説明

コイルスプリングの防振機構およびこれを用いた倍力装置

【課題】コイルスプリングの振動を減衰して異音の発生を抑制しつつ、生産性を向上する。
【解決手段】リターンスプリング20を支持するスプリングリテーナ24は、台座リテーナ25と把持用リテーナ26とから構成されている。そして、リターンスプリング20の座巻き部20aが台座リテーナ25の把持部30aと把持用リテーナ26の把持部31aとの間に、弾性的にかつ堅固に把持される。したがって、リターンスプリング20の振動が強制的に減衰され、リターンスプリング20の座巻き部20aと2巻き目の部分との間に微小隙間があっても、リターンスプリング20の振動による異音の発生が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力手段に加えられる入力を動力により倍力して出力する、負圧倍力装置や液圧倍力装置等の流体圧倍力装置等の各種装置に用いられるコイルスプリングの防振機構の技術分野に関し、特に、装着された状態で振動により発生する異音を抑制することのできるコイルスプリングの防振機構およびこれを用いた倍力装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のブレーキシステムにおいては、小さなペダル踏力でも大きなブレーキ力を得ることができるようにするために、従来、ペダル踏力を流体圧で倍力して大きな出力を発生する流体圧倍力装置が多々採用されている。このような流体圧倍力装置の1つとして、動力としての負圧でペダル踏力を倍力して大きな出力を得る負圧倍力装置がきわめてよく知られている。
【0003】
図6は、このような従来の一般的な負圧倍力装置を示す断面図である。図中、1は負圧倍力装置、2はフロントシェル、3はリヤシェル、4はパワーピストン部材、5はダイヤフラム、6はパワーピストン、7は負圧に保持される定圧室、8は作動時に大気が導入される変圧室、9はバルブボディ、10は入力軸、11は弁プランジャ、12は弁プランジャ11に設けられた大気弁座、13はバルブボディ9に設けられた負圧弁座、14は制御弁体、15は制御弁、16,17,18は通路孔、19は出力軸、20はパワーピストン6を非作動位置方向に常時付勢するリターンスプリング、21はリアクションディスク、22は負圧導入管、および23は大気導入口である。
【0004】
この負圧倍力装置1においては、定圧室7には常時負圧が負圧導入管22を介して導入されている。そして、負圧倍力装置1の非作動状態では、制御弁15の大気弁座12が制御弁体14に当接しているとともに、制御弁体14が負圧弁座13からわずか離座しており、制御弁15は非作動状態となっている。したがって、変圧室8は、大気から遮断され、かつ通路孔17,16、制御弁体14と負圧弁座13との間の隙間および通路孔18を介して定圧室7に連通されていて、この変圧室8には負圧が導入されている。
【0005】
この非作動状態から、図示しないブレーキペダルが踏み込まれると、入力軸10が前方(図6において左方)へストロークして、制御弁体14が負圧弁座13に着座し、その後、大気弁座12が制御弁体14から離れる。すなわち、制御弁15が切り換えられる。これにより、変圧室8が定圧室7から遮断されるとともに大気に連通する。すると、大気が大気導入口23から制御弁体14と大気弁座12との間の隙間および通路孔16,17を介して変圧室8に導入される。これにより、変圧室8と定圧室7との間に差圧が生じるので、パワーピストン部材4およびダイヤフラム5からなるパワーピストン6が前進(左方へ移動)して出力を発生する。この出力は、バルブボディ9、リアクションディスク21および出力軸19を介して図示しないブレーキマスタシリンダに伝達される。すると、ブレーキマスタシリンダが作動してブレーキ圧を発生する。
【0006】
ブレーキマスタシリンダのブレーキ圧による反力で、出力軸19がリアクションディスク21を押圧するので、リアクションディスク21がバルブボディ9と出力軸19との間に挟圧されて弾性変形し、弁プランジャ11に当接する。すると、リアクションディスク21の弾性変形により発生する力が弁プランジャ11および入力軸10を介してブレーキペダルに反力として伝えられる。
【0007】
変圧室8の圧力が高くなるにつれて、パワーピストン6の出力が大きくなってバルブボディ9が更に前進するので、制御弁体14が負圧弁座13との着座を保持しながら大気弁座12に当接する。これにより、変圧室8にはそれ以上大気が導入されなく、変圧室8の圧力は入力軸10に加えられた入力(ペダル踏力に関係した力)に対応した圧力となる。このときのパワーピストン6の出力はペダル踏力を倍力した大きな出力となり、その結果、マスタシリンダは入力軸10の入力に対応したブレーキ圧を発生するようになる。このマスタシリンダのブレーキ圧により、ブレーキが作動する。このときのブレーキ力はペダル踏力を倍力した大きなブレーキ力となる。
【0008】
ブレーキペダルを解放すると、入力軸10および弁プランジャ11がともに後退し、制御弁体14が負圧弁座13から離座する。すると、変圧室8が定圧室7に連通し、変圧室8に導入された大気は通路孔17,16、制御弁体14と負圧弁座13との隙間、通路孔18および定圧室7を介して負圧導入管22から排出される。これにより、変圧室8の圧力が低下し、リターンスプリング20のばね力で、バルブボディ9、パワーピストン6および出力軸19がともに後退して非作動位置となり、また制御弁15が図示の非作動状態となる。こうして、この負圧倍力装置1では、小さなペダル踏力で大きな出力が得られるようになる。
【0009】
ところで、この負圧倍力装置1のリターンスプリング20には、一般にコイルスプリングが用いられている。このコイルスプリングは、通常ばね線材から形成され、両端部においてコイルスプリングの長手方向に直交する面内でほぼ1巻き巻かれた座巻き部(1巻き目の部分)と、これらの座巻き部の間に連続して螺旋状に巻かれたコイル部とからなっている。通常、この種のコイルスプリングは、その座巻き部の一部と2巻き目の部分の一部との間に微小隙間が生じている。
【0010】
このように、コイルスプリングの座巻き部の一部と2巻き目の部分の一部との間に微小隙間が生じていると、ブレーキペダルが踏み込まれてパワーピストン6が前進した負圧倍力装置1の作動時に、リターンスプリング20のばね性でパワーピストン6が振動する。そして、このパワーピストン6の振動が、リアクションディスク21、弁プランジャ11および入力軸10を介してブレーキペダルに伝達されるため、ペダルフィーリングが悪くなるいう問題がある。また、パワーピストン6の振動によりコイルスプリングが振動するが、コイルスプリングが振動すると、微小隙間を介して離間しているコイルスプリングの座巻き部の一部と2巻き目の部分の一部とが接触するため、異音が発生するという問題がある。
【0011】
そこで、コイルスプリングの2巻き目の所定範囲の部分を座巻き部に密着させることで、コイルスプリングが振動しても、2巻きの部分と座巻き部の一部との接離による異音の発生を防止した倍力装置が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【特許文献1】特開2006−341790号公報。
【特許文献2】特開2006−77904号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前述のようにコイルスプリングの2巻き目の所定範囲の部分を座巻き部に密着させる構成においては、コイルスプリングの振動を確実に減衰させることは難しい。しかも、コイルスプリングの振動による異音の発生を効果的に防止するためには、2巻き目の部分を座巻き部との密着度合いや密着範囲等の寸法管理を高精度に厳しく行う必要がある。このため、コイルスプリングの防振機構の生産性があまり良好でないばかりでなく、コストが高いという問題がある。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、コイルスプリングの振動を減衰して異音の発生を抑制しつつ、生産性を向上することのできるコイルスプリングの防振機構およびこれを用いた倍力装置を提供することである。
また、本発明の他の目的は、パワーピストンのリターンスプリングを構成するコイルスプリングに起因する振動を減衰して操作フィーリングを良好にできる倍力装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述の課題を解決するために、請求項1に係る発明のコイルスプリングの防振機構は、両端部の座巻き部と、これらの座巻き部の間に連続して設けられるコイル部とからなるコイルスプリングと、前記座巻き部の一方を支持するスプリングリテーナとを備え、前記スプリングリテーナが前記座巻き部の一方を把持する一対の把持部を備えていることを特徴としている。
【0015】
また、請求項2の発明は、前記一対の把持部のうち、一方の把持部が前記コイルスプリングの座巻き部の少なくとも外周側を把持し、他方の把持部が前記コイルスプリングの座巻き部の少なくとも内周側を把持することを特徴としている。
【0016】
更に、請求項3の発明は、前記スプリングリテーナが、前記コイルスプリング側の面と反対側の面がスプリングリテーナ支持部材に前記軸方向および径方向のいずれにも支持されることを特徴としている。
【0017】
更に、請求項4の発明は、前記スプリングリテーナは第1リテーナと第2リテーナとからなり、前記第1リテーナに、前記一対の把持部のうち一方の把持部が設けられているとともに、前記第2リテーナに、前記一対の把持部のうち他方の把持部が設けられていることを特徴としている。
【0018】
更に、請求項5の発明は、前記第1リテーナの一方の把持部が前記コイルスプリングの座巻き部の少なくとも外周側を把持し、前記第2リテーナの他方の把持部が前記コイルスプリングの座巻き部の少なくとも内周側を把持することを特徴としている。
更に、請求項6の発明は、前記他方の把持部は所定数周方向に等間隔を置いて穿設されていることを特徴としている。
【0019】
更に、請求項7の発明は、前記他方の把持部の数と同数の開口が前記第1リテーナに周方向に等間隔を置いて穿設されており、前記他方の把持部がそれぞれ対応する開口を、前記コイルスプリング側と反対側から貫通していることを特徴としている。
【0020】
更に請求項8の発明は、前記第2リテーナが、スプリングリテーナ支持部材に前記コイルスプリングの軸方向および径方向のいずれにも支持されているとともに、前記第1リテーナが前記スプリングリテーナ支持部材に径方向に支持されていることを特徴としている。
【0021】
一方、請求項9に係る発明の倍力装置は、入力に応じた動力が作用することで作動し、前記入力を倍力して出力するパワーピストンと、前記パワーピストンを非作動位置方向に付勢するリターンスプリングを少なくとも備えている倍力装置において、前記コイルスプリングの振動を防止するコイルスプリングの防振機構を備え、前記コイルスプリングの防振機構が、請求項1ないし8のいずれか1記載のコイルスプリングであることを特徴とする倍力装置。
【発明の効果】
【0022】
このように構成された請求項1および2に係るコイルスプリングの防振機構によれば、コイルスプリングの座巻き部を、スプリングリテーナに設けた一対の把持部で把持しているので、コイルスプリングが振動してもその振動を強制的に減衰させことができる。したがって、コイルスプリングの座巻き部と2巻き部との間に微小隙間が生じていても、コイルスプリングの振動による異音の発生を効果的に抑制できる。
【0023】
また、コイルスプリングの座巻き部と2巻き部との間に微小隙間が生じていてもよいので、2巻き目の部分と座巻き部との密着度合いや密着範囲等の寸法管理を高精度に厳しく行わなくても済むので、コイルスプリングの防振機構の生産性を向上することができるとともに、コストを低減することができる。
【0024】
一方、請求項9に係る発明の倍力装置によれば、パワーピストンのリターンスプリングがコイルスプリングで構成され、作動時にこのコイルスプリングに起因する振動を減衰して、異音の発生を抑制できるので、倍力装置の操作フィーリングを良好にできるとともに、倍力装置のコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明に係るコイルスプリングの防振機構の実施の形態の一例が適用されたされた負圧倍力装置を部分的に示す断面図である。なお、以下の説明において、その例より前の例および前述の図6に示す従来例と同じ構成要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明は省略する。
【0026】
この例のコイルスプリングの防振機構が適用された倍力装置は、ブレーキ倍力装置等に用いられる負圧倍力装置1である。この負圧倍力装置1は、その一部の構成が前述の図6に示す従来の負圧倍力装置1と異なるだけで、大部分の構成がこの従来の負圧倍力装置1と同じである。したがって、この例の負圧倍力装置1の構成のうち、従来の負圧倍力装置1と異なる部分の構成についてのみ説明する。
【0027】
図1に示すように、この例の負圧倍力装置1では、コイルスプリングからなるリターンスプリング20のバルブボディ9側の端部が、スプリングリテーナ24を介してバルブボディ9に支持されている。このスプリングリテーナ24は、リターンスプリング20の端を前後方向(図1において、左右方向)に直接支持する台座リテーナ25(本発明の第1リテーナに相当)と、リターンスプリング20の1巻き目である座巻き部20aを弾性的に把持する把持用リテーナ26(本発明の第2リテーナに相当)とから構成されている。
【0028】
図2(a)および(b)に示すように、台座リテーナ25は、従来の一般的な負圧倍力装置1に用いられているスプリングリテーナと実質的に構成を有している。すなわち、台座リテーナ25は、平坦な中心部27aがその周囲に位置する平坦な外周部27bより前方(図2(b)において左方)に位置するように円環状の段差27cを有する段付き環状円板部27と、この段付き環状円板部27の中心部27aの中心と同心で前方に突出する円筒状のガイド支持部28とから構成されている。
【0029】
段付き環状円板部27の外周部27bには、所定数(図示例では、8個)の開口29が周方向に等間隔を置いて穿設されている。また、外周部27bの外周縁には、前方に向かって突出する円環状のフランジ30が形成されている。このフランジ30は、リターンスプリング20の座巻き部20aの外周側を把持する円環状の把持部30aと、この把持部30aから前方に末広がりに突出する截頭円錐台形状の環状のガイド部30bとからなっている。
図1に示すように、ガイド支持部28は出力軸19に嵌合されて、スプリングリテーナ24を出力軸19と同心となるように径方向に位置決めする。
【0030】
図3(a)および(b)に示すように、把持用リテーナ26は円環状に形成されており、この把持用リテーナ26の内周縁には、段付き環状円板部27の開口29と同数の把持爪31が軸方向前方にかつ周方向に等間隔を置いて突設されている。これらの把持爪31には、それぞれリターンスプリング20の座巻き部20aの内周側を弾性的に把持する湾曲状の凹部からなる把持部31aと、この把持部31aから前方に末広がりに突出する截頭円錐台形状の環状のガイド部31bとが設けられている。そして、各把持爪31は、それぞれ、段付き環状円板部27の対応する開口29を貫通可能となっている。また、把持用リテーナ26の外周縁には、円環状フランジ32が後方に(図3(b)において、左方)に突設されている。
【0031】
図1に示すように、台座リテーナ25の各開口29に、それぞれ、把持用リテーナ26の把持爪31が後方(台座リテーナ25のフランジ30と反対側、つまりリターンスプリング20側と反対側)から貫通させて、台座リテーナ25に把持用リテーナ26を一体的に組み付けることにより、スプリングリテーナ24が形成される。
【0032】
このスプリングリテーナ24は、その把持用リテーナ26の円環状フランジ32がバルブボディ9の大径の前端部9a外周に嵌合されるとともに、台座リテーナ25の円環状の段差27cがバルブボディ9の小径の前端部9b外周に嵌合されることで、バルブボディ9に組み付けられる。
【0033】
このように、スプリングリテーナ24がバルブボディ9に組み付けられた状態では、フランジ30の把持部30aと把持爪31の把持部31aとの間に、円環状の把持空間が形成される。そして、リターンスプリング20のバルブボディ9側端を、フランジ30のガイド部30bと把持爪31の把持部31aのガイド部31bとの間に、前方から軸方向に沿って後方に向かって嵌入する。すると、把持爪31が弾性的に押しひろげられて、図1に示すようにリターンスプリング20の座巻き部20aが把持部30aと把持部31aとの間の把持空間内に進入する。そして、この状態では把持爪31が弾性的に復元するので、リターンスプリング20の座巻き部20aは、把持部30aと把持部31aとの間に弾性的にかつ堅固に把持されるようになる。
【0034】
これにより、パワーピストン6が振動しても、リターンスプリング20の振動が強制的に減衰されるので、リターンスプリング20の座巻き部と2巻き部との間に微小隙間が生じていても、異音の発生が効果的に抑制されるようになる。このように、台座リテーナ25の把持部30aと把持用リテーナ26の把持部31aとにより、本発明のコイルスプリングの防振機構が構成されている。
【0035】
また、台座リテーナ25の段差27cの内周面がバルブボディ9の小径の前端部9b外周に径方向に支持されるとともに、台座リテーナ25のリターンスプリング20側の面と反対側の面が把持用リテーナ26のリターンスプリング20側の面にリターンスプリング2の軸方向に支持されて、台座リテーナ25がバルブボディ9に対して径方向および軸方向に位置決めされている(なお、台座リテーナ25の軸方向位置決めは把持用リテーナ26を介して行われる)。したがって、バルブボディ9は本発明のスプリングリテーナ支持部材を構成している。
【0036】
更に、把持用リテーナ26の円環状フランジ32の内周面が大径の前端部9a外周に径方向に支持されるとともに、把持用リテーナ26のリターンスプリング20側の面と反対側の面がバルブボディ9にリターンスプリング2およびバルブボディ9の各軸方向に支持されて、径方向および軸方向のいずれにも位置決めされている。
【0037】
この例のリターンスプリング20の防振機構によれば、リターンスプリング20を構成するコイルスプリングの座巻き部20aを、台座リテーナ25の把持部30aと把持用リテーナ26の把持部31aとの間に把持しているので、パワーピストン6が振動しても、リターンスプリング20の振動を強制的に減衰させことができる。したがって、リターンスプリング20の座巻き部と2巻き部との間に微小隙間が生じていても、リターンスプリング20の振動による異音の発生を効果的に抑制できる。
【0038】
また、リターンスプリング20の座巻き部と2巻き部との間に微小隙間が生じていてもよいので、2巻き目の部分と座巻き部との密着度合いや密着範囲等の寸法管理を高精度に厳しく行わなくても済むので、リターンスプリング20の防振機構の生産性を向上することができるとともに、コストを低減することができる。
【0039】
更に、この例のリターンスプリング20の防振機構を備えた負圧倍力装置1によれば、パワーピストン6のリターンスプリング20がコイルスプリングで構成され、作動時にこのコイルスプリングに起因する振動を減衰して、異音の発生を抑制できるので、負圧倍力装置1の操作フィーリングを良好にできるとともに、負圧倍力装置1のコストを低減することができる。
この例の負圧倍力装置1の他の構成および多の作用効果は、前述の図6に示す従来の負圧倍力装置1と同じである。
【0040】
図4は、本発明に係るコイルスプリングの防振機構の実施の形態の他の例が適用されたされた負圧倍力装置を部分的に示す断面図である。
前述の例では、スプリングリテーナ24を台座リテーナ25と把持用リテーナ26の2部材で構成しているが、図4に示すように、この例のコイルスプリングの防振機構では、スプリングリテーナ24を台座リテーナ25の1部材で構成している。
【0041】
図5(a)および(b)に示すように、台座リテーナ25は前述の図2(a)および(b)に示す台座リテーナ25とほとんど同じ構成を有しているが、台座リテーナ25の一部が前述の例の台座リテーナ25と異なる。すなわち、台座リテーナ25に形成されている所定数(図示例では、8個)の開口29に、それぞれ、開口29と同数の把持爪31が設けられている。これらの把持爪31は、いずれも、図3(a)および(b)に示す把持用リテーナ26とまったく同じ構成を有している。すなわち、把持爪31は、それぞれリターンスプリング20の座巻き部20aを弾性的に把持する湾曲状の凹部からなる把持部31aと、この把持部31aから前方に末広がりに突出する截頭円錐台形状の環状のガイド部31bとを備えている。
【0042】
このように構成されたこの例のコイルスプリングの防振機構においては、図4に示すように、前述の例と同様に台座リテーナ25が負圧倍力装置1のバルブボディ9および出力軸19に組み付けられる。そして、前述の例と同様にして、リターンスプリング20のバルブボディ9側の座巻き部20aが、把持部30aと把持部31aとの間に弾性的にかつ堅固に把持されるようになる。
【0043】
この例のコイルスプリングの防振機構によれば、スプリングリテーナ24を台座リテーナ25の1部材のみで構成しているので、部品点数を削減できてコストを低減できるとともに、スプリングリテーナ24の組み付けを簡単にできる。
この例のコイルスプリングの防振機構を備えた負圧倍力装置1の他の構成および多の作用効果は、前述の例の負圧倍力装置1および図6に示す従来の負圧倍力装置1と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係るコイルスプリングの防振機構は、予め設定された圧縮セット荷重を付与した状態で装置に装着されるとともに外的操作力が加えられるようなコイルスプリングの防振機構に好適に利用可能である。
また、本発明に係る倍力装置は、ブレーキシステムの倍力装置を始め、操作員の操作力を倍力して用いるような倍力システムや倍力装置に好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るコイルスプリングの防振機構の実施の形態の一例が適用されたされた負圧倍力装置を部分的に示す断面図である。
【図2】図1に示すスプリングリテーナを構成する台座リテーナを示し、(a)は正面図、(b)は(a)におけるII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1に示すスプリングリテーナを構成する把持用リテーナを示し、(a)は正面図、(b)は(a)におけるIII−III線に沿う断面図である。
【図4】本発明に係るコイルスプリングの防振機構の実施の形態の他の例が適用されたされた負圧倍力装置を部分的に示す断面図である。
【図5】図4に示すスプリングリテーナである台座リテーナを示し、(a)は正面図、(b)は(a)におけるV−V線に沿う断面図である。
【図6】従来の負圧倍力装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1…負圧倍力装置、6…パワーピストン、9…バルブディ、10…入力軸、15…制御弁、19…出力軸、20…リターンスプリング、20a…座巻き部、24…スプリングリテーナ、25…台座リテーナ、26…把持用リテーナ、29…開口、30a…把持部、30b…ガイド部、31…把持爪、31a…把持部、31b…ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部の座巻き部と、これらの座巻き部の間に連続して設けられるコイル部とからなるコイルスプリングと、
前記座巻き部の一方を支持するスプリングリテーナとを備え、
前記スプリングリテーナが前記座巻き部の一方を把持する一対の把持部を備えていることを特徴とするコイルスプリングの防振機構。
【請求項2】
前記一対の把持部のうち、一方の把持部が前記コイルスプリングの座巻き部の少なくとも外周側を把持し、他方の把持部が前記コイルスプリングの座巻き部の少なくとも内周側を把持することを特徴とする請求項1記載のコイルスプリングの防振機構。
【請求項3】
前記スプリングリテーナは、前記コイルスプリング側の面と反対側の面がスプリングリテーナ支持部材に前記軸方向および径方向のいずれにも支持されることを特徴とする請求項1または2記載のコイルスプリングの防振機構。
【請求項4】
前記スプリングリテーナは第1リテーナと第2リテーナとからなり、前記第1リテーナに、前記一対の把持部のうち一方の把持部が設けられているとともに、前記第2リテーナに、前記一対の把持部のうち他方の把持部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のコイルスプリングの防振機構。
【請求項5】
前記第1リテーナの一方の把持部が前記コイルスプリングの座巻き部の少なくとも外周側を把持し、前記第2リテーナの他方の把持部が前記コイルスプリングの座巻き部の少なくとも内周側を把持することを特徴とする請求項4記載のコイルスプリングの防振機構。
【請求項6】
前記他方の把持部は所定数周方向に等間隔を置いて穿設されていることを特徴とする請求項4または5記載のコイルスプリングの防振機構。
【請求項7】
前記他方の把持部の数と同数の開口が前記第1リテーナに周方向に等間隔を置いて穿設されており、前記他方の把持部がそれぞれ対応する開口を、前記コイルスプリング側と反対側から貫通していることを特徴とする請求項6記載のコイルスプリングの防振機構。
【請求項8】
前記第2リテーナが、スプリングリテーナ支持部材に前記コイルスプリングの軸方向および径方向のいずれにも支持されているとともに、前記第1リテーナが前記スプリングリテーナ支持部材に径方向に支持されていることを特徴とする請求項4ないし7のいずれか1記載のコイルスプリングの防振機構。
【請求項9】
入力に応じた動力が作用することで作動し、前記入力を倍力して出力するパワーピストンと、前記パワーピストンを非作動位置方向に付勢するリターンスプリングを少なくとも備えている倍力装置において、
前記コイルスプリングの振動を防止するコイルスプリングの防振機構を備え、
前記コイルスプリングの防振機構は、請求項1ないし8のいずれか1記載のコイルスプリングであることを特徴とする倍力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−248911(P2008−248911A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87138(P2007−87138)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】