比較例では、1回の研磨加工につきグリーンボールを10個ずつ使用した。下加工定盤部2と上加工定盤部3との間に10個のグリーンボール挟み込んでから研磨加工が終了し下加工定盤部2から10個の研磨加工後のグリーンボールを排出するまでを1回の加工とした。加工回数が30回終了するまで連続して研磨加工を行った。
【0097】
その結果を図15に示す。加工所要時間の単位は分とし、加工回数の単位は回とした。図15を参照して、同じ加工回数では実施例のほうが比較例より加工所要時間が常に少なくなった。加工回数30回終了時点では、実施例は比較例の約半分に加工所要時間を短縮することができた。
【0098】
上記の各実施の形態は、適時組み合わせることができる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、グリーンボールを研磨加工するためのグリーンボールの加工装置およびグリーンボールの加工方法に特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0100】
1 加工装置、2 下加工定盤部、2a 第1の平面、2b 下ガイド壁、2c 下回転軸部、2d 下フランジ部、3 上加工定盤部、3a 第2の平面、3b 上ガイド壁、3c 回転軸部、3d 上フランジ部、4 内部空間、5 挿入部、5a 挿入用貫通孔、5a1 第1の貫通孔、5a2 第2の貫通孔、6 排出部、6a 排出用貫通孔、7 谷部、8 孔、10 グリーンボール、10a 研磨粉、11 粗面構成部材、12 弾性板、13 第1回転駆動装置、14 昇降装置、15 第2回転駆動装置、H1 第1の高さ位置、H2 第2の高さ位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のグリーンボールを研磨加工するためのグリーンボールの加工装置であって、
第1の平面を有する下加工定盤部と、
前記下加工定盤部の上に配置され、かつ前記第1の平面と対向する第2の平面を有し、かつ前記下加工定盤部に対して相対的に回転可能であり、かつ前記下加工定盤部に対して第1の高さ位置と前記第1の高さ位置より高い第2の高さ位置との間で相対的に上下動可能な上加工定盤部とを備え、
前記上加工定盤部が前記第1の高さ位置にある状態で、前記上加工定盤部と前記下加工定盤部とは、前記第1の平面と前記第2の平面との間に前記グリーンボールを挟み込むための内部空間を有し、
前記上加工定盤部は、前記第1の高さ位置で前記内部空間に前記グリーンボールを挿入するための挿入部を含み、
前記上加工定盤部と前記下加工定盤部とは、前記上加工定盤部が前記第1の高さ位置にある状態で前記内部空間に前記グリーンボールを保持でき、かつ前記上加工定盤部が前記第2の高さ位置にある状態で、前記グリーンボールを前記上加工定盤部と前記下加工定盤部との間の空間から排出できるように構成されており、
前記下加工定盤部は、前記グリーンボールを前記下加工定盤部の前記第1の平面上から排出するための排出部を含み、
前記排出部は前記内部空間の範囲外に構成されている、グリーンボールの加工装置。
【請求項2】
前記挿入部は、前記研磨加工前の前記グリーンボールが前記上加工定盤部を通過可能なように前記上加工定盤部に設けられた挿入用貫通孔を有している、請求項1に記載のグリーンボールの加工装置。
【請求項3】
前記挿入用貫通孔は、前記上加工定盤部の回転軸部内に形成されている、請求項2に記載のグリーンボールの加工装置。
【請求項4】
前記挿入用貫通孔は、前記上加工定盤部の前記回転軸部よりも外周側に形成されている、請求項2に記載のグリーンボールの加工装置。
【請求項5】
前記挿入用貫通孔は、前記上加工定盤部の回転軸部内に形成された第1の貫通孔と、前記回転軸部よりも外周側に形成された第2の貫通孔とを含む、請求項2に記載のグリーンボールの加工装置。
【請求項6】
前記挿入用貫通孔は、前記第1の平面に対して斜めに延びるように形成されている、請求項2〜5のいずれかに記載のグリーンボールの加工装置。
【請求項7】
前記挿入用貫通孔は、前記グリーンボールの直径の2倍より大きい直径の円形を有している、請求項2〜6のいずれかに記載のグリーンボールの加工装置。
【請求項8】
前記排出部は、前記研磨加工後の前記グリーンボールが前記下加工定盤部を通過可能なように前記下加工定盤部に設けられた排出用貫通孔を含む、請求項1〜7のいずれかに記載のグリーンボールの加工装置。
【請求項9】
前記排出部は、前記第1の平面に対して窪んだ谷部を含み、
前記谷部は、前記グリーンボールを前記排出用貫通孔に案内するように構成されている、請求項8に記載のグリーンボールの加工装置。
【請求項10】
前記上加工定盤部と前記下加工定盤部との双方が回転するよう構成されている、請求項1〜9のいずれかに記載のグリーンボールの加工装置。
【請求項11】
前記上加工定盤部の回転中心と前記下加工定盤部の回転中心とが偏心するように構成されている、請求項10に記載のグリーンボールの加工装置。
【請求項12】
前記下加工定盤部は、前記グリーンボールが研磨されて生じた研磨粉を前記内部空間から排出するための孔を含む、請求項1〜11のいずれかに記載のグリーンボールの加工装置。
【請求項13】
上加工定盤部と下加工定盤部とで形成された内部空間に挿入された複数のグリーンボールを前記上加工定盤部と前記下加工定盤部とで挟み込んで前記上加工定盤部を前記下加工定盤部に対して相対的に回転させて前記複数のグリーンボールを研磨加工する工程と、
前記研磨加工後の複数のグリーンボールが前記内部空間から前記下加工定盤部に排出された状態で、前記研磨加工後の複数のグリーンボールを前記下加工定盤部から排出するための排出部へ前記研磨加工後の複数のグリーンボールを案内しながら、前記内部空間に新たな複数のグリーンボールを挟み込んで前記上加工定盤部を前記下加工定盤部に対して相対的に回転させて前記新たな複数のグリーンボールを研磨加工する工程とを備えた、グリーンボールの加工方法。
【請求項14】
前記上加工定盤部に前記内部空間に連通する貫通孔が形成されており、
前記貫通孔を通じて前記複数のグリーンボールが前記内部空間に挿入され、
前記排出部は前記内部空間の範囲外に形成された排出孔を有しており、
前記排出孔を通じて前記研磨加工後の複数のグリーンボールが前記下加工定盤部から排出される、請求項13に記載のグリーンボールの加工方法。
【請求項15】
前記上加工定盤部を前記下加工定盤部に対して相対的に上側に移動させることにより前記内部空間から前記研磨加工後の複数のグリーンボールが排出され、
前記上加工定盤部を前記下加工定盤部に対して相対的に下側に移動させることにより前記内部空間に前記新たなグリーンボールを挟み込むことが可能となる、請求項13または14に記載のグリーンボールの加工方法。
【請求項16】
前記上加工定盤部と前記下加工定盤部との双方が回転する、請求項13〜15のいずれかに記載のグリーンボールの加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−40699(P2012−40699A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181283(P2010−181283)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】