説明

コロイド結晶の製造方法及びコロイド結晶

【課題】大型で、格子欠陥や不均一性の少ない単結晶を容易かつ安価に製造することができる、コロイド結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】所定の温度においてコロイド結晶が析出するコロイド分散液を用意して容器に収容する(準備工程)。そして、容器に収容したコロイド分散液の全体を該コロイド結晶が析出しない温度に設定する(温度設定工程)。さらに、コロイド結晶が析出しない温度に設定されたコロイド分散液に対し、局所的に該コロイド結晶が析出する温度に設定する(結晶開始工程)。最後に、コロイド結晶が析出する温度に設定された範囲を徐々に拡大させて、コロイド結晶を成長させる(結晶成長工程)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロイドの技術分野に属し、さらに詳しくは、温度変化により結晶化するコロイド分散液を利用したコロイド結晶の製造方法及びそれを用いて製造されたコロイド結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
コロイドとは、数nmから数μmの大きさを有するコロイド粒子が媒質中に分散している状態をいい、塗料や医薬品の分野等で幅広い産業的用途を持つ。
【0003】
適切な条件を選ぶと、コロイド粒子はコロイド分散液中で規則正しく配列し、“コロイド結晶“と呼ばれる構造を形成する。このコロイド結晶には2つのタイプが存在する。第一は、粒子間に特別な相互作用が無いコロイド系(剛体球系)において、粒子体積分率が約0.5(濃度=50体積%)以上の条件で形成される結晶である。これは、巨視的な球を限られた空間に詰め込んでいくと、規則配列する現象に似ている。第二は、荷電したコロイド粒子の分散系(荷電コロイド系)において、粒子間に働く静電相互作用により形成される結晶構造である。例えば、表面に解離基を持つ高分子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなど)製の粒子やシリカ粒子(SiO2)を、水などの極性媒体に分散したコロイド系で結晶が形成される。静電相互作用は長距離におよぶため、粒子濃度の低い(粒子間の距離の長い)、粒子体積分率が約0.001程度でも結晶が生成し得る。
【0004】
コロイド結晶は、通常の結晶と同様に、電磁波をBragg回折する。その回折波長は、実験条件(粒子濃度と粒径)を選ぶことで可視光領域に設定できる。このため、フォトニック材料をはじめとする光学素子などへの応用展開が、国の内外で現在盛んに検討されている。現在、光学材料製造法の主流は、多層薄膜法およびリソグラフィー法である。いずれの手法も周期精度に優れるが、前者では1次元、後者では1または2次元周期構造しか得られない。微粒子の堆積によって得られる3次元結晶構造(オパール構造)では、粒径の揃った粒子を用いると、面間隔の均一性は良好となる。しかし単結晶性の良い領域は10周期程度に限られ、マクロな3次元構造(すなわち大きなコロイド単結晶)の構築は微粒子の堆積法では困難である。
【0005】
通常、コロイド結晶は1mm角程度の微結晶が集合した多結晶体として得られるが、光学素子として利用する場合には、cmオーダーの単結晶が必要とされることも多い。また、コロイド結晶には通常、さまざまな格子欠陥や不均一性が存在し、このことが光学素子としての利用を阻むこともある。以上のことから、(1)高品質(すなわち格子欠陥や不均一性ができるだけ存在しないこと)であって、(2)大きな単結晶を製造することができる、コロイド結晶の製造方法の確立が求められている。
【0006】
荷電コロイド系由来のコロイド結晶の生成を制御する手法としては、これまでに、イオン性高分子ラテックス/水分散系に対して、0.1mm程度のギャップを持つ平行平板間において、荷電コロイド多結晶のせん断配向により単結晶を得る手法(非特許文献1)や、電場を付与して結晶化する方法(非特許文献2)が報告されている。しかし、これらの方法では、前者の場合、せん断場印加のために特殊な装置が必要とされること、また後者については、電極反応により不純物イオンが生じ、これが結晶化を妨げること、等の難点がある。この他に、荷電コロイド結晶を高分子ゲルで固化し、温度変化によるゲルの体積変化を利用して結晶面間隔を制御した報告(非特許文献3)があるが、煩雑な工程が必要であり、また、無秩序な粒子配列状態からの結晶の生成は試みられていない。
【0007】
また、発明者らは、荷電コロイド分散系に特定の電離物質を共存させ、温度変化によりコロイド結晶を形成させるという、コロイド結晶の製造方法を開発している(特許文献1)。この方法によれば、各種の荷電コロイド系から、特殊な装置や複雑な工程を必要とせずに比較的簡単にコロイド結晶を製造することができる。しかし、この方法では1cmを超えるような大型の単結晶を製造することは困難である。
【0008】
大型の単結晶を得ることのできるコロイド結晶の製造方法として、さらに発明者らは、pHとともに電荷数が増加して結晶化するシリカコロイド粒子/水系を用い、試料の一端から塩基を拡散させる新規手法により、長さ数cmに達する柱状結晶や、1辺が約1cmの立方体状結晶という世界最大級のコロイド結晶の製造に成功している(非特許文献4、特許文献2)。しかし、この方法は、結晶成長に極めて時間がかかるという欠点がある。また、分光測定により、これら大型結晶の格子面間隔には、大域的な不均一(傾斜およびゆらぎ)が存在することが明らかになった。これは拡散現象に本質的な、塩基濃度の時間・空間的な不均一性、および拡散の乱れ等に起因すると思われる。時間とともに面間隔の不均一性は減少するものの、塩基濃度がほぼ一様になっても、面間隔には10%程度の分布が存在する。このため、光学素子として用途が制限される。
【0009】
以上のように、従来のコロイド結晶の製造方法では、「高品質であるが、小型」あるいは「大型であるが、低品質」のコロイド単結晶は得られるが、「大型かつ高品質」の単結晶を得る方法は、今日まで知られていない。
【非特許文献1】B. J.Ackerson and N. A. Clark, Phys. Rev. A 30, 906, (1984)
【非特許文献2】T.Palberg, W. Moench, J. Schwarz and P. Leiderer, J. Chem. Phys. 102, 5082,(1995)
【非特許文献3】J. M. Weissman,H. B. Sunkara, A. S. Tse and S. A. Asher, Science, 274, 959, (1996)
【非特許文献4】N.Wakabayashi, J. Yamanaka, M. Murai, K. Ito, T.Sawada, and M.Yonese Langmuir,22,7936-7941,(2006)
【特許文献1】特開平11−319539号公報
【特許文献2】特開2004−89996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、大型で、格子欠陥や不均一性の少ない単結晶を容易かつ安価に製造することができる、コロイド結晶の製造方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、上記従来の問題点を解決すべく、非特許文献1に記載のコロイド結晶の製造方法について、金属や半導体の単結晶製造に用いられているブリッジマン法の手法を応用することを考えた。そして、鋭意研究を行った結果、cmオーダーの大きさで、しかも格子欠陥や不均一性も極めて少ないという、巨大でしかも高品質なコロイド結晶の製造に成功し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明のコロイド結晶の製造方法は、
所定の温度においてコロイド結晶が析出するコロイド分散液を用意して容器に収容する準備工程と、
該容器に収容したコロイド分散液の全体を該コロイド結晶が析出しない温度に設定する温度設定工程と、
該コロイド結晶が析出しない温度に設定されたコロイド分散液に対し、局所的に該コロイド結晶が析出する温度に設定する結晶開始工程と、
該コロイド結晶が析出する温度に設定された範囲を徐々に拡大させて、コロイド結晶を成長させる結晶成長工程と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明のコロイド結晶の製造方法では、まず所定の温度においてコロイド結晶が析出するコロイド分散液を用意し、このコロイド分散液の全体をコロイド結晶が析出しない温度に設定する。そして、コロイド結晶が析出しない温度に設定されたコロイド分散液に対して、局所的にコロイド結晶が析出する温度に設定し、その局所部分においてコロイド結晶を析出させる。さらに、コロイド結晶が析出する温度に設定された範囲を徐々に拡大することにより、コロイド結晶を徐々に成長させる。この手法は、金属や半導体の単結晶を得るためのブリッジマン法と類似したものである。発明者らの試験結果によれば、こうして得られたコロイド結晶は、極めて大きな単結晶となり、しかも格子欠陥や不均一性も少ないものとなった。
【0014】
コロイド結晶が析出する温度に設定された範囲を徐々に拡大する方法としては、コロイド分散液を入れた容器の一端側をコロイド結晶の析出温度に設定した後、熱伝導によって徐々にその温度の範囲を拡大していく方法や、コロイド分散液を入れた容器の一端側をコロイド結晶の析出温度に設定した後、コロイド結晶の析出温度に設定された電気炉の中に徐々に入れていく方法、等が挙げられる。後者の方法では、結晶成長の速度を制御できるというメリットがある。
その他、様々な熱伝導率を持つ素材をセル周囲に配置することにより、一定方向に熱伝導率の傾斜を形成させ、周囲から加熱あるいは冷却することにより、コロイド結晶が析出する温度に設定された範囲を徐々に拡大することもできる。また、赤外線炉や赤外線照射ランプを移動させたり、ホットプレートの温度を制御すること等によって、コロイド結晶が析出する温度に設定された範囲を徐々に拡大してもよい。
【0015】
コロイド分散液は略平行に対面する2つの壁の間に充填されていることが好ましい。こうであれば、コロイド分散液の自由な対流が起こり難くなるため、コロイド結晶の成長が乱され難くなるため、さらに大型で、格子欠陥や不均一性の少ない単結晶を製造することができる。この場合において、コロイド分散系の温度を変化させる方向としては、壁に平行の方向あるいは壁に垂直な方向のどちらでもよい。また、エチレングリコール、グリセリンなどの高粘性液体をコロイド分散媒として用いても、対流は起こりにくくなるため、同様の効果が得られる。
【0016】
所定の温度においてコロイド結晶が析出するコロイド分散液とするための方法として、温度変化によって解離度が変化する弱酸又は弱塩基を添加しておくことが挙げられる。例えば、弱塩基であるピリジンの解離度は昇温と共に増加する(電気伝導度測定により決定した、ピリジンの無塩水溶液におけるpKb値は、10及び50°Cにおいて9.28および8.53であり、温度と共に直線的に減少した)。従って、ピリジンをシリカコロイド分散系のようなコロイド分散系に共存させた場合、昇温に伴いコロイド粒子の有効表面電荷密度σe値が増加すると考えられる。しかも、種々の温度における上記の解離は、通常の使用条件において系の温度変化に要する時間よりもはるかに短時間で平衡状態となる。すなわち、σe値は試料温度により一義的に決まり、それまでの温度履歴等に依らないため、コロイド分散液の結晶化が熱可逆的に起こる。
【0017】
以下に、温度変化によって解離度が変化する弱塩基、弱酸および塩を例示するがこれらに限定されるものではない。好ましい弱塩基としては、例えば、ピリジンおよびピリジン誘導体(モノメチルピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン等)が挙げられ、これらは温度上昇とともに解離度が増加する。これらのピリジンまたはピリジン誘導体は、シリカ粒子の結晶化に対して好適なpKb 値を有し、またpKb 値の温度による変化が充分に大きいという理由から本発明において用いられるのに特に好ましい。弱塩基としては、この他に、ウラシル、キノリン、トルイジン、アニリン(およびその誘導体)等も使用することができ、これらも昇温とともに解離度が増加する。
【0018】
一方、弱酸としては、水溶液中で温度上昇とともに解離度が減少する酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クロル酢酸、リン酸、シュウ酸、マロン酸等を挙げることができる。一方、ホウ酸や炭酸のように、昇温とともに解離度が増加するような酸を用いることもできる。さらに、上記のごとき弱塩基と弱酸の中和により得られる塩も解離度に温度依存性があり、本発明における弱電離物質として使用できる。温度に依存して解離度が増加するか減少するかは、当該酸と塩基の強さの大小関係に依る。
【0019】
また、弱酸や弱塩基を単独で用いるのではなく、弱酸−強塩基の混合系や、弱塩基−強酸の混合系等も用いることができる。
【0020】
また、所定の温度においてコロイド結晶が析出するコロイド分散液とするための方法として、媒体の誘電率の温度変化を利用することもできる。すなわち、コロイド粒子間の静電相互作用は誘電率の減少とともに増加するが、通常の液体の誘電率は温度とともに減少するため、加熱により誘電率を変化させてコロイド結晶を析出させることもできる。
【0021】
また、コロイド分散液のコロイド粒子はシリカ粒子であり、分散媒は水であり、弱塩基はピリジン及び/又はピリジン誘導体とすることができる。このようなコロイド分散液により、確実に大型で、格子欠陥や不均一性の少ない単結晶を製造することができる。
【0022】
また、コロイド分散液に強塩基を添加しても、所定の温度で、コロイド結晶を析出させることができる。強塩基の解離度に対する温度依存性は低いと考えられるが、それにもかかわらず、強塩基を添加してもコロイド結晶を析出することができるのは、温度変化による該コロイド分散液の誘電率の変化や、温度変化によるコロイド粒子表面の官能基の解離度の変化によるものと考えられる。さらには、コロイド分散液に何も添加しなくても、温度を変化させてコロイド分散液の誘電率や、コロイド粒子表面の官能基の解離度を変化させることにより、コロイド結晶を析出させることができる。
【0023】
また、コロイド結晶を成長させた後、ゲル化によりコロイド分散液を固化することもできる。このように、ゲル化によりコロイド結晶を固化すれば、温度をコロイド結晶が析出しない温度に戻したとしても、コロイド結晶の構造を保持することができる。また、コロイド結晶の機械的強度を飛躍的に高めることができる。さらに、ゲル化したコロイド結晶は、ゲルマトリクス固有の特性を併せ持つ材料となる。例えばゲル化したコロイド結晶を機械的に圧縮させて、変形させた場合、結晶格子面間隔も変化するため、回折波長を制御することができる材料となる。ゲル化したコロイド結晶は、液体の種類、温度やpHなどの物理的・化学的環境に応答して膨潤したり収縮したりする。また、特定の分子と特異的に結合する官能基を導入すると、その分子種の濃度に依存して体積が変化する。こうした性質を利用し、回折波長のシフトを測定することにより、温度、pH、様々な分子種等のセンシングが可能となる。
【0024】
ゲル化の方法としては、コロイド分散液に光硬化性樹脂を分散させておき、コロイド結晶を析出させた後に、光を照射してゲル化する方法などが挙げられる。この場合において、光硬化性ゲル化剤は、イオンの発生の少ない材料を選択することが好ましい。イオンの発生する光硬化性ゲル化剤を用いた場合、コロイド分散液中に分散している荷電コロイドの表面電位が変化して、コロイドの状態変化が起きる可能性があるからである。このような、イオン発生の少ない光硬化性ゲル化剤としては、ゲルモノマー、架橋剤及び光重合開始剤を含む溶液等が挙げられる。ゲルモノマーとしては、アクリルアミドおよびその誘導体などのビニル系モノマー、架橋剤としては、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、また光重合開始剤としては、2、2‘-アゾビス[2-メチル-N-[2-ヒドロキシエチル]-プロピオンアミド]等が挙げられる。この他、アジド系感光基をポリビニルアルコールにペンダントした水溶性の感光性樹脂等も用いることができる。
【0025】
本発明の製造方法で得られたコロイド結晶は、吸収スペクトル及び反射スペクトルにおける半値幅を20nm以下という極めて狭い範囲に設定することができる。また、回折波長の空間不均一性も2.0%以下と極めて高品質なものとすることができる。ここで空間不均一性とは、反射分光や透過分光によって測定されたコロイド結晶の回折波長の空間的な分布の標準偏差を、回折波長の加重平均値で除した値を100分率表示したものである(以下同じ)。
【0026】
また、本発明の製造方法では、回折波長が400〜800nmの範囲内であり、該回折波長の不均一性が0.2%以下であり、該回折波長での透過率が厚さ1mmにおいて0.1%以下であり、結晶格子面の層数が3000層以上であり、最大径が1cm以上の単結晶からなるコロイド結晶を得ることができる。
【0027】
このようなコロイド結晶では、回折波長が400〜800nmの範囲内であるため、可視光の回折が可能となる。また、回折波長の空間不均一性が0.2%以下であり、回折する波長の精度が極めて高い。また、回折波長での透過率が0.1%以下であることから、回折の効率もきわめてよい。こうした特性から、フォトニック結晶として光通信コネクタ、光増幅等の光電子素子、カラー映像機器、高出力レーザー、化粧品・装飾品分野等へ適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明において用いられるコロイド分散液の例としては特に好ましいのは、シリカ微粒子が水に分散された系である。このシリカ微粒子は、水中に分散されると、その表面を覆っている弱酸性のシラノール基(Si−OH)のOHの一部が解離してSi−Oとなるとともに、その周囲に対イオンと呼ばれるプラスイオン(H)が分布する。ここで、この系に前述したようなピリジンのような電離物質を添加するとシラノール基の解離度が変化し、粒子の電荷密度(単位表面積あたりの電荷量)が変化する。このように電荷密度が比較的容易に制御できるという特性はシリカ粒子のメリットであり、これを利用してコロイド結晶を調製することができる。
【0029】
しかしながら、本発明のコロイド結晶の製造方法は、シリカ−水系に限られず、表面に弱酸または弱塩基に由来する電荷を有するコロイド粒子が液体媒質に分散され、上述したような弱電離物質を添加すると該電離物質が液体媒質中で解離(電離)するとともに、コロイド粒子表面の電荷が変化し得るようなその他のイオン性コロイド分散系にも適用できる。
【0030】
すなわち、コロイド粒子として、表面に弱酸を有するものであればシリカと同様に使用可能であり、例えば、酸化チタン微粒子やカルボキシ変成ラテックス(表面にカルボキシル基を有するラテックス)等を使用することができる。さらに、表面に弱塩基を持つものであれば、弱酸を添加することにより、シリカ+ピリジン系と類似の機能を発現させることもでき、これに該当するコロイド粒子としては酸化アルミニウムやアミノ基を有するラテックス等を挙げることができる。また、粒子の表面が上記のような性質を持っておればよいため、シリカや酸化チタン層などで表面をコートした粒子についても、本発明は適用できる。
【0031】
また、弱酸と弱塩基の両方をもつ球状タンパク質や粘土鉱物から成るコロイド系にも適用可能である。さらに、アミノ基を有するシランカップリング剤を用いてシリカ粒子表面に弱塩基を導入するなどの表面修飾法により、種々の弱酸や弱塩基が粒子表面に導入された各種のコロイド粒子を含む系にも本発明は適用できる。
【0032】
また、分散媒に関しては、コロイド粒子表面の解離基(電荷付与基)、および添加した弱電離物質(弱酸、弱塩基、塩)が解離できるような高い誘電率を呈することができれば、水以外の液体も使用可能である。例えば、フォルムアミド類(例えば、ジメチルフォルムアミド)やアルコール類(例えば、エチレングリコール類)を使用することができる。これらはコロイド粒子および添加する弱電離物質の組合せによってはそのまま使用することもできるが、一般的には水との混合物として使用するのが好ましい。
【0033】
弱酸や弱塩基を添加するコロイド分散系は、市販のコロイド用粒子を水などの適当な分散媒に分散させたり、ゾル−ゲル法などにより合成したものを用いればよいが、一般に、コロイド結晶は微量の塩(イオン性不純物)の存在によってその生成が阻害されるため、コロイド分散系の調製にあたっては充分な脱塩を行うことが好ましい。例えば、水を用いる場合には、まず精製水に対して、用いた水の電気伝導度が使用前の値と同程度になるまで透析を行い、次に充分に洗浄したイオン交換樹脂(陽イオンおよび陰イオン交換樹脂の混床)を試料に共存して少なくとも1週間保つことにより、脱塩精製を行う。
【0034】
さらに、コロイド粒子の粒径およびその分布にも注意を払う必要がある。コロイド粒子の粒子径は600nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは300nm以下である。あまり、粒子径が600nmを超える大きな粒子径のコロイド粒子の場合には、重力の影響で沈降しやすくなるからである。また、コロイド粒子の粒子径の標準偏差は、15%以内が好ましく、更に好ましくは10%以下である。標準偏差が大きくなると、結晶が生じにくく、また結晶を生じても、格子欠陥や不均一性が増し、高品質のコロイド結晶が得られ難くなる。
【0035】
次に、弱電離物質を添加、共存させ、これに温度変化を起こさせることによりコロイド結晶を生成させる場合、荷電コロイド系における結晶化を支配するコロイド粒子間の静電的相互作用は、該粒子の有効表面電荷密度(σ)に加えて、粒子の体積分率(φ)および添加塩濃度(Cs)によっても影響される。したがって、結晶化が生じる温度や弱電離物質の添加量は、当初のコロイド分散系のφやCsによって異なる。例えば、ピリジン(Py)を添加する場合、一定温度およびφ条件下で比較したとき、一般に、Cs値が高いほどピリジン濃度の高い条件で結晶化が起こる。
【0036】
一般的には、φ(コロイド粒子の体積分率)として0.01〜0.05程度、またCs(添加塩濃度)として2〜10μmol/L程度のコロイド分散系を調製し、これに弱電離物質を添加する。このためには、コロイド粒子の比重をピクメーター法などにより求め、この値を用いて精製したコロイド分散系のコロイド粒子のφ値を絶乾法により決定する。これを精製した水などの液体媒質で希釈することにより、所定のφ値を有する分散系を調製する。φ値は、コロイド結晶が望まれる特性に応じた結晶面間隔を有するように算出する。また、必要に応じ、NaClなどの低分子塩水溶液を添加してCs値を制御する。
【0037】
以上の試料調製にあたっては、イオン性不純物による汚染を可能な限り避ける必要がある。この点、塩基性不純物が水中に溶出するようなソーダ石灰ガラス等は、粒子のσe値を増加させるため、ガラス容器を用いる場合には、石英ガラスのような塩基性不純物が水中に溶出しないガラスの容器が好ましい。また空気中の二酸化炭素は水に溶解して炭酸を生じるため、窒素等の雰囲気下で調製を行うことが望ましい。さらに、容器、器具類は精製水(電気伝導度 0.6μS/cm以下)で充分洗浄したのち使用する。
【0038】
以上のように調製したコロイド系を加熱または冷却し、結晶の有無を確認し、結晶化温度を評価することができる。結晶生成の確認には、イリデセンスの観察の他、X線散乱法、光学顕微鏡法および分光光度法(反射または透過スペクトル測定)等が適用できる。
【0039】
本発明のコロイド結晶の製造方法では、単に外部から系を加熱または冷却するという簡単な手段により、熱可逆的にコロイド粒子の結晶化を生じさせることができる。この結晶化は、ピリジン等の弱電離物質の濃度を変化させることにより、制御できるが、その際、弱電離物質の濃度はNaOHのような強塩基を添加する場合のように厳密である必要もない。すなわち、添加した弱電離物質の濃度に比べその解離種の濃度がごく少量であるため、弱電離物質濃度に対するコロイド粒子の表面電荷密度(σe)の変化が強塩基を添加した場合より緩やかであり、ある程度の濃度範囲が許容されることが利点である。
また、弱電離物質の濃度を変化させることで、結晶化温度を容易に調節出来る。すでに、ピリジンを用いたシリカ/水系のコロイドでは、2〜60°Cの範囲で調整出来ることを確認している。
【0040】
また、本発明においては系を密閉系に保つことができるため、イオン性不純物による汚染を防いで高性能のコロイド結晶を得ることができる。かくして、本発明は、光応答特性を制御できる光学素子などの製造に、広範な応用が期待される。
【0041】
本発明のコロイド結晶の製造方法は、表面に電荷を有するコロイド粒子、該コロイド粒子を分散させる分散媒、および該分散媒中において解離度が温度変化とともに変化する弱電離物質を含むコロイド系を利用し、これに外部から温度変化を与えてコロイド結晶を生成させることができる。このような弱電離物質含有コロイド系は温度変化により可逆的に結晶化し物性が変化するので、この性質を利用して、コロイド結晶の製造以外にも応用することが可能である。
【0042】
例えば、温度変化により物性が変わることを利用した新規な感熱性材料(感熱性塗料、温度センサーなど)の開発が可能となる。また、昇温によりコロイド系が結晶化するような系を用いれば、系の粘性は温度とともに増加することが期待される。一方、通常の単純液体においては、一般に粘性は温度増加にともない単調に減少する。このような特異な粘性−温度特性を利用して、例えば従来の応力伝達系に用いられる液体(クラッチ用のオイルなど)の温度特性の改善などへの応用も期待される。
【0043】
以下、本発明をさらに具体化した実施例について比較例と比較しつつ述べる。
【0044】
<ピリジンを添加したシリカコロイド分散液からのコロイド結晶の析出>
(実施例1)
日本触媒社製シリカコロイド粒子KE-W10 (直径0.11±0.01μm 比重2.1)を半透膜による透析及びイオン交換樹脂によるイオン交換法を用いて精製する。こうしてイオンが除かれたシリカコロイドを体積分率(φ)=0.035となるように調整し、ピリジンを35μmol/Lとなるように添加して、白濁状態の結晶化用コロイド分散液を得る。この結晶化用コロイド分散液を内法が厚さ1mm、幅1cm、長さ4.5cmの石英セル内に充填し、水平面と平行になるように設置した後、石英セルの一端をヒーターブロックにより50°Cに加熱する。これにより、石英セルの一端から他端に向かってコロイド結晶が析出することのできる温度の領域が広がり、コロイド結晶が成長する。
【0045】
図1にコロイド結晶の成長の様子を示す(図1における左側から加熱)。この図から、伝熱に従ってオレンジ色の領域が加熱側から非加熱側に向かって広がっていることが分かる。このオレンジ色は、コロイド結晶による回折色である。また、図2に、コロイド結晶の成長曲線を示す。この図から、結晶化用コロイド分散液から10分以内に長さ3cmという巨大な単結晶を成長させ得ることが分かる。
【0046】
こうして得られたコロイド結晶の反射スペクトル及び吸収スペクトルをファイバー分光法により測定した。その結果、図3(a)(b)に示すように、回折波長が615nm、半値幅は約4nmとなり、優れた透過特性を示すことが分かった。また、場所による回折波長の違いを調べたところ、図3(c)に示すように、回折波長の変動もごく僅か(ヒーターブロックの直近を除き、1nm以下)であり、その空間不均一性は反射スペクトル測定で0.18%:透過スペクトル測定で0.10%と算出され、きわめて優れた均一性を有することが分かった。さらには、図3bから求めた厚さ1mmにおける回折波長での透過率は0.011であり、回折格子として優れた性能を示すことが分かった。さらには、回折波長から少し外れた波長での透過率は大きく、回折波長以外では優れた透明性を有することが分かった。
【0047】
また、得られたコロイド単結晶の結晶格子面の層数をBragg式より次のように算定した。すなわち、Bragg式より2d・sinθ=N・λ/nr(ここでdは格子面の間隔、θは入射光と格子面のなす角、Nは自然数、λは回折波長、nrは試料の屈折率)となる。実施例1の測定では、θ= 90°(sinθ=1)、N=1であり、nr=φnシリカ粒子+(1-φ)n(nシリカ粒子=1.33、n=1.46)と近似できる。φ= 0.035ではnr=1.33となり、d =λ/(2nr)=231nmと算出される。このため、厚さ1mmの結晶中では結晶格子面の数は4359(層)となり、層数も極めて多いことが分かった。
【0048】
(実施例2)
結晶化用コロイド分散液におけるシリカコロイドの体積分率(φ)を0.05とし、ピリジン濃度は28μmol/Lとした。他の条件は実施例1と同様であり、説明を省略する。こうして得られたコロイド結晶の成長の様子を図4に示す。この図から、伝熱に従って青緑色の領域が加熱側から非加熱側に向かって広がっていることが分かる。なお、実施例1の場合と回折色が異なるのは、結晶化用コロイド分散液におけるシリカコロイドの濃度の違いによるものである。このことから、シリカコロイドの濃度を調製すれば、コロイド結晶の格子の大きさを制御できることが分かった。
また、回折波長の変動もごく僅かであり、反射スペクトル測定で得られた空間不均一性は0.16%であり(平均波長:527.08 nmに対し、標準偏差0.833nm)極めて均一性に優れていることが分かった。
【0049】
また、得られたコロイド単結晶の結晶格子面の層数をBragg式より算定したところ、nr=1.34となり、d=λ/(2nr)=197nm、厚さ1mmの結晶中では5076層となり、層の数も極めて多いことが分かった。
【0050】
さらには、得られたコロイド結晶の吸収スペクトルを数カ所において測定したところ、dip波長の平均値が527.08nm、標準偏差が0.833nm (0.16%に相当)となり、実施例1のコロイド結晶と同様に、極めて優れた均一性を有することがわかった。
【0051】
(実施例3)
結晶化用コロイド分散液におけるシリカコロイドの体積分率(φ)を0.04とし、ピリジン濃度は40μmol/Lとした。他の条件は実施例1と同様であり、説明を省略する。得られた結晶の吸収スペクトルを数カ所において測定した。その結果、図5に示すように、dip波長の平均値は、576.5nm、標準偏差0.550nm (0.095%に相当)となり、実施例1と同様に極めて優れた均一性を有することがわかった。
【0052】
(実施例4)
結晶化用コロイド分散液におけるシリカコロイドの体積分率(φ)を0.05とし、ピリジン濃度は40μmol/Lとした。このコロイド分散液を、内法が厚さ0.4mm、幅7mm、長さ5cmの薄膜型プラスチックセル内に充填した。これを、水平になるように設置した後、セル底面をヒーターブロックにより50℃に加熱し、プラスチックセルの底面側から熱が伝え、コロイド結晶を成長させた。こうして得られた結晶の吸収スペクトルを数カ所において測定した。その結果、図6に示すように、dip波長の平均値は、529.1nm、標準偏差0.68nm (0.129%に相当)となり、実施例1同様に極めて優れた均一性を有することがわかった。
【0053】
(比較例1)
日本触媒社製シリカコロイド粒子KE-W10 (直径0.11±0.01μm 比重2.1)を用意し、実施例1及び実施例2と同様、透析法およびイオン交換法により充分に精製する。
シリカコロイド/水分散液(粒子体積分率φ=0.034)4mLを1cm×1cmの分光セルに入れ、半透膜を介してピリジンの10mmol/L水溶液のリザーバー(500mL)に接触させてピリジンを拡散させ、結晶を鉛直上向きに成長させた(図7a参照)。その結果、図7bに示すように、回折色の色むらがあり、実施例1や実施例2よりも不均一なコロイド結晶となることが分かった。また、結晶の成長も20時間以上かかり、結晶の成長速度も遅かった。
【0054】
(実施例5)
<コロイド結晶のゲル化>
コロイド結晶を、既報の手法(特許文献:ゲル固定化コロイド結晶“ 山中淳平、村井雅子、山田浩司、尾崎宙志、内田文生、澤田勉、豊玉彰子、伊藤研策、瀧口義浩、平博仁 (特願2004-375594) 出願者:宇宙航空研究開発機構、富士化学(株))を用いて、高分子ゲルにより固定化した。
すなわち、まず以下の組成のシリカコロイド分散液を用意する。
ゲルモノマー:N, N’-ジメチロールアクリルアミド(N-MAM)
0.67mol/L
架橋剤:メチレンビスアクリルアミド(Bis) 10mmol/L
光重合開始剤:2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[2-ヒドロキシエチル]-プロピオ
ンアミド 4mg/mL
コロイドシリカ分散液のコロイド粒子の体積分率(φ)=0.05
添加ピリジン:40μmol/L
そして、上記の組成のシリカコロイド分散液を実施例1と同様のセルに入れ、40℃のヒーターブロックに接触させることにより、数mm角の結晶を成長させた。さらに、こうして得られたコロイド結晶に紫外線を照射することにより重合させ、ゲル化したコロイド結晶を得た。
【0055】
<シリカコロイド分散液の結晶化相図の作成>
シリカコロイド分散液に所定量のピリジンや水酸化ナトリウムを添加した場合の結晶化温度を測定し、結晶化相図を作製した。以下にその詳細を述べる。
【0056】
(ピリジン添加シリカコロイド分散液の結晶化相図の作成)
日本触媒社製シリカコロイド粒子KE-P10(直径0.11±0.01μm、比重2.1)を半透膜による透析及びイオン交換樹脂によるイオン交換法を用いて精製する。こうしてイオンが除かれたシリカコロイドを体積分率(φ)=0.035となるように調整し、ピリジンを所定量添加して、白濁状態の結晶化用コロイド分散液を得る。この結晶化用コロイド分散液を内法が厚さ1mm、幅1cm、長さ4.5cmの石英セル内に充填し、水平面と平行になるように設置した後、石英セルを恒温槽に入れ、所定の温度の恒温水槽中に15分間保ちコロイド結晶が析出するときの温度を結晶化温度とした。
【0057】
(水酸化ナトリウム添加シリカコロイド分散液の結晶化相図の作成)
添加するアルカリをピリジンから水酸化ナトリウムに替えて、同様の方法によりシリカコロイド分散液の結晶化相図を作成した。
【0058】
上述の方法によって得られた結晶化相図を図8及び図9に示す。この図から、ピリジンを添加したシリカコロイド分散液のみならず、水酸化ナトリウムの場合にも、20μmol/Lの濃度とすれば、10〜15℃において結晶化−非結晶化の相転移が可能となることが分かった。したがって、水酸化ナトリウムをシリカコロイド分散液に添加して、実施例1と同様の方法によって、石英セルの一端から他端に向かってコロイド結晶が析出することのできる温度の領域を徐々に広げていけば、巨大なコロイド結晶を成長させることができることがわかった。
【0059】
温度による解離度の変化がほとんどないと考えられる水酸化ナトリウムの添加においても、温度変化によって相転移を起こすことができる理由は、(1)水の誘電率が温度によって変化すること、及び(2)シリカ表面のシラノール基の解離度が温度によって変化すること、が主な要因であると推測される。
【0060】
すなわち、コロイド分散液中の水の比誘電率は、温度が増加すると減少し(例えば、10℃ではε=83.8であり、60℃ではε=69.9である)、その効果のみを考えれば、温度Tが高いほど結晶化に有利である。しかし、温度Tが高くなるとコロイド粒子の熱振動が激しくなり、その見地からは、結晶化に不利となる。Robbinsらは、計算機シミュレーションにより、荷電したコロイド系の結晶化相図を報告しており(M.O.Robbins,
K.Kremer,G.S.Grest, J. Chem. Phys. 1988, vol.88, p.3286-3312)、媒体が水の場合、上述のεの効果は熱振動等の効果を上回り、粒子の表面電荷数が温度によらず一定であっても、昇温によって結晶化させることができることを述べている。
【0061】
また、シリカ表面のシラノール基の解離度が温度によって変化することは、塩基を添加しないシリカコロイド分散液について、電気伝導度の温度変化を調べることによって確かめられた。すなわち、所定の温度に設定した水槽中に、塩基を添加しないシリカコロイド分散液(体積分率(φ)=0.035)を入れて1時間放置して温度を安定させた後、電気伝導度を測定した。同条件での、水の電気伝導度も併せて測定し、シリカ分散液の伝導度から差し引いた。こうして得られた値は、シリカ粒子の対イオンであるHイオンの寄与によると見なせ、これから粒子の電荷数Zを求めることができる(伊勢・曽我見、高分子物理学 朝倉書店、2004を参照)。様々な温度における水のモル伝導度Wの値は電気化学便覧、丸善、1985に記載の値を用いた。こうして測定された各温度における電荷数Zの値を表1に示す(誤差は6個のサンプルの測定結果についての標準偏差である)。この表から明らかなように、温度上昇によって電荷数Zが増大しており、シリカ表面のシラノール基の解離度が温度の上昇によって大きくなることが分かった。
【表1】

【0062】
また、ピリジンを添加したシリカコロイド分散液の場合には、上記(1)及び(2)の理由に加えて、ピリジンの解離度が温度とともに増加するため、図8に示すような、より明瞭な温度変化による相変化が生じるものと考えられる。
【0063】
この発明は、上記発明の実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例1のコロイド結晶の成長の様子を示す写真である。
【図2】実施例1のコロイド結晶の成長曲線を示すグラフである。
【図3】実施例1のコロイド結晶の反射スペクトル及び吸収スペクトルの測定結果である。
【図4】実施例2のコロイド結晶の成長の様子を示す写真である。
【図5】実施例3のコロイド結晶の波長と透過率との関係を示すグラフである。
【図6】実施例4のコロイド結晶の波長と透過率との関係を示すグラフである。
【図7】比較例1のコロイド結晶の成長の様子を示す写真である。
【図8】ピリジン添加シリカコロイド分散液の結晶化相図である。
【図9】水酸化ナトリウム添加シリカコロイド分散液の結晶化相図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の温度においてコロイド結晶が析出するコロイド分散液を用意して容器に収容する準備工程と、
該容器に収容したコロイド分散液の全体を該コロイド結晶が析出しない温度に設定する温度設定工程と、
該コロイド結晶が析出しない温度に設定されたコロイド分散液に対し、局所的に該コロイド結晶が析出する温度に設定する結晶開始工程と、
該コロイド結晶が析出する温度に設定された範囲を徐々に拡大させて、コロイド結晶を成長させる結晶成長工程と、
を備えることを特徴とするコロイド結晶の製造方法。
【請求項2】
結晶成長工程におけるコロイド結晶が析出する温度に設定された範囲を徐々に拡大させる方法は、熱伝導によることを特徴とする請求項1記載のコロイド結晶の製造方法。
【請求項3】
コロイド分散液は略平行に対面する2つの壁の間に充填されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコロイド結晶の製造方法。
【請求項4】
コロイド分散液には温度変化によって解離度が変化する弱酸又は弱塩基が添加されており、温度変化によるpHの変化によってコロイド結晶が析出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のコロイド結晶の製造方法。
【請求項5】
コロイド分散液のコロイド粒子はシリカ粒子であり、分散媒は水であり、弱塩基はピリジン及び/又はピリジン誘導体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のコロイド結晶の製造方法。
【請求項6】
コロイド分散液には強塩基が添加されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のコロイド結晶の製造方法。
【請求項7】
コロイド結晶を成長させた後、ゲル化によりコロイド分散液を固化することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のコロイド結晶の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項のコロイド結晶の製造方法によって得られたコロイド結晶。
【請求項9】
吸収スペクトル及び反射スペクトルにおける半値幅は20nm以下であることを特徴とする請求項8記載のコロイド結晶。
【請求項10】
回折波長の空間不均一性は0.2%以下であることを特徴とする請求項8又は9記載のコロイド結晶。
【請求項11】
回折波長が400〜800nmの範囲内であり、該回折波長の空間不均一性が0.2%以下であり、該回折波長での透過率が厚さ1mmにおいて0.1%以下であり、結晶格子面の層数が3000層以上であり、最大径が1cm以上の単結晶からなることを特徴とするコロイド結晶。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図4】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−93654(P2008−93654A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228613(P2007−228613)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(506218664)公立大学法人名古屋市立大学 (48)
【出願人】(391003598)富士化学株式会社 (40)
【Fターム(参考)】