説明

ケイ酸縮合生成物及びそれを使用してなる光導波路デバイス

本発明は、特に光導波路に使用可能なケイ酸縮合生成物であって、(A)一般式(1):RSi(OR〔式中、Rは、少なくとも1個の芳香族基を有する炭素原子数が6〜20個の基を表し、Rは、H(Hは重水素Dであってよい)を表す。〕で示されるシランジオール化合物と、(B)一般式(2):RSi(OR〔式中、Rは、少なくとも1個のC=C二重結合を有する有機基を表し、Rは、C2n+1(n=1または2の数である)を表す。〕で示される変性シラン化合物を、(A):(B)のモル比として1.1〜1.4:1の範囲内で縮合させることにより得られる縮合生成物及びその製造方法、並びに該生成物を使用してなる光導波路デバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信用途及び光集積回路用途に用い得る光導波路、並びにそれらの関連部品に使用可能な有機/無機ハイブリッド材料、及び該材料を使用してなる光導波路デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
光導波路用材料に要求される特性としては、光通信で使用される近赤外線領域において吸収が小さいこと、偏波依存性が小さいこと、屈折率調整が可能であること、導波路のパターニング性に優れること、吸湿による損失増加が小さいこと、生産性に優れること等がある。従来、石英系材料が光導波路用材料として通常使用されてきた。しかしながら、石英系材料は、近赤外線領域における光の吸収が小さいものの、光導波路の作製に要する工程が多く、しかも焼結工程が含まれるため、生産効率が悪いという問題がある。
【0003】
かかる問題を解決するため、さまざまなポリマー材料が開発されている。例えば、特開平5-1148号公報(特許第2851019号)には、光導波路の光学材料として使用可能なフッ素化ポリイミドが記載されている。しかしながら、フッ素化ポリイミド系の材料には、分子中のCH基が少なく近赤外線領域の吸収が小さいものの、分子中にフェニル基を多く含むため、その配向性による偏波依存性の問題がある。また、高温での焼付を要することから基板と膜との線膨張率差に起因する応力によるクラックの問題、パターニングを行うために反応性イオンエッチングを要し工程数の増加により生産性が悪くなる問題等もある。
【0004】
また、特許第3445485号には、特定のシリコーン材料から構成される熱光学デバイスが記載されている。しかしながら、シリコーン系材料においても、残留させた水酸基やアルコキシ基を反応させることにより硬化させるため、水やアルコールの発生を伴い、その結果、膜厚を厚くすることができず、得られるデバイスが制限される問題がある。また、パターニングを行うために反応性イオンエッチングを要し工程数の増加により生産性が悪くなる問題等もある。
【0005】
近赤外線領域での吸収や偏波依存性が小さく、フォトリソグラフィーによるパターニングが可能で、副生成物がない材料として、有機反応基と、シロキサン骨格を有する有機/無機ハイブリッド材料が報告されている(WO 01/04186 A1を参照)。
ここで開示されている材料は、ArSi(OH)における水酸基とRSi(OR’)におけるアルコキシ基を1:1で反応させることによって樹脂組成物を作製し、その後、光重合開始剤を配合することによりフォトリソグラフィーを可能としたものである。該材料においては、フェニル基を含有させても直鎖上に配列することがないため偏波依存性が小さい。また、有機反応基の硬化時に水やアルコール等の副生成物が発生しないため、光導波路材料として優れた特性を有している。しかし、ArSi(OH)における水酸基とRSi(OR’)におけるアルコキシ基を1:1で反応させるため、アルコキシ基が残留し、吸水及び吸湿性にはなお課題がある。
このように、全ての特性をバランスよく満足しているポリマー材料がないのが現状である。
【特許文献1】特開平5-1148号公報(特許第2851019号)
【特許文献2】特許第3445485号
【特許文献3】WO 01/04186 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、光通信で使用される近赤外線領域において吸収及び偏波依存性が小さく、屈折率調整が可能であり、導波路のパターニング性に優れ、生産性に優れることに加えて、信頼性に優れた硬化物が得られる材料、及び該材料を使用してなる光導波路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、
(A)一般式(1):
Si(OR (1)
〔式中、Rは、少なくとも1個の芳香族基を有する炭素原子数が6〜20個の基を表し、Rは、H(Hは重水素Dであってよい)を表す。〕
で示されるシランジオール化合物と、
(B)一般式(2):
Si(OR (2)
〔式中、Rは、少なくとも1個のC=C二重結合を有する有機基を表し、Rは、C2n+1(n=1または2の数である)を表す。〕
で示される変性シラン化合物を、
(A):(B)のモル比として1.1〜1.4:1の範囲内で縮合させることにより得られる縮合生成物に関する。
本発明はまた、上記のように縮合させることを含んでなる、縮合生成物の製造方法に関する。
かかる縮合生成物を用いて光導波路デバイスを構成すると、光通信で使用される波長帯において光吸収や、吸湿による損失増加が小さく、高耐熱性のデバイスを得ることができる。
【0008】
本発明はまた、
(A)一般式(1):
Si(OR (1)
〔式中、Rは、少なくとも1個の芳香族基を有する炭素原子数が6〜20個の基を表し、Rは、H(Hは重水素Dであってよい)を表す。〕
で示されるシランジオール化合物と、
(B)一般式(2):
Si(OR (2)
〔式中、Rは、少なくとも1個のC=C二重結合を有する有機基を表し、Rは、C2n+1(n=1または2の数である)を表す。〕
で示される変性シラン化合物及び
(C)一般式(3):
Si(OR (3)
〔式中、Rは、一般式(2)におけると同じ意味であり、Rは、CF(CF)n(CH−基(n=0〜9の数である)またはC−基(X=HまたはFである)を表す。〕
で示される表される変性シラン化合物を、
(A):((B)+(C))のモル比として1.1〜1.4:1の範囲内で縮合させることにより得られる縮合生成物に関する。
本発明はまた、上記のように縮合させることを含んでなる、縮合生成物の製造方法に関する。
かかる縮合生成物を用いて光導波路デバイスを構成すると、(C)成分を用いたことにより、更に光吸収が小さく、また耐熱衝撃性や切断性に優れるデバイスを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、シランジオール化合物(A)と変性シラン化合物(B)を、(A):(B)のモル比として1.1〜1.4:1の範囲内で縮合させることにより得られる縮合生成物は、重合反応性の有機基を有するため、重合開始剤を使用することにより光硬化や熱硬化させることが可能である。また、該縮合生成物とすることにより近赤外線領域における光の吸収を小さくし得、更には、該縮合生成物中の水酸基やアルコキシ基の残留を少なくすることが可能となり、その結果、吸湿して水のOH基が増加することにより引き起こされる近赤外線領域の光の吸収増加を低減することができる。
【0010】
一般式(1)において、Rは、少なくとも1個の芳香族基を有する炭素原子数が6〜20個の基を表し、芳香族基を使用することにより、系全体のCH基を少なくすることができる。
本発明による縮合生成物の好ましい態様においては、Rは、立体障害性の置換または未置換の芳香族基である。特に好適には、Rは、フェニル基、トリル基、スチリル基またはナフチル基を含む。
また、ORは、通常は水酸基であってRは水素(H)を表すが、水素(H)は重水素Dであってよい。重水素を使用する場合、OD基には光通信にて使用される近赤外線領域における光の吸収がない。従って、仮に原料としてのシランジオール化合物(A)の未反応物が縮合生成物中に含まれる場合であっても、残留するのはOD基であるため、近赤外線領域における光の吸収には影響しない。本発明において、シランジオール化合物または水酸基などの用語の意味は、水素(H)に代えて重水素Dを用いた場合の意味を包含し得る。
【0011】
一般式(2)において、Rは、少なくとも1個のC=C二重結合を有する有機基であって反応性を有する。従って、シランジオール化合物(A)の水酸基と変性シラン化合物(B)のアルコキシ基を縮合して得られる縮合生成物に重合開始剤を配合することにより、反応性有機基を反応させて架橋構造を形成させることが可能である。
また、Rは、C2n+1(n=1または2の数である)を表す。n=1または2の数である、即ちRがメチル基またはエチル基である場合、シランジオール化合物(A)と反応せずに残留するRに含まれるCH基が少ないため、近赤外線領域における光の吸収を小さくすることができる。
【0012】
本発明による縮合生成物の好ましい態様においては、一般式(2)に相当する変性シラン化合物(B)は、例えば、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリエトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン等を含む。
【0013】
本発明による前記の縮合生成物において、変性シラン化合物(B)に対するシランジオール化合物(A)の配合モル比が1.1より小さいと、吸湿による損失増加が大きくなる。また、該配合モル比が1.4より大きいと、反応せずに残留する水酸基が多いため近赤外領域における吸収が大きくなることに加え、得られる縮合生成物が高粘度となるため作業性が悪化する問題が生じる。吸湿性だけでなく、材料の取り扱い性(高粘度とならないこと)からは、1.2:1〜1.3:1の範囲がより望ましい。
【0014】
本発明において、シランジオール化合物(A)と、変性シラン化合物(B)及び変性シラン化合物(C)を、(A):((B)+(C))のモル比として1.1〜1.4:1の範囲内で縮合させることにより得られる縮合生成物は、重合反応性の有機基を有するため、重合開始剤を使用することにより光硬化や熱硬化させることが可能である。
該縮合生成物においては、重合反応性基を持たない変性シラン化合物(C)を使用するため、重合反応性の有機基による架橋が該化合物を使用しない場合に比べて少なくなる。従って、硬化後の縮合生成物の柔軟性が増す結果、耐熱衝撃性に優れると共に、ダイシング等による切断時に切断面の割れや欠けが減少し切断性に優れる。
また、重合反応性基を持たない変性シラン化合物(C)を使用して得られる縮合生成物は、変性シラン化合物(C)を使用しないで得られる縮合生成物と比べて、更に近赤外線領域における光の吸収を小さくすることが可能となる。また、該縮合生成物中の水酸基やアルコキシ基の残留を少なくすることが可能となり、その結果、吸湿して水のOH基が増加することにより引き起こされる近赤外線領域の光の吸収増加を低減することができる。
【0015】
一般式(1)において、Rは、少なくとも1個の芳香族基を有する炭素原子数が6〜20個の基を表し、芳香族基を使用することにより、系全体のCH基を少なくすることができる。
本発明による縮合生成物の好ましい態様においては、Rは、立体障害性の置換または未置換の芳香族基である。特に好適には、Rは、フェニル基、トリル基、スチリル基またはナフチル基を含む。
また、ORは、通常は水酸基であってRは水素(H)を表すが、水素(H)は重水素Dであってよい。重水素を使用する場合、OD基には光通信にて使用される近赤外線領域における光の吸収がない。従って、仮に原料としてのシランジオール化合物(A)の未反応物が縮合生成物中に含まれる場合であっても、残留するのはOD基であるため、近赤外線領域における光の吸収には影響しない。本発明において、シランジオール化合物または水酸基などの用語の意味は、水素(H)に代えて重水素Dを用いた場合の意味を包含し得る。
【0016】
一般式(2)において、Rは、少なくとも1個のC=C二重結合を有する有機基であって反応性を有する。従って、シランジオール化合物(A)の水酸基と変性シラン化合物(B)のアルコキシ基を縮合して得られる縮合生成物に重合開始剤を配合することにより、反応性有機基を反応させて架橋構造を形成させることが可能である。
また、Rは、C2n+1(n=1または2の数である)を表す。n=1または2の数である、即ちRがメチル基またはエチル基である場合、シランジオール化合物(A)と反応せずに残留するRに含まれるCH基が少ないため、近赤外線領域における光の吸収を小さくすることができる。
【0017】
一般式(3)において、Rは、一般式(2)におけると同じ意味であり(式(2)と式(3)のnは同じでもよく異なっていてもよい)、Rは、CF(CF)n(CH−基(n=0〜9の数、好適には0〜6の数である)またはC−基(X=HまたはFである)を表す。このように、CH基の少ないRを用いることにより、近赤外線領域における光の吸収を低減させ得る。
本発明による縮合生成物の好ましい態様においては、一般式(3)に相当する変性シラン化合物(C)は、例えば、
CFCHCH−Si(OCH
CFCHCH−Si(OCHCH
CF(CFCHCH−Si(OCH
CF(CFCHCH−Si(OCHCH
CF(CFCHCH−Si(OCH
CF(CFCHCH−Si(OCHCH
CF(CFCHCH−Si(OCH
CF(CFCHCH−Si(OCHCH
CF(CFCHCH−Si(OCH
CF(CFCHCH−Si(OCHCH
Si(OCH
Si(OCHCH
Si(OCH
Si(OCHCH
CHCHSi(OCH
CHCHSi(OCHCH
を含む。
【0018】
本発明による前記の縮合生成物において、変性シラン化合物(B)及び変性シラン化合物(C)の合計に対するシランジオール化合物(A)の配合モル比が1.1より小さいと、吸湿による損失増加が大きくなる。また、該配合モル比が1.4より大きいと、反応せずに残留する水酸基が多いため近赤外領域における吸収が大きくなることに加え、得られる縮合生成物が高粘度となるため作業性が悪化する問題が生じる。
また、反応性基を有する変性シラン化合物(B)と反応性基を有さない変性シラン化合物(C)の配合比率を変化させることにより、縮合生成物中の反応基の量をコントロールすることが可能である。反応基の量を減らすことにより縮合生成物から得られる硬化物の靭性が向上し、耐熱衝撃性や切断性に優れた硬化物が得られる。
【0019】
本発明に従い、シランジオール化合物(A)と、変性シラン化合物(B)及び変性シラン化合物(C)を、(A):((B)+(C))のモル比として1.1〜1.4:1の範囲内で縮合させることにより縮合生成物を得る実施態様においては、変性シラン化合物(B)を、(A)+(B)+(C)の合計に対して15モル%以上の範囲内で縮合させることにより縮合生成物を得ることが、良好なパターニング性を確保するために好適である。変性シラン化合物(B)の、(A)+(B)+(C)の合計に対するモル%が小さい場合には、得られる縮合生成物中の反応基量が少なすぎるため硬化不良を生じ、ミクロンオーダーでのパターニングを行う際に硬化が不十分になることがあり得る。
【0020】
本発明に従うあらゆる縮合生成物について、前記一般式(2)において、Rが、CH=CH−C−(CH)n−基(X=HまたはFであり、n=0〜2の数である)を表す場合、得られる縮合生成物は、重合開始剤を用いて好適に光硬化あるいは熱硬化させ得ることに加え、好適に芳香族を含むため硬化物中のCH基が少なく、近赤外線領域における光の吸収の小さい低材料損失を達成し得る。−C−基におけるXの一部または全てをフッ素化することにより、更に低損失とすることが可能である。
【0021】
本発明に従う縮合生成物について、前記一般式(3)において、Rが、CF(CF)n(CH−基(n=5〜7の数である)を表す場合、得られる縮合生成物またはその硬化物は、高いフッ素比率と低いCH基数によって、近赤外線領域における光の吸収が小さくなり得るとともに水の吸湿も減少する。このため、導波路の損失増加が小さくなる。更に、用いる変性シラン化合物(C)の分子鎖長が長いため、得られる縮合生成物またはその硬化物は柔軟性が増し、熱衝撃を受けた際やダイシング時の割れや欠けが起こりにくく、良好な耐ヒートサイクル性を発現し得る。
【0022】
本発明に従う縮合生成物について、前記一般式(1)において、Rが、C−基(X=HまたはFである)を表す場合、このような嵩高い基が立体障害となってシランジオール化合物(A)同士の自己反応が阻害され、その結果、設定した所定の割合での縮合反応を完結させ得る。また、好適に芳香族を含むため硬化物中のCH基が少なく、近赤外線領域における光の吸収の小さい低材料損失を達成し得る。C−基におけるXの一部または全てをフッ素化することにより、更に低損失とすることが可能である。
【0023】
シランジオール化合物(A)と変性シラン化合物(B)、(C)の縮合反応は、従来既知の方法、例えばWO 01/04186 A1に記載の方法、に従って行い得る。好適には、ゾル・ゲル法に従い、20〜100℃の範囲内、より好適には50〜100℃の範囲内の温度、または最も低沸成分の沸点で、縮合反応を行う。特に好適には、メタノールの沸点で縮合反応を行う。縮合反応後には、例えば加熱及び/又は減圧など通常の方法によって、揮発分を除去する。
【0024】
縮合反応を開始または促進するために、ルイスまたはブレンステッドの塩基を使用し得る。このような塩基の具体例としては、例えばN−メチルイミダゾールまたはベンジルジメチルアミンなどのようなアミンが挙げられる。好適な実施態様においては、トリメチルアミン、フッ化アンモニウムまたはアルカリ土類金属水酸化物を塩基として使用し得る。好適には、酸化バリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、トリエチルアミン等その他が使用可能であり、とりわけ、アルカリ土類金属水酸化物として水酸化バリウムを使用することが好ましい。
例えばアルカリ土類金属水酸化物などの不溶性塩基を反応媒体中で使用する場合には、縮合反応が終了後に得られる混合物から、例えば濾過によって、該塩基を分離することが推奨される。
また、前記の塩基に代えて、キレート化され、またはキレート化されていないアルミニウムまたはジルコニウムのアルコキシドを、縮合反応のために使用することができる。
【0025】
本発明の縮合生成物は、そのままで使用し得るが、意図する用途に適合する添加剤を更に含有する組成物としても使用し得る。かかる添加剤には、開始剤、流れ調節剤及び顔料などが含まれ得る。好適には、開始剤を用い、本発明の縮合生成物を、従来既知の方法に従って光硬化または熱硬化させることにより硬化物を得る。
【0026】
光硬化を行う際に用い得る光硬化型開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0027】
また、熱硬化を行う際に用い得る熱硬化型開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル等の有機過酸化物が挙げられる。とりわけ、t-ブチルペルオキシ 2-エチルヘキサノエート、1,1-(t-ヘキシルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシ 2-エチルヘキシルモノカーボネート、α,α’ビス(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼンを、好適に使用し得る。
【0028】
本発明はまた、コア及びクラッドを含んでなる光導波路デバイスであって、該コア及び該クラッドは、それぞれ前記の硬化物から形成されてなるデバイスに関する。光導波路デバイスを構成するそのようなコア及びクラッドは、通常、屈折率が相違するよう設計される。屈折率の調整は、例えば、コア及びクラッドに用いるそれぞれの前記の縮合生成物またはその硬化物として、組成、置換基、分子量などを相互に変えることにより行い得る。その際、前記の縮合生成物を2種以上調製し、それらのブレンド比率を変える方法も好適に採用し得る。
このようにして作製される光導波路デバイスは、低損失、低吸湿、フォトパターニング性、切断性、耐熱衝撃性などの特性を兼ね備えたデバイスであり得る。
【0029】
本発明の別の好ましい態様では、前記光導波路デバイスは、少なくともクラッドを加熱する加熱手段を備えてなる光導波路デバイスであることを特徴とする。光導波路デバイスの一例を図1に示す。本発明に従って得られる光導波路デバイスは熱光学特性に優れ、屈折率の温度依存性の指標である熱光学(TO:Thermooptic)定数は好適には−1×10−4/℃以下、より好適には−1.5×10−4/℃以下である。本発明に従って得られる光導波路デバイスのTO定数は、通常、−5×10−4/℃以上である。
このような本発明の光導波路デバイスは、低消費電力で大きな減衰特性を示し得る。光導波路デバイスとしては、VOA(Variable Optical Attenuator)や光スイッチ等を例示し得る。
【0030】
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例によって何ら制限を受けるものではなく、前後記の主旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術範囲に含まれる。
【実施例】
【0031】
[実施例1〜3、比較例1〜2]
(原料)
原料(A1):ジフェニルシランジオール
原料(B1):スチリルトリメトキシシラン
触媒:水酸化バリウム・1水和物
【0032】
(材料の合成)
原料(A1)に原料(B1)を、モル比として(A1):(B1)=1.25:1になるように配合し、溶媒としてトルエンを原料の合計量に対して20wt%となるように添加した。混合物を25℃で30分攪拌した後、触媒として水酸化バリウム・1水和物を、前記原料の合計量に対して0.1wt%となるように添加し、更に30分攪拌した。その後、混合物を60℃に加熱し、還流下で攪拌した。7日間後にFT-IRで分析し、原料(A1)に由来するOH基が残っていないことを確認した。その後、添加したトルエンと反応中に生じたアルコールを、エバポレータを用いて取り除いた。その後、目開きが0.45μmのフィルタを通すことにより最終組成物としての合成材料を得た(実施例2)。
他の配合においても同様の操作を行い、反応の完了はFT-IRにて確認した。
【0033】
また、原料(A1)に原料(B1)を、モル比として(A1):(B1)=1:1(比較例1)、1.1:1(実施例1)、1.4:1(実施例3)、1.5:1(比較例2)になるように配合し、前記と同様の方法にて反応を行った。比較例2の配合では完全にOH基をなくならせることはできなかった。
【0034】
(材料損失の測定)
前記合成材料の1310nmと1550nmの近赤外光に対する材料損失を求めることにより、通信波長における特性を調べた。
前記合成材料に、光重合開始剤として2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、イルガキュア369)を合成材料に対して1wt%添加し、60℃にて60分間加熱攪拌することにより均一に溶解させた。合成材料の粘度が高い場合は、アセトン等に合成材料を溶解させ、そこに光重合開始剤を添加し攪拌を行った後、溶媒を除去させることで配合可能である。
この材料を厚みが一定となるように型枠に入れて、7mW/cm2の強度で10分間紫外線を照射し、光硬化させた。この後、材料を型枠から取出し、窒素雰囲気下に200℃で2時間加熱することにより、更に硬化を促進させた。この硬化物の材料損失を分光光度計で測定した結果を表1に示した。
それぞれの実施例及び比較例から得られた硬化物としての材料損失は、1310nmで0.12〜0.17dB/cm、1550nmで0.3〜0.34dB/cmであり、近赤外線領域における光の吸収の小さい材料が得られた。
【0035】
(屈折率の測定)
また、前記光重合開始剤を配合した材料80〜70wt%に、20〜30wt%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を添加して溶解させ、目開き0.2μmのフィルタで濾過した。この材料を、スピンコーターを用いてシリコンウェハー上に塗布し、100℃で3分間加熱し、溶媒を除去した。その後、窒素下でi線フィルタを通した20mW/cm2の強度の紫外線を5分間照射して硬化させた。更に、窒素下、200℃で1時間加熱することにより、更に硬化を促進した。
このシリコンウェハー上の膜について、プリズムカップラー法(メトリコン社製model2010)により、1319nm、1547nmの屈折率をそれぞれ測定した。この結果を表1に示した。
【0036】
[実施例4、比較例3]
(原料)
原料(A1):ジフェニルシランジオール
原料(B1):スチリルトリメトキシシラン
原料(C1):トリフルオロプロピルトリメトキシシラン
触媒 :水酸化バリウム・1水和物
【0037】
(材料の合成)
原料(A1)、原料(B1)及び原料(C1)を、モル比として(A1):(B1):(C1)=1.25:0.5:0.5(実施例4)、(A1):(B1):(C1)=1:0.5:0.5(比較例3)になるように配合し、前記と同様の方法で材料を合成した。前記と同様の方法で評価した各合成材料の材料損失と屈折率の測定結果を表1に示した。
【0038】
(導波路の作製)
実施例1及び実施例4で得た合成材料を用いてスラブ型直線導波路を作製する方法を例として、以下に説明する。
(1)コア材料の調製
実施例1で得た合成材料80wt%に、20wt%のPGMEAを添加して溶解させ、光重合開始剤としてイルガキュア369(チバガイギー社製)を合成材料に対して1wt%添加した。攪拌した後、目開き0.2μmのフィルタで濾過し、コア材料を調製した。
(2)クラッド材料の調製
実施例1で得た合成材料に、実施例4で得た合成材料を、実施例1:実施例4=73.5:26.5(wt%)の比率で配合し、得られた配合材料80wt%に20wt%のPGMEAを添加して溶解させ、光重合開始剤としてイルガキュア369を合成材料に対して1wt%添加した。攪拌した後、目開き0.2μmのフィルタで濾過し、実施例1の合成材料を用いて調製したコア材料より屈折率を0.005低くしたクラッド材料を調製した。
【0039】
(3)アンダークラッド層の作製
シリコンウェハー上にクラッド材料を塗布後、スピンコーターにて1000rpmで回転させ、100℃で3分間加熱した。その後、窒素雰囲気下、20mW/cm2の強度で5分間紫外線硬化させた後、窒素雰囲気下、200℃で1時間ポストベークし、アンダークラッド層を得た。
なお、この際、アンダークラッド層作製後にプラズマ処理等の表面処理を行うことにより、コア材料との密着性を向上させることも可能である。
(4)コア層の作製
アンダークラッド層上にコア材料を塗布後、スピンコーターにて2000rpmで回転させ、100℃で3分間加熱した。その後、マスクを通して、窒素雰囲気下、20mW/cm2の強度で10秒間紫外線硬化させ、メチルイソブチルケトン(MIBK)によって現像した。その後、100℃で3分間加熱し、更に、窒素雰囲気下、20mW/cm2の強度で5分間紫外線硬化させ、7μm×7μmのコア層を得た。
(5)オーバークラッド層の作製
コア層の上にアンダークラッド層と同じ材料を塗布後、スピンコーターにて900rpmで回転させ、100℃で3分間加熱した。その後、窒素雰囲気下、20mW/cm2の強度で5分間紫外線硬化させ、オーバークラッド層を得た。その後、窒素雰囲気下、200℃で1時間加熱した。
【0040】
また、実施例2、実施例3、比較例1に従ってそれぞれ得られた合成材料を用いてコア材料を調製し、実施例2と実施例4の混合物、実施例3と実施例4の混合物、比較例1と比較例3の混合物を用いて、コア材料より屈折率を0.005低くしたクラッド材料を調製し、前記と同様の方法にて、スラブ型直線導波路を作製した。
作製した各直線導波路について、カットバック法(長さの異なる複数の直線導波路の損失を測定し、傾きから単位長さあたりの損失を算出する方法)によって求めた導波路損失を、それぞれ表2に示した。合成した材料が導波路として十分使用可能であることがわかる。
【0041】
(信頼性の評価)
上記のようにして作製した各直線導波路について、温度85℃及び湿度85%中に500時間、1000時間、2000時間放置後の導波路損失を測定し、初期(放置開始前)の導波路損失と比較した波長1550nmにおける損失増加をもって「吸湿による損失増加」とした(表2)。なお、1310nmに関しては、損失増加は見られなかった。
【0042】
表1及び表2の結果から、本発明に従う各実施例で得られた合成材料及び導波路は、本発明に従わない各比較例で得られた合成材料及び導波路との比較において、材料損失、導波路損失については大きな相違はないが、吸湿による損失増加が大幅に減少していることがわかる。
このことから、原料(A1):原料(B1)の配合比(モル比)を1.1:1〜1.4:1とすることにより、光通信において使用される波長1310nm、1550nmにおける損失が小さく、吸湿を小さくすることが可能なことがわかる。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
[実施例5〜8、比較例4〜6]
(原料)
原料(A1):ジフェニルシランジオール
原料(B2):スチリルエチルトリメトキシシラン
原料(C2):トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン
原料(C4):ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン
触媒 :水酸化バリウム・1水和物
【0046】
(材料の合成)
原料(A1)、原料(B2)及び原料(C2)を、モル比として(A1):(B2):(C2)=1.25:0.8:0.2になるように配合し、溶媒としてトルエンを原料の合計量に対して20wt%となるように添加した。混合物を25℃で30分攪拌した後、触媒として水酸化バリウム・1水和物を、前記原料の合計量に対して0.1wt%となるように添加し、更に30分攪拌した。その後、混合物を60℃に加熱し、還流下で攪拌した。7日間後にFT-IRで分析し、原料(A1)に由来するOH基が残っていないことを確認した。その後、添加したトルエンと反応中に生じたアルコールを、エバポレータを用いて取り除いた。その後、目開きが0.45μmのフィルタを通すことにより最終組成物としての合成材料を得た(実施例6)。
他の配合においても同様の操作を行い、反応の完了はFT-IRにて確認した。
【0047】
原料(A1)、原料(B2)及び原料(C2)を、モル比として(A1):(B2):(C2)=1:0.8:0.2(比較例5)、1.1:0.8:0.2(実施例5)、1.4:0.8:0.2(実施例7)、1.5:0.8:0.2(比較例4)になるように配合し、前記と同様の方法で反応を行った。比較例4の配合では、完全にOH基をなくならせることはできなかった。
更に、原料(A1)、原料(B2)及び原料(C2)を、モル比として(A1):(B2):(C2)=1.25:0.5:0.5になるように配合し、前記と同様の方法で反応を行った(実施例8)。この配合によって得られた合成材料には、OH基は残っていなかった。
前記方法によって材料損失、屈折率を測定した結果を、表3に示した。
【0048】
また、原料(A1)、原料(B2)及び原料(C4)を、モル比として(A1):(B2):(C4)=1.25:0.5:0.5になるように配合し、前記と同様の方法で反応を行った(実施例9)。この配合によって得られた合成材料には、OH基は残っていなかった。この材料の材料損失は、1310nmで0.12dB/cm、1550nmで0.26dB/cmであり、近赤外線領域における光の吸収が小さかった。
【0049】
(導波路の作製)
(1)コア材料の調製
実施例5で得た合成材料80wt%に、20wt%のPGMEAを添加して溶解させ、光重合開始剤としてイルガキュア369を合成材料に対して1wt%添加した。攪拌した後、目開き0.2μmのフィルタで濾過し、コア材料を調製した。
(2)クラッド材料の調製
実施例5で得た合成材料に、実施例8で得た合成材料を、実施例5:実施例8=86.2:13.8(wt%)の比率で配合し、得られた配合材料80wt%に20wt%のPGMEAを添加して溶解させ、光重合開始剤としてイルガキュア369を合成材料に対して1wt%添加した。攪拌した後、目開き0.2μmのフィルタで濾過し、実施例5の合成材料を用いて調製したコア材料より屈折率を0.005低くしたクラッド材料を調製した。
得られたコア材料及びクラッド材料から、前記と同様の方法により、直線導波路を作製した。
【0050】
前記と同様にして、実施例6及び実施例7で得た各合成材料についても、コア材料を調製し、実施例8で得た合成材料と配合することによりクラッド材料を調製した。得られたコア材料及びクラッド材料から、前記と同様の方法により、直線導波路を作製した。
【0051】
実施例5で得た合成材料に、実施例8で得た合成材料を、実施例5:実施例8=12.1:87.9(wt%)の比率で配合し、得られた配合材料80wt%に20wt%のPGMEAを添加して溶解させ、光重合開始剤としてイルガキュア369を合成材料に対して1wt%添加した。攪拌した後、目開き0.2μmのフィルタで濾過し、実施例8の合成材料を用いて調製したクラッド材料より屈折率を0.005高くしたコア材料(実施例8+実施例5)を調製した。
実施例8で得た合成材料80wt%に、20wt%のPGMEAを添加して溶解させ、光重合開始剤としてイルガキュア369を合成材料に対して1wt%添加した。攪拌した後、目開き0.2μmのフィルタで濾過し、クラッド材料とした。
得られたコア材料及びクラッド材料から、前記と同様の方法により、直線導波路を作製した。
【0052】
得られた各直線導波路について、導波路損失を測定した結果と、温度85℃及び湿度85%中に500時間、1000時間、2000時間放置後に測定した導波路損失を初期(放置開始前)の導波路損失と比較して求めた「吸湿による損失増加」を表4に示した。
【0053】
比較例5で得た合成材料についても同様にコア材料を調製し、比較例6で得た合成材料と配合することにより、比較例5の合成材料を用いて調製したコア材料より屈折率が0.005低いクラッド材料を調製した。
得られたコア材料及びクラッド材料から、前記と同様の方法により、直線導波路を作製した。
【0054】
比較例6で得た合成材料を比較例5で得た合成材料と配合することにより、比較例6の合成材料を用いて前記同様に調製したクラッド材料より屈折率を0.005高くしたコア材料(比較例6+比較例5)を調製した。
得られたコア材料及びクラッド材料から、前記と同様の方法により、直線導波路を作製した。
【0055】
このようにして得られた各直線導波路についても、前記と同様の方法により、導波路損失を測定した結果と、温度85℃及び湿度85%中に500時間、1000時間、2000時間放置後に測定した導波路損失を初期(放置開始前)の導波路損失と比較して求めた「吸湿による損失増加」を、表4に併せて示した。
【0056】
表4に示したように、シランジオール化合物(A)と、変性シラン化合物(B)及び変性シラン化合物(C)を、(A):((B)+(C))のモル比として1.1〜1.4:1の範囲内で縮合させることにより得た縮合生成物は、これを材料として導波路を作製した場合に、損失が小さく、吸湿による損失増加が小さいという好適な結果が得られた。
【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
[実施例6に関連する実施例6A、実施例6B]
(原料)
原料(A1):ジフェニルシランジオール
原料(B2):スチリルエチルトリメトキシシラン
触媒(A):酸化バリウム
触媒(B):テトラブチルアンモニウムヒドロキシド
【0060】
(材料の合成)
原料(A1)に原料(B2)を、モル比として(A1):(B2)=1.25:1になるように配合し、溶媒としてトルエンを原料の合計量に対して20wt%となるように添加した。混合物を25℃で30分攪拌した後、触媒(A)として酸化バリウムを、前記原料の合計量に対して0.2wt%となるように添加し、更に30分攪拌した。その後、混合物を60℃に加熱し、還流下で攪拌した。7日間後にFT-IRで分析し、原料(A1)に由来するOH基が残っていないことを確認した。その後、添加したトルエンと反応中に生じたアルコールを、エバポレータを用いて取り除いた。その後、目開きが0.45μmのフィルタを通すことにより最終組成物としての合成材料を得た(実施例6A)。
原料(A1)に原料(B2)を、モル比として(A1):(B2)=1.25:1になるように配合し、溶媒としてトルエンを原料の合計量に対して20wt%となるように添加した。混合物を25℃で30分攪拌した後、触媒(B)として10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド・メタノール溶液を、前記原料の合計量に対してテトラブチルアンモニウムヒドロキシドが0.2wt%となるように添加し、更に30分攪拌した。その後、混合物を60℃に加熱し、還流下で攪拌した。7日間後にFT-IRで分析し、原料(A1)に由来するOH基が残っていないことを確認した。その後、添加したトルエンと反応中に生じたアルコールを、エバポレータを用いて取り除いた。その後、目開きが0.45μmのフィルタを通すことにより最終組成物としての合成材料を得た(実施例6B)。
このように、水酸化バリウム・1水和物以外の触媒においても、同様に材料の合成が可能である。
【0061】
[実施例10〜11]
(原料)
原料(A1):ジフェニルシランジオール
原料(B1):スチリルトリメトキシシラン
原料(C2):トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン
触媒 :水酸化バリウム・1水和物
【0062】
(材料の合成)
原料(A1)、原料(B1)及び原料(C2)を、モル比として(A1):(B1):(C2)=1.25:0.25:0.75(実施例10)、(A1):(B1):(C2)=1.25:0.35:0.65(実施例11)になるように配合し、前記と同様の方法により合成材料を得た。
前記方法により材料損失を測定した結果、実施例10では1310nmで0.11dB/cm、1550nmで0.24dB/cm、実施例11では1310nmで0.11dB/cm、1550nmで0.26dB/cmであった。
【0063】
(導波路の作製)
(1)コア材料の調製
実施例11で得た合成材料に、実施例8で得た合成材料を、実施例11:実施例8=88.4:11.6(wt%)の比率で配合し、得られた配合材料80wt%に20wt%のPGMEAを添加して溶解させ、光重合開始剤としてイルガキュア369を合成材料に対して1wt%添加した。攪拌した後、目開き0.2μmのフィルタで濾過し、実施例11の合成材料を用いて調製したクラッド材料より屈折率を0.005高くしたコア材料(実施例11+実施例8)を調製した。
(2)クラッド材料の調製
実施例11で得た合成材料80wt%に、20wt%のPGMEAを添加して溶解させ、光重合開始剤としてイルガキュア369を合成材料に対して1wt%添加した。攪拌した後、目開き0.2μmのフィルタで濾過し、クラッド材料を調製した。
【0064】
(3)アンダークラッド層の作製
シリコンウェハー上にクラッド材料を塗布後、スピンコーターにて1000rpmで回転させ、100℃で3分間加熱した。その後、窒素雰囲気下、20mW/cm2の強度で5分間紫外線硬化させた後、窒素雰囲気下、200℃で1時間ポストベークし、アンダークラッド層を得た。
(4)コア層の作製
アンダークラッド層上にコア材料を塗布後、スピンコーターにて2000rpmで回転させ、100℃で3分間加熱した。その後、マスクを通して、窒素雰囲気下、20mW/cm2の強度で20秒間紫外線硬化させ、メチルイソブチルケトン(MIBK)によって現像した。その後、100℃で3分間加熱し、更に、窒素雰囲気下、20mW/cm2の強度で5分間紫外線硬化させ、7μm×7μmのコア層を得た。
【0065】
得られたコア材料及びクラッド材料から、前記と同様の方法により、直線導波路を作製した。
得られた各直線導波路について導波路損失を測定した結果は、1310nmで0.17dB/cm、1550nmで0.39dB/cmであった。
【0066】
実施例10で得た合成材料を用いて、前記と同様の方法により、直線導波路を作製した。この場合、コア部は、形状がやや崩れ易かった。従って、ミクロオーダーでのパターニングを行うためには、実施例11で得た合成材料を用いる方が適していた。
以上の結果から、有機反応基を有する変性シラン化合物(B)を、(A)+(B)+(C)の合計に対して15モル%以上の範囲内で縮合させることにより、コア部の卓越したパターニング性を確保することが可能となることがわかった。
【0067】
[実施例12〜14]
(原料)
原料(A1):ジフェニルシランジオール
原料(B1):スチリルトリメトキシシラン
原料(B2):スチリルエチルトリメトキシシラン
原料(B3):メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
原料(B4):トリメトキシビニルシラン
触媒 :水酸化バリウム・1水和物
【0068】
(材料の合成)
原料(A1):原料(B1)=1.25:1(実施例2)、原料(A1):原料(B2)=1.25:1(実施例13)、原料(A1):原料(B3)=1.25:1(実施例12)、原料(A1):原料(B4)=1.25:1(実施例14)の配合割合(モル比)で、前記と同様の方法によって合成材料を得た。各合成材料について測定した材料損失を、表5に示す。
このように、前記一般式(2)において、Rが、CH=CH−C−(CH)n−基(X=HまたはFであり、n=0〜2の数である)を表す原料を用いることにより、合成材料の材料損失を低減させ得る。
【0069】
【表5】

【0070】
[実施例15〜16]
(原料)
原料(A1):ジフェニルシランジオール
原料(B2):スチリルエチルトリメトキシシラン
原料(C1):トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(n=0)
原料(C2):トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン(n=5)
原料(C3):ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン(n=7)
触媒 :水酸化バリウム・1水和物
【0071】
(材料の合成)
原料(A1):原料(B2):原料(C2)=1.25:0.5:0.5(実施例8)、原料(A1):原料(B2):原料(C1)=1.25:0.5:0.5(実施例15)、原料(A1):原料(B2):原料(C3)=1.25:0.5:0.5(実施例16)の配合割合(モル比)で、前記と同様の方法によって合成材料を得た。各合成材料について測定した材料損失を、表6に示す。
【0072】
(導波路の作製)
実施例8で得た合成材料を用い、前記と同様の方法によりクラッド材料を作製した。また、実施例8で得た合成材料に、実施例6で得た合成材料を配合して、前記と同様の方法によりコア材料を作製した。得られたコア材料及びクラッド材料から、前記と同様の方法により、直線導波路を作製した。
【0073】
実施例16で得た合成材料を用い、前記と同様の方法によりクラッド材料を作製した。また、実施例16で得た合成材料に、実施例6で得た合成材料を配合して、前記と同様の方法によりコア材料を作製した。得られたコア材料及びクラッド材料から、前記と同様の方法により、直線導波路を作製した。
【0074】
実施例15で得た合成材料を用い、前記と同様の方法によりコア材料を作製した。また、実施例15で得た合成材料に、実施例2で得た合成材料を配合して、前記と同様の方法によりクラッド材料を作製した。得られたコア材料及びクラッド材料から、前記と同様の方法により、直線導波路を作製した。
【0075】
このようにして得られた各直線導波路について、前記と同様の方法により、温度85℃及び湿度85%中に2000時間放置後に測定した導波路損失を、初期(放置開始前)の導波路損失と比較して、「吸湿による損失増加」を求めた。
この結果、一般式(3)において、Rとして、CF(CF)n(CH−基中のn=0である原料(実施例15)を用いて作製した導波路の損失増加は0.25dB/cmであった。これに対し、n=5である原料(実施例8)を用いて作製した導波路の損失増加は0.17dB/cm、n=7である原料(実施例16)を用いて作製した導波路の損失増加は0.18dB/cmであった。
【0076】
このように、CF(CF)n(CH−基中のn=5〜7である原料を用いる場合、(CF)基の割合が多いため、近赤外線領域の光の吸収が小さい。また、このようにして得られる材料は、分子長が長いため柔軟性が増し、その結果、耐熱衝撃性やダイシング等による切断時に切断面における割れや欠けが減少し、耐切断性に優れる利点を有する。また、フッ素比率が高いため、耐湿性に優れる利点を有する。
【0077】
【表6】

【0078】
[実施例17]
(導波路の作製)
実施例5及び実施例8で得た合成材料を用い、以下の方法により、光導波路デバイスを作製した。
(1)コア材料の調製
実施例5で得た合成材料80wt%に、20wt%のPGMEAを添加して溶解させ、光重合開始剤としてイルガキュア369を合成材料に対して1wt%添加した。攪拌した後、目開き0.2μmのフィルタで濾過し、コア材料を調製した。
(2)クラッド材料の調製
実施例5で得た合成材料に、実施例8で得た合成材料を、実施例5:実施例8=86.2:13.8(wt%)で配合し、得られた配合材料80wt%に20wt%のPGMEAを添加して溶解させ、光重合開始剤としてイルガキュア369を合成材料に対して1wt%添加した。攪拌した後、目開き0.2μmのフィルタで濾過し、実施例5の合成材料を用いて調整したコア材料より屈折率を0.005低くしたクラッド材料を調製した。
【0079】
これらの材料を用いて、シリコンウェハー上にアンダークラッド、コア、オーバークラッドの順に膜を形成し、更にその上に金スパッタ膜を形成した。このウェハー上にポジ型レジストを塗布し、ホットプレート上で溶媒を除去した。図1に示すような回路パターンを形成したマスクで、i線フィルターを通して回路パターン以外に紫外線を照射した。紫外線を照射した部分のレジストを現像し、その後、金スパッタ膜をエッチングした。その後、ウェハー全体に紫外線を照射し、レジスト全部を現像することにより、導波路上に回路を形成した。その後、ダイシングによってチップに切断し、図1に示すようなVOA(Variable Optical Attenuator)を作製した。このVOAの電気回路に60mWの電力を供給して回路を加熱することによってクラッド材料を加熱し、屈折率を変化させることによって光を外部に漏れさせ、その結果、−40dBの減衰を得た。
その他の材料においても同様に優れた減衰特性を得た。
【0080】
このように、本発明に従う縮合物から得られる硬化物は、透明性、耐湿性、耐熱衝撃性、切断性または生産性等に優れ、更に熱光学特性にも優れるため、光導波路デバイスに好適に用い得る。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のケイ酸縮合生成物は、光通信で使用される近赤外線領域において吸収及び偏波依存性が小さく、屈折率調整が可能である。従って、該ケイ酸縮合生成物は、導波路のパターニング性に優れ、生産性に優れることに加えて、長期信頼性に優れる材料であり得る。該材料は、光通信用途及び光集積回路用途に用い得る高性能の光導波路デバイス、並びにそれらの関連部品として、好適に使用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に従う光導波路デバイスに関する実施態様の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
1 基材
2 コア
3 クラッド
4 加熱手段(ヒーター)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(1):
Si(OR (1)
〔式中、Rは、少なくとも1個の芳香族基を有する炭素原子数が6〜20個の基を表し、Rは、H(Hは重水素Dであってよい)を表す。〕
で示されるシランジオール化合物と、
(B)一般式(2):
Si(OR (2)
〔式中、Rは、少なくとも1個のC=C二重結合を有する有機基を表し、Rは、C2n+1(n=1または2の数である)を表す。〕
で示される変性シラン化合物を、
(A):(B)のモル比として1.1〜1.4:1の範囲内で縮合させることにより得られる縮合生成物。
【請求項2】
(A)一般式(1):
Si(OR (1)
〔式中、Rは、少なくとも1個の芳香族基を有する炭素原子数が6〜20個の基を表し、Rは、H(Hは重水素Dであってよい)を表す。〕
で示されるシランジオール化合物と、
(B)一般式(2):
Si(OR (2)
〔式中、Rは、少なくとも1個のC=C二重結合を有する有機基を表し、Rは、C2n+1(n=1または2の数である)を表す。〕
で示される変性シラン化合物及び
(C)一般式(3):
Si(OR (3)
〔式中、Rは、一般式(2)におけると同じ意味であり、Rは、CF(CF)n(CH−基(n=0〜9の数である)またはC−基(X=HまたはFである)を表す。〕
で示される表される変性シラン化合物を、
(A):((B)+(C))のモル比として1.1〜1.4:1の範囲内で縮合させることにより得られる縮合生成物。
【請求項3】
変性シラン化合物(B)を、(A)+(B)+(C)の合計に対して15モル%以上の範囲内で縮合させることにより得られる請求項2に記載の縮合生成物。
【請求項4】
前記一般式(2)において、Rは、CH=CH−C−(CH)n−基(X=HまたはFであり、n=0〜2の数である)を表す、請求項1または2に記載の縮合生成物。
【請求項5】
前記一般式(3)において、Rは、CF(CF)n(CH−基(n=5〜7の数である)を表す、請求項2〜4のいずれかに記載の縮合生成物。
【請求項6】
前記一般式(1)において、Rは、C−基(X=HまたはFである)を表す、請求項1〜5のいずれかに記載の縮合生成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の縮合生成物が光硬化または熱硬化されてなる硬化物。
【請求項8】
コア及びクラッドを含んでなる光導波路デバイスであって、該コア及び該クラッドは、それぞれ請求項7に記載の硬化物から形成されてなる光導波路デバイス。
【請求項9】
少なくともクラッドを加熱する加熱手段を備えてなる請求項8に記載の光導波路デバイス。
【請求項10】
(A)一般式(1):
Si(OR (1)
〔式中、Rは、少なくとも1個の芳香族基を有する炭素原子数が6〜20個の基を表し、Rは、H(Hは重水素Dであってよい)を表す。〕
で示されるシランジオール化合物と、
(B)一般式(2):
Si(OR (2)
〔式中、Rは、少なくとも1個のC=C二重結合を有する有機基を表し、Rは、C2n+1(n=1または2の数である)を表す。〕
で示される変性シラン化合物を、
(A):(B)のモル比として1.1〜1.4:1の範囲内で縮合させることを含んでなる、縮合生成物の製造方法。
【請求項11】
(A)一般式(1):
Si(OR (1)
〔式中、Rは、少なくとも1個の芳香族基を有する炭素原子数が6〜20個の基を表し、Rは、H(Hは重水素Dであってよい)を表す。〕
で示されるシランジオール化合物と、
(B)一般式(2):
Si(OR (2)
〔式中、Rは、少なくとも1個のC=C二重結合を有する有機基を表し、Rは、C2n+1(n=1または2の数である)を表す。〕
で示される変性シラン化合物及び
(C)一般式(3):
Si(OR (3)
〔式中、Rは、一般式(2)におけると同じ意味であり、Rは、CF(CF)n(CH−基(n=0〜9の数である)またはC−基(X=HまたはFである)を表す。〕
で示される表される変性シラン化合物を、
(A):((B)+(C))のモル比として1.1〜1.4:1の範囲内で縮合させることを含んでなる、縮合生成物の製造方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2009−525354(P2009−525354A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536233(P2008−536233)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【国際出願番号】PCT/JP2006/302294
【国際公開番号】WO2007/088640
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【出願人】(500341779)フラウンホーファー−ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン (75)
【Fターム(参考)】