説明

コネクタ

【課題】第1接合端子及び第2接合端子が共に、手、指等の異物に直接、触れ難くすることができるコネクタを提供する。
【解決手段】絶縁体8a〜8dを分割して形成した2つの分割絶縁体の一方であって、隣接する第1接合端子4a(又は4b或いは4c)の他面に固定されると共に、少なくとも第1接合端子4a(又は4b或いは4c)の嵌合方向先端側の面を覆うように形成された第1絶縁部材43a(又は44a或いは45a)と、分割絶縁体の他方であって、隣接する第2接合端子6a(又は6b或いは6c)の他面に固定され、少なくとも第2接合端子6a(又は6b或いは6c)の嵌合方向先端側の面を覆うように形成された第2絶縁部材43b(又は44b或いは45b)とを更に備え、第1ターミナルハウジング5と第2ターミナルハウジング7との嵌合時に、2つの分割絶縁体が重なり合うことで所定の厚さの絶縁体8a〜8dが形成されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ハイブリッド車、電気自動車などのエコカーに用いられ、特に、大容量の電力を伝達する際に用いられる電力ハーネスの接続部に採用される可能性があるコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、著しい進歩を遂げている、例えば、ハイブリッド車、電気自動車などにおいて、モータとインバータとの間、又はインバータとバッテリとの間のように、機器間を接続する大容量の電力を伝達する際に用いられる電力ハーネスは、その一端側には、例えば、オス端子と該オス端子を収納する第1ターミナルハウジングを備えるオス側コネクタ部と、前記オス端子と接続されるメス端子と該メス端子を収納する第2ターミナルハウジングを備えるメス側コネクタ部との2分割構成のコネクタが備えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年、こうしたエコカーは、省エネの性能を向上させることを目的に、全ての部品において軽量化が図られているが、軽量化を図る上で有効な手段の1つに、小型化を図るという目的に突き当たる。
【0004】
そこで、公知技術として、例えば、特許文献2のような技術がある。
【0005】
特許文献2に示された技術は、車両駆動用のモータから引き出される複数相の導電性部材の接合端子と、モータを駆動するインバータから引き出される複数相の電力線ケーブルの接合端子とを接続する車両用電気接続構造において、導電性部材の各相の接合端子と、対応する電力線ケーブルの各相の接合端子とが重合されると共に、接合端子の重合面とは反対側の面に絶縁部材が配置され、これら重合された各相の接合端子と絶縁部材とがこれらを貫く位置に設けられた単一のボルトで重合方向に締結固定される技術である。
【0006】
即ち、特許文献2の技術は、複数の接合端子と絶縁部材とが積層構造となる接続構造であって、単一のボルトを重合方向(積層方向とも言う)に締め付けることで、接合端子の重合面である接合端子同士の接点を、複数点、一括して挟み込むことにより、接合端子同士を接点にて固定し電気的に接続される接続構造であるが、このような構成は、特許文献1のような技術に比べ、小型化を図り易いという点において有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−070754号公報
【特許文献2】特許第4037199号公報
【特許文献3】特開2008−108675号公報
【特許文献4】特開2000−3750号公報
【特許文献5】特開昭63−190269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献2のような接続構造を特許文献1のような2つのターミナルハウジング(第1ターミナルハウジング及び第2ターミナルハウジング)が嵌合するコネクタに適用した場合、例えば、一方の第1ターミナルハウジングに、複数の絶縁部材と複数の第1接合端子を収納すると、必然的に、もう一方の第2ターミナルハウジングには、複数の第1接合端子のそれぞれと対となる複数の第2接合端子が収納されることとなる。
【0009】
しかして、接合端子に手、指等の異物が直接、触れ難くする所謂、「タッチプロテクト」という技術(例えば、特許文献3,4参照)があるが、上述したコネクタの場合、第1接合端子側は、絶縁部材で挟まれているため、直接、異物が触れるという可能性が低いが、一方、第2接合端子側は、第1接合端子側のように絶縁部材が収納されないため、複数の第2接合端子が剥き出し状態となる。
【0010】
この剥き出し状態の複数の第2接合端子には、タッチプロテクトという技術を適用する必要性があった。
【0011】
しかし、ただ、適用しただけでは、第1接合端子側の絶縁部材が邪魔になったり、小型化を目指しているにもかかわらずコネクタの積層方向の厚みが大きくなるという問題があった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑み為されたもので、複数の第1接合端子と複数の第2接合端子と複数の絶縁部材とが積層構造となる接続構造を有するコネクタにおいて、第1接合端子及び第2接合端子が共に、手、指等の異物に直接、触れ難くすることができるコネクタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するために創案されたものであり、複数の第1接合端子が整列されて収納される第1ターミナルハウジングと、複数の第2接合端子が整列されて収納される第2ターミナルハウジングとを備え、前記第1ターミナルハウジングと前記第2ターミナルハウジングとを嵌合させると、前記複数の第1接合端子の一面のそれぞれと前記複数の第2接合端子の一面のそれぞれとが対となって複数の接点が構成されると共に、各接点を所定の厚さの絶縁体で挟むように配置される積層構造となるコネクタにおいて、隣接する前記絶縁体を押圧することで、前記複数の第1接合端子及び前記複数の第2接合端子を各接点にて一括して固定し電気的に接続させる接続部材と、前記絶縁体を分割して形成した2つの分割絶縁体の一方であって、隣接する第1接合端子の他面に固定されると共に、少なくとも前記隣接する第1接合端子の嵌合方向先端側の面を覆うように形成された第1絶縁部材と、前記分割絶縁体の他方であって、隣接する第2接合端子の他面に固定され、少なくとも前記隣接する第2接合端子の嵌合方向先端側の面を覆うように形成された第2絶縁部材とを更に備え、前記第1ターミナルハウジングと前記第2ターミナルハウジングとの嵌合時に、前記2つの分割絶縁体が重なり合うことで所定の厚さの前記絶縁体が形成され、前記第1ターミナルハウジングには、雌ネジが形成されると共に、前記接続部材には、前記雌ネジに螺合する雄ネジが形成され、前記雌ネジに前記雄ネジが螺合した状態で、前記第1ターミナルハウジングと前記第2ターミナルハウジングとを嵌合させることが可能であることを特徴とするコネクタである。
【0014】
また、前記第2絶縁部材は、前記複数の第2接合端子を整列保持する絶縁性の第2インナーハウジングと一体に形成されるとよい。
【0015】
また、前記第2絶縁部材は、嵌合方向先端側の厚さに比べて前記第2インナーハウジング側の厚さが薄くくびれるように形成されるとよい。
【0016】
また、前記第2インナーハウジングには、前記第2ターミナルハウジングの内周面に面する第2接合端子の一面を覆うように且つ該第2接合端子と対となる第1接合端子の挿入を阻害しないように突出する衝立部が形成され、前記対となる第1接合端子に固定された第1絶縁部材には、前記衝立部をガイドしかわすためのガイド溝が形成されるとよい。
【0017】
また、前記第1絶縁部材及び/又は前記第2絶縁部材は、固定対象の接合端子の側面も覆うように形成されるとよい。
更に、前記第1ターミナルハウジングには、前記接続部材が挿入され、内周面に前記雌ネジが形成された接続部材挿入孔が形成され、前記接続部材は、小径部と大径部とを有する2つの外径寸法を持つ形状からなると共に、前記接続部材挿入孔は、当該2つの外径寸法を持つ形状に合致する形状となっており、前記大径部の外周には、前記第1ターミナルハウジング内に水が浸入するのを防止するパッキンが設けられ、前記小径部の外周面には、前記雄ネジが形成されるとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1接合端子及び第2接合端子が共に、手、指等の異物に直接、触れ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係るコネクタを構成する第1コネクタ部と第2コネクタ部とを示す斜視図である。
【図2】第1コネクタ部と第2コネクタ部とを嵌合させた後のコネクタを示す斜視図である。
【図3】第1コネクタ部と第2コネクタ部とを嵌合させた後のコネクタを示す断面図である。
【図4】第1コネクタ部を示す図であり、(a)は断面図、(b)は嵌合方向先端側から見た概略図である。
【図5】第1接合端子を示す図であり、(a)は側面図、(b)は下面図である。
【図6】第2コネクタ部を示す図であり、(a)は断面図、(b)は嵌合方向先端側から見た概略図である。
【図7】第2接合端子を示す図であり、(a)は側面図、(b)は下面図である。
【図8】第2接合端子を示す図であり、(a)は側面図、(b)は下面図である。
【図9】第2インナーハウジングに整列保持された第2接合端子を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は上面図、(c)は下面図、(d)は側面図である。
【図10】第2コネクタ部の変形例を示す図である。
【図11】本発明の変形例に係るコネクタを構成する第1コネクタ部と第2コネクタ部の断面図である。
【図12】本発明の変形例に係るコネクタを構成する第1コネクタ部と第2コネクタ部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0021】
図1は、本実施の形態に係るコネクタの第1コネクタ部と第2コネクタ部とを示す斜視図であり、図2は、第1コネクタ部と第2コネクタ部とを嵌合させたときのコネクタを示す斜視図であり、図3は、その断面図である。
【0022】
図1〜3に示すように、本実施の形態に係るコネクタ1は、第1コネクタ部2と第2コネクタ部3とで構成され、これらコネクタ部2,3を嵌合させることで、複数の電源ラインを一括して接続するためのものである。
【0023】
より具体的には、コネクタ1は、複数(3つ)の第1接合端子(オス端子)4a〜4cが整列されて収納される第1ターミナルハウジング5を有する第1コネクタ部2と、複数(3つ)の第2接合端子(メス端子)6a〜6cが整列されて収納される第2ターミナルハウジング7を有する第2コネクタ部3と、接点間を絶縁する複数の絶縁体8a〜8dと、隣接する絶縁体8aを押圧することで、複数の第1接合端子4a〜4c及び複数の第2接合端子6a〜6cを各接点にて一括して固定し電気的に接続させる接続部材9とを備え、第1コネクタ部2の第1ターミナルハウジング5と第2コネクタ部3の第2ターミナルハウジング7とを嵌合させると、複数の第1接合端子4a〜4cの一面のそれぞれと複数の第2接合端子6a〜6cの一面のそれぞれとが対(第1接合端子4aと第2接合端子6a、第1接合端子4bと第2接合端子6b、第1接合端子4cと第2接合端子6cの各対)となって複数の接点が構成されると共に、各接点を非導電性樹脂からなる所定の厚さの絶縁体8a〜8dで挟むように配置される積層構造となるものである。
【0024】
絶縁体8a〜8dは、2つの分割絶縁体である第1絶縁部材43a〜46aと第2絶縁部材43b〜45bとからなる。なお、より正確には、本実施の形態においては、絶縁体8aと第1絶縁部材43aは、同じ厚さであり、分割されていないが、第1絶縁部材44a〜46aのように、分割したときの厚さとしても良い。以下の説明では、分割されたものとして説明を行う。
【0025】
第1絶縁部材43a〜46aは、絶縁体8a〜8dを分割して形成した2つの分割絶縁体の一方であって、隣接する第1接合端子4a(又は4b或いは4c)がある場合には、隣接する第1接合端子4a(又は4b或いは4c)の他面に固定されると共に、少なくとも隣接する第1接合端子4a(又は4b或いは4c)の嵌合方向先端側の面を覆うように形成される。なお、隣接する第1接合端子4a(又は4b或いは4c)が無い第1絶縁部材46aは、第1ターミナルハウジング5の内面と一体的に固定される。
【0026】
第2絶縁部材43b〜45bは、他方の分割絶縁体であって、隣接する第2接合端子6a(又は6b或いは6c)がある場合には、隣接する第2接合端子6a(又は6b或いは6c)の他面に固定され、少なくとも隣接する第2接合端子6a(又は6b或いは6c)の嵌合方向先端側の面を覆うように形成される。
【0027】
これら第1絶縁部材44a(又は45a又は46a或いは43a)と第2絶縁部材43b(又は44b或いは45b)の合計厚さは、接点間(又は接点と第1ターミナルハウジングとの間)の絶縁性を確保できる必要十分な厚さに形成される。つまり、第1絶縁部材43a〜46aと第2絶縁部材43b〜45bは、重なり合うことで初めて接点間(又は接点と第1ターミナルハウジングとの間)の絶縁性を確保することができる。
【0028】
なお、接続部材9によって押圧される絶縁体8aは、現実には、第1絶縁部材43aのみからなるが、本発明の思想から言えば、絶縁体8aは、所定の厚さの第1絶縁部材43aと厚さゼロの第2絶縁部材とが重なり合うことで形成されるものと言える。
【0029】
このコネクタ1は、例えば、車両駆動用のモータと該モータを駆動するインバータとの接続に用いられる。
【0030】
より具体的には、第1コネクタ部2の第1ターミナルハウジング5(図1で言えば、左側の部分)がモータのシールドケースと嵌合すると共に第1ターミナルハウジング5から露出している第1接合端子4a〜4cの部分がモータのシールドケース内に設置される端子台の各端子に接続される。この第1コネクタ部2にインバータと電気的に接続されている第2コネクタ部3を嵌合させることで、モータとインバータとが電気的に接続されることになる。以上がモータ側の接続に関してだが、インバータ側の接続に関しても、同様である。
【0031】
以下、コネクタ部2,3のそれぞれの構成について詳述する。
【0032】
図4に示すように、第1コネクタ部2は、内部に3つの第1接合端子4a〜4cを所定間隔で離間された状態で整列させて保持しており、3つの第1接合端子4a〜4cが整列されて収納する第1ターミナルハウジング5と、隣接する絶縁体8aを押圧することで、複数の第1接合端子4a〜4c及び複数の第2接合端子6a〜6cを各接点にて一括して固定し電気的に接続させる接続部材9とを備える。
【0033】
なお、第1ターミナルハウジング5がターミナルハウジングとしてオス(オス側ターミナルハウジング)であってもメス(メス側ターミナルハウジング)であっても良い。ここでは一例として第1ターミナルハウジング5がオス側ターミナルハウジングである場合を説明する。
【0034】
第1接合端子4a〜4cは、板状の端子であり、非導電性樹脂(例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PPA(ポリフタルアミド)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、エポキシ系樹脂)からなり、第1ターミナルハウジング5内に収納された樹脂成形体からなる第1インナーハウジング10に所定間隔で離間されて整列保持される。第1インナーハウジング10に第1接合端子4a〜4cを保持させる方法としては、例えば、第1インナーハウジング10の成形時に第1接合端子4a〜4cをインサートしてから樹脂を硬化させて保持させる方法や、予め成形した第1インナーハウジング10に第1接合端子4a〜4cを圧入して保持させる方法がある。
【0035】
また、第1接合端子4a〜4cのそれぞれは、他面(第2接合端子6a〜6cと接合される面と反対側の面)側に隣接して配置される第1絶縁部材43a〜45aと一体的に固定される。つまり、上述したとおり、第1インナーハウジング10は、第1接合端子4a〜4cを所定間隔で離間させて整列するように保持しているが、この保持している第1接合端子4a〜4cの先端側に第1絶縁部材43a〜45aが一体的に固定されているので、結果として、第1絶縁部材43a〜45aも、所定間隔で離間されて整列されることになる。このように構成することにより、各接点間の絶縁性と嵌合時の第2接合端子6a〜6cの挿入性を確保している。
【0036】
なお、第1絶縁部材43a〜45aは、第1接合端子4a〜4cに物理的に固定されている必要はなく、第1絶縁部材43a〜45aと第1接合端子4a〜4cの位置関係が固定されるようにすれば十分である。例えば、第1絶縁部材43a〜45aを第1インナーハウジング10と一体的に形成して、第1絶縁部材43a〜45aと第1接合端子4a〜4cの位置関係を固定するようにしても良い。このように、第1絶縁部材43a〜45aを第1インナーハウジング10と一体的に形成することで、部品点数、及び部品の製造工程を削減し、製造コストをより低減することが可能となる。
【0037】
第1接合端子4a〜4cのそれぞれには、異なる電圧及び/又は電流の電気が送電される。例えば、本実施の形態においては、モータ、インバータ間用の三相交流の電源ラインを想定しており、第1接合端子4a〜4cのそれぞれには、120°位相の異なる交流が送電される。第1接合端子4a〜4cのそれぞれは、コネクタ1での送電ロスを低減するなどの目的のために、導電率の高い銀、銅、アルミニウムなどの金属で構成されると良い。また、第1接合端子4a〜4cのそれぞれは、多少の可撓性を有する。
【0038】
第1絶縁部材43a〜46aは、第1接合端子4a〜4cの先端側に突出するような位置に固定される。これら第1絶縁部材43a〜46aのそれぞれは、第2接合端子6a〜6cが挿抜される側の角部のそれぞれが面取り加工されている。また、図5(a),(b)に示すように、第1絶縁部材43a〜45aには、固定対象の第1接合端子4a〜4cを嵌め込むための嵌合溝11が形成される。この嵌合溝11に固定対象の第1接合端子4a〜4cが嵌合されて一体的に固定される。これにより、第1絶縁部材43a〜45aと第1接合端子4a〜4cとの段差が補われ、第1絶縁部材43a〜45aの下面(図示下側の面)が第1接合端子4a〜4cの下面(図示下側の面)と同一面となる。これらの構成により、第1コネクタ部2と第2コネクタ部3とを嵌合させたときの第1接合端子4a〜4cに対する第2接合端子6a〜6cの挿抜性が向上する。なお、図5(a)では、第1絶縁部材43aの構造を簡略化し、第1絶縁部材43a〜45aを同じように描いている。
【0039】
再び図4を参照し、接続部材9は、金属(例えば、SUS、鉄、銅合金など)からなり、大径部9aと、大径部9aと一体に形成された小径部9bとを有する。
【0040】
大径部9aの外周には、第1ターミナルハウジング5内に水が浸入するのを防止するパッキン14が設けられる。
【0041】
小径部9bの外周面には、第1ターミナルハウジング5の接続部材挿入孔26の内周面に形成された雌ネジ47に螺合する雄ネジ48が形成される。このような構成により、接続部材9は、第1ターミナルハウジング5に螺合することにより、隣接する絶縁体8aを押圧するように構成される。
【0042】
なお、大径部9aの上面には、異形穴(図4(a)では六角穴)49が形成され、この異形穴49にスパナなどの締め付け工具を嵌合させることで、接続部材9を回転させ締め付けることができるようになっている。
【0043】
また、接続部材9は、パッキン14が設けられている大径部9aと雄ネジ48が形成されている小径部9bの2つの外径寸法を持つ形状からなり、接続部材挿入孔26は、その2つの外径寸法を持つ形状に合致する形状となっている。このように構成するにより、即ち、接続部材9を接続部材挿入孔26に締め付けた際、パッキン14と対面する部分に、雄ネジ48が配置されないため、効果的な防水構造を実現することができる。
【0044】
また、接続部材9は、第1ターミナルハウジング5の内側に開口する中空部50を有し、この中空部50内に絶縁体8aに所定の押圧力を付与する弾性部材15が収納される。弾性部材15は、例えば、金属(例えば、SUSなど)からなるバネで構成される。なお、本実施の形態において、弾性部材15は、接続部材9の一部という位置付けである。
【0045】
弾性部材15の一部が当接する絶縁体8aの上面には、弾性部材15の一部を覆う(収納する)凹部16が形成され、凹部16の底部(即ち、弾性部材15の一部が当接する座の部分)には、弾性部材15を受けて非導電性樹脂からなる絶縁体8aの損傷を防止する金属(例えば、SUSなど)製の受け部材17が設けられる。
【0046】
受け部材17は、弾性部材15から絶縁体8aの上面に加わる応力を分散することで絶縁体8aの損傷を防止する。そのため、受け部材17と絶縁体8aとの接触面積をできるだけ大きくすることが好ましい。本実施の形態では、受け部材17と絶縁体8aとの接触面積を大きくすべく、凹部16の底部全面に亘って接触するような形状の受け部材17を設けた。
【0047】
この接続部材9は、第1絶縁部材43a〜45aが固定される第1接合端子4a〜4cの面側(図4で言えば、上面側)から第1ターミナルハウジング5内に挿入され、小径部9bに形成された雄ネジ48を接続部材挿入孔26に形成された雌ネジ47に螺合させることで、接続部材9の挿入方向に向けて(図4で言えば、上方から下方に向けて)押圧し、複数の第1接合端子4a〜4c及び複数の第2接合端子6a〜6cを各接点にて一括して固定し電気的に接続させている。
【0048】
第1ターミナルハウジング5は、横断面が略矩形状の中空の筒状体20からなる。第2ターミナルハウジング7と嵌合される筒状体20の一端側(図示右側)の外周部は、第2コネクタ部3との嵌合性を考慮してテーパ形状に形成されている。また、筒状体20の外周部には、第2ターミナルハウジングとの嵌合時に嵌合方向の一定化、嵌合後の固定及び安定化のためのリブ12が形成される。さらに、筒状体20の一端側の外周部には、第1コネクタ部2と第2コネクタ部3との間をシールするターミナルハウジング防水構造21が設けられる。ターミナルハウジング防水構造21は、筒状体20の開口側の外周部に形成された凹部22と、凹部22に設けられたOリングなどのパッキン23とからなる。
【0049】
筒状体20内の他端側(図示左側)には、第1接合端子4a〜4cのそれぞれが整列保持された第1インナーハウジング10が収納される。筒状体20の他端側の外周には、第1コネクタ部2を機器などの筐体(例えば、モータのシールドケース)に固定するためのフランジ24が形成される。取付孔24aにボルトを挿入し機器などの筐体に固定するためのフランジ24の縁周部25には、機器などの筐体と第1コネクタ部2との間をシールするパッキンなどを設けるようにしても良い。なお、このフランジ24という構成は、第1コネクタ部2が機器などの筐体に固定されることを前提とするものではなく、フランジ24は第2コネクタ部3に設けられていても良いし、第1コネクタ部2と第2コネクタ部3の両方に設けられていても良い。また、第1コネクタ部2と第2コネクタ部3のどちらも機器などの筐体に固定されないフリーの状態としても良い。
【0050】
また、このフランジ24は、放熱性を向上させる点においても有効である。つまり、フランジ24を形成することにより第1ターミナルハウジング5の表面積を大きくすることができ、第1コネクタ部2の内部で発生した熱(例えば、各接点で発生した熱)を第1ターミナルハウジングを介して外部に放熱する際において、放熱性を向上させることができる。
【0051】
筒状体20の上部(図示上側)には、接続部材9を挿入するための接続部材挿入孔26が形成される。接続部材挿入孔26は筒状に形成されており、その筒状の下端部(図示下側)が接続部材9の形状に合わせて縮径されている。この縮径された部分に接続部材9の大径部9aの下面の縁周部が当接することで、接続部材9のストロークを規制するようになっている。
【0052】
筒状体20は、シールド性能、放熱性、及びコネクタ1の軽量化のために、導電率、熱伝導率が高く軽量なアルミニウムなどの金属で形成されることが好ましいが、樹脂などにより形成するようにしても良い。第1ターミナルハウジング5を非導電性樹脂で形成する場合には、第1絶縁部材46aと第1ターミナルハウジング5を非導電性樹脂により一体成形してもよい。なお、本実施の形態においては、筒状体20をアルミニウムで形成した。この様に、筒状体20をアルミニウムで形成することにより、接続部材9を接続部材挿入孔26に螺合させる際、筒状体20を絶縁性樹脂で形成する場合と比べ、強固に締め付けることができるという効果がある。
【0053】
本実施の形態ではコネクタ1の小型化のために積層構造と第1ターミナルハウジング5との間のクリアランスをできるだけ小さく設計しているので、金属製の第1ターミナルハウジング5を介して第1接合端子4a〜4cが電気的に短絡するのを防止するため、第1ターミナルハウジング5と第1接合端子4a〜4cとの間の絶縁性を確保する必要がある。
【0054】
そのため、本実施の形態においては、第1接合端子4a〜4cを整列保持する第1インナーハウジング10の両側に、電気遮蔽板51を設けた。この電気遮蔽板51は、第1インナーハウジング10と一体成形される。
【0055】
電気遮蔽板51は、絶縁性の確保という効果以外にも、第1接合端子4a〜4cの側面に手や指等の異物が接触するのを防止するタッチプロテクトとしての機能もある。つまり、電気遮蔽板51は、積層構造と第1ターミナルハウジング5との間のクリアランスを手や指が入らない程度に小さく構成している場合には、第1ターミナルハウジング5と第1接合端子4a〜4cとの間の絶縁性の確保という効果を奏し、手や指が入るくらい大きく構成している場合には、絶縁性の確保の機能も若干あるが、未嵌合時に第1接合端子4a〜4cの側面に手や指が接触するのを防止する効果を奏する。
【0056】
また、電気遮蔽板51の代わりに、第1接合端子4a〜4cの側面も覆うように第1絶縁部材43a〜45aを形成するようにしても良い。
【0057】
なお、コネクタを操作する作業者としては成人男性の割合が多いと考えられるため、本実施の形態においては、作業者の手や指のサイズとしては成人男性のものを基準としている。但し、この基準は、想定する作業者に応じて適宜変更し得るのは勿論である。
【0058】
図6に示すように、第2コネクタ部3は、内部に複数(3つ)の第2接合端子(メス端子)6a〜6cが整列されて収納される第2ターミナルハウジング7を有する。なお、ここではメス端子を有する側のコネクタ部を第2コネクタ部3と称している。つまり、第2ターミナルハウジング7がターミナルハウジングとしてオス(オス側ターミナルハウジング)であってもメス(メス側ターミナルハウジング)であっても良い。ここでは、オス側ターミナルハウジングである第1ターミナルハウジング5に対応して第2ターミナルハウジング7がメス側ターミナルハウジングである場合を説明する。
【0059】
第2接合端子6a〜6cのそれぞれは、図7,8に示すように、ケーブル27a〜27cの先端部から露出された導体28をかしめるためのかしめ部32と、かしめ部32と一体に形成された板状接点33とを有する。板状接点33の先端部は、挿入性を向上させるべくテーパ状に形成してもよい。
【0060】
本実施の形態においては、コネクタ1の小型化のためにケーブル27a〜27cのそれぞれができるだけ隙間無く整列保持される構成としている。そのため、図8に示すように、整列時に中央に配置されるケーブル27bに接続される第2接合端子6bの胴部35を折り曲げることにより、第2接合端子6a〜6cを同じ間隔で離間させて配置するようにした。
【0061】
第2接合端子6a〜6cのそれぞれは、コネクタ1での送電ロスを低減するなどの目的のために、導電率の高い銀、銅、アルミニウムなどの金属で構成されると良い。また、第2接合端子6a〜6cのそれぞれは、多少の可撓性を有する。
【0062】
第2接合端子6a〜6cの一端側のそれぞれには、インバータ側からのびたケーブル27a〜27cが接続されている。これらケーブル27a〜27cのそれぞれは、第1接合端子4a〜4cのそれぞれに第2接合端子6a〜6cを介して電気的に接続されるため、第1接合端子4a〜4cのそれぞれに対応する電圧及び/又は電流の電気がそれぞれ送電される。ケーブル27a〜27cは、導体28の外周に絶縁層29を形成してなる。本実施の形態においては、断面積が20mm2の導体28を用いた。
【0063】
ケーブル27a〜27cのそれぞれは、多連筒状(複数の筒が連なっている状態のこと)のケーブル保持部材30によって保持される。ケーブル保持部材30は、第2接合端子6a〜6cのそれぞれを互いに絶縁して短絡を防止すべく、非導電性の樹脂などからなる。このケーブル保持部材30により、第2接合端子6a〜6cのそれぞれに接続されたケーブル27a〜27cのそれぞれが可撓性に優れたケーブルであっても、第2接合端子6a〜6cのそれぞれを所定の位置に保持することができる。つまり、本実施の形態では、ケーブル27a〜27cとして可撓性に優れたケーブルを用いることができるので、ケーブル27a〜27cを敷設する際の配線自由度を向上できる。
【0064】
ケーブル保持部材30の嵌合方向先端側には、図9に示すように、ケーブル27a〜27cに接続された第2接合端子6a〜6cを所定間隔で離間させて整列するように保持する樹脂成形体からなる第2インナーハウジング52が嵌合される。この第2インナーハウジング52によって第2接合端子6a〜6cのそれぞれは、第1コネクタ部2と第2コネクタ部3とを嵌合させたときに、第2接合端子6a〜6cのそれぞれと対となるように対面する(即ち、接続対象の)第1接合端子4a〜4cのそれぞれの下方に位置するように位置決めして保持される。
【0065】
第2インナーハウジング52に第2接合端子6a〜6cを保持させる方法としては、第1インナーハウジング10に第1接合端子4a〜4cを保持させるのと同様にインサート成形により保持させる方法を採用することもできる。
【0066】
しかし、第2接合端子6a〜6cは、第1接合端子4a〜4cと違って長尺なケーブル27a〜27cに接続されており、第2接合端子6a〜6cをインサート成形により予め第2インナーハウジング52に保持させる方法を採ると、第2インナーハウジング52をケーブル保持部材30に嵌合させるときに、ケーブル27a〜27cの後端側から挿入しなければならず煩わしい。
【0067】
そのため、本実施の形態においては、ケーブル保持部材30にケーブル27a〜27cの先端を挿入して保持させた後、キャップ状に成形した第2インナーハウジング52をケーブル保持部材30に嵌合させると共に第2接合端子6a〜6cに被せるようにして第2接合端子6a〜6cを整列保持させるようにした。
【0068】
また、第2インナーハウジング52には、ケーブル保持部材30に係合される爪部53が形成される。この爪部53がケーブル保持部材30に形成された係合部54に係合することで、第2インナーハウジング52がケーブル保持部材30に嵌合後固定される。
【0069】
第2インナーハウジング52は、第2接合端子6a〜6cのそれぞれを互いに絶縁して短絡を防止すべく、非導電性の樹脂などからなる。
【0070】
また、第2接合端子6a〜6cのそれぞれは、他面(第1接合端子4a〜4cと接合される面と反対側の面)側に隣接して配置される第2絶縁部材43b〜45bと一体的に固定される。ここで言う固定とは、先で述べたように第2絶縁部材43b〜45bと第2接合端子6a〜6cの位置関係が固定されていることを言う。本実施の形態においては、第2絶縁部材43b〜45bを第2インナーハウジング52と一体的に形成した。これにより、製造コストの低減を図ることができる。
【0071】
このように、第2絶縁部材43b〜45bを第2インナーハウジング52と一体的に形成すると、第2絶縁部材43b〜45bと第2インナーハウジング52によって第2接合端子6a〜6cが強固に保持され、第2接合端子6a〜6cの柔軟性が低下してしまう場合があるが、このような場合には、図10に示すように、嵌合方向先端側の厚さに比べて第2インナーハウジング52側の厚さが薄くくびれるように第2絶縁部材43b〜45bにくびれ部18を形成すると良い。このように構成することで、第2接合端子6a〜6cの柔軟性を低下させず良好な挿入性を確保できる。つまり、第1コネクタ部2において、接続部材9の押圧により、第1接合端子4a〜4cが変形し、たとえ、第2接合端子6a〜6cを挿入する部分の位置が多少変わっても、柔軟に対応することができる。
【0072】
また、第2絶縁部材43b〜45bは、第2接合端子6a〜6cの嵌合方向先端側の面だけでなく、側面も覆うように形成される。これにより、第1ターミナルハウジング5と第2ターミナルハウジング7との嵌合時に第2接合端子6a〜6cと金属製の第1ターミナルハウジング5との間の絶縁性を確保することができる。また、第2接合端子6a〜6cの側面を覆うことで、電気遮蔽板51と同様にタッチプロテクトの効果も得られる。
【0073】
また、第2ターミナルハウジング7から引き出されたケーブル27a〜27cの部分には、シールド性能の向上を目的とした編組シールド31が巻き付けられている。この編組シールド31は、後述する筒状シールド体41と接触され、筒状シールド体41を介して第1ターミナルハウジング5に電気的に接続されている(同電位(GND)とされている)。なお、図1,2では、簡略化のため編組シールド31を図示していない。
【0074】
再び図6を参照し、第2ターミナルハウジング7は、横断面が略矩形状の中空の筒状体36からなる。第2ターミナルハウジング7内に第1ターミナルハウジング5が嵌合されるため、第1ターミナルハウジング5と嵌合される筒状体36の一端側(図示左側)の内周部は、第1ターミナルハウジング5との嵌合性を考慮してテーパ形状に形成されている。また、筒状体36の外周部には、第1ターミナルハウジング5を構成する筒状体20に形成されたリブ12を受け入れて嵌合をガイド、固定するためのガイド固定部13が形成される。このガイド固定部13でリブ12をガイドしつつ、第1ターミナルハウジング5を第2ターミナルハウジング7内に収容して嵌合することで、スムーズな嵌合ができると共に、嵌合後に強固に固定され、振動による嵌合の緩みを防止できる。
【0075】
なお、逆に第1ターミナルハウジング5内に第2ターミナルハウジング7が嵌合される構成としても構わない。この場合は、第1ターミナルハウジング5を構成する筒状体20の一端側の内周部をテーパ形状に形成し、第2ターミナルハウジング7を構成する筒状体36の一端側の外周部をテーパ形状に形成し、ターミナルハウジング防水構造21を筒状体36の一端側の外周部に形成すると良い。
【0076】
筒状体36の他端側(図示右側)には、ケーブル27a〜27cのそれぞれを整列保持するケーブル保持部材30が収納される。ケーブル保持部材30のケーブル挿入側にはパッキンレス気密部37が形成され、ケーブル27a〜27cを伝って第2ターミナルハウジング7内に水が浸入するのを防止するようになっている。ケーブル保持部材30の外周部であって第2インナーハウジング52との間には、第1ターミナルハウジング5の内周面に当接するパッキン38が設けられる。つまり、コネクタ1は、ターミナルハウジング防水構造21のパッキン23とケーブル保持部材30の外周部に設けられたパッキン38による二重防水構造となっている。
【0077】
さらに、ケーブル27a〜27cが引き出される筒状体36の他端側の外周には、筒状体36内への水の浸入を防止するゴムブーツ39が被せられている。なお、図1,2では、簡略化のためゴムブーツ39を図示していない。
【0078】
また、筒状体36の上部(図示上側)には、第2コネクタ部3と第1コネクタ部2とを嵌合させたときに、第1コネクタ部2に設けられる接続部材9を操作するための接続部材操作用孔40が形成される。この接続部材操作用孔40は、第1ターミナルハウジング5と第2ターミナルハウジング7との嵌合後に、接続部材9を第1ターミナルハウジング5に対して挿抜可能とするための貫通孔としての役割も兼ねる。この貫通孔としての役割により、コネクタ1の組み立てを容易にすることができる。
【0079】
筒状体36は、シールド性能、放熱性、及びコネクタ1の軽量化のために、導電率、熱伝導率が高く軽量なアルミニウムなどの金属で形成されることが好ましいが、樹脂などにより形成するようにしても良い。本実施の形態においては、筒状体36を非導電性樹脂により形成したため、そのシールド性能、放熱性を向上させるために筒状体36の他端側の内周面にアルミニウム製の筒状シールド体41を設けている。
【0080】
筒状シールド体41は、第1コネクタ部2と第2コネクタ部3とを嵌合させたときにアルミニウム製の第1ターミナルハウジング5の外周に接触する接触部42を有し、この接触部42を介して第1ターミナルハウジング5と熱的及び電気的に接続される。これにより、シールド性能と放熱性を向上させている。特に、放熱性については、放熱性に優れる第1ターミナルハウジング5側に積極的に熱を逃がすことで著しい向上が見込まれる。
【0081】
次に、本実施の形態に係るコネクタ1を用いた第1接合端子4a〜4cと第2接合端子6a〜6cとの接続を説明する。
【0082】
第1コネクタ部2と第2コネクタ部3とを嵌合させると、第2接合端子6a〜6c及び第2絶縁部材43b〜45bのそれぞれが対となる第1接合端子4a〜4c及び第1絶縁部材43a〜46aのそれぞれの間に挿入される。そして、該挿入により、複数の第1接合端子4a〜4cの一面のそれぞれと複数の第2接合端子6a〜6cの一面のそれぞれとが対となるように対面すると共に、第1接合端子4a〜4c、第2接合端子6a〜6c、及び第1絶縁部材43a〜46aと第2絶縁部材43b〜45bとが重なり合って構成された絶縁体8a〜8dとが交互に配置される積層構造となる。
【0083】
このとき、第1コネクタ部2の内部において、絶縁体8a〜8dを構成する第1絶縁部材43a〜45a及び第2絶縁部材43b〜45bのそれぞれが所定間隔で離間させた状態で整列させて保持されている第1接合端子4a〜4c及び第2接合端子6a〜6cの先端側、及び第1ターミナルハウジング5内に固定されているため、各絶縁体8a〜8cの間隔を保持するための保持用治具を別途設けなくても、各絶縁体8a〜8cの間隔を保持することができるようになる。これにより、第2接合端子6a〜6c及び第2絶縁部材43b〜45bのそれぞれを、対となる第1接合端子4a〜4c及び第1絶縁部材43a〜46aのそれぞれの間に容易に挿入することができる。即ち、第2接合端子6a〜6cの挿抜性を低下させることがない。また、絶縁体8a〜8dの間隔を保持するための保持用治具を設けなくてもよい分、従来に比べて更なる小型化を実現できる点において、非常に有効である。
【0084】
また、第1接合端子4a(又は4b)と第2接合端子6a(又は6b)に係る接点が、絶縁体8a(又は8b)と絶縁体8b(又は8c)とにより挟み込まれる。同様に、第1接合端子4cと第2接合端子6cに係る接点が、絶縁体8cと絶縁体8dとにより挟み込まれる。
【0085】
その後、図3に示すように、接続部材操作用孔40から接続部材9を操作して、接続部材9の雄ネジ48を第1ターミナルハウジング5の雌ネジ47に螺合させて締め付けると、接続部材9が第1ターミナルハウジング5内に回転しながら押し込まれると共に、弾性部材15によって絶縁体8a、絶縁体8b、絶縁体8c、絶縁体8dの順に押圧されていき、接点のそれぞれが絶縁体8a〜8dのいずれか2つによって挟み込むように押圧され、接点のそれぞれが互いに絶縁された状態で接触される。このとき、第1接合端子4a〜4cのそれぞれと第2接合端子6a〜6cのそれぞれは、絶縁体8a〜8dからの押圧によって多少撓み広範囲で接触されることとなる。これにより、振動が発生し易い自動車に対して、特に有効なコネクタを実現することができる。
【0086】
以上、要するに、本実施の形態に係るコネクタ1では、各接点を絶縁する絶縁体8a〜8dが2つの分割絶縁体である第1絶縁部材43a〜46aと第2絶縁部材43b〜45bとからなり、これら第1絶縁部材43a〜45aと第2絶縁部材43b〜45bを第1接合端子4a〜4cと第2接合端子6a〜6cの他面のそれぞれに固定しているため、第1接合端子4a〜4cだけでなく、第2接合端子6a〜6cも未嵌合時に剥き出し状態とならず、作業者等の手や指等の異物が不用意に接触し感電するのを防止できる。
【0087】
また、本実施の形態に係るコネクタ1では、第1ターミナルハウジング5と第2ターミナルハウジング7との嵌合時に、第1絶縁部材43a〜45aと第2絶縁部材43b〜45bが重なり合うことで所定の厚さの絶縁体8a〜8dが形成される。即ち、絶縁体8a〜8dは、各端子間や各端子と第1ターミナルハウジング5との間を絶縁するのに必要十分な厚さに形成される。そのため、各接点と絶縁体8a〜8dからなる積層構造の積層方向の厚みが不用意に厚くなることはない。
【0088】
なお、本実施の形態においては、第1絶縁部材43a〜46aと第2絶縁部材43b〜45bの厚さをほぼ同じ厚さとしたが、異なる厚さに形成しても良い。つまり、例えば、第2絶縁部材43b〜45bを第1絶縁部材43a〜46aよりも薄く形成して、第2絶縁部材43b〜45bが固定される第2接合端子6a〜6cの柔軟性を向上させるようにしても良い。
【0089】
ところで、図6に示すように、図の最も上に配置された第2接合端子6aの一面とその上の第2ターミナルハウジング7の内周面との間の間隔dが手や指等の異物が入るような大きさに構成されている場合、第2接合端子6aの一面は第1接合端子4aとの接続のため未嵌合時に剥き出し状態となっており、この面に手や指が接触し感電する虞がある。
【0090】
このような場合には、図11に示すように、第2接合端子6aの一面を覆うように且つ第1接合端子4aの挿入を阻害しないように突出する衝立部55を第2インナーハウジング52と一体的に形成し、嵌合時に衝立部55が当接する第1接合端子4aに固定された第1絶縁部材43aに衝立部55をガイドしかわすためのガイド溝56を形成すると良い。このように構成することで、全ての接合端子がタッチプロテクトされる。
【0091】
また、各接合端子の一面は接続のため必ず剥き出し状態となっており、各接合端子の整列間隔が広い場合には、この剥き出し状態となった一面に手や指が接触し感電する虞がある。
【0092】
このような場合には、例えば、図12に示すように、第1絶縁部材43a〜45aを厚めに形成して第1接合端子4a〜4cをタッチプロテクトし、他方第2接合端子4a〜4cの一面のそれぞれを覆う衝立部55を形成すると良い。この場合、第1絶縁部材43a〜45aには、衝立部55をガイドしかわすためのガイド溝56が形成される。他にも、例えば、全ての接合端子の一面のそれぞれを覆うように衝立部55を形成するようにしても良い。
【0093】
即ち、本発明は、小型化を目指したコネクタだけではなく、従来からのコネクタにも適用することができる。
【0094】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0095】
例えば、本実施の形態においては、三相交流の電源ラインを想定していたが、本発明の技術思想によれば、例えば、自動車用のコネクタであって、モータ、インバータ間用の三相交流の電源ライン、エアコン用の直流二相の電源ラインなど異なる用途のラインを一括して接続するような構成としても良い。このように構成することにより、1つのコネクタで複数の用途の電源ラインを一括して接続することができるため、用途毎に異なるコネクタを用意する必要がなく、省スペース化や低コスト化などに貢献することができる。
【0096】
また、本実施の形態においては、第1接合端子4a〜4cのそれぞれと第2接合端子6a〜6cのそれぞれとは、面と面とで接触しているが、接点側の面である第2接合端子6a〜6cのそれぞれと接触する第1接合端子4a〜4c側の面のそれぞれに、凸部を形成し、この凸部に第2接合端子6a〜6cの板状接点33が嵌る構成としても良い。このように構成することにより、第1接合端子4a〜4cのそれぞれと第2接合端子6a〜6cのそれぞれとの結合力を更に安定させることができる。即ち、接続部材9に対して垂直方向の振動に対して、特に有効である。
【0097】
また、第1接合端子4a〜4cのそれぞれと第2接合端子6a〜6cのそれぞれの端子表面をローレット加工などにより荒らし、摩擦力を大きくさせ、端子同士を動きづらくして接点のそれぞれでの固定を強固にするようにしても良い。
【0098】
また、本実施の形態においては、接続部材9の大径部9a側から見て、第1接合端子4a〜4cのそれぞれと第2接合端子6a〜6cのそれぞれとを直線状に接触させる構成であったが、第2コネクタ部3の第2接合端子6a〜6cのそれぞれに対して、第1コネクタ部2の第1接合端子4a〜4cのそれぞれが、接続部材9の大径部9a側から見て、直角に交差して接触するように第1ターミナルハウジング5と第2ターミナルハウジング7を構成するようにしてもよい。即ち、第1コネクタ部2と第2コネクタ部3とをL字状に嵌合させるようにしてもよい。同様に、第1ターミナルハウジング5及び第1接合端子4a〜4cに対して、第2ターミナルハウジング7及び第2接合端子6a〜6cを斜めに配置されるように構成することもできる。この様に、本発明の趣旨を応用すれば、第1コネクタ部2に対する第2コネクタ部3の挿抜方向を多様化することができる。つまり、コネクタからのケーブルの引き出し方向を所望の方向に合わせることができ、省スペース化に貢献することができる。
【0099】
また、本実施の形態においては、第1接合端子4a〜4cの一端側には、第2接合端子6a〜6cとは違って、ケーブルが接続されない場合を説明したが、このような構造に限定されない。即ち、本実施の形態におけるコネクタは、ケーブル同士を接続する場合にも利用することができる。
【0100】
また、本実施の形態においては、ケーブル27a〜27cとして可撓性に優れたケーブルを用いていたが、リジッドなケーブルでも良い。
【0101】
また、本実施の形態においては、接続部材9として異形穴49が形成されたものを例として説明したが、これは接続部材9の構成を異形穴49が形成された形状に限定する趣旨ではなく、例えば、第1コネクタ部2と第2コネクタ部3との嵌合を固定するCPAレバー(CPA:Connector Position Assurance)の軸部を接続部材9として構成し、CPAレバーを回転させて嵌合を固定すると共に接続部材9を第1ターミナルハウジング5内に向けて押圧する(又は、締め付ける)ような構成としてもよい。
【0102】
また、本実施の形態においては、接続部材9としての大径部9aの上面には、六角レンチ(六角棒スパナともいう)が嵌合する異形穴49が形成されているものを用いたが、これは、市販されている六角レンチを用いることを想定したものだが、市販されていない形状の専用工具を用いることを想定して、該専用工具に対応する形状の異形穴49を大径部9aの上面に形成する構成としても良い。
【0103】
また、本実施の形態においては、コネクタの使用状態における向きは、接続部材9が略水平状態であっても、略垂直状態であっても良い。即ち、本実施の形態におけるコネクタの使用条件に、使用状態における向きは要件としない。
【0104】
また、本実施の形態においては、接続部材9の一部である弾性部材15を介して接続部材9によって隣接する絶縁体8aを押圧しているが、弾性部材15を介さずに直接、隣接する絶縁体8aを押圧しても良い。
【0105】
また、本実施の形態においては、接続部材9に関し、大径部9aと小径部9bとからなるものを説明したが、積層構造を貫通する貫通型の接続部材9を用いてもよい。この構成は、第1接合端子4a〜4cと第1絶縁部材43a〜46aに接続部材9が貫通する孔を形成し、第2接合端子6a〜6cと第2絶縁部材43b〜45bの嵌合方向先端側の形状をU字状に形成することで実現することができる。貫通型の接続部材9は、第1コネクタ部2と第2コネクタ部3との嵌合状態において、接続部材9を中心として、第1接合端子4a〜4cと第2接合端子6a〜6cとの配置関係を一定にし易くなるという効果がある。
【0106】
なお、本実施の形態のように、貫通型でない接続部材9を用いることで、貫通型の接続部材9を用いる場合に比べてコストダウンを図ることができるという効果がある。また、接続部材9の軽量化に繋がり、結果として、コネクタ1全体の軽量化に寄与することも可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 コネクタ
2 第1コネクタ部
3 第2コネクタ部
4a〜4c 第1接合端子
5 第1ターミナルハウジング
6a〜6c 第2接合端子
7 第2ターミナルハウジング
8a〜8d 絶縁体
9 接続部材
43a〜46a 第1絶縁部材
43b〜45b 第2絶縁部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1接合端子が整列されて収納される第1ターミナルハウジングと、
複数の第2接合端子が整列されて収納される第2ターミナルハウジングとを備え、
前記第1ターミナルハウジングと前記第2ターミナルハウジングとを嵌合させると、前記複数の第1接合端子の一面のそれぞれと前記複数の第2接合端子の一面のそれぞれとが対となって複数の接点が構成されると共に、各接点を所定の厚さの絶縁体で挟むように配置される積層構造となるコネクタにおいて、
隣接する前記絶縁体を押圧することで、前記複数の第1接合端子及び前記複数の第2接合端子を各接点にて一括して固定し電気的に接続させる接続部材と、
前記絶縁体を分割して形成した2つの分割絶縁体の一方であって、隣接する第1接合端子の他面に固定されると共に、少なくとも前記隣接する第1接合端子の嵌合方向先端側の面を覆うように形成された第1絶縁部材と、
前記分割絶縁体の他方であって、隣接する第2接合端子の他面に固定され、少なくとも前記隣接する第2接合端子の嵌合方向先端側の面を覆うように形成された第2絶縁部材とを更に備え、
前記第1ターミナルハウジングと前記第2ターミナルハウジングとの嵌合時に、前記2つの分割絶縁体が重なり合うことで所定の厚さの前記絶縁体が形成され、
前記第1ターミナルハウジングには、雌ネジが形成されると共に、前記接続部材には、前記雌ネジに螺合する雄ネジが形成され、
前記雌ネジに前記雄ネジが螺合した状態で、前記第1ターミナルハウジングと前記第2ターミナルハウジングとを嵌合させることが可能であることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記第2絶縁部材は、前記複数の第2接合端子を整列保持する絶縁性の第2インナーハウジングと一体に形成される請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第2絶縁部材は、嵌合方向先端側の厚さに比べて前記第2インナーハウジング側の厚さが薄くくびれるように形成される請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第2インナーハウジングには、前記第2ターミナルハウジングの内周面に面する第2接合端子の一面を覆うように且つ該第2接合端子と対となる第1接合端子の挿入を阻害しないように突出する衝立部が形成され、前記対となる第1接合端子に固定された第1絶縁部材には、前記衝立部をガイドしかわすためのガイド溝が形成される請求項2又は3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第1絶縁部材及び/又は前記第2絶縁部材は、固定対象の接合端子の側面も覆うように形成される請求項1〜4のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項6】
前記第1ターミナルハウジングには、前記接続部材が挿入され、内周面に前記雌ネジが形成された接続部材挿入孔が形成され、
前記接続部材は、小径部と大径部とを有する2つの外径寸法を持つ形状からなると共に、前記接続部材挿入孔は、当該2つの外径寸法を持つ形状に合致する形状となっており、
前記大径部の外周には、前記第1ターミナルハウジング内に水が浸入するのを防止するパッキンが設けられ、
前記小径部の外周面には、前記雄ネジが形成される請求項1〜5のいずれかに記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−209259(P2012−209259A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−135362(P2012−135362)
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【分割の表示】特願2010−22432(P2010−22432)の分割
【原出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】