説明

コンクリートカッター用切削水循環装置

【課題】工事現場における機動性、利便性及び排水処理性に優れ、周辺環境を汚染することなく、切削排水を再使用することができるコンクリートカッター用切削水循環装置を提供する。
【解決手段】コンクリートカッター用切削水循環装置Sを、アスファルト又はコンクリートを切削する際に発生する切削懸濁排水が流入する攪拌槽1と、攪拌槽1に隔壁2aを介して連設された沈殿槽2と、攪拌槽1の下方に設けられたスラリー用脱水器4と、沈殿槽2に隔壁3aを介して連設された清水槽3と、攪拌槽1内を曝気攪拌すると共に、脱水後の貯留水を攪拌槽1へ循環させるエアーポンプ5と、攪拌槽1に流入したスラッジを濾別する第1のフィルタF1と、沈殿槽2の上澄み水をさらに濾過する第2のフィルタF2とから構成し、攪拌槽1、沈殿槽2及び清水槽3に無機系中性凝集剤を添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルトやコンクリートなどの舗装道路の路面切削工事等において発生する懸濁排水から、アスファルトやコンクリートなどの切削汚泥を分離浄化して再使用するために使用されるコンクリートカッター用切削水循環装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートやアスファルト等で舗装された路面の補修工事、その他、岩盤、石材等の切断や穿孔を行う際、その粉塵飛散防止や摩擦熱を冷却するために、水を用いてカッターを冷却しながら作業を行なっている。しかしながら、排出される切削屑を含有する懸濁排水を現場周辺にそのまま廃棄することは環境上問題がある。そこで、この懸濁排水を固液分離装置等により浄化処理する必要がある。
【0003】
上記のような懸濁排水を回収処理して再使用する技術としては、フィルタを通過させて切削汚泥を分離する方法、凝集沈降剤を使用して切削汚泥を沈殿分離する方法等が知られている。例えば、道路カッターで路面を切削するときに発生する切削ヘドロを第1のタンク内で凝集剤と共に撹拌した後、仕切り板により下部を開口して2つ分けられた第2のタンク内の一方仕切り内で凝集沈降させ、上澄み清水は隣接する仕切り内で溢れさせ、再び道路カッターへ冷却水として供給する装置(特許文献1参照。)。濁水・泥水を貯留する貯留槽と、前記濁水・泥水に凝集剤を投入する凝集剤投入手段と、前記凝集剤と前記濁水・泥水を混合してフロックを生成する混合装置と、前記混合装置で生成された前記フロックを水と分離するろ過装置とを備えた濁水・泥水処理装置(特許文献2参照。)。濁水を通過させる流路部内の水流方向に沿って、直流電源の陽極及び陰極に夫々接続した陽極電極板と陰極電極板とを交互に配列して電極板群を形成してなる濁水処理装置(特許文献3参照。)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-130227号公報
【特許文献2】特開2002−219471号公報
【特許文献3】特開平11−226577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、舗装路面を切削した排水に含まれる汚泥は粒径が微細で、また排水に含まれる粒子濃度も高い。したがって、硫酸アルミニウム等の凝集剤を懸濁排水に加えて粒子を凝集してフロック化させる方法は、汚泥の嵩が増し排出時の作業性が悪い。また、凝集剤が拡散して周辺環境を汚染する惧れがあるばかりでなく、薬剤コストが嵩み経済性に欠けるという課題があった。一方、電極板を用いて粒子を凝集させる濁水処理装置では、電極板に流す濁水の水量を濾過装置と連動させて適切に調整することが困難であり、作業性が悪いという課題があった。また、上記各々の装置において、凝集剤の投入手段や電源部等を別途設けなければならず、コンパクト化が図り難く、工事用車両等に搭載して機動的に使用できないという課題があった。本発明は上記のような課題に鑑み、道路工事用車両等に容易に搭載することができ、各種工事現場における機動性、利便性及び排水処理性に優れ、周辺環境を汚染することなく、排水を迅速に浄化再使用することができるコンクリートカッター用切削水循環装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成する本発明のコンクリートカッター用切削水循環装置は、アスファルト又はコンクリートを切削する際に発生する切削懸濁排水が流入する漏斗状の攪拌槽と、該攪拌槽に隔壁を介して連設された沈殿槽と、前記攪拌槽の下方に、移動自在に据付けられたスラリー用脱水器と、前記沈殿槽に隔壁を介して連設された清水槽と、前記攪拌槽内を曝気攪拌すると共に、脱水後の水を当該攪拌槽へ循環させるエアーポンプと、前記攪拌槽に流入した汚泥水中のスラッジを濾別して前記沈殿槽へ流出する第1のフィルタと、当該沈殿槽の上澄み水をさらに濾過して前記清水槽へ導出する第2のフィルタとから成り、前記攪拌槽、沈殿槽及び清水槽の全てに無機系中性凝集剤を添加したことを第1の特徴とする。また、スラリー用脱水器にプレス装置を設け、スラリーを圧搾することを第2の特徴とし、さらに、無機系中性凝集剤の成分が、三酸化硫黄52%、酸化カルシウム20%、シリカ0.1%、酸化ナトリウム0.1%未満で、その物性が、pH7.3(24.7℃)、強熱減量9.5%であることを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、下記の優れた効果がある。
(1)無機系中性凝集剤を使用するので、安全性が高く周辺環境に悪影響を及ぼすことなく排水を浄化できる。
(2)攪拌槽内をエアーポンプにより曝気攪拌するようにしたので、一旦沈降した切削汚泥を撹乱させることなく沈降分離を促進することができる。
(3)攪拌槽を漏斗状に形成したので、その内部で凝集剤溶水と合流した懸濁水が沈降する間に漸時収斂させて沈殿させることができる。
(4)凝集剤の投入手段や電源部等を別途設ける必要がないので、コンパクト化を図ることができ、工事用移送車両等に搭載して機動的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るコンクリートカッター用切削水循環装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の正面図である。
【図4】図1の側面図である。
【図5】本発明装置を移送車両に搭載した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
図1は本発明に係るコンクリートカッター用切削水循環装置の構成を模式的に示す斜視図、図2は図1の平面図、図3は図1の正面図、図4は図1の側面図、図5は本発明装置を移送車両に搭載した状態を示す斜視図である。
【実施例】
【0010】
本発明のコンクリートカッター用切削水循環装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1乃至図4に示すように、本発明に係るコンクリートカッター用切削水循環装置Sは、全体が方形状に形成され、アスファルト又はコンクリートを切削する際に発生する切削懸濁排水が流入する攪拌槽1と、攪拌槽1に隔壁2aを介して連設された沈殿槽2と、攪拌槽1の下方に、移動自在に設けられたスラリー用脱水器4と、沈殿槽2に隔壁3aを介して連設された清水槽3と、攪拌槽1内を曝気攪拌すると共に、脱水後の水を攪拌槽1へ循環させるエアーポンプ5と、攪拌槽1に流入した汚泥水中のスラッジを濾別して沈殿槽2へ流出する第1のフィルタF1と、沈殿槽2の上澄み水をさらに濾過して清水槽3へ導出する第2のフィルタF2とから成り、攪拌槽1、沈殿槽2及び清水槽3の全てに無機系中性凝集剤を添加して構成されている。
【0011】
攪拌槽1の下部1aは下方に向かって漸次細くなる漏斗状に両辺を傾斜させて形成され、この漏斗状部の最下部に連通して固形分排出管1bが設けられている。この固形分排出管1bのバルブ(図示せず)を開放することによって、攪拌槽1の下方に配置されたスラリー用脱水器4に、攪拌槽1の下部1aに沈澱堆積した若干の水分を含有するスラリー状のコンクリー残滓を排出する。
【0012】
枡状のスラリー用脱水器4は、枡内に例えば袋状の濾布を配して攪拌槽1から排出されたスラリー状のコンクリー残滓を脱水し、さらにプレス装置12によって圧搾することで、含水量を低減することができ、産廃処理コストも低減できる。そして、その濾過水は脱水槽6に流下して貯留される。濾布には、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、酢酸ビニルなどの合成繊維からなる織布又は不織布を使用すると良い。また、プレス装置12として、モーター式、油圧式、空気圧式のジャッキ等を使用する。
【0013】
攪拌槽1、沈殿槽2及び清水槽3の全ての貯留水には無機系凝集剤を投入して溶水にする。本実施例で使用した無機系凝集剤の成分の一例を表1に示す。
【0014】
【表1】

【0015】
図中、7はアスファルトやコンクリート等を回転刃により切断する路面カッターであり、8は路面カッター7から排出される懸濁排水を吸引回収してコンクリートカッター用切削水循環装置Sに導入するための懸濁排水回収管、9はコンクリートカッター用切削水循環装置Sで浄化処理された処理水を路面カッター7に潤滑冷却水として供給するための潤滑冷却水供給管である。そして、10は、脱水槽6の貯留水を攪拌槽1へ循環させると共に、攪拌槽1内をエアーポンプ5により曝気攪拌するための空気を噴出させる貯留水供給管である。このように、攪拌槽1内を曝気攪拌するようにしたので、攪拌羽根等の機械的な攪拌装置を使用する場合に比べて、一旦沈降した切削汚泥を撹乱させることなく沈降分離を促進することができる。また、土木系、工業系、生コン等の濁水処理等に利用できる。
【0016】
尚、本発明のコンクリートカッター用切削水循環装置Sは、図5に示すように、工事用移送車両11に搭載して運搬が可能である。また、路面カッター7はアスファルト道路やコンクリート道路等の路面のほか、コンクリート材、アスファルト材、岩盤、石材等の切断、穿孔を行う際にも用いられるので、これらの作業時に排水される切断水等の懸濁排水も濾過処理することができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明装置は、工事用移送車両に容易に搭載でき、工事現場における環境を汚染することなく効率的に道路カッターで使用した後の排水を浄化して再使用できるものであり、特に水の補給施設のない現場でも道路カッターを使用することができ、利便性に優れるとともに機動性、作業性に優れる。また、移送車両に積載したまま路面カッターからのホースと接続して使用できるので、工事現場における切削排水の周囲への垂れ流しによる環境汚染を解消できるという点で産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0018】
1 攪拌槽
1a 漏斗状下部
1b スラリー排出管
2 沈殿槽
2a 隔壁
3 清水槽
3a 隔壁
4 スラリー用脱水器
5 エアーポンプ
6 脱水槽
7 路面カッター
8 懸濁排水回収管
9 潤滑冷却水供給管
10 貯留水供給管
11 工事用移送車両
12 脱水用プレス装置
S コンクリートカッター用切削水循環装置
F1 第1のフィルタ
F2 第2のフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト又はコンクリートを切削する際に発生する切削懸濁排水が流入する漏斗状の攪拌槽と、該攪拌槽に隔壁を介して連設された沈殿槽と、前記攪拌槽の下方に、移動自在に据付けられたスラリー用脱水器と、前記沈殿槽に隔壁を介して連設された清水槽と、前記攪拌槽内を曝気攪拌すると共に、脱水後の水を当該攪拌槽へ循環させるエアーポンプと、前記攪拌槽に流入した汚泥水中のスラッジを濾別して前記沈殿槽へ流出する第1のフィルタと、当該沈殿槽の上澄み水をさらに濾過して清水槽へ導出する第2のフィルタとから成り、前記攪拌槽、沈殿槽及び清水槽の全てに無機系中性凝集剤を添加したことを特徴とするコンクリートカッター用切削水循環装置。
【請求項2】
スラリー用脱水器にプレス装置を設け、スラリーを圧搾することを特徴とする請求項1記載のコンクリートカッター用切削水循環装置。
【請求項3】
無機系中性凝集剤の成分が、三酸化硫黄52%、酸化カルシウム20%、シリカ0.1%、酸化ナトリウム0.1%未満で、その物性が、pH7.3(24.7℃)、強熱減量9.5%であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンクリートカッター用切削水循環装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−167325(P2010−167325A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9574(P2009−9574)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(509019912)株式会社エコサイエンス (2)
【Fターム(参考)】