説明

ゲート駆動回路

【課題】ゲート駆動信号の伝達遅延時間のばらつきを低減することができるゲート駆動回路を提供する。
【解決手段】ゲート駆動回路1は、トランス2を駆動するトランス駆動回路部3と、トランス2の一次側の駆動タイミングを生成すると共に、入力ゲート駆動信号のON状態時とOFF状態時とでトランス2の一次側駆動電圧変化率を異なるように設定するタイミング生成部4と、トランス2の二次側電圧を微分することで、トランス2の二次側電圧変化率を検出する微分回路部5と、入力ゲート駆動信号のOFF状態時の微分値レベルを検出するレベル検出回路部6と、入力ゲート駆動信号のON状態時の微分値レベルを検出するレベル検出回路部7と、検出レベル検出回路部6,7と接続されたR端子及びS端子を有し、出力ゲート駆動信号を生成・保持するフリップフロップ回路部8とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子のゲートを駆動するゲート駆動回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のゲート駆動回路としては、例えば特許文献1に記載されているように、スイッチング素子のゲートを駆動するためのゲート駆動信号を、信号絶縁トランスを用いて絶縁伝達するようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平2−11960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トランスを用いてゲート駆動信号を絶縁伝達するゲート駆動回路では、ゲート駆動信号の伝達遅延時間のばらつきを少なくすることが要求されている。しかし、上記従来技術においては、そのような要求については何ら考慮されていない。
【0005】
本発明の目的は、ゲート駆動信号の伝達遅延時間のばらつきを低減することができるゲート駆動回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、スイッチング素子のゲートを駆動するためのゲート駆動信号をトランスにより絶縁伝達して出力するゲート駆動回路において、入力ゲート駆動信号の動作状態に応じてトランスの一次側電圧変化率を複数設定する電圧変化率設定手段と、電圧変化率設定手段により設定された一次側電圧変化率に応じてトランスの一次側を駆動するトランス駆動手段と、トランスの二次側電圧変化率に基づいて、スイッチング素子に対する出力ゲート駆動信号を生成する出力ゲート駆動信号生成手段とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
このような本発明のゲート駆動回路においては、入力ゲート駆動信号に応じてトランスの一次側電圧変化率を複数設定し、これらの一次側電圧変化率に応じてトランスを駆動し、その時に得られるトランスの二次側電圧変化率に基づいて、スィッチング素子に対する出力ゲート駆動信号を生成する。このとき、入力ゲート駆動信号のON状態時とOFF状態時とで異なる一次側電圧変化率を設定しても良いし、入力ゲート駆動信号が変化する時と入力ゲート駆動信号が変化しない時とで異なる一次側電圧変化率を設定しても良い。例えば入力ゲート駆動信号の立ち上がり時及び立ち下がり時にトランスの一次側電圧を変化させれば、ほぼ同じタイミングでトランスの二次側電圧が変化する。このため、トランスの二次側電圧変化率に基づいて出力ゲート駆動信号を生成する際には、入力ゲート駆動信号の立ち上がり時に対応する二次側電圧変化率と入力ゲート駆動信号の立ち下がり時に対応する二次側電圧変化率とに基づいて、出力ゲート駆動信号が生成される。つまり、入力ゲート駆動信号の変化のタイミングに応じて変化するような出力ゲート駆動信号が生成されることになる。これにより、トランスによるゲート駆動信号の絶縁伝達の遅延時間のばらつきを低減することができる。
【0008】
好ましくは、出力ゲート駆動信号生成手段は、トランスの二次側電圧を微分することで二次側電圧変化率を検出し、二次側電圧変化率に応じた微分値を出力する手段を有し、二次側電圧変化率に応じた微分値に基づいて出力ゲート駆動信号を生成する。
【0009】
このようにトランスの二次側電圧を微分することにより、トランスの二次側電圧変化率を簡単に検出することができる。
【0010】
このとき、好ましくは、電圧変化率設定手段は、入力ゲート駆動信号のON状態時とOFF状態時とで異なる一次側電圧変化率を設定し、出力ゲート駆動信号生成手段は、入力ゲート駆動信号のON状態時に対応する微分値を検出する手段と、入力ゲート駆動信号のOFF状態時に対応する微分値を検出する手段と、ON状態時に対応する微分値とOFF状態時に対応する微分値とに基づいて、出力ゲート駆動信号を生成・保持する手段とを有する。
【0011】
この場合には、例えば入力ゲート駆動信号の立ち上がり時にはON状態時の一次側電圧変化率が設定され、入力ゲート駆動信号の立ち下がり時にはOFF状態時の一次側電圧変化率が設定される。このため、入力ゲート駆動信号のON状態時に対応する微分値と入力ゲート駆動信号のOFF状態時に対応する微分値とを検出し、これらの微分値に基づいて出力ゲート駆動信号を生成・保持することにより、入力ゲート駆動信号の変化のタイミングに応じて変化するような出力ゲート駆動信号を確実に生成することができる。
【0012】
また、電圧変化率設定手段は、入力ゲート駆動信号が変化する時と入力ゲート駆動信号が変化しない時とで異なる一次側電圧変化率を設定し、出力ゲート駆動信号生成手段は、入力ゲート駆動信号が変化する時に対応する微分値に応じたパルスを発生させる手段と、パルスに基づいて、トランスの二次側電圧をラッチして出力ゲート駆動信号を生成する手段とを有しても良い。
【0013】
この場合には、入力ゲート駆動信号が変化する時、つまり入力ゲート駆動信号の立ち上がり時及び立ち下がり時に対応する微分値に応じたパルスをそれぞれ発生させ、これらのパルスに基づいて、トランスの二次側電圧をラッチして出力ゲート駆動信号を生成することにより、入力ゲート駆動信号の変化のタイミングに応じて変化するような出力ゲート駆動信号を確実に生成することができる。
【0014】
このとき、電圧変化率設定手段は、入力ゲート駆動信号が変化しない時でも、入力ゲート駆動信号が変化する時と同等の一次側電圧変化率を定期的なタイミングで発生させるように設定し、パルスを発生させる手段は、入力ゲート駆動信号が変化する時及び定期的なタイミング時に対応する微分値に応じたパルスを発生させることが好ましい。
【0015】
このように入力ゲート駆動信号が変化する時に対応する微分値に応じたパルスだけでなく、定期的なタイミング時に対応する微分値に応じたパルスを発生させることにより、例えばノイズ等の原因によって、入力ゲート駆動信号の立ち上がり時に対応する微分値に応じたパルスのタイミングで出力ゲート駆動信号がラッチされなくても、その後に得られたパルスのタイミングで出力ゲート駆動信号がラッチされるようになるため、出力ゲート駆動信号を確実に生成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ゲート駆動信号の伝達遅延時間のばらつきを低減することができる。これにより、スイッチング素子に対して品質の良いゲート駆動回路を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係わるゲート駆動回路の一実施形態を示す回路構成図である。
【図2】図1に示したゲート駆動回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明に係わるゲート駆動回路の他の実施形態を示す回路構成図である。
【図4】図3に示したゲート駆動回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】図3に示したゲート駆動回路の動作の変形例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係わるゲート駆動回路の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係わるゲート駆動回路の一実施形態を示す回路構成図である。同図において、本実施形態のゲート駆動回路1は、図示しないIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等のパワースイッチング素子のゲートを駆動する回路である。
【0020】
ゲート駆動回路1は、トランス2と、トランス駆動回路部3と、タイミング生成部4と、微分回路部5と、レベル検出回路部6,7と、フリップフロップ回路部8とを有している。
【0021】
トランス2は、パワースイッチング素子のゲートを駆動するためのゲート駆動信号を絶縁伝達する絶縁電源回路である。トランス2の一次側は、トランス駆動回路部3と接続されている。トランス2の二次側は、ダイオード9を介して電圧源10と接続されている。
【0022】
タイミング生成部4は、トランス2の一次側の駆動周期及び駆動タイミングを生成すると共に、トランス2の一次側駆動電圧の時間変化率(傾き)を2種類設定する。タイミング生成部4は、図2に示すように、入力ゲート駆動信号SGinのON/OFF(H/L)が変化する際に、トランス2の一次側駆動電圧VT1の極性(H/L)を強制的に反転させる。ここでは、入力ゲート駆動信号SGinの立ち上がりタイミングで、トランス2の一次側駆動電圧VT1を強制的にOFFからON(LからH)に切り替え、入力ゲート駆動信号SGinの立ち下がりタイミングで、トランス2の一次側駆動電圧VT1を強制的にONからOFF(HからL)に切り替える。
【0023】
また、タイミング生成部4は、図2に示すように、入力ゲート駆動信号SGinのON状態時とOFF状態時とで、トランス2の一次側駆動電圧VT1の立ち上がり及び立ち下がりの時間変化率(トランス一次側駆動電圧変化率)を異なるように設定する。具体的には、入力ゲート駆動信号SGinのON(H)状態時のトランス一次側駆動電圧変化率は、入力ゲート駆動信号SGinのOFF(L)状態時のトランス一次側駆動変化率よりも高くなっている。
【0024】
トランス駆動回路部3は、タイミング生成部4により得られたトランス2の一次側の駆動周期及び駆動タイミングとトランス2の一次側駆動電圧変化率とに応じて、トランス2の一次側を駆動する。トランス2の二次側電圧VT2は、図2に示すように、トランス2の巻き線数比に応じて一次側駆動電圧VT1と同じタイミングで振幅が変化する。
【0025】
微分回路部5は、トランス2の二次側と接続されている。微分回路部5は、図2に示すように、トランス2の二次側電圧VT2を微分することで、トランス2の二次側電圧VT2の時間変化率(トランス二次側電圧変化率)を検出し、このトランス二次側電圧変化率に応じた微分出力(微分値)Doutを得る。
【0026】
このとき、上述したように入力ゲート駆動信号SGinのON状態時とOFF状態時とでトランス一次側駆動電圧変化率が異なるため、両状態時で微分値Doutも異なるようになる。具体的には、入力ゲート駆動信号SGinのON状態時では、入力ゲート駆動信号SGinのOFF状態時に比べて、微分値Doutの高さ(レベル)が大きくなり、微分値Doutの時間幅が小さくなる。
【0027】
レベル検出回路部6,7は、微分回路部5と並列に接続されている。レベル検出回路部6は、図2に示すように、入力ゲート駆動信号SGinのOFF状態時における微分値Doutのレベルを検出し、レベル検出出力Lout1を得る。レベル検出回路部7は、図2に示すように、入力ゲート駆動信号SGinのON状態時における微分値Doutのレベルを検出し、レベル検出出力Lout2を得る。
【0028】
このとき、レベル検出回路部7で検出される微分値Doutのレベル範囲は、レベル検出回路部6で検出される微分値Doutのレベル範囲よりも高くなっている。レベル検出出力Lout1の時間幅は、入力ゲート駆動信号SGinのOFF状態時における微分値Doutの時間幅と等しく、レベル検出出力Lout2の時間幅は、入力ゲート駆動信号SGinのON状態時における微分値Doutの時間幅と等しくなっている。
【0029】
フリップフロップ回路部8は、RS−FFで構成され、レベル検出回路部6,7と接続されている。フリップフロップ回路部8のR(リセット)端子はレベル検出回路部6と接続され、フリップフロップ回路部8のS(セット)端子はレベル検出回路部7と接続されている。これにより、図2に示すように、パワースイッチング素子に対する出力ゲート駆動信号SGoutが生成され保持される。
【0030】
具体的には、入力ゲート駆動信号SGinの立ち上がりタイミングに対応するトランス一次側駆動電圧変化率に応じたレベル検出出力Lout2の立ち上がりタイミングで立ち上がり、入力ゲート駆動信号SGinの立ち下がりタイミングに対応するトランス一次側駆動電圧変化率に応じたレベル検出出力値Lout1の立ち上がりタイミングで立ち下がるような出力ゲート駆動信号SGoutが生成される。このように入力ゲート駆動信号SGinから出力ゲート駆動信号SGoutが復元されることとなる。
【0031】
以上において、タイミング生成部4は、入力ゲート駆動信号の動作状態に応じてトランス2の一次側電圧変化率を複数設定する電圧変化率設定手段を構成する。トランス駆動回路部3は、電圧変化率設定手段により設定された一次側電圧変化率に応じてトランス2の一次側を駆動するトランス駆動手段を構成する。微分回路部5、レベル検出回路部6,7及びフリップフロップ回路部8は、トランス2の二次側電圧変化率に基づいて、スイッチング素子に対する出力ゲート駆動信号を生成する出力ゲート駆動信号生成手段を構成する。
【0032】
また、微分回路部5は、トランス2の二次側電圧を微分することで二次側電圧変化率を検出し、二次側電圧変化率に応じた微分値を出力する手段を構成する。レベル検出回路部7は、入力ゲート駆動信号のON状態時に対応する微分値を検出する手段を構成する。レベル検出回路部6は、入力ゲート駆動信号のOFF状態時に対応する微分値を検出する手段を構成する。フリップフロップ回路部8は、ON状態時に対応する微分値とOFF状態時に対応する微分値とに基づいて、出力ゲート駆動信号を生成・保持する手段を構成する。
【0033】
以上のように本実施形態にあっては、タイミング生成部4によって入力ゲート駆動信号SGinのON状態時とOFF状態時とで異なるトランス一次側駆動電圧変化率を設定し、微分回路部5によってトランス二次側電圧変化率を検出して微分値Doutを出力し、レベル検出回路部6,7によって微分値Doutのレベルを検出し、その時のレベル検出出力Lout1,Lout2をフリップフロップ回路部8のR端子及びS端子に入力する。従って、入力ゲート駆動信号SGinの立ち上がりタイミングに応じて立ち上がり、入力ゲート駆動信号SGinの立ち下がりタイミングに応じて立ち下がるような出力ゲート駆動信号SGoutが得られる。これにより、トランス2によるゲート駆動信号の絶縁伝達の遅延時間を一定としつつ、ゲート駆動信号の絶縁伝達の遅延自体を十分少なくすることができる。
【0034】
なお、本実施形態では、入力ゲート駆動信号SGinのON状態時とOFF状態時とで、トランス2の一次側駆動電圧VT1の立ち上がり及び立ち下がり双方の時間変化率を変えているが、特にそれには限られず、一次側駆動電圧VT1の立ち上がり及び立ち下がりのいずれか一方のみの時間変化率を変化させても良い。
【0035】
図3は、本発明に係わるゲート駆動回路の他の実施形態を示す回路構成図である。図中、上述した実施形態と同一または同等の要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
同図において、本実施形態のゲート駆動回路1は、上記のトランス2及びトランス駆動回路部3と、タイミング生成部4と、微分回路部5と、パルス検出回路部11と、ラッチ回路部12とを有している。
【0037】
タイミング生成部4は、図4に示すように、入力ゲート駆動信号SGinのON/OFF(H/L)が変化する際に、トランス2の一次側駆動電圧VT1の極性(H/L)を強制的に反転させる。ここでは、入力ゲート駆動信号SGinの立ち上がり及び立ち下がりのタイミングで、トランス2の一次側駆動電圧VT1を強制的にONからOFF(HからL)に切り替える。
【0038】
また、タイミング生成部4は、図4に示すように、入力ゲート駆動信号SGinのON/OFFが変化する時と入力ゲート駆動信号SGinのON/OFFが変化しない時(通常動作時)とで、トランス2の一次側駆動電圧VT1の立ち下がりの時間変化率(トランス一次側駆動電圧変化率)を異なるように設定する。
【0039】
具体的には、入力ゲート駆動信号SGinのON/OFFが変化する時は、トランス2の一次側駆動電圧VT1を時間T1でHからLに切り替えるようにする。なお、通常動作時には、入力ゲート駆動信号SGinのON/OFFが変化する時に比べて、トランス一次側駆動変化率が十分高くなっている。
【0040】
さらに、タイミング生成部4は、図4に示すように、トランス2の一次側駆動電圧VT1がHからLに切り替わってから時間T2経過後は、トランス2の一次側駆動電圧VT1を入力ゲート駆動信号SGinのH/Lに応じた駆動極性に設定し、その後通常動作時の駆動周期でトランス2が駆動されるようにする。
【0041】
微分回路部5は、図4に示すように、トランス2の二次側電圧VT2を微分することで、トランス2の二次側電圧変化率(トランス二次側電圧変化率)を検出し、このトランス二次側電圧変化率に応じた微分出力(微分値)Doutを得る。
【0042】
このとき、上述したように入力ゲート駆動信号SGinのON/OFFが変化する時と通常動作時とでトランス一次側駆動電圧変化率が異なるため、両動作時で微分値Doutの時間幅が異なるようになる。具体的には、入力ゲート駆動信号SGinのON/OFFが変化する時は、通常動作時に比べて微分値Doutの時間幅が大きくなる。
【0043】
なお、微分回路部5は、特に図示はしないが、微分値Doutの上限をクランプ(制限)する機能を有している。このため、入力ゲート駆動信号SGinのON/OFFが変化する時と通常動作時とで微分値Doutのレベルが等しくなっている。
【0044】
パルス検出回路部11は、微分回路部5と接続されている。パルス検出回路部11は、図4に示すように、入力ゲート駆動信号SGinのON/OFFが変化する時の微分値Doutの時間幅を検出し、当該微分値Doutに応じたパルス信号(クロック)Poutを出力する。
【0045】
具体的には、パルス検出回路部11は、入力ゲート駆動信号SGinのON/OFFが変化する時の微分値Doutの立ち下がりタイミングから時間T3経過すると、時間幅T4をもったパルス信号Poutを出力する。このとき、T1+T2<T3+T4、T1>T3とすることにより、時間幅T4経過後におけるトランス2の二次側電圧VT2は、入力ゲート駆動信号SGinのH/Lに応じた電圧極性となる。
【0046】
ラッチ回路部12は、トランス2の二次側及びパルス検出回路部11と接続されている。ラッチ回路部12は、パルス検出回路部11から出力されたパルス信号Poutの立ち下がりタイミングでトランス2の二次側電圧VT2の極性(H/L)をラッチする。これにより、図4に示すように、パワースイッチング素子に対する出力ゲート駆動信号SGoutが生成される。
【0047】
具体的には、入力ゲート駆動信号SGinの立ち上がりタイミングに対応するトランス一次側駆動電圧変化率に応じたパルス信号Poutの立ち下がりタイミングで立ち上がり、入力ゲート駆動信号SGinの立ち下がりタイミングに対応するトランス一次側駆動電圧変化率に応じたパルス信号Poutの立ち下がりタイミングで立ち下がるような出力ゲート駆動信号SGoutが生成される。このように入力ゲート駆動信号SGinから出力ゲート駆動信号SGoutが復元されることとなる。
【0048】
以上において、微分回路部5、パルス検出回路部11及びラッチ回路部12は、トランス2の二次側電圧変化率に基づいて、スイッチング素子に対する出力ゲート駆動信号を生成する出力ゲート駆動信号生成手段を構成する。
【0049】
また、パルス検出回路部11は、入力ゲート駆動信号が変化する時に対応する微分値に応じたパルスを発生させる手段を構成する。ラッチ回路部12は、パルスに基づいて、トランス2の二次側電圧をラッチして出力ゲート駆動信号を生成する手段を構成する。
【0050】
以上のように本実施形態にあっては、タイミング生成部4によって入力ゲート駆動信号SGinが変化する時と変化しない時とで異なるトランス一次側駆動電圧変化率を設定し、微分回路部5によってトランス二次側電圧変化率を検出して微分値Doutを出力し、パルス検出回路部11によって入力ゲート駆動信号SGinが変化する時に対応する微分値Doutに応じたパルス信号Poutを発生させ、ラッチ回路部12によって当該パルス信号Poutに応じたタイミングでトランス2の二次側電圧VT2をラッチする。従って、入力ゲート駆動信号SGinの立ち上がりタイミングに応じて立ち上がり、入力ゲート駆動信号SGinの立ち下がりタイミングに応じて立ち下がるような出力ゲート駆動信号SGoutが得られる。これにより、トランス2によるゲート駆動信号の絶縁伝達の遅延時間を一定とすることができる。
【0051】
また、入力ゲート駆動信号SGinが変化する時のトランス一次側駆動電圧変化率とパルス信号(クロック)Poutの時間幅とを適切に設定することで、トランス2によるゲート駆動信号の絶縁伝達の遅延を少なくすることが可能となる。
【0052】
なお、本実施形態では、入力ゲート駆動信号SGinのON/OFFが変化する時のみ、パルス検出回路部11によりパルス信号Poutを発生させるようにしたが、図5に示すように、入力ゲート駆動信号SGinのON/OFFが変化する時以外でも、定期的にパルス信号Poutを発生させても良い。
【0053】
この場合、タイミング生成部4は、図5に示すように、入力ゲート駆動信号SGinのON/OFFが変化しない時でも、入力ゲート駆動信号SGinのON/OFFが変化する時と同等のトランス一次側駆動電圧変化率を定期的に発生させるように設定する。すると、入力ゲート駆動信号SGinのON/OFFが変化しない時でも、定期的にパルス信号(クロック)Poutが出力されるようになり、そのパルス信号Poutに応じたタイミングでトランス2の二次側電圧VT2がラッチされることで、出力ゲート駆動信号SGoutが生成される。
【0054】
このように構成することで、万が一ノイズ等が原因で、入力ゲート駆動信号SGinがOFFからONに変化する時に対応するパルス信号Poutのタイミングでトランス2の二次側電圧VT2がラッチされなくても、その後に入力ゲート駆動信号SGinがON状態となっている期間内に発生するパルス信号Poutのタイミングでトランス2の二次側電圧VT2がラッチされるようになる。従って、出力ゲート駆動信号SGoutをパワースイッチング素子に確実に供給することができる。
【0055】
また、本実施形態では、入力ゲート駆動信号SGinが変化する時と変化しない通常動作時とで、トランス2の一次側駆動電圧VT1の立ち下がり及び立ち上がりのいずれか一方のみの時間変化率を変えているが、特にそれには限られず、一次側駆動電圧VT1の立ち下がり及び立ち上がり双方の時間変化率を変化させても良い。
【0056】
以上、本発明に係わるゲート駆動回路の好適な実施形態について幾つか説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、フルブリッジ方式の電源トランス駆動を示したが、本発明は、ハーフブリッジ方式やプッシュプル方式等、トランスを用いた絶縁電源であれば、適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…ゲート駆動回路、2…トランス、3…トランス駆動回路部(トランス駆動手段)、4…タイミング生成部(電圧変化率設定手段)、5…微分回路部(出力ゲート駆動信号生成手段)、6…レベル検出回路部(出力ゲート駆動信号生成手段)、7…レベル検出回路部(出力ゲート駆動信号生成手段)、8…フリップフロップ回路部(出力ゲート駆動信号生成手段)、11…パルス検出回路部(出力ゲート駆動信号生成手段)、12…ラッチ回路部(出力ゲート駆動信号生成手段)。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子のゲートを駆動するためのゲート駆動信号をトランスにより絶縁伝達して出力するゲート駆動回路において、
入力ゲート駆動信号の動作状態に応じて前記トランスの一次側電圧変化率を複数設定する電圧変化率設定手段と、
前記電圧変化率設定手段により設定された前記一次側電圧変化率に応じて前記トランスの一次側を駆動するトランス駆動手段と、
前記トランスの二次側電圧変化率に基づいて、前記スイッチング素子に対する出力ゲート駆動信号を生成する出力ゲート駆動信号生成手段とを備えることを特徴とするゲート駆動回路。
【請求項2】
前記出力ゲート駆動信号生成手段は、前記トランスの二次側電圧を微分することで前記二次側電圧変化率を検出し、前記二次側電圧変化率に応じた微分値を出力する手段を有し、前記二次側電圧変化率に応じた微分値に基づいて前記出力ゲート駆動信号を生成することを特徴とする請求項1記載のゲート駆動回路。
【請求項3】
前記電圧変化率設定手段は、前記入力ゲート駆動信号のON状態時とOFF状態時とで異なる前記一次側電圧変化率を設定し、
前記出力ゲート駆動信号生成手段は、前記入力ゲート駆動信号のON状態時に対応する前記微分値を検出する手段と、前記入力ゲート駆動信号のOFF状態時に対応する前記微分値を検出する手段と、前記ON状態時に対応する微分値と前記OFF状態時に対応する微分値とに基づいて、前記出力ゲート駆動信号を生成・保持する手段とを有することを特徴とする請求項2記載のゲート駆動回路。
【請求項4】
前記電圧変化率設定手段は、前記入力ゲート駆動信号が変化する時と前記入力ゲート駆動信号が変化しない時とで異なる前記一次側電圧変化率を設定し、
前記出力ゲート駆動信号生成手段は、前記入力ゲート駆動信号が変化する時に対応する前記微分値に応じたパルスを発生させる手段と、前記パルスに基づいて、前記トランスの二次側電圧をラッチして前記出力ゲート駆動信号を生成する手段とを有することを特徴とする請求項2記載のゲート駆動回路。
【請求項5】
前記電圧変化率設定手段は、前記入力ゲート駆動信号が変化しない時でも、前記入力ゲート駆動信号が変化する時と同等の前記一次側電圧変化率を定期的なタイミングで発生させるように設定し、
前記パルスを発生させる手段は、前記入力ゲート駆動信号が変化する時及び前記定期的なタイミング時に対応する前記微分値に応じたパルスを発生させることを特徴とする請求項4記載のゲート駆動回路。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−124830(P2012−124830A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275799(P2010−275799)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】