説明

ケラチン物質の着色を促進及び/若しくは誘導及び/若しくは刺激するため、並びに/またはその脱色及び/若しくは白色化を制限するためのベンジリデン−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン化合物の使用

【課題】大多数のヒトにおいて、茶色の皮膚の色、及び頭髪の一定の色の維持は重要な願望の対象であることが知られている。
【解決手段】本発明の1つの主題は、ケラチン物質、更に特にケラチン繊維(例えば、ヒトの頭髪、あごひげ、くちひげ、まつげ、眉毛)の着色を促進及び/若しくは誘導及び/若しくは刺激するための薬剤、並びに/またはケラチン物質、更に特にケラチン繊維(例えば、ヒトの頭髪、あごひげ、くちひげ、まつげ、眉毛)の脱色及び/若しくは白色化を防止及び/若しくは制限するための薬剤としての、少なくとも1つの化学式(I)のベンジリデン-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン化合物、またはその塩、及び/若しくは溶媒和物、及び/若しくはシス-トランス若しくはZ/E異性体の美容的使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン物質の着色を促進及び/若しくは誘導及び/若しくは刺激するための、並びに/またはその脱色及び/若しくは白色化を制限するための薬剤、更に特にヒトのケラチン繊維の白毛を防止及び/または制限するための薬剤として、少なくとも1つの特定の化学式のベンジリデン-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン化合物の美容的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明が適用されるケラチン物質は、ヒトの皮膚及び爪、並びにヒトのケラチン繊維、例えば頭髪、眉毛、まつげ、あごひげ、及び口ひげを含む。本発明は哺乳動物のケラチン物質にも適用される(例えば、イヌ、ウマ、またはネコ)。更に特に本発明は頭髪、あごひげ、口ひげ、まつげ、及び眉毛に適用される。
【0003】
ヒトのケラチン物質をケア及び/または処理するために、ヒトのケラチン物質の着色を促進及び/または脱色を制限する新規の生産物、更に特にヒトのケラチン繊維、例えば頭髪、まつげ、及び/または特定の体毛の白毛を防止及び/または減少することが可能である生産物の必要性が存在する。
【0004】
ヒトの毛及び皮膚の色は、各種の因子、特に年間の季節、人種、性別、及び年齢に依存する。ヒトの毛及び皮膚の色は、メラノサイトによって生産されるメラニンの濃度によって主に決定される。これらのメラノサイトは、メラノソームという特定の細胞内小器官を介してメラニンを合成する分化した細胞である。
【0005】
メラニンの合成(またはメラニン産生)は複雑であり、以下の主な工程を概要的に含む。
【0006】
チロシン→ドーパ→ドーパキノン→ドーパクロム→メラニン
【0007】
チロシナーゼ(モノフェノールジヒドロキシルフェニルアラニン:オキシゲンオキシドレダクターゼ EC 1.14.18.1)は、特に、チロシンからドーパ(ジヒドロキシフェニルアラニン)への変換のための反応、及びドーパからドーパキノンへの変換のための反応を触媒することによって、この連続する反応に関与する。
【0008】
毛包の上部は、表皮の管状の陥入(tubular invagination)として現れ、ちょうど真皮の深層まで埋め込まれる。下方部分、または毛球は、それ自体に真皮乳頭で見られる陥入部分を含む。毛球の下方部分における真皮乳頭の周辺は、高い増殖度を有する細胞(マトリクッス細胞)が存在する領域である。これらの細胞は、毛を形成する角化細胞の前駆細胞である。これらの前駆細胞の増殖に由来する細胞は毛球において垂直に移動し、毛球の上方部分において次第に角化する;この角化細胞の集合が毛幹(hair stem)を形成するであろう。頭髪の着色及び他の体毛の着色は、毛包の毛球におけるメラノサイトの存在が必要である。これらのメラノサイトは活性化状態にある(すなわち、メラニン(またはメラニン色素)を合成している)。これらの色素は毛幹を形成することが意図されるケラチノサイトに移動し、着色された頭髪または他の体毛の成長を生じさせるであろう。この構造は「毛包着色単位(follicular pigmentation unit)」として知られている。
【0009】
大多数のヒトにおいて、茶色の皮膚の色、及び頭髪の一定の色の維持は重要な願望の対象であることが知られている。
【0010】
灰色若しくは白色の体毛及び/若しくは頭髪、または白毛の出現は、毛幹におけるメラニンの減少と相関することが一般的に認められている。この現象は個人の生涯の間に自然に生じる。しかしながら、多くのヒトは美的な目的を持って、より若い外観を有することを求め、特に比較的若い時期にこの現象が生じる際には、頻繁にこの現象に対抗する誘惑に駆られる。
【0011】
かくして、多くの溶液が、可能な限り天然に有する色に近い色を毛に与えることが目的とされる外来性の染料を提供することによる人工的な色の分野で提案されている。他の方法は天然の着色経路の刺激からなる。
【0012】
提案されている溶液として、ホスホジエステラーゼインヒビター(WO 95/17161)、DNA断片(WO 95/01773)、ジアシルグリセロール(WO 94/04122)、プロスタグランジン(WO 95/11003)、またはピリミジン3-オキシド誘導体(EP 829260)を含む組成物が挙げられる。
【0013】
本出願人は、予期せずに、メラノサイトによって合成されるプロスタグランジン、またはその環境において存在するプロスタグランジンの分解を特異的に阻害することによって、メラノサイトによるメラニンの合成を刺激することが可能であることを発見した。
【0014】
ヒトまたは動物における体毛または皮膚の着色における関連のプロスタグランジンの関与は、文献Wand M., 1997, Arch. Ophtalmol., 115; Abdel Malek et al., 1987, cancer Res., 47において記載されている。しかしながら、プロスタグランジンは非常に短い生物学的な半減期を有し、局所的および不安定な特性を有する代謝に由来する分子であるため(Narumiya S, et al.)、ヒトの皮膚、体毛、及び/または頭髪の着色に関与するプロスタグランジンの活性を持続可能にすることは重要なようである。
【0015】
特許出願WO 04/073 594において、出願人は、毛のメラノサイトにおいて15-ヒドロキシプロスタグランジンデヒドロゲナーゼ(15-PDGH)も発現していることを示しており、このことはこれまで全く明らかにされていなかった。更に、前記出願人は、頭髪の真皮乳頭及びメラノサイトにおける15-PGDHの存在を明らかにし、ヒトの皮膚、体毛、及び/または頭髪の着色を促進する15-PDGHインヒビターの使用を提案した。メラノサイトの15-PGDH及び真皮乳頭の線維芽細胞の15-PGDHの双方によって触媒される分解に働きかけることによって、特に頭髪の、特にメラノサイトに存在するプロスタグランジンのレベルを局所的に調節することが現在は可能である。
【0016】
タイプ-1 15-PGDHは、毛の成長及び生存の重要な仲介物質であるプロスタグランジン、特にPGF2-α及びPGE2の不活性化における重要な酵素である。タイプ-1 15-PGDHはEC1.1.1.141という分類に相当し、NAD+依存的である。この酵素は、15位のヒドロキシル基のケトン基への酸化反応を触媒する。この酵素はブタの腎臓から単離され、その阻害は、生理的な量より非常に多い量で、甲状腺ホルモンであるトリヨードサイロニンに関して特に認められた。タイプ-2 15-PGDHは、それ自体がNADP依存的である。
【0017】
これと同じ特許出願において、出願人は、毛のメラノサイトがプロスタグランジンHシンターゼ1(PGHS-1またはCOX-1、E.C. :1.14.99.1)を発現することも示した。このことは、毛のメラノサイトが自発性のプロスタグランジン代謝を有することを初めて明らかにした。
【0018】
文献WO 04/073 594では、真皮乳頭及び/または毛のメラノサイトに存在する15-PGDHの特異的な阻害が可能であることを更に示している。その様な阻害は、毛のメラノサイトの環境におけるプロスタグランジンの不活性化を停止することを可能にする。プロスタグランジンは、オートクリンまたはパラクリンの経路を介して、メラノサイトを刺激し続けることが可能である。実際に、その様なインヒビターの適用はメラノサイトによるメラニンの生産を刺激する。
【特許文献1】WO 95/17161
【特許文献2】WO 95/01773
【特許文献3】WO 94/04122
【特許文献4】WO 95/11003
【特許文献5】WO 04/073 594
【特許文献6】WO 04/073 594
【特許文献7】EP 829260
【非特許文献1】Wand M., 1997, Arch. Ophtalmol., 115; Abdel Malek et al., 1987, cancer Res., 47
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明によれば、用語「15-PGDHインヒビター」は、酵素である15-PGDHの活性を阻害若しくは減少することが可能である、及び/またはこの酵素によって触媒される反応を阻害、減少、若しくは減速することが可能である、天然物または合成物由来の、単純または複合化合物であるいずれの物質も意味する。本発明に係る15-PGDHインヒビターはタイプ-1 15-PGDHの好ましいインヒビターである。
【0020】
有利には、前記インヒビターはNAD依存性タイプ-1 15-PGDHの特異的なインヒビターである。
【0021】
更に、驚いたことに、本出願人は、以下に詳細に規定する化学式(I)の関連のベンジリデン-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン化合物が15-ヒドロキシプロスタグランジンデヒドロゲナーゼ、特にタイプ-1の15-ヒドロキシプロスタグランジンデヒドロゲナーゼのインヒビターであることを発見した。更に、本出願人は、これらの同じベンジリデン-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン化合物は、ケラチン物質の着色を促進及び/または誘導及び/または刺激すること、並びにそれらの脱色及び/または白色化を制限することを可能にすることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0022】
かくして、本発明の1つの主題は、ケラチン物質、更に特にケラチン繊維(例えば、ヒトの頭髪、あごひげ、くちひげ、まつげ、眉毛)の着色を促進及び/若しくは誘導及び/若しくは刺激するための薬剤、並びに/またはケラチン物質、更に特にケラチン繊維(例えば、ヒトの頭髪、あごひげ、くちひげ、まつげ、眉毛)の脱色及び/若しくは白色化を防止及び/若しくは制限するための薬剤としての、少なくとも1つの化学式(I)のベンジリデン-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン化合物、またはその塩、及び/若しくは溶媒和物、及び/若しくはシス-トランス若しくはZ/E異性体の美容的使用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
更に特に本発明は、ヒトのケラチン繊維の白毛を防止及び/または阻害するための薬剤としての、少なくとも1つの化学式(I)のベンジリデン-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン化合物、またはその塩、及び/若しくは溶媒和物、及び若しくはシス-トランス若しくはE/Z異性体の美容的使用に関する。
【0024】
本発明の1つの主題は、ケラチン物質、更に特にケラチン繊維(例えば、ヒトの頭髪、あごひげ、くちひげ、まつげ、眉毛)の着色を誘導及び/若しくは刺激するためのケア及び/またはメークアップ組成物、並びに/またはケラチン物質、更に特にケラチン繊維(例えば、ヒトの頭髪、あごひげ、くちひげ、まつげ、眉毛)の脱色及び/若しくは白色化を制限するためのケア及び/またはメークアップ組成物における、少なくとも1つの化学式(I)のベンジリデン-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン化合物、またはその塩、及び/若しくは溶媒和物、及び/若しくはシス-トランス若しくはZ/E異性体の美容的使用でもある。
【0025】
更に特に本発明は、ヒトのケラチン繊維の白毛を防止及び/または制限するためのケア及び/またはメークアップ組成物における、少なくとも1つの化学式(I)のベンジリデン-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン化合物、またはその塩、及び/若しくは溶媒和物、及び/若しくはシス-トランス異性体の美容的使用に関する。
【0026】
本発明の1つの主題は、ケラチン物質、更に特にケラチン繊維(例えば、ヒトの頭髪、あごひげ、くちひげ、まつげ、及び眉毛)の着色を誘導及び/若しくは刺激するための組成物の製造、並びに/またはケラチン物質、更に特にケラチン繊維(例えば、ヒトの頭髪、あごひげ、くちひげ、まつげ、眉毛)の脱色及び/若しくは白色化を制限するための組成物の製造における、少なくとも1つの化学式(I)のベンジリデン-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン化合物、またはその塩、及び/若しくは溶媒和物、及び/若しくはシス-トランス若しくはZ/E異性体の美容的使用でもある。
【0027】
更に特に本発明は、ヒトのケラチン繊維(例えば、ヒトの頭髪、あごひげ、くちひげ、まつげ、及び眉毛)の白毛を防止及び/または制限するための組成物の製造における、少なくとも1つの化学式(I)のベンジリデン-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン化合物、またはその塩、及び/若しくは溶媒和物、及び/若しくはシス-トランス若しくはZ/E異性体の使用に関する。
【0028】
本発明は、ケラチン物質、更に特にヒトのケラチン繊維の着色を誘導及び/若しくは刺激するため、並びに/またはそれらの脱色及び/若しくは白色化を制限するための美容的方法であって、有効量の少なくとも1つの化学式(I)のベンジリデン-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン化合物、またはその塩、及び/若しくは溶媒和物、及び/若しくはシス-トランス若しくはZ/E異性体を前記ケラチン物質に適用する工程からなることを特徴とする方法にも関する。
【0029】
本発明は、ヒトのケラチン繊維、特に頭髪、あごひげ、口ひげ、まつげ、及び/または眉毛の白毛を処理するための美容的方法であって、有効量の少なくとも1つの化学式(I)のベンジリデン-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン化合物、またはその塩、及び/若しくは溶媒和物、及び/若しくはシス-トランス若しくはZ/E異性体を前記繊維に適用する工程からなることを特徴とする方法にも関する。
【0030】
以下の化学式(I)に相当する本発明のベンジリデン-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン化合物、またはその塩、及び/若しくは溶媒和物、及び/若しくはシス-トランス若しくはZ/E異性体:
【0031】
【化1】

【0032】
a)A1及びA2は同時に水素を意味する;
【0033】
b)A3は基Z1を意味する;
【0034】
c)Z1は基OZ2を意味し、ここでZ2は1つ以上のアダマンチル、CF3、ハロゲン、または直鎖若しくは分枝、飽和若しくは不飽和のC1-C20アルキル基で任意に置換されるフェニル基を意味する;
【0035】
d)pは0と5の間であり、p>1の際は、置換基A3は同一または異なるものであって良い。
【0036】
本発明によれば、用語「化学式(I)の化合物の塩」は、化学式(I)の化合物の有機または無機塩を意味する。
【0037】
本発明によって使用されて良い無機塩としては、ナトリウムまたはカリウムの塩、及びアンモニウム、亜鉛(Zn2+)、カルシウム(Ca2+)、銅(Cu2+)、鉄(Fe2+及びFe3+)、ストロンチウム(Sr2+)、マグネシウム(Mg2+)、及びマンガン(Mn2+)の塩;水酸化物、ハロゲン化水素化物(例えば塩化水素)、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、リン酸水素塩、リン酸塩が挙げられる。
【0038】
本発明によって使用されて良い有機塩としては、例えば、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、エタノールアミン、ヘキサデシルアミン、及びN,N,N',N',-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの塩、並びに有機酸の塩、例えばクエン酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、及び酒石酸塩が挙げられる。
【0039】
化学式(I)の化合物の可能な溶媒和物としては、水和物、アルコラート、及びヒドロアルコラートが挙げられる。
【0040】
本発明によれば、化学式(I)の化合物は単離された形態で存在する(すなわち非重合型)。
【0041】
本発明によれば、用語「少なくとも1つ」は1つ以上(2、3、またはそれより多く)を意味する。特に、前記組成物は1つ以上の化学式(I)の化合物を含有して良い。この、またはこれらの化合物は、シス若しくはトランス、またはZ若しくはE異性体であって良く、またはシス/トランス若しくはE/Z異性体の混合物であって良い。それらは互変異性の形態であっても良い。この、またはこれらの化合物は、鏡像異性体及び/若しくはジアステレオ異性体、またはこれらの異性体の混合物、特にラセミ混合物であって良い。
【0042】
本発明の目的のために、用語「アルキル基」は、直鎖または分枝、及び飽和または不飽和であって良い炭化水素に基づく基を意味する。特に、前記アルキル基は、1から20、好ましくは1から10の炭素原子を含有する。本発明で使用されて良いアルキル基の例として、メチル、エチル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル、エチレン、及びプロピレン基が挙げられる。
【0043】
本発明で使用されて良いハロゲン原子として、塩素、フッ素、または臭素原子、好ましくは塩素及びフッ素原子が挙げられる。
【0044】
本発明に係る化学式(I)の化合物の中で、以下のリストの化合物より選択されるものが更に特に挙げられる:
【0045】
【表1A】

【表1B】

【表1C】

【表1D】

【表1E】

【0046】
更に特に好ましい化合物は以下より選択される:
【0047】
‐化合物(5Z)-5-[2-(3,4-ジフルオロフェノキシ)ベンジリデン]-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン:
【0048】
【化2】

【0049】
‐以下の構造の化合物(5Z)-5-[2-(4-tert-ブチルフェノキシ)ベンジリデン]-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン:
【0050】
【化3】

【0051】
または以下の構造のそのナトリウム塩:
【0052】
【化4】

【0053】
以下の構造の化合物(5Z)-5-[2-(4-クロロ-3-フルオロフェノキシ)ベンジリデン]-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン:
【0054】
【化5】

【0055】
以下の構造の化合物(5Z)-5-[4-(4-tert-ブチルフェノキシ)ベンジリデン]-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン:
【0056】
【化6】

【0057】
並びにそれらの塩、及び/または溶媒和物、及び/またはシス-トランス若しくはZ/E異性体。
【0058】
本発明に係る化学式(I)の化合物は、以下に規定する反応スキームにおいて記載されるような合成経路によって得られて良い。使用される合成経路は、芳香族求核置換反応、次いでKnoevenagel縮合反応からなる。
【0059】
【化7】

【0060】
化学式(I)の化合物(塩化されているまたはされていないもの、溶媒和されているまたはされていないもの)の有効量は、望まれる結果を得る(すなわち、特に頭髪及びまつげのケラチンの着色を誘導若しくは刺激する、並びに/またはそれらの脱色及び/若しくは白色化を減少する)ために必要な量に相当する。そのため、当業者は、使用される化合物の特性、適用される個人、及びこの適用の期間に依存するこの有効量を評価することができる。
【0061】
以下の記載では、他に示されない限り、前記組成物中の各種の成分の量は組成物の総重量に対する重量パーセントとして与えられる。
【0062】
量の範囲に関しては、本発明によれば、化学式(I)の化合物(塩化されているまたはされていないもの、溶媒和されているまたはされていないもの)、または化学式(I)の化合物(塩化されているまたはされていないもの、溶媒和されているまたはされていないもの)の混合物は、組成物の総重量の10-3%から10%の範囲の量、好ましくは組成物の総重量の10-3%から5%、より好ましくは組成物の総重量の10-2%から2%の範囲の量、例えば0.5%から2%の量で使用されて良い。
【0063】
本発明の組成物は、美容的または製薬的に使用されて良い。本発明の組成物は、好ましくは美容的に使用される。更に、前記組成物は、頭皮及びまぶたを含むヒトの皮膚、並びにヒトのケラチン繊維に適用可能である、非毒性の、生理的に許容可能な媒体を含む必要がある。本発明の目的のために、用語「美容品」は、好ましい外観、香り、及び感触の組成物を意味する。
【0064】
化学式(I)の化合物(塩化されているまたはされていないもの、溶媒和されているまたはされていないもの)は、経口摂取、注射、または皮膚若しくはケラチン繊維(処理される皮膚若しくは繊維のあらゆる領域)に適用されるべき組成物において使用されて良い。
【0065】
本発明によれば、化学式(I)の化合物、または化学式(I)の化合物の混合物は、1日に0.1mgから300mg、例えば5mg/日から10mg/日の量において経口的に使用されて良い。
【0066】
本発明の好ましい組成物は美容的使用のため、特に皮膚及びケラチン繊維に対する局所的な適用のため、更に特に頭皮、頭髪、及びまつげに対する局所的な適用のための組成物である。
【0067】
この組成物は、使用方法に適切な、あらゆる既知の提供形態であって良い。
【0068】
皮膚またはケラチン繊維に対する局所的な適用のために、前記組成物は、水性、アルコール性、若しくは水性-アルコール性の溶液若しくは懸濁液、または油性の懸濁液若しくは溶液、水相に脂肪相(O/W)を、若しくはその逆(W/O)に分散させることによって得られる、実質的に流動的な粘稠度、特に液体または半液体の粘稠度を有するエマルション若しくはディスパーション、固体の(O/W)若しくは(W/O)エマルション若しくはディスパーション、実質的に流動的若しくは固体の水性、水性-アルコール性、若しくは油性のゲル、修飾されずに使用される、若しくは生理的に許容可能な媒体に含まれる、遊離した若しくは圧縮された粉末、あるいはイオン性及び/若しくは非イオン性タイプのマイクロカプセル、マイクロパーティクル、若しくは小胞状のディスパーションの形態であって良い。
【0069】
圧縮不活性ガスを含む、泡の形態、あるいはスプレー若しくはエアゾールの形態における組成物が意図されても良い。
【0070】
前記組成物は、ローション、血清、ミルク、O/W若しくはW/Oクリーム、ゲル、膏薬、軟膏、粉末、バルサム、パッチ、含浸パッド、ケーク、または泡の形態であっても良い。
【0071】
特に、頭皮または頭髪に対する適用のための組成物は、ヘアケアローション、例えば毎日若しくは1週間に2回の適用のためのヘアケアローション、シャンプー若しくはヘアコンディショナー、特に1週間に2回若しくは1週間に1回の適用のためのシャンプー若しくはヘアコンディショナー、毎日の適用のための液体若しくは固体の頭皮洗浄石ケン、髪型を整える製品(ヘアスプレー、頭髪をセットする製品、若しくはスタイリングゲル)、治療用のマスク、フォーミングゲル、または頭髪のクレンジングクリームの形態であって良い。ブラシまたはくしを使用して適用される、頭髪の染料またはマスカラの形態であっても良い。
【0072】
更に、まつげまたは体毛に対する適用のために、本発明に係る組成物は、まつげに、あるいはあごひげ若しくは口ひげにブラシを使用して適用される、着色されたまたはされていないマスカラの形態であって良い。
【0073】
注射による使用のための組成物のために、前記組成物は、水性のローションまたは油性の懸濁液の形態であって良い。経口的な使用のために、前記組成物は、カプセル、顆粒、飲用シロップ、または錠剤の形態であって良い。
【0074】
1つの特定の実施態様によれば、本発明に係る組成物は、ヘアクリーム若しくはヘアローション、シャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアマスカラ、またはまつげのマスカラの形態である。
【0075】
本発明に係る組成物の生理学的な媒体の各種の成分の量は、当該技術分野において一般的に使用されているものである。更に、これらの組成物は常法によって調製される。
【0076】
前記組成物がエマルションである際に、前記脂肪相の割合は、前記組成物の総重量に対して2重量%から80重量%、好ましくは5重量%から50重量%の範囲であって良い。前記水相は、100重量%を得るために、脂肪相及び化合物(I)の含有量、並びに任意の更なる成分の含有量にも応じて調節される。実際に、前記水相は5重量%から99.9重量%を占める。
【0077】
前記脂肪相は、一般的に油として知られている、室温(25℃)及び大気圧(760mmHg)で液体である脂肪性または油性の化合物を含有して良い。これらの油は互いに親和性または非親和性であって良く、巨視的に均一な液体脂肪相、または2相若しくは3相系を形成して良い。
【0078】
前記油に加えて、前記脂肪相は、ワックス、ガム、新油性のポリマー、または固体部分及び液体部分を含有する、「ペースト状」若しくは粘性を有する生産物を含んで良い。
【0079】
前記水相は、水、及び任意に、水とあらゆる割合において混合可能な成分、例えばC1からC8の低級アルコール(例えば、エタノール若しくはイソプロパノール)、ポリオール(例えば、プロピレングリコール、グリセロール、若しくはソルビトール)、あるいはアセトン若しくはエーテルを含有する。
【0080】
エマルションの形態における組成物のために、前記組成物は、エマルションの形態の組成物を得るために使用される1つ以上の共乳化剤と任意に組み合わせて、1つ以上の乳化剤を含有して良い;これらの乳化剤及び共乳化剤は、美容品及び医薬品において一般的に使用されているものである。それらの特性は前記エマルションの向きにも依存する。実際に乳化剤、及び適当な場合に、共乳化剤は、0.1重量%から30重量%、好ましくは0.5重量%から20重量%、より好ましくは1重量%から8重量%の範囲の割合において組成物中に存在する。前記エマルションは、マイクロカプセル若しくはマイクロパーティクル、及び小胞ディスパーション、並びに特に脂質小胞、例えばリポソームも含有して良い。
【0081】
前記組成物が油性の溶液またはゲルの形態である際には、前記脂肪相は、前記組成物の総重量の90重量%より大きい割合を占めて良い。
【0082】
有利には、頭髪への適用のために、本発明の組成物は水性、アルコール性、または水性-アルコール性溶液若しくは懸濁液、好ましくは水/エタノール溶液若しくは懸濁液である。アルコール性の部分は5%から99.9%、好ましくは8%から80%を占めて良い。
【0083】
マスカラとしての適用のために、本発明の組成物は、特に、着色されているまたはされていない、ワックス中水型若しくはワックス中油型のディスパーション、ゲル化油、または水性ゲルの形態である。
【0084】
本発明の組成物は、溶剤、水相または油相の増粘剤またはゲル化剤、前記組成物の媒体に可溶性である染料、フィラーまたは顔料のような固体粒子、抗酸化剤、金属イオン封鎖剤、保存剤、香料、電解質、中和剤、皮膜形成ポリマー、UV遮断剤、例えばサンスクリーン剤、化学式(I)の化合物以外の皮膚またはケラチン繊維に有利な効果を有する美容品的または医薬品的な活性剤、及びそれらの混合物より選択される、当該技術分野において通常使用されている他の更なる成分を含んでも良い。これらの添加物は、美容品として一般的に使用される、及び皮膚科学において一般的に使用される量、特に、前記組成物の総重量に対して0.01%から50%、好ましくは0.1%から20%、例えば0.1%から10%の割合において前記組成物に存在してよい。それらの特性に依存して、これらの添加物は油相、水相、及び/または脂質小胞、特にリポソームに導入されて良い。
【0085】
言うまでも無く当業者は、本発明に係る組成物の有利な特性(すなわち、15-PGDHの阻害、並びに特にケラチン繊維の密度の増大、及び/またはそれらの白色化の減少)が、意図される添加物によって不利に影響を与えられない、または実質的に与えられない様に、任意の更なる成分、及び/またはその量の選択に注意するであろう。
【0086】
本発明において使用されて良い溶剤として、C2からC8の低級アルコール、例えばエタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、及び特定の美容用軽質油、例えばC6からC16のアルカン、並びにベンジルアルコールが挙げられる。
【0087】
本発明において使用されて良い油として、鉱物油(液体ワセリンまたは水素化イソパラフィン)、植物油(シアバターの液体画分、ヒマワリ油、アプリコット油、脂肪アルコール、または脂肪酸)、動物油(ペルヒドロスクアレン)、合成油(脂肪酸エステル、パーセリンオイル)、シリコーン油(直鎖または環状のポリジメチルシロキサン、フェニルトリメチコーン)、及びフルオロ油(ペルフルオロポリエーテル)が挙げられる。ワックスとして、シリコーンワックス、ミツロウ、ライスワックス、カンデリラワックス、カルナウバワックス、パラフィンワックス、及びポリエチレンワックスが挙げられる。
【0088】
本発明において使用されて良い乳化剤の例として、W/Oエマルションのためには、グリセリルステアレート、グリセリルラウレート、ソルビトールステアレート、ソルビトールオレート、アルキルジメチコーンコポリオール(8以上のアルキル基を有する)、及びそれらの混合物が挙げられる。O/Wエマルションのために、ポリエチレングリコールのモノステアレートまたはモノラウレート、ポリオキシエチレン化ソルビトールのステアレートまたはオレート、及びジメチコーンコポリオール、並びにそれらの混合物が使用されても良い。
【0089】
本発明において使用されて良い親水性のゲル化剤として、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)、アクリレート/アルキルアクリレートコポリマーのようなアクリルコポリマー、ポリアクリルアミド、ヒドロキシプロピルセルロースのようなポリサッカリド、天然ガム、及び粘土が挙げられ、新油性のゲル化剤として、変性粘土、例えばBentone、脂肪酸の金属塩、例えばアルミニウムステアレート、疎水性処理したシリカ及びエチルセルロース、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0090】
本発明において使用されて良い、化学式(I)の化合物以外の美容品的または医薬品的な活性剤として、親水性の活性剤、例えばタンパク質若しくはタンパク質の加水分解物、アミノ酸、ポリオール、尿素、アラントイン、糖及び糖誘導体、水溶性ビタミン、植物抽出物(アヤメ科植物若しくはダイズ由来の抽出物)、並びにフルーツ酸若しくはサリチル酸のようなヒドロキシ酸;新油性の活性剤、例えばレチノール(ビタミンA)及びその誘導体、特にエステル(レチニルパルミテート)、トコフェロール(ビタミンE)及びその誘導体、特にエステル(トコフェリルアセテート)、必須脂肪酸、セラミド、精油、サリチル酸誘導体、例えば5-n-オクタノイルサリチル酸、ヒドロキシ酸エステル、及びリン脂質、例えばレシチン、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0091】
有利には、本発明に係る組成物は、上述の少なくとも1つの15-PGDHインヒビター、及び少なくとも1つのプロスタグランジンまたはプロスタグランジン誘導体、例えば、塩またはエステルの形態(例えばイソプロピルエステル)においてPGF2-α及びPGE2を特に含むシリーズ2のプロスタグランジン、その誘導体、例えば16,16-ジメチルPGE2、17-フェニルPGE2、16,16-ジメチルPGF2-α、17-フェニルPGF2-α、シリーズ1のプロスタグランジン、例えば塩またはエステルの形態における11-デオキシプロスタグランジンE1、1-デオキシプロスタグランジンE1、それらのアナログ、特にラタノプロスト、(5E)-7-{(1R,2R,3R,5S)-3,5-ジヒドロキシ-2-[(3R)-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンチル]シクロペンチル}ヘプト-5-エン酸、ビプロストール、ビマトプロスト、クロプロステノール、トラボプロスト、フルプロステノール、クロプロステノール、ブタプロスト、ウノプロストン、ミソプロストール、並びにそれらの塩またはエステルも含む。
【0092】
塩化されているまたはされていない、溶媒和されているまたはされていない、少なくとも1つの化学式(I)の化合物を含む組成物が、文献WO94/22468において特に記載されるように、特にリポソームの形態に被包されることが意図されても良い。この様な被包された化合物は毛包に選択的に供給される可能性がある。
【0093】
本発明に係る組成物は、処理される皮膚の領域、特に個人の頭皮及び頭髪の脱毛領域、または白毛に対してのみに適用されて、任意に数時間接触した状態であり、任意にすすがれて良い。
【0094】
塩化されているまたはされていない、溶媒和されているまたはされていない、有効量の化学式(I)の化合物を含有する組成物は、例えば夕方に適用されて、一晩中接触した状態で、任意に朝にすすがれて良い。個人によって一月以上毎日、これらの適用を繰り返して良い。
【0095】
有利には、本発明に係る方法において、0.001%から5%の15-PGDHインヒビターを含む、5μLと10mlの間の上述の溶液または組成物は、ケアまたは処理される頭皮及び/または頭髪の領域に適用される。
【0096】
本発明の例示的な実施態様は、決して本発明の範囲を制限すべきで無く、説明を目的として提供されるであろう。
【実施例】
【0097】
(実施例1)
化学式(I)(A1=A2=H;A3=OZ2;Z2はtert-ブチル基で置換されるフェニル基)の化合物(5Z)-5-[2-(4-tert-ブチルフェノキシ)ベンジリデン]-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオンの合成
【0098】
【化8】

【0099】
ディーン-スターク装置及び冷却器に取り付けた250mLの丸底フラスコにおいて、120mLのトルエン中に2-[4-(tert-ブチル)フェノキシ]ベンズアルデヒド(10g;39.3×10-3mol)を希釈し、続いて2,4-チアゾリジンジオン(4.6g;39.9×10-3mol)、ピペリジン(1mL)、及び酢酸(1mL)を添加する。その反応媒質を4時間還流する。室温まで冷却後、沈殿物をろ過し、トルエンで数回洗浄する。得られる淡黄色の固体を真空条件下、50℃で乾燥し、8.54gの生産物が得られる(収率:62%)
【0100】
(実施例2)
化学式(I)の化合物の15-PGDH特異的な阻害特性の証明
【0101】
タイプ-1 15-PGDHの試験
L'Orealの名義で出願された特許出願FR 02/05067に記載されるように、酵素15-PGDHを0.3mg/mLの濃度に調節された媒体中の懸濁液として得て、-80℃で凍結する。試験の目的のために、この懸濁液を溶解し、氷中で保存する。
【0102】
同時に、0.1mMのジチオスレイトール(D5545、Sigma-Aldrich、L'isle D'Abeau Chesne、BP 701、38297、Saint Quentin Fallavier)、1.5mMのβ-NAD(N6522、Sigma-Aldrich、L'isle D'Abeau Chesne、BP 701、38297、Saint Quentin Fallavier)、50μMのプロスタグランジンE2(P4172、Sigma-Aldrich、L'isle D'Abeau Chesne、BP 701、38297、Saint Quentin Fallavier)を含む100mM、pH7.4のトリス緩衝液を調製する。
【0103】
0.965mlのこの緩衝液(あらかじめ37℃にした)を、サーモスタットで37℃に維持した分光光度計(Perkin-Elmer、Lambda 2)のキュベットに導入し、測定波長を340nmに設定する。37℃で0.035mLの酵素懸濁液を測定と同時に(340nmにおける吸光度の増大と一致して)前記キュベットに導入する。最大の反応速度を記録する。
【0104】
試験値(化学式(I)の化合物を含む)を対照値(化学式(I)の化合物を含まない)と比較する;示される結果は、化学式(I)の化合物の所定の濃度に関する15-PGDHの酵素活性の阻害割合、または化学式(I)の化合物が15-PGDHの酵素活性を50%まで減少する濃度、すなわちIC50dhのいずれかを表す。
【0105】
その結果を以下の表に示す。
【0106】
【表2A】

【表2B】

【表2C】

【表2D】

【0107】
これらの表から、化学式(I)の化合物がタイプ-1 15-PGDHのインヒビターであることは明らかである。
【0108】
美容品または医薬品に一般的に使用される常法によって以下の組成物を得る。
【0109】
(実施例3)
培養中の正常なヒトメラノサイトのチロシナーゼ活性における化合物4の効果の証明
【0110】
以下の構造の化合物(5Z)-5-[2-(4-tert-ブチルフェノキシ)ベンジリデン]-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン(化合物4)のナトリウム塩を試験した:
【0111】
【化9】

【0112】
a)メラノサイト培養条件
標準的な温度条件下(37℃)、5%CO2
Promocell C24300添加物
ペニシリン50 IU/ml及びストレプトマイシン50μg/ml (Invitrogen)
を添加したメラノサイト増殖培地M2において正常なヒト上皮メラノサイトを培養する(継代数は9)。
【0113】
b)試験化合物の溶液の調製
化合物4を無水エタノール(PGE2)またはDMSO(15-PGDHインヒビター)に溶解する。調製される溶液の最終的な力価は10mMである。最終的な試験濃度の範囲は0.1から10μM(PGE2)及び1から10μM(15-PGDHインヒビター)である。
【0114】
c)試験の原理
実施される試験は、チロシナーゼの全体的な活性における15-PGDHの単独またはPGE2との組み合わせの阻害効果を測定することからなる。
【0115】
*PGE2は酵素15-PGDHによって不活性化される着色調節因子である。
【0116】
メラノサイトを96ウェルプレートにおいてコンフルエントになるまで培養し(培養条件はaに記載されている)、次いで各ウェルの上清を除去し、評価される化合物を含有する培地に置き換える。
【0117】
かくして(三つ組みに)、1μM及び10μMで15-PGDHインヒビター単独、またはこれらの第1の条件の各々に対して0.1μM、1μM、または10μMのPGE2が存在する培地に置き換える。
【0118】
前記培養物をこれらの各種の条件下で72時間維持し、次いで上清を除去して、細胞叢をリン酸緩衝液(pH=7.2)を使用して洗浄する。1%Triton X100を含有するpH7.2リン酸緩衝液を使用して前記細胞を溶解する。
【0119】
次いで、菌のチロシナーゼの値域(Sigma T7755)に対して各溶解物のチロシナーゼ活性を推定する。
【0120】
実施される方法体系はL-ドーパを反応基質として使用する(37℃で45分);メラニンの形成が450nmの吸収の測定によって評価される。
【0121】
この試験では、2つの参考物質:コジック酸(培地に0.1%で導入されるチロシナーゼインヒビター)、及びcAMPの異化作用を制限することによって、この試験において評価されるような全体的なチロシナーゼ活性の増大に対して寄与するホスホジエステラーゼインヒビターであるイソブチルメチルキサンチン(IBMX)も評価される。
【0122】
d)結果
化合物4(1μM)がPGE2の存在下(0.1μM、1μM、及び10μM)においてチロシナーゼの活性を刺激する特性を有することが認められた。
【0123】
以下に結果を示す:
【0124】
【表3】

【0125】
PGE2単独ではチロシナーゼの活性を
0.1μMで+3%まで
1μMで+9%まで、及び
10μMで+15%まで刺激する。
【0126】
化合物4は、メラノサイトにおけるチロシナーゼの活性を刺激する特性を実際に有する。
【0127】
(実施例4)
ヘアローション
【0128】
化合物(5Z)-5-[2-(4-tert-ブチル
フェノキシ)ベンジリデン]-1,3-
チアゾリジン-2,4-ジオン 1.00g
プロピレングリコール 30.00g
エチルアルコール 40.00g
水 qs 100.00g
【0129】
1日に1回または2回、一回の適用に1mlの量で、このローションを頭皮に適用し、頭皮を穏やかにマッサージして活性薬剤を浸透させる。次いで頭髪を自然に乾燥させる。このローションは、頭髪の白毛を防止及び/または減少することを可能にする。
【0130】
(実施例5)
ヘアローション
【0131】
化合物(5Z)-5-[2-(4-tert-ブチル
フェノキシ)ベンジリデン]-1,3-
チアゾリジン-2,4-ジオン 1.00g
エチルアルコール 49.00g
水 qs 100.00g
【0132】
1日に1回または2回、一回の適用に1mlの量で、このローションを頭皮に適用し、頭皮を穏やかにマッサージして活性薬剤を浸透させる。次いで頭髪を自然に乾燥させる。このローションは、頭髪の損失を減少し、再成長を促進することを可能にする。このローションは、頭髪の白毛を防止及び/または減少することも可能にする。
【0133】
(実施例6)
ワックス/水 マスカラ
【0134】
ミツロウ 6.00%
パラフィンワックス 13.00%
水素化ホホバ油 2.00%
水溶性皮膜形成ポリマー 3.00%
トリエタノールアミンステアレート 8.00%
化合物(5Z)-5-[2-(4-tert-
ブチルフェノキシ)ベンジリデン]-1,3-
チアゾリジン-2,4-ジオン 1.00%
黒色顔料 5.00%
保存剤 qs
水 qs 100.00%
【0135】
マスカラブラシを使用して標準的なマスカラのように、このマスカラをまつげに適用する。このマスカラは、まつげの損失を減少し、再成長を促進することを可能にする。このマスカラは、まつげの白毛を防止及び/または減少することも可能にする。
【0136】
(実施例7)
ヘアローション
【0137】
化合物(5Z)-5-[2-(4-tert-
ブチルフェノキシ)ベンジリデン]-1,3-
チアゾリジン-2,4-ジオン 0.10g
ラタノプロスト 0.10g
プロピレングリコール 30.00g
エチルアルコール 40.00g
水 qs 100.00g
【0138】
1日に1回または2回、一回の適用に1mlの量で、このローションを頭皮に適用し、頭皮を穏やかにマッサージして活性薬剤を浸透させる。次いで頭髪を自然に乾燥させる。このローションは、頭髪の損失を減少し、再成長を促進することを可能にする。このローションは、頭髪の白毛を防止及び/または減少することも可能にする。
【0139】
(実施例8)
ヘアローション
【0140】
(5E)-7-{(1R,2R,3R,5S)-3,5-ジヒドロキシ-2-
[(3R)-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンチル]シクロ-
ペンチル}ヘプト-5-エン酸 0.10g
化合物(5Z)-5-[2-(4-tert-
ブチルフェノキシ)ベンジリデン]-1,3-
チアゾリジン-2,4-ジオン 0.10g
プロピレングリコール 30.00g
エチルアルコール 40.00g
水 qs 100.00g
【0141】
1日に1回または2回、一回の適用に1mlの量で、このローションを頭皮に適用し、頭皮を穏やかにマッサージして活性薬剤を浸透させる。次いで頭髪を自然に乾燥させる。このローションは、頭髪の白毛を防止及び/または減少することも可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学式(I):
【化1】

a)A1及びA2は同時に水素を意味する;
b)A3は基Z1を意味する;
c)Z1は基OZ2を意味し、ここでZ2は1つ以上のアダマンチル、CF3、ハロゲン、または直鎖若しくは分枝、飽和若しくは不飽和のC1-C20アルキル基で任意に置換されるフェニル基を意味する;
d)pは0と5の間であり、p>1の際は、置換基A3は同一または異なるものであって良い、
に相当する少なくとも1つのベンジリデン-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン化合物、またはその塩、及び/若しくは溶媒和物、及び/若しくはシス-トランス若しくはZ/E異性体の美容的使用であって、ヒトケラチン物質の着色を促進及び/若しくは誘導及び/若しくは刺激するための薬剤、並びに/またはケラチン物質の脱色及び/若しくは退色を防止及び/若しくは制限するための薬剤としての使用。
【請求項2】
化学式(I)の化合物が以下のリスト:
【表1A】

【表1B】

【表1C】

【表1D】

の化合物、またはその塩、及び/若しくは溶媒和物、及び/若しくはシス-トランス若しくはZ/E異性体より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
化学式(I)の化合物または化学式(I)の化合物の混合物が、前記組成物の総重量に対して10-3から10%、好ましくは10-2から2%の範囲の濃度で使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記組成物が局所的な適用のための組成物であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記ケラチン物質が、ヒトケラチン繊維、特にヒトの頭髪、あごひげ、くちひげ、まつげ、及び眉毛より選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
ヒトケラチン繊維、特にヒトの頭髪、あごひげ、くちひげ、まつげ、及び/または眉毛の白毛を防止及び/または制限するための薬剤としての、請求項1から5のいずれか一項において規定される、少なくとも1つの化学式(I)のベンジリデン-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン化合物、またはその塩、及び/若しくは溶媒和物、及び/若しくはシス-トランス若しくはZ/E異性体の使用。
【請求項7】
ケラチン物質の着色を誘導及び/若しくは刺激するため、並びに/またはその脱色及び/若しくは白色化を制限するためのケア及び/またはメークアップ組成物における、請求項1から6のいずれか一項において規定される、少なくとも1つの化学式(I)のベンジリデン-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン化合物、またはその塩、及び/若しくは溶媒和物、及び/若しくはシス-トランス若しくはZ/E異性体の美容的使用。
【請求項8】
前記ケラチン物質がヒトケラチン繊維、特にヒトの頭髪、あごひげ、くちひげ、まつげ、及び眉毛より選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項において規定される、有効量の少なくとも1つの化学式(I)のベンジリデン-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン化合物、またはその塩、及び/若しくは溶媒和物、及び/若しくはシス-トランス若しくはZ/E異性体を前記ケラチン物質に適用する工程からなることを特徴とする、ケラチン物質の着色を誘導及び/若しくは刺激するため、並びに/またはその脱色及び/若しくは白色化を制限するための美容方法。
【請求項10】
前記ケラチン物質がヒトケラチン繊維、特にヒトの頭髪、あごひげ、くちひげ、まつげ、及び眉毛より選択される、請求項9に記載の方法。

【公開番号】特開2007−8937(P2007−8937A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−177276(P2006−177276)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】