説明

ケーブル収納型電力供給装置

【課題】二つのケーブルの収納性向上と収納状態からケーブルを引き出して用いる時のケーブル破損の抑制が可能な電源ケーブル収納機構付のACアダプタを提供する。
【解決手段】内部にAC/DC変換部を有し、AC/DC変換部を絶縁保護するモールドケース2よりなる電源供給装置1において、ACケーブル4とDCケーブル5が、ケーブル巻きつけ部であるモールドケース2の側周面6の一部と上面の一部を切り欠いた部分、および、前記側周面6の一部と底面の一部を切り欠いた部分から、互いに対向する方向に引き出されるように配置され、二つの引き出し部は、前記モールドケースの略中心部に対して点対象に配置するような構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源供給装置に関し、特に、装置に電源を供給するための電源ケーブルを電源供給装置自体に巻き取って収納する電源ケーブル収納機構付のACアダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯型コンピュータ装置にはACアダプタが付属し、利用者はACアダプタを装置とともに携帯し、移動先でACアダプタから電源供給を受けて装置を利用することがあった。ACアダプタは、ACプラグ側ケーブルとDCプラグ側ケーブルの二種類のケーブルがACアダプタ本体に接続される構造を有している。利用者には、当然ながら、ACアダプタの携帯時の収納性向上やケーブルをきれいに収納整理して携帯したいというニーズがある。
【0003】
特許文献1には、このニーズに対応した技術が開示されている。特許文献1に記載の技術は、ACアダプタ本体に電源ケーブルの収納スペースを設け、電源ケーブルを収納することができる電源ケーブル収納機能付きACアダプタに関するものである。詳細には、ACアダプタに、二つのケーブルのそれぞれに対応する独立した二つの巻取り機構を設けたことで、巻取り時の二つのケーブルの絡みをなくし、二つのケーブルをそれぞれ自在に巻き取れるようにする技術である。これによって、収納性向上のみならず、ケーブルの長さ調節の簡便性向上や二つのケーブルが絡まることによるケーブルの破損防止という効果を奏功する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−159445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、巻取り時の二つのケーブルの絡みによることが原因となるケーブル破損を抑制することは可能であるが、ケーブルの巻き取り時や巻き取ったケーブルを引き出す時にケーブルに加わる負荷によるケーブル破損を抑制することはできない。特にケーブルコネクタの根元部分は、巻き取られたケーブルが引き出される時に、引っ張られるように回転負荷が加わりやすく、破損しやすいという問題がある。また、特許文献1に記載の技術では、巻取り機構が複雑になるので、ACアダプタがコスト高になることや、コンパクト化することが難しい等の問題もあった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、二つのケーブルの収納性向上と収納状態からケーブルを引き出して用いる時のケーブル破損の抑制が可能な電源ケーブル収納機構付のACアダプタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1のケーブル収納型電力供給装置は、交流電源を直流電源に変換するAC/DC変換部と、ACプラグを有する第1のケーブルと、直流電源を供給するためのDCプラグを有する第2のケーブルと、前記AC/DC変換部を絶縁保護するモールドケースよりなる電源供給装置において、前記モールドケースは、前記第1のケーブルと前記第2のケーブルを巻きつけ可能な側周面と前記側周面に直交し互いに対向する第1の面と第2の面を備え、前記第1のケーブルは前記側周面の一部と前記第1の面の一部を切り欠いた部分から、前記第2のケーブルは前記側周面の一部と前記第2の面の一部を切り欠いた部分から、各々の前記ケーブルが互いに対向する方向に引き出されるように前記AC/DC変換部に接続され、前記切り欠いた部分の各々は、三つの面から構成され、前記第1のケーブルの引き出し部と前記第2のケーブルの引き出し部は、前記モールドケースの略中心部に対して点対象に配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の第2のケーブル収納型電力供給装置は、第1のケーブル収納型電力供給装置に対して、前記モールドケースは、さらに、前記第1の面と前記第2の面を延伸するように形成された鍔部を備え、前記鍔部には、前記第1の面の一部を切り欠いた部分と前記第2の面の一部を切り欠いた部分にそれぞれ対応する部分に切り欠き部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の第3のケーブル収納型電力供給装置は、第1または第2のケーブル収納型電力供給装置に対して、前記第1のケーブルの引き出し部と前記第2のケーブルの引き出し部のうち少なくとも一つは、前記AC/DC変換部と前記ケーブルとが脱着可能となるコネクタ構造であることを特徴とする。
【0010】
本発明の第4のケーブル収納型電力供給装置は、第2または第3のケーブル収納型電力供給装置に対して、前記モールドケースは、前記鍔部と略直方体形状の本体からなり、前記側周面は、前記略直方体形状の本体の最短辺部を有す側面部から構成される外周面であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、AC/DC変換部から引き出される二つのケーブルの二つの根元部分を、AC/DC変換部を絶縁保護するモールドケースのケーブル巻きつけ部である側周面に異なる二つのケーブルが重なって巻き取られ難い位置に、かつ、各々のケーブルが互いに根元部分から対向する方向に引き出されるように、前記モールドケースの略中心部に対して点対象な位置に配置するようにしたことで、二つのケーブルの収納性を高め、ケーブルの根元部分の破損を抑制可能なケーブル収納型電力供給装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態のケーブル収納型電力供給装置の上面、底面、および側面図である。
【図2】本発明の実施の形態のケーブル収納型電力供給装置のケーブル巻取り機構を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本発明が利用される一例のケーブル収納型電力供給装置1を示す図である。図1は、左から左側面図、上面図、右側面図、底面図を表している。
【0014】
ケーブル収納型電力供給装置1は、内部にAC/DC変換部を有し、それを絶縁保護する略直方体形状部分を備えるプラスチックモールドケース2、プラスチックモールドケース2の上面部と底面部が延伸したように形成された鍔部3、ACプラグを有すACケーブル4、DCプラグを有すDCケーブル5、前記ケーブル4と5が巻きつけられる側周面6とから構成されている。プラスチックモールドケース2は、例えば上面側と底面側の二つのピースに分かれていても良い。
【0015】
鍔部3の突出寸法、すなわち、側周面6との高さの差は、DCケーブル5とACケーブル4を側周面6に巻きつけたときの巻き付け量に応じて、適宜、決めれば良い。つまり、ケーブルを何周も巻きつけるのであれば、突出寸法を大きくし、巻きつけたケーブルが鍔部3を乗り越えないようするのが好適である。
【0016】
鍔部3は、巻きつけたケーブルが上面側や底面側から見て露出した状態になること、側周面6へのケーブル巻きつけ時の多少の利用者の気遣い等を許容できるなら、必ずしも設けることはなく、本願発明の構成要件から外しても良い。
【0017】
図2は、ケーブル収納型電力供給装置1のケーブル巻取り機構とケーブルの根元部分の関係性を説明するための図で、図1から鍔部3を除去した状態を示している。この鍔部3はプラスチックモールドケース2と一体に成型されていても良いし、鍔部3がプラスチックモールドケース2の側周面6を有する主体部分と図2のように分離できる構造をとっても良い。
【0018】
図2の7はDCケーブル5の根元部分を表し、8はACケーブル4の根元部分を表している。二つの根元部分7と8は、プラスチックモールドケース2からケーブルが引き出される部分である。DCケーブル5とACケーブル4は根元部分を通じてプラスチックケース2の内部でAC/DC変換部にそれぞれ電気的に接続されている。あるいは、根元部分7と根元部分8は、それぞれ脱着可能なコネクタ構造であって、このコネクタ構造によって電気的接続がされたり、切られたりする構造であっても良い。コネクタ構造を採用すると、ケーブル断線の場合、ケーブル交換が簡単などのメリットがある。
【0019】
図2の71、72、73は、根元部分7を配置するために、プラスチックモールドケース2の一部を切り欠いたように形成した切り欠き部を構成する三つの面を示している。同様に、81、82、83は、根元部分8を配置するために、プラスチックモールドケース2の一部を切り欠いたように形成して設けた切り欠き部を構成する三つの面を示している。
【0020】
側周面6から面71までの切り欠き量は、DCケーブル5の根元部分7のケーブル引き出し方向の高さに応じて決まる。また、側周面6から面73までの切り欠き量は、DCケーブル5の根元部分7の厚さに応じて決まる。同様に、鍔部3を除去したプラスチックモールドケース2の上面から面72までの切り欠き量は、DCケーブル5の根元部分7のもう一方の厚さに応じて決まる。
【0021】
根元部分7のケーブル引き出し方向の高さが大きければ、その分、切り欠き量は大きくとる必要がある。こうすれば、DCケーブル5を側周面6に巻き取る際に、ケーブルの破損が起こりやすい根元部分7あるいは根元部に近い部分への曲げ応力を減少させられるからである。
【0022】
側周面6からの面73までの切り欠き量および前記上面から面72までの切り欠き量は、根元部分7が、巻き取り面である側周面6より突出しないように、あるいは、鍔部3と干渉しないようにするように切り欠けば良い。
【0023】
以上のように根元部7を構成することにより、根元部7から引き出されたDCケーブル5は、図2の上面図の右方向に巻き込まれるので、根元付近の剛性が高くて曲げ難い部分、すなわち、曲げると破損が起こりやすい部分の曲げを極力回避するように側周面6に巻き取ることが可能になる。曲げると破損が起こりやすい部分の曲げを極力回避するように側周面6に巻き取るので、ケーブルを引き出す時の破損の抑制も可能となる。ケーブルの破損の起こりやすい部分の曲率を大きくするように巻き取ったり、そのケーブルをまっすぐに伸ばしたりを繰り返せば、当然に、破損が起こりやすい部分の破損可能性は高まるからである。
【0024】
また、根元部7の剛性が高くて曲げ難い部分が、引き出し方向に対して側周面6から突出しないように配置されるので、利用者によってケーブル収納型電力供給装置1が壁と机に鋏まれるように設置されたような場合であっても、根元部7に引き出し方向とは逆に押し込む方向の力が加わり難いので、このような場合の根元部7の破損抑制が可能という効果もある。
【0025】
根元部7の構成について述べたが、ACケーブル4の根元部分8と根元部分8を配置するため切り欠き部を構成する三つの面、81、82、83でも同様である。一般には、ACケーブル4の根元部分8の方が大きいので切り欠き部分はDCケーブル5の根元部分7より大きく取る必要がある。
【0026】
次に、DCケーブル5の根元部分7とACケーブル4の根元部分8の配置について詳説する。DCケーブル5の根元部分7とACケーブル4の根元部分8は、DCケーブル5とACケーブル4の側周面6への巻取りを解き、引き出した時に、DCケーブル5とACケーブル4の引き出し方向が、プラスチックモールドケース2を挟んで互いに対向するように配置されている。
【0027】
これは、ケーブルを引き出してケーブル収納型電力供給装置1を利用する際に、ケーブルが直線状になり、ケーブルの破損が起こりやすい根元部分7と根元部分8が曲がった状態で利用される可能性を極力小さくできるからである。
【0028】
また、根元部分7と根元部分8は図2で示されるように、略直方体形状の対角に、かつ、上面側と底面側に配置されている。図2の上面図において、左下隅に根元部7が、右上隅に根元部8が配置されている。そして、根元部7は上面側に近い側に、根元部8は底面側に近い側に配置されている。
【0029】
根元部7と根元部8を極力離すように配置することで、プラスチックモールドケース2の内部のAC/DC変換部の配置スペースを効率よく確保することが可能となり、AC-DC変換部の配置自由度も増すことになる。つまり、ケーブル収納型電力供給装置1の全体の容積効率が良くなるので、よりコンパクトなケーブル収納型電力供給装置1を実現できる。
【0030】
同時に、根元部7と根元部8をそれぞれ上面側と底面側に配置したことで、DCケーブル5とACケーブル4を側周面6に巻き取る際に、二つのケーブルが極力重ならないように巻き取ることができる。図2の右側面図に示すとおり、ACケーブル4は底面側に根元部8が配置されているので、右側に巻きつけられ、DCケーブル5は、上面側に根元部7が配置されるので、左側に巻きつけられ、それぞれのケーブルの重なりを回避できている。
【0031】
また、上面部と底面部を含めて切り欠いたような位置に根元部7と根元部8を配置したことにより、根元部7と根元部8を脱着可能なコネクタ構造とした場合、利用者がコネクタを抜差しする際に、指でケーブル根元部をつまむためのスペースを有効に確保できるというメリットがある。切り欠き部が3面で構成されていて、上面側および底面側が開放部になるので、抜差しが容易になるためである。
【0032】
なお、図1は鍔部3が付属した状態を示しているので、当然ながら根元部7と根元部8を脱着可能なコネクタ構造とした場合、鍔部3は、ケーブル根元部7とケーブル根元部8の切り欠き部に対応した部分を切り欠くように形成されている。
【0033】
また、ここでは、図1および図2で示すように、ケーブル収納型電力供給装置1の主体部分は、略直方体形状部分を備えるプラスチックモールドケース2として説明をしたが、形状は略直方体形状に限定はされない。例えば、円筒状の円筒側周面にケーブル巻取り機構を設け、円筒上面と底面に鍔部を設けても良い。二つの根元部分を円筒部の中心部から互いに点対象になるように、側周面と上面、側周面と底面を各々切り欠くようにして三面で構成される切り欠き部を設けるように配置すれば良い。
【0034】
以上のように、AC/DC変換部を絶縁保護するモールドケースよりなる電源供給装置において、ACケーブルとDCケーブルが、ケーブル巻きつけ部であるモールドケースの側周面の一部と上面の一部を切り欠いた部分、および、前記側周面の一部と底面の一部を切り欠いた部分から、互いに対向する方向に引き出されるように配置され、二つの引き出し部は、前記モールドケースの略中心部に対して点対象に配置するような構成としたことで、二つのケーブルの収納性向上と収納状態からケーブルを引き出して用いる時のケーブル破損の抑制が可能なコンパクトな電源ケーブル収納機構付のACアダプタを提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
1 ケーブル収納型電力供給装置
2 プラスチックモールドケース
3 鍔部
4 ACケーブル
5 DCケーブル
6 側周面
7 DCケーブルの根元部分
8 ACケーブルの根元部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源を直流電源に変換するAC/DC変換部と、ACプラグを有する第1のケーブルと、直流電源を供給するためのDCプラグを有する第2のケーブルと、前記AC/DC変換部を絶縁保護するモールドケースよりなる電源供給装置において、
前記モールドケースは、前記第1のケーブルと前記第2のケーブルを巻きつけ可能な側周面と前記側周面に直交し互いに対向する第1の面と第2の面を備え、
前記第1のケーブルは前記側周面の一部と前記第1の面の一部を切り欠いた部分から、前記第2のケーブルは前記側周面の一部と前記第2の面の一部を切り欠いた部分から、各々の前記ケーブルが互いに対向する方向に引き出されるように前記AC/DC変換部に接続され、
前記切り欠いた部分の各々は、三つの面から構成され、
前記第1のケーブルの引き出し部と前記第2のケーブルの引き出し部は、前記モールドケースの略中心部に対して点対象に配置されていることを特徴とするケーブル収納型電力供給装置。
【請求項2】
前記モールドケースは、さらに、前記第1の面と前記第2の面を延伸するように形成された鍔部を備え、
前記鍔部には、前記第1の面の一部を切り欠いた部分と前記第2の面の一部を切り欠いた部分にそれぞれ対応する部分に切り欠き部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のケーブル収納型電力供給装置。
【請求項3】
前記第1のケーブルの引き出し部と前記第2のケーブルの引き出し部のうち少なくとも一つは、前記AC/DC変換部と前記ケーブルとが脱着可能となるコネクタ構造であることを特徴とする請求項1または2に記載のケーブル収納型電力供給装置。
【請求項4】
前記モールドケースは、前記鍔部と略直方体形状の本体からなり、
前記側周面は、前記略直方体形状の本体の最短辺部を有す側面部から構成される外周面であることを特徴とする請求項2または3に記載のケーブル収納型電力供給装置。
【請求項5】
前記鍔部の少なくとも一つは、前記モールドケースの前記側周面を有す本体部と、分離可能な構造であることを特徴とする請求項2乃至4に記載のケーブル収納型電力供給装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−199914(P2011−199914A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60272(P2010−60272)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(302069930)NECパーソナルプロダクツ株式会社 (738)
【Fターム(参考)】