説明

コンクリート壁構築装置

【課題】簡単に再利用できると共に、コーンを単品で安価に製作でき、しかもコンクリート壁からのコーンの取外しが容易に行えるコンクリート壁構築装置を提供する。
【解決手段】セパレータ1の両端部に夫々コーン12を螺着し、各コーン12の外端面12oを型枠8の内側面8oに当接させると共に、コーン12に螺合した軸足15を型枠8の貫通孔8aから外方へ突出させ、この軸足15の突出端部に型枠締付杆3を螺着することにより、両型枠8,8を所定間隔に固定し、両型枠8,8間にコンクリートを打設してコンクリート壁Cを形成し、各型枠締付杆3及び型枠8を取り外すと共に、コンクリート壁Cから各コーン12を抜き取り、その空所に充填物を充填するコンクリート壁構築装置であって、コーン12は金属で一体に形成されたもので、型枠8に当接するコーン外端面12oに、回転操作具係止用凹部14を周方向に間隔をおいて設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート壁の構築のために用いる型枠支持用コーンを安価に産業資源としてリサイクルにより再利用することができるようにしたコンクリート壁構築装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として特許公報等の公知文献を挙げることはできないが、従来、コンクリート壁構築装置の一例として図4に示すものがある。これは、セパレータボルト1と、一対のコーン2と、一対の型枠締付杆3とを備えており、前記コーン2が、截頭円錐形の合成樹脂製コーン本体2aと、このコーン本体2aの中心孔4に嵌着させた特殊形状の金属製軸足2bとを有し、軸足2bの一端大径部にねじ孔5が形成されると共に、その軸足2bの他端小径部に雄ねじ部6が形成され、その雄ねじ部6がコーン本体2aから外方に突出されている。
【0003】
構築手順を説明すると、図4の(a) に示すように、セパレータボルト1の両端ねじ部に各軸足2bのねじ孔5を螺着させることにより、各セパレータボルト1の両端にコーン2,2を嵌着させ、一対のコンクリート型枠8,8の貫通孔8a,8aを夫々各軸足2bに嵌合させた状態で各軸足2bの雄ねじ部6に型枠締付杆3のねじ孔3aを螺着させることにより、その各型枠締付杆3と各コーン本体2aとで各コンクリート型枠8を挟持して、両コンクリート型枠8,8を互いに所定間隔をおいて平行に固定し、その両コンクリート型枠8,8間にコンクリートを打設してコンクリート壁Cを形成する。
【0004】
次に、図4の(b) に示すように、各型枠締付杆3及び両コンクリート型枠8,8を取り外すと共に、コンクリート壁Cから各コーン2を抜き取り、続いて、図4の(c) に示すように、各コーン2を抜き取った後の空洞9内に詰め物10を充填する。
【0005】
コンクリート壁Cを構築した後、前記コーン2を再利用する場合には、コーン本体2aと軸足2bとの間の隙間に入り込んだコンクリート屑を取り除く。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の構成では、コーン2の軸足2bの形状が特殊で市販品ではないから、コストアップになると共に、コーン2を再利用する場合に、コーン本体2aと軸足2bとの間の隙間に入り込んだコンクリート屑を取り除くのに、手間と時間とがかかって面倒であり、コストアップになる。
【0007】
そこで、コーン2を廃棄することも考えられるが、これでは、合成樹脂からなるコーン本体2aと金属からなる軸足2bとの材質が異なるため、公害問題が発生すると共に、1回限りの使い捨てになるので、コストアップになる。
【0008】
上記公害問題を生じさせないようにするため、コーン本体2aから軸足2bを抜き取って、その両者2a,2bをそれぞれ別個に産業資源としてリサイクルにより再利用することも考えられるが、これでは、コーン本体2aに軸足2bが強固に嵌着されているため、その両者2a,2bを分離するのに過大な労力を必要とし、コストアップになる。
【0009】
本発明は、上記従来の欠点に鑑み、コーンを産業資源としてリサイクルにより簡単に再利用することができるようにすると共に、コーンを単品で安価に製作でき、しかもコンクリート壁からのコーンの取外しが容易に行えるようにしたコンクリート壁構築装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に記載の発明は、両側一対のコンクリート型枠8,8間に配置されるセパレータ1の両端部16,16に夫々コーン12を螺着し、各コーン12の外端面12oを型枠8の内側面8oに当接させると共に、コーン12に螺合した軸足15を型枠8の貫通孔8aから外方へ突出させ、この軸足15の突出端部に型枠締付杆3を螺着することにより、両型枠8,8を所定間隔に固定し、両型枠8,8間にコンクリートを打設してコンクリート壁Cを形成し、各型枠締付杆3及び型枠8を取り外すと共に、コンクリート壁Cから各コーン12を抜き取り、その抜き取った後の空所19に充填物20を充填するコンクリート壁構築装置であって、
前記コーン12は、金属によって一体に形成されたもので、型枠8の内側面8oに当接するコーン外端面12oに、回転操作具係止用凹部14を周方向に間隔をおいて複数設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記コーン12は、内周面にネジ13を形成した円筒状本体12aと、この円筒状本体12aの外端部に径方向外向きに突設されたフランジ部12bとからなるもので、フランジ部12bの外端面12oに回転操作具係止用凹部14を周方向に間隔をおいて複数設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に記載の発明によれば、コーン12が金属によって一体に形成されたものであるから、コンクリート壁Cの構築後、その構築に使ったコーン12をそのまま産業資源としてリサイクルにより再利用することができ、図4に示される従来のコーン2のようにコーン本体2aからナット2bを分離する必要がないので、その分離作業を行わない分だけコストダウンを図ることができる。
【0013】
またコーン12には型枠8の内側面8oに当接する外端面に、回転操作具係止用凹部14が周方向に間隔をおいて複数設けてあるから、この係止用凹部14に回転操作具17の係止ピン18を係止し、この回転操作具17を回転操作してコーン12をその中心軸線Oを中心に回転させることによって、コンクリート壁Cからのコーン12の抜き取りが容易となる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、コーン12は、内周面にネジ13を形成した円筒状本体12aと、この円筒状本体12aの外端部に径方向外向きに突設されたフランジ部12bとからなるため、単なる円筒体からなるコーンと比較して体積を極力少なくでき、コストの低減化と軽量化を図ることができる。また、コーン12を円筒状本体12aとフランジ部12bとから構成すれば、フランジ部12bによって、コンクリート型枠8に対するコーン12の当接面積を十分に大きくとることができるから、そのコンクリート型枠8を所定位置に安定良く固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の好適な実施形態について図面に基づいて説明すると、図1の(a) ,(b)
は本発明に係るコンクリート壁構築装置の使用によるコンクリート壁構築手順の前段を示す断面図、図2の(a) ,(b) は同構築手順の後段を示す断面図であり、図3の(a) はコーンの取付状態を示す拡大断面図、(b) は(a) のX−X線断面図、(c) はコーンの斜視図である。
【0016】
本発明に係るコンクリート壁構築装置におけるコーン12は、金属材、好ましくは鉄によって一体に形成されたもので、図3の(a) 〜(c) から分かるように、内周面にネジ13を形成した円筒状本体12aと、この円筒状本体12aの外端部に径方向外向きに突設されたフランジ部12bとからなり、フランジ部12bの外端面12oには回転操作具係止用凹部14が例えば周方向に180°の間隔をおいて2個設けられている。
【0017】
上記回転操作具係止用凹部14は、フランジ部12bを軸方向に貫通してはならず、図3の(a) に示すようにフランジ部12bの外端面12oに形成される窪み部である。これは、フランジ部12bを軸方向に貫通する孔とすれば、使用の際にコンクリートがその孔を埋めて、回転操作具を係止させることができないからである。
【0018】
尚、この実施形態では、回転操作具係止用凹部14を周方向に180°の間隔をおいて2個設けているが、周方向に120°の間隔をおいて3個設けてもよいし、また周方向に90°の間隔をおいて4個設けてもよい。
【0019】
上記コーン12の具体的寸法を参考までに例示すれば、円筒状本体12aは、その長さが例えば25mm、外径が例えば13mm、内径が例えば5/16インチ(約7.94mm)、フランジ部12bは、その直径が例えば22〜24mm、その厚さが例えば3〜5mmとされる。
【0020】
このコーン12に螺着される軸足15は、図3の(a) に示すように、ねじ棒からなり、その両端に雄ねじ部15a,15bが形成されると共に、その中央部に一対の操作用平坦部15c,15cが形成され、その操作用平坦部15c,15cを工具で把持して一方の雄ねじ部15aをコーン12の円筒状本体12aにねじ込むようになっている。
【0021】
コンクリート壁構築手順を説明するならば、図1の(a) に示すように、両側一対のコンクリート型枠8,8間に配置されるセパレータボルト1の両端ねじ部16,16に夫々、コーン12の円筒状本体12aの一端部をねじ込んで取り付けることにより、このセパレータボルト1の両端部にコーン12,12を嵌着させ、各軸足15の一方の雄ねじ部15aを各コーン12の円筒状本体12aの他端部にねじ込んで取り付けることにより、各軸足15の他方の雄ねじ部15bを各コーン12から外方に突出させ、その他方の雄ねじ部15bに対し、両側一対のコンクリート型枠8,8の貫通孔8a,8aを夫々嵌挿させた状態で、各型枠締付杆3のねじ孔3aを螺着させる。これにより、各型枠締付杆3と各コーン12とで各コンクリート型枠8を挟持して、両コンクリート型枠8,8の夫々内側面8o,8oにコーン12,12のフランジ部12b,12bの外端面12o,12oを夫々当接させた状態で両コンクリート型枠8,8を互いに所定間隔をおいて平行に固定し、その両コンクリート型枠8,8間にコンクリートを打設してコンクリート壁Cを形成する。
【0022】
次に、図1の(b) に示すように、各型枠締付杆3及び両コンクリート型枠8,8を取り外すと共に各軸足15を回して各コーン12の円筒状本体12aから取り外す。そして、図1の(b) に示すように、各コーン12のフランジ部12bに設けてある回転操作具係止用凹部14,14に回転操作具17の係止ピン18,18を係止し、この回転操作具17を回転操作してコーン12をその中心軸線Oを中心に回転させることにより、図2の(a)
に示すように各コーン12をコンクリート壁Cから抜き取る。続いて、図2の(b) に示すように各コーン12を抜き取った後の空洞19内には、充填物としてのセメントモルタル20を充填する。
【0023】
コーン12を抜き取った後の空洞19は、コーン12の円筒状本体12aとセパレータボルト1の端部との間に形成される円筒状本体側空洞部19aと、コーン12のフランジ部12bによって形成されるフランジ部側空洞部19bとからなるものであるが、充填物としてのセメントモルタル20は、図2の(b) に示すように円筒状本体側空洞部19aのみに充填し、フランジ部側空洞部19bには充填せず、そのままにしておいてもよいし、あるいは図示は省略するが、両空洞部19a,19bに亘って充填してもよい。
【0024】
上記の回転操作具17は、例えば図1の(b) に示すように、円板状本体17aと把手17bとからなるもので、円板状本体17aの片面側に係止ピン18,18が突設されている。ここに例示した回転操作具17は一例であって、コーン12のフランジ部12bに設けた係止用凹部14に係止してコーン12を回転させることができるものであれば、どのような構造でもよい。
【0025】
以上のように、本発明に係るコンクリート壁構築装置では、コーン12全体が金属によって一体に形成されたものであるから、コンクリート壁Cの構築後、その構築に使ったコーン12をそのまま産業資源としてリサイクルにより再利用することができ、図4に示される従来のコーン2のようにコーン本体2aからナット2bを分離する必要がないので、その分離作業を行わない分だけコストダウンを図ることができる。
【0026】
またコーン12には型枠8の内側面に当接する外端面に、回転操作具係止用凹部14が周方向に間隔をおいて複数設けてあるから、この係止用凹部14に回転操作具17の係止ピン18を係止し、この回転操作具17を回転操作してコーン12をその中心軸線Oを中心に回転させることによって、コンクリート壁Cからのコーン12の抜き取りが容易となる。
【0027】
またコーン12は、内周面に内周面にネジ13を形成した円筒体からなるものでもよいが、この実施形態に示すように、内周面にネジ13を形成した円筒状本体12aと、この円筒状本体12aの外端部に径方向外向きに突設されたフランジ部12bとからなるものであれば、円筒体に比べ体積を極力少なくできて、コストの低減化と軽量化を図ることができる。
【0028】
また、コーン12を円筒状本体12aとフランジ部12bとから構成することにより、フランジ部12bによって、コンクリート型枠8に対するコーン12の当接面積を十分に大きくとることができるため、そのコンクリート型枠8を所定位置に安定良く的確に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a) ,(b) は本発明に係るコンクリート壁構築装置の使用によるコンクリート壁構築手順の前段を示す断面図である。
【図2】(a) ,(b) は同構築手順の後段を示す断面図である。
【図3】(a) はコーンの取付状態を示す拡大断面図、(b) は(a) のX−X線断面図、 (c)はコーンの斜視図である。
【図4】(a) は従来例の構築手順の前段を示す概略縦断面図、(b) は同手順の中段を示す概略縦断面図、(c) は同手順の後段を示す概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 セパレータボルト
3 型枠締付杆
3a 型枠締付杆のねじ孔
8 コンクリート型枠
9 空洞
12 コーン
12a コーンの円筒状本体
12b コーンのフランジ部
13 ネジ
14 回転操作具係止用凹部
15 軸足
17 回転操作具
18 回転操作具の係止ピン
C コンクリート壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側一対のコンクリート型枠間に配置されるセパレータの両端部に夫々コーンを螺着し、各コーンの外端面を型枠の内側面に当接させると共に、コーンに螺合した軸足を型枠の貫通孔から外方へ突出させ、この軸足の突出端部に型枠締付杆を螺着することによって、両型枠を所定間隔に固定し、両型枠間にコンクリートを打設してコンクリート壁を形成し、各型枠締付杆及び型枠を取り外すと共に、コンクリート壁から各コーンを抜き取り、その抜き取った後の空所に充填物を充填するコンクリート壁構築装置であって、
前記コーンは、金属によって一体に形成されたもので、型枠の内側面に当接するコーン外端面に、回転操作具係止用凹部を周方向に間隔をおいて複数設けたことを特徴とするコンクリート壁構築装置。
【請求項2】
前記コーンは、内周面にネジを形成した円筒状本体部と、この円筒状本体部の外端部に径方向外向きに突設されたフランジ部とからなるもので、フランジ部の外端面に回転操作具係止用凹部を周方向に間隔をおいて複数設けたことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート壁構築装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−205083(P2007−205083A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26899(P2006−26899)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(391049172)株式会社神戸機材 (3)
【Fターム(参考)】