説明

コモンモードノイズフィルタ

【課題】本発明は、高周波帯域での使用が可能なコモンモードノイズフィルタを提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明のコモンモードノイズフィルタは、複数の絶縁層1を積層して形成された積層体2の内部に設けられた第1、第2のコイル3,4と、前記積層体2の下面2a、端面2bおよび上面2cに連続して設けられ、かつ前記第1のコイル3の両端部3aに接続された一対の第1の外部電極5a、5bと、前記積層体2の下面2a、端面2bおよび上面2cに連続して設けられ、かつ前記第2のコイル4の両端部4aに接続された一対の第2の外部電極6a、6bとを備え、前記一対の第1の外部電極5a、5bと前記第2のコイル4とを上面視にて重ならないようにし、さらに前記一対の第2の外部電極6a、6bと前記第1のコイル3とを上面視にて重ならないようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器に使用されるコモンモードノイズフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の数Gbpsを越えるような差動信号によるデジタル高速伝送データラインでは、デジタル信号波形の劣化を防ぐために数Gbpsのデジタル信号を形成する数GHzの基本周波数成分及びその基本周波数の高次の周波数成分までを含んだ高周波領域で差動信号の損失が少ないコモンモードノイズフィルタが求められている。例えば、8Gbpsのデータ信号の場合、基本周波数が4GHz、3次高周波成分の周波数は12GHzにまで達する。またアプリケーションとしては、携帯型端末への需要も大きくなり、小型化、低背化の要望も絶えない。
【0003】
従来のこの種のコモンモードノイズフィルタは、複数の絶縁層と、この複数の絶縁層を積層することによって形成された積層体と、この積層体の内部にそれぞれ形成された第1のコイル、第2のコイルと、この第1のコイル、第2のコイルそれぞれの両端部に形成され、かつ前記積層体の下面、端面および上面に連続して設けられた外部電極とを備えるようにしていた。
【0004】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−60514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来のコモンモードノイズフィルタを数Gbpsを超える高速信号ラインに適用する場合においては、従来ではあまり特性に影響のないと考えられていた小さな浮遊容量等の寄生成分の影響が顕在化してくる。そして、従来のコモンモードノイズフィルタの外部電極構成では、第1のコイル、第2のコイルと、積層体の下面または上面に位置する外部電極とが上面視にて重なっているため、第1のコイル、第2のコイルと外部電極との間で浮遊容量が発生しコイル特性の劣化を招くとともに、この浮遊容量を介して入力用外部電極と出力用外部電極間の信号漏洩または入力用外部電極と出力用外部電極間の浮遊容量による信号漏洩が発生し、これにより、高周波帯域では差動信号の不整合が生じ挿入損失が増加するため、高周波帯域での使用が困難になるという課題を有していた。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、高周波帯域での使用が可能なコモンモードノイズフィルタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0009】
本発明の請求項1に記載の発明は、複数の絶縁層と、この複数の絶縁層を積層することによって形成された積層体と、この積層体の内部にそれぞれ形成された第1のコイル、第2のコイルと、前記積層体の下面、端面および上面に連続して設けられ、かつ前記第1のコイルの両端部に接続された一対の第1の外部電極と、前記積層体の下面、端面および上面に連続して設けられるとともに前記一対の第1の外部電極と電気的に接続されず、かつ前記第2のコイルの両端部に接続された一対の第2の外部電極とを備え、前記一対の第1の外部電極と前記第2のコイルとを上面視にて重ならないようにし、さらに前記一対の第2の外部電極と前記第1のコイルとを上面視にて重ならないようにしたもので、この構成によれば、第1のコイルと、第2のコイルに接続された第2の外部電極との間で浮遊容量が発生しにくくなり、かつ第2のコイルと、第1のコイルに接続された第1の外部電極との間で浮遊容量が発生しにくくなり、また第1のコイル、第2のコイルと外部電極との間で発生する浮遊容量を介して入力用外部電極と出力用外部電極間の信号漏洩を防ぐことができるため、高周波帯域でも差動信号の不整合を防ぎ、挿入損失を低減させることができ、これにより、高周波帯域での使用が可能なコモンモードノイズフィルタが得られるという作用効果が得られるものである。
【0010】
本発明の請求項2に記載の発明は、特に、一対の第1の外部電極と第1のコイルとを上面視にて重ならないようにするとともに、一対の第2の外部電極と第2のコイルとを上面視にて重ならないようにしたもので、この構成によれば、第1のコイルと、この第1のコイルに接続された第1の外部電極との間で浮遊容量が発生しにくくなり、かつ第2のコイルと、この第2のコイルに接続された第2の外部電極との間で浮遊容量が発生しにくくなるため、第1のコイル、第2のコイルの特性劣化を防止できるという作用効果が得られるものである。
【0011】
本発明の請求項3に記載の発明は、特に、積層体の上面、下面のうち少なくとも一方に第1、第2の外部電極を設けないようにしたもので、この構成によれば、第1、第2のコイルと第1、第2の外部電極とが上面視にて重なるのを確実に抑制できるため、第1、第2のコイルと第1、第2の外部電極との間で発生する浮遊容量をより低減できるという作用効果が得られるものである。
【0012】
本発明の請求項4に記載の発明は、特に、少なくとも第1のコイル、第2のコイルと接続された箇所を除いて一対の第1の外部電極、第2の外部電極を設けないようにしたので、この構成によれば、第1、第2の外部電極の第1、第2のコイルと対向する部分が無くなるため、第1、第2のコイルと第1、第2の外部電極との間で発生する浮遊容量をさらに低減できるという作用効果が得られるものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明のコモンモードノイズフィルタは、一対の第1の外部電極と第2のコイルとを上面視にて重ならないようにし、さらに一対の第2の外部電極と第1のコイルとを上面視にて重ならないようにしているため、第1のコイルと、第2のコイルに接続された第2の外部電極との間で浮遊容量が発生しにくくなり、かつ第2のコイルと、第1のコイルに接続された第1の外部電極との間で浮遊容量が発生しにくくなり、また第1のコイル、第2のコイルと外部電極との間で発生する浮遊容量を介して入力用外部電極と出力用外部電極間の信号漏洩を防ぐことができ、これにより、高周波帯域でも差動信号の不整合を防ぎかつ挿入損失を低減させることができるため、高周波帯域での使用が可能なコモンモードノイズフィルタが得られるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタの一部切欠上面図
【図2】同コモンモードノイズフィルタの分解斜視図
【図3】同コモンモードノイズフィルタの斜視図
【図4】同コモンモードノイズフィルタの側断面図
【図5】本発明の実施の形態2におけるコモンモードノイズフィルタの側断面図
【図6】同コモンモードノイズフィルタの他の例を示す側断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1、2に記載の発明について説明する。
【0016】
図1は本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタの一部切欠上面図、図2は同コモンモードノイズフィルタの分解斜視図、図3は同コモンモードノイズフィルタの斜視図である。
【0017】
本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタは、図1〜図3に示すように、複数の絶縁層1と、この複数の絶縁層1を積層することによって形成された積層体2と、この積層体2の内部にそれぞれ形成された第1のコイル3、第2のコイル4と、前記積層体2の下面2a、端面2bおよび上面2cに連続して設けられ、かつ前記第1のコイル3の両端部3aに接続された一対の第1の外部電極5a、5bと、前記積層体2の下面2a、端面2bおよび上面2cに連続して設けられるとともに前記一対の第1の外部電極5a、5bと電気的に接続されず、かつ前記第2のコイル4の両端部4aに接続された一対の第2の外部電極6a、6bとを備え、前記一対の第1の外部電極5a、5bと前記第2のコイル4とを上面視にて重ならないようにし、さらに前記一対の第2の外部電極6a、6bと前記第1のコイル3とを上面視にて重ならないようにしている。なお、図1では、複数の絶縁層1を省略している。
【0018】
上記構成において、前記複数の絶縁層1は、第1〜第5の非磁性層11〜15と第1〜第3の磁性層16〜18からなる。
【0019】
そして、前記第1〜第5の非磁性層11〜15は、Cu−Znフェライト、ガラスセラミック等の非磁性材料によりシート状に下から順に構成されているもので、絶縁性を有している。また、第2、第4の非磁性層12,14の所定位置にはビア電極19a,19bが形成されている。また、前記第1〜第3の磁性層16〜18は、Ni−Cu−Znフェライト等の磁性材料によりシート状に構成されているもので、絶縁性を有している。さらに、第1、第2の磁性層16,17は第1の非磁性層11の下に位置し、かつ第3の磁性層18は第5の非磁性層15の上に位置している。このように積層することにより、積層体2が構成される。
【0020】
また、前記第1のコイル3は、第1の非磁性層11の上面に形成された第1の内部導体20と、第2の非磁性層12に形成されたビア電極19aを介して第1の内部導体20と接続され、かつ第2の非磁性層12の上面に形成された渦巻状の第2の内部導体21とで構成されている。
【0021】
そしてまた、前記第2のコイル4は、第3の非磁性層13の上面に形成された渦巻状の第3の内部導体22と、第4の非磁性層14に形成されたビア電極19bを介して第3の内部導体22と接続され、かつ第4の非磁性層14の上面に形成された第4の内部導体23とで構成されている。
【0022】
さらに、前記第2の内部導体21と第3の内部導体22は第3の非磁性層13を介して上下方向に隣り合うように形成されている。
【0023】
また、前記一対の第1の外部電極5a、5bは、積層体2の下面2a、端面2bおよび上面2cに連続してコ字状に設けられ、かつ第1のコイル3の両端部3a、すなわち第1の内部導体20の一端部および第2の内部導体21の一端部にそれぞれ接続されている。
【0024】
そしてまた、前記一対の第2の外部電極6a、6bは、積層体2の下面2a、端面2bおよび上面2cに連続してコ字状に設けられ、かつ第2のコイル4の両端部4a、すなわち第3の内部導体22の一端部および第4の内部導体23の一端部にそれぞれ接続されている。さらに、一対の第1の外部電極5a、5bと一対の第2の外部電極6a、6bは電気的に接続されていない。また、第1の外部電極5aと第2の外部電極6aが積層体2の一端部、第1の外部電極5bと第2の外部電極6bが積層体2の他端部に形成されている。なお、積層体2の一端部に形成された第1の外部電極5aと第2の外部電極6aが入力用外部電極、積層体2の他端部に形成された第1の外部電極5bと第2の外部電極6bが出力用外部電極となる。
【0025】
この一対の第1の外部電極5a、5bおよび一対の第2の外部電極6a、6bのうち積層体2の上面2cに配置されている部分は、図1に示すように、第1のコイル3、第2のコイル4と上面視にて重ならないようになっている。さらに、図4に示すように、一対の第1の外部電極5a、5bおよび一対の第2の外部電極6a、6bのうち積層体2の下面2aに配置されている部分も、第1のコイル3、第2のコイル4と上面視(下面視)にて重ならないようになっている。ここで、図4は、第1〜第5の非磁性層11〜15、第1〜第3の磁性層16〜18、第1のコイル3、第2のコイル4のそれぞれの関係を示している。また、第1の外部電極5a、5b、第2の外部電極6a、6bが、第1のコイル3、第2のコイル4と上面視にて重なるのは、積層体2の下面2a、上面2cに配置されている部分のいずれか一方でもよい。なお、第1の外部電極5a、5b、第2の外部電極6a、6bと、第1のコイル3、第2のコイル4が上面視、下面視にて重ならない部分は、第1のコイル3の両端部3aと第2のコイル4の両端部4aは除かれる。第1のコイル3、第2のコイル4と第1の外部電極5a、5b、第2の外部電極6a、6bとを接続する必要があるからである。
【0026】
なお、前記第1〜第5の非磁性層11〜15、第1〜第3の磁性層16〜18の枚数は、図2に示された枚数と異なる枚数でもよいし、第1、第5の非磁性層11,15は形成しなくてもよい。また、第3の非磁性層13の代わりにガラス等の低誘電率層を形成してもよく、さらに、フェライトと低誘電率層の収縮率の違いによるクラックを防止するために第1〜第3の磁性層16〜18にも低誘電率層を形成してもよい。そして、第1のコイル3と第2のコイル4との磁気結合を高くするために、図1、図2に示すように、第2の内部導体21と第3の内部導体22の渦巻きの中心部に磁性体24を形成してもよい。
【0027】
次に、本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタの製造方法について説明する。
【0028】
図1〜図3において、まず、それぞれの原材料である磁性材料や非磁性材料の粉体および樹脂からなる混合物により、方形の第1〜第5の非磁性層11〜15、第1〜第3の磁性層16〜18をそれぞれ所定枚数作製する。このとき、第2の非磁性層12、第4の非磁性層14の所定箇所に、レーザ、パンチング等で孔あけ加工をし、この孔に銀を充填して、ビア電極19a,19bを形成する。
【0029】
次に、第1の磁性層16の上面に第2の磁性層17を積層し、その後、第2の磁性層17の上面に第1の非磁性層11を配置する。
【0030】
次に、第1の非磁性層11の上面に、第1の内部導体20をめっきによって形成する。
【0031】
次に、第1の内部導体20の上面に、ビア電極19aが設けられた第2の非磁性層12を配置する。このとき、第1の内部導体20とビア電極19aとを接続する。
【0032】
次に、第2の非磁性層12の上面に、渦巻き状の第2の内部導体21をめっきによって形成する。このとき、第2の内部導体21とビア電極19aとを接続して、第1の内部導体20と第2の内部導体21からなる第1のコイル3を設ける。
【0033】
次に、第2の内部導体21の上面に、第3の非磁性層13を配置し、その後、第3の非磁性層13の上面に、渦巻き状の第3の内部導体22をめっきによって形成する。
【0034】
次に、第3の内部導体22の上面に、ビア電極19bが設けられた第4の非磁性層14を配置する。このとき、第3の内部導体22とビア電極19bとを接続する。
【0035】
次に、第4の非磁性層14の上面に、第4の内部導体23をめっきによって形成する。このとき、第4の内部導体23とビア電極19bとを接続して、第3の内部導体22と第4の内部導体23からなる第2のコイル4を設ける。その後、第4の内部導体23の上面に、第5の非磁性層15を配置する。
【0036】
なお、第1〜第4の内部導体20〜23は、めっきで形成するのではなく、印刷や蒸着等の他の方法で形成してもよい。
【0037】
次に、第5の非磁性層15の上面に第3の磁性層18を配置して積層体2を構成する。その後、積層体2を所定の温度、時間で焼成する。
【0038】
次に、積層体2の下面2a、端面2bおよび上面2cに連続するように、第1のコイル3の両端部、第2のコイル4の両端部にそれぞれ接続されるように銀を印刷する。
【0039】
最後に、上記銀の表面にめっきによってニッケルめっき層を形成するとともに、さらにこのニッケルめっき層の表面にめっきによってすずやはんだ等の低融点金属めっき層を形成し、一対の第1の外部電極5a、5bと一対の第2の外部電極6a、6bを構成する。
【0040】
このとき、積層体2の下面2aおよび上面2cに形成された一対の第1の外部電極5a、5b、一対の第2の外部電極6a、6bと、第1のコイル3、第2のコイル4とは上面視(下面視)にて重ならないようにする。
【0041】
上記したように本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタにおいては、一対の第1の外部電極5a、5bと第2のコイル4とを上面視にて重ならないようにし、さらに一対の第2の外部電極6a、6bと第1のコイル3とを上面視にて重ならないようにしているため、第1のコイル3と、第2のコイル4に接続された第2の外部電極6a、6bとの間で浮遊容量が発生しにくくなり、かつ第2のコイル4と、第1のコイル3に接続された第1の外部電極5a、5bとの間で浮遊容量が発生しにくくなり、また、第1のコイル3、第2のコイル4と外部電極5a、5b、6a、6bとの間で発生する浮遊容量を介して入力用外部電極と出力用外部電極間の信号漏洩を防ぐことができるため、高周波帯域でも差動信号の不整合を防ぎかつ挿入損失を低減させることができ、これにより、高周波帯域での使用が可能なコモンモードノイズフィルタが得られるという効果が得られるものである。
【0042】
すなわち、第1のコイル3と第2のコイル4(第2の外部電極6a、6b)、第2のコイル4と第1のコイル3(第1の外部電極5a、5b)のそれぞれの間の浮遊容量を低減できるため、高周波帯域でも差動信号の挿入損失を低減させることができる。
【0043】
そして、高周波帯域での差動信号の挿入損失を低減させるためだけである場合、上面視にて重ならないようにするのは、一対の第1の外部電極5a、5bと第2のコイル4、一対の第2の外部電極6a、6bと第1のコイル3の間だけでよく、この構成では、第1のコイル3、第2のコイル4の構成面積を比較的広くできるため、コモンモード成分のインピーダンス特性を向上させることができる。
【0044】
なお、一対の第1の外部電極5a、5bと第1のコイル3、一対の第2の外部電極6a、6bと第2のコイル4についても上面視にて重ならないようにした場合(一対の第1の外部電極5a、5bと、第1のコイル3、第2のコイル4との間、一対の第2の外部電極6a、6bと、第1のコイル3、第2のコイル4との間で上面視にて重ならない)、第1のコイル3と、この第1のコイル3に接続された第1の外部電極5a、5bとの間でも浮遊容量が発生しにくくなり、かつ第2のコイル4と、この第2のコイル4に接続された第2の外部電極6a、6bとの間でも浮遊容量が発生しにくくなるため、第1のコイル3、第2のコイル4のインピーダンスが低下するのを防止できる。
【0045】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項3、4に記載の発明について説明する。
【0046】
図5は本発明の実施の形態2におけるコモンモードノイズフィルタの側断面図である。なお、この本発明の実施の形態2においては、上記した本発明の実施の形態1と同様の構成を有するものについては、同一符号を付しており、その説明は省略する。
【0047】
本発明の実施の形態2が上記した本発明の実施の形態1と相違する点は、図5に示すように、積層体2の上面2cに第1、第2の外部電極5a、5b、6a、6bを設けないようにした点である。
【0048】
この構成により、第1、第2のコイル3,4と第1、第2の外部電極5a、5b、6a、6bとが上面視にて重なるのを確実に抑制できるため、第1、第2のコイル3,4と第1、第2の外部電極5a、5b、6a、6bとの間で発生する浮遊容量をより低減できる。
【0049】
また、近年のコモンモードノイズフィルタの小型化、低背化においては入力用外部電極と出力用外部電極間距離、および外部電極と第1のコイル、第2のコイルとの距離が縮まり、浮遊容量が増加する傾向にあり、コモンモードノイズフィルタの特性劣化を招く要因のひとつになっている。
【0050】
これに対し、本発明では、第1、第2の外部電極5a、5b、6a、6bの位置を制限しているため、小型化、低背化により、コイル形成面積が限られるような場合においても、コモンモードノイズ除去のために所望のインピーダンスを確保するためのコイル巻き数を確保しつつ、外部電極とコイル間の浮遊容量を低減させるのに有効である。
【0051】
なお、図5では第1、第2の外部電極5a、5b、6a、6bを設けないようにした部分を積層体2の上面2cとしたが、積層体2の下面2aとしてもよいし、積層体2の上面2cと下面2aの両方としてもよい。
【0052】
さらに、図6に示すように、積層体2の端面2bの一部にも第1、第2の外部電極5a、5b、6a、6bを設けないようにしてもよい。このとき、第1、第2のコイル3,4の両端部3a、4aと第1、第2の外部電極5a、5b、6a、6bとを接続させる必要がある。
【0053】
また、実装基板との実装性を確保するために、図6に示すように、第1、第2の外部電極5a、5b、6a、6bを、積層体2の下面2aから端面2bの一部にかけて連続するように形成してもよい。
【0054】
そして、上記した本発明の実施の形態1,2においては、第1、第2のコイル3,4と対向する第1、第2の外部電極5a、5b、6a、6bの面積を小さくしているため、小型化した場合でも、第1、第2のコイル3,4と第1、第2の外部電極5a、5b、6a、6bとの間でマイグレーションを起こす可能性を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係るコモンモードノイズフィルタは、高周波帯域での使用が可能なコモンモードノイズフィルタが得られるという効果を有するものであり、特にデジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器のノイズ対策として使用されるコモンモードノイズフィルタ等において有用となるものである。
【符号の説明】
【0056】
1 絶縁層
2 積層体
2a 積層体の下面
2b 積層体の端面
2c 積層体の上面
3 第1のコイル
4 第2のコイル
5a、5b 第1の外部電極
6a、6b 第2の外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層と、この複数の絶縁層を積層することによって形成された積層体と、この積層体の内部にそれぞれ形成された第1のコイル、第2のコイルと、前記積層体の下面、端面および上面に連続して設けられ、かつ前記第1のコイルの両端部に接続された一対の第1の外部電極と、前記積層体の下面、端面および上面に連続して設けられるとともに前記一対の第1の外部電極と電気的に接続されず、かつ前記第2のコイルの両端部に接続された一対の第2の外部電極とを備え、前記一対の第1の外部電極と前記第2のコイルとを上面視にて重ならないようにし、さらに前記一対の第2の外部電極と前記第1のコイルとを上面視にて重ならないようにしたコモンモードノイズフィルタ。
【請求項2】
一対の第1の外部電極と第1のコイルとを上面視にて重ならないようにするとともに、一対の第2の外部電極と第2のコイルとを上面視にて重ならないようにした請求項1記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項3】
積層体の上面、下面のうち少なくとも一方に第1、第2の外部電極を設けないようにした請求項1記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項4】
少なくとも第1のコイル、第2のコイルと接続された箇所を除いて一対の第1の外部電極、第2の外部電極を設けないようにした請求項3記載のコモンモードノイズフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−114627(P2011−114627A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269742(P2009−269742)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】