説明

コイン除液装置、コイン洗浄装置

【課題】メンテナンス頻度を低減させながらも、除液効率を高く維持する。
【解決手段】洗浄されたコインの洗浄液を除去するコイン除液装置50であって、コインを挟み込んで搬送する柔軟性ロール82によって、コインの表面に付着した洗浄液を除去する際に、掻き上げ手段70によって、この柔軟性ロール82の表面を長手方向に亘って掻くことで、柔軟性ロール82の表面の油分をロール表面から浮き上がらせるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨幣(硬貨)、メダルなどを含めた、いわゆるコインを洗浄するコイン洗浄装置に関し、特に洗浄時にコインに付着した洗浄液を効率的に除去するコイン除液装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スロットマシン等の遊戯具で用いられるメダルや、金融機関等で取り扱われる硬貨などを含めたいわゆるコインは、人間の手や、遊戯具、金銭自動支払機などの機械と頻繁に接触することから、油脂分等によって表面が汚染されやすい。従って、これらのコインは、様々な場面において定期的に洗浄される必要がある。
【0003】
コインの洗浄は、例えば、ドラム状のかごを利用して、コインを撹拌しながら、洗浄液を含む洗浄液によって洗浄するのが一般的である。この際、ブラシなどを利用してコインの表面をブラッシングし、強制的に油脂分を除去することも行われている(特許文献1参照)。また、コインを洗浄液に浸漬させると同時に、洗浄液に超音波を付与することで、洗浄効率を高めることも提案されている。
【0004】
コインの洗浄後は、コイン除液装置によって、コインの周囲に付着した洗浄液を除液する必要がある。このコイン除液装置は、スポンジやウレタン等によって構成される少なくとも一対の柔軟性ロールを備えており、この柔軟性ロールの間にコインを通過させて、柔軟性ロール側に洗浄液を吸着させる。一対の柔軟性ロールのいずれかには、絞りロール(スクイーズロール)が圧着されており、柔軟性ロールが吸着した水分を、圧力によって常に搾り取って回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−187816
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のコイン除液装置では、絞りロールによって柔軟性ロールの洗浄液を脱液する構造であることから、柔軟性ロールの表面に付着した油脂分、塵埃、金属粉などが、その表面の微細凹凸内に更に押し込まれてしまう。結果、時間が経つと、柔軟性ロールの表面が、汚れ成分によって覆われてしまい、吸水能力が極端に低下するという問題があった。
【0007】
従って、遊技場等においては、毎日、柔軟性ロールを取り外して、綺麗な水を利用して水分を吸収させ、手で搾り取ることを繰り返して、汚れ成分を除去するという煩雑なメンテナンス作業を行う必要があった。また、このメンテナンス作業を怠ると、例えば数週間で、柔軟性ロールの表面に完全に汚染物質が固定化されてしまい、交換しなければならないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、コインの洗浄液を効率的に除去可能であり、メンテナンス頻度を飛躍的に低減させるコイン除液装置、及びこのコイン除液装置を用いたコイン洗浄装置をを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者の鋭意研究により、上記目的は以下の手段によって達成される。
【0010】
上記目的を達成する本発明は、洗浄されたコインの洗浄液を除去するコイン除液装置であって、前記コインを挟み込んで搬送することで、前記コインの表面に付着した洗浄液を除去する少なくとも1対の柔軟性ロールと、前記柔軟性ロールを回転させる駆動機構と、前記柔軟性ロールの表面を長手方向に亘って掻くことで、前記柔軟性ロールの表面の油分をロール表面から浮き上がらせる掻き上げ手段と、を備えることを特徴とするコイン除液装置である。
【0011】
上記目的を達成するコイン除液装置に関して、更に、前記1対の柔軟性ロールが、搬送方向に複数段で並列配置されており、前記掻き上げ手段は、並列配置される前記柔軟性ロールの隙間に配置されることを特徴としてもよい。
【0012】
上記目的を達成するコイン除液装置に関して、更に、前記掻き上げ手段は、多数の繊維が結束された掻き上げブラシを有して構成されており、前記掻き上げブラシの前記繊維の先端を前記柔軟性ロールの表面に接触させて、前記表面の油分を浮き上がらせることを特徴としてもよい。
【0013】
上記目的を達成するコイン除液装置に関して、更に、前記掻き上げ手段における前記掻き上げブラシは、前記柔軟性ロールの軸方向と同方向に配置される保持軸に対して、その周囲に環状に結束されることを特徴としてもよい。
【0014】
上記目的を達成するコイン除液装置に関して、更に、前記掻き上げブラシは、前記保持軸に対して螺旋状に結束されていることを特徴としてもよい。
【0015】
上記目的を達成するコイン除液装置に関して、更に、前記掻き上げブラシの繊維の直径は、0.03mm以上、かつ1.0mm以下であることを特徴としてもよい。
【0016】
上記目的を達成するコイン除液装置に関して、更に、前記掻き上げブラシの繊維の直径は、0.05mm以上、かつ0.5mm以下であることを特徴としてもよい。
【0017】
上記目的を達成する本発明は、上記のいずれかに記載の前記コイン除液装置と、前記コイン除液装置の上流側に配置されて、前記コインを洗浄液によって洗浄する洗浄機構と、を備えることを特徴とするコイン洗浄装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コインの洗浄液を効率的に除去可能としながらも、メンテナンス頻度を飛躍的に低減させることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るコイン洗浄装置の全体構造を示す斜視図である。
【図2】同コイン洗浄装置の側面から見た全体構造を示す断面図である。
【図3】同コイン洗浄装置の正面側から見た全体構造を示す断面図である。
【図4】同コイン洗浄装置におけるコイン除液装置のロールユニットの(A)上面図、(B)正面図である。
【図5】同ロールユニットの(A)側面図、(B)側面から見た断面図である。
【図6】同コイン除液装置の他の構成例を側面から見た断面図である。
【図7】同コイン除液装置の他の構成例について(A)側面から見た断面図、(B)正面側から見た断面図である。
【図8】同コイン除液装置の他の構成例を側面から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1乃至図3には、本実施形態に係るコイン洗浄装置1の全体構成が示されている。このコイン洗浄装置1は、コインの油脂分を洗浄するコイン洗浄機構10と、洗浄後にコインに付着した水等の洗浄液を除去するコイン除液装置50を備えて構成される。なお、図1では、コイン洗浄機構10の出口部分が見やすいように、コイン除液装置50のロールユニットを点線によって透過するように表現している。
【0022】
コイン洗浄機構10は、例えば図2に示されるように、円筒形の洗浄容器16内において、円板状の一対の洗浄ブラシ12、13が水平方向に配置される。下側の洗浄ブラシ13をモータ14によって回転させることで、洗浄容器16内に投入されるコインを洗浄する。なお、コイン洗浄機構10及びコイン除液装置50の下側には、洗浄液タンク100が配置されており、この洗浄液タンク100内の洗浄液(ここでは水を用いている)が、ポンプ102によって組み上げられ、供給配管104を経て洗浄容器16の上側から供給される。
【0023】
このコイン洗浄機構10において、コインは、一対の洗浄ブラシ12、13によって擦られるようにして洗浄される。この洗浄工程を経て、下側の洗浄ブラシ13の回転に伴う遠心力によってコインが次第に外側に移動し、このコインが、スリット形状の排出口20を介してコイン除液装置50側に搬出される。
【0024】
洗浄容器16に供給されて洗浄目的で利用された水(排出液)は、排出配管108を経て洗浄液タンク100に回収される。この洗浄液タンク100の上面には、スポンジ状又はメッシュ状のフィルタ110が配置されており、このフィルタ110によって、洗浄液内に含まれる油分や金属粉、塵埃等を漉される。フィルタ110の上面には、凹凸110Aが形成されいる。この凹凸110Aによって、排出液がフィルタ110の上面に滞留する時間を延ばすと共に、排出液との接触面積を増大させることで、油分等の回収効率を高めることが出来る。
【0025】
図1に示されるように、この洗浄液タンク100は、筐体4から引き出すようにして取り外すことが可能となっており、例えば数週間に1回等の一定の周期で、新しい洗浄液に交換される。
【0026】
図3に示されるように、コイン除液装置50は、ロールユニット60と、ロールユニット60の下部に配置される絞りユニット80と、ロールユニット60及び絞りユニット80を駆動する駆動機構90と、ロールユニット60及び絞りユニット80を収容する除液ケース98を備える。なお、除液ユニット98には、上方を開閉可能な蓋98Aが設けけられている。
【0027】
図4及び図5に示されるように、ロールユニット60は、上下方向に一対となる第1柔軟性ロール62と、この第1柔軟性ロール62と隙間を空けて下流側に配置され、上下方向に一対となる第2柔軟性ロール64を備える。一対の第1柔軟性ロール62は、互いに当接しており、この間にコインが挟み込まれることで表面の洗浄液が取り除かれる。これは第2柔軟性ロール64においても同様である。第1柔軟性ロールロール62及び第2柔軟性ロール64を通過したコインは、除液ケース98に形成される搬出口6から搬出される。
【0028】
なお、第1及び第2柔軟性ロール62、64は、本実施形態では、ウレタン素材のロールが用いられている。しかし本発明はこれに限定されず、表面の柔軟性によってコインを挟み込み、コインの水分を除液可能なものであれば、スポンジ、シリコン、ゴム等の各種の素材を用いることができる。また、ロールユニット60は、2対の柔軟性ロール62、64を備える場合を示したが、1対の第1柔軟性ロール62のみでもよく、反対に、3対以上の多段に備えるようにしても良い。
【0029】
合計4本となる第1及び第2柔軟性ロール62、64の両側には、これらの軸部材62A、64Aを回転自在に保持する保持プレート66が配置されている。また、第1及び第2柔軟性ロール62、64の軸部材62A、64Aの端部には、それぞれ、歯車62B、64Bが固定されている。一対の第1柔軟性ロール62に配置される一対の歯車62Bは互いに噛み合っており、一対の第1柔軟性ロール62を同時に反対方向に回転させる。同様に、一対の第2柔軟性ロール64側の一対の歯車64Bも互いに噛み合っており、第2柔軟性ロール64を互いに反対方向に回転させる。
【0030】
ロールユニット60は、更に、掻き上げ手段70を備える。この掻き上げ手段70は、第1及び第2柔軟性ロール62、64の表面を、長手方向(軸方向)に亘って、点接触状態又は線接触状態で掻きあげることで、これらの柔軟性ロールの表面の油分を浮き上がらせる。
【0031】
この掻き上げ手段70は、多数の合成樹脂(例えばナイロン)の繊維74が結束された掻き上げブラシ72を有して構成される。即ち、掻き上げブラシ72の繊維74の先端を、第1、第2柔軟性ロール62、64の表面に点接触させることで、表面の油分を離反させる。
【0032】
掻き上げブラシ72は、更に具体的に、第1、第2柔軟性ロール62、64の軸方向と平行に配置される保持軸76を備えており、この保持軸76から放射状に繊維74が固定されるようになっている。従って、掻き上げブラシ72の外周形状は、全体視すると、殆ど環状(円柱状)となる。特に本実施形態では、図4に示されるように、この繊維74が、保持軸76に対して螺旋状に結束されている。従って、掻き上げブラシ72の外周形状は、軸方向に沿って、隙間Sとブラシ部分Bが交互に連続する螺旋状になっている。なお、掻き上げブラシ72は、その保持軸76の両端が保持プレート66に保持されることで、固定されている。この際、図5に示されるように、例えば保持プレート66側の固定穴が長孔とすることで、第1及び第2柔軟性ロール62、64との距離を調整可能にしておくことが好ましい。
【0033】
また、繊維74の直径は、0.03mm以上、かつ1.0mm以下であることが好ましく、更に0.05mm以上、かつ0.5mm以下が望ましい。ここでは0.08mm〜0.1mmに設定されている。素材としては、例えば塩化ビニール、ナイロン樹脂が採用される。この直径であれば、特に、ウレタン素材の第1及び第2柔軟性ロール62、64の表面を傷めることなく、適度な当接力を確保することができ、かつ、十分に油脂を浮かび上がらせることで、数週間に亘ってロールのメンテナンスを行わないでも良好な表面状態を維持できるようになる。
【0034】
また本実施形態の掻き上げ手段70は、掻き上げブラシ72を2つ備えている。一方の掻き上げブラシ72は、上方側に並列配置されている第1、第2柔軟性ロール62、64の隙間に配置されている。他方の掻き上げブラシ72は、下方側に並列配置されている第1、第2柔軟性ロール62、64の隙間に配置されている。掻き上げブラシ72は、その外周形状が環状になっているので、第1、第2柔軟性ロール62、64の双方に同時に接触することができる。従って、2つの掻き上げブラシ72によって4本の柔軟性ロール62、64の掻き上げが可能となっている。
【0035】
図5に示されるように、絞りユニット80は、第1絞りロール82と第2絞りロール84を備えている。第1絞りロール82は、下側の第1柔軟性ロール62に所定の圧力で押し当てられており、互いに転がり接触するようになっている。また、第2絞りロール84は、下側の第2柔軟性ロール64に所定の圧力で押し当てられており、互いに転がり接触する。この押圧力によって、第1及び第2柔軟性ロール62、64の表面が押し縮められ、洗浄液が搾り取られる。搾り取られた洗浄液は、除液ケース98及びその下面に形成される排出路99を経て、洗浄液タンク100に戻される。しかし、この第1、第2絞りロール82、84と、第1、第2柔軟性ロール62、64との接触状態は、軸方向に延びる帯状面となっているため、第1、第2柔軟性ロール62、64の表面に付着している油脂分や埃などは、ウレタン素材の微細気孔内に、一層強く押し込まれる結果となってしまう。
【0036】
これらの第1及び第2絞りロール82、84の軸部材82A、84Aは、除液ケース98の底面側に回転自在に保持されている。図5(A)に示されるように、軸部材82A、84Aの端部には、それぞれ、歯車82B、84B及びスプロケット82C、84Cが固定されている。第1絞りロール82の歯車82Bは、第1柔軟性ロール62の歯車62Aと噛み合っており、第1柔軟性ロール62を回転駆動する役割も担う。第2絞りロール84の歯車84Bは、第2柔軟性ロール64の下側の歯車64Aと噛み合っており、第2柔軟性ロール64を回転駆動する役割も担う。
【0037】
図2に戻って、除液ケース99の下側に配置される駆動機構90は、モータ92と、このモータ92の回転軸に固定されるスプロケット94と、チェーン96を備える。チェーン96は、スプロケット94及び絞りユニット80側の2個のスプロケット82C、84Cに対して、まとめて捲き掛けられる。この結果、モータ92の動力によって、絞りユニット80の第1及び第2絞りロール82、84が強制的に回転させられる。この回転動力は、既に述べたように、合計4つの歯車82B、84B、62B、64Cを介してロールユニット60側に伝達され、掻き上げ手段70の第1及び第2柔軟性ロール62、64が回転する。
【0038】
次に、このコイン洗浄装置1の作用について説明する。特に図示しないホッパー等を介して、コイン洗浄機構10内にコインが投入される。水洗浄容器16内において水が掛けられながら、コインは、一対の洗浄ブラシ12、13に擦られ、表面の油脂分や塵埃が除去される。このコインは、排出口20を介してコイン除液装置50に搬出される。コイン除液装置50では、まず一対の第1柔軟性ロール62によって挟み込まれるようにして下流側に搬送される。この間、第1柔軟性ロール62のウレタン表面は、コインに付着している洗浄液や残留している油脂分を吸収する。第1柔軟性ロール62によって搬送されたコインは、更に、第2柔軟性ロール64によって挟み込まれて、同様にコインに付着している洗浄液や残留している油脂分を吸収する。その後、コインは、第2柔軟性ロール64から搬出口6側に排出される。
【0039】
このように2段に亘ってコインの表面から洗浄液が除液されるので、コインの水分を効率的に除去することが可能となっている。
【0040】
ところで、コイン洗浄機構10から排出されたコイン表面には、未だ油脂分や塵埃が残存している。従って、コイン除液装置50における第1、第2柔軟性ロール62、64は、コインを強く挟み込む構造であるために、ロールの表面には、油脂分や塵埃が比較的強く付着する。更に、絞りユニット80による絞りロール82、84は、第1、第2柔軟性ロール62、64の水分を除去するために、ロール表面に強く押し込むため、表面に付着している油分を、より一層ウレタン樹脂の内部側に押し込んでしまう。これを放置ておくと、第1、第2柔軟性ロール62、64の吸水能力が極端に低下する。
【0041】
そこで本実施形態では、第1及び第2柔軟性ロール62、64の表面を掻き上げるための掻き上げ手段70を備えている。この掻き上げ手段70は、第1及び第2柔軟性ロール62、64の長手方向(軸方向)に亘って、点接触状態又は線接触状態でロール表面を掻きあげる。この結果、微細な気孔内に押し込められた油脂分や塵埃が、一時的にロール表面から浮き上がるので、緩い結合状態となる。なお、油脂分や塵埃の一部は、掻き上げ手段70の掻き上げブラシ72内に回収される。油脂分や塵埃の一部の残りの一部は、既に浮かび上がっているので、第1、第2絞りロール82、84によって、第1及び第2柔軟性ロール62、64を搾る際に、その搾り取られる水分と一緒に排出することができる。
【0042】
即ち、この掻き上げ手段70によれば、第1及び第2柔軟性ロール62、64の表面を、面接触によって押し込むのではなく、点接触状態又は線接触状態によって常に掻き上げておくことができる。結果、ロール表面に密着している油脂分や塵埃を浮き上がらせて、目詰まりしないようにしている。従来の構造であれば、ロールユニット60を数日に1回メンテナンスしないと、表面が油脂分や塵埃でコーティングされたような汚染状態となって、第1及び第2柔軟性ロール62、64が短期間で使用不能になる。しかし本実施形態のコイン洗浄装置1によれば、例えば、1ヶ月間に亘ってロールユニット60をメンテナンスしなくても、第1及び第2柔軟性ロール62、64の表面が比較的初期に近い状態に維持される。
【0043】
特に本実施形態では、合計2段となる第1及び第2柔軟性ロール62、64を有しているが、掻き上げ手段70が、この並列配置される第1及び第2柔軟性ロール62、64の隙間に配置されるので、双方のロール表面に同時に接触することが可能となり、各ロールの油脂分を浮き上がらせることが出来る。また、掻き上げ手段70は、本来、無用な空間であった第1及び第2柔軟性ロール62、64の隙間に配置されるので、スペース効率が高い。
【0044】
また、本実施形態の掻き上げ手段70は、多数の繊維が結束された掻き上げブラシ72によって、ロール表面を掻き上げるようにしている。結果、掻き上げブラシ70の繊維74の先端が、第1及び第2柔軟性ロール62、64の表面に点接触するので、表面の油分を効率的に離反できるようになっている。この掻き上げブラシ70では、保持軸76に対して、繊維74が放射状に配置されるので、結果として、掻き上げブラシ72の外周形状が、おおよそ環状(円柱状)となる。この形状の掻き上げブラシ72を、第1及び第2柔軟性ロール62、64の隙間に配置することで、双方のロールに同時に容易に当接させることができる。
【0045】
とりわけ、本実施形態の掻き上げブラシ72は、保持軸76に対して繊維74が螺旋状に結束されている。従って、第1及び第2柔軟性ロール62、64との接触領域のみを考えると、軸方向に沿って等間隔の隙間Sを空けて繊維74が列状に並んでいることになる。このようにすると、ロール表面の全体を掻き上げる場合と比較して、部分的に掻き上げることできる。結果、ロール表面において繊維74によって外力が作用する部分(図4における領域B)と、その外力を逃がす部分(図4における領域S)を形成できるので、第1及び第2柔軟性ロール62、64の劣化速度を抑制できる。また、螺旋状に繊維74を結束することで、定期的にこの掻き上げブラシ72を微小回転させるだけで、この列状の繊維74の位置(領域Bと領域S)を移動させることができるので、第1及び第2柔軟性ロール62、64の特定の位置のみを掻き上げてしまう事態を抑制できる。なお、ここでは特に図示しなしが、第1及び第2柔軟性ロール62、64の回転に連動して、この掻き上げブラシ72を回転させることも好ましい。
【0046】
また、本実施形態では、掻き上げブラシ72の繊維74の直径が、0.03mm以上、かつ1.0mm以下、好ましくは0.05mm以上、かつ0.5mm以下に設定されている。この結果、ウレタンのロール表面を劣化させることなく、油脂分のみを効率的に浮き上がらせることが出来る。例えば合成樹脂繊維を用いる場合、0.03mm未満の繊維では、柔軟すぎるためにロール表面の油脂分を十分に掻き上げることが出来ない。また、繊維自体の劣化も早い。一方、0.5mm以上、特に1.0mm以上になると、繊維74が硬すぎて、ロール表面が直ぐに傷んでしまう。
【0047】
以上、本実施形態では、掻き上げブラシ72として、螺旋構造となる場合を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図6に示されるように、一方向に繊維が並んでいるような一般的なブラシを用いることも可能である。この際、各ロールに対して1つずつ配置することも可能である。
【0048】
更に、図7に示されるように、掻き上げブラシ72の下に、汚泥受け部材79を配置することも好ましい。このようにすると、掻き上げブラシ72内に回収された汚泥が、直接落下するとこなく、ロールの両端側に逃がすことが出来る。これにより、通過するコインがこの汚泥によって再び汚れることを抑制できる。
【0049】
また、図8に示されるように、掻き上げ手段70として、ヘラ状又は櫛状の板部材73をロール表面に線接触させることも可能である。
【0050】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、各種コインを洗浄する際に、幅広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 コイン洗浄装置
10 コイン洗浄機構
50 コイン除液装置
60 ロールユニット
62 第1柔軟性ロール
64 第2柔軟性ロール
80 絞りユニット
82 第1絞りロール
84 第2絞りロール
90 駆動機構
100 洗浄液タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄されたコインの洗浄液を除去するコイン除液装置であって、
前記コインを挟み込んで搬送することで、前記コインの表面に付着した洗浄液を除去する少なくとも1対の柔軟性ロールと、
前記柔軟性ロールを回転させる駆動機構と、
前記柔軟性ロールの表面を長手方向に亘って掻くことで、前記柔軟性ロールの表面の油分をロール表面から浮き上がらせる掻き上げ手段と、
を備えることを特徴とするコイン除液装置。
【請求項2】
前記1対の柔軟性ロールが、搬送方向に複数段で並列配置されており、
前記掻き上げ手段は、並列配置される前記柔軟性ロールの隙間に配置されることを特徴とする、
請求項1に記載のコイン除液装置。
【請求項3】
前記掻き上げ手段は、多数の繊維が結束された掻き上げブラシを有して構成されており、
前記掻き上げブラシの前記繊維の先端を前記柔軟性ロールの表面に接触させて、前記表面の油分を浮き上がらせることを特徴とする、
請求項1又は2に記載のコイン除液装置。
【請求項4】
前記掻き上げ手段における前記掻き上げブラシは、前記柔軟性ロールの軸方向と同方向に配置される保持軸に対して、その周囲に環状に結束されることを特徴とする、
請求項3に記載のコイン除液装置。
【請求項5】
前記掻き上げブラシは、前記保持軸に対して螺旋状に結束されていることを特徴とする、
請求項4に記載のコイン除液装置。
【請求項6】
前記掻き上げブラシの繊維の直径は、0.03mm以上、かつ1.0mm以下であることを特徴とする、
請求項3乃至5のいずれかに記載のコイン除液装置。
【請求項7】
前記掻き上げブラシの繊維の直径は、0.05mm以上、かつ0.5mm以下であることを特徴とする、
請求項6に記載のコイン除液装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の前記コイン除液装置と、
前記コイン除液装置の上流側に配置されて、前記コインを洗浄液によって洗浄する洗浄機構と、
を備えることを特徴とするコイン洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図4】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−55850(P2012−55850A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202866(P2010−202866)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(508226207)株式会社アバボエンジニアリング (2)
【Fターム(参考)】