ゲル状口腔用組成物及びその製造方法
【課題】経時保型性及び相液分離安定性に優れ、かつ口腔内での良好な保持性と口腔内での広がりの良さとを兼ね備えたゲル状口腔用組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】水分量が15〜50質量%であり、
(a)合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム、
(b)カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナンから選ばれる水溶性高分子物質、
(c)アニオン性界面活性剤
を含有することを特徴とするゲル状口腔用組成物、及び(a)成分の水溶液と(b)の水溶液とを混合し、有機無機複合増粘体を調製した後、水分量を15〜50質量%に調整し、(c)成分を添加する上記ゲル状口腔用組成物の製造方法。
【解決手段】水分量が15〜50質量%であり、
(a)合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム、
(b)カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナンから選ばれる水溶性高分子物質、
(c)アニオン性界面活性剤
を含有することを特徴とするゲル状口腔用組成物、及び(a)成分の水溶液と(b)の水溶液とを混合し、有機無機複合増粘体を調製した後、水分量を15〜50質量%に調整し、(c)成分を添加する上記ゲル状口腔用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時保型性及び相液分離安定性に優れ、かつ口腔内でブラッシングした際に口腔用組成物が口から垂れることのない良好な口腔内での保持性と、口腔内に良好に口腔用組成物が広がるという広がりの良さといった相反する機能が両立し、口腔内で満足な清掃効果を発揮できるゲル状口腔用組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯磨剤等の口腔用組成物は、日常的な口腔ケア衛生用品として用いられるだけでなく、う蝕、歯周病の2大口腔疾患の予防としても有用であることが知られている。また、口腔用組成物においては、口腔清掃を行う際に歯ブラシ等の清掃用具に塗布する際、歯磨剤等として保型性を有することや相液分離を生じないことは必須条件であり、かつ、口腔内において十分な清掃効果を発揮させるためには、口腔内からの液垂れを起こさないための良好な保持性を有すると共に、口腔清掃という短時間の行為において口腔内に良好に口腔用組成物が広がるという口腔内での広がりを有することが有用であると言われている。
【0003】
歯ブラシ等の清掃用具に塗布する際の保型性を向上する手段としては、従来から合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウムや合成ヘクトライトのような粘土剤や、カルボキシビニルポリマーやポリアクリル酸ナトリウムのような合成水溶性高分子物質を口腔用組成物に配合することが有効な手段となっており、口腔用組成物に配合されるこれらの成分の中で粘土剤はより高い保型性を有することが知られている。
【0004】
粘土剤の高い保型性を活用し製剤の活性を向上させる手段としては、合成ヘクトライトとシリカや水和アルミナ、保湿剤とを配合したペルオキシジホスフェート配合練歯磨組成物(特許文献1参照)、粘土剤とカゼインプロテインとを配合したバイオ活性成分の搬送のためのカゼイン組成体(特許文献2参照)、親水性粘土剤とフィチン酸化合物とを配合した研磨剤を含まない歯磨剤組成物(特許文献3参照)、親水性粘土剤と変性セルロースポリマー、カルボキシビニルポリマー及び天然ゴム由来アニオン性ポリマー類とを配合した歯磨剤組成物(特許文献4参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平3−36803号公報
【特許文献2】特表2002−521415号公報
【特許文献3】特表2009−513695号公報
【特許文献4】特表2009−519235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、いずれの技術においても、経時的な保型性の確保が難しかったり、使用時に口から垂れて口腔内で満足に保持できないことがあり、ましてや口腔内での保持性と口腔内での広がりの良さという相反する機能を同時に満足に発揮させることは困難であった。また、これらの技術は経時で相液分離が生じるなどの問題もあり、口腔内での清掃効果が十分とは言い難く未だ改善の余地があった。口腔用組成物においては、口腔内清掃効果のより向上が望まれるが、従来技術では、経時保型性及び相液分離安定性に優れ、かつ口腔内での保持性と口腔内での広がりの良さとを両立させ、これら特性を全て満たす口腔用組成物を得ることは、難しかった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、経時保型性及び相液分離安定性に優れ、かつ口腔内での良好な保持性と口腔内での広がりの良さとを兼ね備えたゲル状口腔用組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム(a)と、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナンから選ばれる1種以上の水溶性高分子物質(b)とを、水分量15〜50質量%において併用し、特に上記成分(a)、(b)における比率(b)/(a)を質量比として0.2〜20とすると共に、アニオン性界面活性剤(c)を含有させることにより、経時保型性と相液分離安定性とを満たし、かつ口腔内でブラッシングした際に口腔用組成物が口から垂れることのない良好な口腔内での保持性と、口腔内に良好に口腔用組成物が広がるという口腔内での広がりの良さとを両立した、使用性の良いゲル状口腔用組成物が得られることを知見した。
【0009】
即ち、従来から(a)、(b)、(c)成分自体は口腔用組成物用の成分として公知であり、練歯磨等の口腔用組成物に粘土剤を配合すると保型性等を改善できることは知られている。しかし、一般に水溶性高分子物質を含有する練歯磨等のペースト状の口腔用組成物は、降伏値をもった擬塑性流体であり、外力がかかっていない状態ではある種の固体のような性質を示すが、外力が大きくかかると内部応力による結合が破壊され液体の性質へと変化するもので、このため、通常は、保型性や口腔内保持性を改善し降伏値が高くなると口腔内での広がりの良さを損なう結果となってしまい、これら相反する特性を両立させることは難しかった。更に、水分量が多いゲル状製剤では、口腔内へ広がり易いものの保型性を保つことはより難しく、これら特性の両立は更に困難であった。
これに対して、本発明者らは、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナンから選ばれる1種以上の水溶性高分子物質の水溶液と、合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウムの水溶液とを混合すること、特にこの場合、前記水溶性高分子物質と合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウムとの割合を適切にすることにより、高いチキソトロピー性を有する有機無機複合体増粘体を与え、水分量15〜50質量%で更にこれに加えてアニオン性界面活性剤(c)を配合することで、上記効果を与えるゲル状組成物が得られることを見出したもので、このことは本発明者らによる新知見である。
【0010】
更に詳述すると、後述する実験例に示した通り、上記合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウムは、低濃度水溶液では実質的にチキソトロピー性を示さず、一方、上記水溶性高分子物質の水溶液はある程度のチキソトロピー性を示すが、その値は小さいものであるにも拘わらず、上記水溶性高分子物質の水溶液と合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウムの水溶液とを併用混合した水溶液のチキソトロピー性は、これら両成分の水溶液が互いに相乗的に作用し、上記水溶性高分子物質水溶液のチキソトロピー性の1.1倍以上、特にカルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液、ヒドロキシエチルセルロース水溶液、キサンタンガム水溶液の場合は約2倍以上のチキソトロピー性を与えること、従って、このようにして得られる有機無機複合増粘体がゲル状口腔用組成物の増粘基材として有効であり、上記効果を与える上で効果的に作用することを知見した。またこの場合、上記チキソトロピー性の向上効果は、上記水溶性高分子物質の水溶液及び合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウムの水溶液を使用、混合することによって得られるものであり、これら成分を互いに水溶液でない状態で混合しても、あるいは混合したものを水に溶解し、水溶液としても上記のようなチキソトロピー性向上効果は得られないものである。
【0011】
従って、本発明は下記のゲル状口腔用組成物及びその製造方法を提供する。
請求項1:
水分量が15〜50質量%であり、
(a)合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム、
(b)カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナンから選ばれる1種以上の水溶性高分子物質、
(c)アニオン性界面活性剤
を含有することを特徴とするゲル状口腔用組成物。
請求項2:
(a)成分と(b)成分とを(b)/(a)の比率が質量比として0.4〜7となるように含有してなる請求項1記載のゲル状口腔用組成物。
請求項3:
(a)成分と(b)成分とを、質量比として(b)/(a)=3/1の比率で用いて形成される増粘体をコーンプレート型回転粘度計で測定した場合のヒステリシスループ曲線で囲まれた面積S1と、前記水溶性高分子物質のみを用いて同様に粘度測定した場合のヒステリシスループ曲線で囲まれた面積S0との比率(S1/S0)×100が130〜1,000となるように含有してなる請求項1又は2記載のゲル状口腔用組成物。
請求項4:
合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム(a)の水溶液と、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナンから選ばれる1種以上の水溶性高分子物質(b)の水溶液とを混合し、有機無機複合増粘体を調製した後、水分量を15〜50質量%に調整し、(c)アニオン性界面活性剤を添加することを特徴とするゲル状口腔用組成物の製造方法。
請求項5:
(a)成分と(b)成分との比率(b)/(a)が質量比として0.4〜7となるように混合する請求項4記載のゲル状口腔用組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゲル状口腔用組成物は、経時保型性及び相液分離安定性に優れる上に、口腔内でブラッシングした際に口腔用組成物が口から垂れることのない良好な保持性と、口腔内に良好に口腔用組成物が広がる口腔内での広がりの良さとを兼ね備え、曳糸性も少なく使用性が良いもので、口腔内で製剤を適用する短時間の行為で十分な清掃効果を奏することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実験例におけるカルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液のみを用いて得た増粘体(ブランク)のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図2】実験例におけるカルボキシメチルセルロースナトリウム/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=5/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図3】実験例におけるカルボキシメチルセルロースナトリウム/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=4/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図4】実験例におけるカルボキシメチルセルロースナトリウム/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=3/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図5】実験例におけるヒドロキシエチルセルロース水溶液のみを用いて得た増粘体(ブランク)のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図6】実験例におけるヒドロキシエチルセルロース/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=5/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図7】実験例におけるヒドロキシエチルセルロース/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=4/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図8】実験例におけるヒドロキシエチルセルロース/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=3/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図9】実験例におけるアルギン酸ナトリウム水溶液のみを用いて得た増粘体(ブランク)のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図10】実験例におけるアルギン酸ナトリウム/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=5/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図11】実験例におけるアルギン酸ナトリウム/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=4/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図12】実験例におけるアルギン酸ナトリウム/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=3/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図13】実験例におけるキサンタンガム水溶液のみを用いて得た増粘体(ブランク)のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図14】実験例におけるキサンタンガム/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=5/1の増粘体の上記粘弾性測定装置による測定結果を示すグラフである。
【図15】実験例におけるキサンタンガム/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=4/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図16】実験例におけるキサンタンガム/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=3/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図17】実験例におけるカラギーナン水溶液のみを用いて得た増粘体(ブランク)のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図18】実験例におけるカラギーナン/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=5/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図19】実験例におけるカラギーナン/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=4/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図20】実験例におけるカラギーナン/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=3/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明につき更に詳細に説明する。
本発明はゲル状口腔用組成物に係わるものであるが、これは通常の練歯磨と比較した場合、チキソトロピー性が高く、即ち経時保型性が高い割に降伏値が低く、このため口腔内での保持性と広がりの良さを兼ね備えるものである。
一般に水溶性高分子物質を含有する練歯磨は非ニュートン流体のうち、降伏値をもった擬塑性流体であり、静止状態では、分子間応力、粒子間応力による強い結合作用が働き、液体であってもある種の固体のような性質を示す。外力が物質内部で作用している応力よりも小さい場合、その物質は弾性変形のみを生じる。外力が物質内部で作用している応力よりも大きくなると、内部応力による結合が破壊され、物質内の分子や粒子が不規則に運動、移動し始め、液体の性質に変化する。即ち、降伏値とは、固体と液体の両方の性質を有する物質が、固体から液体へ変化する時点、つまり外力と内部応力が等しくなった時の外部応力の値である。このような練歯磨等の口腔用組成物では、通常、保型性等を高めるために降伏値が高まると口腔内では広がりにくくなってその清掃効果を十分に発揮させ難くなる。これに対して、本発明のゲル状組成物は、通常では経時保型性や口腔内保持性を上げるために降伏値が高くなる、即ち口腔内での広がりの良さを損なう結果となるものが、チキソトロピー性が高まることによりそれらを両立し得、格別の作用効果を奏するものである。
【0015】
本発明の口腔用組成物は、
(a)合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム、
(b)カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナンから選ばれる水溶性高分子物質、
(c)アニオン性界面活性剤
を必須成分とする。
【0016】
ここで、(a)成分としては、合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウムが用いられ、例えばラポナイト(ロックウッド社製)等の市販品を用いることができる。なお、合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウムは、近似質量%でSiO2:58.0%、MgO:25.4%、Na2O:3.1%、Li2O:1.0%であり、その他成分としては若干の水と微量金属を含む合成粘土剤である。完全な合成品であり、ナトリウム塩、マグネシウム塩及びリチウム塩にケイ酸ナトリウムを混合し、反応させることで製造される。ベントナイトやヘクトライトのような天然の粘土剤も結晶構造としては類似のものであるが、合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウムはこれら天然の粘土剤に比べ、一次粒子の大きさがごく小さく、層状の構造を有することが特長である。
【0017】
(a)成分の配合量は特に制限されないが、経時保型性付与効果、歯ブラシ等への載せ易さ及び口腔内での広がりの良さの点から、組成物全体の0.05〜2%(質量%、以下同様。)が好ましい。0.05%未満では十分な経時保型性付与効果が発揮されない場合があり、2%を超えると相液分離を生じる場合や口腔内での広がりの良さを損ねる場合がある。経時保型性及び相液分離、口腔内での広がりの良さの点からより好ましくは0.1〜1.5%である。
【0018】
(b)成分の水溶性高分子物質は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナンから選ばれるもので、これらの1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。特に、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガムが好適に使用できる。
【0019】
これらの水溶性高分子物質は、口腔用組成物に通常使用されるものでよく、市販品を用いることができる。カルボキシメチルセルロースナトリウムとしては、例えばCMCダイセル(ダイセル化学工業(株)製)、ヒドロキシエチルセルロースとしては、例えばHECダイセル(ダイセル化学工業(株)製)、アルギン酸ナトリウムとしては、例えばダックアルギン(紀文フードケミファ(株)製)、キサンタンガムとしては、例えばケルデント(CPケルコ社製)、カラギーナンとしては、例えばカラギーナン(CPケルコ社製)等の市販品を用いることができる。
【0020】
上記水溶性高分子物質(b)の配合量は、組成物全体の0.2〜3%が好ましく、0.2%未満では十分な相液分離抑制効果が発揮されない場合があり、3%を超えると歯ブラシへの載せ易さを損なうおそれがある。相液分離及び歯ブラシへの載せ易さの点からより好ましくは0.5〜2%である。
【0021】
この場合、(a)成分と(b)成分とは、(b)/(a)の比率(質量比)が0.2〜20、より好ましくは0.3〜15、更に好ましくは0.4〜10、特に好ましくは0.4〜7であることが、経時保型性、液分離、歯ブラシ等への載せ易さ、口腔内保持性の点から好ましい。
【0022】
(c)成分のアニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル基の炭素数が8〜18である高級アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン酸塩、N−ラウロイルタウリン塩等を用いることができ、これらの1種又は2種以上を配合できる。アニオン性界面活性剤は、特に口腔内での広がりの良さの点から、アルキル硫酸エステルのアルカリ金属塩又はN−アシルサルコシン酸のアルカリ金属塩、とりわけラウリル硫酸塩(ナトリウム塩)又はN−ラウロイルサルコシン酸塩(ナトリウム塩)が好適である。
アニオン性界面活性剤は市販品を使用でき、具体的にはラウリル硫酸ナトリウム(東邦化学工業(株))、N−ラウロイルサルコシンナトリウム(川研ファインケミカル(株))等が挙げられる。
【0023】
(c)アニオン性界面活性剤の配合量は、口腔内保持性や口腔内での広がりの良さの点から組成物全体の0.1〜3%が好ましく、より好ましくは0.2〜2%である。0.1%未満では十分な口腔内保持性効果が発揮されなかったり、口腔内での広がりの良さに劣り、3%を超えると相液分離を生じ易くなったり、口腔粘膜に対して刺激を生じる場合がある。
【0024】
本発明の口腔用組成物には、その種類に応じた公知の成分を配合することができる。
例えば、歯磨剤には、研磨剤を配合することができ、研磨剤としては、研磨性の無水ケイ酸、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、第2リン酸カルシウム2水和物、第2リン酸カルシウム無水和物等が挙げられ、特に口腔内での広がりの良さの点から無水ケイ酸、炭酸カルシウムが好ましい。
研磨性の無水ケイ酸として具体的には、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等が挙げられ、特に沈降性シリカが好ましい。沈降性シリカとしては、メジアン径(d50)が5〜50μm、特に10〜30μmの粒度を有する沈降性シリカがより好ましい。メジアン径が5μm未満では十分な研磨性が得られず、50μmを超えると使用時に違和感を生じる場合がある。なお、メジアン径は、粒度分布測定装置(日機装(株)製、マイクロトラック粒度分布計、分散剤:水)を用い、体積基準での累積分布50%を測定した値である。
研磨剤としては、市販品を用いることができ、無水ケイ酸(沈降性シリカ(メジアン径18μm)、多木化学(株))や、炭酸カルシウム(カルファイン(株))等が例示できる。
【0025】
研磨剤の配合量は、経時保型性付与効果及び相液分離の点から12〜52%、特に12〜45%が好ましく、より好ましくは15〜40%である。12%未満では十分な経時保型性付与効果が発揮されなかったり、相液分離が生じ、52%を超えると口腔内での広がりの良さが損なわれるおそれがある。
【0026】
本発明の口腔用組成物には、更に必要に応じ、本発明の効果を妨げない範囲で、例えば粘稠剤、粘結剤、界面活性剤、及び必要に応じて甘味剤、防腐剤、有効成分、色素(着色剤)、香料等を配合できる。
【0027】
粘稠剤としては、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコール、平均分子量200〜6,000のポリエチレングリコール、エチレングリコール、還元でんぷん糖化物等の糖アルコール、多価アルコール等の1種又は2種以上が使用できる(通常、配合量5〜50%)。
【0028】
粘結剤としては、上記(a)、(b)成分が用いられるが、それに加えて所望によりポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カーボポール、グアガム、ゼラチン、アビセル等の有機粘結剤、モンモリロナイト、カオリン、ベントナイト等の無機粘結剤等を本発明の効果を妨げない範囲で配合してもよい。
【0029】
界面活性剤としては、上記アニオン性界面活性剤に加え、必要により両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を配合できる。両性界面活性剤として、例えばN−アシルグルタメート、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等、ノニオン性界面活性剤として、例えばアルキルグリコシド、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ラウリン酸デカグリセリル等が挙げられる。
これら界面活性剤の配合は、通常0〜3%、特に0〜2%である。
【0030】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパラテーム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ぺリラルチン等、防腐剤としては、ブチルパラベン、エチルパラベン等のパラベン(パラオキシ安息香酸エステル)、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0031】
各種有効成分としては、例えばフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化第1錫、フッ化ストロンチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、縮合リン酸塩、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、トラネキサム酸、イプシロン−アミノカプロン酸、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アスコルビン酸又はその塩、酢酸dl−トコフェロール、ジヒドロコレステロール、α−ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、アズレン、グリチルリチン2カリウム、塩化ナトリウム、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ヒドロキサム酸及びその誘導体、ゼオライト、メトキシエチレン、エピジヒドロコレステリン、塩化ベンゼトニウム、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、トウキ軟エキス、オウバクエキス、カミツレ、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の植物抽出物などが挙げられる。なお、これら有効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0032】
香料は、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができる。
【0033】
香料の配合量も特に限定されないが、上記の香料素材は、製剤組成中に0.000001〜1%使用するのが好ましい。また、上記香料素材を使用した賦香用香料は、製剤組成中に0.1〜2.0%使用するのが好ましい。
【0034】
着色剤としては青色1号、黄色4号、緑色3号等が例示される。
【0035】
本発明の組成物においては、水分量を15〜50%、好ましくは20〜45%、更に好ましくは25〜45%とする。水分量が上記範囲であることが、上記効果を有効に発現させるのに重要である。水分量が少なすぎると口腔内での広がりの良さを損なうおそれがあり、水分量が多すぎると経時保型性や相液分離安定性、口腔内保持性を損なうおそれがあり、本発明の水分量の範囲外では本発明の目的を達成し得ない。
【0036】
本発明のゲル状口腔用組成物は、合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム(a)の水溶液と、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナンから選ばれる1種以上の水溶性高分子物質(b)の水溶液とを混合し、有機無機複合増粘体を調製した後、水分量を15〜50質量%に調整し、(c)アニオン性界面活性剤を添加することで製造することができる。この場合、(a)成分と(b)成分との比率(b)/(a)が質量比として0.2〜20、より好ましくは0.3〜15、更に好ましくは0.4〜10、特に好ましくは0.4〜7となるように混合することがより好適である。
【0037】
本発明にかかわる増粘体は、上記(a)成分の水溶液と(b)成分の水溶液とを別途作成しておき、それらを混合することにより製造され、この場合、(a)成分の水溶液と(b)成分の水溶液とは、(a)成分の水溶液に(b)成分の水溶液を加えても、(b)成分の水溶液に(a)成分の水溶液を加えてもよい。
更に、上記増粘体を調製した後に(c)成分のアニオン性界面活性剤を添加するが、その他の配合成分は適宜添加することができ、(a)成分の水溶液に添加しても、(b)成分の水溶液に添加しても、あるいは(c)成分と共に添加してもよい。なお、研磨剤及び香料は、(a)及び(b)成分を混合した後に添加することが望ましい。
【0038】
この場合、(a)成分の水溶液の濃度は0.1〜10%、特に0.2〜6%が好ましく、また(b)成分の水溶液の濃度は0.3〜10%、特に0.4〜6%が好ましい。このような(a)成分の水溶液と(b)成分の水溶液とを質量比5:1〜1:5、特に1:1で混合し、(b)/(a)の比率が上記範囲である増粘体を得ることが望ましい。
【0039】
本発明では、このように(a)、(b)成分の水溶液を混合することにより、良好なチキソトロピー性を与え、(a)成分と(b)成分とを質量比として(b)/(a)=3/1の比率で用いて形成された増粘体を、コーンプレート型回転粘度計、具体的にはコーンプレート型粘弾性測定装置であるRheo Stress RS50(HAAKE社製)で、センサーC35/4度、γ=0〜50(1/s)、120s、25℃で測定した場合の、ヒステリシスループ曲線で囲まれた面積S1と、前記水溶性高分子物質のみを用いて同様に粘度測定した場合のヒステリシスループ曲線で囲まれた面積S0との比率〈チキソトロピー性〉((S1/S0)×100)が130〜1,000、特に150〜1,000、とりわけ200〜800である増粘体が得られる。
【0040】
なお、(a)成分の水溶液と(b)成分の水溶液とを混合する場合、その混合条件は特に限定されず、通常の方法を採用できるが、室温下、具体的には15〜30℃程度の温度条件で3〜20分間撹拌することが好ましい。
【0041】
本発明のゲル状口腔用組成物を収容する容器の材質は特に制限されず、通常、口腔用組成物に使用される容器を使用できる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等のプラスチック容器等が使用できる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例、実験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特にことわらない限りいずれも質量%である。
【0043】
〔実施例、比較例〕
表1、2に示す組成のゲル状歯磨剤組成物を下記方法で調製し、下記評価を行った。結果を表1、2に併記する。
【0044】
試験ゲル状歯磨剤組成物の調製
合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウムの5%水溶液を調製し、この水溶液と、(c)成分のアニオン性界面活性剤、研磨剤及び香料を除く組成物中の他の所用成分を残水分に溶解させた液に水溶性高分子物質(b)を溶解させた水溶液とを室温下に混合し、10分間撹拌して増粘体を調製した後、更に(c)成分のアニオン性界面活性剤、研磨剤、香料を練合してゲル状歯磨剤組成物を調製し、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる直径26mm、口径8mmのラミネートチューブ(低密度ポリエチレン72μm/エチレン・アクリル酸共重合体樹脂90μm/アルミニウム10μm/エチレン・アクリル酸共重合体樹脂35μm/直鎖状低密度ポリエチレン50μm、厚み257μm(大日本印刷(株)製))に50g充填した。
【0045】
ゲル状歯磨剤組成物の調製に用いた成分は、下記の通りであり、他成分については、いずれも医薬部外品原料規格の規格品を用いた。
合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム;ラポナイトD、ロックウッド社製
カルボキシメチルセルロースナトリウム;CMCダイセル、ダイセル化学工業(株)製
ヒドロキシエチルセルロース;HECダイセル、ダイセル化学工業(株)製
アルギン酸ナトリウム;ダックアルギン、紀文フードケミファ(株)製
キサンタンガム;ケルデント、CPケルコ社製
カラギーナン;カラギーナン、CPケルコ社製
ラウリル硫酸ナトリウム;東邦化学工業(株)製
無水ケイ酸(研磨性シリカ);
メジアン径約20μmの沈降性シリカ、多木化学(株)製
【0046】
得られたゲル状歯磨剤組成物について、経時保型性、相液分離安定性、歯ブラシへの載せ易さ、口腔内保持性、口腔内での広がりの良さ、更には再石灰化効果を下記方法で評価した。
【0047】
(1)経時保型性の評価方法
歯磨剤組成物をブラシヘッド幅10mm、長さ20mmの歯ブラシ上に10mm押し出し、3分後の形状を目視にて下記基準で評価した。
評価基準:
◎:形状に変化がなく、歯ブラシから垂れない
○:やや形状に変化があるが、歯ブラシから垂れない
△:やや形状に変化があり、若干歯ブラシから垂れる
×:形状に変化があり、歯ブラシから垂れる
【0048】
(2)相液分離安定性の評価方法
組成物を60℃にて1ヶ月保存後、更紙上に5cm押し出し、更紙上若しくは更紙に浸み込んだ水がにじみ出た幅(mm)を目視にて下記基準で評価した。
評価基準:
◎:相液分離がない
○:ほとんど相液分離がない(1mm未満)
△:やや相液分離がある(1mm以上5mm未満)
×:相液分離がある(5mm以上)
【0049】
(3)歯ブラシへの載せ易さの評価方法
被験者10名を用いて組成物約1gをブラシヘッド幅10mm、長さ20mmの歯ブラシ上に載せ、歯ブラシへの載せ易さを「非常に載せ易い」、「載せ易い」、「やや載せにくい」、「載せにくい」の4段階で回答を得た。この回答のうち、「非常に載せ易い」を4点、「載せ易い」を3点、「やや載せにくい」を2点、「載せにくい」を1点として、10名の平均点から以下の基準で歯ブラシへの載せ易さを評価した。
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0050】
(4)口腔内保持性の評価方法
被験者10名を用いて組成物約1gをブラシヘッド幅10mm、長さ20mmの歯ブラシ上に載せ、3分間ブラッシングを行い、口腔内での保持性を「全く口から垂れない」、「ほとんど口から垂れない」、「やや口から垂れる」、「口から垂れる」の4段階で回答を得た。この回答のうち、「全く口から垂れない」を4点、「ほとんど口から垂れない」を3点、「やや口から垂れる」を2点、「口から垂れる」を1点として、10名の平均点から以下の基準で口腔内保持性を評価した。
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0051】
(5)口腔内での広がりの良さの評価方法
被験者10名を用いて歯磨剤組成物約1gをブラシヘッド幅10mm、長さ20mmの歯ブラシ上に載せ、3分間ブラッシングを行い、口腔内での広がりの良さを「非常に良い」、「良い」、「やや悪い」、「悪い」の4段階で回答を得た。この回答のうち、「非常に良い」を4点、「良い」を3点、「やや悪い」を2点、「悪い」を1点として、10名の平均点から以下の基準で口腔内での広がりの良さを評価した。
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0052】
【表1−1】
*;水分量はソルビット液(70%)中の水分と精製水との合計を示す(以下、同様。)。
【0053】
【表1−2】
【0054】
【表2】
【0055】
〔実験例〕
前記水溶性高分子物質(b)の10%水溶液と、(b)/(a)=5/1、4/1、3/1用合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム(ラポナイト)(a)水溶液をそれぞれ2%水溶液、2.5%水溶液、3.3%水溶液として調製し、水溶性高分子物質(b)の水溶液50mlにラポナイト(a)の水溶液50mlを室温下で添加し、10分間撹拌を行って、(b)/(a)の質量比が表3に示す割合で各増粘体を得た。
この増粘体について、コーンプレート型粘弾性測定装置(RheoStress RS50(HAAKE社製))を用い、センサーC35/4度、シアレート0〜50(1/s)、測定時間120秒、25℃にて測定した。
結果を表3、4に示す。また、各増粘体のコーンプレート型粘弾性測定装置による測定で得られたヒステリシスループ曲線を図1〜20に示す。
表3の絶対値(Pa・s)は、コーンプレート型回転粘度計による測定で得られたヒステリシスループ曲線で囲まれた面積を示す。表4の対ブランク(%)は、各増粘体のヒステリシスループ曲線で囲まれた面積S1と、水溶性高分子物質のみを用いて同様に粘度測定した場合のヒステリシスループ曲線で囲まれた面積S0との比率((S1/S0×100))を示す値である。
なお、図中、ラポナイトはLAPONITE、カルボキシメチルセルロースナトリウムはCMC、ヒドロキシエチルセルロースはHEC、アルギン酸ナトリウムはAR、キサンタンガムはXG、カラギーナンはKGと略記した。
【0056】
【表3】
なお、ラポナイト単独では、チキソトロピー性はなく絶対値が0になった。
【0057】
【表4】
【0058】
上記結果より、(a)成分の水溶液と(b)成分の水溶液とを混合して(a)、(b)成分と水からなる増粘体を形成することにより、チキソトロピー性が高い有機無機複合体増粘体が得られ、更に、この増粘体は、質量比として(b)/(a)=3/1の比率で用いて形成された増粘体を、コーンプレート型回転粘度計で測定した場合のヒステリシスループ曲線で囲まれた面積S1と、前記水溶性高分子物質のみを用いて同様に粘度測定した場合のヒステリシスループ曲線で囲まれた面積S0との比率(S1/S0)×100が130〜1,000となることがわかった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時保型性及び相液分離安定性に優れ、かつ口腔内でブラッシングした際に口腔用組成物が口から垂れることのない良好な口腔内での保持性と、口腔内に良好に口腔用組成物が広がるという広がりの良さといった相反する機能が両立し、口腔内で満足な清掃効果を発揮できるゲル状口腔用組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯磨剤等の口腔用組成物は、日常的な口腔ケア衛生用品として用いられるだけでなく、う蝕、歯周病の2大口腔疾患の予防としても有用であることが知られている。また、口腔用組成物においては、口腔清掃を行う際に歯ブラシ等の清掃用具に塗布する際、歯磨剤等として保型性を有することや相液分離を生じないことは必須条件であり、かつ、口腔内において十分な清掃効果を発揮させるためには、口腔内からの液垂れを起こさないための良好な保持性を有すると共に、口腔清掃という短時間の行為において口腔内に良好に口腔用組成物が広がるという口腔内での広がりを有することが有用であると言われている。
【0003】
歯ブラシ等の清掃用具に塗布する際の保型性を向上する手段としては、従来から合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウムや合成ヘクトライトのような粘土剤や、カルボキシビニルポリマーやポリアクリル酸ナトリウムのような合成水溶性高分子物質を口腔用組成物に配合することが有効な手段となっており、口腔用組成物に配合されるこれらの成分の中で粘土剤はより高い保型性を有することが知られている。
【0004】
粘土剤の高い保型性を活用し製剤の活性を向上させる手段としては、合成ヘクトライトとシリカや水和アルミナ、保湿剤とを配合したペルオキシジホスフェート配合練歯磨組成物(特許文献1参照)、粘土剤とカゼインプロテインとを配合したバイオ活性成分の搬送のためのカゼイン組成体(特許文献2参照)、親水性粘土剤とフィチン酸化合物とを配合した研磨剤を含まない歯磨剤組成物(特許文献3参照)、親水性粘土剤と変性セルロースポリマー、カルボキシビニルポリマー及び天然ゴム由来アニオン性ポリマー類とを配合した歯磨剤組成物(特許文献4参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平3−36803号公報
【特許文献2】特表2002−521415号公報
【特許文献3】特表2009−513695号公報
【特許文献4】特表2009−519235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、いずれの技術においても、経時的な保型性の確保が難しかったり、使用時に口から垂れて口腔内で満足に保持できないことがあり、ましてや口腔内での保持性と口腔内での広がりの良さという相反する機能を同時に満足に発揮させることは困難であった。また、これらの技術は経時で相液分離が生じるなどの問題もあり、口腔内での清掃効果が十分とは言い難く未だ改善の余地があった。口腔用組成物においては、口腔内清掃効果のより向上が望まれるが、従来技術では、経時保型性及び相液分離安定性に優れ、かつ口腔内での保持性と口腔内での広がりの良さとを両立させ、これら特性を全て満たす口腔用組成物を得ることは、難しかった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、経時保型性及び相液分離安定性に優れ、かつ口腔内での良好な保持性と口腔内での広がりの良さとを兼ね備えたゲル状口腔用組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム(a)と、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナンから選ばれる1種以上の水溶性高分子物質(b)とを、水分量15〜50質量%において併用し、特に上記成分(a)、(b)における比率(b)/(a)を質量比として0.2〜20とすると共に、アニオン性界面活性剤(c)を含有させることにより、経時保型性と相液分離安定性とを満たし、かつ口腔内でブラッシングした際に口腔用組成物が口から垂れることのない良好な口腔内での保持性と、口腔内に良好に口腔用組成物が広がるという口腔内での広がりの良さとを両立した、使用性の良いゲル状口腔用組成物が得られることを知見した。
【0009】
即ち、従来から(a)、(b)、(c)成分自体は口腔用組成物用の成分として公知であり、練歯磨等の口腔用組成物に粘土剤を配合すると保型性等を改善できることは知られている。しかし、一般に水溶性高分子物質を含有する練歯磨等のペースト状の口腔用組成物は、降伏値をもった擬塑性流体であり、外力がかかっていない状態ではある種の固体のような性質を示すが、外力が大きくかかると内部応力による結合が破壊され液体の性質へと変化するもので、このため、通常は、保型性や口腔内保持性を改善し降伏値が高くなると口腔内での広がりの良さを損なう結果となってしまい、これら相反する特性を両立させることは難しかった。更に、水分量が多いゲル状製剤では、口腔内へ広がり易いものの保型性を保つことはより難しく、これら特性の両立は更に困難であった。
これに対して、本発明者らは、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナンから選ばれる1種以上の水溶性高分子物質の水溶液と、合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウムの水溶液とを混合すること、特にこの場合、前記水溶性高分子物質と合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウムとの割合を適切にすることにより、高いチキソトロピー性を有する有機無機複合体増粘体を与え、水分量15〜50質量%で更にこれに加えてアニオン性界面活性剤(c)を配合することで、上記効果を与えるゲル状組成物が得られることを見出したもので、このことは本発明者らによる新知見である。
【0010】
更に詳述すると、後述する実験例に示した通り、上記合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウムは、低濃度水溶液では実質的にチキソトロピー性を示さず、一方、上記水溶性高分子物質の水溶液はある程度のチキソトロピー性を示すが、その値は小さいものであるにも拘わらず、上記水溶性高分子物質の水溶液と合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウムの水溶液とを併用混合した水溶液のチキソトロピー性は、これら両成分の水溶液が互いに相乗的に作用し、上記水溶性高分子物質水溶液のチキソトロピー性の1.1倍以上、特にカルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液、ヒドロキシエチルセルロース水溶液、キサンタンガム水溶液の場合は約2倍以上のチキソトロピー性を与えること、従って、このようにして得られる有機無機複合増粘体がゲル状口腔用組成物の増粘基材として有効であり、上記効果を与える上で効果的に作用することを知見した。またこの場合、上記チキソトロピー性の向上効果は、上記水溶性高分子物質の水溶液及び合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウムの水溶液を使用、混合することによって得られるものであり、これら成分を互いに水溶液でない状態で混合しても、あるいは混合したものを水に溶解し、水溶液としても上記のようなチキソトロピー性向上効果は得られないものである。
【0011】
従って、本発明は下記のゲル状口腔用組成物及びその製造方法を提供する。
請求項1:
水分量が15〜50質量%であり、
(a)合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム、
(b)カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナンから選ばれる1種以上の水溶性高分子物質、
(c)アニオン性界面活性剤
を含有することを特徴とするゲル状口腔用組成物。
請求項2:
(a)成分と(b)成分とを(b)/(a)の比率が質量比として0.4〜7となるように含有してなる請求項1記載のゲル状口腔用組成物。
請求項3:
(a)成分と(b)成分とを、質量比として(b)/(a)=3/1の比率で用いて形成される増粘体をコーンプレート型回転粘度計で測定した場合のヒステリシスループ曲線で囲まれた面積S1と、前記水溶性高分子物質のみを用いて同様に粘度測定した場合のヒステリシスループ曲線で囲まれた面積S0との比率(S1/S0)×100が130〜1,000となるように含有してなる請求項1又は2記載のゲル状口腔用組成物。
請求項4:
合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム(a)の水溶液と、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナンから選ばれる1種以上の水溶性高分子物質(b)の水溶液とを混合し、有機無機複合増粘体を調製した後、水分量を15〜50質量%に調整し、(c)アニオン性界面活性剤を添加することを特徴とするゲル状口腔用組成物の製造方法。
請求項5:
(a)成分と(b)成分との比率(b)/(a)が質量比として0.4〜7となるように混合する請求項4記載のゲル状口腔用組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゲル状口腔用組成物は、経時保型性及び相液分離安定性に優れる上に、口腔内でブラッシングした際に口腔用組成物が口から垂れることのない良好な保持性と、口腔内に良好に口腔用組成物が広がる口腔内での広がりの良さとを兼ね備え、曳糸性も少なく使用性が良いもので、口腔内で製剤を適用する短時間の行為で十分な清掃効果を奏することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実験例におけるカルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液のみを用いて得た増粘体(ブランク)のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図2】実験例におけるカルボキシメチルセルロースナトリウム/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=5/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図3】実験例におけるカルボキシメチルセルロースナトリウム/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=4/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図4】実験例におけるカルボキシメチルセルロースナトリウム/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=3/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図5】実験例におけるヒドロキシエチルセルロース水溶液のみを用いて得た増粘体(ブランク)のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図6】実験例におけるヒドロキシエチルセルロース/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=5/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図7】実験例におけるヒドロキシエチルセルロース/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=4/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図8】実験例におけるヒドロキシエチルセルロース/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=3/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図9】実験例におけるアルギン酸ナトリウム水溶液のみを用いて得た増粘体(ブランク)のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図10】実験例におけるアルギン酸ナトリウム/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=5/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図11】実験例におけるアルギン酸ナトリウム/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=4/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図12】実験例におけるアルギン酸ナトリウム/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=3/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図13】実験例におけるキサンタンガム水溶液のみを用いて得た増粘体(ブランク)のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図14】実験例におけるキサンタンガム/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=5/1の増粘体の上記粘弾性測定装置による測定結果を示すグラフである。
【図15】実験例におけるキサンタンガム/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=4/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図16】実験例におけるキサンタンガム/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=3/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図17】実験例におけるカラギーナン水溶液のみを用いて得た増粘体(ブランク)のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図18】実験例におけるカラギーナン/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=5/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図19】実験例におけるカラギーナン/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=4/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【図20】実験例におけるカラギーナン/合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム=3/1の増粘体のヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明につき更に詳細に説明する。
本発明はゲル状口腔用組成物に係わるものであるが、これは通常の練歯磨と比較した場合、チキソトロピー性が高く、即ち経時保型性が高い割に降伏値が低く、このため口腔内での保持性と広がりの良さを兼ね備えるものである。
一般に水溶性高分子物質を含有する練歯磨は非ニュートン流体のうち、降伏値をもった擬塑性流体であり、静止状態では、分子間応力、粒子間応力による強い結合作用が働き、液体であってもある種の固体のような性質を示す。外力が物質内部で作用している応力よりも小さい場合、その物質は弾性変形のみを生じる。外力が物質内部で作用している応力よりも大きくなると、内部応力による結合が破壊され、物質内の分子や粒子が不規則に運動、移動し始め、液体の性質に変化する。即ち、降伏値とは、固体と液体の両方の性質を有する物質が、固体から液体へ変化する時点、つまり外力と内部応力が等しくなった時の外部応力の値である。このような練歯磨等の口腔用組成物では、通常、保型性等を高めるために降伏値が高まると口腔内では広がりにくくなってその清掃効果を十分に発揮させ難くなる。これに対して、本発明のゲル状組成物は、通常では経時保型性や口腔内保持性を上げるために降伏値が高くなる、即ち口腔内での広がりの良さを損なう結果となるものが、チキソトロピー性が高まることによりそれらを両立し得、格別の作用効果を奏するものである。
【0015】
本発明の口腔用組成物は、
(a)合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム、
(b)カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナンから選ばれる水溶性高分子物質、
(c)アニオン性界面活性剤
を必須成分とする。
【0016】
ここで、(a)成分としては、合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウムが用いられ、例えばラポナイト(ロックウッド社製)等の市販品を用いることができる。なお、合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウムは、近似質量%でSiO2:58.0%、MgO:25.4%、Na2O:3.1%、Li2O:1.0%であり、その他成分としては若干の水と微量金属を含む合成粘土剤である。完全な合成品であり、ナトリウム塩、マグネシウム塩及びリチウム塩にケイ酸ナトリウムを混合し、反応させることで製造される。ベントナイトやヘクトライトのような天然の粘土剤も結晶構造としては類似のものであるが、合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウムはこれら天然の粘土剤に比べ、一次粒子の大きさがごく小さく、層状の構造を有することが特長である。
【0017】
(a)成分の配合量は特に制限されないが、経時保型性付与効果、歯ブラシ等への載せ易さ及び口腔内での広がりの良さの点から、組成物全体の0.05〜2%(質量%、以下同様。)が好ましい。0.05%未満では十分な経時保型性付与効果が発揮されない場合があり、2%を超えると相液分離を生じる場合や口腔内での広がりの良さを損ねる場合がある。経時保型性及び相液分離、口腔内での広がりの良さの点からより好ましくは0.1〜1.5%である。
【0018】
(b)成分の水溶性高分子物質は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナンから選ばれるもので、これらの1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。特に、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガムが好適に使用できる。
【0019】
これらの水溶性高分子物質は、口腔用組成物に通常使用されるものでよく、市販品を用いることができる。カルボキシメチルセルロースナトリウムとしては、例えばCMCダイセル(ダイセル化学工業(株)製)、ヒドロキシエチルセルロースとしては、例えばHECダイセル(ダイセル化学工業(株)製)、アルギン酸ナトリウムとしては、例えばダックアルギン(紀文フードケミファ(株)製)、キサンタンガムとしては、例えばケルデント(CPケルコ社製)、カラギーナンとしては、例えばカラギーナン(CPケルコ社製)等の市販品を用いることができる。
【0020】
上記水溶性高分子物質(b)の配合量は、組成物全体の0.2〜3%が好ましく、0.2%未満では十分な相液分離抑制効果が発揮されない場合があり、3%を超えると歯ブラシへの載せ易さを損なうおそれがある。相液分離及び歯ブラシへの載せ易さの点からより好ましくは0.5〜2%である。
【0021】
この場合、(a)成分と(b)成分とは、(b)/(a)の比率(質量比)が0.2〜20、より好ましくは0.3〜15、更に好ましくは0.4〜10、特に好ましくは0.4〜7であることが、経時保型性、液分離、歯ブラシ等への載せ易さ、口腔内保持性の点から好ましい。
【0022】
(c)成分のアニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル基の炭素数が8〜18である高級アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン酸塩、N−ラウロイルタウリン塩等を用いることができ、これらの1種又は2種以上を配合できる。アニオン性界面活性剤は、特に口腔内での広がりの良さの点から、アルキル硫酸エステルのアルカリ金属塩又はN−アシルサルコシン酸のアルカリ金属塩、とりわけラウリル硫酸塩(ナトリウム塩)又はN−ラウロイルサルコシン酸塩(ナトリウム塩)が好適である。
アニオン性界面活性剤は市販品を使用でき、具体的にはラウリル硫酸ナトリウム(東邦化学工業(株))、N−ラウロイルサルコシンナトリウム(川研ファインケミカル(株))等が挙げられる。
【0023】
(c)アニオン性界面活性剤の配合量は、口腔内保持性や口腔内での広がりの良さの点から組成物全体の0.1〜3%が好ましく、より好ましくは0.2〜2%である。0.1%未満では十分な口腔内保持性効果が発揮されなかったり、口腔内での広がりの良さに劣り、3%を超えると相液分離を生じ易くなったり、口腔粘膜に対して刺激を生じる場合がある。
【0024】
本発明の口腔用組成物には、その種類に応じた公知の成分を配合することができる。
例えば、歯磨剤には、研磨剤を配合することができ、研磨剤としては、研磨性の無水ケイ酸、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、第2リン酸カルシウム2水和物、第2リン酸カルシウム無水和物等が挙げられ、特に口腔内での広がりの良さの点から無水ケイ酸、炭酸カルシウムが好ましい。
研磨性の無水ケイ酸として具体的には、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等が挙げられ、特に沈降性シリカが好ましい。沈降性シリカとしては、メジアン径(d50)が5〜50μm、特に10〜30μmの粒度を有する沈降性シリカがより好ましい。メジアン径が5μm未満では十分な研磨性が得られず、50μmを超えると使用時に違和感を生じる場合がある。なお、メジアン径は、粒度分布測定装置(日機装(株)製、マイクロトラック粒度分布計、分散剤:水)を用い、体積基準での累積分布50%を測定した値である。
研磨剤としては、市販品を用いることができ、無水ケイ酸(沈降性シリカ(メジアン径18μm)、多木化学(株))や、炭酸カルシウム(カルファイン(株))等が例示できる。
【0025】
研磨剤の配合量は、経時保型性付与効果及び相液分離の点から12〜52%、特に12〜45%が好ましく、より好ましくは15〜40%である。12%未満では十分な経時保型性付与効果が発揮されなかったり、相液分離が生じ、52%を超えると口腔内での広がりの良さが損なわれるおそれがある。
【0026】
本発明の口腔用組成物には、更に必要に応じ、本発明の効果を妨げない範囲で、例えば粘稠剤、粘結剤、界面活性剤、及び必要に応じて甘味剤、防腐剤、有効成分、色素(着色剤)、香料等を配合できる。
【0027】
粘稠剤としては、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコール、平均分子量200〜6,000のポリエチレングリコール、エチレングリコール、還元でんぷん糖化物等の糖アルコール、多価アルコール等の1種又は2種以上が使用できる(通常、配合量5〜50%)。
【0028】
粘結剤としては、上記(a)、(b)成分が用いられるが、それに加えて所望によりポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カーボポール、グアガム、ゼラチン、アビセル等の有機粘結剤、モンモリロナイト、カオリン、ベントナイト等の無機粘結剤等を本発明の効果を妨げない範囲で配合してもよい。
【0029】
界面活性剤としては、上記アニオン性界面活性剤に加え、必要により両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を配合できる。両性界面活性剤として、例えばN−アシルグルタメート、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等、ノニオン性界面活性剤として、例えばアルキルグリコシド、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ラウリン酸デカグリセリル等が挙げられる。
これら界面活性剤の配合は、通常0〜3%、特に0〜2%である。
【0030】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパラテーム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ぺリラルチン等、防腐剤としては、ブチルパラベン、エチルパラベン等のパラベン(パラオキシ安息香酸エステル)、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0031】
各種有効成分としては、例えばフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化第1錫、フッ化ストロンチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、縮合リン酸塩、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、トラネキサム酸、イプシロン−アミノカプロン酸、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アスコルビン酸又はその塩、酢酸dl−トコフェロール、ジヒドロコレステロール、α−ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、アズレン、グリチルリチン2カリウム、塩化ナトリウム、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ヒドロキサム酸及びその誘導体、ゼオライト、メトキシエチレン、エピジヒドロコレステリン、塩化ベンゼトニウム、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、トウキ軟エキス、オウバクエキス、カミツレ、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の植物抽出物などが挙げられる。なお、これら有効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0032】
香料は、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができる。
【0033】
香料の配合量も特に限定されないが、上記の香料素材は、製剤組成中に0.000001〜1%使用するのが好ましい。また、上記香料素材を使用した賦香用香料は、製剤組成中に0.1〜2.0%使用するのが好ましい。
【0034】
着色剤としては青色1号、黄色4号、緑色3号等が例示される。
【0035】
本発明の組成物においては、水分量を15〜50%、好ましくは20〜45%、更に好ましくは25〜45%とする。水分量が上記範囲であることが、上記効果を有効に発現させるのに重要である。水分量が少なすぎると口腔内での広がりの良さを損なうおそれがあり、水分量が多すぎると経時保型性や相液分離安定性、口腔内保持性を損なうおそれがあり、本発明の水分量の範囲外では本発明の目的を達成し得ない。
【0036】
本発明のゲル状口腔用組成物は、合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム(a)の水溶液と、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナンから選ばれる1種以上の水溶性高分子物質(b)の水溶液とを混合し、有機無機複合増粘体を調製した後、水分量を15〜50質量%に調整し、(c)アニオン性界面活性剤を添加することで製造することができる。この場合、(a)成分と(b)成分との比率(b)/(a)が質量比として0.2〜20、より好ましくは0.3〜15、更に好ましくは0.4〜10、特に好ましくは0.4〜7となるように混合することがより好適である。
【0037】
本発明にかかわる増粘体は、上記(a)成分の水溶液と(b)成分の水溶液とを別途作成しておき、それらを混合することにより製造され、この場合、(a)成分の水溶液と(b)成分の水溶液とは、(a)成分の水溶液に(b)成分の水溶液を加えても、(b)成分の水溶液に(a)成分の水溶液を加えてもよい。
更に、上記増粘体を調製した後に(c)成分のアニオン性界面活性剤を添加するが、その他の配合成分は適宜添加することができ、(a)成分の水溶液に添加しても、(b)成分の水溶液に添加しても、あるいは(c)成分と共に添加してもよい。なお、研磨剤及び香料は、(a)及び(b)成分を混合した後に添加することが望ましい。
【0038】
この場合、(a)成分の水溶液の濃度は0.1〜10%、特に0.2〜6%が好ましく、また(b)成分の水溶液の濃度は0.3〜10%、特に0.4〜6%が好ましい。このような(a)成分の水溶液と(b)成分の水溶液とを質量比5:1〜1:5、特に1:1で混合し、(b)/(a)の比率が上記範囲である増粘体を得ることが望ましい。
【0039】
本発明では、このように(a)、(b)成分の水溶液を混合することにより、良好なチキソトロピー性を与え、(a)成分と(b)成分とを質量比として(b)/(a)=3/1の比率で用いて形成された増粘体を、コーンプレート型回転粘度計、具体的にはコーンプレート型粘弾性測定装置であるRheo Stress RS50(HAAKE社製)で、センサーC35/4度、γ=0〜50(1/s)、120s、25℃で測定した場合の、ヒステリシスループ曲線で囲まれた面積S1と、前記水溶性高分子物質のみを用いて同様に粘度測定した場合のヒステリシスループ曲線で囲まれた面積S0との比率〈チキソトロピー性〉((S1/S0)×100)が130〜1,000、特に150〜1,000、とりわけ200〜800である増粘体が得られる。
【0040】
なお、(a)成分の水溶液と(b)成分の水溶液とを混合する場合、その混合条件は特に限定されず、通常の方法を採用できるが、室温下、具体的には15〜30℃程度の温度条件で3〜20分間撹拌することが好ましい。
【0041】
本発明のゲル状口腔用組成物を収容する容器の材質は特に制限されず、通常、口腔用組成物に使用される容器を使用できる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等のプラスチック容器等が使用できる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例、実験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特にことわらない限りいずれも質量%である。
【0043】
〔実施例、比較例〕
表1、2に示す組成のゲル状歯磨剤組成物を下記方法で調製し、下記評価を行った。結果を表1、2に併記する。
【0044】
試験ゲル状歯磨剤組成物の調製
合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウムの5%水溶液を調製し、この水溶液と、(c)成分のアニオン性界面活性剤、研磨剤及び香料を除く組成物中の他の所用成分を残水分に溶解させた液に水溶性高分子物質(b)を溶解させた水溶液とを室温下に混合し、10分間撹拌して増粘体を調製した後、更に(c)成分のアニオン性界面活性剤、研磨剤、香料を練合してゲル状歯磨剤組成物を調製し、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる直径26mm、口径8mmのラミネートチューブ(低密度ポリエチレン72μm/エチレン・アクリル酸共重合体樹脂90μm/アルミニウム10μm/エチレン・アクリル酸共重合体樹脂35μm/直鎖状低密度ポリエチレン50μm、厚み257μm(大日本印刷(株)製))に50g充填した。
【0045】
ゲル状歯磨剤組成物の調製に用いた成分は、下記の通りであり、他成分については、いずれも医薬部外品原料規格の規格品を用いた。
合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム;ラポナイトD、ロックウッド社製
カルボキシメチルセルロースナトリウム;CMCダイセル、ダイセル化学工業(株)製
ヒドロキシエチルセルロース;HECダイセル、ダイセル化学工業(株)製
アルギン酸ナトリウム;ダックアルギン、紀文フードケミファ(株)製
キサンタンガム;ケルデント、CPケルコ社製
カラギーナン;カラギーナン、CPケルコ社製
ラウリル硫酸ナトリウム;東邦化学工業(株)製
無水ケイ酸(研磨性シリカ);
メジアン径約20μmの沈降性シリカ、多木化学(株)製
【0046】
得られたゲル状歯磨剤組成物について、経時保型性、相液分離安定性、歯ブラシへの載せ易さ、口腔内保持性、口腔内での広がりの良さ、更には再石灰化効果を下記方法で評価した。
【0047】
(1)経時保型性の評価方法
歯磨剤組成物をブラシヘッド幅10mm、長さ20mmの歯ブラシ上に10mm押し出し、3分後の形状を目視にて下記基準で評価した。
評価基準:
◎:形状に変化がなく、歯ブラシから垂れない
○:やや形状に変化があるが、歯ブラシから垂れない
△:やや形状に変化があり、若干歯ブラシから垂れる
×:形状に変化があり、歯ブラシから垂れる
【0048】
(2)相液分離安定性の評価方法
組成物を60℃にて1ヶ月保存後、更紙上に5cm押し出し、更紙上若しくは更紙に浸み込んだ水がにじみ出た幅(mm)を目視にて下記基準で評価した。
評価基準:
◎:相液分離がない
○:ほとんど相液分離がない(1mm未満)
△:やや相液分離がある(1mm以上5mm未満)
×:相液分離がある(5mm以上)
【0049】
(3)歯ブラシへの載せ易さの評価方法
被験者10名を用いて組成物約1gをブラシヘッド幅10mm、長さ20mmの歯ブラシ上に載せ、歯ブラシへの載せ易さを「非常に載せ易い」、「載せ易い」、「やや載せにくい」、「載せにくい」の4段階で回答を得た。この回答のうち、「非常に載せ易い」を4点、「載せ易い」を3点、「やや載せにくい」を2点、「載せにくい」を1点として、10名の平均点から以下の基準で歯ブラシへの載せ易さを評価した。
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0050】
(4)口腔内保持性の評価方法
被験者10名を用いて組成物約1gをブラシヘッド幅10mm、長さ20mmの歯ブラシ上に載せ、3分間ブラッシングを行い、口腔内での保持性を「全く口から垂れない」、「ほとんど口から垂れない」、「やや口から垂れる」、「口から垂れる」の4段階で回答を得た。この回答のうち、「全く口から垂れない」を4点、「ほとんど口から垂れない」を3点、「やや口から垂れる」を2点、「口から垂れる」を1点として、10名の平均点から以下の基準で口腔内保持性を評価した。
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0051】
(5)口腔内での広がりの良さの評価方法
被験者10名を用いて歯磨剤組成物約1gをブラシヘッド幅10mm、長さ20mmの歯ブラシ上に載せ、3分間ブラッシングを行い、口腔内での広がりの良さを「非常に良い」、「良い」、「やや悪い」、「悪い」の4段階で回答を得た。この回答のうち、「非常に良い」を4点、「良い」を3点、「やや悪い」を2点、「悪い」を1点として、10名の平均点から以下の基準で口腔内での広がりの良さを評価した。
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0052】
【表1−1】
*;水分量はソルビット液(70%)中の水分と精製水との合計を示す(以下、同様。)。
【0053】
【表1−2】
【0054】
【表2】
【0055】
〔実験例〕
前記水溶性高分子物質(b)の10%水溶液と、(b)/(a)=5/1、4/1、3/1用合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム(ラポナイト)(a)水溶液をそれぞれ2%水溶液、2.5%水溶液、3.3%水溶液として調製し、水溶性高分子物質(b)の水溶液50mlにラポナイト(a)の水溶液50mlを室温下で添加し、10分間撹拌を行って、(b)/(a)の質量比が表3に示す割合で各増粘体を得た。
この増粘体について、コーンプレート型粘弾性測定装置(RheoStress RS50(HAAKE社製))を用い、センサーC35/4度、シアレート0〜50(1/s)、測定時間120秒、25℃にて測定した。
結果を表3、4に示す。また、各増粘体のコーンプレート型粘弾性測定装置による測定で得られたヒステリシスループ曲線を図1〜20に示す。
表3の絶対値(Pa・s)は、コーンプレート型回転粘度計による測定で得られたヒステリシスループ曲線で囲まれた面積を示す。表4の対ブランク(%)は、各増粘体のヒステリシスループ曲線で囲まれた面積S1と、水溶性高分子物質のみを用いて同様に粘度測定した場合のヒステリシスループ曲線で囲まれた面積S0との比率((S1/S0×100))を示す値である。
なお、図中、ラポナイトはLAPONITE、カルボキシメチルセルロースナトリウムはCMC、ヒドロキシエチルセルロースはHEC、アルギン酸ナトリウムはAR、キサンタンガムはXG、カラギーナンはKGと略記した。
【0056】
【表3】
なお、ラポナイト単独では、チキソトロピー性はなく絶対値が0になった。
【0057】
【表4】
【0058】
上記結果より、(a)成分の水溶液と(b)成分の水溶液とを混合して(a)、(b)成分と水からなる増粘体を形成することにより、チキソトロピー性が高い有機無機複合体増粘体が得られ、更に、この増粘体は、質量比として(b)/(a)=3/1の比率で用いて形成された増粘体を、コーンプレート型回転粘度計で測定した場合のヒステリシスループ曲線で囲まれた面積S1と、前記水溶性高分子物質のみを用いて同様に粘度測定した場合のヒステリシスループ曲線で囲まれた面積S0との比率(S1/S0)×100が130〜1,000となることがわかった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分量が15〜50質量%であり、
(a)合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム、
(b)カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナンから選ばれる1種以上の水溶性高分子物質、
(c)アニオン性界面活性剤
を含有することを特徴とするゲル状口腔用組成物。
【請求項2】
(a)成分と(b)成分とを(b)/(a)の比率が質量比として0.4〜7となるように含有してなる請求項1記載のゲル状口腔用組成物。
【請求項3】
(a)成分と(b)成分とを、質量比として(b)/(a)=3/1の比率で用いて形成される増粘体をコーンプレート型回転粘度計で測定した場合のヒステリシスループ曲線で囲まれた面積S1と、前記水溶性高分子物質のみを用いて同様に粘度測定した場合のヒステリシスループ曲線で囲まれた面積S0との比率(S1/S0)×100が130〜1,000となるように含有してなる請求項1又は2記載のゲル状口腔用組成物。
【請求項4】
合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム(a)の水溶液と、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナンから選ばれる1種以上の水溶性高分子物質(b)の水溶液とを混合し、有機無機複合増粘体を調製した後、水分量を15〜50質量%に調整し、(c)アニオン性界面活性剤を添加することを特徴とするゲル状口腔用組成物の製造方法。
【請求項5】
(a)成分と(b)成分との比率(b)/(a)が質量比として0.4〜7となるように混合する請求項4記載のゲル状口腔用組成物の製造方法。
【請求項1】
水分量が15〜50質量%であり、
(a)合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム、
(b)カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナンから選ばれる1種以上の水溶性高分子物質、
(c)アニオン性界面活性剤
を含有することを特徴とするゲル状口腔用組成物。
【請求項2】
(a)成分と(b)成分とを(b)/(a)の比率が質量比として0.4〜7となるように含有してなる請求項1記載のゲル状口腔用組成物。
【請求項3】
(a)成分と(b)成分とを、質量比として(b)/(a)=3/1の比率で用いて形成される増粘体をコーンプレート型回転粘度計で測定した場合のヒステリシスループ曲線で囲まれた面積S1と、前記水溶性高分子物質のみを用いて同様に粘度測定した場合のヒステリシスループ曲線で囲まれた面積S0との比率(S1/S0)×100が130〜1,000となるように含有してなる請求項1又は2記載のゲル状口腔用組成物。
【請求項4】
合成層状ケイ酸ナトリウム・マグネシウム(a)の水溶液と、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナンから選ばれる1種以上の水溶性高分子物質(b)の水溶液とを混合し、有機無機複合増粘体を調製した後、水分量を15〜50質量%に調整し、(c)アニオン性界面活性剤を添加することを特徴とするゲル状口腔用組成物の製造方法。
【請求項5】
(a)成分と(b)成分との比率(b)/(a)が質量比として0.4〜7となるように混合する請求項4記載のゲル状口腔用組成物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−240965(P2012−240965A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112704(P2011−112704)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]