説明

コネクタ

【課題】接続対象物を挿入することによって接続対象物がロックされるコネクタであって接続対象物がロックされた際にクリック感を得ることができるコネクタを提供すること。
【解決手段】コネクタ10に第1ロック部と第2ロック部とを備える。ここで、接続対象物90は、被規制部91と被規制部の抜去方向側に位置する受容部92とを備えている。第1ロック部は、接続対象物との嵌合状態のロック時において、受容部に少なくとも部分的に受容される第1ロック位置に位置することにより、被規制部の抜去方向へ向かう移動を規制する。金属製の第2ロック部は、突端を有すると共に、嵌合状態のロック時において、受容部に少なくとも突端を受容される第2ロック位置に位置する。接続対象物が挿入方向に沿って挿入された際、第2ロック部の突端が被規制部上に乗り上げた後、受容部内に落ちることによりクリック感が創出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性部分を備えた板状の接続対象物と嵌合・接続するコネクタに関する。接続対象物には、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)が含まれる。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタとしては、例えば、特許文献1乃至特許文献3に開示されているようにアクチュエータを備えたものがある。アクチュエータは、接続対象物をコネクタに挿入することができる開位置と、挿入された接続対象物との嵌合状態をロックする閉位置との間で回動可能となるように構成されていると共に、アクチュエータを開位置と閉位置との間で回動操作する際にクリック感を得ることができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−141788号公報
【特許文献2】特開2008−218255号公報
【特許文献3】特開2006−179505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接続対象物をコネクタに挿入して両者を接続するだけで接続対象物との嵌合状態がロックされる一方、嵌合状態のロックを解除する際にはアクチュエータ(操作部材)の操作を要するコネクタがある。
【0005】
かかるコネクタにおいては、接続対象物をコネクタに接続した際に接続状態を視認しづらいことから、適切な接続がなされた際にクリック感を得たいという要望がある。
【0006】
そこで本発明は、接続対象物を接続位置まで挿入することによって接続対象物との嵌合状態がロックされるコネクタであって嵌合状態がロックされた際に(即ち、適切に接続がなされた際に)クリック感を得ることができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
クリック感を得るという目的に限るならば、例えば、コネクタに金属製のロック部を備え、ロック部が接続対象物に設けられた切り欠きに落ちることでクリック感が創出されるように構成すればよい。しかしながら、このように構成した場合、嵌合状態がロックされた状態(即ち、金属製のロック部が切り欠き内に位置している状態)で接続対象物を抜去しようとして強く引くと、ロック部の先端(エッジ)によって接続対象物が破損する恐れがある。そこで、本発明によるコネクタは、金属製のロック部を含む2つのロック部を備えることとした。
【0008】
本発明によれば、第1のコネクタとして、
被規制部を有する接続対象物を挿入方向に沿って接続位置まで挿入されることによって、前記接続対象物との嵌合状態がロックされるコネクタであって、
前記嵌合状態のロック時において前記被規制部の前記抜去方向側に位置する受容部に少なくとも部分的に受容される第1ロック位置に位置することにより、前記被規制部の前記抜去方向へ向かう移動を規制する第1ロック部と、
前記第1ロック部を前記第1ロック位置に向けて付勢する第1バネと、
突端を有すると共に、前記嵌合状態の前記ロック時において前記受容部に少なくとも前記突端を受容される第2ロック位置に位置する金属製の第2ロック部と、
前記第2ロック部を前記第2ロック位置に向けて付勢する第2バネであって前記第1バネから独立している第2バネと
を備えており、
前記接続対象物が前記挿入方向に沿って挿入された際、前記突端が前記被規制部上に乗り上げた後、前記受容部内に落ちることによりクリック感を創出するように、前記第2ロック部は前記第2バネに支持されており、
前記第2ロック部は、エッジ部分を有するように板材をプレス加工して得られるものであり、
前記第2ロック部は、前記嵌合状態の前記ロック時において前記接続対象物を抜去しようとした場合に、前記第2ロック部の前記エッジ部分のみが前記被規制部に当接しないように配置されている
コネクタが得られる。
【0009】
また、本発明によれば、第2のコネクタとして、第1のコネクタであって、
前記挿入方向の逆方向である抜去方向に沿って接続対象物を抜去する際に前記ロックを解除するために操作されるアクチュエータを更に備えており、
前記第1ロック部は、前記アクチュエータの一部として形成されており、
前記第1バネは、前記第1ロック部が前記第1ロック位置に向かうように、前記アクチュエータに力を加えている
コネクタが得られる。
【0010】
また、本発明によれば、第3のコネクタとして、第1又は第2のコネクタであって、
前記嵌合状態の前記ロック時において前記接続対象物を抜去しようとした際に少なくとも前記第1ロック部が前記被規制部に当接して前記規制を行うように、前記第1ロック部が配置されている
コネクタが得られる。
【0011】
また、本発明によれば、第4のコネクタとして、第3のコネクタであって、
複数のコンタクトと、前記複数のコンタクトをピッチ方向において列設保持するハウジングとを更に備えており、
前記第2ロック部は、前記ピッチ方向と直交している
コネクタが得られる。
【0012】
また、本発明によれば、第5のコネクタとして、第4のコネクタであって、
前記第2ロック部は、前記ピッチ方向において前記第1ロック部の内側に位置している
コネクタが得られる。
【0013】
また、本発明によれば、第6のコネクタとして、第5のコネクタであって、
前記第1ロック部は、前記接続対象物と前記コネクタとの前記嵌合状態において、前記接続対象物よりも前記ピッチ方向の外側に張り出した部位を有する
コネクタが得られる。
【0014】
また、本発明によれば、第7のコネクタとして、第4乃至第6のコネクタのいずれかであって、
前記第2バネは、前記第1ロック部上に延びる部位を有しており、
前記第2ロック部は、前記第2バネから下方に向けて突出している
コネクタが得られる。
【0015】
また、本発明によれば、第8のコネクタとして、第7のコネクタであって、
前記第2ロック部は、前記コネクタの前端側に位置しており、
前記第2バネは、前記コネクタの後端側から前端側に延びた後、前記第1ロック部の上方を前記ピッチ方向内側に向かって延びている
コネクタが得られる。
【0016】
また、本発明によれば、第9のコネクタとして、第1乃至第8のコネクタのいずれかであって、
摺動面と、前記摺動面から上方に突出した段差部とを更に備えており、
前記接続対象物は、前記摺動面の上に下面を置いて挿入されて前記段差部に上がった後で前記接続位置まで挿入され、
前記被規制部が前記段差部に上がった状態で前記嵌合状態がロックされる
コネクタが得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、嵌合状態がロックされる際に金属製の第2ロック部が接続対象物の受容部内に落ちるようにしたため、第1ロック部が受容部内に落ちることによるクリック感に金属製の第2ロック部が受容部内に落ちることによるクリック感が加わり、十分なクリック感を得ることができる。また、第2ロック部に加えて接続対象物の被規制部の抜去方向へ向かう移動を規制する第1ロック部を備え、接続対象物を抜去しようとした場合に、金属製の第2ロック部のエッジ部分のみが接続対象物と当接することがないようにしたため、第1ロック部と第2ロック部とによりロック力が強化されると共に、接続対象物を抜去する際に第2ロック部のエッジ部分が接続対象物を裂く又は擦るということを防止でき、これにより被規制部の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態によるコネクタと、接続対象物の先端部分とを示す斜視図である。
【図2】図1のコネクタと、接続対象物の先端部分とを示す上面図である。
【図3】図1のコネクタを示す正面図である。
【図4】図1のコネクタを示す側面図である。
【図5】図1のコネクタのシェルのうち第2ロック部の周辺を示す斜視図である。
【図6】図2のコネクタから破線部分Aを切り取って接続対象物の破線部分Bと共に示す斜視図である。なお、接続対象物はコネクタに挿入されていない。
【図7】図3のコネクタと接続対象物とのVII−VII断面図である。なお、接続対象物はコネクタに挿入されていない。
【図8】図2のコネクタから破線部分Aを切り取って接続対象物の接続対象物の破線部分Bと共に示す斜視図である。なお、接続対象物はコネクタに挿入されているが嵌合していない。
【図9】図3のコネクタと接続対象物とのIX−IX断面図である。なお、接続対象物はコネクタに挿入されているが嵌合していない。
【図10】図2のコネクタから破線部分Aを切り取って接続対象物の破線部分Bと共に示す斜視図である。なお、接続対象物はコネクタと嵌合している。
【図11】図3のコネクタと接続対象物とのXI−XI断面図である。なお、接続対象物はコネクタと嵌合している。
【図12】図6の第1ロック部及び第2ロック部の先端付近を示す部分拡大図である。
【図13】本発明の実施の形態による第1ロック部と第2ロック部との変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1から理解されるように、本実施の形態によるコネクタ10は、基板(図示せず)に固定されるものであり、FPC等の接続対象物90が挿入方向(+Y方向)に沿って挿入・接続される。コネクタ10に接続された接続対象物90は、挿入方向の逆方向である抜去方向(−Y方向)に沿ってコネクタ10から抜去することができる。なお、FFC(Flat Flexible Cable)、薄型の嵌合部を有するプラグコネクタ等を接続対象物90として使用することもできる。
【0020】
図1及び図2に示されるように、コネクタ10は、絶縁性材料からなるハウジング20と、絶縁性材料からなるアクチュエータ30と、金属からなるシェル40と、金属からなる複数のコンタクト50とを備えている。
【0021】
図1乃至図4に示されるように、ハウジング20は、X方向に長手を有する略直方体状に形成されており、主として前端部分(−Y方向の端部付近)がシェル40によって覆われている。図6及び図7から理解されるように、ハウジング20の後端部分(+Y方向の端部付近)には、後壁部23が形成されている。図2及び図7から理解されるように、後壁部23にはコンタクト50をハウジング20内部に挿入・保持するための複数の保持孔24が形成されている。
【0022】
図6及び図7から理解されるように、後壁部23の前方(−Y方向)には、下方(−Z方向)に窪んだ凹部である保持部22が形成されている。保持部22は、挿入方向におけるハウジング20の中央付近に設けられており、アクチュエータ30を収容保持する。後壁部23の上端部には平面状の上面23aが形成されている。また、後壁部23の下部は保持部22内に突出しており、これによりアクチュエータ30を支持する平面状の支持面23bが形成されている。
【0023】
後壁部23の前端部分には、接続対象物90の先端が突き当たる突当面23cが形成されている。突当面23cは、挿入方向に直交する平面上を延びている。突当面23cの前方(−Y方向)には、コネクタ10に挿入された接続対象物90を収容する収容部21が形成されている。収容部21は、−Y方向に開口しており、Y方向に沿って保持部22の下を突当面23cまで延びており、保持部22と連通している。収容部21の下には、略水平な摺動面21aが形成されている。突当面23cの左右方向(X方向)における両端部分の前方には、摺動面21aから上方に突出した段差部26が形成されている。段差部26の前方には傾斜面が形成されている。
【0024】
図1、図6及び図7に示されるように、収容部21の開口の左右方向における両端にはガイド面25が形成されている。接続対象物90は左右のガイド面25にガイドされて収容部21に挿入され、コネクタ10に接続される。換言すれば、対向するガイド面25の左右方向における距離(ガイド幅)は、コネクタ10に接続可能な接続対象物90の幅を規定している。収容部21は、ハウジング20の内部において、左右方向の長さがガイド幅よりも長くなるように形成されている。即ち、収容部21は、ハウジング20の内部においてガイド面25よりも左右外側に張り出している。
【0025】
図2及び図7に示されるように、ハウジング20は、複数のコンタクト50をピッチ方向(X方向)において列設保持している。コンタクト50は、支持部51と、第1接続部52と、第2接続部53と、第1バネ54とを備えている。支持部51の前方部分はハウジング20の保持孔24内部に保持されており、後方部分はハウジング20の後壁部23から後方に突出している。第1接続部52は、支持部51の後方部分から下方に向けて突出しており、基板上の回路等(図示せず)と接続される。第2接続部53及び第1バネ54は、支持部51の前方部分に夫々支持されて収容部21内を前方に向かって長く延びている。換言すれば、第2接続部53と第1バネ54とはY方向に長く延びており、これにより先端部分(−Y方向の端部付近)は上下方向に弾性変位可能である。第2接続部53の先端部分は、コネクタ10に挿入された接続対象物90の信号線等(図示せず)と接続される(図11参照)。
【0026】
図1、図4、図6及び図7に示されるように、アクチュエータ30は、X方向に長く延びており、カバー部31と被保持部34とを備えている。被保持部34は、ハウジング20の保持部22に収容・保持されており、被保持部34の後端部分の下面は、ハウジング20の支持面23bに支持されている。被保持部34には、複数の貫通孔36が形成されている。貫通孔36は、ピッチ方向においてコンタクト50の第1バネ54と対応する位置に設けられており、前後方向において被保持部34を貫通している。貫通孔36の前端部分には被押圧部37が形成されている。被押圧部37は、貫通孔36内を上方に突出して第1バネ54の前端部分と当接している。
【0027】
カバー部31は、ハウジング20の上方に位置しており、カバー部31の後端部分には操作部32が形成されている。カバー部31の前端部分の下面はシェル40と対向している。操作部32の下面32aは、ハウジング20の後壁部23の上面23aの上に位置しており、上面23aから離れるようにしてY方向に向かって延びている。
【0028】
以上のように構成されたアクチュエータ30は、前後方向(Y方向)及び左右方向(X方向)の移動が規制される一方、支持面23bに支持されて揺動可能である。詳しくは、被押圧部37が第1バネ54によって下方向に押されるため、接続対象物90が挿入されていないとき、アクチュエータ30は、カバー部31の前端部分の下面がシェル40と当接した位置(初期位置)にある(図7参照)。一方、第1バネ54の前端部分は上方向に弾性移動可能なので、アクチュエータ30は、操作部32の下面32aがハウジング20の上面23aに接近した位置(開位置)まで移動可能である(図9参照)。
【0029】
図6に示されるように、アクチュエータ30のピッチ方向における両端部付近には、アクチュエータ30の一部として第1ロック部35が形成されている。図6及び図12から理解されるように、第1ロック部35は、アクチュエータ30の前面から突出するように形成されている。第1ロック部35は、ピッチ方向と直交する平面内において、前方に曲部を向けたフック状の断面を有しており、ピッチ方向に沿って延びている。詳しくは、第1ロック部35のピッチ方向における外側の端部はガイド面25よりもピッチ方向外側に位置しており、ピッチ方向における内側の端部はガイド面25よりもピッチ方向内側に位置している。第1ロック部35は上面を有しており、この上面には上方に突出した突起38が形成されている。
【0030】
図12に示されるように、第1ロック部35は、第1当接面35aと、第2当接面35bと、先端面35cとを有している。第1当接面35aは先端面35cの前方に位置しており、第2当接面35bは先端面35cの後方に位置している。図7及び図12から理解されるように、先端面35cは、アクチュエータ30が初期位置にあるときにはZ方向においてハウジング20の摺動面21aに近接している。
【0031】
以上の説明から理解されるように、本実施の形態による第1ロック部35は、コンタクト50の第1バネ54によって下方向に付勢されており、且つ上方に移動可能である。なお、第1バネ54とは異なる部材によって第1ロック部35を下方向に付勢してもよい。
【0032】
図1及び図5に示されるように、シェル40は、上板41と側板42と第2バネ43とを備えている。上板41は、ハウジング20の前端部分の上面を覆っている。側板42は、上板41の左右両端部分から下方に延びており、ハウジング20の両側部を部分的に覆っている。図4、図6及び図7に示されるように、上板41には凸部41aが形成されている。凸部41aは上方に突出しており、アクチュエータ30が初期位置にあるとき、カバー部31の下面と当接している。
【0033】
図5及び図6から理解されるように、第2バネ43は、上板41の左右両端部分に設けられている。第2バネ43は、上板41の後端側(即ち、コネクタ10の後端側)から前端側に延びた後、第1ロック部35の上方をピッチ方向内側に向かって延びている。本実施の形態による第2バネ43の一部は、Z方向において第1ロック部35の突起38の上端に近接している。第2バネ43の先端部分には、第2ロック部44が形成されている。即ち、第2バネ43は、第1ロック部35上に延びる部位を有しており、第2ロック部44は、第2バネ43から下方に向けて突出している。
【0034】
第2ロック部44は、コネクタ10の前端側に位置しており、第2バネ43によって弾性的に支持されている。アクチュエータ30が開位置に移動すると、第2バネ43は突起38によって上方に押し上げられ、それによって第2ロック部44が上方に移動する。第2バネ43は、バネ長が長くなるように形成されているので、第2ロック部44は上下方向に柔らかく変位することができる。なお、本実施の形態における第2バネ43はシェル40の一部として形成されているが、第2バネ43をシェル40とは別の部材とすることもできる。
【0035】
本実施の形態による第2ロック部44は、エッジ部分を有するように板材をプレス加工して得られるものであり、板面44aと薄いエッジ44b(エッジ部分)と突端44cとを有している。第2ロック部44の板面44aは、ピッチ方向と直交するように置かれている。換言すれば、第2ロック部44は、エッジ44bを挿入方向及び抜去方向に向けるようにして置かれている。図6、図8及び図12に示されるように、エッジ44bは、前方エッジ44bfと後方エッジ44brとを備えている。前方エッジ44bfは、エッジ44bのうち突端44cよりも前側(−Y方向側)の部分であり、後方エッジ44brは、エッジ44bのうち突端44cよりも後側(Y方向側)の部分である。換言すれば、前方エッジ44bfは前方を向いており、後方エッジ44brは後方を向いている。前方エッジ44bfは、挿入方向と斜交している。
【0036】
図6に示されるように、第1ロック部35と第2ロック部44とは、ピッチ方向において並置されている。図12に示されるように、アクチュエータ30が初期位置にあるとき、本実施の形態による第2ロック部44の下端(突端44c)は、第1ロック部35の先端面35cよりも、やや上方に位置している。第1ロック部35の第1当接面35aのうち挿入された接続対象物90と当接する部分は、第2ロック部44の前方エッジ44bfよりも、やや前方に位置している。また、第1ロック部35の第2当接面35bは、第2ロック部44の後方エッジ44brよりも、やや後方に位置している。しかしながら、第1ロック部35と第2ロック部44との挿入方向における位置関係は、上記の説明に限られない。即ち、接続対象物90を抜去しようとした場合に、接続対象物90の上面に第2ロック部44のエッジ44bのみが当接することがないように配置されていればよい。例えば、突端44cのZ方向における位置は先端面35cの位置と同じであってもよい。また、第1当接面35aは、第2ロック部44の前方エッジ44bfよりも後方に位置していてもよい。
【0037】
本実施の形態によるコネクタ10は、ハウジング20にシェル40を取り付けた後、アクチュエータ30の被保持部34をハウジング20の保持部22に上方から挿入し、コンタクト50をハウジング20の後方から保持孔24に取付・固定することで組み立てることができる。
【0038】
図1、図2及び図6に示されるように、接続対象物90の挿入方向における先端付近は切り欠かれており、受容部92が形成されている。また、接続対象物90は、受容部92よりも挿入方向側に被規制部91を有している。換言すれば、受容部92は、被規制部91の抜去方向側に位置している。被規制部91と受容部92とはピッチ方向の両端部に設けられている。なお、接続対象物90の形状は上記の説明には限られない。例えば、接続対象物90の先端付近から被規制部91が左右に突出した形状でもよい。この場合は、被規制部91よりも−Y方向側の空間が受容部92として機能する。
【0039】
図8及び図9から理解されるように、接続対象物90は、下面をハウジング20の摺動面21a上に置き、且つピッチ方向において対向するガイド面25に被規制部91を沿わせるようにして、収容部21に挿入される。接続対象物90が挿入方向に沿って挿入されると、接続対象物90は、まず第1ロック部35の第1当接面35aと当接する。第1当接面35aは接続対象物90から上向きの力を受けるため、アクチュエータ30は開位置に向けて移動する。その結果、第1ロック部35の先端面35cが摺動面21aから離れ、第1ロック部35は接続対象物90の被規制部91上に乗り上げる。また、接続対象物90は、略同時に第2ロック部44のエッジ44bとも当接し、第2ロック部44は上向きの力を受けて上方に移動する。その結果、第2ロック部44の突端44cは、被規制部91上に乗り上げる。このとき、第1ロック部35及び第2ロック部44は、夫々第1バネ54及び第2バネ43によって下方向に付勢されている。
【0040】
図6及び図8から理解されるように、接続対象物90の挿入を続けると、被規制部91の先端が段差部26の傾斜面にガイドされ、接続対象物90の先端部分は段差部26の上に移動する。図10及び図11に示されるように、さらに挿入を続けると、接続対象物90の先端は突当面23cと突き当たり、接続対象物90は接続位置に到達する。このとき、コンタクト50の第2接続部53は、接続対象物90の信号線等(図示せず)と接続され、接続対象物90と基板上の回路等(図示せず)が電気的に接続される。換言すれば、接続対象物90が挿入方向に沿って接続位置まで挿入されたとき、コネクタ10は、接続対象物90と基板とが電気的に接続された嵌合状態にある。
【0041】
コネクタ10が嵌合状態に到達する際(即ち、接続対象物90が接続位置に到達する際)、第1ロック部35及び第2ロック部44は、実質的に同時に接続対象物90の受容部92内に落ちる。このとき、主として金属製の第2ロック部44が受容部92内に落ちることによりクリック感が創出される。また、受容部92に収容された第1ロック部35の第2当接面35bが被規制部91の受容部92側の端部と当接することによって、接続対象物90の抜去方向の移動が規制される。即ち、コネクタ10の嵌合状態がロックされる。本実施の形態においては、接続対象物90の被規制部91が段差部26上に上がった状態で嵌合状態がロックされるため、第2ロック部44は受容部92内に比較的大きく落ち込む。従って、クリック感がより得やすい。また、第1ロック部35も受容部92内に深く落ち込むため、嵌合状態をより確実にロックすることができる。なお、本実施の形態においては、主として第2ロック部44によってクリック感が創出され、主として第1ロック部35によって嵌合状態がロックされるが、第1ロック部35によっても多少のクリック感は得られる。また、第1ロック部35と第2ロック部44との両方によって、嵌合状態をロックする構成としてもよい。
【0042】
嵌合状態のロック時において、第1ロック部35は、受容部92に少なくとも部分的に受容される第1ロック位置に位置することにより、被規制部91の抜去方向へ向かう移動を規制している。そして、第1バネ54は、第1ロック部35を第1ロック位置に向けて付勢している。詳しくは、第1バネ54は、第1ロック部35が第1ロック位置に向かうように、アクチュエータ30を付勢している。またロック時において、第2ロック部44は、受容部92に少なくとも突端44cを受容される第2ロック位置に位置しており、第1バネ54から独立している第2バネ43が、第2ロック部44を第2ロック位置に向けて付勢している。本実施の形態においては、前述したように、嵌合状態のロック時において接続対象物90を抜去しようとした場合、被規制部91の受容部92側の端部が、まず第1ロック部35の第2当接面35bと当接する。換言すれば、本実施の形態による第1ロック部35は、嵌合状態のロック時において接続対象物90を抜去しようとした際に、少なくとも第1ロック部35が被規制部91に当接して抜去方向の移動を規制するように配置されている。即ち、第2ロック部44は、嵌合状態のロック時において接続対象物90を抜去しようとした場合、第2ロック部44のエッジ44b(エッジ部分)のみが被規制部91に当接しないように(第1ロック部35と第2ロック部44とが略同時に被規制部91と当接するように)配置されている。
【0043】
図10に示されるように、第2ロック部44は、挿入方向において収容部21の内部に位置し、ピッチ方向において第1ロック部35の内側に位置している。従って、接続対象物90のピッチ方向における幅が短く、対向するガイド面25のピッチ方向における幅が短い場合であっても、第1ロック部35をピッチ方向において外側に長く延ばすことができる。即ち、接続対象物90の大きさに依存することなく、第1ロック部35の大きさを大きくして強度を確保することができる。本実施の形態による第1ロック部35は、上述のようにピッチ方向において外側に長く延びており、接続対象物90とコネクタ10との嵌合状態において、接続対象物90よりもピッチ方向の外側に張り出した部位(接続対象物90と接しない部分)を有している。
【0044】
嵌合状態のロック時において接続対象物90を抜去する際には、アクチュエータ30を操作することでロックを解除することができる。具体的には、アクチュエータ30の操作部32を下に押して第1ロック部35を上方に移動させることで、第1ロック部35による被規制部91の規制を解除する。このとき第2バネ43は第1ロック部35によって上方に押し上げられ、それによって第2ロック部44が上方に移動するので、第2ロック部44による被規制部91の規制も解除される。即ち、一つの操作によって第1ロック部35と第2ロック部44とを連動させて規制を解除することができる。
【0045】
本発明の実施の形態は以上の説明には限られない。例えば、図13に示されるように、第1ロック部35′の前方及び下端部分を第2ロック部44′によって取り囲むようにしてもよい。このようにした場合、接続対象物90を挿入・抜去する際に第2ロック部44′の面が接続対象物90の被規制部91と当接する。詳しくは、嵌合状態のロック時においてロックを解除せずに接続対象物90を抜去しようとした場合、第1ロック部35′が被規制部91の受容部92側の端部と当接するので、無理な抜去が防止される。また、アクチュエータ30を操作することでロックを解除した状態で接続対象物90を抜去する場合、第2ロック部44′の面が接続対象物90の被規制部91の上に乗り上げた状態で接続対象物90が抜去される。従って、第2ロック部44′のエッジ44b′(エッジ部分)のみが被規制部91に当接することがない。また、第2ロック部44′を更に延ばして、第1ロック部35′の後方も囲むようにしてもよい。さらに、第2ロック部44′の形状を例えば半円柱状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 コネクタ
20 ハウジング
21 収容部
21a 摺動面
22 保持部
23 後壁部
23a 上面
23b 支持面
23c 突当面
24 保持孔
25 ガイド面
26 段差部
30 アクチュエータ
31 カバー部
32 操作部
32a 下面
34 被保持部
35、35′ 第1ロック部
35a 第1当接面
35b 第2当接面
35c 先端面
36 貫通孔
37 被押圧部
38 突起
40 シェル
41 上板
41a 凸部
42 側板
43 第2バネ
44、44′ 第2ロック部
44a 板面
44b エッジ
44b′ エッジ
44bf 前方エッジ
44br 後方エッジ
44c 突端
50 コンタクト
51 支持部
52 第1接続部
53 第2接続部
54 第1バネ
90 接続対象物
91 被規制部
92 受容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被規制部を有する接続対象物を挿入方向に沿って接続位置まで挿入されることによって、前記接続対象物との嵌合状態がロックされるコネクタであって、
前記嵌合状態のロック時において前記被規制部の前記抜去方向側に位置する受容部に少なくとも部分的に受容される第1ロック位置に位置することにより、前記被規制部の前記抜去方向へ向かう移動を規制する第1ロック部と、
前記第1ロック部を前記第1ロック位置に向けて付勢する第1バネと、
突端を有すると共に、前記嵌合状態の前記ロック時において前記受容部に少なくとも前記突端を受容される第2ロック位置に位置する金属製の第2ロック部と、
前記第2ロック部を前記第2ロック位置に向けて付勢する第2バネであって前記第1バネから独立している第2バネと
を備えており、
前記接続対象物が前記挿入方向に沿って挿入された際、前記突端が前記被規制部上に乗り上げた後、前記受容部内に落ちることによりクリック感を創出するように、前記第2ロック部は前記第2バネに支持されており、
前記第2ロック部は、エッジ部分を有するように板材をプレス加工して得られるものであり、
前記第2ロック部は、前記嵌合状態の前記ロック時において前記接続対象物を抜去しようとした場合に、前記第2ロック部の前記エッジ部分のみが前記被規制部に当接しないように配置されている
コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタであって、
前記挿入方向の逆方向である抜去方向に沿って接続対象物を抜去する際に前記ロックを解除するために操作されるアクチュエータを更に備えており、
前記第1ロック部は、前記アクチュエータの一部として形成されており、
前記第1バネは、前記第1ロック部が前記第1ロック位置に向かうように、前記アクチュエータに力を加えている
コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のコネクタであって、
前記嵌合状態の前記ロック時において前記接続対象物を抜去しようとした際に少なくとも前記第1ロック部が前記被規制部に当接して前記規制を行うように、前記第1ロック部が配置されている
コネクタ。
【請求項4】
請求項3記載のコネクタであって、
複数のコンタクトと、前記複数のコンタクトをピッチ方向において列設保持するハウジングとを更に備えており、
前記第2ロック部は、前記ピッチ方向と直交している
コネクタ。
【請求項5】
請求項4記載のコネクタであって、
前記第2ロック部は、前記ピッチ方向において前記第1ロック部の内側に位置している
コネクタ。
【請求項6】
請求項5記載のコネクタであって、
前記第1ロック部は、前記接続対象物と前記コネクタとの前記嵌合状態において、前記接続対象物よりも前記ピッチ方向の外側に張り出した部位を有する
コネクタ。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6のいずれかに記載のコネクタであって、
前記第2バネは、前記第1ロック部上に延びる部位を有しており、
前記第2ロック部は、前記第2バネから下方に向けて突出している
コネクタ。
【請求項8】
請求項7記載のコネクタであって、
前記第2ロック部は、前記コネクタの前端側に位置しており、
前記第2バネは、前記コネクタの後端側から前端側に延びた後、前記第1ロック部の上方を前記ピッチ方向内側に向かって延びている
コネクタ。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のコネクタであって、
摺動面と、前記摺動面から上方に突出した段差部とを更に備えており、
前記接続対象物は、前記摺動面の上に下面を置いて挿入されて前記段差部に上がった後で前記接続位置まで挿入され、
前記被規制部が前記段差部に上がった状態で前記嵌合状態がロックされる
コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−156088(P2012−156088A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16074(P2011−16074)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】