説明

ケイ酸および尿素および/または尿素誘導体からなる混合物を有する被覆材料

【課題】流展痕跡を形成する傾向が低く、同時に全ての要求に適う被覆材料を提供する。
【解決手段】結合剤および架橋剤ならびにケイ酸および尿素および/または尿素誘導体からなる混合物であるチキソトロープ剤を含有する被覆材料。尿素誘導体はイソシアネート基含有化合物、有利にはジイソシアネートと1級または2級アミンあるいはこれらのアミンの混合物および/または水とを、有利には脂肪族1級モノアミンとを反応させることによりが得られ、ケイ酸は変性された熱分解法の、有利には疎水性のケイ酸より得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合剤および架橋剤ならびに「ケイ酸ならびに尿素および/または尿素誘導体」からなる群からのチキソトロープ剤を含有する被覆材料、このような被覆材料の製法、クリヤラッカー塗装を製造するためのこのような被覆材料の使用および着色および/または効果付与多層ラッカー塗装の範囲でのクリヤラッカー塗装の製法に関する。
【背景技術】
【0002】
チキソトロープ剤を有する被覆材料は公知である。文献EP−A192304、DE−A2359923、DE−A1805693、WO94/22968およびDE−C2751761にはチキソトロープ剤として尿素誘導体を含有する被覆材料が記載されている。他方で、例えば文献WO97/12945および"farbe+lack"11/1992(p.829〜)にはチキソトロープ剤として変性された親水性または疎水性ケイ酸を含有する被覆材料が記載されている。この文献には、尿素誘導体も代替物として付随的に述べられている。文献US−A4169930から、被覆材料中で使用するための、ケイ酸およびアミン、例えば尿素からなる反応生成物が公知である。最後に、文献DE−A3726959中で尿素を溶解した形で含有する被覆材料が公知である。尿素が溶解しているという事実に基づき、これはチキソトロープ剤の機能を満たすことはできない。
【0003】
被覆材料中でチキソトロープ剤を使用すると特に、障害となる「流展跡形成(Laeuferbildung)」が生ずることなく、比較的厚いラッカー層の塗布が可能になる。殊に、尿素誘導体をベースとするチキソトロープ剤を含有する非水性ラッカーでは、高い固体含有率の場合に、その光学的外見に関して(殊には流展および光沢)不十分であり、それに加えて不十分な凝縮水分抵抗(schwitwasserresist)を有する(湿潤貯蔵によるかぶり(Weissanlaufen))被覆が生じるラッカー表面が得られる。ケイ酸をベースとするチキソトロープ剤も、流展に関して不十分な被覆材料をもたらす。
【0004】
チキソトロープ剤の本質的な特徴は、それと共に製造されたラッカーの粘度が流動の来歴に依存すること、かつ/またはチキソトロープ剤が構造粘性である、即ちラッカーの粘度がせん断応力につれて低下することである。固有粘度から出発して、せん断応力の間に粘度は低下して、せん断応力の終了の後に初めて徐々に出発値に戻る。チキソトロープゲルは例えば、機械的エネルギー(攪拌等)の導入により液化し、かつエネルギー導入の終了の後にはじめて徐々に再び固化する。構造粘性もしくはチキソトロープ特性はラッカー加工に有利である。殊に高い湿潤層厚でラッカーを施与する際に流展痕跡形成の傾向を制御し、かつ低減することができる。他方でチキソトロープ剤は、それと共に製造された完成被覆の光学的および化学的特性にマイナスの影響を及ぼすことはない。チキソトロープ剤は通常、粒状であり、かつ水性または非水性であっても被覆材料中に分散している。尿素誘導体の場合、これらは針状の、一部にはらせん形にねじれた結晶であり、その際、有利には0.1〜6μmの粒度分布(容量に対して粒子95〜99%)を調節し、かつ結晶の80%(数に対して)は2μm未満である。ケイ酸の場合、完成した被覆材料での磨砕度はDIN ISO1524によると10μmよりもかなり低い。熱分解ケイ酸の一次粒度は大抵、5〜20nmの範囲である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明は、流展痕跡を形成する傾向が低く、同時に全ての要求に適う被覆材料を提供するという技術的問題をベースとする。殊に、一成分および二成分または多成分系の形での被覆材料の流展および貯蔵安定性ならびにこれと共に製造された透明層ラッカー塗装の凝縮水分安定性が改善されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
この技術的問題を解決するために本発明は、被覆材料がケイ酸および尿素および/または尿素誘導体からなる混合物をチキソトロープ剤として含有することを教示している。
【0007】
意外にも、これらの自体公知のチキソトロープ剤両方の組み合わせを使用すると、低い流展痕跡形成の傾向を有する被覆材料が、更に流展および凝縮水分安定性に関して十分に満足なクリヤラッカー塗装が生じる:垂直基板面に、もはや流展痕跡形成を伴うことなく50μmまでの乾燥層厚を製造することができる。このことは、一成分系および多成分系にも当てはまる。
【0008】
本発明の範囲では一成分系(1K)とは、結合剤および架橋剤が並存して、即ち一成分で存在している熱により硬化する被覆材料のことを意味する。このための前提は、両方の成分が高温で、かつ/または化学線の照射ではじめて相互に架橋することである。
【0009】
この被覆材料は更に、二成分(2K)または多成分(3K、4K)系であってもよい。
【0010】
本発明の範囲ではこれらは、殊に結合剤および架橋剤が相互に別々に、少なくとも2種の成分で存在していて、それらの成分が塗布の直前に一緒にされる被覆材料のことを意味する。結合剤および架橋剤が室温でも相互に反応してしまう場合に、これらの形を選択する。この種の被覆剤を殊に、殊には自動車修理ラッカー塗装で熱に対して不安定な基板を被覆するために使用する。
【0011】
イソシアネート基含有化合物、有利にはジイソシアネートと1級または2級アミンあるいはこれらのアミンの混合物および/または水とを、有利には脂肪族1級モノアミンとを反応させることにより尿素誘導体を得るのが、有利である。尿素もしくは尿素誘導体を被覆材料の全固体含有率に対して0.1〜5.0質量%、有利には0.2〜2.5質量%、特に有利には0.6〜1.8質量%の量で使用する。
【0012】
有利には、モノアミンまたはモノアミンからなる混合物とポリイソシアネートまたはポリイソシアネートからなる混合物とを反応させることにより、非水性ラッカーで使用される尿素基含有チキソトロープ剤を製造するが、その際、モノアミンおよびポリイソシアネートを、アミノ基とイソシアネート基との当量比が1.2〜0.4、有利には1.0〜0.8であるような量で相互に反応させる。
【0013】
モノアミンとして有利には、1級モノアミン、特に有利には芳香脂肪族または脂肪族1級モノアミン、極めて有利には分子中に少なくとも6個のC原子を有する脂肪族1級モノアミンを使用する。使用可能なモノアミンの例として次のものを挙げる:ベンジルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、イソ−ノナニルアミン、イソ−トリデシルアミン、n−デシルアミンおよびステアリルアミン。同様に、エーテル基を含有する1級および2級アミンを使用することができる。一般式:(CH−(CH−O−(CHNH[式中、aは0〜10の整数であり、bは1〜20の整数であり、cは1または2であり、かつcおよびdの合計は常に3である]の物質が該当する。有利には、a=0、b=3、c=1およびd=2である。
【0014】
尿素誘導体のためのポリイソシアネートとして原則的に、1分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基を有する有機化合物の全てを使用することができる。例えばポリオールおよびポリアミンおよびポリイソシアネートからなるイソシアネート基含有反応生成物も使用することができる。有利にはジイソシアネート、特に有利には脂肪族ジイソシアネート、殊にヘキサメチレンジイソシアネートを使用する。使用可能なポリイソシアネートの例として次を挙げる:テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジ−イソシアネート、ω,ω’−ジプロピル−エーテル−ジイソシアネート、シクロヘキシル−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,5−ジメチル−2,4−ジ(イソシアナトメチル)−ベンゼン、1,5−ジ−メチル−2,4−ジ(イソシアナトエチル)−ベンゼン、1,3,5−トリメチル−2,4−ジ(イソシアナトメチル)−ベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,4−ジ(イソシアナトメチル)−ベンゼン、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネートのトリマー、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネート、2,6−トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート。好適なジイソシアネートおよびポリイソシアネートの更なる例は下記の、架橋剤として使用されるイソシアネートである。
【0015】
尿素基含有チキソトロープ剤は別に製造するか、または使用される結合剤、殊にはポリアクリレート樹脂の存在下に製造することができる。後者の場合には通常、有機溶剤、もしくは有機溶剤からなる混合物中の結合剤、殊にはポリアクリレート樹脂の溶液にアミン成分を添加し、次いでポリイソシアネートを可能な限り迅速に、かつ非常に強い攪拌下に添加するように処理する。こうして得られた、尿素基含有チキソトロープ剤および結合剤からなる混合物を次いで被覆材料中で使用することができる。
【0016】
ケイ酸は変性された熱分解の、有利には疎水性ケイ酸であってよい。親水性および疎水性ケイ酸は例えば商品名Aerosil(登録商標)で、かつ製品記号200、R972、R974、R805およびR812でDegussa AG社(Hanau)から購入することができる。ケイ酸を被覆材料の全固体含有量に対して0.1〜10質量%、有利には0.2〜2.5質量%、特に有利には0.6〜2.0質量%の量で使用する。
【0017】
本発明の範囲では、様々な結合剤を主要結合剤として使用することができる。場合により使用される様々な結合剤のうちで量的にもっとも多い割合を有する結合剤を主要結合剤と記載する。例えば場合によりヒドロキシル基を含有するポリアクリレート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエポキシドおよびアルキド樹脂(場合によりオイル変性されている)が該当する。水性ラッカー用の結合剤の場合に結合剤は、水溶性または水分散性を保障するイオン基または非イオン基を含有する。本発明では、ポリアクリレート樹脂が有利であり、従ってこれを使用するのが有利である。
【0018】
非水性被覆材料用のポリアクリレート樹脂の場合に結合剤は、殊には(a)アクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシル基含有エステルまたはこれらのモノマーからなる混合物16〜51質量%、有利には16〜28質量%、(b)(a)とは異なる、アルコール基中に有利には少なくとも4個のC原子を有するアクリル酸またはメタクリル酸の脂肪族または環式脂肪族エステルまたはこれらのモノマーからなる混合物32〜84質量%、有利には32〜63質量%、(c)エチレン系不飽和カルボン酸またはエチレン系不飽和カルボン酸からなる混合物0〜2質量%、有利には0〜1質量%および(d)(a)、(b)および(c)とは異なるエチレン系不飽和モノマーまたはこれらのモノマーからなる混合物0〜30質量%、有利には0〜20質量%を重合させて、酸価0〜15、有利には0〜8、ヒドロキシ数80〜140、有利には80〜120および数平均分子量1500〜10000、有利には2000〜5000を有するポリアクリレート樹脂にし、その際、成分(a)、(b)、(c)および(d)の質量割合の合計は常に100質量%であることにより製造することができるポリアクリレート樹脂であってよい。
【0019】
有利に使用されるポリアクリレート樹脂の製造は、一般的に良く知られている重合法により、塊状、溶液またはエマルジョンで行うことができる。ポリアクリレート樹脂を製造するための重合法は一般に公知であり、かつ数多く記載されている(例えばHouben Weyl, Methoden der organischen Chemie, 4.Auflage, Band 14/1, p.24-255(1961)参照)。
【0020】
ポリアクリレート樹脂を製造するための好適な(共)重合法の更なる例は特許文献DE−A19709465、DE−C19709476、DE−A2848906、DE−A19524182、EP−A0554783、WO95/27742、DE−A3841540またはWO82/02387に記載されている。
【0021】
殊には塊状、溶液またはエマルジョンでの共重合のために、テイラー反応器(Taylorreaktor)が有利である。
【0022】
テイラー流の条件下に物質を変化させるために役立つテイラー反応器は公知である。これは主に2個の同軸同心に設置されたシリンダー(このうち、外側のものは固定されていて、内側のものは回転する)からなる。反応室として、シリンダーのギャップによって形成される容積が使用される。内部シリンダーの角速度ωが増すにつれて、無次元係数、いわゆるテイラー数Taで同定される一連の様々な流形が生じる。このテイラー数は下記の式に従い、攪拌機の角速度に加えて、ギャップ内の液体の動粘度νに、かつ寸法的パラメーター、内部シリンダーの外側半径r、外側シリンダーの内側半径rおよびギャップ幅d、両方の半径の差に依存する:
Ta=ωdν−1(d/r1/2 (I)
ただし、d=r−r
低い角速度では層流のクエット流、単純なせん断流が生じる。内部シリンダーの回転速度を更に高めて、臨界値を上回ると交代に、周囲に沿って軸と対抗して回転する(逆転する)渦が生じる。これらのいわゆるテイラー渦は回転対照であり、かつギャップ幅とほぼ同じ直径を有する。2つの隣接する渦は渦対(Wirbelpaar)または渦室(Wirbelzell)を形成する。
【0023】
これらの特性は、静止している外部シリンダーを伴う内部シリンダーが回転すると、内部シリンダー付近の液体粒子が内部シリンダーから離れている液体粒子よりも強い遠心力にさらされることに基づく。作用する遠心力のこの差が、内部シリンダーから外部シリンダーへと液体粒子を押す。液体粒子が動く際に、摩擦が克服されなければならないので、遠心力は粘性力(Viskositaetskraft)によって抑えられる。回転速度が高まると、遠心力も高まる。遠心力が安定している粘性力よりも高くなると、テイラー渦が生じる。
【0024】
僅かな軸流を伴うテイラー流では、それぞれの渦対がギャップを通して移動して、隣接する渦対のあいだに僅かな物質交替のみが生じる。このような渦対内部での混合は非常に高く、これに対して対臨界を超えての軸混合は非常に僅かなだけである。従って渦対は十分に混合される攪拌釜とみなすことができる。一定の滞留時間を伴う渦対は理想的な攪拌釜と同様にギャップを通して移動するので、この流系は理想的な流管である。
【0025】
本発明ではこの場合、外部反応器壁およびそこに存在する同軸または偏心に設置されたローター、一緒にリングギャップ形の反応器容積を規定する反応器底および反応器ふた、出発化合物を配量するための少なくとも1個の装置ならびに生成物流出のための装置を有するテイラー反応器が有利であり、この際、反応器容量中の実質的に全ての反応器長さでテイラー流のための条件が満たされる、即ちリングギャップが貫流方向に拡がっているように、反応壁および/またはローターが幾何学的に構成されている。
【0026】
使用されるポリアクリレート樹脂を有利には、溶液重合法を用いて製造する。この場合に通常は、有機溶剤もしくは溶剤混合物を予め装入し、かつ沸騰まで加熱する。この有機溶剤もしくは溶剤混合物に次いで、重合させるべきモノマー混合物ならびに1種または複数種の重合開始剤を連続的に添加する。重合は温度100〜160℃、有利には130〜150℃で行う。重合開始剤として有利には遊離ラジカルを形成する開始剤を使用する。開始剤性能および量を通常は、供給相の間に重合温度で可能な限り一定のラジカル提供が存在するように選択する。
【0027】
使用可能な開始剤の例として次を挙げる:ジアルキルペルオキシド、例えばジ−t−ブチルペルオキシドまたはジクミルペルオキシド;ヒドロペルオキシド、例えばクメンヒドロペルオキシドまたはt−ブチルヒドロペルオキシド;過エステル、例えばt−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルピバレート、t−ブチルペル−3,5,5−トリメチル−ヘキサノエートまたはt−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート;アゾジニトリル、例えばアゾビスイソブチロニトリルまたはC−C−離脱開始剤、例えばベンズピナコールシリルエーテル。
【0028】
使用するポリアクリレート樹脂が数平均分子量1500〜10000、有利には2000〜5000(校正物質としてポリスチレンの使用下にゲル浸透クロマトグラフィーにより測定)を有するように、重合条件(反応温度、モノマー混合物の供給時間、有機溶剤および重合開始剤の量および種類、場合による分子量調節剤、例えばメルカプタン、チオールグリコール酸エステルおよび塩化水素の併用)を選択する。
【0029】
本発明で使用されるポリアクリレート樹脂の酸価は当業者であれば、相応する量の成分(c)の使用により調整することができる。同様のことが、ヒドロキシル数の調整に関しても当てはまる。これは、使用成分(a)の量により制御することができる。
【0030】
成分(a)として原則的に、アクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシル基含有エステルまたはこのようなモノマーからなる混合物を使用することができる。例として次を挙げる:アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、例えばヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、殊に4−ヒドロキシ−ブチルアクリレート;メタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、例えばヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、殊には4−ヒドロキシブチルメタクリレート;環式エステルからの反応生成物、例えばE−カプロラクトンおよびアクリル酸もしくはメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル。
【0031】
有利には、成分(a)を単独で重合すると、ガラス転移温度−50〜+70℃、有利には−30〜+50℃を有するポリアクリレート樹脂が得られるように、成分(a)の組成を選択する。ガラス転移温度は当業者であれば、式:
【0032】
【化1】

【0033】
=ポリマーのガラス転移温度
x=重合導入された異なるモノマーの数
=第nのモノマーの質量割合
Gn=第nのモノマーからなるホモポリマーのガラス転移温度
を用いて近似的に算出することができる。
【0034】
成分(b)として原則的に、(a)とは異なる、アルコール基中に少なくとも4個のC原子を有するアクリル酸またはメタクリル酸の脂肪族または環式脂肪族エステルまたはこのようなモノマーからなる混合物を使用することができる。例として次のものを挙げる:アルコール基中に4〜20個のC原子を有するアクリル酸およびメタクリル酸の脂肪族エステル、例えばn−ブチル−、イソ−ブチル−、t−ブチル、2−エチルヘキシル−、ステアリル−およびラウリルアクリレートおよび−メタクリレートならびにアクリル酸およびメタクリル酸の環式脂肪族エステル、例えばシクロヘキシルアクリレートおよびシクロヘキシルメタクリレート。有利には、成分(b)を単独で重合させると、ガラス転移温度10〜100℃、有利には20〜60℃を有するポリアクリレートが得られるように、成分(b)の組成を選択する。
【0035】
成分(c)として原則的に、エチレン系不飽和カルボン酸またはエチレン系不飽和カルボン酸からなる混合物を使用することができる。成分(c)として有利には、アクリル酸および/またはメタクリル酸を使用する。
【0036】
成分(d)として原則的に、(a)、(b)および(c)とは異なるエチレン形不飽和モノマーまたはこのようなモノマーからなる混合物を使用することができる。成分(d)として使用することができるモノマーの例として次を挙げる:ビニル芳香族炭化水素、例えばスチレン、α−アルキルスチレンおよびビニルトルエン、アクリル酸およびメタクリル酸のアミド、例えばメタクリルアミドおよびアクリルアミド、メタクリル酸およびアクリル酸の二トリル;ビニルエーテルおよびビニルエステルあるいは特許文献DE−A3807571、DE−A3706095、EP−B0358153、US−A4754014、DE−A4421823またはWO92/22615に記載されているようなポリシロキサンマクロモノマー。成分(d)として有利には、ビニル芳香族炭化水素、殊にはスチレンを使用する。有利には、成分(d)を単独で重合させるとガラス転移温度70〜120℃、有利には80〜100℃を有する樹脂が得られるように、成分(d)の組成を選択する。
【0037】
有利には結合剤は被覆材料中に、それぞれ被覆材料の全固体含有量に対して10〜90質量%、特に有利に15〜80質量%および殊には20〜70質量%の量で含有されている。
【0038】
被覆材料は更に少なくとも1種の架橋剤を含有する。
【0039】
被覆材料が多成分系である場合、ポリイソシアネートおよび/またはポリエポキシド、しかし殊にはポリイソシアネートを架橋剤として使用する。
【0040】
好適なポリイソシアネートの更なる例は有機ポリイソシアネート、殊には脂肪族、環式脂肪族、芳香脂肪族および/または芳香族に結合する遊離のイソシアネート基を有するいわゆるラッカーポリイソシアネートである。有利には、1分子当たり2〜5個のイソシアネート基および粘度100〜10000、有利には100〜5000および殊には100〜2000mPas(23℃で)を有するポリイソシアネートを使用する。場合によりポリイソシアネートに更に、純粋なポリイソシアネートに対して有利には1〜25質量%の少量の有機溶剤を添加して、イソシアネートの処理性を改善し、かつ場合によりポリイソシアネートの粘度を前記の範囲内の値に低下させる。ポリイソシアネートのための添加剤として好適な溶剤は例えば、エトキシエチルプロピオネート、アミルメチルケトンまたはブチルアセテートである。更に、ポリイソシアネートを慣用かつ公知の方法で親水性または疎水性に変性することができる。
【0041】
好適なポリイソシアネートの例は例えば"Methoden der organischen Chemie", Houben-Weyl, Band 14/2, 4.Auflage, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1963, p.61-70に、かつW.SiefkenによってLiebigs Annalen der Chemie, Band 562, p.75-136に記載されている。例えば、ポリオールと過剰のポリイソシアネートとを反応させることにより製造することができ、かつ有利には低粘度であるイソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーも好適である。
【0042】
好適なポリイソシアネートの更なる例はイソシアヌレート−、ビウレット−、アロファネート−、イミノオキサジアジンドン−、ウレタン−、尿素−および/またはウレトジオン基を有するポリイソシアネートである。ウレタン基を有するポリイソシアネートは例えば、一部のイソシアネート基とポリオール、例えばトリメチロールプロパンおよびグリセリンとの反応により得られる。有利には、脂肪族または環式脂肪族ポリイソシアネート、殊にはヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー化およびトリマー化ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2−イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートまたは1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、商品名DDI1410でHenkel社から販売されているようなダイマー脂肪酸から誘導されるジイソシアネート、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチル−オクタン、1,7−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチル−ヘプタンまたは1−イソシアナト−2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキサンまたはこれらのポリイソシアネートの混合物を使用する。
【0043】
好適なポリイソシアネートの更なる例はチキソトロープ剤の製造の際に前記したものである。
【0044】
好適なポリエポキシドの例は、例えばビスフェノール−Aまたはビスフェノール−Fをベースとする公知の脂肪族および/または環式脂肪族および/または芳香族ポリエポキシドの全てである。ポリエポキシドとして、例えば市場で商品名Epikote(登録商標、Shell社)、Denacol(登録商標、Nagase Chemicals Ltd. 日本)で得られるポリエポキシド、例えばDenacol EX−411(ペンタエリトリットポリグリシジルエーテル)、Denacol EX−321(トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル)、Denacol EX−512(ポリグリセロール−ポリグリシジルエーテル)およびDenacol EX−521(ポリグリセロールポリグリシジルエーテル)が好適である。
【0045】
一成分系では、高めた温度で結合剤の官能基と反応して、三次元ネットワークを構成する架橋剤を使用する。勿論、このような架橋剤を少量、多成分系で一緒に使用することができる。本発明の範囲では「少量」は、主要な架橋反応を妨害しないか、またはまったく抑制しない割合を意味する。
【0046】
この種の好適な架橋剤の例はブロックトポリイソシアネートである。好適なポリイソシアネートの例は前記のものである。
【0047】
好適なブロッキング剤の例は米国特許US−A4444954から公知のブロッキング剤であり、例えば次である:
i)フェノール、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、クロロフェノール、エチルフェノール、t−ブチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸、これらの酸のエステルまたは2,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン;
ii)ラクタム、例えばε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムまたはβ−プロピオラクタム;
iii)活性なメチレン系化合物、例えばジエチルマロネート、ジメチルマロネート、アセト酢酸エチル−または−メチルエステルまたはアセチルアセトン;
iv)アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−アミルアルコール、t−アミルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール、グリコール酸、グリコール酸エステル、乳酸、乳酸エステル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、エチレンクロロヒドリン、エチレンブロモヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,4−シクロヘキシルジメタノールまたはアセトシアノヒドリン;
v)メルカプタン、例えばブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノールまたはエチルチオフェノール;
vi)酸アミド、例えばアセトアニリド、アセトアニシジンアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミドまたはベンズアミド;
vii)イミド、例えばスクシンイミド、フタルイミドまたはマレイミド;
viii)アミン、例えばジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミンまたはブチルフェニルアミン;
ix)イミダゾール、例えばイミダゾールまたは2−エチルイミダゾール;
x)尿素、例えば尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素または1,3−ジフェニル尿素;
xi)カルバメート、例えばN−フェニルカルバミド酸フェニルエステルまたは2−オキサゾリドン;
xii)イミン、例えばエチレンイミン;
xiii)オキシム、例えばアセトンオキシム、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジイソブチルケトキシム、ジアセチルモノキシム、ベンゾフェノンオキシムまたはクロロヘキサノンオキシム;
xiv)イオウ含有酸の塩、例えば亜硫酸水素ナトリウムまたは亜硫酸水素カリウム;
xv)ヒドロキサム酸エステル、例えばベンジルメタクリロヒドロキサメート(BMH)またはアリルメタクリロヒドロキサメート;または
xvi)置換されたピラゾール、イミダゾールまたはトリアゾール;ならびに
これらのブロッキング剤の混合物、ことにはジメチルピラゾールおよびトリアゾール、マロン酸エステルおよびアセト酢酸エステルまたはジメチルピラゾールおよびスクシンイミド。
【0048】
架橋剤として、一般式:
【0049】
【化2】

【0050】
のトリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジンを使用することもできる。
【0051】
好適なトリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジンの例は特許文献US−A4939213、US−A5084541またはEP−A0624577に記載されている。殊に、トリス(メトキシ−、トリス(ブトキシ−および/またはトリス(2−エチルヘキソキシ(hexoxy)カルボニルアミノ)トリアジンを使用する。
【0052】
メチル−ブチル混合エステル、ブチル−2−エチルヘキシル−混合エステルおよびブチルエステルが有利である。これらは純粋なメチルエステルに比べて、ポリマー溶融物へのより良好な可溶性の利点を有し、かつ晶出の傾向も低い。
【0053】
殊に、アミノプラスト用樹脂、例えばメラミン樹脂を架橋剤として使用することができる。この場合、透明な上塗ラッカーまたはクリヤラッカーに好適な各アミノプラスト用樹脂またはこのようなアミノプラスト用樹脂からなる混合物を使用することができる。ことには、そのメチロール−および/またはメトキシメチル基が一部、カルバメート−またはアロファネート基で脱官能化されている慣用かつ公知のアミノプラスト用樹脂が該当する。この種の架橋剤は特許文献US−A4710542およびEP−B0245700に、ならびにB.Singhおよび共同研究者による論文"Carbamylmethylated Melamines, Novel Crosslinkers for the Coatings Industry"(Advanced Organic Coatings Science and Technology Series,1991,Band 13, p.193-207)中に記載されている。
【0054】
好適な架橋剤(a7)の更なる例はβ−ヒドロキシアルキルアミド、例えばN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アジパミド)またはN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)−アジパミドである。
【0055】
好適な架橋剤の他の例はシロキサン、殊にはトリアルコキシ−またはジアルコキシシラン基少なくとも1個を有するシロキサンである。
【0056】
好適な架橋剤の更なる例はポリ無水物、殊にはポリコハク酸無水物である。
【0057】
被覆材料中での架橋剤の量は広く変動させることができ、かつ殊には、一つには架橋剤の官能性に、かつ一つには結合剤中に存在する結合しうる官能基の数に、ならびに所望の架橋密度に合わせる。したがって当業者は架橋剤の量をその一般的な専門知識に基づき、場合により簡単なオリエンテーション実験を用いて決定することができる。有利には被覆材料中に架橋剤はそれぞれ被覆材料の全固体含有量に対して5〜60質量%、特に有利には10〜50質量%、かつことには15〜45質量%の量で含有されている。この場合に更に、被覆材料中で、架橋剤中の官能基と結合剤中の官能基との比が2:1〜1:2、有利には1.5:1〜1:1.5、特に有利には1.2:1〜1:1.2、かつ殊には1.1:1〜1.1であるように、架橋剤および結合剤の量を選択することが推奨される。
【0058】
被覆材料は非水性被覆材料、有利には非水性透明光沢クリヤラッカーであるのが有利である。光沢クリヤラッカーとの表現は、つや消しラッカーとは逆に可能な限り高い光沢が努められていることを意味する。
【0059】
非水性被覆材料の場合、これは有機溶剤、例えば脂肪族、芳香族および/または環式脂肪族炭化水素、酢酸またはプロピオン酸のアルキルエステル、アルカノール、ケトン、グリコールエーテルおよび/またはグリコールエーテルエステル20〜70質量%、有利には40〜60質量%(塗布可能な被覆材料に対して)を含有する。
【0060】
更に、被覆材料は慣用かつ公知のラッカー添加剤少なくとも1種を有効量で、即ち被覆材料の全固体含有率に対してそれぞれ有利には40質量%まで、特に有利には30質量%まで、かつ殊には20質量%までの量で含有してよい。ラッカー添加剤が被覆材料の透明性および澄明性にマイナスの影響を及ぼさないことが重要である。
【0061】
好適なラッカー添加剤の例は以下である:
UV吸収剤;
遮光剤、例えばHALS化合物、ベンゾトリアゾールまたはオキサロアニリド;
ラジカル捕捉剤;
架橋のための触媒、例えばジブチルスズジラウレートまたはリチウムデカノエート;
滑剤;
重合抑制剤;
消泡剤;
乳化剤、殊には非イオン乳化剤、例えばアルコキシル化アルカノールおよびポリオール、フェノールおよびアルキルフェノールまたはアニオン乳化剤、例えばアルコキシル化アルカノールおよびポリオール、フェノールおよびアルキルフェノールのアルカンカルボン酸、アルカンスルホン酸およびスルホン酸のアルカリ塩またはアンモニウム塩;
湿潤剤、例えばシロキサン、フルオロ含有化合物、カルボン酸半エステル、リン酸エステル、ポリアクリル酸およびそのコポリマーまたはポリウレタン;
付着仲介剤、例えばトリシクロデカンジメタノール;
流展剤;
塗膜形成助剤、例えばセルロース誘導体;
透明充填剤、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウムをベースとするナノ粒子、Roempp Lexikon "Lacke und Druckfarben" Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1998, p.250-252を補足的に参照;
特許文献WO94/22968、EP−A0276501、EP−A0249201またはWO97/12945から公知のようなレオロジー調節添加剤;例えばEP−A0008127に開示されているような架橋されたポリマーマイクロ粒子;無機層状ケイ酸塩、例えばアルミニウム−マグネシウムケイ酸塩、モンモリロナイト型のナトリウム−マグネシウム−およびナトリウム−マグネシウム−フルオロ−リチウム−層状ケイ酸塩;またはイオン性および/または結合作用性基を有する合成ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルピロリドン、スチレン−マレイン酸無水物−またはエチレン−マレイン酸無水物−コポリマーおよびそれらの誘導体あるいは疎水性変性されたエトキシ化ウレタンまたはポリアクリレート;
防炎加工剤;および/または
つや消し剤。
【0062】
好適なラッカー添加剤(a6)の更なる例はJohan Bielemanによる参考書"Lackadditive"(Wiley-VCH, Weinheim, New York, 1998)中に記載されている。
【0063】
本発明は更に、本発明の被覆材料の製法に関し、その際:
A)結合剤を製造し、
B)尿素誘導体の製造を、工程A)からの結合剤少なくとも一部量の存在下に実施し、かつ
C)結合剤および尿素誘導体からなる混合物と、
ケイ酸と工程A)とは異なる付加的な結合剤、有利には前記の種類のポリアクリレート樹脂の第一の量との磨砕物(Anreibung)(ペースト)と、
架橋剤または架橋剤からなる混合物と、および付加的に
少なくとも1種の前記のラッカー添加剤と、
ポリアクリレートと相容性の、前記の結合剤とは異なる結合剤と、および
場合により、結合剤と共に磨砕されたケイ酸の残量とを混合し、かつ加工に慣用の粘度に調整する。
【0064】
この場合、架橋剤または架橋剤の混合物を同時に、または被覆材料の塗布の直前に初めて、添加することができる。2成分系の場合には、架橋剤、例えばブロックされていないポリイソシアネートを被覆材料の塗布の直前に初めて添加する。一成分系の場合には、架橋剤、例えばブロックトポリイソシアネートをすでに製造段階で添加することができる。
【0065】
本発明は更に、水性ベースラッカーの使用下に製造された着色および/または効果付与ベースラッカー塗装、殊にはベースラッカー塗装の上に光沢クリヤラッカー塗装を製造するために、本発明の被覆材料を使用することに関する。着色は着色剤および/または着色顔料により達成する。効果付与は効果顔料、例えば金属効果顔料またはマイカ顔料を用いて達成する。
【0066】
好適な水性ラッカーならびに相応するラッカー塗装の例は特許文献EP−A0089497、EP−A0256540、EP−A0260447、EP−A0297576、WO96/12747、EP−A0523610、EP−A0228003、EP−A0397806、EP−A0574417、EP−A0531510、EP−A0581211、EP−A−0708788、EP−A0593454、DE−A4328092、EP−A0299148、EP−A0394737、EP−A0590484、EP−A0234362、EP−A0234361、EP−A0543817、WO95/14721、EP−A0521928、EP−A0522420、EP−A0522419、EP−A0649865、EP−A0536712、EP−A0596460、EP−A0596461、EP−A0584818、EP−A0669356、EP−A−0634431、EP−A0678536、EP−A0354261、EP−A0424705、WO97/49745、WO97/49747、EP−A−0401565、EP−B0730613またはWO95/14721から公知である。
【0067】
本発明は最後に、下塗された、または下塗されていない基板の表面上に着色および/または効果付与多層ラッカー塗装を製造する方法に関しており、その際、(1)基板表面に着色および/または効果付与顔料を有するベースラッカー、殊には水性ベースラッカーを塗布し、(2)工程(1)で塗布されたベースラッカー層を温度15〜100℃、有利には20〜85℃で乾燥させ、(3)工程(2)で乾燥させたベースラッカー層に、クリヤラッカー層として本発明の透明被覆材料を塗布し、引き続き、(4)ベースラッカー層およびクリヤラッカー層を一緒に、有利には120〜180℃の温度および5分〜60分の時間で焼き付ける。
【0068】
基板として、熱の適用下にその上に存在するラッカー層を硬化させることができる物品の塗装すべき表面全てがこれに該当し、例えば金属、プラスチック、木材、セラミック、スチール、テキスタイル、繊維複合材料、皮革、ガラス、ガラス繊維、ガラスウールおよびスチールウール、鉱物−および樹脂接着建材、例えば石膏−およびセメントボードまたはかわらからなる物品である。したがってこの被覆材料は殊にはクリヤラッカーとして、自動車ラッカー塗装、家具のラッカー塗装およびコイル被覆およびコンテナ被覆を含む工業ラッカー塗装にかなり好適である。工業ラッカー塗装の範囲では、これは個人用または工業用使用のための実質的に全ての部材、例えばラジエータ、家庭用具、金属製小型部材、ホイールキャップまたはリムのラッカー塗装に好適である。
【0069】
本発明の被覆材料、殊にはクリヤラッカーを用いると、ことには下塗されたまたは下塗されていない、ならびに場合によりベースラッカー層で被覆されたプラスチック、例えばABS、AMMA、ASA、CA、CAB、EP、UF、CF、MF、MPF、PF、PAN、PA、PE、HDPE、LDPE、LLDPE、UHMWPE、PET、PMMA、PP、PS、SB、PUR、PVC、RF、SAN、PBT、PPE、POM、PUR−RIM、SMC、BMC、PP−EPDMおよびUP(DIN7728T1による略称)をラッカー塗装することができる。ラッカー塗装すべきプラスチックは当然、ポリマーブレンド、変性プラスチックまたは繊維強化プラスチックであってよい。通常、車両製造で、殊には自動車製造で使用されるプラスチックの被覆にも使用することができる。未機能化および/または未偏光基板表面の場合、これらを被覆する前に公知のように、例えばプラズマで、またはブレージング(Beflammen)で予備処理することができる。
【0070】
この被覆材料、殊にはクリヤラッカーを用いて製造された多層ラッカー塗装では、不十分な中間層付着による層間剥離は観察されない。その流展およびその光学特性は優れている。これはもはや、凝縮水負荷によるかぶりの傾向は有しない。
【実施例】
【0071】
製造例
1.本発明で使用可能なポリアクリレート(A)の製造
攪拌機、モノマー混合物あるいは開始剤溶液用の滴下漏斗2個、窒素供給管、温度計および還流冷却器を備えた有効容量4lの実験室用反応器に、沸騰範囲158〜172℃を有する芳香族炭化水素フラクション897gを秤量導入した。溶剤を140℃に加熱した。140℃に達した後に、t−ブチルアクリレート487g、n−ブチルメタクリレート215g、スチレン143g、ヒドロキシプロピルメタクリレート572gおよびアクリル酸14gからなるモノマー混合物を4時間かけて、かつ前記の芳香族溶剤86g中のt−ブチルペルエチルヘキサノエート86gの開始剤溶液を4.5時間かけて均等に反応器に配量した。モノマー混合物および開始剤溶液の配量とを同時に開始した。開始剤配量の終了の後に、反応混合物を更に2時間、140℃に維持して、その後に冷却した。1−メトキシプロピルアセテート−2、ブチルグリコールアセテートおよびブチルアセテートからなる混合物で希釈された生じたポリマー溶液は空気循環炉中、130℃で1時間測定して固体含有率53%、酸価10および粘度23dPas(ICI円錐円板粘度計の使用下に23℃で、前記の芳香族溶剤中の60%ポリマー溶液で測定)を有した。
【0072】
2.本発明で使用可能なポリアクリレート(B)の製造
攪拌機、モノマー混合物あるいは開始剤溶液用の滴下漏斗2個、窒素供給管、温度計および還流冷却器を備えた有効容量4lの実験室用反応器に、沸騰範囲158〜172℃を有する芳香族炭化水素フラクション720gを秤量導入した。溶剤を140℃に加熱した。140℃に達した後に、2−エチル−ヘキシルメタクリレート537g、n−ブチルメタクリレート180g、スチレン210g、ヒドロキシエチルアクリレート543gおよびアクリル酸30gからなるモノマー混合物を4時間かけて、かつ前記の芳香族溶剤90g中のt−ブチルペルエチルヘキサノエート150gの開始剤溶液を4.5時間かけて均等に反応器に配量した。モノマー混合物および開始剤溶液の配量とを同時に開始した。開始剤配量の終了の後に、反応混合物を更に2時間、140℃に維持して、その後に冷却した。生じたポリマー溶液は空気循環炉中、130℃で1時間測定して固体含有率65%、酸価17および粘度16dPas(ICI円錐円板粘度計の使用下に23℃で、前記の芳香族溶剤中の60%ポリマー溶液で測定)を有した。
【0073】
3.本発明で使用可能なポリアクリレート(C)の製造
攪拌機、モノマー混合物あるいは開始剤溶液用の滴下漏斗2個、窒素供給管、温度計および還流冷却器を備えた有効容量4lの実験室用反応器に、沸騰範囲158〜172℃を有する芳香族炭化水素フラクション720gを秤量導入した。溶剤を140℃に加熱した。140℃に達した後に、2−エチル−ヘキシルメタクリレート450g、n−ブチルメタクリレート180g、スチレン210g、ヒドロキシエチルアクリレート180g、4−ヒドロキシブチルアクリレート450gおよびアクリル酸30gからなるモノマー混合物を4時間かけて、かつ前記の芳香族溶剤90g中のt−ブチルペルエチルヘキサノエート150gの開始剤溶液を4.5時間かけて均等に反応器に配量した。モノマー混合物および開始剤溶液の配量とを同時に開始した。開始剤配量の終了の後に、反応混合物を更に2時間、140℃に維持して、その後に冷却した。生じたポリマー溶液は空気循環炉中、130℃で1時間測定して固体含有率65%、酸価15および粘度3dPas(ICI円錐円板粘度計の使用下に23℃で、前記の芳香族溶剤中の60%ポリマー溶液で測定)を有した。
【0074】
4.本発明で使用可能なブロックトポリイソシアネート(A)の製造
4l−スチール製反応器中にBasonat(登録商標)HI190B/S(Basf Aktiengesellschaft社のヘキサメチレンジイソシアネートをベースとするイソシアヌレート)40質量部および溶剤ナフタ16.4質量部を秤量導入し、かつ50℃に加熱した。4時間かけて、ジエチルマロネート26.27質量部、酢酸エチルエステル6.5質量部および触媒溶液(ナトリウムエチルヘキサノエート)0.3質量部を均等に配量した。引き続き、温度を70℃まで高めた。5900〜6800のイソシアネート−当量に達したら、70℃で30分間、攪拌下に1,4−シクロヘキシルジメタノール1.03質量部を添加した。≧13000のイソシアネート当量が達成された後に、n−ブタノール5質量部を添加した。この際に温度を50℃まで低下させ、かつ生じたブロックトポリイソシアネートを、理論固体含有率68質量%までn−ブタノールに溶かした。
【0075】
5.本発明で使用可能なブロックトポリイソシアネート(B)の製造
4l−スチール製反応器中にVestanat(登録商標)1890(Creanova社のイソホロンジイソシアネートをベースとするイソシアヌレート)41.76質量部および溶剤ナフタ20.76質量部を秤量導入し、かつ50℃に加熱した。4時間かけて、ジエチルマロネート23.49質量部、酢酸エチルエステル5.81質量部および触媒溶液(ナトリウムエチルヘキサノエート)0.14質量部を均等に配量した。供給の終了後に更に触媒溶液0.14質量部を添加した。引き続き、温度を80℃まで高めた。5900〜6800のイソシアネート−当量に達したら、80℃で30分間、攪拌下に1,4−シクロヘキシルジメタノール0.9質量部を添加した。≧13000のイソシアネート当量が達成された後に、n−ブタノール5質量部を添加した。この際に温度を50℃まで低下させ、かつ生じたブロックトポリイソシアネートを、理論固体含有率63質量%までn−ブタノールに溶かした。
【0076】
6.本発明で使用可能なチキソトロープペースト(A)の製造
Vollrath社の実験室用攪拌ミル中に、ポリアクリレートA592g、ブチルアセテート80g、キシレン64gおよびAerosil(登録商標)972(Degussa AG, Hanau)64gからなる粉砕すべき物質800gをケイ砂(粒度0.7〜1mm)1100gと一緒に秤量導入し、かつ水冷下に30分間、摩砕した。
【0077】
7.本発明で使用可能なチキソトロープペースト(B)の製造
Vollrath社の実験室用攪拌ミル中に、ポリアクリレートC323.2g、ブタノール187.2g、キシレン200.8gおよびAerosil(登録商標)812(Degussa AG, Hanau)88.8gからなる粉砕すべき物質800gをケイ砂(粒度0.7〜1mm)1100gと一緒に秤量導入し、かつ水冷下に30分間、摩砕した。
8.本発明による2Kクリヤラッカー(例1)および本発明によらない2Kクリヤラッカー(比較例1)の製造
本発明による2Kクリヤラッカー(例1)および市販の2Kクリヤラッカー(比較例1)を第1表に記載の成分から混合により製造し、かつ試験板に塗布した。試験板として、ボディースチールからなるスチール板を使用したが、これは市販のリン酸亜鉛溶液で予備処理されており、かつ後記のように電気浸漬ラッカーおよび充填剤で被覆されていた。
【0078】
【表1】

【0079】
架橋剤はヘキサメチレンジイソシアネートをベースとするポリイソシアネートの溶液(ブチルアセテート/溶剤ナフタ中のDesmodur(登録商標)N3390(Bayer AG社)の80%溶液)である。
【0080】
Setalux(登録商標)C91756は結合剤中に溶解もしくは分散されている尿素誘導体である。
【0081】
9.ラッカー技術による試験
試験板を製造するために順次、層厚18〜22μmで電気浸漬ラッカーを、および層厚35〜40μmで水性充填剤を塗布し、かつ焼き付けた。この場合、電気浸漬ラッカーを170℃で20分間、焼付け、かつ充填剤を160℃で20分間、焼き付けた。引き続き、層厚12〜15μmで青色水性ベースラッカーを塗布し、かつ80℃で10分間、曝気させた。引き続き、例1および比較例1の試験すべき2K系を40〜45μmの層厚で、一回塗布で静電的に垂直に塗布し(鐘型:エコベル(Ecobell))、その後、ベースラッカーおよび2K系を140℃で20分間垂直に硬化させた(ウェット・オン・ウェット法)。
【0082】
【表2】

【0083】
10.本発明による1Kクリヤラッカー(例2)および市販の1Kクリヤラッカー(比較例2)の製造
本発明による1Kクリヤラッカー(例2)および本発明によらない1Kクリヤラッカー(比較例2)を第3表に記載の成分から混合により製造し、かつ試験板(製造例9参照)に塗布した。
【0084】
【表3】

【0085】
11.ラッカー技術による試験
試験板を製造するために順次、層厚18〜22μmの電気浸漬ラッカーを、かつ層厚35〜40μmの水性充填剤を塗布し、かつ焼き付けた。この場合、電気浸漬ラッカーを170℃で20分間、焼付け、かつ充填剤を160℃で20分間焼き付けた。引き続き、層厚12〜15μmの緑色水性ベースラッカーを塗布し、かつ80℃で10分間、曝気した。引き続き、層厚40〜45μmで例2の試験すべき1K系および比較例2を塗布し、その後、ベースラッカーおよび1K系を140℃で20分間、硬化させた(ウェット・オン・ウェット法)。
【0086】
【表4】

【0087】
a)持続的湿潤の負荷に対する、ラッカー材料の耐性を評価するための通常の方法(240時間、相対湿度100%、40℃、詳細はBASF AGにより得られる試験処方書MKK0001A、A/14.05.1996版)。評価は凝縮水負荷の終了の1時間後に行う。
【0088】
例1および2の結果は市販の系に対する、一方では垂直流展での、他方では凝縮水耐性での優位を証明している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合剤および架橋剤ならびに少なくとも1種のチキソトロープ剤を含有する被覆材料において、この被覆材料がケイ酸および尿素および/または尿素誘導体からなる混合物を含有することを特徴とする、被覆材料。
【請求項2】
イソシアネート基含有化合物、有利にはジイソシアネートと1級または2級アミンあるいはこれらのアミンの混合物および/または水とを、有利には脂肪族1級モノアミンとを反応させることにより尿素誘導体が得られる、請求項1に記載の被覆材料。
【請求項3】
ケイ酸が変性された熱分解法の、有利には疎水性のケイ酸である、請求項1または2に記載の被覆材料。
【請求項4】
(a)アクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシル基含有エステルまたはこれらのモノマーからなる混合物16〜51質量%、有利には16〜28質量%、
(b)(a)とは異なる、アルコール基中に有利には少なくとも4個のC原子を有するアクリル酸またはメタクリル酸の脂肪族または環式脂肪族エステルまたはこれらのモノマーからなる混合物32〜84質量%、有利には32〜63質量%、
(c)エチレン系不飽和カルボン酸またはエチレン系不飽和カルボン酸からなる混合物0〜2質量%、有利には0〜1質量%および
(d)(a)、(b)および(c)とは異なるエチレン系不飽和モノマーまたはこれらのモノマーからなる混合物0〜30質量%、有利には0〜20質量%
を重合させて、酸価0〜15、有利には0〜8、ヒドロキシ数80〜140、有利には80〜120および数平均分子量1500〜10000、有利には2000〜5000を有するポリアクリレート樹脂にし、その際、成分(a)、(b)、(c)および(d)の質量割合の合計は常に100質量%であることにより製造することができるポリアクリレート樹脂が結合剤である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の被覆材料。
【請求項5】
架橋剤として、少なくとも1種のポリイソシアネート、ポリエポキシド、ブロックトポリイソシアネート、トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン、アミノプラスト樹脂、β−ヒドロキシアルキルアミド、シロキサンおよび/またはポリ無水物が使用されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載の被覆材料。
【請求項6】
非水性被覆材料、有利には非水性透明光沢クリヤラッカーである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の被覆材料。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の被覆材料の製法において、
A)結合剤を製造し、
B)尿素誘導体の製造を、工程A)からの結合剤の少なくとも一部量の存在下に実施し、かつ
C)結合剤および尿素誘導体からなる混合物と、
ケイ酸と工程A)からの結合剤とは異なる付加的な結合剤、有利には前記の種類のポリアクリレート樹脂の第一の量との磨砕物(ペースト)と、
架橋剤または架橋剤からなる混合物と、および付加的に
少なくとも1種の前記のラッカー添加剤と、
ポリアクリレートと相容性の、前記の結合剤とは異なる結合剤と、および
場合により、結合剤と共に磨砕されたケイ酸の残量とを混合し、かつ加工に慣用の粘度に調整するが、その際、架橋剤または架橋剤からなる混合物を同時に、または被覆材料の塗布の直前に初めて添加することができることを特徴とする、被覆材料の製法。
【請求項8】
着色および/または効果付与ベースラッカー塗装上に光沢クリヤラッカー塗装を製造するための、請求項1から6までのいずれか1項に記載の被覆材料の使用。
【請求項9】
ウェット・オン・ウェット法により基板表面に着色および/または効果付与多層ラッカー塗装を製造する方法において、
(1)着色および/または効果付与顔料を有するベースラッカーを基板表面に塗布し、
(2)工程(1)で塗布されたベースラッカー層を温度15〜100℃、有利には20〜85℃で乾燥させ、
(3)工程(2)で乾燥させたベースラッカー層に、クリヤラッカー層として請求項1から6までのいずれか1項に記載の透明被覆材料を塗布し、引き続き、
(4)ベースラッカー層およびクリヤラッカー層を一緒に焼き付けることを特徴とする、着色および/または効果付与多層ラッカー塗装を製造する方法。

【公開番号】特開2012−188666(P2012−188666A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−93194(P2012−93194)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【分割の表示】特願2000−619985(P2000−619985)の分割
【原出願日】平成12年5月22日(2000.5.22)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】