説明

コネクタ保持構造

【課題】コネクタの組付性と保持力の向上を両立させることができるコネクタ保持構造を提供すること。
【解決手段】相対向するコ字状の一対のガイド壁6,7をハウジング2に一体に突設し、これらのガイド壁6,7に沿ってコネクタを挿入嵌合することによって各ガイド壁6,7の両端の縦壁6a,7aによってコネクタを位置決めしつつ、各ガイド壁6,7の両縦壁6a,7aの間の平坦壁6b,7bによってコネクタを保持するようにしたコネクタ保持構造において、前記各ガイド壁6,7の平坦壁6b,7bにスリット8,9を前記コネクタの挿入方向に形成する。又、前記各ガイド壁6,7の平坦壁6b,7bの肉厚と前記スリット8,9の長さを該ガイド壁6,7(ハウジング2)の材質に応じて設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具等のハウジングに一体に相対向して突設されたコ字状の一対のガイド壁によってコネクタを嵌合保持するための製品一体形状のコネクタ保持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘッドランプ等の車両用灯具と電源であるバッテリとは電源コードによって接続されるが、電源コードと車両用灯具との電気的な接続は、電源コードの端部に取り付けられたコネクタを車両用灯具のハウジングに突設された外部端子に差し込むことによってなされる。
【0003】
ところで、図11の部分斜視図に示すように、車両用灯具のハウジング102の背面には上下一対コ字状のガイド壁106,107が不図示の金属製の外部端子を囲むように水平且つ一体に突設されており、これらのガイド壁106,107によって囲まれる空間に不図示のブロック状のコネクタを差し込めば、該コネクタがガイド壁106,107によって嵌合保持され、該コネクタに内蔵された金属製のターミナルと外部端子とが接触してバッテリと車両用灯具とが電源コードを介して電気的に接続される。
【0004】
ここで、上下一対の各ガイド壁106,107は、コネクタを位置決めしつつガイドするとともに、位置決めされたコネクタを保持する機能を果たすが、これらの左右に形成された縦壁106a,107aがコネクタの左右両側面に嵌合して該コネクタの左右方向の位置決めを行い、左右の縦壁106a,107aの間の水平な平坦壁106b,107bがコネクタの上下面に嵌合して該コネクタを保持する。
【0005】
尚、特許文献1には、斯かるコネクタ保持構造において、一対のガイド壁の各開放部の幅を互いに異ならせることによってコネクタの誤組付を防ぐようにした構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−176511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1において提案された構成を含め図11に示す従来のコネクタ保持構造においては、コ字状のガイド壁106,107の剛性が高くて変形しづらいため、コネクタをガイド壁106,107に嵌め込む際に一対のガイド壁106,107が開きにくく、コネクタの組付性が悪いという問題がある。又、コネクタの組付性を高めるために一対のガイド壁106,107の間隔を広くすると、コネクタの保持力が弱くなり、保持力と組付性のバランスが取れなくなってしまう。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、コネクタの組付性と保持力の向上を両立させることができるコネクタ保持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、相対向するコ字状の一対のガイド壁をハウジングに一体に突設し、これらのガイド壁に沿ってコネクタを挿入嵌合することによって各ガイド壁の両端の縦壁によってコネクタを位置決めしつつ、各ガイド壁の両縦壁の間の平坦壁によってコネクタを保持するようにしたコネクタ保持構造において、前記各ガイド壁の平坦壁にスリットを前記コネクタの挿入方向に形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記各ガイド壁の平坦壁の肉厚と前記スリットの長さを該ガイド壁の材質に応じて設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、コネクタを保持するガイド壁の平坦壁にスリットを形成したため、該平坦壁が弾性変形し易くなり、コネクタのガイド壁への差し込み時に平坦壁が撓んで該コネクタの組付性が高められとともに、差し込み後のコネクタが平坦壁によって確実に保持されてその保持力が高められる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、ガイド壁の材質、特に硬度(剛性)に応じて平坦壁の肉厚とスリットの長さを設定すれば、ガイド壁の材質によらずコネクタの組付性と保持力の向上を両立させることができる。具体的には、ガイド壁の硬度(剛性)が高くて弾性変形しづらいほど、これらの平坦壁の肉厚を薄く、スリットの長さを長くすれば、平坦壁が撓み易くなるため、コネクタの組付性と保持力を同時に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るコネクタ保持構造を備えた車両用灯具の背面斜視図である。
【図2】本発明に係るコネクタ保持構造を備えた車両用灯具のガイド壁部分の斜視図である。
【図3】本発明に係るコネクタ保持構造を備えた車両用灯具のガイド壁部分の背面図である。
【図4】本発明に係るコネクタ保持構造を備えた車両用灯具のガイド壁部分の後面図である。
【図5】本発明に係るコネクタ保持構造を備えた車両用灯具のガイド壁にコネクタが差し込まれた状態を示す背面斜視図である。
【図6】本発明に係るコネクタ保持構造を備えた車両用灯具の背面図である。
【図7】図6のA−A線断面図である。
【図8】図6のB−B線断面図である。
【図9】本発明に係るコネクタ保持構造を備えた車両用灯具の背面斜視図である。
【図10】図9のC部拡大詳細図である。
【図11】従来の車両用灯具のコネクタ保持構造を示す部分背面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明に係るコネクタ保持構造を備えた車両用灯具の背面斜視図、図2は同車両用灯具のガイド壁部分の斜視図、図3は同ガイド壁部分の背面図、図4はガイド壁にコネクタが差し込まれた状態を示す車両用灯具の背面斜視図、図5は同車両用灯具の側面図、図6は同車両用灯具の背面図、図7は図6のA−A線断面図、図8は図6のB−B線断面図、図9は同車両用灯具の背面側斜視図、図10は図9のC部拡大詳細図である。
【0016】
本実施の形態に係る車両用灯具1は、車両前端部の左右に設けられるヘッドランプであって、ハウジング2の前面開口部を透明なレンズ3によって覆うことによって画成される不図示の灯室内に光源である不図示のバルブやリフレクタを収容して構成されている。尚、車両用灯具1の基本構成は左右で同じであるため、以下、一方の車両用灯具1についてのみ図示及び説明する。
【0017】
図1及び図4〜図6に示すように、上記ハウジング2の背面の中央部には、不図示のバルブを取り付けるための円筒状のホルダ4が一体に形成されており、該ホルダ4の図中斜め左下にはブロック状のコネクタ5を嵌合保持するための上下一対の水平なガイド壁6,7が車両後方(図5の右方)に向かって一体に突設されている。尚、図示しないが、ハウジング2の背面の上下のガイド壁6,7によって囲まれる部分には金属製の一対の外部端子が車両後方に向かって水平に突設されている。
【0018】
上記一対のガイド壁6,7は、コ字状に成形され、その開口部同士が互いに対向するよう上下に所定の間隔を設けて配置されている。そして、上側のガイド壁6は、左右の縦壁6aとこれらの縦壁6aの間の水平で平坦な平坦壁6bが設けられており、下側のガイド壁7にも同様に左右の縦壁7aとこれらの縦壁7aの間の水平で平坦な平坦壁7b及び誤組防止用リブ7cが設けられている。
【0019】
而して、本実施の形態では、上下一対の各ガイド壁6,7の平坦壁6b,7bの各縦壁6a,7aに近い左右両端部分には車両前後方向(コネクタ5の挿入方向)に長いスリット8,9がそれぞれ形成されており、これらのスリット8,9によって各平坦壁6b,7bと誤組防止用リブ7cの剛性が低く抑えられ、各平坦壁6b,7bと誤組防止用リブ7cは上下に撓み易くなっている。
【0020】
又、前記コネクタ5は、電源である不図示のバッテリから延びる不図示の電源コードの先端に取り付けられている部品であって、樹脂にて矩形ブロック状に一体成形され、その内部には電源コードに接続された金属製の不図示の一対のターミナルが内蔵されている。ここで、コネクタ5の先端部(挿入方向において先端部)5aは他の部位5bよりも小さく(高さ及び幅が小さく)形成され、両者間には段部5cが形成されている。又、図9及び図10に示すように、コネクタ5の底面にはガイド壁7の幅方向中央に形成された前記誤組防止用リブ7cが嵌合するための凹部5dが形成されている。尚、コネクタ5の先端部5aは、後述のようにガイド壁6,7に挿入嵌合される部分であって、その高さは上下のガイド壁6,7の平坦壁6b,7b間の距離よりも若干大きく設定され、幅は上下のガイド壁6,7の左右の縦壁6a,7a間の距離よりも若干小さく設定されている。
【0021】
而して、コネクタ5は、図1に示すように、先端部5aを先にして車両用灯具1のハウジング2の背面に突設されたガイド壁6,7に嵌め込まれ、該ガイド壁6,7によってガイドされながら奥側に差し込まれる。すると、コネクタ5は、その先端部5aの左右両側面が上下の各ガイド壁6,7の左右に設けられた縦壁6a,7aに嵌合することによって左右の位置決めがなされる。又、コネクタ5は、その上下面が上下の各ガイド壁6,7の各平坦壁6b,7bを上下方向に押し広げながらガイド壁6,7に沿って挿入され、図4〜図8に示すように、ガイド壁6,7の先端が当該コネクタ5の段部5cに当接した時点で該コネクタ5の挿入が完了する。このとき、ガイド壁7に形成された誤組防止用リブ7cがコネクタ5の底面に形成された凹部5dに嵌合する方向にしかコネクタ5をガイド壁6,7に嵌め込むことができず、コネクタ5を上下を逆にして嵌め込むことができないため、誤組防止用リブ7cと凹部5dによってコネクタ5の誤組付が防がれる。
【0022】
上述のようにコネクタ5の先端部5aがハウジング2の背面に突設された上下のガイド壁6,7に完全に挿入嵌合されると、該コネクタ5に内蔵されたターミナルがハウジング2の背面のガイド壁6,7によって囲まれる部分に突設された不図示の外部端子に差し込まれて両者が接続され、不図示のバッテリと車両用灯具1が不図示の電源コードを介して電気的に接続されるとともに、コネクタ5が上下のガイド壁6,7の平坦部6b,7bによって挟持されて保持される。
【0023】
以上のように、本発明に係るコネクタ5の保持構造によれば、コネクタ5を保持する上下一対のガイド壁6,7の各平坦壁6b,7bにスリット8,9をそれぞれ形成したため、該平坦壁6b,7bが弾性変形によって上下に撓み易くなり、コネクタ5のガイド壁6,7への差し込み時に平坦壁6b,7bが撓んで広がるために該コネクタ5の組付性が高められとともに、差し込み後のコネクタ5が平坦壁6b,7bによって確実に保持されてその保持力が高められる。
【0024】
又、ガイド壁6,7(ハウジング2)の材質、特に硬度(剛性)に応じて平坦壁6b,7bの肉厚とスリット8,9の長さを適当に設定すれば、ガイド壁6,7の材質によらずコネクタ5の組付性と保持力の向上を両立させることができる。具体的には、ガイド壁6,7の硬度(剛性)が高くて弾性変形しづらいほど、これらの平坦壁6b,7bの肉厚を薄く、スリット8,9の長さを長くすれば、平坦壁6b,7bが弾性変形によって撓み易くなるため、コネクタ5の組付性と保持力が同時に高められる。
【0025】
尚、以上は本発明を特にヘッドランプのコネクタ保持構造に対して適用した形態について説明したが、本発明は、ヘッドランプ以外の他の任意の製品一体形状のコネクタ保持構造に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0026】
1 車両用灯具
2 ハウジング
3 レンズ
4 ホルダ
5 コネクタ
5a コネクタ先端部
5b コネクタの先端部以外の部位
5c コネクタの段部
5d コネクタの凹部
6,7 ガイド壁
6a,7a ガイド壁の縦壁
6b,7b ガイド壁の平坦壁
7c ガイド壁の誤組防止用リブ
8,9 スリット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向するコ字状の一対のガイド壁をハウジングに一体に突設し、これらのガイド壁に沿ってコネクタを挿入嵌合することによって各ガイド壁の両端の縦壁によってコネクタを位置決めしつつ、各ガイド壁の両縦壁の間の平坦壁によってコネクタを保持するようにしたコネクタ保持構造において、
前記各ガイド壁の平坦壁にスリットを前記コネクタの挿入方向に形成したことを特徴とするコネクタ保持構造。
【請求項2】
前記各ガイド壁の平坦壁の肉厚と前記スリットの長さを該ガイド壁の材質に応じて設定することを特徴とする請求項1記載のコネクタ保持構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−171209(P2011−171209A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35635(P2010−35635)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】