説明

グルココルチコイド関連機能不全に関連した精神病の処置のための方法。

【課題】精神病に関連した症状および状態を寛解するための方法および組成物を提供することを本発明の課題とする。
【解決手段】本発明はコルチゾールのそのレセプターへの結合を阻害する薬剤が、精神病に関連した症状および状態を寛解するための方法に使用され得るという、発見に関連する。これらの症状および状態は、精神病性大鬱病、分裂感情性障害、アルツハイマー病およびコカイン中毒を含む。強力なグルココルチコイドレセプターアンタゴニストである、ミフェプリストンは、これらの方法に使用され得る。本発明はまた、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストならびにグルココルチコイドレセプターアンタゴニストの投与の効能、投与量およびスケジュールを教示するための使用説明書を含むヒト精神病の寛解のためのキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、1997年10月6日に出願された米国仮特許出願番号第60/060,973号の一部係属出願(「CIP」)である。上述の出願は、本明細書において、その全体において、および全ての目的で参照として、明白に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に精神医学の分野に属する。特に、本発明は、コルチゾールがそのレセプターに結合することを阻害する薬剤が、病理学の精神病性の要素、または精神病症状を有する状態を含む精神病を寛解する方法において使用され得るという発見に関する。
【背景技術】
【0003】
(序文)
本発明は、病因がグルココルチコイド調節の機能不全に関連する精神病の治療方法に関する。本発明の方法により処置される精神病のタイプは、精神病の以前の定義(精神分裂症および躁状態という)から区別されなくてはならない。精神分裂症および躁状態はグルココルチコイド調節経路の機能不全と関連せず、そしてその可能性を信じるための基礎が存在しない。従って、本発明の処置方法は、精神病用語の現代の使用法を含む(つまり、非精神分裂症および非躁状態関連精神病)。
【0004】
精神病の定義に歴史上の混乱があった。これは、部分的に、様々な状態で精神病を引き起こす共通の病態生理学的な機構の理解の欠失に基づく。例えば、(特許文献1)は、精神分裂症および躁状態を処置するための抗グルココルチコイドの使用を教示する。しかし、精神分裂症および躁状態は、異常な神経構造の結果であると考えられる(すなわち、「配線の(hard−wiring)」問題)。対照的に、精神病の病態生理学(本発明において使用する場合、その語はその現代の意味において使用される)は、神経化学(グルココルチコイド調節)問題に関連していると、考えられる。この理論は、本発明において拡張される。本発明において、コルチゾールのそのレセプターへの結合を阻害する薬剤が精神病の処置に使用され得るということが、驚くべきことに見い出された。
【0005】
今日、精神病患者を、彼らがグルココルチコイド調節機能不全を有するという点において他の精神医学的な問題から区別し得ることが公知である。対照的に、精神分裂症および躁状態の患者は、グルココルチコイド調節機能不全を有さない(Rothschild(1982)Br.J.Psychiatry 141:471〜474;Clower(1986)J.Clin.Psychopharmacol.6:363〜365)。このようにして、精神分裂症および躁状態は、「精神病」(医学専門職によってか、または本明細書で使用する場合のいずれかによって定義された場合)の定義の範囲に入らず、従って、本発明の方法によって治療されない。
【0006】
ほとんどの種において(ヒトを含む)、生理的なグルココルチコイドは、コルチゾール(ヒドロコルチゾン)である。グルココルチコイドは、概日リズムの変化と、ストレスおよび食事への応答における上昇の両方を示すACTH(コルチコトロピン)に応答して分泌される。コルチゾールのレベルは、多くの身体的および心理学的なストレス(外傷、手術、運動、不安、および抑鬱を含む)に対し数分内に応答する。コルチゾールは、ステロイドであり、細胞内のグルココルチコイドレセプター(GR)に結合することにより作用する。ヒトにおいて、グルココルチコイドレセプターは、2つの形態で存在する。777アミノ酸のリガンド結合GR−αおよび最後の15アミノ酸だけが異なるGR−βイソ型である。GRの2つのタイプは、その特異的リガンドに高い親和性を有し、そして同一の信号伝達経路を通じて機能すると考えられる。
【0007】
コルチゾールの生物学的効果(過コルチゾール血症(hypercortisolemia)によって引き起こされるそれらを含む)は、レセプターアンタゴニストを使用してGRレベルで調節され得る。薬剤のいくつかの異なるクラスは、GR−アゴニスト結合の生理的な効果をブロックし得る。これらのアンタゴニストは、GRに結合することにより、アゴニストが効果的にGRに結合および/またはGRを活性化する能力をブロックする組成物を含む。そのような1つの公知のGRアンタゴニストである、ミフェプリストンは、ヒトにおいて効果的な抗グルココルチコイド剤であることが見出された(Bertagna(1984)J.Clin.Endocrinol.Metab.59:25)。ミフェプリストンは、高親和性で、解離定数K≦10-9MでGRと結合する(Cadepond(1997)Annu.Rev.Med.48:129)
精神病の疾患のある形態をともなう患者は、コルチゾールの増加したレベルを有することが見い出されている(Krishnan(1992)Prog.Neuro−Psychopharmacol.& Biol.Psychiat.16:913〜920)。例えば、抑鬱の気分のある患者は、より低レベルのコルチゾールでの処置を用いてその気分が寛解されている。ある個体において、ステロイド生合成の阻害剤を使用する増加しているコルチゾールのレベルの反転は、鬱病の処置に効果的であり得る(Murphy(1991)J.Steroid Biochem.Mol.Biol.39:239;Murphy(1991)J.Clin.Psychopharmcol.11:121;Dhar(1989)Clin.Invest.Med.12:B27)。あるいは、ある鬱病の個体は、GRアンタゴニストの投与によるようなコルチゾールの効果をブロックする処置に応答し得る(Van Look(1995)Human Reproduction Update 1:19〜34)。ある研究において、クッシング症候群に続発する鬱病の患者(副腎皮質機能亢進症)は、GRアンタゴニストのミフェプリストンの高用量(1400mg/日まで)に応答した(Nieman(1985)J.Clin.Endocrinol.Metab.61:536)。クッシング症候群の処置にミフェプリストンを使用した他の研究は、患者の状態(患者の精神医学的な状態を含む)を寛解することを見出した(Chrousos,273〜284頁,Baulieu編、The Antiprogestin Steroid RU486 and Human Fertility Control.Plenum Press,New York(1989),Sartor(1996)Clin.Obstetrics and Gynecol.39:506〜510)。ミフェプリストンは、大鬱病の処置に使用されている。8週までの間、約2.5〜4.4mg/kg/日で使用することで、あるグループは、従来の治療に抵抗性である慢性的な重篤な鬱病の4人の患者が、処置に応答したことを見い出した(Murphy(1993)J.Psychiatr.Neurosci.18:209)。
【0008】
精神病はまたクッシング症候群に関連していた(Gerson(1985)Can.J.Psychiatry30:223〜224;Saad(1984)Am.J.Med.76:759〜766)。ミフェプリストンは、クッシング症候群に続発する急性の精神医学的な障害を処置するために使用されてきた。ある研究は、ミフェプリストンの比較的高用量(400〜800mg/日)は、副腎癌および肺癌由来のACTHの異所性の分泌による重篤なクッシング症候群の患者において、急性の精神病を急速に反転することにおいて有用であったことを示した(Van der Lely(1991)Ann.Intern.Med.114:143;Van der Lely(1993)Pharmacy World & Science 15:89〜90;Sartor(1996)前出)。
【0009】
精神病性大鬱病は、独特な精神医学的疾患として長い間認識されており、精神病および鬱病要素の両方を有する。異なった診断において、精神病性大鬱病は、非精神病性大鬱病から区別されることが重要である、なぜなら、精神病性大鬱病についての効果的な処置および薬理学的治療に対する応答パターンは、非精神病性大鬱病に関連するものと大変異なっている。成功した処置は、初期の診断の正確さに依存する(Glassman(1981)Arch.Gen.Psychiatry 38:424〜427,Schatzberg(1992)Am.J.Psychiatr.149:733〜745,Schatzberg(1988)Annals N.Y.Acad.of Sci.537:462)。精神病性大鬱病は、非常に一般的である。病院に入院している鬱病患者の25%は、精神病性大鬱病であると推定されている(Coryell(1984)J.Nerv.Ment.Dis172:521)。
【0010】
本発明の前に、精神病性大鬱病のような精神病に関連した疾患および状態の精神病または精神病要素の処置のために顕著な副作用のない速効性の効果的な処置は無かった。精神病性大鬱病に罹患する個体は、低い偽薬応答率を持ち、そして抗鬱薬治療単独(すなわち、抗精神病薬の投薬と同時的な処置はない)に対して不十分な応答をする(Glassman(1975)Am.J.Psychiatry 132:716〜719;Avery(1979)Am.J.Psychiatry 135:559〜562)。精神病性の鬱病が電撃ショック療法(ECT)に反応し得る一方で、この処置形態は議論の余地があり、顕著な副作用を有し得、比較的低い反応速度を有し、そして高いレベルの関連した合併症の発現頻度を有する。同様に、精神病の大鬱病の一般的に使用されている他の処置、現在利用可能な抗精神薬および抗鬱病薬の投薬の組み合わせ治療は、ゆっくりした作用の開始を有し、そして比較的高い合併症の発現頻度を有する(Minter(1979)J.Nerv.Ment.Dis.167:726〜733)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第98/26785号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、精神病ならびに精神病と関連した疾患および状態(精神病性大鬱病を含む)についてより効果的かつ安全な処置についての多大な必要性が存在する。速い応答時間を有し、ほとんど副作用を有さず、患者が施設に収容されなければならない時間を減少し、そして合併症の発現頻度のより低い精神病性大鬱病の新しい処置についての多大な必要性がある。さらに、公知でない治療法または効果的な処置の存在しない精神病学的要素を有する様々な状態が存在する。これらは分裂感情性障害、アルツハイマー病およびコカイン中毒を含む。従って、これらの状態の安全かつ効果的な処置の多大な必要性が存在する。本発明は、これらおよびその他の必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、精神病を寛解させるためのグルココルチコイドレセプターアンタゴニストの有効量の投与によるグルココルチコイド関連機能不全に関連する精神病の処置の方法であって、ただし、その患者がクッシング症候群に罹患していない方法に関する。この方法の代替的な実施態様において、精神病は、精神病性大鬱病、分裂感情性障害、アルツハイマー病およびコカイン中毒と関連している。
【0014】
さらなる実施態様において、本方法で使用したグルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、ステロイド骨格の11―β位において少なくとも1つのフェニル基を含んだ部分を持つステロイド骨格を含み得る。ステロイド骨格の11―β位においてフェニル基を含んだ部分は、ジメチルアミノフェニル部分であり得る。
【0015】
本発明の代替的な実施態様において、このグルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、ミフェプリストン(RU486)、RU009またはRU044を含み得る。このグルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、1日あたり体重1kgあたり約8〜20mgの間で毎日投与され得るか、あるいは1日あたり体重1kgあたり約8〜12mgの量で毎日投与され得る。このグルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、約4日間投与され得る。1日あたり約600mgの量を毎日投与し得る。投与は、1日あたり1回であり得る。投与の様式は、経口または経皮であり得る。
【0016】
好ましい実施態様において、本発明は、ミフェプリストンを1日あたり体重1kgあたり約8〜12mgの毎日の量で投与する工程であって、ここで投与が、約4日間の連続する工程を包含する、精神病性の鬱病を寛解する方法に関連する。
【0017】
本発明はまた、ヒトにおける精神病の寛解のためのキットに関連している。そのキットはグルココルチコイドレセプターアンタゴニスト;そしてグルココルチコイドレセプターアンタゴニストの適応、投薬量、および投与スケジュールを教示するための使用説明書を含む。キットの使用説明書は、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、1日あたり体重1kgあたり約8〜12mgの量を毎日投与し得ることを示し得る。使用説明書は、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストの投与が、約4日間連続し得ることを示し得る。
【0018】
ある実施態様において、このキットは、精神病性大鬱病の要素としての精神病の寛解のためであり、そして使用説明書はグルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、精神病性大鬱病の処置に使用され得ることを示す。好ましい実施態様において、キットのグルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、錠剤形状であり得るミフェプリストンである。
【0019】
本発明はまた、カラーワード認識試験を用いる精神病の診断および処置を評価する新しい手段に関する。1つの実施態様において、Stroop Calor Ward Test、またはその変形は、個体が精神病であるかどうか精神病の程度、および抗精神病薬処置レジメの効果を客観的に決定するために使用される。本発明はまた、非精神病性大鬱病から精神病性大鬱病を差示的に診断するためのカラー−ワードを提供する。
従って、本発明は、以下を提供する: (項目1) 精神病の寛解のための有効量のグルココルチコイドレセプターアンタゴニストの投与による該精神病を寛解するための方法であって、ただし患者はクッシング症候群に罹患していない、方法。
(項目2) 項目1に記載の方法であって、ここで、前記精神病が精神病性大鬱病、分裂感情性障害、アルツハイマー病およびコカイン中毒からなる群から選択される状態に関連する、方法。
(項目3) 項目1に記載の方法であって、ここで、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、ステロイド骨格の11−β位における少なくとも1つのフェニル含有部分を有するステロイド骨格を含有する、方法。
(項目4) 項目3に記載の方法であって、ここで、前記ステロイド骨格の11−β位におけるフェニル含有成分が、ジメチルアミノフェニル部分である、方法。
(項目5) 項目3に記載の方法であって、ここで、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、ミフェプリストンを含有する、方法。
(項目6) 項目3に記載の方法であって、ここで、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、RU009およびRU044からなる群から選択される、方法。
(項目7) 項目1に記載の方法であって、ここで、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストを、約8〜20mg/kg体重/日の間の1日の量で投与する、方法。
(項目8) 項目1に記載の方法であって、ここで、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストを、約8〜12mg/kg体重/日の間の1日の量で投与する、方法。
(項目9) 項目1に記載の方法であって、ここで、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストを、約4日間投与する、方法。
(項目10) 項目1に記載の方法であって、ここで、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストを、約600mg/日の1日の量で投与する、方法。
(項目11) 項目1に記載の方法であって、ここで前記投与が1日あたり一度である、方法。
(項目12) 項目1に記載の方法であって、ここで、投与の様式が経口である、方法。
(項目13) 項目1に記載の方法であって、ここで、投与の様式が経皮である、方法。
(項目14) 精神病性の鬱病を寛解するための方法であって、約8〜12mg/kg体重/日の1日の量のミフェプリストンを投与する工程であって、ここで該投与が、約4日間連続する工程を包含する、方法。
(項目15) ヒトの精神病の寛解のためのキットであって、該キットが以下: グルココルチコイドレセプターアンタゴニスト;および 該グルココルチコイドレセプターアンタゴニストの投与の適応、投与量およびスケジュールを教示する使用説明書を包含する、キット。
(項目16) 項目15に記載のキットであって、ここで、前記使用説明書は、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが約8〜12mg/kg体重/日の1日の量で投与され得ることを示す、キット。
(項目17) 項目15に記載のキットであって、ここで、前記使用説明書は、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストの投与が4日間連続することを示す、キット。
(項目18) 項目15に記載のキットであって、ここで、前記精神病は、精神病性大鬱病の成分であり、そして前記使用説明書は、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが精神病性大鬱病の処置のために使用され得ることを示す、キット。
(項目19) 項目15に記載のキットであって、ここで、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、ミフェプリストンである、キット。
(項目20) 項目19に記載のキットであって、ここで、前記ミフェプリストンが、錠剤形態である、キット。
(項目21) 精神病の寛解のために有効量のグルココルチコイドレセプターアンタゴニストの投与による、グルココルチコイド関連機能不全に関連する該精神病を処置するための方法であって、ただし患者は、クッシング症候群に罹患していない、方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の性質および利点のさらなる理解は、明細書の残りの部分、図面および特許請求の範囲を参照することによってもたらされる。
【0021】
本明細書中に引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、これによってあらゆる目的のために参考として明確に援用される。
【0022】
(定義)
用語「寛解している」または「寛解する」は、症状の減退、寛解または減少、あるいは患者の身体的または精神的健康における改善のような任意の客観的または主観的なパラメーターを含む、病理または状態の処置における成功の任意の徴候をいう。症状の寛解は、客観的または主観的パラメーター(身体検査および/または精神医学的な評価の結果を含む)に基づき得る。例えば、精神病性の障害(例えば、精神病または鬱病)の効果的な寛解をモニターするための臨床的指針は、DSM−IV軸I気分障害のための構成的臨床的インタビュー(「SCID−P」)において見出される(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(1994)Task Force on DSM−IV、アメリカ精神医学会(「DSM−IV」)第4版;Kaplan編(1995)Comprehensive Textbook of Psychiatry/VI、第一巻、第6編、621〜627頁、Williams&Wilkins,Balt.,MDを参照のこと)。
【0023】
用語「グルココルチコイドレセプターアンタゴニスト」とは、コルチゾール、合成もしくは天然のコルチゾールアナログのような、GRに対するグルココルチコイドレセプター(GR)アゴニストの結合を部分的にまたは完全に阻害する(アンタゴナイズする)任意の組成物または化合物をいう。「グルココルチコイドレセプターアンタゴニスト」はまた、アゴニストに対するGRの結合に関連した任意の生物学的応答を阻害する、任意の組成物または化合物をいう。
【0024】
用語「グルココルチコイドレセプター」「GR」は、コルチゾールおよび/またはコルチゾールアナログに特異的に結合するコルチゾールレセプターともいわれる細胞内レセプターのファミリーをいう。その用語は、GRアイソフォーム、組換えGRおよび変異GRを包含する。
【0025】
用語「コルチゾール」は、ヒドロコルチゾンおよびその任意の合成または天然のアナログとも言われる組成物のファミリーをいう。
【0026】
用語「ミフェプリストン」は、グルココルチコイドレセプターに代表的には高親和性で結合し、任意のコルチゾールまたはコルチゾールアナログのレセプターへの結合によって開始/媒介される生物学的効果を阻害するRU486、またはRU38.486、または17−β−ヒドロキシ−11−β−(4−ジメチル−アミノフェニル)−17−α−(1−プロピニル)−エストラ−4,9−ジエン−3−オン)、または11−β−(4−ジメチルアミノフェニル)−17−β−ヒドロキシ−17−α−(1−プロピニル)−エストラ−4,9−ジエン−3−オン)、あるいはそれらのアナログともいう組成物のファミリーをいう。RU−486の化学名は多様である。例えば、RU486はまた以下のように称される:11B−[p−(ジメチルアミノ)フェニル]−17B−ヒドロキシ−17−(1−プロピニル)−エストラ−4,9−ジエン−3−オン;11B−[4−ジメチル−アミノフェニル]−17B−ヒドロキシ−17A−(プロポ−1−ニル)−エストラ−4,9−ジエン−3−オン(11B−(4−dimethyl−aminophenyl)−17B−hydroxy−17A−(prop−1−ynyl)−estra−4,9−dien−3−one);17B−ヒドロキシ−11B−(4−ジメチルアミノフェニル−1)−17A−(プロピニル−1)−エストラ−4,9−ジエン−3−オン;17B−ヒドロキシ−11B−(4−ジメチルアミノフェニル−1)−17A−(プロピニル−1)−E;(11B,17B)−11−[4−ジメチルアミノ)−フェニル]−17−ヒドロキシ−17−(1−プロピニル)エストラ−4,9−ジエン−3−オン;および11B−[4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル]−17A−(プロポ−1−ニル)−D−4,9−エストラジエン−17B−オール−3−オン(11B−[4−(N,N−dimethylamino)phenyl]−17A−(prop−1−ynyl)−D−4,9−estradien−17B−ol−3−one)。
【0027】
用語「精神病性」は、本明細書で使用されるとき、DSM−IV(Kaplan編(1995年)前出)および以下で記載したように定義されるように、その最も広い意味における精神医学的状態をいう。用語「精神病性」は、歴史的に、記載された狭義から広義までの範囲にわたり異なった多数の定義として受け取られている。精神病性の状態は、個人の認識するものが幻覚の体験である顕著な幻覚、およびその病理学的性質中の病識の不在で起こる幻覚を伴うものを含む、妄想または顕著な幻覚を含み得る。最後に、この用語は、認識試験において自我の境界の喪失または全体的な障害によって特徴付けられた精神病の状態を含む。広義でありそして本来は症状に基づくこの定義と異なり、初期の分類における精神病の特徴づけ(例えば、DSM−IIおよびICD−9)は、より包括的で、そして機能的障害の重傷度に焦点を当てていた(その結果、通常の生命の要求を満たすための能力を大きく妨げる「障害」を生じる場合、精神的な障害は、「精神病」と名づけられる)。精神病性の成分を有する異なった障害は、「精神病」この定義の異なった局面を含む。例えば、精紳分裂病様障害、分裂感情性障害、および短時間の精神病障害において、用語「精神病性」とは、妄想、任意の顕著な幻覚、でたらめな会話、またはでたらめなもしくは緊張性の行動をいう。一般的な医学的状態に起因する精神病性障害において、そして物質に誘導された精神病性障害において、「精神病性」は、病識により付随されない妄想またはそれらの幻覚だけを言う。最後に、妄想障害および共通する精神病障害において、「精神病性」は、「妄想」と等価である(DAM−IV、前出、273頁参照)
客観テストをまた使用して、個体が精神病かどうか決定し得る、そして特定の処置スケジュールまたはレジメの成功を測定および評価し得る。例えば、認知能力における測定の変化は、精神病患者の診断および処置の評価を補助する。当該技術において公知の任意の試験を、認識記憶を評価する、例えば、いわゆる「ワラハ試験(Wallach test)」を使用し得る(下記を参照のこと、Wallach(1980)J.Gerontol.35:371〜375)。例えば、実施例1に記載してあるように、ワラハ認識試験を研究の被験者において精神病の寛解の程度を測定するために使用したとき、平均において、試験被験者は、実際に以前に聞いた言葉について少数の言葉の混乱者を同定した。試験において実際に示された用語と誤同定された混乱させる語句の数は、処置後25%と100%の間に減少した。個体が精神病かどうか決定するために、および抗精神病処置の効果を測定するために使用され得る客観的テストの他の例は、ストループ カラー アンド ワード試験(Stroop Color and Word Test;「Stroop Test」)である(Golden,C.J.,カタログ番号30150M,A Manual for Clinical and Experimental Uses,Stoelting,Wood Dale,IL)。ストループ試験は精神病を有する個人と精神病でない個人との間を区別し得る客観的な神経精神医学的な試験であり、そして詳細を以下に記載する。
【0028】
用語「精神病」とは、DSM−IV(Kaplan編(1995)前出)において定義されたようなその広義での精神医学的な症状、状態または症候群をいう。それは、上述の広義での定義されるように「精神病」成分を包含する。用語、精神病は、薬物乱用(物質に誘導された障害)の副作用または投薬の副作用のような一般的な医学的状態、疾患状態、または他の状態と関連した症状をいう。あるいは、用語、精神病とは、任意の疾患状態、医学的な状態、または薬物摂取などと関連しない状態または症候群をいい得る。精神病を、ヒトの精神的能力、感情応答、ならびに現実認識能力、コミュニケーション能力、および日常生活の通常の要求を処理するその人の能力を妨げる程度で他人と関係を持つ能力の全体的な歪み、または分裂を生じる精神障害として定義される。
【0029】
歴史的に、用語「精神病」は、時折、精神分裂病および躁状態(これらの状態は、DSM−IV(前出)において別々に記述された)を既述するために使用された。しかし、DSM−IV(前出)により包含されるように現在の医学的見解は、精神病を含むようなこれらの精神医学状態を含まない。Rothschildら(1982)「The dexamethasone suppression test as a discriminator among subtypes of psychotic patients」Br.J.Psychiatry141:471〜474;およびClower(1986)「The 2−mg dexamethasone suppression test in differentiating major depression with psychosis from schizophrenia」J.Clin.Psychopharmacol.6:363〜365と同程度に早期に認識されていたこの試別についての生理学的な基礎がある。デキサメタゾン抑制(DS)試験は、視床下部−下垂体−副腎(HPA)軸によって調節されるグルココルチコイド調節フィードバック経路の機能不全を示す(合成グルココルチコイド、デキサメタゾンの試験用量を用いて刺激した場合、本試験における非応答性とは、コルチゾール産物の抑制(負のフィードバック)ができない患者を意味する)。ほとんどの精神病患者は、グルココルチコイド調節機能不全を有する(DS試験における非応答性によって示されるように)。対照的に、例えば、精神分裂病(「精神病性の精神分裂病」として歴史的に記載されたものを含む)および躁状態の患者は、グルココルチコイド調節機能不全を有さない(DS試験において応答性によって示されるように)。精神分裂病および躁状態が、異常な神経構造(すなわち、「配線」(hard−wiring)問題)によって引き起こされると、広く考えられている。対照的に、精神病の病態生理学は、神経化学的な問題、特に、HPA軸調節機能不全であると考えられる(この理論は、本発明によって拡張される。本発明においてコルチゾールのそのレセプターへの結合を阻害する薬物が精神病を処置することが見い出された)。このように、精神分裂病および躁状態は、「精神病」定義の範囲に入らず(医学専門職にるか、または本明細書で使用されるように定義されたように)、従って、本発明の方法によって処置されない。
【0030】
用語「精神病性大鬱病」とはまた、「精神病性の鬱病」(Schatzberg(1992)Am.J.Psychiatry 149:733〜745)、「精神病性の(妄想の)鬱病」(同書)、「妄想性の鬱病」(Glassman(1981)前出)、および「精神病性の特徴を持つ大鬱病」(DSM−III−R参照のこと)としていわれ、抑鬱性および精神病の特徴の両方を含む異なった精神医学的障害といわれる。鬱病および精神病(すなわち精神病性の鬱病)の両方を示す個体を、本明細書において「精神病性の鬱病」という。このことは当該分野で、例えば、Schatzberg(1992)前出によって記載されるように、異なった症候群として長い間認識されてきた。この区別を説明する研究が存在し、これは、グルココルチコイド活性、ドーパミン−β−ヒドロキシラーゼ活性、ドーパミンおよびセロトニン代謝のレベル、睡眠測定および脳室対脳の比において精神病性と非精神病性の鬱病の患者間での顕著な差異を見出している。精神病性の鬱病は、「非精神病性大鬱病」のような他の鬱病の形態を有する固体と比較した場合、処置に対して非常に異なって応答する。精神病性の鬱病は、低い偽薬応答率、および抗鬱病治療単独(同時の抗精神病処置を伴わない)に対する不十分な応答を有する。精神病性の鬱病は、三環系(抗鬱性)薬物治療に顕著に無応答性である(Glassmanら(1975)前出)。精神病性の鬱病が、電気痙攣療法(ECT)に応答し得る一方、その応答時間は、比較的遅く、そして、ECTは高いレベルの関連した合併症の発現頻度を有する。「精神病性大鬱病」の臨床的な症状発現および診断のパラメーターは、DSM−IV(Kaplan編(1995)前出)に詳細に記載されている。このようにして、その独特の病態生理学(高い割合の合併症の発現頻度および処置への応答)のために、非精神病性鬱病と比較したとき、精神病性大鬱病の差示的な診断および特異的に治療することについて、多大な実際的な必要性がある。
【0031】
(本発明の詳細な説明)
本発明は、アゴニストに占有されたグルココルチコイドレセプター(GR)によって引き起こされる生物学的応答を阻害し得る薬物が、精神病の精神障害または症候群を寛解することについて効果的であるという発見に属する。なぜなら、精神病の状態が、様々な状態および疾患のプロセスと関連し得るか、またはこれらによって引き起こされ得るので、本発明の方法はまた、精神病の病理成分または精神病を含む状態を寛解するために使用され得る。これらの病理または状態は、精神病性大鬱病、分裂感情性の障害、アルツハイマー病、コカイン中毒、および薬物の副作用などを含む。
【0032】
ある実施態様において、本発明の方法は、GRアンタゴニストとして作用する薬物(コルチゾールとGRとの相互作用をブロックする)を使用し、それにより、精神病は寛解する。他の実施態様において、強力なGRアンタゴニストであるミフェプリストンを、精神病を寛解する方法において使用する。本発明は、比較的早く、ほとんど副作用がなく、患者が施設に収容されなければならない時間を減少し、そして代わりの処置と比較したときより低い合併症の発現頻度を有する、精神病性大鬱病のための新規の効果的な処置を提供する。
【0033】
精神病が、症候群の形態における精神病として、または疾患のプロセスもしくは他の状態の要素として発現され得るので、処置の成功の診断および評価の様々な手段(すなわち、精神病が寛解することの成功および程度)を以下に示す。これらの手段は、古典的な心理学的な評価および様々な研究室の手順を含む。本発明の方法が、精神病を寛解するためのGRの生物学的効果を阻害する任意の手段の使用を含むので、精神病を処置するために使用され得る例示的な化合物および組成物もまた、以下に示される。本発明の方法の実行における使用のためのGR−アゴニスト相互作用によって引き起こされる生物学的応答をブロックし得るさらなる化合物および組成物を同定するために使用され得る慣用的な手順もまた、記載される。本発明が、医薬品としてこれら化合物および組成物の投与を提供するので、本発明の方法を実行するためのGRアンタゴニスト薬物のレジメおよび処方を決定するための慣用的な手段を以下に示す。
【0034】
(1.通常の研究室での手順)
多数の一般的な研究室での試験を、患者の診断、進行および予後を補助するために使用し得る。血中コルチゾール、薬物代謝、脳機能などのようなパラメーターの監視が、必要であり得る。なぜなら、全ての患者は、独自に薬物を代謝し、そしてそれに対して反応するからである。さらに、そのような監視は、重要であり得る。なぜなら、それぞれのGRアンタゴニストは、薬物動態学的に異なるからである。異なった疾患の状態は、異なった投薬レジメおよび処方物を要求し得る。そのような手順は、科学文献および特許文献において良く記載されている。いくつかの実例となる例を、以下に示す。
【0035】
(a. 血中コルチゾールレベルの決定)
血中コルチゾールのレベルが、精神病および鬱病に関連付けられたので、血中コルチゾールレベルの監視は、患者の診断、処置および予後において助けるために有用な研究室試験であり得る。個体が正常、低コルチゾール血症または高コルチゾール血症であるかどうか決定するために使用され得る広範な種々の研究室試験が存在する。ラジオイムノアッセイのようなイムノアッセイが一般的に使用される、なぜならそれらが正確、簡単になされ、そして比較的に安価であるからである。循環しているコルチゾールのレベルが、副腎皮質(adrenocortisol)機能の指標であるので、ACTH刺激、ACTH貯蔵、デキサメタゾン抑制のような様々な刺激および抑制試験もまた、本発明の方法において付加的に使用されるための診断、予後または他の情報を提供し得る。
【0036】
キットの形で入手可能なそのようなあるアッセイは、「Double Antibody Cortisol KitTM」(Diagonostic Products Corporation, Los Angeles, CA,(1984年)Acta Psychiatr. Scand. 70:239〜247)というラジオイムノアッセイである。この試験は、125I−標識コルチゾールが臨床試料からのコルチゾールと抗体部位に対して競合する競合イムノアッセイである。この試験で、抗体の特異性および任意の有意なタンパク質効果の欠損のために、血清および血漿試料は、事前の抽出も事前の希釈も要求しない。このアッセイを、以下の実施例1においてさらに詳細に記載する。
【0037】
(i. 血中/尿中ミフェプリストンレベルの決定)
患者の代謝、クリアランス速度、毒性レベル、などが潜在的な一次または二次の疾患の状態、薬歴、年齢、一般的な医学的状態などにおいての変動を伴って異なるので、血中および尿中のGRアンタゴニストのレベルを測定することが必要であり得る。そのような監視の手段は、科学文献および特許文献によく記載してある。本発明の実施態様において、ミフェプリストンを、精神病の寛解のために投与するとき、血中および尿中ミフェプリストンレベルを決定するための例示的な例を、以下に示す。
【0038】
(ii 他の研究手順)
精神病が、様々な疾患、状態および薬効と関連し得るので、多数のさらなる研究室の試験を、診断、処置効力、予後、毒性などを補助するために本発明の方法において、付加的に使用し得る。例えば、増加した高コルチゾール血症が、精神病および鬱病に関連付けられているので、診断および処置の評価は、グルココルチコイド感受性の変数の監視および測定により増強し得る。グルココルチコイド感受性の変化は、空腹時血糖、グルコースの経口投与後の血糖、血漿の甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度、コルチコステロイド結合グロブリン、黄体形成ホルモン(LH)、テストステロン−エストラジオール結合グロブリン、および/または総および遊離テストステロンを含むが、これらに限定されない。GRアンタゴニスト代謝産物産生、血漿濃度およびクリアランス速度(アンタゴニストおよび代謝産物の尿中濃度を含む)の監視ならびに測定の研究室の試験もまた、本発明の方法を実施することにおいて役立ち得る。例えば、ミフェプリストンは、2つの親水性の(N−モノメチル化およびN−ジメチル化)代謝物をもつ。これらの代謝物(RU486に加えて)の血漿中および尿中濃度を、例えば、薄層クロマトグラフィー(Kawai(1987年)Pharmacol. and Experimental Therapeutics 241:401〜406)を使用して決定し得る。
【0039】
(2.精神病処置のためのグルココルチコイドレセプターアンタゴニスト)
本発明は、コルチゾールまたはコルチゾールのアナログがGRに結合することに関連した生物学的応答をブロックし得る任意の組成物または化合物を利用する精神病処置のための方法を提供する。本発明の方法において利用されるGR活性のアンタゴニストは、科学文献および特許文献によく記載されている。いくつかの実例となる実施例を、以下に示す。
【0040】
(a. GRアンタゴニストとしてのステロイド性抗グルココルチコイド)
本発明の1つの実施態様において、ステロイド性グルココルチコイドアンタゴニストを、精神病の寛解のために投与する。ステロイド性抗グルココルチコイドを、グルココルチコイドアゴニストの基本構造の改変(すなわち、ステロイド骨格の変化した形態)によって獲得し得る。コルチゾールの構造を、様々な方法により改変し得る。グルココルチコイドアンタゴニストを作製するための2つの最も一般的な公知のクラスのコルチゾールステロイド骨格の構造的な改変は、11−βヒドロキシ基の改変および17−β側鎖の改変(Lefebvre(1989年)J. Steroid Biochem.33:557〜563)を含む。
【0041】
(i. 11−βヒドロキシ基の除去または置換)
本発明の他の実施様態において、11−βヒドロキシ基の除去または置換を包含する、改変されたステロイド骨格を有するグルココルチコイドアゴニストを投与する。このクラスは、天然の抗グルココルチコイド(コルテキソロン、プロゲステロンおよびテストステロン誘導体を含む)、およびミフェプリストン(Lefebvreら(1989年)前出)のような合成組成物を含む。本発明の好ましい実施態様は、全ての11−β―アリルステロイド骨格誘導体を含む。なぜなら、これらの化合物は、プロゲステロンレセプター(PR)結合活性を欠いているからである(Agarwal(1987年)FEBS217:221〜226)。他の好ましい実施態様は、11−βフェニル―アミノジメチルステロイド骨格誘導体(すなわち効果的な抗グルココルチコイド剤および抗プロゲステロン剤の両方であるミフェプリストン)を包含する。これらの組成物は、可逆的に結合するステロイドレセプターアンタゴニストとして作用する。例えば、11−βフェニル―アミノジメチルステロイドが結合したとき、ステロイドレセプターは、GRの場合のコルチゾールのようにその天然リガンドが結合し得ない配座で維持される(Cadepondら(1997年)前出)。
【0042】
合成11−βフェニル―アミノジメチルステロイドは、ミフェプリストン(また、RU486としても知られる)、または17−β−ヒドロキシ−11−β−(4−ジメチル−アミノフェニル)17−α−(1−プロピニル)エストラ−4,9−ジエン−3−オン)を含む。プロゲステロンおよびグルココルチコイド(GR)の両方のレセプターの強力なアンタゴニストであることが示された。GRアンタゴニストの効果を有することが示された別の11−βフェニル−アミノジメチルステロイドは、RU009(RU39.009)、11−β−(4−ジメチル−アミノエトキシフェニル)−17−α−(プロピニル−17β−ヒドロキシ−4,9−エストラジオン−3−オン)を含む(Bocquel(1993年)J. Steroid Biochem. Molec. Biol.45:205〜215参照のこと)。RU486に関連する他のGRアンタゴニストは、RU044(RU43.044)17−β−ヒドロキシ−17−α−19−(4−メチル−フェニル)−アンドロスタ−4,9(11)−ジエン−3−オンである(Bocquel(1993年)前出)。Teutsch(1981年)Steroids 38:651〜665;米国特許出願第4,386,085号および第4,912,097号もまた参照のこと。
【0043】
1つの実施態様は、不可逆的な抗グルココルチコイドである基本のグルココルチコイドステロイド構造を含有する組成物を包含する。そのような化合物は、コルチゾールのα−ケト−メタンスルホン酸塩誘導体(コルチゾール−21−メシレート(4−プレグネン−11−β,17−α,21−トリオール−3,20−ジオン−21−メタン−スルホン酸塩およびデキサメタゾン−21−メシレート(16−メチル−9α−フルオロ−1,4−プレグナジエン−11β,17−α,21−トリオール−3,20−ジオン−21−メタン−スルホン酸塩)を含む)を含む。Simons(1986年)J. Suteroid Biochem.24:25〜32(1986年);Mercier(1986年)J. Steroid Biochem.25:11〜20;米国特許出願第4,296,206号参照のこと。
【0044】
(ii. 17−β側鎖基の改変)
17−β側鎖の様々な構造的な改変によって得られ得るステロイド性抗グルココルチコイドもまた、本発明の方法において使用する。このクラスは,デキサメタゾン−オキセタノン、様々な17,21−アセトニド誘導体、およびデキサメタゾンの17−β−カルボキサミド誘導体のような合成抗グルココルチコイドを含む(Lefebvre(1989年)前出;Rousseau(1979年)Nature 279:158−160)
(iii. 他のステロイド骨格の改変)
本発明の様々な実施態様で使用されたGRアンタゴニストは、GR−アゴニスト相互作用から得られる生物学的応答をもたらす任意のステロイド骨格改変を含む。ステロイド骨格のアンタゴニストは、C−19メチル基の欠けている副腎ステロイドのような、19−ノルデオキシコルチコステロンおよび19−ノルプロゲステロンのような、任意の天然または合成の様々なコルチゾールであり得る(Wynne(1980年)Endocrinology 107:1278〜1280)。
【0045】
一般的に、11−β側鎖置換基、および特にその置換基のサイズは、ステロイドの抗グルココルチコイド活性の程度を決定することにおいて鍵となる役割を果たし得る。ステロイド骨格のAリングの置換はまた、重要であり得る。17−ヒドロキシプロペニル側鎖は、一般的に、17−プロピニル側鎖を含む化合物との比較において抗グルココルチコイドの活性を減少する。
【0046】
(b. アンタゴニストとしての非ステロイド性抗グルココルチコイド)
非ステロイド性抗グルココルチコイドアンタゴニストをまた、精神病を寛解するために本発明の方法において使用する。これらは、タンパク質の合成模倣体およびアナログ(部分的にペプチド性、偽ペプチド性および非ペプチド性である分子を含む)を含む。例えば、本発明において使用されたオリゴマーのペプチド模倣体は、(α−β−不飽和)ペプチドスルホンアミド、N置換グリシン誘導体、オリゴカルバメート、オリゴ尿素ペプチド模倣体、ヒドラジノペプチド、オリゴスルホネートなどを含む(de Bont(1996)Bioorganic & Medicinal Chem.4:667〜672)。合成分子の大きなライブラリーの作製および同時のスクリーニングを、コンビナトリアル化学において周知の技術(例えば、van Breemen(1997年)Anal Chem69:2159〜2164;Lam(1997年)Anticancer Drug Des12:145〜67(1997年)を参照のこと)を使用して実行し得る。GRに対して特異的なペプチド模倣体の設計を、コンビナトリアル化学(コンビナトリアルライブラリー)のスクリーニングアプローチと組み合わせることにおいてコンピュータプログラムを使用して設計し得る(Murray(1995年)J. of Computer−Aided Molec. Design 9:381〜395);Bohm(1996年)J. of Computer−Aided Molec. Design 10:265〜272)。そのような「合理的な薬物設計」が、ペプチド異性体および立体配座体(環状異性体、レトロインベルソ(retro−inverso)異性体、レトロ(retro)異性体などを含む)の開発の手助けをし得る(Chorev(1995年)TibTech 13:438〜445で、議論してある)。
【0047】
(c. グルココルチコイドレセプターアンタゴニストの同定)
任意のGRアンタゴニストが、本発明の方法において精神病患者の寛解のために使用され得るので上記の化合物および組成物に加えて、さらなる有用なGRアンタゴニストが、当業者によって決定され得る。種々のそのような周知慣用の方法が、使用され得、そして科学文献および特許文献に記載されている。それらは、さらなるGRアンタゴニストの同定のためのインビトロおよびインビボアッセイを含む。いくつかの例示的な例を、以下に記載する。
【0048】
本発明のGRアンタゴニストを同定するために使用され得る1つのアッセイは、Granner(1970年)Meth.Enzymol.15:633の方法に従うチロシンアミノトランスフェラーゼ活性に対する推定のGRアンタゴニストの効果を測定する。この分析は、ラット肝細胞腫細胞(RHC)における肝臓酵素チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)の活性の測定に基づく。TATはチロシン代謝における最初の工程を触媒し、そして肝臓および肝細胞腫細胞の両方においてグルココルチコイド(コルチゾール)によって誘導される。この活性は、未加工の抽出物において簡単に測定される。TATは、チロシンのアミノ基を2−オキソグルタル酸に変換し、そしてp−ヒドロキシフェニルピルビン酸もまた形成され、これは331nmで測定され得る、アルカリ溶液においてより安定なp−ヒドロキシベンズアルデヒドへと変換される。推定のGRアンタゴニストを、コルチゾールと共に肝臓全体(インビボまたはエキソビボ)または肝細胞腫細胞または細胞抽出物へ同時投与する。化合物の投与が、コントロール(すなわち、コルチゾールのみ、およびGRアゴニストの添加)と比較して、誘導されたTAT活性の量を減少するとき、化合物をGRアンタゴニストとして同定する(Shirwany(1986年)「Glucocorticoid regulation of hepatic cytosolic glucocorticoid receptors in vivo and its relationship to induction of tyrosine aminotransferase」Biochem. Biorhys. Acta 886:162〜168もまた参照のこと)。
【0049】
本発明の方法において利用される組成物の同定のために使用され得る多数のアッセイのさらなる実例は、TATアッセイに加えて、インビボのグルココルチコイド活性に基づいたアッセイである。例えば、推定のGRアンタゴニストがグルココルチコイドによって刺激された細胞のDNAへの3H−チミジンの取り込みを阻害する能力を評価するアッセイを使用し得る。あるいは、推定のGRアンタゴニストは、肝細胞腫組織培養GRへの結合について、3H−デキサメタゾンと競合し得る(例えば、Choi(1992年)「Enzyme induction and receptor−binding affinity of steroidal 20−carboxamides in rat hepatoma tissue culture cells」Steroids 57:313〜318参照のこと)。他の実施例として、推定のGRアンタゴニストが3H−デキサメタゾン−GR複合体の細胞核への結合をブロックする能力を、使用し得る(Alexandrova(1992年)「Duration of antagonizing effect of RU486 on the agonist induction of tyrosine aminotransferase via glucocorticoid receptor」J. Steroid Biochem. Mol. Biol.41:723〜725)。推定のGRアンタゴニストをさらに同定するために、レセプター結合反応速度論の手段によるグルココルチコイドアゴニストとアンタゴニストとの間を識別し得る反応速度論アッセイもまた、使用し得る(Jones(1982年)Biochem J.204:721〜729に記載)。
【0050】
他の例示的な例において、Daune(1977年)Molec. Pharm.13:948〜955および米国特許出願第4,386,085号によって記載されたアッセイを、抗グルココルチコイド活性を同定するために使用し得る。手短に言えば、副腎摘出されたラットの胸腺細胞を、様々な濃度の試験化合物(推定のGRアンタゴニスト)とデキサメタゾンを含む栄養培地中でインキュベートする。3H−ウリジンを、細胞培養に添加し、さらにインキュベートし、そしてポリヌクレオチド中の放射能ラベルの取り込みの程度を測定する。グルココルチコイドアンタゴニストは、取り込まれた3H−ウリジンの総量を減少する。従って、GRアンタゴニストは、この効果と対立する。
【0051】
本発明の方法において利用され得るさらなる化合物、ならびにそのような化合物を同定するためおよび作製するための方法について、米国特許出願第4,296,206号(上記);第4,386,085号(上記);第4,447,424号;第4,477,445号;第4,519,946号;第4,540,686号;第4,547,493号;第4,634,695号;第4,634,696号;第4,753,932号;第4,774,236号;第4,808,710号;第4,814,327号;第4,829,060号;第4,861,763号;第4,912,097号;第4,921,638号;第4,943,566号;第4,954,490号;第4,978,657号;第5,006,518号;第5,043,332号;第5,064,822号;第5,073,548号;第5,089,488号;第5,089,635号;第5,093,507号;第5,095,010号;第5,095,129号;第5,132,299号;第5,166,146号;第5,166,199号;第5,173,405号;第5,276,023号;第5,380,839号;第5,348,729号;第5,426,102号;第5,439,913号;および第5,616,458号ならびにWO96/19458号(6−置換−1,2−ジヒドロ N−1保護キノリンのようなステロイドレセプターに対する高親和性、高選択性モジュレーター(アンタゴニスト)である非ステロイド性化合物を記載する)
(3. 精神病を伴う状態および疾患の診断および評価)
精神病を、症候群の形態における精神的な疾患病状または様々な疾患のプロセスの成分として明らかにし得る。精神病のこれらの様々な形態を診断するためおよび処置の成功を評価するために様々な手段がある。これらの手段は、上記の様々な研究室の手段に加えて、古典的な精神病学の評価を含む。そのような手段は、科学文献および特許文献によく記載され、そして例示的な例を以下に提供する。
【0052】
(a. 精神病の評価および診断)
本発明の方法において寛解される精神病は、精神の状態および症状の幅広い範囲(DSM−IV(Kaplan編(1995年)前出)に広く記載されているような)を含む。精神病とは、一般的な医学的な状態、疾患の状態、または薬物乱用の副作用(薬物に誘導された障害)または薬物療法の副作用のような他の状態と関連した症状をいう。開業医は、本発明の方法を実行するための指示として、精神病の存在を診断するために規制された、または経験的な判断基準の任意のセットを使用し得るが、いくつかの実例としての診断のガイドラインおよび関連する症状もしくは状態の実施例を以下に記載する。
【0053】
精神病が、例えば、「DSM−II−Rについての構成的臨床的インタビュー」、すなわち「SCID」に記載されている準構成的臨床的インタビューを使用する正式の精神医学的な評価によって診断し得る。SCIDを、DSM−II−R(改訂されたDSMの第3版)において使用される診断基準に熟知している臨床医および研究者によって投与されるように設計する。SCIDは、二つの部分を有する。ひとつは、軸(Axis)I障害(臨床的に要注意な焦点であり得る臨床的障害および他の状態)およびもう一方は軸II人格障害(人格障害および精神薄弱)である(処置計画および結果の予測において臨床医を導くための「多軸評価システム」の概要についてDSM−IV、前出、25〜31頁を参照のこと)。SCIDインタビューの開始時、現在の疾患、主な症状、および主要な精神病理の過去の発症の概要を、特定の症状についての患者の問題を体系的に尋ねる前に得る。インタビューの計画それ自身は、患者が彼ら自身の言葉で症状を述べる機会を有するように自由回答式の多数の問題を有する。
【0054】
インタビューの結論で、そのインタビューアはまた、機能の全体評価(GAF)スケール(DSM−IVの多軸評価システムの第5(「V])軸)を完成する。軸Vは、個体の機能の全体のレベルの臨床医の判断を報告するためである。この情報は、処置を計画およびその効果を測定するためこと、ならびに結果を予測することにおいて有用である。GAFスケールは単一の測定を使用する全体的な意味で個体の臨床的な進行を追跡することにおいて特に有用である(DSM−IV、前出、30〜31頁;Kaplan編(1995年)前出を、参照のこと)。いくつかの設定において、社会的および職業的な能力障害を評価するため、ならびに精神病的症状の重症度と無関係なリハビリテーションの進行を追跡するために有用であり得る。この目的のために、例えば、提案される社会的および職業的機能評価スケール(SOFAS)DSM−IV、前出、760ページ、補遺Bを使用する。さらなる評価概要、例えば、関係の機能の全体評価(GARF)スケール(DSM−IV、前出、758頁、補遺B)および防御的な機能スケール(DSM−IV、前出、751頁、補遺B)が、使用され得る。
【0055】
精神病に対する処置の進行またはその診断もしくは予後における補助を評価するために、「簡単な精神病格付けスケール(BPRS)]もまた、患者の準構造化されたインタビュー後に使用し得る。BPRSは、18次元格付けスケールである。それぞれの次元は、不安、敵意、情緒、罪責感、および見当識のような行動および精神病症状の範囲を示す。これらは、「非存在」から「極度に過酷な」へ7点の「ライカート(Likert)スケール」に基づいて評価する。BPRSは、簡単で、容易に学習され、そして全体的病理を反映する定量的な点数を提供する。BPRSは、処置からの患者の全ての利点の粗いバロメーターを提供することにおいて有用であり、従って、本発明の方法を使用する処置および寛解後の個体の状態の変化を評価するために有用である(Overall(1962年)Psychol. Rep.10:799;Kaplan(1995年)前出)。
【0056】
客観テストもまた、これらの主観的診断基準と共に使用して、個体が精神病かどうかを決定し得る、そして個々の処置計画またはレジメの成功を測定および評価し得る。精神病または任意の精神病の状態の処置の診断、分類または評価は、Wallach(1980年)J. Gerontol.35:371〜375またはストループ カラー アンド ワード試験のような当該分野で公知の任意の試験を使用して客観的に評価され得る。
【0057】
いわゆる「ワラハ(Wallach)試験」は、個体における認知の変化を評価することにより精神病の存在および程度を測定し得る。試験は、上記した認識記憶を評価する。実施例1で議論したように、ワラハ認識試験を、研究の被験体の精神病の寛解の程度を測定するために使用した。
【0058】
ストロープ カラー アンド ワード試験(「ストロープ試験」)は、個体が精神病かどうか客観的に決定するための、および処置の効果を測定するための他の手段である(Golden、前出、を参照のこと)。ストロープ試験は、精神病の個体とそうでない個体との間を区別し得る。簡単にいうと、この試験は、色の名前当てが、識字能力のある大人において色の名前を読むことよりも常にゆっくりである観察から開発した。例えば、ある単語がどの色で印刷されている(例えば、「XXX」が黄色のインクで印刷された)ことを認識するための時間よりも、「黄色」と印刷された単語を読むための時間は常に短い。さらに、色の単語が、一致していないカラーインクで印刷されている(例えば、赤インクで黄色の単語の場合)場合、それは、それらを色だけで示す(赤い長方形または赤の「XXX」のような)条件より、正しい色(赤)を指名するのが通常の個体によって50%長くなる。色の認識におけるこの遅れは、「色−単語干渉効果」と呼ばれ、そしてその時間はストループ試験で測定された変数パラメーターである。遅れが大きくなればなるほど、ストループ試験の点数は益々低くなる(Uttl(1997年)J. Clin. Exp. Neuropsychol.19:405〜420をまた参照のこと)。精神病の個体は、精神病でない個体よりもストループ試験の統計学的に有意により低い点数を有する。重要なことには、精神病性大鬱病の患者は、大鬱病患者より統計学的に有意により低い点数を有する。このことはさらに、精神病性大鬱病が、非精神病性の重篤な鬱病と比較したときの異なった状態である知見を確認する。
【0059】
精神医学的な状態(精神病のような)を、さらに任意の多数の試験、または心理学または精神医学の分野において周知および認容された基準を使用して診断および評価し得る。
【0060】
精神病性障害(精神病性大鬱病のような)を診断の特徴(症状)および診断するための診断基準は、さらに前出のDSM−IVに記載される。開業医が、個体が本発明の方法実行するための精神病であるかどうか評価するために任意の判断基準または手段を使用し得る一方、DSM−IVは、精神医学的障害(精神病を含む)の診断、分類および処置のような一般的に容認された標準を示す。本発明の方法において利用されるそのような診断基準のいくつかの例示的な例を、以下に示す。
【0061】
精神病は、個人の精神の能力のひどい歪みおよび混乱を引き起こされる精神障害または精神状態、情動性の応答、および日常の生活の通常の要求に対応するその人の能力を妨害する程度の現実、意思疎通、および他人の認識に関連する能力として大体は特徴付けられる。精神病を伴う状態または病状において妄想または幻覚が存在し得る。妄想または幻覚の内容は、多くの抑鬱な主題を有する。精神病性大鬱病において、例えば、罪責感の妄想、罪に値するとの妄想(例えば、個人的不適切または道徳違反による)、虚無的な妄想(例えば、世界のまたは個人の破壊)、体性の妄想(例えば、癌を有する)、または貧困の妄想を含む、「気分調和性」した精神病の特徴であり得る。精神病性大鬱病に依存するとき、幻覚は、通常一過性であり、そして進行せず、そして欠点または罪に対する患者をしかりつける命令を含み得る。さらにまれには、妄想または幻覚の内容は、鬱病の主題に明白な関係がない。この状態において、これらの「気分調和性でない」精神病の特徴は、例えば、大げさな妄想を含む。
【0062】
精神病は、精神病の特徴を伴う二極性I(bipolar I)障害を含み得る。この精神病の本質的な特徴は、1つ以上の躁病のエピソードまたは混合性のエピソードの出現によって特徴付けられる臨床的な経過である。しばしば、個体はまた、1つ以上の大鬱病のエピソードを有する。加えて、そのエピソード
は、分裂情動性の障害によりあまり説明されず、そして精神分裂病、分裂病様障害、妄想障害、または別の特定されない精神病障害に重ね合わせられない(DSM−IV、前出、350〜352、320,328,333頁を、参照のこと)。精神病の特徴を伴う二極性I障害において、妄想または幻覚(代表的に聴覚性の)もまた、存在する。妄想または幻覚の内容は、一般に、躁病の主題である。特徴は、「気分調和性」の精神病の特徴(例えば、その人が特別任務または被害妄想を有することを釈明する、神の声が聞こえ得るという妄想を含む)であり得る。さらにまれに、妄想または幻覚の内容は、鬱病の主題と明白な関係がない。この状況で、これらの「気分調和性でない」精神病の特徴は、精神病の特徴を伴う重症の鬱病の「気分調和性」の特徴について記載されたものと同じものを含む。
【0063】
精神病を伴う状態または病状はまた、簡単には精神病性の障害を含み得る。ここでは1つ以上の次の症状が、存在し得る。妄想、幻覚、混乱した会話(例えば、頻繁な脱線または支離滅裂)および極度に混乱したまたは緊張性の行動。障害発症の持続時間は、少なくとも1日であるが、1ヶ月未満である。
【0064】
精神病はまた、「妄想の障害」として分類され得る。DSM IVによれば、妄想の障害の診断基準は、以下を含む。少なくとも1ヶ月の持続期間の奇異でない妄想、精神分裂病の診断基準Aが決して満たされない(妄想の影響から離れて);機能が顕著に傷害されない;および行動が明らかに奇妙または奇異でない。
【0065】
精神病を伴う状態または病状を、「共有精神病障害」として分類し得る。DSM IVによれば、共有精神病障害の診断基準は、以下を含む。既に確立された妄想を有する他人と密接な関係の状況における妄想;その妄想が、確立された妄想を既に有する人のそれと内容が似ている;およびその障害が、他の精神病性の障害(例えば、精神分裂病)または精神病の特徴を伴う気分障害によってはあまりよくされず、そして薬物の直接の生理的な効果または一般的な医学状態に起因しない。
【0066】
精神病を伴う状態および病状が、「薬物誘導」精神病障害として分類され得る。DSM IV診断基準によれば、最近または長期の薬物使用の証拠、薬物の退薬症状、または毒物への曝露が存在しなければならない。あるいは、精神病を伴う状態または病状はまた、「一般的な医学的状態に起因する精神病性の障害」として分類し得る。DSM IV診断基準によると、障害が一般的な医学的状態、顕著な幻覚、または妄想の直接の生理的な結果であり、その障害が他の精神障害でよく説明されず、そしてその障害が精神錯乱の経過中に限って起こるわけではないという前歴、診察または研究室の知見からの証拠が、なければならない。
【0067】
精神病を伴う状態または病状は、他の方法で特定されていない精神病性の障害として分類され得る。DSM IV診断基準によると、このカテゴリーは、特定の診断をするための不適切な情報があることについて、または矛盾する情報もしくはいずれの特定の精神病性の障害についての診断基準も満たさない精神病性症状の障害があることについての精神病性の総合的症状(例えば、妄想、幻覚、混乱した会話、極度の混乱または緊張性の行動)を含む。例は、他のDSM IVカテゴリーを満たさない産後精神病、1ヶ月未満の間持続したがまだ緩解していない精神病性の症状、他の兆候のない持続性の幻聴、妄想の混乱の実質的な部分について存在した重複する気分のエピソードの終期を伴う持続性の奇異でない妄想、および臨床医が精神病性の障害は存在するが、一般的な医学的な状態または薬物誘導であるため一次性であるかどうか決定不可能であると結論付けた状態を含む。
【0068】
(b. 鬱病の評価および診断)
精神病性大鬱病の精神病性の成分(これは精神病および鬱病の要素を有する)は、本発明の方法により寛解される。精神病に関連したいくつかの鬱病の程度または形態を伴う他の状態および病状もまた、本発明の方法により寛解される。従って、本発明のいくつかの実施態様を実施する際には、開業医は鬱病を評価および診断するための手段を知っているはずである。そのような診断基準は当該分野で周知であり、そしていくつかの例示的な例を、以下に示す。
【0069】
鬱病の診断が、SCID(上記)のような構成的インタビュー装置を使用する正式の精神医学的評価、ならびに例えば、広く使用されるスケールであるハミルトン鬱病の格付けスケール(Hamilton Rating Scale for Depression:「HAM−D」)(Hamilton(1962)J. Neurol. Psychiatry 23:56〜62、Avery(1979)Am. J. Psychiatry 135:559〜562)のような、鬱病の程度の尺度を用いて評価し得る。HAM−Dは、準構成的インタビューに基づいて得点付けられる。患者を、鬱病関連症状(精紳運動遅滞、不眠、気分および洞察を含む)に評価する。異なる数の症状の格付けを有する症状の形態の鬱病が存在するので、いくつかの混乱を導く。しかし、合わせた点数は、鬱病の重症度と高く相関する。格付けのスケールは、抑圧された状態を経時的に監視することに有効であり、そして処置効果の指標として有用である。ハミルトン格付けスケールを、大鬱病に伴って起こることが公知の、情動性、および公知の認知の変化に焦点をあてるさらなる評価デバイスと共に使用し得る(Kaplanら、(1995年)前出)。
【0070】
精神病について、「簡単な精神病の格付けスケール(BPRS)」もまた、準構成的インタビューと組み合わせて鬱病に対する処置の効力を診断または評価するために使用し得る。BPRSは、患者の処置由来の総合的な利点の粗いバロメーターを提供することに有用であり、従って、本発明の方法を使用する処置および寛解後、個体の状態の変化を評価することに有用である(Overall(1962年)前出;Kaplan(1995年)前出)。精神病についてはまた、鬱病を、Wallach(1980年)J. Gerontol.35:371〜375に記載されたような当該分野で公知の任意の試験を使用して認識の変化を評価することにより評価し得る。いわゆる「ワラハ試験」は、認識記憶を評価する。精神病性の状態(例えば、鬱病のような)を、心理学もしくは精紳医学の分野で周知および承認された任意の数多くの試験または診断基準を使用して診断および評価し得る。
【0071】
(c. 分裂感情性障害の評価および診断)
分裂感情性障害の精神病成分、本発明の方法により寛解される。分裂感情性障害の診断基準は、以下を含む:連続した疾患の期間(その間、いくつかの時点で大鬱病のエピソード、躁病のエピソードまたは精神分裂病の診断基準を満たす症状を同時に伴う混合性のエピソードがある)。分裂感情性障害において、以下がなくてはならない:精神分裂病の能動期症状を同時に伴う気分エピソード;気分症状が混乱の全持続期間の実質的な部分の間存在しなければならない;および、妄想または幻覚は、顕著な気分症状の不在下で少なくとも2週間なければならない。対照的に、分裂感情性障害における気分エピソードは、混乱の全持続期間に比べて短い持続期間を有するか、前駆期もしくは残留期の間のみ起こるか、および気分エピソードについての診断基準を完全には満たさないかのいずれかである。精紳分裂病の診断基準は、特徴的な症状、社会的または職業的な機能不全、および/または症状の持続を含む。分裂感情性障害についての「精紳分裂病」診断基準はまた「分裂病様障害」として分類され得、精紳分裂病のDSM IV診断基準A、DおよびEを満たすか否かが診断される。この障害のエピソードは、少なくとも1ヶ月持続するが、6ヶ月未満である。Sharma(1997)Am. J. Psychiatry 154:1019〜1921;McElroy(1991)J. Clin. Psychiatry 52:411〜414をまた参照のこと。
【0072】
「簡単な精神病の格付けスケール(BPRS)」はまた、本発明の方法によって処置されるように精紳分裂病を評価するために、および分裂病様障害(SD)およびSDに関連した精神病(本発明の方法によって処置されたような)から精紳分裂病を区別するために、患者に準構成的インタビューを行った後使用され得る(Overall(1962)前出;Kaplan(1995)前出)。本発明の方法を利用する場合、BPRSは処置および寛解した後の状態の変化を評価するために使用し得る(Kaplan(1995)前出)。
【0073】
(d. アルツハイマー病関連精神病の診断および評価)
老年性痴呆症およびアルツハイマー病と関連した精神病は、本発明の方法によって寛解される。行動の変化は、アルツハイマー病に一般的であり、そして精神病、動揺、抑圧、不安、人格変化、および自律神経変化を含む。Engelborghs(1997年)Acta Neurol.Belg.97:67〜84;Cummings(1996)Neurology47:876〜883;Samson(1996)Eur.Neurol.36:103〜106を参照のこと。
【0074】
アルツハイマー病に関連した精神病を評価および診断するための診断基準は、上記、3.a章で述べたように精神病に対して使用されたものと同様である。
【0075】
(e. 薬物関連精神病の診断および評価)
薬物の乱用と関連した精神病、または投薬の副作用として精神病は、本発明の方法によって寛解される。例えば、精神病は、コカインの乱用およびコカイン中毒に関連する。従って、本発明のGRアンタゴニスト(例えば、ミフェプリストン)を、コカインに誘導された精神病に対する処置として使用し得る。別の実施態様において、本発明の方法は、マリファナに誘導された慢性的な精神病を処置し得る(Longhurst(1997)Aust.N.Z.J.Psychiatry31:304〜305を参照のこと)。Evans(1997)「Drug induced psychosis with doxazosin」BMJ314:1869;Bhatia(1996)「Chloroquine−induced recurrent psychsis」Indian J.Med.Sci.50:302〜304;Scurlock(1996)「Another case of nicotine psychosis」Addiction91:1388;Cohen(1996)「Substance−induced psychosis」Br.J.Psychiatry168:651〜652;Popli(1997)「Sertraline and psychotic symptoms:a case series」Ann.Clin.Psychiatry9:15〜7;Schreiber(1997)「Metronidazole−induced psychotic disorder」Am.J.Psychiatry 154:1170〜1171もまた参照のこと。
【0076】
薬物乱用および薬物投与に関連した精神病を評価するためおよび診断するための診断基準は、上記の3.a章で述べられた精神病に対して使用されるものと同様である。
【0077】
(f. 他の精神病に関連した状態)
本発明の抗精神病GRアンタゴニストおよび方法は、精神病性の攻撃的な患者、行為障害の小児、および精神遅滞患者を処置することに有効であり得る。Fava(1997)Psychiatr.Clin.North Am.20:427〜451を参照のこと。別の実施態様において、本発明の方法は、精神医学的障害を有するAIDS患者を処置するための補助剤として使用し得る。なぜなら、AIDS感染に続発性の精神病は、ありふれているからである(Susser(1997)Am.J.Psychiatry 154:864〜866;Schiff(1997)N.Engl.J.Med.336:1190)。別の実施態様において、本発明の方法は、パーキンソン病と関連した精神病を処置するために使用され得る。パーキンソン病および痴呆の多くの患者は、精神病および精神病性症状を受ける。パーキンソン病では、痴呆は、主要な行動の、認知性のおよび機能性の問題と関連する(Naimark(1996)「Psychoitic sumptoms in Parkinson’s disease patients with dementia」J.Am.Geriatr.Soc.44:296〜299)。これらの状態を診断するための手段は、当該分野で周知であり、そしてこれらの参考文献および他の関連したテキストに記載されている。
【0078】
(4. グルココルチコイドレセプターアンタゴニストを使用する精神病に関連した状態および病状の処置)
抗グルココルチコイド(例えば、ミフェプリストン)は、本発明の方法で使用される医薬品として処方される。コルチゾールまたはコルチゾールアナログのGRへの結合と関連した生物学的応答をブロックし得る任意の組成物または化合物が、本発明において医薬品として使用され得る。本発明の方法を実施するためのGRアンタゴニストのレジメおよび処方を決定するための日常的な手段は、特許および科学の文献に記載され、そしていくつかの例示的な例を、以下に記載する。
【0079】
(a. 薬学的組成物としてのグルココルチコイドレセプターアンタゴニスト)
本発明の方法において使用されたGRアンタゴニストは、非経口的に、局所的に、経口的に、または局所投与によって(例えば、エアロゾルもしくは経皮的によって)投与され得る。本発明の方法は、予防的なおよび/または治療的な処置を提供する。薬学的組成物としてのGRアンタゴニストは、状態または疾患および精神病の程度、それぞれの患者の一般的な医学的状態、結果の好ましい投与方法などに依存して、様々な単位投与量形態で投与され得る。処方および投与の技術の詳細は、科学および特許の文献に十分に記載されている(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」の最新版(Maack Publishing Co,Easton PA)を参照のこと)。
【0080】
GRアンタゴニストの薬学的組成物は、医薬品の製造について当該分野で公知の任意の方法によって調製され得る。そのような薬物は、甘味料、矯味矯臭剤、着色剤、および保存剤を含有し得る。任意のGRアンタゴニスト処方物が、製造に適した非毒性の薬学的に受容可能な賦形剤と混和され得る。
【0081】
経口投与のための薬学的組成物が、経口投与に適した投与量において当該分野で周知の薬学的に受容可能なキャリアーを使用して処方され得る。そのようなキャリアーは、薬学的処方物が、患者による経口摂取のために適した錠剤、丸剤、粉末、糖衣錠、カプセル、液剤、トローチ剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤などのような単位投与量形態で処方されることを可能にする。経口使用のための薬学的調製物は、GRアンタゴニスト化合物の固体賦形剤との配合を介して得られ得る。これは、必要に応じて、生成した混合物を粉砕し、および所望であれば錠剤または糖衣錠の核を得るために適切な付加化合物を添加した後に、顆粒の混合物を加工する。適切な固体賦形剤は、炭水化物またはタンパク質の充填剤であり、これは以下を含むが、これらに限定されない:乳糖、ショ糖、マンニトール、もしくはソルビトールを含む糖;トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモ、もしくは他の植物由来のデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、もしくはカルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース;ならびにアラビアおよびトラガントを含むゴム;ならびにゼラチンおよびコラーゲンのようなタンパク質。所望であれば、崩壊剤または可溶化剤が添加され得る。それは、例えば、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはそれらの塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)である。
【0082】
糖衣錠の核は、適切なコーティング(例えば、濃縮された糖溶液(これは、アラビアガム、滑石、ポリビニルピロリドン、カルボポル(carbopol)ゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタンをまた含み得る)、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物)と共に提供される。染料または色素が、製品の同定のためまたは活性化合物の量(すなわち、投与量)を特徴付けるために錠剤または糖衣錠コーティングに添加され得る。本発明の薬学的調製物はまた、例えばゼラチン製の押し込み式カプセル(push−fit capsule)、ならびにゼラチン製の軟性の封入カプセルおよびグリセロールまたはソルビトールのようなコーティングを使用して、経口で使用され得る。押し込み式カプセルは、ラクトースまたはデンプンのような充填剤または結合剤、滑石またはステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤、および必要に応じて、安定剤と共に混合されたGRアンタゴニストを含み得る。軟性カプセルでは、GRアンタゴニスト化合物は、安定剤有りあるいは無しで、脂肪油、液体パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールのような、適切な液体に溶解または懸濁され得る。
【0083】
本発明の水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混和してGRアンタゴニストを含む。そのような賦形剤は、懸濁剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントゴムおよびアカシアゴム)、ならびに分散剤または加湿剤(例えば、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、脂肪酸との酸化アルキレンの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアリン酸)、長鎖脂肪族アルコールとの酸化エチレンの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、脂肪酸およびへキシトール由来の部分的エステルとの酸化エチレンの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレイン酸)、または脂肪酸およびへキシトール無水物由来の部分的エステルとの酸化エチレンの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸)を含む。水性懸濁液はまた、エチルまたはn−プロピル p−ヒドロキシ安息香酸のような1つ以上の保存剤、1つ以上の着色剤、1つ以上の矯味矯臭剤、およびショ糖、アスパルテームまたはサッカリンのような1つ以上の甘味料を含み得る。処方物は、モル浸透圧濃度について調節され得る。
【0084】
油性懸濁液は、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油またはココナッツ油のような植物油あるいは液体パラフィンのような鉱物油にGRアンタゴニストを懸濁することによって処方され得る。油性懸濁液は、蜜蝋、硬性のパラフィンまたはアセチルアルコールのような濃化剤を含み得る。甘味料は、口当たりの良い経口調製物を提供するために添加され得る。これらの処方物は、アスコルビン酸のような抗酸化剤の添加により保存され得る。注入可能な油性ビヒクルの例としては、Minto(1997)J.Pharmacol.Exp.Ther.281:93〜102を参照のこと。
【0085】
水の添加による水性懸濁液の調製のために適した本発明の分散可能な粉末剤および顆粒剤を、分散、懸濁化、および/または加湿剤、および1つ以上の保存剤と混和したGRアンタゴニストから処方し得る。適切な分散剤または加湿剤および懸濁化剤は、上記に開示したそれらにより例示される。付加的な賦形剤(例えば、甘味料、矯味矯臭剤、および着色剤)もまた存在し得る。
【0086】
本発明の薬学的処方物はまた、水中油エマルジョンの形態であり得る。油相は、オリーブ油またはラッカセイ油のような植物油、液体パラフィンのような鉱物油、あるいはそれらの混合物であり得る。適切な乳化剤は、アカシアゴムおよびトラガントゴムのような天然に存在するゴム、ダイズレシチンのような天然に存在するホスファチド、ソルビタンモノオレイン酸のような脂肪酸およびへキシトール無水物由来のエステルまたは部分的エステル、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸のような酸化エチレンとのこれらの部分エステルの縮合生成物を含む。エマルジョンはまた、甘味料および矯味矯臭剤を含み得る。シロップおよび万能薬は、グリセロール、ソルビトールまたはショ糖のような甘味料と共に処方され得る。そのような処方物はまた、粘滑剤、保存剤、矯味矯臭剤または着色剤を含み得る。
【0087】
本発明のGRアンタゴニスト薬学的処方物は、注入可能な滅菌水または油性の懸濁液のような注入可能な滅菌調製物の形態であり得る。この懸濁液は、上記のそれらの適切な分散剤または加湿剤および懸濁剤を使用して公知の技術により処方され得る。注入可能な滅菌調製物はまた、非毒性の許容可能な非経口的な希釈剤または溶媒(例えば、1,3−ブタンジオールの溶液)中の注入可能な滅菌溶液または懸濁液であり得る。使用し得る受容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水およびリンガー溶液(等張性の塩化ナトリウム)がある。さらに、滅菌不揮発性油を、溶媒または懸濁媒体として慣習的に使用し得る。この目的のために、任意の平凡な不揮発性油を、合成モノ‐またはジグリセリドを含んで使用し得る。さらに、オレイン酸のような脂肪酸を、注入可能な調製物において同様に使用し得る。
【0088】
本発明のGRアンタゴニストもまた、薬物の直腸投与のために座薬の形態で投与し得る。これらの処方物は、常温で固体であるが、直腸の温度で液体である適切な非刺激性の賦形剤と共に薬物を混合することで調製され得、そしてそのために直腸中で融解して薬物を放出する。そのような物質は、ココアバターおよびポリエチレングリコールである。
【0089】
それらをまた、座薬、ガス注入、粉末、エアロゾル調製物を含んで鼻腔内、眼内、膣内および直腸内に投与し得る(例えば、ステロイド吸入剤、Rohatagi(1995)J.Clin.Pharmacol.35:1187〜1193;Tjwa(1995)Ann.Allergy Asthma Immunol.75:107〜111を参照のこと)。
【0090】
局所的な経路によって投与される本発明の産物は、好ましくは塗布棒、溶液、懸濁液、エマルジョン、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、ペイント、粉末およびエアロゾルとして投与され得る。本発明のGRアンタゴニスト(例えば、ミフェプリストン)を、薬物(ミフェプリストン)含有ミクロスフェア(ゆっくと皮下に放出)の経皮的にまたは皮内注射を経由により送達し得る(Rao(1995)J.Biomater Sci.Polym.第7版:623〜645を参照のこと;生分解性および注入可能なゲル処方物については、Gao(1995)Pharm.Res.12:857〜863(1995)を参照のこと;経口投与のための微粒子の使用については,Eyles(1997)J.Pharm.Pharmacol.49:669〜674を参照のこと)。経皮経路および皮内経路の両方とも、数週間または数ヶ月の一定の送達を生じる。
【0091】
本発明のGRアンタゴニストの薬学的処方物は、塩として提供され得、以下を含む多くの酸と共に形成され得る。その酸は、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、りんご酸、琥珀酸などを含むがこれらに限定されない。相当する遊離塩基形態である塩は、水性または他のプロトニック溶媒に、より可溶性である傾向がある。他の場合において、好ましい調製物は、1mM〜50mMヒスチジン、0.1%〜2%ショ糖、2%〜7%マンニトール、pH範囲4.5〜5.5中の凍結乾燥した粉末(使用の前に緩衝液と組み合わせる)であり得る。
【0092】
別の実施態様において、本発明のGRアンタゴニスト処方物は、静脈内投与または体腔あるいは器官内腔への投与のような非経口的投与のために有用である。投与用処方物は、一般に、薬学的に受容可能なキャリアー(好ましくは水性キャリアー)において溶解したミフェプリストンの溶液を含む。様々な水性キャリアーが、使用され得る(例えば、緩衝化された生理食塩水など)。これらの溶液は、滅菌され、そして大体において、望まない物質を含まない。これらの処方物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌され得る。処方物は、pH調整および緩衝剤、毒性調節剤など(例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなど)のような生理学的状態に近づけるために要求される薬学的に受容可能な補助物質を含み得る。これらの処方物におけるGRアンタゴニストの濃度は、広範であり、そして、選択された特定の投与様式および患者の必要性に従って、液体の体積、粘性、体重などに基づいて主に選択される。
【0093】
他の実施態様において、本発明のGRアンタゴニストの処方物は、リポソームの使用により送達され得る。このリポソームは、細胞膜と融合するか、またはエンドサイトーシスされる(例えば、エンドサイトーシスを生じる細胞の表面膜タンパク質レセプターに結合する、リポソームへ付着した、またはオリゴヌクレオチドに直接付着したリガンドを使用することにより)。リポソームの使用により、特にリポソーム表面が標的細胞に特異的なリガンドを有するか、または別に特異的器官に優先的に指向される場合、インビボで標的細胞中へのGRアンタゴニストの送達に焦点を当て得る。Al−Muhammed(1996)J.Microencapsul.13:293〜306;Ostro(1989)Am.J.Hosp.Pharm.46:1576〜1587を参照のこと。
【0094】
(b. グルココルチコイドレセプターアンタゴニストのための投薬レジメの決定)
本発明の方法は、精神病を寛解する(すなわち、精神病および/またはその合併症を防止するか、その発症を遅めるか、その頻度を減少させるか、その重度を減少させるか、または治癒する)。これを成し遂げるために適切なGRアンタゴニストの量は、「治療学的に効果的な投与量」として定義される。この使用のための効果的な投与スケジュールおよび量(すなわち、「投与レジメ」は、疾患または状態の段階、疾患または状態の重度、患者の健康状態の通常の状態、患者の精神状態、年齢などを含む様々な因子に依存する。患者のための投与レジメの算出において、投与様式もまた、考慮に取り入れる。
【0095】
投薬レジメはまた、薬物動態力学(すなわち、GRアンタゴニストの吸収速度、生物学的利用能、代謝、クリアランスなど(例えば、Hidalgo−Aragones(1996)J.Steroid Biochem.Mol.Biol.58:611〜617;Groning(1996)Pharmazie 51:337〜341;Fotherby(1996)Contraception 54:59〜69;Johnson(1995)J.Pharm.Sci.84:1144〜1146;Rohatagi(1995)Pharmazie 50:610〜613;Brophy(1983)Eur.J.Clin. Pharmacol.24:103〜108;最新版のレミングトン、前出、を参照のこと)を考慮に取り入れなければならない。ある研究において、ミフェプリストンの1日の投与量の0.5%未満は、尿中に排泄される;薬物は循環アルブミンへ大規模に結合される(Kawai(1989)前出、を参照のこと)。
【0096】
当該技術水準により、臨床医はそれぞれの個々の患者、GRアンタゴニストおよび処置される疾患または状態について処置のための投与レジメを決定することが可能である。例示的な例として、ミフェプリストンについて以下に提供されたガイドラインが、投与レジメを決定するための指針として使用され得る(すなわち、本発明の方法を実施するときに投与される任意のGRアンタゴニストの投与スケジュールおよび投与レベル)。
【0097】
ミフェプリストン処方物の単一のまたは複数の投与が、患者に要求され、かつ許容されるような投与量および頻度に依存して投与され得る。処方物は、精神病を効果的に寛解するために十分な量のミフェプリストンを提供すべきである。従って、ミフェプリストンの経口投与のための代表的な薬学的処方物は、1日あたり患者あたり約8〜20mg/kg体重である。1日あたり患者あたり約2〜約30mg/kg体重の投与量が使用され得る(特に、薬物が、経口で、血流中へ、体腔内へ、または器官の内腔へ投与されたときは対照的に、大脳脊椎液(CSF)空間のような解剖学的に隔離された部位へ投与されるとき)。局所投与においては、実質的により高い投与量が可能である。非経口的に投与可能なGRアンタゴニスト処方物を調製するための実際の方法は、当業者に公知または明白であり、そしてRemington’s Pharmaceutical Science、第15版、Maack Publishing Company,Easton, Pennsylvania(1980)のような出版物においてさらに詳細に記載されている。本発明の好ましい実施態様において、本発明は、1日あたり約8〜12mg/kg体重の1日の投与量におけるミフェプリストンの投与によって、精神病を処置するための方法を提供する。この投与量を使用して、投与を、約4日間続け得る。あるいは、他の実施態様において、ミフェプリストンは、約600mg/日の1日投与量で投与される。Nieman「Receptor Mediated Antisteroid Action」」Agarwalら編、De Gruyter,New York(1987)をまた参照のこと。
【0098】
本発明のGRアンタゴニストを含む医薬品が、受容可能なキャリアー中に処方される場合、これは、適切な容器に入れられ、そして指示された状態の処置について表示され得る。GRアンタゴニストの投与のために、そのような表示は、例えば、投与の量、頻度および方法についての指示を含む。1つの実施態様において、本発明は、ヒトの精神病の寛解のためのキットを提供する。それは、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストならびにグルココルチコイドレセプターアンタゴニストの指示投与量および投与スケジュールを教示するための指示書を含む。ミフェプリストンが、使用されたGRアンタゴニストである場合には、指示書は、GRアンタゴニストが1日あたり約8〜12mg/kg体重の1日投与量で使用され得ることを示し、そしてグルココルチコイドレセプターアンタゴニストの投与は約4日間続けることを示す。
【0099】
本明細書に記載の実施例および実施態様は、例示の目的だけであり、それらを考慮して、種々の改変または変更が当業者に示唆され、そして本出願の精神および範囲ならびに添付の請求の範囲内に含まれるべきであることが理解される。
【実施例】
【0100】
(実施例)
以下の実施例は、説明のために提供され、本願発明を限定するためではない。
【0101】
(実施例1: ミフェプリストンでの精神病性大鬱病の処置)
以下の実施例は、本発明の方法が、精神病の効果的な処置であることを実証する研究を詳述する。
【0102】
(研究の背景)
本研究は、相対的に短い処置期間で約10mg/kg/日の投与量で投与されるグルココルチコイドレセプターアンタゴニストであるミフェプリストンが、精神病性大鬱病のための効果的な処置であることを実証する。基本ストラテジーは、比較的短期間(約4日)の高投与量のミフェプリストン(600mg/日の範囲)が、精神病性大鬱病の効果的な処置であることを実証することであった。本研究は、9日間の、綿密に観察される病院での滞在を要求する。
【0103】
(患者の選択)
本研究において含まれる個体は、上記のように、DSM−IVによる記載のような診断基準を使用して、精神病性鬱病として診断された。この診断は、二人の精神科医によって確認された。全員とも、18〜75歳の間である。副腎皮質機能亢進症は別として、彼らは、大きな医学的問題を有さなかった。彼らは、クッシング症候群の徴候はなかった。出産可能な子供は、本研究に含まれていない。本研究のための入院前の1ヵ月の間、違法な薬物を使用したことを認めた個体は、除外される。毎日2オンス以上のアルコールを飲むことを認めた個体は、本研究から除外される。抗精神病薬剤は、本研究に入る3日以内には、服用しなかった。同時的な抗鬱剤が、本研究から除外するために使用された診断基準ではなかったが、個体は、本研究に関与している間は抗抑制剤投薬を開始しなかった。全ての患者は、Stanford University Medical CenterでのHuman Subjects Committeeにより承認されたプロトコルに彼らの自筆での同意を示した。
【0104】
全ての参加者は、Hamilton Rating Scale for Depression(HAM−D,Hamilton(1962)J.Neurol.Psychiatry(前出)、上記で議論した)、およびStructured Clinical Interview for DSM−IV Axis I気分障害試験(上記)を受けた。HAM−D試験で21より大きい点数を有する個体のみが、本研究を続けた(21より大きいHAM−Dの点数は、中度から重症の鬱病を示す)。HAM−D Rating Scaleをまた、以下に記載するように、ミフェプリストンの投与後に行った。
【0105】
これらの診断基準を基に、精神病性大鬱病を有する16人の個体を選択した。
【0106】
(血中コルチゾールレベルの測定)
「Double Antibody Cortisol KitTM」(Diagnostic Products Corporation,Los Angeles,CA)を、血中コルチゾールレベルを測定するために使用した。この試験は、臨床試料由来のコルチゾールと125I標識コルチゾールが抗体部位に対して競合する競合性のラジオイムノアッセイであり、そしてこれを、製造者により供給された試薬を使用して、本質的に製造者の指示に従って行った。
【0107】
簡単には、血液を、静脈穿刺により採取し、そして血清を細胞から分離した。その試料を、7日間まで2〜8℃または2ヶ月まで−20℃で凍結して保存した。アッセイの前に、試料を穏やかに回転または倒立することにより室温(15〜28℃)になるまで放置した。チューブあたり25μlの血清で16本のチューブ2セットを調製した。コルチゾール濃度を、調製したキャリブレーションチューブから算出した。正味の数値は、CPMの平均値から非特異的CPMの平均値を差し引いたものである。未経験者についてのコルチゾール濃度を、検量線から補間法により見積もった(Dudleyら(1985)Clin.Chem.31:1264〜1271)。
【0108】
(精神病の寛解の評価)
正式の精神医学的評価(HAM−Dレーティングスケール(Overall(1962)前出;Kaplan(1995)前出、上記)、Brief Psychiatric Rating Scale(BPRS)(Overall(1962)前出;Kaplan(1995)前出、上記)、およびClinical Global Impression(GAF)評価(DSM−IV、前出、30〜31頁;Kaplan編(1995)、前出)を含む)を、研究の1日目、3日目、5日目、7日目、および9日目の午前10時(1000時)に行った。段落回想試験(以下を参照のこと)を、1日目、5日目、および9日目に午前11時30分(1130時)に行った。コルチゾールレベルを、1日目、5日目、9日目に1:30〜4:00PM(1300〜1600時)まで30分ごとに連続的に測定した。血漿ACTHおよび血漿HVAを、1日目、5日目、および9日目に1300〜1600まで1時間ごとに連続的に測定した。日常的な生物学的および血液学的な研究を(特に、相対的な副腎機能不全(すなわち、低血糖、好酸球増加)の証拠をスクリーニングするために)毎日行った。
【0109】
本研究において精神病の好転または寛解を評価/測定するために使用した1つの手段は、「Wallach Recognition試験」(段落回想試験)であった。精神病性大鬱病の初期診断であると新たに診断された個体(上記の診断で)を、Wallach(1980)(前出)から改変された認識課題を行った。16語のリストが録音されたテープを聞かせられた被験者は、1語あたり10秒の速度を示した。被験者は、それぞれの16語を繰り返し、そしてそれらの単語の意味することを考え付くことを尋ねられる。リストの発表に続いて、被験者は、20分の注意をそらす運動課題に従事する。次に、被験者は、16のオリジナルからの目的の単語に加えて35のバックグラウンドの注意をそらす単語を含む50語のリストを聞く。それから、被験者を、目的の単語と注意をそらす単語との間を識別をするために尋ねる。
【0110】
(ミフェプリストンの投薬レジメおよび投与)
二人の精神科医により確かめられた精神病性大鬱病の診断を認める新規の16人の患者を、本研究に登録した。それぞれの患者は、上述の診断基準の全てに適合した。被験者には以下のいずれかを与える:4日間、一投与あたり、600mgのミフェプリストン/日を経口投与し、続いて4日間、偽薬を投与する:あるいは、4日間の偽薬投与に続いて、ミフェプリストンを同じ投与量およびレジメで投与する(患者は、この「クロスオーバー」試験において彼ら自身のコントロールとしての役割を果たす)。ミフェプリストンを投与された患者において、1日あたり3錠の200mgの錠剤を4日間投与した。ミフェプリストン(RU486)錠剤は、Population Council and Roussel Uclaf,Hoechst Marion Roussel USA,Kansas City,MOによって提供された。その錠剤は、Shanghai HuaLian Pharmaceuticals Co.,Ltd.,Shanghai,China(RU486の現在唯一の商業供給源)によって、製造された。
【0111】
患者および研究者は両方とも、患者が投与された化合物がどちらであるか(試験のミフェプリストンまたは偽薬)に関して、「目隠し」される。
【0112】
(結果)
プロトコールは、3人の患者を競合させた。この研究は、二重盲の偽薬で管理された研究であり、そしてこれまで目隠しは破られなかったので、2つの予備的な観測を行い得る。第一に、上述のようにミフェプリストンを投与された各被験者は、彼らの精神医学的状態において顕著な寛解を示した。第二に、患者によって主観的に報告されたか、または評価者またはスタッフによって客観的に観察された有害な効果はなかった。
【0113】
Wallach Recognition Testを、研究の被験者の精神病の寛解の程度を測定するために使用した場合では、ミフェプリストンを投与された全ての個体は、彼らの精神病の寛解を示した。平均で、彼らが、(試験のテープ録音において)以前に実際に聞いた単語として注意をそらすものを認知した時間試験被験者の数は、処置後、25%〜100%の間で減少した。
【0114】
平均すると、HAM−Dの点数は、約26から約13.5に減少した。Brief Psychiatric Rating Scale(BPRS)の点数は、約40.5から約29.5に減少した。
【0115】
Clinical Global Impression(CGIスケール、GAF評価に基づく、上述、DSM−V、(前出)、30〜31頁;Kaplan編(1995)を参照のこと)の点数は、約5(「顕著な抑圧」を示す)から約3(「中程度の抑圧」)に低下した。上述のように、GAFスケールは、単一の尺度を使用して、全体的な期間で個体の臨床的進行を探知することにおいて特に有用である。
【0116】
これらのデータは、比較的短い期間(約4日間)における高投与量のミフェプリストン(600mg/日の範囲)は、精神病性大鬱病に対する効果的、かつ安全な処置であることを実証する。
【0117】
本明細書に記載された実施例および実施態様は、例示の目的だけであり、そして、それらを考慮して、様々な改変および変更が、当業者に示唆され、そして本出願の精神および範囲ならびに添付の請求の範囲の範囲内に含まれるべきであることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精神病の寛解のための有効量のグルココルチコイドレセプターアンタゴニストを含む該精神病を寛解するための薬学的組成物であって、ただし患者はクッシング症候群に罹患していない、組成物であって、ここで、該グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、ステロイド骨格の11−β位における少なくとも1つのフェニル含有部分を有するステロイド骨格を含有する、組成物
【請求項2】
請求項1に記載の薬学的組成物であって、ここで、前記精神病が精神病性大鬱病、分裂感情性障害、アルツハイマー病およびコカイン中毒からなる群から選択される状態に関連する、組成物。
【請求項3】
請求項に記載の薬学的組成物であって、ここで、前記ステロイド骨格の11−β位におけるフェニル含有成分が、ジメチルアミノフェニル部分である、組成物。
【請求項4】
請求項に記載の薬学的組成物であって、ここで、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、ミフェプリストンを含有する、組成物。
【請求項5】
請求項に記載の薬学的組成物であって、ここで、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、RU009およびRU044からなる群から選択される、組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の薬学的組成物であって、ここで、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、約8〜20mg/kg体重/日の間の1日の量で投与される量で含まれる、組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の薬学的組成物であって、ここで、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、約8〜12mg/kg体重/日の間の1日の量で投与される量で含まれる、組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の薬学的組成物であって、ここで、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、約4日間投与される量で含まれる、組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の薬学的組成物であって、ここで、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、約600mg/日の1日の量で投与される量で含まれる、組成物。
【請求項10】
1日あたり一度で投与するための、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
経口投与のための、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
経皮投与のための、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
精神病性の鬱病を寛解するための薬学的組成物であって、該組成物は、約8〜12mg/kg体重/日の1日の量でミフェプリストンを投与するように含、ここで該投与が、約4日間連続する、組成物であって、ここで、該グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、ステロイド骨格の11−β位における少なくとも1つのフェニル含有部分を有するステロイド骨格を含有する、組成物
【請求項14】
ヒトの精神病の寛解のためのキットであって、該キットが以下:
グルココルチコイドレセプターアンタゴニスト;および
該グルココルチコイドレセプターアンタゴニストの投与の適応、投与量およびスケジュールを教示する使用説明書を包含する、キットであって、ここで、該グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、ステロイド骨格の11−β位における少なくとも1つのフェニル含有部分を有するステロイド骨格を含有する、キット
【請求項15】
請求項1に記載のキットであって、ここで、前記使用説明書は、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが約8〜12mg/kg体重/日の1日の量で投与され得ることを示す、キット。
【請求項16】
請求項1に記載のキットであって、ここで、前記使用説明書は、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストの投与が約4日間連続することを示す、キット。
【請求項17】
請求項1に記載のキットであって、ここで、前記精神病は、精神病性大鬱病の成分であり、そして前記使用説明書は、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが精神病性大鬱病の処置のために使用され得ることを示す、キット。
【請求項18】
請求項1に記載のキットであって、ここで、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、ミフェプリストンである、キット。
【請求項19】
請求項1に記載のキットであって、ここで、前記ミフェプリストンが、錠剤形態である、キット。
【請求項20】
精神病の寛解のために有効量のグルココルチコイドレセプターアンタゴニストを含む、グルココルチコイド関連機能不全に関連する該精神病を処置するための薬学的組成物であって、ただし患者は、クッシング症候群に罹患していない、組成物であって、ここで、該グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、ステロイド骨格の11−β位における少なくとも1つのフェニル含有部分を有するステロイド骨格を含有する、組成物

【公開番号】特開2009−132743(P2009−132743A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71039(P2009−71039)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【分割の表示】特願2000−514650(P2000−514650)の分割
【原出願日】平成10年10月5日(1998.10.5)
【出願人】(500159163)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (2)
【Fターム(参考)】