説明

ゲート通過検知システム

【課題】移動端末のゲート通過状態を容易且つ確実に検知することのできるゲート通過検知システムを提供する。
【解決手段】本発明は、ゲート通過検知システムに関するものであり、移動端末STと、移動端末STが通過するゲート14の内外に配設され、移動端末STと無線LANによる通信を行う第1基地局APin及び第2基地局APoutと、第1基地局APin及び第2基地局APoutにネットワーク16を介して接続され、移動端末STのゲート14の通過状態を検知するゲート通過検知サーバ18とを備え、移動端末STが第1基地局APin及び第2基地局APoutから受信したプローブ応答信号の各受信電力を比較することで、移動端末STのゲート14の通過状態を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LANにより基地局と通信を行う移動端末のゲート通過状態を検知するゲート通過検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Local Area Network)は、有線LANのようなLANケーブルの引き回しが不要であり、設備のレイアウト変更等に対して柔軟に対応することができるため、近年、様々なシステムに導入されている。
【0003】
無線LANを利用したシステムとしては、例えば、美術館や博物館に導入されている無線ガイドシステムや、病院の患者呼出システムを挙げることができる。無線ガイドシステムは、来場者に移動端末を貸し出し、特定の展示物等の周辺にいる来場者だけに移動端末からの音声や画像情報による案内を行うシステムである。また、患者呼出システムは、患者が来院し、受け付けを行った際、患者に移動端末を貸し出し、当該患者の診療時間になったとき、診療場所や診療科名等の情報を移動端末に提供して患者を呼び出すシステムである(特許文献1)。
【0004】
患者呼出システムを例として説明する。図8は、患者呼出システムの概念図である。患者呼出システムは、病院内の複数の個所に設置された基地局(アクセスポイント)AP1、AP2、…APnと、基地局AP1、AP2、…APnにネットワーク2を介して接続された患者呼出サーバ4と、患者呼出サーバ4から基地局AP1、AP2、…APnを介して送信される患者呼出信号を受信する移動端末(クライアント)STとを備える。
【0005】
この患者呼出システムでは、患者が来院したとき、病院スタッフが患者情報を患者呼出サーバ4に登録し、移動端末STを患者個人に貸し出す。病院スタッフは、診療業務の進行状況を患者呼出サーバ4に随時入力する。患者呼出サーバ4は、診療業務の進行に従い、基地局AP1、AP2、…APnを介して、呼出情報及び制御コマンドを移動端末STに送信する。移動端末STは、通信エリア内の基地局AP1、AP2、…APnから呼出情報及び制御コマンドを受け取ると、音や振動等で患者に新着情報を知らせるとともに、移動端末STが有する表示部を用いて詳細情報を患者に知らせる。移動端末STからこれらの情報を受け取った患者は、移動端末STに備えられた応答スイッチを操作し、情報を受け取ったことを患者呼出サーバ4に知らせるとともに、指定された診療室に向かう等の必要な行動をとる。なお、この患者呼出システムは、薬剤の受け取りや会計時にも同様にして利用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−146274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このような無線LANを用いた患者呼出システムは、移動端末STを所持した患者の移動性が良いという利点がある反面、使用した移動端末STの返却を患者が亡失すると、移動端末STが病院外に持ち出されてしまう欠点がある。移動端末STが持ち出されてしまうと、患者呼出システムの一部が使用できなくなるため、運用効率が低下してしまう。
【0008】
このような不具合を回避するため、例えば、基地局AP1、AP2、…APnからビーコン信号を定期的に送信し、その信号を移動端末STで受信し、受信した信号の受信電力を計測する機能を利用することが考えられる。受信電力が予め設定した閾値以下になったときに、返却を要請するブザー等を鳴らせば、移動端末STが患者呼出システムの通信エリア外に持ち出されたものと判定することが可能である。
【0009】
しかしながら、病院内の全ての場所で前記閾値を上回るような通信エリアを構築することは極めて困難である。なぜなら、柱の影や閉鎖空間(例えば、トイレ)等、電波の届きにくい場所が存在するからである。上記の機能では、患者がこのような場所にいるとき、無用にブザーが鳴ってしまう。
【0010】
また、無線LANの電波は、障害物が少なければ数百mも届く場合がある。つまり,病院から数百m離れてから初めて返却要請のブザーが鳴ることも考えられる。移動端末STを返却するためだけに長い距離を戻るのは、患者にとって極めて煩わしいことである。特に、車で通院しているような場合、返却要請のブザーが鳴ったときには、既に駐車場を出てしまっており、再び病院に戻ることが事実上困難であることが多々ある。
【0011】
このように,従来のシステムでは、移動端末STが特定の場所から離れたことを確実に検知することが困難であった。
【0012】
本発明は、前記の不具合を解消するためになされたものであって、基地局と移動端末との間で無線LANによる通信を行うシステムにおいて、移動端末のゲート通過状態を容易且つ確実に検知することのできるゲート通過検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るゲート通過検知システムは、移動端末と、前記移動端末が通過するゲートの一方側に配設され、前記移動端末と無線LANによる通信を行う第1基地局と、前記移動端末が通過する前記ゲートの他方側に配設され、前記移動端末と無線LANによる通信を行う第2基地局と、前記第1基地局及び前記第2基地局にネットワークを介して接続され、前記移動端末の前記ゲートの通過状態を検知するゲート通過検知サーバとを備え、前記移動端末が前記第1基地局の通信エリア又は前記第2基地局の通信エリアに入った際、前記移動端末にプローブ応答信号を送信するプローブ応答信号送信部を有し、前記移動端末は、前記第1基地局及び前記第2基地局から受信した前記プローブ応答信号の各受信電力を、前記第1基地局又は前記第2基地局を介して前記ゲート通過検知サーバに送信する受信電力送信部を有し、前記ゲート通過検知サーバは、送信された前記各受信電力を比較することで、前記移動端末の前記ゲートの通過状態を判定する通過状態判定部を有することを特徴とする。
【0014】
前記ゲート通過検知システムにおいて、前記移動端末は、前記第1基地局及び前記第2基地局に対してプローブ要求信号を送信するプローブ要求信号送信部を有し、前記プローブ応答信号送信部は、前記移動端末からの前記プローブ要求信号を受信した際、前記移動端末に前記プローブ応答信号を送信することを特徴とする。
【0015】
前記ゲート通過検知システムにおいて、前記通過状態判定部は、前記各受信電力を所定の閾値と比較することにより、前記移動端末が前記ゲートの一方側か、他方側か、又は、前記ゲートを通過中かを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のゲート通過検知システムでは、ゲートの一方側と他方側とにそれぞれ基地局を配設し、ゲートを移動端末が通過する際に各基地局から受信したプローブ応答信号の受信電力を比較することで、移動端末のゲート通過状態を容易且つ確実に検知することができる。また、移動端末がゲートの一方側か、他方側か、又は、ゲートを通過中かを判定することができる。この判定結果に基づき、移動端末の移動方向を検知することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態のゲート通過検知システムの構成図である。
【図2】本実施形態のゲート通過検知システムを構成するゲート近傍に配設した基地局による通信エリアの説明図である。
【図3】本実施形態のゲート通過検知システムにおいて、移動端末の位置と、各基地局から受信したプローブ応答信号の受信電力との関係説明図である。
【図4】本実施形態のゲート通過検知システムを構成する移動端末、基地局及びゲート通過検知サーバの構成ブロック図である。
【図5】本実施形態のゲート通過検知システムを構成する移動端末の動作フローチャートである。
【図6】本実施形態のゲート通過検知システムを構成するゲート通過検知サーバの動作フローチャートである。
【図7】本実施形態のゲート通過検知システムにおける移動端末の位置判定テーブルの説明図である。
【図8】先行技術に係る患者呼出システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本実施形態のゲート通過検知システム10の構成図である。ゲート通過検知システム10は、例えば、病院12内に構築される患者呼出システムとネットワークが共有される。病院12の内と外は、例えば、病院12の入り口のゲート14によって仕切られる。
【0020】
ゲート通過検知システム10は、患者が所持する移動端末STと、ゲート14の内側(病院内)に配設されるゲート通過検知用の基地局APin(第1基地局)と、ゲート14の外側(病院外)に配設されるゲート通過検知用の基地局APout(第2基地局)と、基地局APin、APoutにネットワーク16を介して接続され、移動端末STから送信される信号に従い、移動端末STを所持した患者のゲート14の通過状態を検知するゲート通過検知サーバ18とを備える。
【0021】
また、ネットワーク16には、病院内の各所、例えば、各診療科の近傍に配設される複数の基地局AP1、AP2、…、APnと、移動端末STを所持した患者に対する呼出処理を行う患者呼出サーバ20とが接続される。基地局AP1、AP2、…、APn、APin、APout及び患者呼出サーバ20は、患者呼出システムを構成する。移動端末STと、基地局AP1、AP2、…、APn、APin、APoutとは、無線LANによる通信を行う。
【0022】
図2は、ゲート14の内側(病院内)に配設される基地局APinの通信可能な通信エリア22と、ゲート14の外側(病院外)に配設される基地局APoutの通信可能な通信エリア24との説明図である。基地局APin、APoutは、各通信エリア22、24がゲート14の近傍で重複する重複エリア26を形成するように設置される。
【0023】
ここで、通信エリア22、24及び重複エリア26は、図3に示すように定義する。図3は、移動端末STが基地局APin、APoutから受信するプローブ応答信号の各位置での受信電力PWin、PWoutを示す。通信エリア22、24及び重複エリア26は、移動端末STが通信限界Lminを超える受信電力PWin、PWoutのプローブ応答信号を受信する範囲である。この範囲において、移動端末STは、基地局APin、APoutとリンクし、パケット通信が可能な状態となる。
【0024】
図4は、ゲート通過検知システム10を構成する移動端末ST、基地局APin、APout及びゲート通過検知サーバ18の構成ブロック図である。
【0025】
移動端末STは、制御部28と、基地局AP1、AP2、…、APn、APin、APoutに対して無線LANによる通信を行う通信部30と、基地局AP1、AP2、…、APn、APin、APoutに送信するプローブ要求信号を生成するプローブ要求信号生成部32と、基地局AP1、AP2、…、APn、APin、APoutから受信したプローブ応答信号に従って基地局AP1、AP2、…、APn、APin、APoutを判定する基地局判定部34と、受信したプローブ応答信号の受信電力を計測する受信電力計測部36と、プローブ応答信号を送信した基地局AP1、AP2、…、APn、APin、APoutのID情報を含む基地局情報及び計測したプローブ応答信号の受信電力を記憶するメモリ38とを備える。また、移動端末STは、当該移動端末STを所持する患者が必要な操作を行う操作部40、診療科等の指示情報や移動端末STの返却要請を含む必要な情報を表示する表示部42、移動端末STの返却要請を含む必要な情報を報知するスピーカ44を備える。
【0026】
基地局APin、APoutは、制御部46と、移動端末STに対して無線LANによる通信を行う無線通信部48と、移動端末STから送信されたプローブ要求信号に基づいてプローブ応答信号を生成するプローブ応答信号生成部50と、プローブ要求信号を送信した移動端末STのID情報を含む移動端末情報、プローブ応答信号を送信した基地局APin、APoutのID情報を含む基地局情報、及び、移動端末STが計測した各基地局APin、APoutからのプローブ応答信号の受信電力を記憶するメモリ52と、ネットワーク16を介してゲート通過検知サーバ18と通信を行う有線通信部54とを備える。
【0027】
ゲート通過検知サーバ18は、制御部56と、ネットワーク16を介して基地局APin、APoutと通信を行う通信部58と、基地局APin、APoutから受信した基地局情報及びプローブ応答信号の受信電力に基づいて移動端末STの位置を判定する移動端末位置判定部60と、移動端末位置判定部60による判定結果に基づいて移動端末STに対する返却要請信号を生成する返却要請信号生成部62と、移動端末STの位置判定のための位置判定テーブルを含む情報を記憶するメモリ64とを備える。
【0028】
先ず、ゲート通過検知システム10とネットワーク16を共有する患者呼出システムの動作について説明する。
【0029】
患者が病院に来院すると、病院スタッフは、患者名や診療科を含む患者情報を患者呼出サーバ20に登録した後、移動端末STを患者に貸し出す。病院スタッフは、当該患者に対する診療業務の進行に従い、患者呼出サーバ20に進行状況を随時入力する。
【0030】
一方、患者が所持する移動端末STは、定期的にプローブ要求信号生成部32でプローブ要求信号を生成し、通信部30を介して送信する。基地局AP1、AP2、…、APn、APin又はAPoutは、移動端末STからプローブ要求信号を受信すると、診療業務の進行状況に応じた呼出情報を含むプローブ応答信号をプローブ応答信号生成部50で生成し、通信部40を介して移動端末STに送信する。プローブ応答信号を受信した移動端末STでは、プローブ応答信号に含まれる呼出情報に従い、次に移動すべき診療科等の指示情報が表示部42に表示される。
【0031】
所定の診療業務等が終了して帰宅する場合、患者は、移動端末STを病院に返却しなければならない。本実施形態のゲート通過検知システム10では、移動端末STの返却亡失を事前に回避することができる。
【0032】
そこで、ゲート通過検知システム10の動作につき、図5及び図6に示すフローチャートに従って説明する。なお、図5は、移動端末STの動作フローチャートであり、図6は、ゲート通過検知サーバ18の動作フローチャートである。
【0033】
移動端末STは、患者呼出システムとして機能する場合と同様に、定期的にプローブ要求信号を送信する(ステップS1)。すなわち、移動端末STの制御部28は、プローブ要求信号生成部32を制御してプローブ要求信号を生成し、通信部30を介してプローブ要求信号を外部に送信する。
【0034】
移動端末STを所持した患者がゲート14の近傍に配設された基地局APin又はAPoutの通信エリア22又は24内にいる場合(図2参照)、基地局APin又はAPoutの制御部46は、無線通信部48を介してプローブ要求信号を受信する。制御部46は、プローブ要求信号を受信すると、プローブ応答信号生成部50を制御してプローブ応答信号を生成する。生成されたプローブ応答信号は、無線通信部48を介して移動端末STに送信される。なお、プローブ応答信号には、プローブ応答信号を生成した基地局APin又はAPoutを特定するための基地局情報(基地局固有のIDであるBSSID(Basic Service Set Identifier))と、ゲート通過検知システム10を構成する通信グループを特定するための通信グループ情報(同一通信グループであることを示すIDであるESSID(Extended Service Set Identifier))とが含まれる。
【0035】
移動端末STは、基地局APin又はAPoutからプローブ応答信号を受信すると(ステップS2)、基地局判定部34により、受信したプローブ応答信号の通信グループ情報(ESSID)が移動端末STと一致する基地局APin又はAPoutからのプローブ応答信号であるか否かを確認する(ステップS3)。同一の通信グループである場合、基地局APin又はAPoutの基地局情報(BSSID)と、受信電力計測部36により計測したプローブ応答信号の受信電力PWとをメモリ38に記憶する(ステップS4)。
【0036】
移動端末STは、プローブ要求信号の周波数チャネルを変更しながら、ステップS1からの処理を繰り返す(ステップS5、S6)。この場合、基地局APin、APoutがいかなる周波数チャネルに設定されていても、プローブ要求信号を認識してプローブ応答信号を送信することができる。なお、基地局APin、APoutの周波数チャネルが既知の場合には、移動端末ST側で周波数チャネルを変更する必要がなく、従って、基地局情報(BSSID)及び受信電力PWを収集するのに要する時間を短縮することができる。
【0037】
次に、移動端末STの制御部28は、メモリ38に記憶された基地局APin又はAPoutからの情報をチェックし(ステップS7)、ステップS3で同一通信グループと判定された情報があり(ステップS8)、且つ、いずれの基地局APin又はAPoutともリンクしていない場合(ステップS9)、受信電力PWが大きい方の基地局APin又はAPoutを選択してリンクする(ステップS10)。
【0038】
なお、移動端末STが既にリンク中である場合には、例えば、他の基地局AP1、AP2、…、APnとの間で患者呼出処理が行われており、あるいは、既にゲート通過検知処理が行われているため、その処理が終了するまで待機することになる。このようなリンク処理を行うことにより、患者呼出システムやゲート通過検知システム10等、複数のシステム間において、基地局AP1、AP2、…、APn、APin、APout及び移動端末STを共有することができる。
【0039】
リンク先の基地局APin又はAPoutの基地局情報(BSSID)がゲート通過検知システム10を構成する基地局APin又はAPoutであることが確認されると(ステップS11)、移動端末STは、基地局情報(BSSID)及び受信電力PWを、リンク先の基地局APin又はAPoutを介してゲート通過検知サーバ18に送信する(ステップS12)。
【0040】
一方、移動端末STは、後述するように、ゲート通過検知サーバ18によって移動端末STを所持した患者がゲート14の外にいると判定され、移動端末STの返却要請信号を受信したとき(ステップS13)、表示部42及びスピーカ44を介してゲート14の外であることを通知し、移動端末STの返却を患者に促す(ステップS14)。
【0041】
次に、ゲート通過検知サーバ18の動作について説明する。
【0042】
ゲート通過検知サーバ18は、ネットワーク16を介して基地局情報(BSSID)及び受信電力PWを受信すると(ステップS21)、受信した情報に、ゲート14の内側の基地局APinからの基地局情報(BSSID)と、ゲート14の外側の基地局APoutからの基地局情報(BSSID)とがあるか否かを確認する(ステップS22、S23)。両方の基地局APin及びAPoutからの基地局情報(BSSID)がある場合、これらの基地局情報(BSSID)及び受信電力PWをメモリ64に記憶させる(ステップS24)。
【0043】
次いで、移動端末位置判定部60は、各受信電力PWと予め設定した閾値Lthとを比較し(ステップS25)、メモリ64に記憶されている位置判定テーブルを用いて移動端末STの位置を判定する(ステップS26)。なお、閾値Lthは、移動端末STが基地局APin、APoutとパケット通信可能な通信限界Lminよりも大きな値として設定されるものとする。
【0044】
図7は、移動端末STの位置判定のための位置判定テーブルを示す。図2、図3及び図7を用いて、移動端末STの位置を判定する方法を説明する。
【0045】
基地局APin、APoutから送信されたプローブ応答信号の受信電力PWをそれぞれPWin、PWoutとすると、PWin<Lth、且つ、PWout<Lthである場合、移動端末STは、通信エリア22又は24内に存在するが、不安定な状態であるため、その位置は不定と判定する。PWin≧Lth、且つ、PWout<Lthである場合、移動端末STは、通信エリア22内に存在することが確実であるため、ゲート14の内側に位置すると判定する。PWin≧Lth、且つ、PWout≧Lthである場合、移動端末STは、通信エリア22、24が重複する重複エリア26内に存在することが確実であるため、ゲート14を通過中であると判定する。PWin<Lth、且つ、PWout≧Lthである場合、移動端末STは、通信エリア24内に存在することが確実であるため、ゲート14の外側に位置すると判定する。
【0046】
ステップS26での位置判定の結果、移動端末STがゲート14の外側に位置するものと判定された場合(ステップS27)、制御部56は、患者が移動端末STを所持した状態で病院の外に移動しているものと判断し、返却要請信号生成部62を制御して返却要請信号を生成する。生成された返却要請信号は、通信部58から移動端末STがリンクしている基地局APin又はAPoutを介して、移動端末STに送信される(ステップS28)。
【0047】
返却要請信号を受信した移動端末STの制御部28は、移動端末STの返却を要請する情報を表示部42に表示させるとともに、スピーカ44を駆動してブザーや音声を出力させることにより、移動端末STを所持したまま病院の外に出たことを患者に知らせ、移動端末STの返却を促す(ステップS13、S14)。この場合、患者は、基地局APoutの通信エリア24の範囲内で移動端末STの返却を亡失していることを認識することができる。従って、移動端末STを速やかに返却することができる。
【0048】
なお、ゲート通過検知サーバ18は、移動端末STの位置判定結果に基づき、患者が所持している移動端末STが、ゲート14の内側の通信エリア22にあるのか、ゲート14の外側の通信エリア24にあるのか、あるいは、ゲート14を通過中なのかを判定することができる。従って、例えば、移動端末STのゲート14の近傍における位置を追跡することにより、移動端末STの移動方向を知ることもできる。
【0049】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更することが可能である。
【0050】
例えば、上述した実施形態では、1台の移動端末STのみを有するシステムについて説明したが、移動端末STを個別に識別可能であれば、複数台の移動端末STを有するシステムに適用することもできる。
【0051】
また、本発明のゲート通過検知システムは、判定した移動端末の位置に基づき、例えば、美術館や博物館等において、特定のエリアで特定の情報を案内するシステムに応用し、また、車両に移動端末を搭載し、車両の位置を追跡するシステムにも応用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10…ゲート通過検知システム
12…病院
14…ゲート
16…ネットワーク
18…ゲート通過検知サーバ
20…患者呼出サーバ
22、24…通信エリア
26…重複エリア
32…プローブ要求信号生成部
34…基地局判定部
36…受信電力計測部
42…表示部
44…スピーカ
50…プローブ応答信号生成部
60…移動端末位置判定部
62…返却要請信号生成部
AP1〜APn、APin、APout…基地局
ST…移動端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動端末と、
前記移動端末が通過するゲートの一方側に配設され、前記移動端末と無線LANによる通信を行う第1基地局と、
前記移動端末が通過する前記ゲートの他方側に配設され、前記移動端末と無線LANによる通信を行う第2基地局と、
前記第1基地局及び前記第2基地局にネットワークを介して接続され、前記移動端末の前記ゲートの通過状態を検知するゲート通過検知サーバとを備え、
前記移動端末が前記第1基地局の通信エリア又は前記第2基地局の通信エリアに入った際、前記移動端末にプローブ応答信号を送信するプローブ応答信号送信部を有し、
前記移動端末は、前記第1基地局及び前記第2基地局から受信した前記プローブ応答信号の各受信電力を、前記第1基地局又は前記第2基地局を介して前記ゲート通過検知サーバに送信する受信電力送信部を有し、
前記ゲート通過検知サーバは、送信された前記各受信電力を比較することで、前記移動端末の前記ゲートの通過状態を判定する通過状態判定部を有することを特徴とするゲート通過検知システム。
【請求項2】
請求項1記載のゲート通過検知システムにおいて、
前記移動端末は、前記第1基地局及び前記第2基地局に対してプローブ要求信号を送信するプローブ要求信号送信部を有し、
前記プローブ応答信号送信部は、前記移動端末からの前記プローブ要求信号を受信した際、前記移動端末に前記プローブ応答信号を送信することを特徴とするゲート通過検知システム。
【請求項3】
請求項1記載のゲート通過検知システムにおいて、
前記通過状態判定部は、前記各受信電力を所定の閾値と比較することにより、前記移動端末が前記ゲートの一方側か、他方側か、又は、前記ゲートを通過中かを判定することを特徴とするゲート通過検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−268381(P2010−268381A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120033(P2009−120033)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】