説明

コンクリ−ト構造物用耐震継手及びその施工方法

【課題】 施工工期が短く、施工コストが安いこと、止水が打設されたコンクリ−ト構造物に対して外防水であること、地震時の変位吸収が大きいこと、この変位吸収部より土砂が流入しないこと、等を満足する耐震継手を提供する。
【解決手段】 コンクリート構造物の打継目に沿って配置され、コンクリ−ト構造物の変位を吸収するバルブと、当該対向するコンクリ−ト構造物の外面に当接され、前記バルブの左右に形成された翼部と、この対向するコンクリート構造物中に埋設され、前記翼部に形成された先端部に膨出部を備えた突起と、よりなるコンクリ−ト構造物用耐震継手。
1‥中空バルブ、2、3‥翼部、4、5‥突起、6‥膨出部、10a、10b‥コンクリ−ト構造物、10c‥コンクリ−ト構造物の目地部。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の打継目に沿って付設され、この打継目部分からの水の侵入を防ぎ、耐震性能を付与した帯状の継手に関するものであり、特に言えば、コンクリ−ト構造物の打継目の際の先付け耐震継手(以下、不都合でない限り単に継手という)に係るものである。
【背景技術】
【0002】
隣接するコンクリート構造物間の境界である打継目部分へ水が侵入すると、例えばトンネル、建築物等の内部に漏水が生じることになる。この漏水を防ぐ方法としてコンクリート構造物の打継目に沿って帯状の止水継手を埋設する防水工法が採用されている(非特許文献1)。
【0003】
【非特許文献1】防水ジャ−ナル(1996年3月号85〜87頁)
【0004】
防水工法のうち、コンクリ−ト構造物を打設した後、防水工法としていわゆる角型可撓継手Aが用いられている。かかる角型可撓継手Aは、図1に示すようにコンクリ−ト構造物a、bの打継目の目地cを跨いで取り付けられるもので、繊維補強層dが内蔵されたゴム部材eであって、中央に一つ或いは二つの山部fを構成し、その左右を裾部gとしたもので、この裾部gを押え部材hとボルトiで固定する方法が取られている。従って、角型可撓継手Aの製造コストが高く、しかも部品点数が多いことから施工コストも高いものであった。更には、コンクリ−ト構造物を打設した後に施工され、通常はその施工もコンクリ−ト構造物の内側より行うものであり、打設されたコンクリ−ト構造物の外側は防水手段が行われない。しかも、施工が複雑であり、施工工数も多く、施工のためのスペ−スを比較的広く要する等が指摘されており、改良の余地もあった。
【0005】
一方、コンクリ−ト構造物中に埋設する防水工法としては伸縮止水板Bがある。伸縮止水板Bは、塩化ビニル、加硫ゴム等の弾性材料からなり、図1に示すように中央に伸縮部mとその左右に裾部nとしたものであり、裾部nには突起pを備えたものであり、裾部nをコンクリ−ト構造物の打設時に順次埋設するものである。しかるに、この工法にあっても打設されたコンクリ−ト構造物の外側は防水手段が行われない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、上記のような防水工法に代わる新たな工法が要求されており、施工工期が短く、コストがより安いこと、止水が打設されたコンクリ−ト構造物に対して外防水であること、地震時の変位吸収が大きいこと、この変位吸収部より土砂が流入しないこと、等を満足する防水工法が求められている。
【0007】
本発明は、係る防水工法に適するコンクリ−ト構造物用の先付け耐震継手を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の要旨は、コンクリ−ト構造物用先付け耐震継手であって、対向するコンクリート構造物の打継目に沿って配置され、コンクリ−ト構造物の変位を吸収するバルブと、当該対向するコンクリ−ト構造物の外面に当接され、前記バルブの左右に形成された翼部と、この対向するコンクリート構造物中に埋設され、前記翼部に形成された先端部に膨出部を備えた突起と、よりなることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第2の要旨は、対向するコンクリート構造物の打継目に沿って前記第1発明の耐震継手が配置されるコンクリ−ト構造物耐震継手の施工方法であり、コンクリート構造物の外側面に当該継手の一方の翼部に形成した突起を埋設しつつコンクリート構造物を打設し、次いで、これに対向するコンクリート構造物の外側面に当該継手の他方の翼部に形成した突起を埋設しつつコンクリート構造物を打設することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の継手によれば、地震時の変位吸収が大きいこと、この変位吸収部より土砂が流入しないこと、外防水を可能とした、しかも安価な防水継手が得られたものであり、本発明の第2の防水工法によれば、施工工期が短く、施工コストがより安いこと、止水が打設されたコンクリ−ト構造物に対して外防水であること、を満足する防水工法が得られたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
近年に至り、コンクリ−ト構造物の耐震継手の要求として、止水及び変位吸収を目的とし、先付け施工ができる外防水継手が求められ、変位吸収に対しては、伸びが60mm、圧縮15mm、沈下15mm以上の変位性能を有するもので、作用水圧0.3MPa以上のものであり、しかも、変位吸収時の継手の変形部分から土砂の侵入がないことが必要とされている。
【0012】
本発明の第1の継手はかかる要件を満足する構造を有しているものであり、各構成全体がゴム或いはゴム様の樹脂材料で一体に成形されたものである。通常は押出機にて押出成形されるものが特に好ましいが、場合によっては長尺材として加硫(架橋)成形したものであってもよい。
【0013】
さて、本発明の継手にあって、先ず、変位吸収のためのバルブを中央部に設けたものであり、そして、止水のための突起をバルブ両端に形成した翼部に配置する一体構造としたものである。中央のバルブは、オメガ型、台型、折り返し型形状とするものであり、変位吸収量により大きさ・形状を変えることができる。前記バルブは閉じていることにより変形時及び変形後も土砂の侵入を防止するものである。
【0014】
そして、止水のための突起は左右翼部の同一側に形成され、先端に膨出部を備えており、埋設されたコンクリ−ト構造物からの抜けを防止し、止水性を確保するための膨出部を有するものである。この膨出部は、作用水圧、或いは伸びの作用によりコンクリ−ト構造物中に食い込むセルフシ−ル機構をもち、これにより高い止水性能を発揮する。
【0015】
本発明の継手は前記したように全ての構成をゴム又はゴム様の可撓性を有する樹脂をもって一体としたものであり、押出成形によって長尺部材として製造されるものである。尚、バルブと突起の間の翼部表面や突起端部には、止水性を確実にするためにコンクリ−ト構造物との付着性に優れる非加硫ブチルゴムを取り付けることができる。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の第1のコンクリ−ト構造物用先付け耐震継手を中心として更に詳細に説明する。図2は本発明の第1の耐震継手Cの斜視図である。1はコンクリ−ト構造物の変位を吸収するバルブであり、逆台形の長尺の中空部1aとなっている。そして、逆台形のバルブ1の底辺より伸びる翼部2、3が構成され、バルブ1側に突起4、5が形成されている。そして、この突起4、5にはその先端に台形の膨出部6が形成されている。
【0017】
そして、図3はコンクリ−ト構造物10a、10bに突起4、5が埋設された際の断面図であり、耐震継手Cはコンクリ−ト構造物10a、10bの外表面に配置され、翼部2、3及びバルブ1の底辺がその外表面に一直線状に配置されている。バルブ1はコンクリ−ト構造物10a、10bの目地部10cに対応して配置されている。
【0018】
図4は目地部10cが開いた(伸びた)場合に継手Cの挙動を示すものであり、突起4、5は夫々コンクリ−ト構造物10a、10bに支持され、これによってバルブ1が左右に大きく伸ばされ、その変形に追従することができるものである。
【0019】
図5は一方側が沈下した際の継手Cの挙動を示すものであり、この場合にはバルブ1が斜めに伸ばされて沈下に追従することができたものである。
【0020】
しかるに、上記の図4や図5に示すように、継手Cのバルブ1は目地部10cに対して開口部がなく、このため、変形時でも変形が戻った後でもコンクリ−ト構造物の外側の土砂が内部に侵入することがない。このため、従来の内防水技術で用いられていたような土砂の流入防止材等は全く必要がなくなるものである。
【0021】
このように、継手Cのバルブ1に変形がもたらされた場合でも、コンクリ−ト構造物10a、10b内の突起4、5が引っ張られることになり、膨出部6がこれによってコンクリ−ト構造物10a、10bの突起4、5を囲む面に強圧され、ここに止水効果が発揮されることになる。これは継手Cの変形が大きくなればそれだけ強く接触することとなり、いわゆる楔効果(セルフシ−ル構造)を発生することとなる。このように、止水突起によるセルフシ−ル効果により極めて高い止水性を有し、従来の止水板に用いたような押え板等の固定部材が不要となった。
【0022】
本発明にあって、特にバルブ1を中央部に備えるものであるが、そのバルブ1の形状も前記した例以外にも種々考えられ、継手に加わる伸び、沈下等に耐え得るもので、非開口構造のものであれば特に限定はない。図6はかかるバルブ1の例を示すものであり、断面山型1b、断面椀型1c、断面溝型1d、断面円筒型1e等がある。尚、閉鎖型バルブの場合には不要ではあるが、開放型バルブ1b〜1dの場合には土砂流入防止材が必要となる場合がある。
【0023】
突起4、5は翼部の一側に形成されるが、膨出部6の他の形状としては、図7に示すように球形のものや円錐台形や角錐台形のものがある。
【0024】
止水効果を更に効果的にするには、コンクリ−ト構造物10a、10b面との継手Cの間に付着性をもたせるものが更に好ましく、図8にて示すように翼部2、3に例えば非加硫ブチルゴム層7を貼着しておくことにより変形に追従し漏水の原因となる水道ができるのを防ぐことができる。
【0025】
本発明の継手を用いた施工方法にあっては、コンクリート構造物の外側面に当該継手を配置するものであり、コンクリート構造物の外側面に当該継手の一方の翼部に形成した突起を埋設しつつコンクリート構造物を打設し、次いで、これに対向するコンクリート構造物の外側面に当該継手の他方の翼部に形成した突起を埋設しつつコンクリート構造物を打設する施工方法であって、構造物の外側に継手を設置することにより外防水機構が完成するものであり、施工性が極めてよく、施工コストを押えることができる。又、メンテナンス状も外防水であるために特に優れたものとなる。尚、場合によっては、左右のコンクリート構造物に同時に突起を埋設するようにしてコンクリ−ト構造物を打設することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は以上のような継手及びこれを用いた施工工法であり、道路トンネル、共同溝等の地下構造物の耐震性能の向上が顕著である。そして、止水性も極めて安価に提供できるものであり、コンクリート構造物間に大きな相対的ずれが生じた場合にも、高い止水性を維持することができる。そして又、コストの低減(材料費、施工費のダウン、工期短縮)が顕著である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は従来の継手の施工時の断面図である。
【図2】図2は本発明の継手の斜視図である。
【図3】図3は図2の継手の施工時の断面図である。
【図4】図4は図2の継手が伸びた場合に継手の挙動を示す図である。
【図5】図5は図2の継手が沈下した場合に継手の挙動を示す図である。
【図6】図6は本発明の継手のバルブの形状例を示す図である。
【図7】図7は本発明の継手の膨出部の形状例を示す図である。
【図8】図8は本発明の継手の好ましい施工例を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
C、D‥本発明の耐震継手、
1、1a、1b、1c、1d、1e‥中空バルブ、
2、3‥翼部、
4、5‥突起、
6‥膨出部、
7‥非加硫ブチルゴム層、
10a、10b‥コンクリ−ト構造物、
10c‥コンクリ−ト構造物の目地部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向するコンクリート構造物の打継目に沿って配置され、コンクリ−ト構造物の変位を吸収するバルブと、当該対向するコンクリ−ト構造物の外面に当接され、前記バルブの左右に形成された翼部と、この対向するコンクリート構造物中に埋設され、前記翼部に形成された先端部に膨出部を備えた突起と、よりなることを特徴とするコンクリ−ト構造物用耐震継手。
【請求項2】
前記バルブは中空筒部である請求項1記載のコンクリ−ト構造物用耐震継手。
【請求項3】
前記バルブは湾曲部である請求項1記載のコンクリ−ト構造物用耐震継手。
【請求項4】
前記突起は左右翼部の同一側に形成された請求項1乃至3いずれか1記載のコンクリ−ト構造物用耐震継手。
【請求項5】
対向するコンクリート構造物の打継目に沿って請求項1記載の耐震継手が配置されるコンクリ−ト構造物耐震継手の施工方法であり、コンクリート構造物の外側面に当該継手の一方の翼部に形成した突起を埋設しつつコンクリートを打設し、次いで、これに対向するコンクリート構造物の外側面に当該継手の他方の翼部に形成した突起を埋設しつつコンクリートを打設することを特徴とするコンクリ−ト構造物の耐震継手の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−226062(P2006−226062A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−44141(P2005−44141)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】