コネクタ
【課題】コネクタの嵌合信頼性を高める。
【解決手段】コネクタは、係止部11を有する第1ハウジング10と、第1ハウジング10を内嵌可能なフード部32を有し、かつフード部32の周壁に仮係止受部45及び本係止受部44が形成された第2ハウジング30とを備える。仮係止受部45は、フード部32の開口側に位置して、係止部11に係止されることで、第1、第2ハウジング10、30を正規嵌合状態に至らない仮嵌合状態に保持可能とされ、本係止受部44は、フード部32の奥側に位置して、係止部11に係止されることで、第1、第2ハウジング10、30を正規嵌合状態に保持可能とされている。フード部32の周壁のうち、その開口縁と仮係止受部45との間には、撓み変形し難い難撓み部48が形成され、仮係止受部45と本係止受部44との間には、難撓み部48よりも撓み変形し易い易撓み部49が形成されている。
【解決手段】コネクタは、係止部11を有する第1ハウジング10と、第1ハウジング10を内嵌可能なフード部32を有し、かつフード部32の周壁に仮係止受部45及び本係止受部44が形成された第2ハウジング30とを備える。仮係止受部45は、フード部32の開口側に位置して、係止部11に係止されることで、第1、第2ハウジング10、30を正規嵌合状態に至らない仮嵌合状態に保持可能とされ、本係止受部44は、フード部32の奥側に位置して、係止部11に係止されることで、第1、第2ハウジング10、30を正規嵌合状態に保持可能とされている。フード部32の周壁のうち、その開口縁と仮係止受部45との間には、撓み変形し難い難撓み部48が形成され、仮係止受部45と本係止受部44との間には、難撓み部48よりも撓み変形し易い易撓み部49が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のコネクタが開示されている。このものは、互いに嵌合可能な第1、第2ハウジングを備えている。第1ハウジングの外面には、ロック部が突出して形成されている。第2ハウジングは、筒状のフード部を有している。フード部の周壁には、幅方向に一対のスリットが切り入れられ、両スリットは、フード部の開口縁に開口している。フード部の周壁における両スリット間には、フード部の開口縁を自由端とする片持ち状のロックアームが撓み可能に形成されている。ロックアームには、ロック孔が貫通して形成されている。フード部内に第2ハウジングが嵌合されると、ロックアームの撓み動作を伴った後、ロック部がロック孔内に嵌合され、もって第1、第2ハウジングが嵌合状態に保持されるようになっている。また、フード部及びロックアームを撓み変形させることにより、ロック部がロック孔から離間して、第1、第2ハウジングの嵌合状態が解除されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−71529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、第1、第2ハウジングの嵌合状態を解除した後、再度、第1、第2ハウジングを嵌合させることがある。しかし、いったん嵌合状態が解除されると、第1、第2ハウジングの嵌合面が外部に晒されるため、その嵌合面に塵埃等の異物が付着するおそれがある。そうすると、二度目の嵌合時に、第1、第2ハウジングの嵌合面間に異物が入り込み、コネクタの嵌合信頼性が損なわれるおそれがある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コネクタの嵌合信頼性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、係止部を有する第1ハウジングと、前記第1ハウジングを内嵌可能なフード部を有し、かつ前記フード部の周壁に仮係止受部及び本係止受部が形成された第2ハウジングとを備え、前記仮係止受部は、前記フード部の開口側に位置して、前記係止部に弾性的に係止されることで、前記第1、第2ハウジングを正規嵌合状態に至らない仮嵌合状態に保持可能とされ、前記本係止受部は、前記フード部の奥側に位置して、前記係止部に弾性的に係止されることで、前記第1、第2ハウジングを正規嵌合状態に保持可能とされており、前記フード部の周壁における前記係止部の摺動領域のうち、その開口縁と前記仮係止受部との間には、撓み変形し難い難撓み部が形成され、前記仮係止受部と前記本係止受部との間には、前記難撓み部よりも撓み変形し易い易撓み部が形成されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記フード部の奥壁には、前記正規嵌合状態で前記第1ハウジングの嵌合面に弾性的に密着するシール面が形成されているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のものにおいて、前記難撓み部が、前記フード部の周壁を全周に亘って切れ目なく連続する形態とされ、前記易撓み部が、前記フード部の周壁において周方向に間隔をあけて切り入れられた一対のスリット間に形成されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載のものにおいて、前記易撓み部が、嵌合方向の一端を支点、他端を自由端とし、前記支点を中心として前記自由端側が傾倒可能な片持ち状のロックアームとされているところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のものにおいて、前記係止部が前記第1ハウジングの外面から突出する形状とされ、前記仮係止受部及び前記本係止受部が前記フード部の周壁を貫通する形状とされ、前記仮係止受部の孔面のうち、前記第1ハウジングが前記第2ハウジングから離脱する方向で前記係止部と当接可能な仮係止受面が、前記係止部の突出方向に対し前記離脱する方向に傾斜する逆テーパ状とされているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
<請求項1の発明>
仮係止受部が係止部に係止されることにより、第1、第2ハウジングが正規嵌合状態に至らない仮嵌合状態に保持され、第1、第2ハウジングの嵌合面がほぼ隠れるため、この状態で、例えば、ワイヤハーネスの組付現場に搬送されても、第1、第2ハウジングの嵌合面に塵埃等の異物が付着するのが防止される。
【0012】
また、フード部の周壁における係止部の摺動領域のうち、その開口縁と仮係止受部との間には、撓み変形し難い難撓み部が形成されているため、仮に、嵌合状態にある第1、第2ハウジングを離脱させようとしても、係止部が難撓み部と干渉してこの難撓み部を通過するのが困難になる。したがって、実質的に難撓み部を切除しないことには、第1、第2ハウジングを互いに離脱させることができなくなる。その結果、第1、第2ハウジングの再使用が規制され、コネクタの嵌合信頼性が高められる。
なお、仮嵌合状態にある第1ハウジングを正規嵌合状態に至らす際には、係止部が易撓み部を容易に撓み変形させるため、嵌合時の操作性に優れる。
【0013】
<請求項2の発明>
フード部の奥壁に形成されたシール面に異物が付着すると、シール性が損なわれるおそれがある。その点、本発明によれば、第1、第2ハウジングの再使用が規制されて、新品使用が実質的に保障されるため、シール面のシール性が良好に維持される。
【0014】
<請求項3の発明>
難撓み部がフード部の周壁を全周に亘って切れ目なく連続する形態とされ、易撓み部がフード部の周壁において周方向に間隔をあけて切り入れられた一対のスリット間に形成されているため、難撓み部及び易撓み部が比較的簡単に構成される。また、フード部の周壁の開口縁部が難撓み部によって周方向に切れ目なく連続するため、ここに異物が当接しても、易撓み部が不用意に撓み変形されることがない。
【0015】
<請求項4の発明>
易撓み部が、嵌合方向の一端を支点、他端を自由端とし、支点を中心として自由端側が傾倒可能な片持ち状のロックアームとされているため、撓み性がより良好となる。
【0016】
<請求項5の発明>
第1、第2ハウジングが無理やり引き離されようとすると、係止部が仮係止受部における逆テーパ状の仮係止受面に当接して緊密に掛け止められるため、第1、第2ハウジングの離脱がより確実に阻止される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1に係るコネクタにおいて、第1、第2ハウジングが嵌合される初期の状態をあらわす断面図である。
【図2】第1、第2ハウジングが仮嵌合状態に保持された状態をあらわす断面図である。
【図3】第1、第2ハウジングが正規嵌合状態に至る過程の状態をあらわす断面図である。
【図4】第1、第2ハウジングが正規嵌合状態に保持された状態をあらわす断面図である。
【図5】第2ハウジングを高さ方向に沿って切断した断面図である。
【図6】第2ハウジングを幅方向に沿って切断した断面図である。
【図7】第2ハウジングの背面図である。
【図8】第2ハウジングの正面図である。
【図9】第1ハウジングを高さ方向に沿って切断した断面図である。
【図10】第1ハウジングの正面図である。
【図11】本発明の実施形態2に係るコネクタにおいて、係止部が仮係止受部内に嵌合された状態をあらわす拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図10によって説明する。実施形態1に係るコネクタは、互いに嵌合可能な第1、第2ハウジング10、30と、第1、第2ハウジング10、30のそれぞれに装着される第1、第2端子金具80、90とを備えている。なお、以下の説明において前後方向については、第1、第2ハウジング10、30の相互の嵌合面側を前方とする。
【0019】
第1ハウジング10は合成樹脂製であって、図9及び図10に示すように、全体として略角ブロック状をなしている。第1ハウジング10の上下両面の幅方向中央部には、一対の係止部11が突出して形成されている。各係止部11の前面は、上端に行くにつれ後退する斜面12とされ、各係止部11の後面は、上下方向(高さ方向)に沿って切り立つ係止面13とされている。
【0020】
第1ハウジング10内には、高さ方向に2段でかつ幅方向に複数列のキャビティ14が前後方向に形成されている。各キャビティ14の内面には、撓み可能なランス15が前方に突出して形成されている。そして、各キャビティ14内には、後方から第1端子金具80が挿入され、正規挿入された第1端子金具80がランス15に弾性的に係止されて抜け止めされるようになっている。なお、第1ハウジング10の前面には、各キャビティ14の前端開口縁の周りを全周に亘って取り囲むリブ16が突出して形成されている。
【0021】
第1端子金具80は導電金属製であって、図1に示すように、筒状の端子本体部81と、端子本体部81の後方に連なるバレル部82とを有している。バレル部82は、電線70の端末部における芯線にかしめ接続されるとともに、電線70の端末部における被覆に嵌着されたゴム栓60にかしめ接続される。ゴム栓60は、キャビティ14の後部内面に弾性的に密着され、第1ハウジング10内を液密にシールする役割をはたす。
【0022】
第2ハウジング30は合成樹脂製であって、図5ないし図8に示すように、略角ブロック状のハウジング本体部31と、ハウジング本体部31の前端周縁から前方に突出する略角筒状のフード部32とを有している。ハウジング本体部31には、各キャビティ14と対応する位置に、第2端子金具90を圧入可能な装着孔33が前後方向に形成されている。また、ハウジング本体部31の後面には、第2端子金具90を収容可能な収容凹部34が開口して形成されている。また、ハウジング本体部31の後面において、収容凹部34に臨む各装着孔33の後端開口縁には、第2端子金具90を誘い込むテーパ状の案内部35が形成されている。
【0023】
第2端子金具90は導電金属製であって、全体としてピン状をなしている。具体的には第2端子金具90は、連結部91と、連結部91の高さ方向両端から略平行に突出する接続部92とを有している。そして、第2端子金具90は、第2ハウジング30への正規装着時に、連結部91が収容凹部34内に収容されるとともに、各接続部92が高さ方向の各装着孔33に挿入されるようになっている。また、第2端子金具90が正規装着された後、収容凹部34内にはシリコン樹脂等の封止材100が充填固化され、連結部91の周りが液密にシールされる。
【0024】
また、第2ハウジング30の嵌合面となるフード部32の奥面には、前方に突出する複数の突部36が形成され、各突部36に各装着孔33が前後方向に貫通して形成されている。各突部36の前端面の下部には、規制片37が前方に突出して形成されている。規制片37は、第2端子金具90の接続部92の近傍でこの接続部92と略平行に並んで配置され、その前端が第2端子金具90の前端よりも前方に位置している。第1、第2ハウジング10、30の嵌合時に、第1ハウジング10に第1端子金具80が正規挿入されていると、規制片37が対応するランス15の撓み空間内に進入して、ランス15の撓み動作が規制される(図4を参照)。一方、第1ハウジング10に第1端子金具80が正規挿入されない半挿入状態で留め置かれていると、規制片37が第1端子金具80の乗り上げによって撓み状態にあるランス15に突き当たり、第1、第2ハウジング10、30のそれ以上の嵌合動作が規制されるようになっている。
【0025】
また、フード部32の奥面における各突部36の根元周りには、装着凹部38が開口して形成されている。装着凹部38には、前方からゴム製のシール部材200が装着され、これによってフード部32の奥面にシール面201が形成されるようになっている。
【0026】
さて、フード部32の上下両壁の幅方向中央部には、一対のロックアーム41が形成されている。各ロックアーム41は、フード部32の周壁において、前後方向に沿って延びるとともに幅方向(周方向でもある)に間隔をあけて切り入れられた一対のスリット42と、幅方向に沿って延びるとともに両スリット42の前端に連なるスリット43との間に、区画して形成されている。このため、各ロックアーム41は、フード部32の上下両壁に連なる後端を固定端、前端を自由端とする片持ち状に形成され、上下方向(フード部32の厚み方向)に撓み変形可能とされている。そして、各ロックアーム41の後端寄りの位置には、本係止受部44が貫通して形成されている。本係止受部44は、略矩形状に開口する形態とされ、第2端子金具90の接続部92の前端と前後で重なり合う位置に配置されている。
【0027】
また、フード部32の上下両壁には、本係止受部44よりも前方となるフード部32の開口縁寄りの位置に、仮係止受部45が貫通して形成されている。仮係止受部45は、本係止受部44よりも前後方向に小さい開口寸法をもって略矩形状に開口する形態とされ、各ロックアーム41の前端を区画するスリット43に連通している。仮係止受部45及び本係止受部44の各後面は、それぞれ、上下方向に沿って切り立つ仮係止受面46及び本係止受面47とされている。また、フード部32の前端開口縁の内面には、テーパ状の誘い込み部39が全周に亘って切り欠き形成されている。
【0028】
上記の場合に、フード部32の前端開口縁は、全周に亘って切れ目なく連続する形態とされ、撓み変形し難い難撓み部48として構成される。一方、フード部32の周壁のうちロックアーム41の位置する部分は、難撓み部48に比べて撓み変形し易い易撓み部49として構成される。難撓み部48及び易撓み部49は、いずれも、第1、第2ハウジング10、30の嵌合時に係止部11が通過する摺動領域に配置されている。
【0029】
実施形態1に係るコネクタの構造は上述の通りであり、続いて、コネクタの作用効果について説明する。
まず、第1ハウジング10が第2ハウジング30のフード部32内に嵌合される。嵌合の初期には、図1に示すように、係止部11が誘い込み部39を摺動することにより、フード部32の難撓み部48が外側に撓み変形される。この間、難撓み部48の難撓み性に起因して、第1、第2ハウジング10、30間の嵌合抵抗は最大値を示し、第1ハウジング10がフード部32内に無理入れされることとなる。
【0030】
係止部11が仮係止受部45と対応する位置に至ると、図2に示すように、難撓み部48が弾性復帰して、係止部11が仮係止受部45内に嵌合される。この仮嵌合状態では、第1ハウジング10の前面が本係止受部44よりもフード部32の奥面寄りでかつこの奥面から離間する位置に配置され、第2ハウジング30のシール面201が外部から保護状態に置かれる。また、仮嵌合状態では、係止部11の係止面13が仮係止受部45の仮係止受面46に当接可能に配置され、これによって第1ハウジング10が第2ハウジング30に対し仮嵌合位置に抜け止め保持される。
【0031】
その後、仮嵌合状態にある第1、第2ハウジング10、30はワイヤハーネスの組付現場に搬送される。組付現場では、第1ハウジング10のキャビティ14内に後方から第1端子金具80が挿入される。全てのキャビティ14内に第1端子金具80が挿入されたら、続いて、第1ハウジング10がフード部32の奥側に押し込まれる。すると、係止部11の斜面12がロックアーム41の前端縁を摺動して、図3に示すように、ロックアーム41が外側に撓み変形される。この間、易撓み部49の易撓み性に起因し、第1、第2ハウジング10、30の嵌合抵抗は低く抑えられることとなる。
【0032】
係止部11が本係止受部44と対応する位置に至ると、図4に示すように、ロックアーム41(易撓み部49)が弾性復帰して、係止部11が本係止受部44内に嵌合される。この正規嵌合状態では、第1ハウジング10のリブ16がシール部材200の前面(シール面201)に食い込み状態で弾性的に当接して、第1、第2ハウジング10、30の嵌合面間が液密にシールされる。また、第2端子金具90の接続部92が第1端子金具80の本体部内に正規深さで挿入され、第1、第2端子金具80、90が電気的に接続される。本実施形態の場合、各第1端子金具80が第2端子金具90を介して互いに短絡される。さらに、正規嵌合状態では、係止部11の係止面13が本係止受部44の本係止受面47に当接可能に配置され、これによって第1ハウジング10が第2ハウジング30に対して正規嵌合位置に保持される。なお、本実施形態の場合、ロックアーム41、仮係止受部45、及び本係止受部44が高さ方向で対をなして形成されていることに起因し、係止部11が高さ方向の仮係止受部45及び本係止受部44に対して同じタイミングで嵌合されるようになっている。
【0033】
ところで、本実施形態に係るコネクタは、そもそも再使用が予定されていない。しかし、第1ハウジング10の後面から導出される電線70を後方へ強く引っ張る等して第1、第2ハウジング10、30間に離脱方向の外力が加わると、ロックアーム41の撓み動作を伴った後、係止部11が仮係止受部45内に嵌合され、第1、第2ハウジング10、30が仮嵌合状態に引き戻される可能性がある。しかし、係止部11が仮係止受部45内に嵌合された状態で、さらに第1、第2ハウジング10、30を引き離そうとしても、係止部11が難撓み部48を撓み変形させてここを通過することは実質的にできない。このため、図2に示すように、係止部11の係止面13が仮係止受部45の仮係止受面46に緊密に当接して、その掛止状態がしっかりと保持される。その結果、はさみやカッター等の切断手段をもって難撓み部48をフード部32の周壁から強制的に切り離さないことには、第1、第2ハウジング10、30を離間させることができず、第1、第2ハウジング10、30の新品使用が実質的に保障される。
【0034】
以上説明したように本実施形態によれば、仮係止受部45が係止部11に係止されることにより、第1、第2ハウジング10、30が正規嵌合状態に至らない仮嵌合状態に保持され、第1、第2ハウジング10、30の嵌合面がほぼ隠れるため、この状態で、ワイヤハーネスの組付現場に搬送されても、第1、第2ハウジング10、30の嵌合面に塵埃等の異物が付着するのが防止される。
【0035】
また、フード部32の周壁における係止部11の摺動領域のうち、その開口縁と仮係止受部45との間には、撓み変形し難い難撓み部48が形成されているため、嵌合状態にある第1、第2ハウジング10、30を離脱させようとしても、係止部11が難撓み部48と干渉してこの難撓み部48を通過することができない。したがって、実質的に難撓み部48を切除しないことには、第1、第2ハウジング10、30を互いに離脱させることができなくなる。その結果、第1、第2ハウジング10、30の再使用が規制され、コネクタの嵌合信頼性が高められる。また、こうして新品使用が実質的に保障されることにより、第2ハウジング30のシール面201のシール性が良好に維持される。
【0036】
さらに、難撓み部48がフード部32の周壁を全周に亘って切れ目なく連続する形態とされ、易撓み部49がフード部32の周壁において周方向に間隔をあけて切り入れられた一対のスリット42間に形成されているため、難撓み部48及び易撓み部49が比較的簡単に構成される。しかも、フード部32の周壁の開口縁部が難撓み部48によって周方向に切れ目なく連続するため、ここに異物が当接しても、易撓み部49が不用意に撓み変形されることがない。
【0037】
さらにまた、易撓み部49が、嵌合方向の後端を支点、前端を自由端とし、支点を中心として自由端側が傾倒可能な片持ち状のロックアーム41とされているため、撓み性がより良好となる。
【0038】
<実施形態2>
図11は、本発明の実施形態2を示す。実施形態2では、係止部11A及び仮係止受部45Aの構造が実施形態1とは少し異なる。具体的には、係止部11Aの後面は、突出方向となる上端に行くにつれ後退する逆テーパ状の係止面13Aとされている。また、仮係止受部45Aの後面は、同じく上端に行くつれ後退する逆テーパ状の仮係止受面46Aとされている。したがって、嵌合状態にある第1、第2ハウジング10、30が無理やり引き離されようとすると、係止部11Aの係止面13Aが仮係止受部45Aの仮係止受面46Aに深く係止する向きに緊密に掛け止められるため、第1、第2ハウジング10、30の離脱が確実に阻止される。
【0039】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態とは逆に、ロックアームがフード部の開口縁側となる前端を支点、後端を自由端とする片持ち状に形成されるものであってもよい。
(2)ロックアームが周方向に一対のスリット間で両持ち状に形成されるものであってもよい。
(3)上記実施形態とは逆に、係止部が孔状をなし、仮係止受部及び本係止受部がそれぞれ突状をなすものであってもよい。
(4)本発明は、第2端子金具が電線の端末に接続されるワイヤトゥワイヤタイプのコネクタにも適用可能である。
(5)本発明は、フード部の奥面がシール面とされないコネクタにも適用可能である。さらに、ゴム栓等を有しない非防水タイプのコネクタにも適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
10…第1ハウジング
11、11A…係止部
30…第2ハウジング
32…フード部
41…ロックアーム
42…スリット
44…本係止受部
45、45A…仮係止受部
46、46A…仮係止受面
48…難撓み部
49…易撓み部
80…第1端子金具
90…第2端子金具
200…シール部材
201…シール面
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のコネクタが開示されている。このものは、互いに嵌合可能な第1、第2ハウジングを備えている。第1ハウジングの外面には、ロック部が突出して形成されている。第2ハウジングは、筒状のフード部を有している。フード部の周壁には、幅方向に一対のスリットが切り入れられ、両スリットは、フード部の開口縁に開口している。フード部の周壁における両スリット間には、フード部の開口縁を自由端とする片持ち状のロックアームが撓み可能に形成されている。ロックアームには、ロック孔が貫通して形成されている。フード部内に第2ハウジングが嵌合されると、ロックアームの撓み動作を伴った後、ロック部がロック孔内に嵌合され、もって第1、第2ハウジングが嵌合状態に保持されるようになっている。また、フード部及びロックアームを撓み変形させることにより、ロック部がロック孔から離間して、第1、第2ハウジングの嵌合状態が解除されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−71529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、第1、第2ハウジングの嵌合状態を解除した後、再度、第1、第2ハウジングを嵌合させることがある。しかし、いったん嵌合状態が解除されると、第1、第2ハウジングの嵌合面が外部に晒されるため、その嵌合面に塵埃等の異物が付着するおそれがある。そうすると、二度目の嵌合時に、第1、第2ハウジングの嵌合面間に異物が入り込み、コネクタの嵌合信頼性が損なわれるおそれがある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コネクタの嵌合信頼性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、係止部を有する第1ハウジングと、前記第1ハウジングを内嵌可能なフード部を有し、かつ前記フード部の周壁に仮係止受部及び本係止受部が形成された第2ハウジングとを備え、前記仮係止受部は、前記フード部の開口側に位置して、前記係止部に弾性的に係止されることで、前記第1、第2ハウジングを正規嵌合状態に至らない仮嵌合状態に保持可能とされ、前記本係止受部は、前記フード部の奥側に位置して、前記係止部に弾性的に係止されることで、前記第1、第2ハウジングを正規嵌合状態に保持可能とされており、前記フード部の周壁における前記係止部の摺動領域のうち、その開口縁と前記仮係止受部との間には、撓み変形し難い難撓み部が形成され、前記仮係止受部と前記本係止受部との間には、前記難撓み部よりも撓み変形し易い易撓み部が形成されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記フード部の奥壁には、前記正規嵌合状態で前記第1ハウジングの嵌合面に弾性的に密着するシール面が形成されているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のものにおいて、前記難撓み部が、前記フード部の周壁を全周に亘って切れ目なく連続する形態とされ、前記易撓み部が、前記フード部の周壁において周方向に間隔をあけて切り入れられた一対のスリット間に形成されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載のものにおいて、前記易撓み部が、嵌合方向の一端を支点、他端を自由端とし、前記支点を中心として前記自由端側が傾倒可能な片持ち状のロックアームとされているところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のものにおいて、前記係止部が前記第1ハウジングの外面から突出する形状とされ、前記仮係止受部及び前記本係止受部が前記フード部の周壁を貫通する形状とされ、前記仮係止受部の孔面のうち、前記第1ハウジングが前記第2ハウジングから離脱する方向で前記係止部と当接可能な仮係止受面が、前記係止部の突出方向に対し前記離脱する方向に傾斜する逆テーパ状とされているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
<請求項1の発明>
仮係止受部が係止部に係止されることにより、第1、第2ハウジングが正規嵌合状態に至らない仮嵌合状態に保持され、第1、第2ハウジングの嵌合面がほぼ隠れるため、この状態で、例えば、ワイヤハーネスの組付現場に搬送されても、第1、第2ハウジングの嵌合面に塵埃等の異物が付着するのが防止される。
【0012】
また、フード部の周壁における係止部の摺動領域のうち、その開口縁と仮係止受部との間には、撓み変形し難い難撓み部が形成されているため、仮に、嵌合状態にある第1、第2ハウジングを離脱させようとしても、係止部が難撓み部と干渉してこの難撓み部を通過するのが困難になる。したがって、実質的に難撓み部を切除しないことには、第1、第2ハウジングを互いに離脱させることができなくなる。その結果、第1、第2ハウジングの再使用が規制され、コネクタの嵌合信頼性が高められる。
なお、仮嵌合状態にある第1ハウジングを正規嵌合状態に至らす際には、係止部が易撓み部を容易に撓み変形させるため、嵌合時の操作性に優れる。
【0013】
<請求項2の発明>
フード部の奥壁に形成されたシール面に異物が付着すると、シール性が損なわれるおそれがある。その点、本発明によれば、第1、第2ハウジングの再使用が規制されて、新品使用が実質的に保障されるため、シール面のシール性が良好に維持される。
【0014】
<請求項3の発明>
難撓み部がフード部の周壁を全周に亘って切れ目なく連続する形態とされ、易撓み部がフード部の周壁において周方向に間隔をあけて切り入れられた一対のスリット間に形成されているため、難撓み部及び易撓み部が比較的簡単に構成される。また、フード部の周壁の開口縁部が難撓み部によって周方向に切れ目なく連続するため、ここに異物が当接しても、易撓み部が不用意に撓み変形されることがない。
【0015】
<請求項4の発明>
易撓み部が、嵌合方向の一端を支点、他端を自由端とし、支点を中心として自由端側が傾倒可能な片持ち状のロックアームとされているため、撓み性がより良好となる。
【0016】
<請求項5の発明>
第1、第2ハウジングが無理やり引き離されようとすると、係止部が仮係止受部における逆テーパ状の仮係止受面に当接して緊密に掛け止められるため、第1、第2ハウジングの離脱がより確実に阻止される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1に係るコネクタにおいて、第1、第2ハウジングが嵌合される初期の状態をあらわす断面図である。
【図2】第1、第2ハウジングが仮嵌合状態に保持された状態をあらわす断面図である。
【図3】第1、第2ハウジングが正規嵌合状態に至る過程の状態をあらわす断面図である。
【図4】第1、第2ハウジングが正規嵌合状態に保持された状態をあらわす断面図である。
【図5】第2ハウジングを高さ方向に沿って切断した断面図である。
【図6】第2ハウジングを幅方向に沿って切断した断面図である。
【図7】第2ハウジングの背面図である。
【図8】第2ハウジングの正面図である。
【図9】第1ハウジングを高さ方向に沿って切断した断面図である。
【図10】第1ハウジングの正面図である。
【図11】本発明の実施形態2に係るコネクタにおいて、係止部が仮係止受部内に嵌合された状態をあらわす拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図10によって説明する。実施形態1に係るコネクタは、互いに嵌合可能な第1、第2ハウジング10、30と、第1、第2ハウジング10、30のそれぞれに装着される第1、第2端子金具80、90とを備えている。なお、以下の説明において前後方向については、第1、第2ハウジング10、30の相互の嵌合面側を前方とする。
【0019】
第1ハウジング10は合成樹脂製であって、図9及び図10に示すように、全体として略角ブロック状をなしている。第1ハウジング10の上下両面の幅方向中央部には、一対の係止部11が突出して形成されている。各係止部11の前面は、上端に行くにつれ後退する斜面12とされ、各係止部11の後面は、上下方向(高さ方向)に沿って切り立つ係止面13とされている。
【0020】
第1ハウジング10内には、高さ方向に2段でかつ幅方向に複数列のキャビティ14が前後方向に形成されている。各キャビティ14の内面には、撓み可能なランス15が前方に突出して形成されている。そして、各キャビティ14内には、後方から第1端子金具80が挿入され、正規挿入された第1端子金具80がランス15に弾性的に係止されて抜け止めされるようになっている。なお、第1ハウジング10の前面には、各キャビティ14の前端開口縁の周りを全周に亘って取り囲むリブ16が突出して形成されている。
【0021】
第1端子金具80は導電金属製であって、図1に示すように、筒状の端子本体部81と、端子本体部81の後方に連なるバレル部82とを有している。バレル部82は、電線70の端末部における芯線にかしめ接続されるとともに、電線70の端末部における被覆に嵌着されたゴム栓60にかしめ接続される。ゴム栓60は、キャビティ14の後部内面に弾性的に密着され、第1ハウジング10内を液密にシールする役割をはたす。
【0022】
第2ハウジング30は合成樹脂製であって、図5ないし図8に示すように、略角ブロック状のハウジング本体部31と、ハウジング本体部31の前端周縁から前方に突出する略角筒状のフード部32とを有している。ハウジング本体部31には、各キャビティ14と対応する位置に、第2端子金具90を圧入可能な装着孔33が前後方向に形成されている。また、ハウジング本体部31の後面には、第2端子金具90を収容可能な収容凹部34が開口して形成されている。また、ハウジング本体部31の後面において、収容凹部34に臨む各装着孔33の後端開口縁には、第2端子金具90を誘い込むテーパ状の案内部35が形成されている。
【0023】
第2端子金具90は導電金属製であって、全体としてピン状をなしている。具体的には第2端子金具90は、連結部91と、連結部91の高さ方向両端から略平行に突出する接続部92とを有している。そして、第2端子金具90は、第2ハウジング30への正規装着時に、連結部91が収容凹部34内に収容されるとともに、各接続部92が高さ方向の各装着孔33に挿入されるようになっている。また、第2端子金具90が正規装着された後、収容凹部34内にはシリコン樹脂等の封止材100が充填固化され、連結部91の周りが液密にシールされる。
【0024】
また、第2ハウジング30の嵌合面となるフード部32の奥面には、前方に突出する複数の突部36が形成され、各突部36に各装着孔33が前後方向に貫通して形成されている。各突部36の前端面の下部には、規制片37が前方に突出して形成されている。規制片37は、第2端子金具90の接続部92の近傍でこの接続部92と略平行に並んで配置され、その前端が第2端子金具90の前端よりも前方に位置している。第1、第2ハウジング10、30の嵌合時に、第1ハウジング10に第1端子金具80が正規挿入されていると、規制片37が対応するランス15の撓み空間内に進入して、ランス15の撓み動作が規制される(図4を参照)。一方、第1ハウジング10に第1端子金具80が正規挿入されない半挿入状態で留め置かれていると、規制片37が第1端子金具80の乗り上げによって撓み状態にあるランス15に突き当たり、第1、第2ハウジング10、30のそれ以上の嵌合動作が規制されるようになっている。
【0025】
また、フード部32の奥面における各突部36の根元周りには、装着凹部38が開口して形成されている。装着凹部38には、前方からゴム製のシール部材200が装着され、これによってフード部32の奥面にシール面201が形成されるようになっている。
【0026】
さて、フード部32の上下両壁の幅方向中央部には、一対のロックアーム41が形成されている。各ロックアーム41は、フード部32の周壁において、前後方向に沿って延びるとともに幅方向(周方向でもある)に間隔をあけて切り入れられた一対のスリット42と、幅方向に沿って延びるとともに両スリット42の前端に連なるスリット43との間に、区画して形成されている。このため、各ロックアーム41は、フード部32の上下両壁に連なる後端を固定端、前端を自由端とする片持ち状に形成され、上下方向(フード部32の厚み方向)に撓み変形可能とされている。そして、各ロックアーム41の後端寄りの位置には、本係止受部44が貫通して形成されている。本係止受部44は、略矩形状に開口する形態とされ、第2端子金具90の接続部92の前端と前後で重なり合う位置に配置されている。
【0027】
また、フード部32の上下両壁には、本係止受部44よりも前方となるフード部32の開口縁寄りの位置に、仮係止受部45が貫通して形成されている。仮係止受部45は、本係止受部44よりも前後方向に小さい開口寸法をもって略矩形状に開口する形態とされ、各ロックアーム41の前端を区画するスリット43に連通している。仮係止受部45及び本係止受部44の各後面は、それぞれ、上下方向に沿って切り立つ仮係止受面46及び本係止受面47とされている。また、フード部32の前端開口縁の内面には、テーパ状の誘い込み部39が全周に亘って切り欠き形成されている。
【0028】
上記の場合に、フード部32の前端開口縁は、全周に亘って切れ目なく連続する形態とされ、撓み変形し難い難撓み部48として構成される。一方、フード部32の周壁のうちロックアーム41の位置する部分は、難撓み部48に比べて撓み変形し易い易撓み部49として構成される。難撓み部48及び易撓み部49は、いずれも、第1、第2ハウジング10、30の嵌合時に係止部11が通過する摺動領域に配置されている。
【0029】
実施形態1に係るコネクタの構造は上述の通りであり、続いて、コネクタの作用効果について説明する。
まず、第1ハウジング10が第2ハウジング30のフード部32内に嵌合される。嵌合の初期には、図1に示すように、係止部11が誘い込み部39を摺動することにより、フード部32の難撓み部48が外側に撓み変形される。この間、難撓み部48の難撓み性に起因して、第1、第2ハウジング10、30間の嵌合抵抗は最大値を示し、第1ハウジング10がフード部32内に無理入れされることとなる。
【0030】
係止部11が仮係止受部45と対応する位置に至ると、図2に示すように、難撓み部48が弾性復帰して、係止部11が仮係止受部45内に嵌合される。この仮嵌合状態では、第1ハウジング10の前面が本係止受部44よりもフード部32の奥面寄りでかつこの奥面から離間する位置に配置され、第2ハウジング30のシール面201が外部から保護状態に置かれる。また、仮嵌合状態では、係止部11の係止面13が仮係止受部45の仮係止受面46に当接可能に配置され、これによって第1ハウジング10が第2ハウジング30に対し仮嵌合位置に抜け止め保持される。
【0031】
その後、仮嵌合状態にある第1、第2ハウジング10、30はワイヤハーネスの組付現場に搬送される。組付現場では、第1ハウジング10のキャビティ14内に後方から第1端子金具80が挿入される。全てのキャビティ14内に第1端子金具80が挿入されたら、続いて、第1ハウジング10がフード部32の奥側に押し込まれる。すると、係止部11の斜面12がロックアーム41の前端縁を摺動して、図3に示すように、ロックアーム41が外側に撓み変形される。この間、易撓み部49の易撓み性に起因し、第1、第2ハウジング10、30の嵌合抵抗は低く抑えられることとなる。
【0032】
係止部11が本係止受部44と対応する位置に至ると、図4に示すように、ロックアーム41(易撓み部49)が弾性復帰して、係止部11が本係止受部44内に嵌合される。この正規嵌合状態では、第1ハウジング10のリブ16がシール部材200の前面(シール面201)に食い込み状態で弾性的に当接して、第1、第2ハウジング10、30の嵌合面間が液密にシールされる。また、第2端子金具90の接続部92が第1端子金具80の本体部内に正規深さで挿入され、第1、第2端子金具80、90が電気的に接続される。本実施形態の場合、各第1端子金具80が第2端子金具90を介して互いに短絡される。さらに、正規嵌合状態では、係止部11の係止面13が本係止受部44の本係止受面47に当接可能に配置され、これによって第1ハウジング10が第2ハウジング30に対して正規嵌合位置に保持される。なお、本実施形態の場合、ロックアーム41、仮係止受部45、及び本係止受部44が高さ方向で対をなして形成されていることに起因し、係止部11が高さ方向の仮係止受部45及び本係止受部44に対して同じタイミングで嵌合されるようになっている。
【0033】
ところで、本実施形態に係るコネクタは、そもそも再使用が予定されていない。しかし、第1ハウジング10の後面から導出される電線70を後方へ強く引っ張る等して第1、第2ハウジング10、30間に離脱方向の外力が加わると、ロックアーム41の撓み動作を伴った後、係止部11が仮係止受部45内に嵌合され、第1、第2ハウジング10、30が仮嵌合状態に引き戻される可能性がある。しかし、係止部11が仮係止受部45内に嵌合された状態で、さらに第1、第2ハウジング10、30を引き離そうとしても、係止部11が難撓み部48を撓み変形させてここを通過することは実質的にできない。このため、図2に示すように、係止部11の係止面13が仮係止受部45の仮係止受面46に緊密に当接して、その掛止状態がしっかりと保持される。その結果、はさみやカッター等の切断手段をもって難撓み部48をフード部32の周壁から強制的に切り離さないことには、第1、第2ハウジング10、30を離間させることができず、第1、第2ハウジング10、30の新品使用が実質的に保障される。
【0034】
以上説明したように本実施形態によれば、仮係止受部45が係止部11に係止されることにより、第1、第2ハウジング10、30が正規嵌合状態に至らない仮嵌合状態に保持され、第1、第2ハウジング10、30の嵌合面がほぼ隠れるため、この状態で、ワイヤハーネスの組付現場に搬送されても、第1、第2ハウジング10、30の嵌合面に塵埃等の異物が付着するのが防止される。
【0035】
また、フード部32の周壁における係止部11の摺動領域のうち、その開口縁と仮係止受部45との間には、撓み変形し難い難撓み部48が形成されているため、嵌合状態にある第1、第2ハウジング10、30を離脱させようとしても、係止部11が難撓み部48と干渉してこの難撓み部48を通過することができない。したがって、実質的に難撓み部48を切除しないことには、第1、第2ハウジング10、30を互いに離脱させることができなくなる。その結果、第1、第2ハウジング10、30の再使用が規制され、コネクタの嵌合信頼性が高められる。また、こうして新品使用が実質的に保障されることにより、第2ハウジング30のシール面201のシール性が良好に維持される。
【0036】
さらに、難撓み部48がフード部32の周壁を全周に亘って切れ目なく連続する形態とされ、易撓み部49がフード部32の周壁において周方向に間隔をあけて切り入れられた一対のスリット42間に形成されているため、難撓み部48及び易撓み部49が比較的簡単に構成される。しかも、フード部32の周壁の開口縁部が難撓み部48によって周方向に切れ目なく連続するため、ここに異物が当接しても、易撓み部49が不用意に撓み変形されることがない。
【0037】
さらにまた、易撓み部49が、嵌合方向の後端を支点、前端を自由端とし、支点を中心として自由端側が傾倒可能な片持ち状のロックアーム41とされているため、撓み性がより良好となる。
【0038】
<実施形態2>
図11は、本発明の実施形態2を示す。実施形態2では、係止部11A及び仮係止受部45Aの構造が実施形態1とは少し異なる。具体的には、係止部11Aの後面は、突出方向となる上端に行くにつれ後退する逆テーパ状の係止面13Aとされている。また、仮係止受部45Aの後面は、同じく上端に行くつれ後退する逆テーパ状の仮係止受面46Aとされている。したがって、嵌合状態にある第1、第2ハウジング10、30が無理やり引き離されようとすると、係止部11Aの係止面13Aが仮係止受部45Aの仮係止受面46Aに深く係止する向きに緊密に掛け止められるため、第1、第2ハウジング10、30の離脱が確実に阻止される。
【0039】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態とは逆に、ロックアームがフード部の開口縁側となる前端を支点、後端を自由端とする片持ち状に形成されるものであってもよい。
(2)ロックアームが周方向に一対のスリット間で両持ち状に形成されるものであってもよい。
(3)上記実施形態とは逆に、係止部が孔状をなし、仮係止受部及び本係止受部がそれぞれ突状をなすものであってもよい。
(4)本発明は、第2端子金具が電線の端末に接続されるワイヤトゥワイヤタイプのコネクタにも適用可能である。
(5)本発明は、フード部の奥面がシール面とされないコネクタにも適用可能である。さらに、ゴム栓等を有しない非防水タイプのコネクタにも適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
10…第1ハウジング
11、11A…係止部
30…第2ハウジング
32…フード部
41…ロックアーム
42…スリット
44…本係止受部
45、45A…仮係止受部
46、46A…仮係止受面
48…難撓み部
49…易撓み部
80…第1端子金具
90…第2端子金具
200…シール部材
201…シール面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
係止部を有する第1ハウジングと、
前記第1ハウジングを内嵌可能なフード部を有し、かつ前記フード部の周壁に仮係止受部及び本係止受部が形成された第2ハウジングとを備え、
前記仮係止受部は、前記フード部の開口側に位置して、前記係止部に弾性的に係止されることで、前記第1、第2ハウジングを正規嵌合状態に至らない仮嵌合状態に保持可能とされ、
前記本係止受部は、前記フード部の奥側に位置して、前記係止部に弾性的に係止されることで、前記第1、第2ハウジングを正規嵌合状態に保持可能とされており、
前記フード部の周壁における前記係止部の摺動領域のうち、その開口縁と前記仮係止受部との間には、撓み変形し難い難撓み部が形成され、前記仮係止受部と前記本係止受部との間には、前記難撓み部よりも撓み変形し易い易撓み部が形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記フード部の奥壁には、前記正規嵌合状態で前記第1ハウジングの嵌合面に弾性的に密着するシール面が形成されている請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記難撓み部が、前記フード部の周壁を全周に亘って切れ目なく連続する形態とされ、
前記易撓み部が、前記フード部の周壁において周方向に間隔をあけて切り入れられた一対のスリット間に形成されている請求項1又は2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記易撓み部が、嵌合方向の一端を支点、他端を自由端とし、前記支点を中心として前記自由端側が傾倒可能な片持ち状のロックアームとされている請求項3記載のコネクタ。
【請求項5】
前記係止部が前記第1ハウジングの外面から突出する形状とされ、前記仮係止受部及び前記本係止受部が前記フード部の周壁を貫通する形状とされ、前記仮係止受部の孔面のうち、前記第1ハウジングが前記第2ハウジングから離脱する方向で前記係止部と当接可能な仮係止受面が、前記係止部の突出方向に対し前記離脱する方向に傾斜する逆テーパ状とされている請求項1ないし4のいずれか1項記載のコネクタ。
【請求項1】
係止部を有する第1ハウジングと、
前記第1ハウジングを内嵌可能なフード部を有し、かつ前記フード部の周壁に仮係止受部及び本係止受部が形成された第2ハウジングとを備え、
前記仮係止受部は、前記フード部の開口側に位置して、前記係止部に弾性的に係止されることで、前記第1、第2ハウジングを正規嵌合状態に至らない仮嵌合状態に保持可能とされ、
前記本係止受部は、前記フード部の奥側に位置して、前記係止部に弾性的に係止されることで、前記第1、第2ハウジングを正規嵌合状態に保持可能とされており、
前記フード部の周壁における前記係止部の摺動領域のうち、その開口縁と前記仮係止受部との間には、撓み変形し難い難撓み部が形成され、前記仮係止受部と前記本係止受部との間には、前記難撓み部よりも撓み変形し易い易撓み部が形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記フード部の奥壁には、前記正規嵌合状態で前記第1ハウジングの嵌合面に弾性的に密着するシール面が形成されている請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記難撓み部が、前記フード部の周壁を全周に亘って切れ目なく連続する形態とされ、
前記易撓み部が、前記フード部の周壁において周方向に間隔をあけて切り入れられた一対のスリット間に形成されている請求項1又は2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記易撓み部が、嵌合方向の一端を支点、他端を自由端とし、前記支点を中心として前記自由端側が傾倒可能な片持ち状のロックアームとされている請求項3記載のコネクタ。
【請求項5】
前記係止部が前記第1ハウジングの外面から突出する形状とされ、前記仮係止受部及び前記本係止受部が前記フード部の周壁を貫通する形状とされ、前記仮係止受部の孔面のうち、前記第1ハウジングが前記第2ハウジングから離脱する方向で前記係止部と当接可能な仮係止受面が、前記係止部の突出方向に対し前記離脱する方向に傾斜する逆テーパ状とされている請求項1ないし4のいずれか1項記載のコネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−109031(P2012−109031A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254640(P2010−254640)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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