説明

ケーブル外観のうねり測定装置

【課題】ケーブル外観のうねりを数値化して判断基準の明確化を図ることが可能な構成を含むケーブル外観のうねり測定装置を提供する。
【解決手段】ケーブル外観のうねり測定装置1は、ケーブル製造ラインにより製造されたケーブルから所定の長さで検査用サンプルを採取して、この検査用サンプルのケーブル2の側面に生じるうねりを撮影するとともに測定して数値化するための画像処理装置3と、ケーブル2を移動させるケーブル移動装置4とを備えて構成されている。ケーブル移動装置4は、台10と、一対の直動案内部材11と、第一ケーブル固定部12と、第二ケーブル固定部13と、ギヤードモータ14と、錘15と、複数の滑車16と、カメラ支持部17、18と、二つの光源19とを備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁線心の撚り合わせによって生じるケーブルのうねりを測定するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ケーブル製造工程におけるシース表面の凹凸状欠陥を検出するため画像処理装置を用いた欠陥検出装置が開示されている。また、下記特許文献2には、ケーブルに対して相対的に移動するCCDカメラを有し、シース表面に付着した異物をモニタ上で発見する検査装置が開示されている。
【0003】
ところで、複数本の絶縁線心を撚り合わせ、この外側にシースを押出被覆してなるケーブルは、従来より様々な箇所で使用されている。上記構成のケーブルは、絶縁線心を撚り合わせることによって、ケーブル外観にうねりが生じるものがある(ケーブル側面を構成するシースに撚りナミが生じる)。
【0004】
うねりのあるケーブルの合否判断に関しては、下記特許文献1、2などのように画像処理装置を用いて行うようなことはなく、もっぱらケーブル製造後において、検査員が外観を目視したり触って感触を確かめたりして合否を判断するようになっている。
【特許文献1】特公平6−56366号公報
【特許文献2】特開平8−223727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ケーブルの外観を目視したりする官能判断における判断基準としては、限度サンプルを用いることが一般的である。つまり、ケーブル外観のうねりは、限度サンプルとケーブルとを見比べて合否判断をするようになっている。従って、検査員の熟練度合いなど個人差がでてしまい、判断結果にバラツキが生じてしまうという問題点を有している。ケーブル外観のうねりは、ケーブルサイズや絶縁線心の本数によっても違いがあるため、限度サンプルだけでは判断基準が不明確であると言える。従って、この点も問題点になっている。
【0006】
尚、特許文献1、2のような画像処理装置を有する装置構成にしてケーブル外観のうねりを測定し、この測定結果に基づいて判断基準を明確にすることが対策案として考えられる。しかしながら本願発明者は、単に画像処理装置を用いるだけではケーブル外観のうねりを良好に検出することが困難であると考えている。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、ケーブル外観のうねりを数値化して判断基準の明確化を図ることが可能な構成を含むケーブル外観のうねり測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のケーブル外観のうねり測定装置は、ケーブルの側面に生じるうねりを撮影し測定して数値化するための画像処理装置と、該画像処理装置を構成する撮影手段の前を通過するように前記ケーブルを移動させるケーブル移動装置と、を含み、該ケーブル移動装置は、所定の長さを有する検査用の前記ケーブルの一端側を着脱自在に固定する第一ケーブル固定部と、前記ケーブルの他端側を着脱自在に固定する第二ケーブル固定部と、前記ケーブルの一端前方へ向けて前記第一ケーブル固定部又はこの近傍を所定の速度で引っ張り移動させる引っ張り手段と、前記ケーブルの他端前方へ向けて前記第二ケーブル固定部又はこの近傍を引っ張り前記ケーブルに張力を付加する張力付加手段と、前記第一ケーブル固定部及び前記第二ケーブル固定部を直線移動可能に案内する直動案内部材と、前記ケーブルを間に挟むように前記撮影手段の反対側に配置され且つ前記ケーブルの側面に光を当てて前記撮影手段により撮影する光と影の境目を生じさせる光源と、を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の本発明のケーブル外観のうねり測定装置は、請求項1に記載のケーブル外観のうねり測定装置において、前記第一ケーブル固定部及び前記第二ケーブル固定部は、前記ケーブルの軸を中心に回転方向の角度を変えて前記ケーブルを固定することが可能なケーブル固定機構を有することを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の本発明のケーブル外観のうねり測定装置は、請求項1又は請求項2に記載のケーブル外観のうねり測定装置において、前記撮影手段と前記光源との組み合わせを二つ備え、第一の撮影手段及び光源と、第二の撮影手段及び光源とを直交方向に配置することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された本発明によれば、画像処理装置と、構成に特徴のあるケーブル移動装置とを組み合わせることによって、ケーブル外観のうねりを数値化することができる。これにより、ケーブル外観のうねりに対する判断基準を従来の官能判断から数値判断にすることができ、結果、判断基準の明確化を図ることができるという効果を奏する。本発明によれば、ケーブル外観のうねりを数値化することにより、ケーブルの円滑度の評価に寄与することができるという効果を奏する。
【0012】
請求項2に記載された本発明によれば、撚り合わせにより生じるうねりは1ピッチで元に戻ることから、ケーブル側面の様々な位置において測定をすることにより、うねりの測定精度を向上させることができるという効果を奏する。
【0013】
請求項3に記載された本発明によれば、同時に多くの測定をすることができるという効果を奏する。これにより、例えば測定・検査時間の短縮化を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明のケーブル外観のうねり測定装置の一実施の形態を示す模式的な構成図である。また、図2は第一ケーブル固定部及び第二ケーブル固定部の模式図、図3はケーブル外観のうねりを検出する位置の説明図、図4はケーブル外観のうねりを検出する際のエッジ検出点に関する説明図、図5はケーブル外観のうねりを検出し数値化する際の説明図、図6は絶縁線心を撚り合わせた時の撚りピッチに関する説明図である。
【0015】
図1において、引用符号1は本発明のケーブル外観のうねり測定装置を示している。このケーブル外観のうねり測定装置1は、ケーブルの円滑度を評価する際に用いる装置として設けられている。ケーブル外観のうねり測定装置1は、ケーブル製造ライン(図示省略)とは別に設置されている。
【0016】
ケーブル外観のうねり測定装置1は、ケーブル製造ラインにより製造されたケーブルから所定の長さで検査用サンプルを採取して、この検査用サンプルのケーブル2の側面に生じるうねりを撮影するとともに測定して数値化するための画像処理装置3と、上記ケーブル2を移動させるケーブル移動装置4とを備えて構成されている。ケーブル外観のうねり測定装置1は、画像処理装置3と、構成に特徴のあるケーブル移動装置4とを組み合わせることによって、ケーブル外観のうねりを数値化することができるようになっている。以下、各構成について説明する。
【0017】
上記画像処理装置3は、撮影手段としてのカメラ5と、画像処理装置本体6と、表示装置7とを備えて構成されている。カメラ5は、信号線8によって画像処理装置本体6に接続されている。また、表示装置7も信号線9によって画像処理装置本体6に接続されている。
【0018】
カメラ5は、本形態において、上面カメラ5a及び側面カメラ5bの二つを用いるようになっている(数は一例であるものとする)。ここで、図1中の矢印Pを上下方向、矢印Qを左右方向、矢印Rを前後方向と定義すると、上面カメラ5aは、ケーブル2の上に配置されてこの下にあるケーブル2を撮影することができるようになっている。また、側面カメラ5bは、ケーブル2の左に配置されてこの右にあるケーブル2を撮影することができるようになっている。上面カメラ5a及び側面カメラ5bは、この位置を調整する以外、移動しないようになっている(ケーブル移動装置4の構成によってケーブル2の方が移動する)。
【0019】
画像処理装置本体6は、特に図示しないが、CPUやDSPや記憶部等を有している。画像処理装置本体6は、カメラ5により撮影されたケーブル2の側面のうねりを測定して数値化することができるように構成されている(詳細は後述する)。表示装置7は、画像処理装置本体6にて数値化されたうねり値等が表示されるようになっている。本形態における画像処理装置3は、市販されているものを用いて(株式会社キーエンスの超高速デジタル画像センサCV−3000シリーズ)、ケーブル2の側面のうねりを測定し数値化するようになっている。
【0020】
上記ケーブル移動装置4は、台10と、一対の直動案内部材11と、第一ケーブル固定部12と、第二ケーブル固定部13と、ギヤードモータ14と、錘15と、複数の滑車16と、カメラ支持部17、18と、二つの光源19とを備えて構成されている。
【0021】
台10は、平坦な上面20を有している。この上面20には、一対の直動案内部材11が固定されている。一対の直動案内部材11は、上面20における前後方向の中心軸上に配置されている。一対の直動案内部材11は、台10の前端及び後端から所定の長さで突出する一対のレール部21と、このレール部21に形成される軌道溝に設けられてスライドするスライドベース22とを有している。各スライドベース22には、第一ケーブル固定部12、第二ケーブル固定部13がそれぞれ固定されている。各スライドベース22は、矢印S方向に直線移動をすることができるようになっている。
【0022】
第一ケーブル固定部12は、ケーブル2の一端23側を着脱自在に固定する部分として形成されている。また、第二ケーブル固定部13は、ケーブル2の他端24側を着脱自在に固定する部分として形成されている。第一ケーブル固定部12及び第二ケーブル固定部13は、ケーブル2の軸を中心に回転方向の角度を変えてケーブル2を固定することができるように形成されている。
【0023】
本形態においては、図2に示す如く、蝶ネジ25(ケーブル固定機構)が設けられており、蝶ネジ25を締めてケーブル2の固定をすることができるように、また、緩めることによってケーブル2の取り外しや上記角度を変えることができるようになっている。ケーブル2には印26が付けられており、この印26を第一ケーブル固定部12、第二ケーブル固定部13の角度印27に合わせることによって、ケーブル2を例えば0度位置、30度位置、60度位置に位置決めすることができるようになっている(本形態においてはカメラ5が二つであるため例えば30度刻みで上記角度位置を設定している。例えばカメラ5が一つの場合は、90度位置、120度位置、150度位置を更に設定するものとする)。
【0024】
スライドベース22に固定された第一ケーブル固定部12は、ギヤードモータ14の駆動によって、ケーブル2の一端23の前方へ移動するようになっている。具体的には、第一ケーブル固定部12側のスライドベース22に紐部材28が設けられ、この紐部材28が滑車16を介してギヤードモータ14のモータ軸29に巻き付くことにより移動するようになっている。第一ケーブル固定部12を固定したスライドベース22は、所定の速度で引っ張られて移動するようになっている(例えば本形態においては約1mm/sで設定されている)。ギヤードモータ14は、本形態において、台10の前方、且つ、上面19よりも下方に配置されている(配置は一例であるものとする)。
【0025】
第二ケーブル固定部13は、スライドベース22に固定された状態で錘15によってケーブル2の他端24の前方へ向けて(装置後方へ向けて)移動するような作用を受けている。錘15は張力付加手段であって、ケーブル2は引っ張られることにより一定の張力が付加されるようになっている(例えばケーブル2のシースがのびない程度の張力を付加する)。錘15は、紐部材30の一端に取り付けられている。紐部材30の他端は、第二ケーブル固定部13を固定したスライドベース22に取り付けられている。錘15は、滑車16から垂れ下がるように配置されている。錘15は、ギヤードモータ14が作動してスライドベース22がスライドすると、これに伴って上方へと移動するようになっている。
【0026】
カメラ支持部17、18は、台10の上面20及び右側面に固定されている。カメラ支持部17、18には、上面カメラ5a、側面カメラ5bが固定されている。
【0027】
二つの光源19は、ケーブル2を間に挟むように上面カメラ5a、側面カメラ5bの反対側にそれぞれ配置されている。二つの光源19は、ケーブル2の側面に光を当てて光と影の境目を生じさせることができるようになっている(図4参照)。光と影の境目の部分は、上面カメラ5a、側面カメラ5bにより撮影するための部分となっている。
【0028】
図3において、上面カメラ5a及び側面カメラ5bは、ケーブル2の側面に対し図示の位置31に生じるうねりを撮影することができるように配置されている。うねりの検出は、図4に示す如く、光源19によって生じる光と影の境目において複数のエッジ検出点32を捉えるような設定になっている(画像処理装置本体6において設定されている。白と黒を判別する閾値を決め、明から暗になる境目で複数のエッジ検出点32を捉える)。尚、カメラ5の性能や付随するレンズによって異なるが、撮影した1画面毎に数百点に及ぶエッジ(エッジ検出点32)を検出するようになっている。
【0029】
数百点に及ぶエッジを検出した後は、図5に示す如く、全ての点の中間を通るような仮想直線(平均直線)33を自動的に引き、この仮想直線33から各エッジ検出点32がどれくらい離れているか(どれくらいうねっているか)を計測するようになっている。本形態においては、図6に示す撚りピッチを1ピッチとすると、ケーブル2を移動させながら1ピッチ300データ以上取るようになっており(測定回数は一例であるものとする)、うねりの最大値及び最小値をもってケーブル2のうねり値が得られるようになっている。
【0030】
以上、図1ないし図6を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、画像処理装置3と、構成に特徴のあるケーブル移動装置4とを組み合わせることにより、ケーブル外観のうねりを数値化することができる(本発明は、単に画像処理装置3を用いるだけでなく、ケーブル外観のうねりを良好に検出し数値化するために必要なケーブル移動装置4を含んでいる)。これにより、ケーブル外観のうねりに対する判断基準を従来の官能判断から数値判断にすることができ、結果、判断基準の明確化を図ることができるという効果を奏する。本発明によれば、ケーブル外観のうねりを数値化することにより、ケーブルの円滑度の評価に寄与することができるという効果を奏する。
【0031】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のケーブル外観のうねり測定装置の一実施の形態を示す模式的な構成図である。
【図2】第一ケーブル固定部及び第二ケーブル固定部の模式図である。
【図3】ケーブル外観のうねりを検出する位置の説明図である。
【図4】ケーブル外観のうねりを検出する際のエッジ検出点に関する説明図であり、(a)はケーブルと光源の図、(b)は(a)の要部を模式的に拡大した図である。
【図5】ケーブル外観のうねりを検出し数値化する際の説明図であり、(a)はケーブルの図、(b)はエッジ検出点と仮想直線の図、(c)はうねり値算出に関する図である。
【図6】絶縁線心を撚り合わせた時の撚りピッチに関する説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ケーブル外観のうねり測定装置
2 ケーブル
3 画像処理装置
4 ケーブル移動装置
5 カメラ(撮影手段)
5a 上面カメラ(第一の撮影手段)
5b 側面カメラ(第二の撮影手段)
6 画像処理装置本体
7 表示装置
8、9 信号線
10 台
11 直動案内部材
12 第一ケーブル固定部
13 第二ケーブル固定部
14 ギヤードモータ(引っ張り手段)
15 錘(張力付加手段)
16 滑車
17、18 カメラ支持部
19 光源
20 上面
21 レール部
22 スライドベース
23 一端
24 他端
25 蝶ネジ(ケーブル固定機構)
26 印
27 角度印
28、30 紐部材
29 モータ軸
32 エッジ検出点
33 仮想直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの側面に生じるうねりを撮影し測定して数値化するための画像処理装置と、
該画像処理装置を構成する撮影手段の前を通過するように前記ケーブルを移動させるケーブル移動装置と、
を含み、
該ケーブル移動装置は、所定の長さを有する検査用の前記ケーブルの一端側を着脱自在に固定する第一ケーブル固定部と、
前記ケーブルの他端側を着脱自在に固定する第二ケーブル固定部と、
前記ケーブルの一端前方へ向けて前記第一ケーブル固定部又はこの近傍を所定の速度で引っ張り移動させる引っ張り手段と、
前記ケーブルの他端前方へ向けて前記第二ケーブル固定部又はこの近傍を引っ張り前記ケーブルに張力を付加する張力付加手段と、
前記第一ケーブル固定部及び前記第二ケーブル固定部を直線移動可能に案内する直動案内部材と、
前記ケーブルを間に挟むように前記撮影手段の反対側に配置され且つ前記ケーブルの側面に光を当てて前記撮影手段により撮影する光と影の境目を生じさせる光源と、
を備える
ことを特徴とするケーブル外観のうねり測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブル外観のうねり測定装置において、
前記第一ケーブル固定部及び前記第二ケーブル固定部は、前記ケーブルの軸を中心に回転方向の角度を変えて前記ケーブルを固定することが可能なケーブル固定機構を有する
ことを特徴とするケーブル外観のうねり測定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のケーブル外観のうねり測定装置において、
前記撮影手段と前記光源との組み合わせを二つ備え、第一の撮影手段及び光源と、第二の撮影手段及び光源とを直交方向に配置する
ことを特徴とするケーブル外観のうねり測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−281751(P2009−281751A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131442(P2008−131442)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】