説明

コモンモードノイズフィルタ

【課題】コモンモードノイズだけでなく特定の周波数帯域におけるディファレンシャルモードノイズを減衰することが可能なコモンモードノイズフィルタを提供する。
【解決手段】一対の信号ライン11,12に挿入されたコモンモードフィルタ20と、互いに容量結合する一対のコイル31,32であって、一端31a,32aがそれぞれ対応する信号ライン11,12に接続され、他端31b,32bがいずれも開放された一対のコイル31,32とを備える。本発明によれば、コモンモードフィルタ20によってコモンモードノイズが除去されるだけでなく、他端が開放された一対のコイル31,32によって所望の周波数帯域のディファレンシャルモードノイズを除去することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコモンモードノイズフィルタに関し、特に、コモンモードノイズだけでなく特定の周波数帯域におけるディファレンシャルモードノイズを減衰することが可能なコモンモードノイズフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速な信号伝送インターフェースとしてUSB2.0規格やIEEE1394規格が広く普及し、パーソナルコンピュータやデジタルカメラなど数多くのデジタル機器に用いられている。これらのインターフェースでは一対の信号線を用いて差動信号(ディファレンシャル信号)を伝送する差動伝送方式が採用されており、従来のシングルエンド伝送方式よりも高速な信号伝送が実現されている。
【0003】
高速差動伝送路上のノイズを除去するためのフィルタにはコモンモードフィルタが広く使用されている(特許文献1参照)。コモンモードフィルタは、一対の信号線を伝わる信号の差動成分(ディファレンシャル成分)に対するインピーダンスが低く、同相成分(コモンモード成分)に対するインピーダンスが高いという特性を有している。そのため、一対の信号線上にコモンモードフィルタを挿入することにより、ディファレンシャルモード信号を実質的に減衰させることなくコモンモードノイズを遮断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−203737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、コモンモードフィルタはディファレンシャル成分に対するインピーダンスが低いため、必要な信号成分をほとんど減衰させない。しかしながら、ディファレンシャル成分の中には、必要な信号成分以外に不要なディファレンシャルモードノイズが含まれることがある。このような不要なディファレンシャルモードノイズは、従来のコモンモードフィルタではほとんど除去されないため、一対の信号線にコモンモードフィルタを挿入するだけでは、ノイズ対策が不十分となることがあった。特に、携帯電話機内の信号線路がディファレンシャルモードノイズの発生源になると、通信感度が低下することがあった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、コモンモードノイズだけでなく特定の周波数帯域におけるディファレンシャルモードノイズを減衰することが可能なコモンモードノイズフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によるコモンモードノイズフィルタは、一対の信号ラインに挿入されたコモンモードフィルタと、互いに容量結合する一対のコイルであって、一端がそれぞれ対応する前記信号ラインに接続され、他端がいずれも開放された一対のコイルと、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、コモンモードフィルタによってコモンモードノイズが除去されるだけでなく、他端が開放された一対のコイルによって所望の周波数帯域のディファレンシャルモードノイズを除去することが可能となる。
【0009】
本発明においては、前記一対のコイルが同一の部品内に形成され、且つ、前記コモンモードフィルタと前記一対のコイルが互いに異なる部品内に形成されていても構わない。かかる態様によれば、従来のコモンモードフィルタに変更を加えることなく、所望の周波数帯域のディファレンシャルモードノイズを除去することが可能となる。
【0010】
本発明においては、前記コモンモードフィルタと前記一対のコイルが同一の部品内に形成されていても構わない。かかる態様によれば、単一の部品によってコモンモードノイズと特定の周波数帯域におけるディファレンシャルモードノイズを除去することが可能となる。
【0011】
本発明の他の側面によるコモンモードノイズフィルタは、基板と、前記基板上に設けられ、互いに磁気結合する第1及び第2のコイルと、前記基板上に設けられ、互いに容量結合する第3及び第4のコイルと、を備え、前記第3のコイルは、一端が前記第1のコイルの一端に接続され、他端が開放されており、前記第4のコイルは、一端が前記第1のコイルの前記一端と対を成す前記第2のコイルの一端に接続され、他端が開放されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、単一の部品によって、コモンモードノイズと特定の周波数帯域におけるディファレンシャルモードノイズを除去することが可能となる。しかも、各コイルが基板上に設けられたタイプであることから、表面実装に適したコモンモードノイズフィルタを提供することが可能となる。
【0013】
本発明においては、前記第3及び第4のコイルが互いに磁気結合していることが好ましい。かかる態様によれば、比較的低い周波数帯域におけるディファレンシャルモードノイズを除去することが可能となる。
【0014】
本発明においては、一方向から見た場合における前記第3のコイルの前記一端から他端への巻回方向と、前記一方向から見た場合における前記第4のコイルの前記一端から他端への巻回方向とが互いに同じである構成とすることが可能である。かかる態様によれば、比較的低い周波数帯域におけるディファレンシャルモードノイズを除去することが可能となる。
【0015】
本発明においては、一方向から見た場合における前記第3のコイルの前記一端から他端への巻回方向と、前記一方向から見た場合における前記第4のコイルの前記一端から他端への巻回方向とが互いに逆である構成とすることも可能である。かかる態様によれば、比較的高い周波数帯域におけるディファレンシャルモードノイズを除去することが可能となる。
【0016】
本発明においては、前記第3及び第4のコイルの前記一端は内周端及び外周端の一方であり、前記第3及び第4のコイルの前記他端は内周端及び外周端の他方である構成とすることも可能である。かかる態様によれば、第3のコイルと第4のコイルをほぼ同じ構造とすることができるため、これらの磁気結合及び容量結合を調整しやすくなる。
【0017】
本発明においては、前記第3のコイルの前記一端及び前記第4のコイルの前記他端は内周端及び外周端の一方であり、前記第3のコイルの前記他端及び前記第4のコイルの前記一端は内周端及び外周端の他方である構成とすることも可能である。かかる態様によれば設計の自由度を高めることが可能となる。
【0018】
本発明において前記第3及び第4のコイルは、前記基板の主面に対して垂直な方向から見て互いに重なりを有している構成とすることも可能である。かかる態様によれば、比較的大きな容量結合を得ることが可能となる。
【0019】
本発明においては、前記第1及び第3のコイルは前記基板上に設けられた第1の配線層に形成されており、前記第2及び第4のコイルは前記基板上に設けられた第2の配線層に形成されていることが好ましい。かかる態様によれば、配線層の数が通常のコモンモードフィルタと同じとなることから、製造コストの増大が防止されるとともに、製品の低背化を実現することが可能となる。
【0020】
本発明において前記第1乃至第4のコイルは、前記基板上に設けられた第1乃至第4の配線層にそれぞれ形成されている構成とすることも可能である。かかる態様によれば、部品の平面サイズを縮小することが可能となる。また、コモンモードフィルタを構成する第1及び第2のコイルと、ディファレンシャルモードフィルタを構成する第3及び第4のコイルとの間に磁性体などを配置すれば、両者間の磁気的干渉を低減することも可能となる。
【0021】
本発明におけるコモンモードノイズフィルタは、前記基板上に設けられ、互いに容量結合する第5及び第6のコイルをさらに備え、前記第5のコイルは、一端が前記第1のコイルの前記一端又は他端に接続され、他端が開放されており、前記第6のコイルは、一端が前記第2のコイルの前記一端又は他端に接続され、他端が開放されている構成とすることも可能である。かかる態様によれば、ディファレンシャルモードノイズの除去特性を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
このように、本発明のコモンモードノイズフィルタによれば、コモンモードノイズが除去されるだけでなく、所望の周波数帯域のディファレンシャルモードノイズを除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるコモンモードノイズフィルタの基本構成を示す回路図である。
【図2】(a)は一対のコイル31,32が形成された部品30とコモンモードフィルタ20を用いてコモンモードノイズフィルタを構成した例であり、(b)はコモンモードフィルタ20と一対のコイル31,32を同一の部品40内に集積した例である。
【図3】(a)〜(d)はコイル31,32の磁気結合方向と接続方向のバリエーションを示す図である。
【図4】ディファレンシャル成分の通過特性を示すグラフである。
【図5】本発明の好ましい第1の実施形態によるコモンモードノイズフィルタ100の外観を示す略斜視図である。
【図6】コモンモードノイズフィルタ100の略分解斜視図である。
【図7】コモンモードノイズフィルタ100の機能層110に含まれる導体パターンを抜き出して示す略透過斜視図である。
【図8】変形例によるコモンモードノイズフィルタ150の機能層に含まれる導体パターンを抜き出して示す略透過斜視図である。
【図9】第2の実施形態によるコモンモードノイズフィルタ200の機能層に含まれる導体パターンを抜き出して示す略透過斜視図である。
【図10】(a)は第3の実施形態によるコモンモードノイズフィルタ300の機能層に含まれる導体パターンを抜き出して示す略透過斜視図であり、(b)は第3の実施形態の変形例によるコモンモードノイズフィルタ350の機能層に含まれる導体パターンを抜き出して示す略透過斜視図である。
【図11】第4の実施形態によるコモンモードノイズフィルタ400の機能層に含まれる導体パターンを抜き出して示す略透過斜視図である。
【図12】図12はコイルパターン134とコイルパターン136の重なりを説明するためのZ方向から見た透視平面図であり、(a)はこれらがほぼ完全な重なりを有している場合を示し、(b)はこれらの重なりが部分的である場合を示している。
【図13】本発明の第5の実施形態によるコモンモードノイズフィルタ500の略分解斜視図である。
【図14】本発明の第6の実施形態によるコモンモードノイズフィルタ600の回路図である。
【図15】コモンモードノイズフィルタ600を単一の部品に集積した場合における導体パターンを抜き出して示す略透過斜視図である。
【図16】コイルパターン134とコイルパターン136の重なり、並びに、コイルパターン137とコイルパターン138の重なりを説明するためのZ方向から見た透視平面図である。
【図17】第6の実施形態の変形例によるコモンモードノイズフィルタ650の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明によるコモンモードノイズフィルタの基本構成を示す回路図である。
【0026】
図1に示すように、本発明の基本構成によるコモンモードノイズフィルタは、一対の信号ライン11,12に挿入されたコモンモードフィルタ20と、信号ライン11,12にそれぞれ接続されたコイル31,32によって構成されている。信号ライン11,12は、差動信号(ディファレンシャル信号)を伝送するための一対の信号ラインであり、特に限定されるものではないが、プリント基板上の配線パターンなどによって構成される。
【0027】
コモンモードフィルタ20は、2つのコイル21,22が同方向に磁気結合した回路である。つまり、コイル21の一端21aから他端21bへの巻回方向と、コイル22の一端22aから他端22bへの巻回方向とが同一であり、これによりコイル21,22は互いに同方向に磁気結合することになる。ここで、「互いに同方向に磁気結合」とは、同相成分に対しては互いに磁束を強め合い、差動成分に対しては互いに磁束を打ち消し合うように磁気結合していることを言う。一方、「互いに逆方向に磁気結合」とは、差動成分に対しては互いに磁束を強め合い、同相成分に対しては互いに磁束を打ち消し合うように磁気結合していることを言う。本例では、コモンモードフィルタ20の一端側(21a,22a側)が信号入力側であり、コモンモードフィルタ20の他端側(21b,22b側)が信号出力側である。
【0028】
コイル31,32は互いに容量結合しており、それぞれの一端31a,32aは対応する信号ライン11,12に接続され、他端はいずれも開放されている。図1に示す例では、コイル31,32がコモンモードフィルタ20の一端側(21a,22a側)、つまり信号入力側に接続されているが、これとは逆に、コモンモードフィルタ20の他端側(21b,22b側)、つまり信号出力側に接続されていても構わない。
【0029】
かかる構成により、一対の信号ライン11,12を流れる信号のうち、必要なディファレンシャル信号成分については、実質的にコモンモードフィルタ20及びコイル31,32の影響を受けることなく伝送される。これに対し、一対の信号ライン11,12を流れる信号のうち、コモンモードノイズ成分についてはコモンモードフィルタ20によって減衰される。さらに、一対の信号ライン11,12を流れる信号のうち、所望の周波数帯域におけるディファレンシャルモードノイズについてはコイル31,32によって減衰される。
【0030】
ここで、コイル31,32によってディファレンシャルモードノイズが減衰される理由は、コイル31,32のインダクタンス成分(L成分)とコイル31,32間のキャパシタンス成分(C成分)とがLC共振を起こすからである。したがって、コイル31,32によって減衰すべき周波数帯域は、これらL成分及びC成分によって調整することが可能である。
【0031】
本発明において、コモンモードノイズフィルタを構成する各要素については、互いに別の部品を用いても構わないし、同じ部品の中に集積しても構わない。図2(a)に示す例は、一対のコイル31,32が形成された部品30と、別部品であるコモンモードフィルタ20とを用いてコモンモードノイズフィルタを構成した例である。これによれば、既存のコモンモードフィルタ20に設計変更を加えることなくそのまま使用することが可能となる。一方、図2(b)に示す例は、コモンモードフィルタ20と一対のコイル31,32を同一の部品40内に集積した例である。これによれば、部品点数の増大を防止することが可能となる。
【0032】
上述の通り、コイル31,32は互いに容量結合している必要があるが、これらを磁気結合させても構わない。コイル31,32を磁気結合させると、LC共振特性が変化するため、除去されるディファレンシャルモードノイズの周波数帯域が変化する。
【0033】
図3(a)〜(d)はコイル31,32の磁気結合方向と接続方向のバリエーションを示す図である。図3(a)〜(d)において、コイル31,32はいずれも平面スパイラルコイルであり、一端31a,32aはスパイラルの外周端、他端31b,32bはスパイラルの内周端である。
【0034】
図3(a)に示す例は、コイル31,32の一端31a,32a(外周端)を信号ライン11,12にそれぞれ接続し、且つ、コイル31,32を同方向に磁気結合させた例を示している。本例では、一端31a,32aから他端31b,32bに向かう巻回方向が互いに同じであるとともに接続方向も同じであることから、互いに同方向の磁気結合となる。
【0035】
図3(b)に示す例は、コイル31,32の一端31a,32a(外周端)を信号ライン11,12にそれぞれ接続し、且つ、コイル31,32を逆方向に磁気結合させた例を示している。本例では、一端31a,32aから他端31b,32bに向かう巻回方向が互いに逆であるとともに接続方向が同じであることから、互いに逆方向の磁気結合となる。
【0036】
図3(c)に示す例は、コイル31の一端31a(外周端)及びコイル32の他端32b(内周端)を信号ライン11,12にそれぞれ接続し、且つ、コイル31,32を一端31a及び他端32bから見て逆方向に磁気結合(一端31a,32aから見れば同方向に磁気結合)させた例を示している。本例では、一端31a,32aから他端31b,32bに向かう巻回方向が互いに同じあるとともに接続方向が逆であることから、互いに逆方向の磁気結合となる。
【0037】
図3(d)に示す例は、コイル31の一端31a(外周端)及びコイル32の他端32b(内周端)を信号ライン11,12にそれぞれ接続し、且つ、コイル31,32を一端31a及び他端32bから見て同方向に磁気結合(一端31a,32aから見れば逆方向に磁気結合)させた例を示している。本例では、一端31a,32aから他端31b,32bに向かう巻回方向が互いに逆であるとともに接続方向も逆であることから、互いに同方向の磁気結合となる。
【0038】
図3(a)に示すパターンと図3(d)に示すパターンは、いずれもコイル31,32が同方向に磁気結合しており、したがってこれらのパターンはほぼ同じ特性が得られる。具体的には、相対的に低い周波数帯域のディファレンシャルモードノイズが除去される。これに対し、図3(b)に示すパターンと図3(c)に示すパターンは、いずれもコイル31,32が逆方向に磁気結合しており、したがってこれらのパターンはほぼ同じ特性が得られる。具体的には、相対的に高い周波数帯域のディファレンシャルモードノイズが除去される。
【0039】
図4は、ディファレンシャル成分の通過特性を示すグラフである。
【0040】
図4に示す特性Aは、図3(a)又は(d)に示すパターンを有するコモンモードノイズフィルタの通過特性である。また、図4に示す特性Bは、図3(b)又は(c)に示すパターンを有するコモンモードノイズフィルタの通過特性である。さらに、図4に示す特性Cは、図3(a)〜(d)に示すパターンからコイル31,32を除去したコモンモードノイズフィルタの通過特性である。いずれのコモンモードノイズフィルタもコモンモードフィルタ20については同じ形状及びサイズである。また、特性A,Bを有するコモンモードノイズフィルタについては、コイル31,32の形状及びサイズは実質的に同一である。
【0041】
図4に示すように、コイル31,32が設けられていない通常のコモンモードフィルタは、特性Cに示すように高域に亘ってディファレンシャル成分の減衰が少ない。これに対し、同方向に磁気結合するコイル31,32を接続した場合、特性Aに示すように周波数f1において減衰のピークが現れている。また、逆方向に磁気結合するコイル31,32を接続した場合、特性Bに示すように周波数f2(>f1)において減衰のピークが現れている。このように、コイル31,32を付加することにより、特定の周波数帯域におけるディファレンシャル成分を減衰させることができ、且つ、その周波数帯域は磁気結合の方向によって調整することが可能である。
【0042】
以下、コモンモードノイズフィルタの好ましい具体的構成について説明する。
【0043】
図5は、本発明の好ましい第1の実施形態によるコモンモードノイズフィルタ100の外観を示す略斜視図である。
【0044】
図5に示すように、本実施形態によるコモンモードノイズフィルタ100は、いわゆる表面実装型のチップ部品であり、磁性基板101,102と、磁性基板101と磁性基板102に挟まれた機能層110とを備えている。また、磁性基板101、機能層110及び磁性基板102からなる積層体の外周面には、4つの端子電極121〜124が形成されている。磁性基板101,102は、機能層110を物理的に保護すると共に、コモンモードフィルタの閉磁路としての役割を果たすものである。磁性基板101,102の材料としては、焼結フェライト、複合フェライト(フェライト粉含有樹脂)等を用いることができるが、機械的強度が高く磁気特性に優れた焼結フェライトを用いることが特に好ましい。
【0045】
上述の通り、本実施形態によるコモンモードノイズフィルタ100に設けられている端子電極の数は4つである。このうち、端子電極121,122は図1に示したコイル21,22の他端21b,22bにそれぞれ対応する端子であり、端子電極123,124は図1に示したコイル21,22の一端21a,22aにそれぞれ対応する端子である。したがって、実際の使用状態においては、端子電極121,123が信号ライン11に挿入され、端子電極122,124が信号ライン12に挿入されることになる。本実施形態においては、コイル31,32の他端31b,32bに対応する端子電極は設けられていない。これは、コイル31,32の他端31b,32bは開放されるため、外部との接続を取るための端子電極を設ける必要がないからである。
【0046】
尚、敢えてコイル31,32の他端31b,32bに対応する端子電極を設けるとともに、これら端子電極への接続を行わない、或いはオープンな導体パターンにのみ接続する場合にも図1に示す回路を実現することができる。しかしながら、この場合、コモンモードノイズフィルタ100の外形寸法が無駄に大型化するばかりでなく、端子電極やオープンな導体パターンの影響によって、実際に得られる特性がコイル31,32の設計値からずれてしまうおそれがある。このような点を考慮すれば、コイル31,32の他端31b,32bに対応する端子電極については設けないことが好ましい。つまり、本実施形態によるコモンモードノイズフィルタ100は4端子であることが重要である。
【0047】
図6は、コモンモードノイズフィルタ100の略分解斜視図である。また、図7は、コモンモードノイズフィルタ100の機能層110に含まれる導体パターンを抜き出して示す略透過斜視図である。
【0048】
図6に示すように、機能層110は、磁性基板101からから磁性基板102側に向かって順に積層された絶縁層111〜113と、接着層114と、絶縁層111〜113の表面に形成された各種の導体パターンとを備えている。
【0049】
絶縁層111〜113は、上下に重なる導体パターン同士を絶縁すると共に、導体パターンが形成される下地面の平坦性を確保する役割を果たす。絶縁層111〜113の材料としては、絶縁性に優れ加工性のよい樹脂を用いることが好ましく、ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂を用いることが好ましい。導体パターンとしては、導電性及び加工性に優れたCu、Al等を用いることが好ましい。導体パターンの形成は、全面に導体を形成した後フォトリソグラフィーを用いてエッチングするサブトラクティブ法や、メッキによって導体パターンを選択的に形成するアディティブ法などにより行うことができる。
【0050】
接着層114は、磁性基板102を絶縁層113上に貼り付けるために必要な層である。また、接着層114は、磁性基板102の表面の凹凸を緩和し、密着性を高める役割を果たす。特に限定されるものではないが、接着層114の材料としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等を用いることができる。
【0051】
絶縁層111の表面の配線層には、引き出し導体131,132が形成されている。引き出し導体131の一端は端子電極121に接続され、引き出し導体131の他端は絶縁層112,113を貫通するスルーホール導体141を介してコイルパターン135に接続されている。同様に、引き出し導体132の一端は端子電極122に接続され、引き出し導体132の他端は絶縁層112を貫通するスルーホール導体142を介してコイルパターン133に接続されている。
【0052】
絶縁層112の表面の配線層には、コイルパターン133,134が形成されている。コイルパターン133は図1に示すコイル22に相当し、コイルパターン134は図1に示すコイル32に相当する。コイルパターン133の外周端133aは、コイル22の一端22aに相当し、端子電極124に接続されるとともに、コイルパターン134の外周端134aに接続されている。コイルパターン134の外周端134aは、コイル32の一端32aに相当する。また、コイルパターン133の内周端133bは、コイル22の他端22bに相当し、スルーホール導体142及び引き出し導体132を介して端子電極122に接続されている。さらに、コイルパターン134の内周端134bはいずれの導体にも接続されておらず、開放されている。
【0053】
絶縁層113の表面の配線層には、コイルパターン135,136が形成されている。コイルパターン135は図1に示すコイル21に相当し、コイルパターン136は図1に示すコイル31に相当する。コイルパターン135の外周端135aは、コイル21の一端21aに相当し、端子電極123に接続されるとともに、コイルパターン136の外周端136aに接続されている。コイルパターン136の外周端136aは、コイル31の一端31aに相当する。また、コイルパターン135の内周端135bは、コイル21の他端21bに相当し、スルーホール導体141及び引き出し導体131を介して端子電極121に接続されている。さらに、コイルパターン136の内周端136bはいずれの導体にも接続されておらず、開放されている。
【0054】
コイルパターン133とコイルパターン135は、互いに同一の平面形状を有しており、積層方向に沿ったZ方向、つまり磁性基板101の主面101aに対して垂直なZ方向から見てほぼ完全な重なりを有している。これにより、コイルパターン133,135に電流を流すと、発生する磁界が互いに結合する。本例では、Z方向から見た場合におけるコイルパターン133の内周端から外周端への巻回方向が左回り(反時計回り)であり、Z方向から見た場合におけるコイルパターン135の内周端から外周端への巻回方向も左回り(反時計回り)である。したがって、コイルパターン133,135の内周端側又は外周端側から電流を流すと、互いに同方向に磁気結合することになる。
【0055】
特に限定されるものではないが、本例ではコイルパターン134とコイルパターン136もZ方向から見て互いに重なりを有している。これにより、コイルパターン134,136に電流を流すと、発生する磁界が互いに結合する。また、Z方向への重なりによってコイルパターン134とコイルパターン136との間に容量が生じる。本例では、Z方向から見た場合におけるコイルパターン134の外周端から内周端への巻回方向が左回り(反時計回り)であり、Z方向から見た場合におけるコイルパターン136の外周端から内周端への巻回方向も左回り(反時計回り)である。したがって、コイルパターン134,136の外周端側から電流を流すと、互いに同方向に磁気結合することになる。
【0056】
かかる構成により、本実施形態によるコモンモードノイズフィルタ100は、図3(a)に示した回路を構成することになる。したがって、コモンモード成分を除去することはもちろん、図4を用いて説明したように比較的低い周波数帯域のディファレンシャル成分を減衰することが可能となる。しかも、コイルパターン133,134が同じ配線層に形成され、コイルパターン135,136が同じ配線層に形成されていることから、絶縁層の枚数を最小限に抑えることが可能となる。さらに、コイルパターン134,136の一端がそれぞれコイルパターン133,135の対応する一端(外周端133a,135a)に接続されており、且つ、コイルパターン134,136が互いにほぼ同じ構成を有していることから、通過させたい必要なディファレンシャル成分に対する悪影響もほとんどない。
【0057】
図8は、変形例によるコモンモードノイズフィルタ150の機能層に含まれる導体パターンを抜き出して示す略透過斜視図である。
【0058】
変形例によるコモンモードノイズフィルタ150は、Z方向から見た場合におけるコイルパターン134の外周端から内周端への巻回方向が右回り(時計回り)であり、Z方向から見た場合におけるコイルパターン136の外周端から内周端への巻回方向も右回り(時計回り)である点において、上述したコモンモードノイズフィルタ100と相違している。その他の点は、上述したコモンモードノイズフィルタ100と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本例においても、コイルパターン134,136の外周端側から電流を流すと、互いに同方向に磁気結合することになり、上述したコモンモードノイズフィルタ100と同じ効果を得ることが可能となる。
【0059】
このように、コイルパターン133,135の巻回方向とコイルパターン134,136の巻回方向は、同じであっても構わないし、逆であっても構わない。
【0060】
図9は、第2の実施形態によるコモンモードノイズフィルタ200の機能層に含まれる導体パターンを抜き出して示す略透過斜視図である。
【0061】
図9に示すように、第2の実施形態によるコモンモードノイズフィルタ200は、Z方向から見た場合におけるコイルパターン134の外周端から内周端への巻回方向が右回り(時計回り)であり、Z方向から見た場合におけるコイルパターン136の外周端から内周端への巻回方向が左回り(反時計回り)である点において、上述したコモンモードノイズフィルタ100と相違している。その他の点は、上述したコモンモードノイズフィルタ100と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0062】
かかる構成により、コイルパターン134,136は逆方向に磁気結合する。したがって、本実施形態によるコモンモードノイズフィルタ200は、図3(b)に示した回路を構成することになる。これにより、コモンモード成分を除去することはもちろん、図4を用いて説明したように比較的高い周波数帯域のディファレンシャル成分を減衰することが可能となる。
【0063】
図10(a)は、第3の実施形態によるコモンモードノイズフィルタ300の機能層に含まれる導体パターンを抜き出して示す略透過斜視図であり、図10(b)は、第3の実施形態の変形例によるコモンモードノイズフィルタ350の機能層に含まれる導体パターンを抜き出して示す略透過斜視図である。
【0064】
図10(a)に示すように、第3の実施形態によるコモンモードノイズフィルタ300は、Z方向から見た場合におけるコイルパターン134の外周端から内周端への巻回方向が左回り(反時計回り)であり、Z方向から見た場合におけるコイルパターン136の外周端から内周端への巻回方向も左回り(反時計回り)である。しかしながら、コイルパターン134は、内周端134bが端子電極124に接続されており、外周端134aが開放されている。その他の点は、上述したコモンモードノイズフィルタ100と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0065】
かかる構成により、コイルパターン134,136は逆方向に磁気結合する。したがって、本実施形態によるコモンモードノイズフィルタ300は、図3(c)に示した回路を構成することになる。これにより、コモンモード成分を除去することはもちろん、図4を用いて説明したように比較的高い周波数帯域のディファレンシャル成分を減衰することが可能となる。
【0066】
図10(b)に示す変形例によるコモンモードノイズフィルタ300は、Z方向から見た場合におけるコイルパターン134の外周端から内周端への巻回方向が右回り(時計回り)であり、Z方向から見た場合におけるコイルパターン136の外周端から内周端への巻回方向も右回り(時計回り)である点において、上述したコモンモードノイズフィルタ300と相違している。その他の点は、上述したコモンモードノイズフィルタ300と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本例においても、コイルパターン134,136が逆方向に磁気結合することから、上述したコモンモードノイズフィルタ300と同じ効果を得ることが可能となる。
【0067】
図11は、第4の実施形態によるコモンモードノイズフィルタ400の機能層に含まれる導体パターンを抜き出して示す略透過斜視図である。
【0068】
図11に示すように、第4の実施形態によるコモンモードノイズフィルタ400は、Z方向から見た場合におけるコイルパターン134の外周端から内周端への巻回方向が右回り(時計回り)であり、Z方向から見た場合におけるコイルパターン136の外周端から内周端への巻回方向が左回り(反時計回り)である。しかしながら、コイルパターン134は、内周端134bが端子電極124に接続されており、外周端134aが開放されている。その他の点は、上述したコモンモードノイズフィルタ100と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0069】
かかる構成により、コイルパターン134,136は同方向に磁気結合する。したがって、本実施形態によるコモンモードノイズフィルタ400は、図3(d)に示した回路を構成することになる。これにより、コモンモード成分を除去することはもちろん、図4を用いて説明したように比較的低い周波数帯域のディファレンシャル成分を減衰することが可能となる。
【0070】
以上説明したように、コイルパターン134,136の巻回方向は任意であり、且つ、内周端及び外周端のいずれを開放するかも任意である。これらは、減衰させるべきディファレンシャルモードノイズの周波数帯域や、設計の容易さなどを考慮して、適宜選択すればよい。
【0071】
図12はコイルパターン134とコイルパターン136の重なりを説明するためのZ方向から見た透視平面図であり、(a)はこれらがほぼ完全な重なりを有している場合を示し、(b)はこれらの重なりが部分的である場合を示している。
【0072】
図12(a)に示す例では、コイルパターン134とコイルパターン136がZ方向から見てほぼ完全な重なりを有していることから、両者の容量結合及び磁気結合は比較的強くなる。これに対し、図12(b)に示す例では、コイルパターン134とコイルパターン136の形状がほぼ同一であるものの、これらの中心軸がずれているため重なりが部分的となっている。このため、図12(a)に示す例と比べて両者の容量結合及び磁気結合は弱くなる。このように、コイルパターン134,136の重なりを調整すれば、図1に示したコイル31,32間の容量結合及び磁気結合を調整することができる。また、磁気結合の度合いを大幅に変更することなく容量結合の度合いを変化させたい場合には、コイルパターン134,136を構成する導体パターンの幅を調整したり、一部に面積の広いキャパシタ電極パターンを設けることが好ましい。尚、本発明においてコイルパターン134,136が重なりを有していることは必須でなく、容量結合又は磁気結合を十分に弱くしたい場合には、重なりが生じないよう設計しても構わない。
【0073】
図13は、本発明の第5の実施形態によるコモンモードノイズフィルタ500の略分解斜視図である。
【0074】
図13に示すように、本実施形態によるコモンモードノイズフィルタ500においては、機能層510は、磁性基板101からから磁性基板102側に向かって順に積層された絶縁層511〜515と、接着層516と、絶縁層511〜515の表面に形成された各種の導体パターンとを備えている。そして、絶縁層511の表面の配線層には、引き出し導体131,132が形成され、絶縁層512〜515の表面に設けられた配線層には、それぞれコイルパターン133,135,134,136が形成されている。その他の点については図6に示したコモンモードノイズフィルタ100と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0075】
本実施形態によるコモンモードノイズフィルタ500は、回路構成としては図6に示したコモンモードノイズフィルタ100と同一であるため、コモンモードノイズフィルタ100とほぼ同じ特性が得られる。しかしながら、4つのコイルパターン133〜136がそれぞれ異なる配線層に形成されていることから、部品の平面サイズを縮小することが可能となる。
【0076】
また、図示しないが、絶縁層513と絶縁層514との間に磁性体を配置することも可能である。かかる構成によれば、コモンモードフィルタを構成するコイルパターン133,135と、ディファレンシャルモードフィルタを構成するコイルパターン134,136との間の磁気的干渉が低減されることから、コモンモードフィルタを本来の特性により近づけることが可能となる。
【0077】
図14は、本発明の第6の実施形態によるコモンモードノイズフィルタ600の回路図である。
【0078】
図14に示すように、第6の実施形態によるコモンモードノイズフィルタ600は、図3(b)に示したコイル31,32がコモンモードフィルタ20の両側に接続された構成を有している。より具体的に説明すると、本実施形態によるコモンモードノイズフィルタ600は、一対の信号ライン11,12に挿入されたコモンモードフィルタ20と、信号ライン11,12にそれぞれ接続された互いに容量結合するコイル31,32と、信号ライン11,12にそれぞれ接続された互いに容量結合するコイル33,34によって構成されている。
【0079】
コイル31,32の一端31a,32aは、それぞれコモンモードフィルタ20の一端21a,22aに接続され、コイル31,32の他端31b,32bは開放されている。一方、コイル33,34の一端33a,34aは、それぞれコモンモードフィルタ20の他端21b,22bに接続され、コイル33,34の他端33b,34bは開放されている。図13に示す例では、コイル31,32が互いに逆方向に磁気結合し、コイル33,34が互いに逆方向に磁気結合している。
【0080】
かかる構成により、所望の周波数帯域におけるディファレンシャルモードノイズをより効果的に減衰させることが可能となる。例えば、コイル31,32からなるディファレンシャルモードフィルタの特性と、コイル33,34からなるディファレンシャルモードフィルタの特性を同じとすれば、当該周波数帯域におけるディファレンシャルモードノイズをより大きく減衰させることが可能となる。また、コモンモードフィルタ20の両側に同じ特性を有するコイルが接続されているため、単一の部品に集積した場合、部品の方向性を無くすることも可能となる。これに対し、コイル31,32からなるディファレンシャルモードフィルタの特性と、コイル33,34からなるディファレンシャルモードフィルタの特性を異ならせれば、複数の周波数帯域におけるディファレンシャルモードノイズを減衰させることが可能となる。
【0081】
図15は、コモンモードノイズフィルタ600を単一の部品に集積した場合における導体パターンを抜き出して示す略透過斜視図である。
【0082】
図15に示す例では、コイルパターン133,134,137が同じ配線層に形成され、コイルパターン135,136,138が同じ配線層に形成されている。コモンモードフィルタを構成するコイルパターン133,135は略中央に形成されており、一対のコイルパターン134,136は端子電極123,134側に配置され、一対のコイルパターン137,138は端子電極121,132側に配置されている。
【0083】
図15に示すように、コイルパターン134,136,137,138は、それぞれ外周端が対応する端子電極124,123,122,121に接続されており、内周端はいずれも開放されている。また、Z方向から見た場合におけるコイルパターン134,137の外周端から内周端への巻回方向が左回り(反時計回り)である一方、コイルパターン136,138の外周端から内周端への巻回方向が右回り(時計回り)である。一対のコイルパターン134,136は、図14に示すコイル31,32に相当し、一対のコイルパターン137,138は、図14に示すコイル33,34に相当する。
【0084】
図16は、コイルパターン134とコイルパターン136の重なり、並びに、コイルパターン137とコイルパターン138の重なりを説明するためのZ方向から見た透視平面図である。
【0085】
図16に示すように、本例では、コイルパターン134とコイルパターン136がZ方向から見てほぼ完全な重なりを有していることから、両者の容量結合及び磁気結合は比較的強くなる。同様に、コイルパターン137とコイルパターン138がZ方向から見てほぼ完全な重なりを有していることから、両者の容量結合及び磁気結合は比較的強くなる。しかも、本例では、コイルパターン134,136が約3ターンであるのに対し、コイルパターン137,138が約4ターンである。また、コイルパターン134,136の外径及び内径が相対的に小さいのに対し、コイルパターン137,138の外径及び内径が相対的に大きい。これらの相違により、コイルパターン134,136の容量結合及び磁気結合と、コイルパターン137,138の容量結合及び磁気結合との間に違いが生じることから、それぞれ異なる周波数帯域におけるディファレンシャルモードノイズを減衰させることが可能となる。
【0086】
図17は、第6の実施形態の変形例によるコモンモードノイズフィルタ650の回路図である。図17に示す例では、コイル31,32とコイル33,34がコモンモードフィルタ20の片側にまとめて接続されている。このような構成によっても、図14に示したコモンモードノイズフィルタ600と同様の特性を得ることが可能となる。
【0087】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0088】
例えば、本発明においてコモンモードフィルタの構成については特に限定されず、差動信号が伝送される一対の信号線に対して互いに同方向に磁気結合するものであればその構成は問わない。同様に、容量結合する一対のコイル(ディファレンシャルモードフィルタ)の構成についても特に限定されず、それぞれ一端が対応する信号線に接続され、他端が開放されていればその構成は問わない。したがって、図6に示したような平面的なスパイラル導体を用いるのではなく、立体的な螺旋状のヘリカル導体を用いても構わない。立体的な螺旋状のヘリカル導体を用いる場合、一対のヘリカル導体を異なる配線層に形成しても構わないし、一対のヘリカル導体を同じ配線層に形成することによって二重螺旋構造としても構わない。
【0089】
また、各コイルパターンの平面形状については特に限定されず、図6に示したように略矩形状であっても構わないし、円形又は楕円形であっても構わない。
【0090】
さらに、ディファレンシャルモードフィルタを構成する一対のコイルは、互いに容量結合している限り、磁気結合していることは必須でない。磁気結合の有無、磁気結合の度合い並びに磁気結合の方向は、減衰させるべきディファレンシャルモードノイズの周波数帯域によって調整すればよい。
【符号の説明】
【0091】
11,12 信号ライン
20 コモンモードフィルタ
21,22,31,32 コイル
30,40 部品
100,150,200,300,400,500,600,650 コモンモードノイズフィルタ
101,102 磁性基板
101a 主面
110,510 機能層
111〜113,511〜515 絶縁層
121〜124 端子電極
133〜138 コイルパターン
114〜516 接着層
121〜124 端子電極
131,132 引き出し導体
141,142 スルーホール導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の信号ラインに挿入されたコモンモードフィルタと、
互いに容量結合する一対のコイルであって、一端がそれぞれ対応する前記信号ラインに接続され、他端がいずれも開放された一対のコイルと、を備えることを特徴とするコモンモードノイズフィルタ。
【請求項2】
前記一対のコイルが同一の部品内に形成され、且つ、前記コモンモードフィルタと前記一対のコイルが互いに異なる部品内に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項3】
前記コモンモードフィルタと前記一対のコイルが同一の部品内に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項4】
基板と、
前記基板上に設けられ、互いに磁気結合する第1及び第2のコイルと、
前記基板上に設けられ、互いに容量結合する第3及び第4のコイルと、を備え、
前記第3のコイルは、一端が前記第1のコイルの一端に接続され、他端が開放されており、
前記第4のコイルは、一端が前記第1のコイルの前記一端と対を成す前記第2のコイルの一端に接続され、他端が開放されていることを特徴とするコモンモードノイズフィルタ。
【請求項5】
前記第3及び第4のコイルが互いに磁気結合していることを特徴とする請求項4に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項6】
一方向から見た場合における前記第3のコイルの前記一端から他端への巻回方向と、前記一方向から見た場合における前記第4のコイルの前記一端から他端への巻回方向とが互いに同じであることを特徴とする請求項5に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項7】
一方向から見た場合における前記第3のコイルの前記一端から他端への巻回方向と、前記一方向から見た場合における前記第4のコイルの前記一端から他端への巻回方向とが互いに逆であることを特徴とする請求項5に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項8】
前記第3及び第4のコイルの前記一端は内周端及び外周端の一方であり、前記第3及び第4のコイルの前記他端は内周端及び外周端の他方であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項9】
前記第3のコイルの前記一端及び前記第4のコイルの前記他端は内周端及び外周端の一方であり、前記第3のコイルの前記他端及び前記第4のコイルの前記一端は内周端及び外周端の他方であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項10】
前記第3及び第4のコイルは、前記基板の主面に対して垂直な方向から見て互いに重なりを有していることを特徴とする請求項4乃至9のいずれか一項に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項11】
前記第1及び第3のコイルは前記基板上に設けられた第1の配線層に形成されており、前記第2及び第4のコイルは前記基板上に設けられた第2の配線層に形成されていることを特徴とする請求項4乃至10のいずれか一項に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項12】
前記第1乃至第4のコイルは、前記基板上に設けられた第1乃至第4の配線層にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項4乃至10のいずれか一項に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項13】
前記基板上に設けられ、互いに容量結合する第5及び第6のコイルをさらに備え、
前記第5のコイルは、一端が前記第1のコイルの前記一端又は他端に接続され、他端が開放されており、
前記第6のコイルは、一端が前記第2のコイルの前記一端又は他端に接続され、他端が開放されていることを特徴とする請求項4乃至12のいずれか一項に記載のコモンモードノイズフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−249876(P2011−249876A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117694(P2010−117694)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】