説明

コラーゲンとヒアルロン酸の産生促進剤

【課題】コラーゲン産生促進作用または/およびヒアルロン酸産生促進作用を有する剤(コラーゲン/ヒアルロン酸産生促進剤)、ならびにコラーゲン産生促進作用または/およびヒアルロン酸産生促進作用を有する皮膚外用剤ないし食品を提供する。
【解決手段】コラーゲン産生促進剤または/およびヒアルロン酸産生促進剤の有効成分として、花粉、花粉荷およびそれらの抽出物からなる群から選択される少なくとも1種を用いる。また皮膚外用剤、およびコラーゲン及び/又はヒアルロン酸産生促進用食品の有効成分として、上記産生抑制剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲンおよび/またはヒアルロン酸の産生促進剤に関する。さらに本発明は当該産生抑制剤を含む皮膚外用剤、および食品に関する。
【背景技術】
【0002】
スギ、ブタクサなどの種々の花粉は花粉症の原因となるため、現在では花粉はアレルゲンとして認識されている。また、花粉が免疫系を刺激することから、花粉の免疫系に対する薬理作用も研究されている。
【0003】
特許文献1には、花粉を乳酸菌、ビフィズス菌、または酵母などにより発酵させた培養物が皮膚の再生作用、抗しわ作用などを有し、医薬品、化粧品に配合されることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、ナタネ由来の花粉から油体が得られ得ることが記載されている。
【0005】
花粉の栄養価は高く、直接あるいは糖でくるんで栄養食品として利用することが知られている(非特許文献1)。
【0006】
特許文献3には、チモシイ、トウモロコシ、ヘーゼル、ライムギ、ネコヤナギ、ハコヤナギ、フランスギクまたはマツの花粉を原料とする花粉エキスソフトカプセルが開示されており、当該カプセルは、前立腺炎や前立腺肥大症に対する抑制効果を有することが記載されている。
【特許文献1】特表2001−504510号公報
【特許文献2】特表2002−503268号公報
【特許文献3】特開平9−278665号公報
【非特許文献1】「ミツバチ科学」7(1):9-12 Honeybee Science (1986)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、花粉、花粉荷またはこれらの抽出物について新たに見出された生理活性に基づいて、これらの新規用途を提供することを目的とする。特に、コラーゲンまたは/およびヒアルロン酸の産生促進剤としての用途、並びに当該産生促進剤を含む化粧料ないし食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、花粉、花粉荷またはこれら抽出物の生理活性作用について検討した結果、シスタス、茶、ナタネ、およびソバの花粉荷の抽出物、特に水やアルコールなどの極性溶媒の抽出物に、強力なコラーゲン産生促進作用またはヒアルロン酸産生促進作用があることを見出した。
【0009】
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものであり、以下のコラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、皮膚外用剤、および食品を提供するものである。
【0010】
I.コラーゲンまたは/およびヒアルロン酸の産生促進剤
(I-1)花粉、花粉荷およびそれらの抽出物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、コラーゲンまたはヒアルロン酸の少なくとも一方の産生促進剤。
(I-2)上記花粉または花粉荷が、アブラナ科、タデ科、ツバキ科、およびハンニチバナ科からなる群から選ばれる少なくとも1種の科に属する植物に由来するものである、(I-1)に記載する産生促進剤。
(I-3)前記植物が、シスタス、茶、ナタネ、およびソバからなる群から選ばれる少なくとも1種である、(I-2)に記載する産生促進剤。
(I-4)上記抽出物が、シスタス、茶、ナタネ、およびソバからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物の花粉または花粉荷の水、エタノールまたはこれらの混合物の抽出物である、(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する産生促進剤。
(I-5)シスタス、茶、およびナタネからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物の花粉もしくは花粉荷、またはこれらいずれかの抽出物を含む、コラーゲン産生促進剤。
(I-6)ナタネおよびソバからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物の花粉もしくは花粉荷、またはこれらいずれかの抽出物を含む、ヒアルロン酸産生促進剤。
【0011】
II.皮膚外用剤
(II-1)上記(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載する産生抑制剤を配合してなる皮膚外用剤。
【0012】
なお当該皮膚外用剤は下記のように言い換えることもできる。
(II-a)花粉、花粉荷およびそれらの抽出物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、皮膚外用剤。
(II-b)上記花粉または花粉荷が、アブラナ科、タデ科、ツバキ科、およびハンニチバナ科からなる群から選ばれる少なくとも1種の科に属する植物に由来するものである、(I-a)に記載する皮膚外用剤。
(II-c)前記植物が、シスタス、茶、ナタネ、およびソバからなる群から選ばれる少なくとも1種である、(II-b)に記載する皮膚外用剤。
(II-d)上記抽出物が、シスタス、茶、ナタネ、およびソバからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物の花粉または花粉荷の水、エタノールまたはこれらの混合物の抽出物である、(II-a)乃至(II-c)のいずれかに記載する皮膚外用剤。
【0013】
III.食品
(III-1)上記(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載する産生抑制剤を配合してなる食品。
【0014】
なお当該食品は下記のように言い換えることもできる。
(III-a)花粉、花粉荷およびそれらの抽出物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、食品。
(III-b)上記花粉または花粉荷が、アブラナ科、タデ科、ツバキ科、およびハンニチバナ科からなる群から選ばれる少なくとも1種の科に属する植物に由来するものである、(III-a)に記載する食品。
(III-c)前記植物が、シスタス、茶、ナタネ、およびソバからなる群から選ばれる少なくとも1種である、(III-b)に記載する食品。
(III-d)上記抽出物が、シスタス、茶、ナタネ、およびソバからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物の花粉または花粉荷の水、エタノールまたはこれらの混合物の抽出物である、(III-a)乃至(III-c)のいずれかに記載する食品。
【0015】
これらの食品はいずれも専らコラーゲンまたはヒアルロン酸の少なくとも一方の産生を促進するために使用される点で、通常の食品と区別することができる。特にナタネなどアブラナ科に属する植物の花粉、花粉荷およびそれらの抽出物からなる群から選択される少なくとも1種を含む食品は、コラーゲンおよびヒアルロン酸の両方の産生を促進するために使用される点で、通常の食品と区別することができる。
【発明の効果】
【0016】
花粉、花粉荷またはこれらの抽出物は、後述する試験例で示すように、コラーゲンとヒアルロン酸の産生を向上させるため、肌にはりと潤いを与え、保湿、美肌、抗老化(しわなどの改善)、美白(くすみの改善)などの作用を有し、皮膚外用剤(特に化粧料)、および食品の素材として有用であることが明らかになった。特にナタネの花粉荷の水抽出物は、コラーゲンとヒアルロン酸の産生をともに強力に促進するため、皮膚外用剤(特に化粧料)の有効成分として、或いは食品素材として極めて優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(I)コラーゲンまたは/およびヒアルロン酸の産生促進剤
本発明のコラーゲンまたは/およびヒアルロン酸の産生促進剤は、花粉、花粉荷またはこれらの抽出物を有効成分とすることを特徴とする。
【0018】
ここで花粉荷は、ミツバチが花粉を蜜で固めたものであり、別名花粉だんごとも称される。当該花粉荷は蜂蜜とともに巣の中に蓄えられる。この花粉荷は容易に回収することができる。
【0019】
本発明では、花粉と花粉荷のいずれを使用してもよいが、上記の点で入手が容易であるという理由から、花粉荷が好ましく使用される。なお、花粉と花粉荷は、各々単独で使用することもできるが、両者を混合して使用することもできる。
【0020】
本発明の花粉または/および花粉荷(以下、単に「花粉/花粉荷」と記載する。)の供給源として、好適な植物の科名、属・種名、和名(呼称)を以下の表1〜表3に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【0024】
本発明で用いる花粉/花粉荷が由来する好ましい植物としては、アブラナ科、タデ科、ツバキ科、およびハンニチバナ科を挙げることができる。具体的には、アブラナ科植物としては、アラセイトウ、ナタネ、およびハナダイコンが好ましく例示され、特にナタネが好ましい。タデ科植物としては、ソバが好ましく例示される。ツバキ科植物としては、サザンカ、チャ、ナツツバキ、およびヤブツバキが好ましく例示され、特にチャが好ましい。ハンニチバナ科植物としては、シスタスが好ましく例示される。
【0025】
なお、コラーゲン産生促進剤の有効成分としては、ハンニチバナ科植物であるシスタス、ツバキ科植物であるチャ、およびアブラナ科植物であるナタネを好適に挙げることができる。またヒアルロン酸産生促進剤の有効成分としては、アブラナ科植物であるナタネ、およびタデ科植物であるソバを好適に挙げることができる。
【0026】
花粉/花粉荷はそのままの形態で使用することもできるが、適当な溶媒で調製されてなる抽出物の形態で使用することもできる。
【0027】
ここで花粉/花粉荷の抽出は、水、含水溶媒、有機溶媒などの溶媒により行うことができる。具体的には、水、低級アルコール(メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチルなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなど)、芳香族炭化水素(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルムなど)、グリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール)、グリコールエーテル類(メチルセロソルブ、1,2−ジメトキシエタンなど)、グリセリン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸、プロピオン酸、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドを挙げることができる。また抽出溶媒はこれらを1種で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて混合液として用いることもできる。混合液として好ましくは、含水有機溶媒、特に含水エタノール、含水メタノール、および含水プロパノールなどの含水アルコールを挙げることができる。抽出溶媒として、好ましくは水、エタノール、またはこれらの混合液(含水エタノール)である。
【0028】
抽出は、溶媒に花粉/花粉荷を加え、0℃から溶媒の沸騰する温度、通常100℃以下の温度で、30分から24時間程度浸漬抽出し、不溶物を除去することにより、容易に行うことができる。
【0029】
本発明において上記花粉/花粉荷の抽出液は、そのままでもコラーゲン産生促進剤または/およびヒアルロン酸産生促進剤として使用することができるが、必要に応じて抽出液を濃縮して得られる液(濃縮液)、もしくは抽出液の凍結乾燥物やスプレードライ物などの乾燥品を使用することもできる。
【0030】
斯くして得られる抽出物は、色、味ないし臭いを除去するために、必要に応じて脱色、マスキング、あるいは脱臭などの処理を行ってもよい。このような処理としては、活性炭などによる吸着処理、カラムクロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーなどによる精製処理が挙げられる。
【0031】
各種植物(表1〜3)の花粉荷の抽出物の中でも、ハンニチバナ科植物であるシスタスの花粉荷の抽出物(好ましくは水またはエタノール抽出物)、ツバキ科植物であるチャの花粉荷の抽出物(好ましくは水またはエタノール抽出物)、およびアブラナ科植物であるナタネの花粉荷の抽出物(好ましくは水抽出物)は、優れたコラーゲン産生促進作用を備えており、コラーゲン産生促進剤の有効成分として好適に用いることができる。
【0032】
また各種植物(表1〜3)の花粉荷の抽出物の中でも、アブラナ科植物であるナタネの花粉荷の抽出物(好ましくは水抽出物)、およびタデ科植物であるソバの花粉荷の抽出物(好ましくはエタノール抽出物)は、優れたヒアルロン酸産生促進作用を備えており、ヒアルロン酸産生促進剤の有効成分として好適に用いることができる。
【0033】
本発明のコラーゲン産生促進剤または/およびヒアルロン酸産生促進剤において、花粉/花粉荷またはそれらの抽出物の配合量は、乾燥物として、0.0001〜100重量%、好ましくは0.001〜50重量%、より好ましくは0.01〜25重量%を挙げることができる。
【0034】
本発明のコラーゲン産生促進剤または/およびヒアルロン酸産生促進剤は、化粧品の添加剤として、あるいは、コラーゲンまたは/およびヒアルロン酸の産生促進作用を有し、美容用ないし関節炎や歯肉炎、リウマチなどの症状を軽減できる医療用または機能性の食品として好ましく使用できる。
【0035】
ところで本発明が対象とするヒアルロン酸は、真皮繊維芽細胞の膜に存在するヒアルロン酸合成酵素(HAS)によって合成される酸性ムコ多糖である(Y. Sugiyama ら J. Invest. Dermatol., 110, 116(1998))。ヒアルロン酸は細胞間隙への水分の保持、組織内にゼリー状のマトリックスを形成することに基づく細胞の保持、組織の潤滑性と柔軟性の保持に寄与している(BIOINDUSTRY, Vol8, 346(1991))。ヒアルロン酸は加齢に伴い減少(K. Matsuokaら Aging, 1, 47(1989))、あるいは変性することが報告されており(L.A.M.Meyer ら J. Invest. Dermatol., 102, 385(1994))、このような変化が肌の乾燥、シワ、たるみなどを引き起こす一因となっている。
【0036】
また本発明が対象とするコラーゲンは、真皮マトリックスを構成する重要な成分である。コラーゲン分子は繊維芽細胞で合成され細胞外に分泌された後、規則的に架橋して結合組織の硬度を維持し、肌のハリや弾力性に寄与している。長年、肌が紫外線に暴露されることにより真皮上層のコラーゲンが減少することが報告されている(L.H.Kligmanら J. Invest. Dermatol., 84, 272 (1985))。また、紫外線暴露により真皮のコラーゲン繊維が変性することも報告されている(Y.Nishimoriら Abstract, 20th IFSCC Congress Cannus, 1, 117(1998))」。
【0037】
(2)皮膚外用剤、好ましくは化粧料
本発明のコラーゲン産生促進剤または/およびヒアルロン酸産生促進剤を含む皮膚外用剤は、当該コラーゲン産生促進剤のコラーゲン産生促進作用または/およびヒアルロン酸産生促進剤のヒアルロン酸産生促進作用に基づいて、それぞれ、ヒトの肌に対してすぐれたコラーゲン産生促進作用または/およびヒアルロン酸産生促進作用を有するものであるので、肌にはりと潤いを与え、肌の老化を防ぎ、シワをなくし若しくは軽減し、肌をみずみずしくしてシミやくすみを目立たなくし、美肌効果を有し、健康な肌を維持できる。このため、当該皮膚外用剤は、特に美白化粧料、抗老化化粧料、美肌化粧料、またはスキンケア化粧料などの化粧料として有用である。ゆえに、本発明でいう皮膚外用剤には、これらの化粧料としての用途が含まれる。
【0038】
当該皮膚外用剤における花粉/花粉荷またはそれらの抽出物の配合量は、皮膚外用剤全量中、乾燥物として0.0005〜20重量%、好ましくは0.001〜10重量%である。0.0005重量%を大きく下回ると、本発明の効果が十分に発揮されない傾向があり、20重量%を大きく超えると製剤化が難しくなる傾向がある。また、花粉/花粉荷またはそれらの抽出物は0.01〜1重量%程度の濃度に調製して肌に適用するのが特に好ましい。
【0039】
本発明の皮膚外用剤には、花粉/花粉荷あるいはこれらの抽出物以外に、通常皮膚外用剤、特に化粧品に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0040】
本発明の皮膚外用剤の剤型は、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水−油2層系、および水−油−粉末3層系等、幅広い剤型を採り得る。例えば皮膚外用剤が基礎化粧品である場合、その形態として、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、エッセンス、美容液、パック、マスク等が挙げられる。また、皮膚外用剤がメークアップ化粧品であれば、その形態として、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラなどが挙げられる。その他の形態として、洗顔料、マッサージ用剤、クレンジング用剤、アフターシェーブローション、プレシェーブローション、シェービングクリーム、ボディソープ、石けん、シャンプー、リンス、ヘアートリートメント、整髪料、ヘアートニック剤、育毛剤、制汗剤、衛生用品等が挙げられる。
【0041】
(3)食品
本発明の食品は、(1)に記載するコラーゲン産生促進作用または/およびヒアルロン酸産生促進作用を有する花粉/花粉荷あるいはこれらの抽出物を、コラーゲン産生促進剤または/およびヒアルロン酸産生促進剤として配合することを特徴とする。このため、本発明の食品には、これらの作用にもとづいて、美白、美肌、保湿、抗老化などを目的とした美容用飲食品、あるいは、関節や歯肉などのコラーゲン/ヒアルロン酸の低下により機能低下する疾患(例えば関節炎、歯肉炎、歯槽膿漏、リウマチなど)の症状を軽減する目的で使用される食品が含まれる。
【0042】
当該食品には、具体的には、ドリンク類、飲料類(清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料、酒類等)、スプレッド、ペースト、洋菓子、和菓子、氷菓、レトルト食品、即席食品、瓶詰・缶詰、ゼリー状食品、調味料、ブイヨン、養蜂産品(はちみつ、ローヤルゼリー、プロポリスなど)、乳製品、加工果実、加工野菜、穀類加工食品、漬物、漬物の素、魚肉製品、畜肉製品、珍味、乾物、惣菜類、冷凍食品、油脂食品等を挙げることができる。また、本発明の食品は、(1)に記載する花粉/花粉荷あるいはこれらの抽出物をコラーゲン産生促進剤または/およびヒアルロン酸産生促進剤として添加・配合して調製しうる、いわゆる健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、特定保健用食品、病者用食品・病者用組合せ食品(厚生労働省、特別用途食品の一種)又は高齢者用食品(厚生労働省、特別用途食品 の一種)の形態としてもよく、その場合であれば、素錠、フィルムコート錠、糖衣錠、顆粒、粉末、タブレット、カプセル(ハードカプセルとソフトカプセルとのいずれも含む。)、チュアブルタイプ、シロップタイプ、ドリンクタイプ等とすることもできる。本発明に係る花粉/花粉荷あるいはこれらの抽出物をコラーゲン産生促進剤または/およびヒアルロン酸産生促進剤として添加・配合した食品の調製は、それ自体公知の方法で行うことができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例、試験例、および処方例により詳細に説明するが、これらの実施例等によって本発明は何ら限定されるものではない。
【0044】
実施例1:花粉荷のエタノール抽出物の調製
花粉荷(シスタス、茶、ナタネ、ソバ)の各10gにエタノール30mlを加え乳鉢で練りこみ、別の容器に移して室温で、16〜20時間振とう混和した。これを回転数1500rpmで5分間遠心分離し、上清と沈殿物を得た。得られた沈殿物に2倍量のエタノールを加え、再度乳鉢で練りこみ、別容器に移して室温で2時間振とう混和した。これを回転数1500rpmで5分間遠心分離し、上清を得た。これを先に得られた上清と合わせて、ロータリーエバポレーター(EYELA製)で濃縮して、各植物(シスタス、茶、ナタネ、ソバ)の花粉荷のエタノール抽出物を得た。
【0045】
実施例2::花粉荷の水抽出物の調製
実施例1のエタノール抽出で得られた最終沈殿物に3倍量の水を加えて、すりつぶし、室温で16〜20時間振とうした。次に、これを回転数2000rpmで10分間遠心分離し、得られた上清を凍結乾燥した。これを各植物(シスタス、茶、ナタネ、ソバ)の花粉荷の水抽出物として、下記の試験例に使用した。
【0046】
試験例
実施例1および2で得られた抽出物のうち、実験に十分な量の抽出物が得られたシスタス花粉荷の水抽出物およびエタノール抽出物、茶花粉荷の水抽出物およびエタノール抽出物、並びにナタネ花粉荷の水抽出物についてコラーゲン産生促進試験を、またナタネ花粉荷の水抽出物とソバ花粉荷のエタノール抽出物についてヒアルロン酸産生促進試験を行った。
【0047】
試験例1 コラーゲン産生促進試験
ヒト正常線維芽細胞樹立株WI-38細胞を10%FCS(ウシ胎児血清)含有RPMI-1640培地で、1×105細胞/mlに調整し(細胞懸濁液)、1ウェル当たり細胞懸濁液100μlを加えた。次いで、このプレートを37℃で終夜、5%CO2-95%空気中で培養し、RPMI-1640培地150μlとPBS(-)40μlの混合物で培地交換し、実施例1および2で調製した花粉荷の各抽出物を各ウェルに添加し、37℃で48時間、5%CO2-95%空気中で培養した。次いで得られた培養物を1500rpmで15分間遠心分離し、上清を得た。
【0048】
(1) 測定用試料の調整:
(1-1)培養上清中のコラーゲンのペプシン処理
(i)150mM酢酸水溶液(関東化学(株)製)に0.6mg/mLとなるようにペプシン(ミクニ化学産業(株)製)を溶解する。
(ii)培養細胞上清0.2mLに0.1mLの上記ペプシン溶液を加え、転倒混和により十分撹拌する。
(iii)4℃で一晩放置する。
(iv)中和のため0.1mLの200mM Trisおよび150mM NaClを含む水溶液を加え、転倒混和により十分撹拌し、これを測定用コラーゲン液とする。
【0049】
(1-2) 細胞外マトリクスとして沈着したコラーゲンのペプシン処理
(i)50mM酢酸水溶液(関東化学(株)製)に0.1mg/mLとなるようにペプシン(ミクニ化学産業(株)製)を溶解する。
(ii)シャーレから培養液を除いた後、ミクロセルスクレイパーで細胞を剥がし、培養液と等量のペプシン溶液をシャーレに加える。
(iii)4℃で一晩振とうする。
(iv)10000×gで10分間遠心分離し、上清を回収する。
(v)加えたペプシン溶液の3分の1の量の200mM Trisおよび150mM NaClを含む水溶液を加え、転倒混和により十分撹拌し、これを測定用コラーゲン液とする。
【0050】
(1-3)測定用試料の調整
上記(1-1)および(1-2)で調製した測定用コラーゲン液を混和し測定試料とした。
【0051】
(2) 測定
上記の方法で調整した測定試料を対象として、コラーゲン産生促進率をヒトコラーゲンタイプ1ELISAキット(ACBio社製)を用いて測定した。測定方法は、キットの使用説明書に従った。結果を表4に示す。
【0052】
なお、コラーゲン産生促進率(増加率)は、花粉荷の各抽出物の代わりに水を10μg添加した場合のコラーゲン量を100%として算出した。
【0053】
【表4】

【0054】
試験例2: ヒアルロン酸産生促進試験
ヒト正常線維芽細胞樹立株WI-38細胞を10%FCS(ウシ胎児血清)含有RPMI-1640培地で、1×105細胞/mlに調整し(細胞懸濁液)、1ウェル当たり細胞懸濁液100μlを加えた。次いで、このプレートを37℃で終夜、5%CO2-95%空気中で培養し、RPMI-1640培地150μlとPBS(-)40μlの混合物で培地交換し、実施例1および2で得られた花粉荷抽出物を各ウェルに添加し、37℃で48時間、5%CO2-95%空気中で培養した。次いで、得られた培養物を1500rpmで15分間遠心分離し、上清を得た。得られた上清中のヒアルロン酸量を市販のヒアルロン酸測定キット(Hyaluronan Assay Kit:生化学工業(株)製)を用いて測定した。
【0055】
ヒアルロン酸産生促進率(増加率)は、花粉荷の各抽出物の代わりに水を10μl添加した場合のヒアルロン酸量を100%として算出した。結果を表5に示す。
【0056】
【表5】

【0057】
上記の結果から、本発明が対象とする花粉荷抽出物は、優れたコラーゲン産生促進作用またはヒアルロン酸産生促進作用を有することが明らかになった。特にナタネ花粉荷水抽出物は、コラーゲン産生促進作用とヒアルロン酸産生促進作用がともに強く、美肌作用、抗老化作用、美白作用、保湿作用などの各作用を有する化粧料、ならびに食品素材として有用であることが明らかになった。
【0058】
処方例1:化粧水
以下の表6に示す各成分を用い、常法に従い化粧水を製造した。
【0059】
【表6】

【0060】
処方例2:美容液
以下の表7に示す各成分を用いて、常法に従い美容液を製造した。
【0061】
【表7】

【0062】
処方例3:乳液
以下の表8に示される各成分を用い、常法に従い乳液を製造した。
【0063】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
花粉、花粉荷およびそれらの抽出物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、コラーゲンまたはヒアルロン酸の少なくとも一方の産生促進剤。
【請求項2】
上記花粉または花粉荷が、アブラナ科、タデ科、ツバキ科、およびハンニチバナ科からなる群から選ばれる少なくとも1種の科に属する植物に由来するものである、請求項1に記載する産生促進剤。
【請求項3】
前記植物が、シスタス、茶、ナタネ、およびソバからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載する産生促進剤。
【請求項4】
上記抽出物が、シスタス、茶、ナタネ、およびソバからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物の花粉または花粉荷の水、エタノールまたはこれらの混合物の抽出物である、請求項1に記載する産生促進剤。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載する産生抑制剤を配合してなる皮膚外用剤。
【請求項6】
請求項4に記載する産生抑制剤を配合してなる食品。
【請求項7】
コラーゲンまたはヒアルロン酸の少なくとも一方の産生を促進する機能食品である、請求項6に記載する食品。


【公開番号】特開2008−133270(P2008−133270A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281902(P2007−281902)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(598162665)株式会社山田養蜂場本社 (32)
【Fターム(参考)】