説明

コネクタ

【課題】本発明は、コイルピンに加わる応力を吸収又は緩和できるコイルピンの提供を目的とする。
【解決手段】本発明に係るコイルピン10は、電磁弁と電気的に接続する第1電気接続部11と、第1電気接続部11側で固定される第1固定部15と、
基板と電気的に接続する第2電気接続部12と、第2電気接続部12側で固定される第2固定部16と、第1電気接続部11及び第2電気接続部12の間に設けられ応力を吸収する第1応力調整部13と、を備える。さらに、第1応力調整部13は、三次元方向で弾性を備えるために、C字状の環状部13aと、環状部13aの端部にそれぞれ接続される一対の屈曲部13b、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品に用いられるコネクタに関し、より詳細には、ブレーキ液圧制御ユニットの電磁弁を駆動させるためのソレノイドコイルと基板とを接続するコイルピンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車や自動二輪車のブレーキ液圧制御ユニットには、液圧回路制御に用いる電磁弁のコイルや、電磁弁等を制御する基板が含まれている。電磁弁のコイルと基板とは、一対のコイルピンを用いて電気的に接続される。
【0003】
このようなコイルピンは、ROBERT BOSCH GMBHにより、国際公開第2009/071381号に接続エレメントとして提案されている。これを図4及び図5を参照して説明する。
【0004】
図4に示すように、接続エレメント110は、全体として平坦な金属板から一体成形されている。接続エレメント110は、その一端に設けられ電磁弁のコイルと電気的に接続される第1電気接続部111と、接続エレメント110の他端に設けられ基板と電気的に接続される第2電気接続部112と、第1応力調整部113及び第2応力調整部114とを備えている。第1電気接続部111及び第2電気接続部112は、第1応力調整部113及び第2応力調整部114を介して接続される。第1応力調整部113は、S字形状の平坦な板材で形成されており、接続エレメント110に加わる応力を吸収する。第1電気接続部111と第1応力調整部113との間には、第1固定部115が形成される。
【0005】
第1電気接続部111には、スリット111aが形成されており、第1電気接続部111は電磁弁120のコイルワイヤー(コイル巻線)と電気的に接続する。スリット111aにより電磁弁120のコイルが挟まれる。第1電気接続部111には、さらに取付時にジグによって保持及び圧入される第1保持部117aが形成されている。第1応力調整部113と第2応力調整部114との間には、第2保持部117bが形成される。第2応力調整部114と第2保持部117bとの間には、第2固定部116が形成される。
【0006】
次に、接続エレメント110の取付工程を説明する。始めに、第1電気接続部111側をコイルワイヤーに接続するために、第1保持部117aの上端部がジグにより押圧される。これにより、第1電気接続部111及び第1固定部115を電磁弁120のコイルの接続部124に圧入して、第1電気接続部111をコイルワイヤーと接続する。次いで、第2電気接続部112側をハウジングに固定するために、第2保持部117bの下端部をジグにより押圧する。これにより、第2固定部116をハウジングの取付開口に圧入して、ハウジングに接続エレメント110を固定する。最後に、接続エレメント110の第2電気接続部112をハウジング内で基板の接続開口に圧入して、基板と接続エレメント110とを接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2009/071381号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、接続エレメント110等のコネクタが、電磁弁のコイルワイヤー及び基板に取り付けられた状態では、電磁弁のコイルが遊動可能となっている。したがって、コイルワイヤーの遊動時に、比較的剛性が高い接続エレメント110の固定部付近に繰り返し応力が働くことになる。
【0009】
また、「電磁弁のコイルを固定したとしても」樹脂製のハウジングの熱収縮や熱膨張により、接続エレメント110の固定部付近に繰り返し応力が動くことになる。
図4の構造ではこの応力を完全には吸収又は緩和できない可能性がある。その結果として、コイルワイヤーに繰り返し応力が加わって最終的に断線する可能性も生じる。そこで、本発明は、このような応力を吸収又は緩和できるコネクタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のコネクタは、第1部材に対して電気的に接続する第1電気接続部と、前記第1電気接続部側で固定される第1固定部と、第2部材に対して電気的に接続する第2電気接続部と、前記第2電気接続部側で固定される第2固定部と、前記第1電気接続部及び前記第2電気接続部の間に設けられて応力を吸収する第1応力調整部と、を備えるコネクタにおいて、前記第1応力調整部は三次元方向で弾性を有する。
【0011】
前記第1応力調整部は、Ω字形部分、C字形部分、ループ状部分の何れか一つを含む。前記第1応力調整部は、前記第1電気接続部及び/又は前記第2電気接続部に対して、所定の角度をなす屈曲部を含む。前記第1応力調整部は、一対の端部を備える環状部と、前記環状部の前記一対の端部にそれぞれ接続される一対の屈曲部とを備え、前記一対の屈曲部は、前記第1電気接続部及び/又は前記第2電気接続部に対して、所定の角度をなす。前記一対の屈曲部の一方には前記第1固定部が接続され、前記一対の屈曲部の他方には前記第2固定部が接続される。前記所定の角度は、45度乃至135度の間であるか、前記所定の角度は約90度である。前記第1部材は電磁弁であり、前記第2部材は基板である。前記第1固定部は、前記第1部材側の取付部に圧入されて固定される。前記第2固定部は、前記第2部材側の取付部に圧入されて固定される。前記第2部材側の前記取付部は、前記第2部材のハウジングである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1部品や第2部品の破損やコネクタ自身の疲労による破断を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態のコイルピンの正面図である。
【図2】図1のコイルピンの斜視図である。
【図3】図1のコイルピンの取付状態を示す断面図である。
【図4】従来のコイルピンの斜視図である。
【図5】図4のコイルピンの電磁弁のコイルワイヤーへの接続状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のコネクタをコイルピンに適用した実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態に係るコイルピンは、自動車や自動二輪車等に搭載されるブレーキ液圧制御ユニットにおいて、電磁弁のコイルワイヤーとユニットの制御基板とを電気的に接続するものである。
【0015】
図1及び図2に示すように、コイルピン10は、全体として平坦な金属板から一体成形されている。コイルピン10は、その一端に設けられ電磁弁20のコイルと電気的に接続される第1電気接続部11と、コイルピン10の他端に設けられ基板と電気的に接続される第2電気接続部12と、第1応力調整部13及び第2応力調整部14とを備えている。第1電気接続部10及び第2電気接続部12は、第1応力調整部13及び第2応力調整部14を介して接続される。
【0016】
第1電気接続部11と第1応力調整部13との間には、第1固定部15が形成される。第1電気接続部11には、スリット11aが形成されており、第1電気接続部11は電磁弁20のコイルと電気的に接続する。スリット11aにより電磁弁20のコイルが挟まれる。第1電気接続部11には、さらに取付時にジグによって保持及び押圧される第1保持部17aが形成されている。
【0017】
第1応力調整部13と第2応力調整部14との間には、第2電気接続部12を圧入する際に、ジグによって保持される第2保持部17bが形成されている。第2応力調整部14と第2保持部17bとの間には、第2固定部16が形成されており、第2固定部16は、ユニットのハウジングと接触してコイルピン10をハウジング40(図3)に固定する。
【0018】
図2に示すように、第1応力調整部13は環状部13aを備え、環状部13aは、ループ状、Ω字状、又はC字状の形状を含む。環状部13aの平面は、第1固定部15及び/又は第2固定部16の平面に対して、所定角度、例えば約90度の角度をなして配置される。なお、前記所定角度は、第1応力調整部13の実装位置や第1応力調整部13に加わる応力の方向等に応じて調整可能である。例えば、前記所定角度は、環状部13aの平面は、第1固定部15及び/又は第2固定部16の平面に対して、好ましくは45度から135度の角度範囲、より好ましくは80度から100度の角度範囲に、それぞれ設定可能である。
【0019】
さらに、第1応力調整部13は、環状部13aの両端に接続される一対の屈曲部13bと、一対の屈曲部13bに接続される一対の末端部13cとから構成される。一対の末端部13cの平面は、環状部13aの平面に対して前記所定角度をなしており、一対の環状部13aの平面は、それぞれ第1固定部15又は第2固定部16と面一に形成されている。さらに、両末端部13cは、それぞれ第1保持部17a、第2保持部17bに接続される。
【0020】
本実施形態のコイルピンにおいて、第1応力調整部13は、第1固定部15や第2固定部16に対して図1の上下方向から応力が加わった場合に、第1応力調整部13が弾性変形してこれを吸収緩和できる。さらに、第1応力調整部13は、第1固定部15や第2固定部16の平面に対して垂直な方向から応力が加わった場合や、コイルピン10の面全体に対して捩れるような応力が加わった場合にも、第1応力調整部13が弾性変形してこれを吸収緩和できる。したがって、第1応力調整部13は三次元方向での弾性を有する構造に構成されている。
【0021】
図3のブレーキ液圧制御ユニットの組立状態に示すように、一対のコイルピン10の第1電気接続部11は、電磁弁20のコイルの接続部24の取付開口(取付部)から挿入されてコイルワイヤーに接触し、コイルピン10の第1固定部15が接続部24の取付開口で固定される。電磁弁20は、ユニット内で基板ハウジング40と電磁弁20の弁本体が配置される液圧ブロック50との間に配置される。また、コイルピン10のユニットへの実装状態で、第1応力調整部の第1環状部13aの平面は、基板30の平面やハウジング40の底面に対して、全体として平行に配置される。
【0022】
コイルピン10のコイルワイヤーへの取付時には、第1電気接続部11側は、第1保持部17aの上端部がジグにより押圧されて、第1電気接続部11及び第1固定部15が電磁弁20のコイルの接続部24に圧入される。この時、第2電気接続部12側には応力は加わらない。また、コイルピン10のハウジング40への取付時には、第2電気接続部12側は、第2保持部17bの下端部がジグにより押圧されるので、第1電気接続部11側には応力は加わらない。このように、コイルピン10の構造では、その取付時に一端側の応力が他端側に伝わらないように構成されている。
【0023】
ブレーキ液圧ユニット組立後に当該ユニットが車両に搭載された状態において、電磁弁20のコイル26は、コイルピン10を介してハウジング40に固定されているのみなので、各種の振動や電磁弁の作動等により、コイルワイヤーが継続的に遊動する。コイルピン10自体は比較的剛性が高い金属材料から作られるため、コイルワイヤーと物理的に接続する第1固定部や、ハウジングと物理的に接続する第2固定部からコイルピン10に応力が加わる。
【0024】
そこで、本実施形態に係るコイルピン10は、三次元方向で弾性を有する第1応力調整部を備えることにより、電磁弁20のコイルワイヤーの破断や接触不良、コイルピン10自体の金属疲労により破断を防止することができる。
【0025】
また、図3に示すように、シリコンボール60によりダンパを構成して、電磁弁の振動によって発生するコイルピン10への応力を吸収緩和することもできる。シリコンボール60は、ハウジング40に形成されたリブ40a、40bと、電磁弁ハウジング22との間に配置される。
【符号の説明】
【0026】
10 コイルピン(コネクタ)
11 第1電気接続部
12 第2電気接続部
13 第1応力調整部
13a 環状部
13b 屈曲部
13c 末端部
14 第2応力調整部
15 第1固定部
16 第2固定部
17a 第1保持部
17b 第2保持部
20 電磁弁(第1部材)
30 基板
40 ハウジング(第2部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材に対して電気的に接続する第1電気接続部と、前記第1電気接続部側で固定される第1固定部と、第2部材に対して電気的に接続する第2電気接続部と、前記第2電気接続部側で固定される第2固定部と、前記第1電気接続部及び前記第2電気接続部の間に設けられて応力を吸収する第1応力調整部と、を備えるコネクタにおいて、
前記第1応力調整部は三次元方向で弾性を有する、コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタにおいて、前記第1応力調整部は、Ω字形部分、C字形部分、ループ状部分の何れか一つを含む、コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコネクタにおいて、
前記第1応力調整部は、前記第1電気接続部及び/又は前記第2電気接続部に対して、所定の角度をなす屈曲部を含む、コネクタ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のコネクタにおいて、
前記第1応力調整部は、一対の端部を備える環状部と、前記環状部の前記一対の端部にそれぞれ接続される一対の屈曲部とを備え、前記一対の屈曲部は、前記第1電気接続部及び/又は前記第2電気接続部に対して、所定の角度をなす、コネクタ。
【請求項5】
請求項4に記載のコネクタにおいて、
前記一対の屈曲部の一方には前記第1固定部が接続され、前記一対の屈曲部の他方には前記第2固定部が接続される、コネクタ。
【請求項6】
請求項3乃至5に記載のコネクタにおいて、前記所定の角度は、45度乃至135度の間である、コネクタ。
【請求項7】
請求項6に記載のコネクタにおいて、前記所定の角度は約90度である、コネクタ。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載のコネクタにおいて、前記第1部材は電磁弁である、コネクタ。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載のコネクタにおいて、前記第2部材は基板である、コネクタ。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載のコネクタにおいて、前記第1固定部は、前記第1部材側の取付部に圧入されて固定される、コネクタ。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載のコネクタにおいて、前記第2固定部は、前記第2部材側の取付部に圧入されて固定される、コネクタ。
【請求項12】
請求項11に記載のコネクタにおいて、前記第2部材側の前記取付部は、前記第2部材のハウジングである、コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−150807(P2011−150807A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9036(P2010−9036)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】